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― ― 野村 昌史 やじ馬昆虫撮影記

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Academic year: 2021

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― 74 ―

植 物 防 疫  第

71

巻 第

3

号 (2017年)

210

千葉大学大学院 准教授

野村 昌史

(のむら まさし)

エッセイ やじ馬昆虫撮影記

 (その 8 草原性のホタル)

米国に来て「普通に見られる」と言われたのに,結局 は目にすることができなかった昆虫も多い。でも「たく さんいるよ」と言われ,本当に多くの個体が見られたケ ースもある。草原性のホタルである。

日本ではゲンジボタルのように幼虫が水棲で川辺にい るホタルが有名だが, こちらのホタルは幼虫が草原に棲み 陸生貝類やミミズなどを食べている。そのため広大な草原 が広がるこの辺りには草原性のホタルがたくさんいる。

ホタルが見られる時期になり,学内の広い草原に行っ てみた。 6 月下旬は日が暮れるのが 8 時過ぎなので本当 に暗くなるのは 9 時ころである。夕闇せまるころ,目を こらすと何かが光っている。そしてだんだんとその数は 多くなり,光は弱いながらもホタルだとわかり嬉しくな った。すぐ近くの葉から飛び立とうとする個体も撮影で きた(図― 1 )。

ふと近くの柳の木を見ると,目の前の草原よりもはる かに多くのホタルがとまっていて「ホタルの木」になっ ている。感激してしばし眺めていたが,ふと我に返って 撮影を試みた。

しかし周囲が明るく,うまく撮れない。近くの噴水の ライトアップでホタルの光が負けてしまうのだ。あれこ れ試したが,幻想的なホタルの木をうまく撮影できなか った。がっかりして木に近づき何気なく上を見ると,空 には満天の星が見える。また下から空を撮影するならラ

イトの影響は少ないようだ。再びの試行錯誤の末,とう とう空の星と地上の星(ホタル)をコラボさせた写真を 撮ることができた。

この草原に何日か通ううち,ホタルは 1 種だけではな いことに気がついた。草原を飛び回り,急に上昇すると きに強い光を放つ別の種がいたのだ。

このホタルの撮影も困難だった。シャッターを長押し して「上昇する光の帯」が撮れないものかと頑張ったが,

やはり周囲が明るいのと,彼らの飛翔が思ったより速 く,光る位置が全く予想できないので,いい写真になら なかった。しかし草の上で光るメスを見つけ,その光に 飛んできたオスとの配偶行動を撮影することができた

(図―2)。幻想的なホタルの光を残すことはできなかった が,ホタルそのものは撮影できたので,そのときは満足 した。

その後すっかり枯れてしまった草原を訪れ眺めていて も,あのときの「ホタルの木」や「上昇する光の帯」を 思い出す。幻想的な光景は心に焼き付いているのだ。

でもこんなに美しく光るホタルがそこら中にいるのに,

散歩している人はいても立ち止まる人は少なく,地元の 人はホタルに関心がないようであった。毎年のことなの で興味を失っているのか,民族性の違いなのだろうか。

毎年でも何度でも見たい光景だと私なら思うのに…。

図−1 飛び立とうとするホタル 図−2 メスに集まるオスのホタル

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