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2016 年 博士学位論文 日本語のパラ言語的情報からみた認識差 - 日本語母語話者と外国人日本語学習者の対照分析 - 首都大学東京人文科学研究科日本語教育学教室 丁美貞

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2016 年 博士学位論文

日本語のパラ言語的情報からみた認識差

-日本語母語話者と外国人日本語学習者の対照分析-

首都大学東京 人文科学研究科 日本語教育学教室

丁 美貞

(2)

i

目 次

第Ⅰ部 序論 ... 1

第1章 序章 ... 2

-パラ言語的情報に関する研究の必要性- ... 2

1.1. はじめに ... 2

1.2. 本研究の目的と研究内容 ... 2

1.2.1.研究の目的 ... 2

1.2.2. 研究内容 ... 3

1.3. 本論文の構成 ... 3

第2章 先行研究 ... 6

2.1. 感情と音声... 6

2.2. 感情に関する研究分野 ... 9

2.2.1. 文法に関する研究 ... 9

2.2.2. 音声に関する研究 ... 9

2.3. パラ言語的情報に関する研究 ... 11

2.3.1. パラ言語的情報の定義 ... 11

2.3.2. パラ言語研究の難しさ ... 12

2.4. 本論文の意義 ... 13

第Ⅱ部 各論 ... 14

第3章 日本語のパラ言語的情報からみた認識差 ... 15

-日本語母語話者を対象として- ... 15

3.1. はじめに ... 15

3.2. 研究目的 ... 16

(3)

ii

3.3. 先行研究 ... 16

3.3.1. 日本語のパラ言語的情報に関する研究 ... 16

3.3.2 感情表現に関する研究 ... 20

3.4. 研究概要 ... 21

3.4.1. 感情語 ... 21

3.4.2. 刺激語句 ... 21

3.4.3. 音声サンプル ... 22

3.4.4. 実験協力者 ... 22

3.4.5. 実験方法 ... 22

3.4.6. 分析方法 ... 22

3.5. 分析結果 ... 24

3.5.1. 単純集計の結果 ... 24

3.5.2. 探索的因子分析 ... 26

3.5.3. 確認的因子分析 ... 28

3.6. まとめ ... 30

第4章 日本語のパラ言語的情報からみた認識 ... 32

-韓国人日本語学習者を対象として- ... 32

4.1. はじめに ... 32

4.2. 先行研究 ... 33

4.2.1. 韓国語の音声的特徴 ... 33

4.2.2. パラ言語的情報に関する研究 ... 34

4.2.3. 韓国人日本語学習者に見られる母語の干渉 ... 36

4.3. 研究概要 ... 37

(4)

iii

4.3.1. 感情語 ... 37

4.3.2. 刺激語句 ... 37

4.4.3. 音声サンプル ... 37

4.3.4. 実験協力者 ... 37

4.3.5. 実験方法 ... 38

4.3.6. 分析方法 ... 38

4.4. 分析結果 ... 38

4.4.1. 単純集計の結果 ... 38

4.4.2. 探索的因子分析 ... 40

4.4.3. 確認的因子分析 ... 41

4.5. まとめ ... 43

第5章 日本語のパラ言語的情報からみた認識差 ... 45

-日本語母語話者と韓国人日本語学者の比較対照分析- ... 45

5.1. 研究概要 ... 45

5.1.1. 感情語 ... 45

5.1.2. 刺激語句 ... 45

5.1.3. 音声サンプル ... 45

5.1.4. 実験協力者 ... 46

5.1.4.1. 日本語母語話者 ... 46

5.1.4.2. 韓国人日本語学習者 ... 46

5.1.5. 実験方法 ... 46

5.1.6. 分析方法 ... 46

5.2. 分析結果 ... 47

(5)

iv

5.2.1. 単純集計の結果 ... 47

5.2.2. 探索的因子分析結果-日本語母語話者 ... 50

5.2.3. 探索的因子分析結果-韓国人日本語学習者 ... 51

5.2.4. 因子得点 ... 52

5.3. まとめ ... 54

第6章 日本語のパラ言語的情報からみた認識 ... 56

-中国人日本語学習者を対象として- ... 56

6.1. はじめに ... 56

6.2. 研究目的 ... 56

6.3. 中国語の音声的特徴 ... 56

6.4. 研究概要 ... 57

6.4.1. 感情語 ... 57

6.4.2. 刺激語句 ... 57

6.4.3. 音声サンプル ... 57

6.4.4 調査協力者 ... 57

6.4.5. 調査方法 ... 57

6.4.6. 分析方法 ... 57

6.5. 分析結果 ... 58

6.5.1. 単純集計の結果 ... 58

6.5.2. 探索的因子分析結果 ... 60

6.5.3. 確認的因子分析 ... 61

6.5.4. 共分散構造分析結果 ... 62

6.6. まとめ ... 63

(6)

v

第7章 日本語のパラ言語的情報からみた認識 ... 65

-インドネシア人日本語学習者を対象として- ... 65

7.1. はじめに ... 65

7.2. 先行研究 ... 65

7.2.1. インドネシア語の音声的特徴 ... 65

7.2.2. インドネシア人日本語学習者に見られる母語の干渉... 66

7.2.3.インドネシア人学習者の日本語発話中のプロミネンス ... 67

7.3. 研究概要 ... 68

7.3.1. 感情語 ... 68

7.3.2. 刺激語句 ... 68

7.3.3. 音声サンプル ... 68

7.3.4. 実験協力者 ... 68

7.3.2. 実験方法 ... 68

7.3.3. 分析方法 ... 68

7.4. 分析結果 ... 69

7.4.1. 単純集計の結果 ... 69

7.4.2. 探索的因子分析 ... 70

7.4.3. 確認的因子分析 ... 72

7.5. まとめ ... 74

第8章 パラ言語的情報の音声の特徴に関する質的分析 ... 76

8.1. はじめに ... 76

8.2. 研究概要 ... 77

8.2.1. 研究手順 ... 77

(7)

vi

8.2.2. 実験協力者及び研究方法 ... 78

8.2.3. 刺激語句および感情語 ... 78

8.2.4. 研究方法 ... 78

8.3. 分析結果 ... 80

8.3.1. プロトコル分析の結果 ... 80

8.3.2. コレスポンデンス分析結果 ... 83

8.3.2.1. 日本語母語話者の結果 ... 83

8.3.2.2. 韓国人日本語学習者の結果... 87

8.3.2.3. 中国人日本語学習者の結果... 90

8.4. 考察 ... 93

第Ⅲ部 結論 ... 95

第9章 結論および今後の課題 ... 96

9.1.はじめに ... 96

9.2. 分析結果 ... 96

9.3.日本語教育への提案 ... 98

9.4.今後の課題... 99

【參考文献】 ... 100

参考資料1 アンケートシート(日本語版) ... 107

参考資料2 アンケートシート(韓国語版) ... 108

参考資料3 アンケートシート(中国語版) ... 109

参考資料4 アンケートシート(インドネシア語版) ... 110

参考資料5 質的分析のためのインタビュー結果 ... 111

日本語母語話者のインタビューの文字化資料 ... 111

(8)

vii

韓国人日本語学習者のインタビューの文字化資料 ... 121

中国人日本語学習者のインタビューの文字化資料 ... 126

補遺 ... 137

日本語教育のためのICTを利用したパラ言語習得教材「eduVoice」開発 ... 137

(中間報告) ... 137

1. はじめに... 137

2. 先行研究... 138

2.1. 『日本語音声データベース~初級編~』 ... 139

2.2. オンデマンド授業 ... 140

2.3. 『オンライン日本語アクセント辞書(Online Japanese Accent Dictionary, ... 140

OJAD)』 ... 140

2.4. mラーニング教育の特徴 ... 143

3. eduVoiceの構成 ... 144

3.1. 感情語 ... 144

3.2. 刺激語句 ... 145

3.2. 音声サンプル ... 145

3.3. ピッチ曲線描出 ... 145

3.4. 顔文字 ... 145

4. eduVoiceの概要 ... 146

4.1. システム環境 ... 146

4.2. eduVoiceのインタフェース及び機能の説明 ... 146

4.3. 管理機能 ... 150

5. まとめと今後の課題 ... 151

(9)

1

第Ⅰ部 序論

(10)

2

第 1 章 序章

-パラ言語的情報に関する研究の必要性-

1.1. はじめに

日本語の音声(発音・アクセント・イントネーション)は外国人日本語学習者にとって、

その知覚や自分の発音に関する自覚が難しく、非常に学習しにくいものである。日本語学習 者が日本語でコミュニケーションをとる際、発音やアクセント・イントネーションで意味や 表現意図が変わるのを知らず、文法的に間違いはないか、単語は適切か、また自分の言いた い意図が伝わっているかなどにのみ注意を向けているのではないだろうか。

近年日本語教育において、音声教育に目が向けている教育者や教育現場が徐々に増えてい るが、日本語の音声は学習時間が少なく、また学習が習慣にもつながりにくいという問題が ある。特に日本語では単語レベルのアクセントが文レベルになるとイントネーションが変化 する。この文レベルのイントネーションの場合、平叙文では日本語のピッチ変化は一般的に 平仮名「へ」という字のようになるが、疑問・断定文のイントネーションはまた変わってくる。

多くの日本語学習者は疑問・断定文のイントネーションについては特に問題ないように思 われる。しかし、日本語のイントネーションは話し手の様々な要因によりまた変化する。こ のような文レベルのイントネーションについて鮎沢(1990)は「話し手の発話意図を表現す るだけではなく話し手の感情によっても変動する」と述べている。

1.2. 本研究の目的と研究内容

1.2.1.研究の目的

人間のそれぞれの感情に対して、例えば、話者のその都度の健康状態から心理状態、性 別、年齢によって感情を表す表現が様々異なる。一般化および普遍的な特徴を示すのは難 い。このため、感情に関する研究は遅れているだろう。それでは、日本人が感じる聞き手 としての感情はどのようなものがあるか。

丁(2013)では、韓国人日本語学習者は「怒り」を「喜び」や「驚き」と認識しているこ とがわかった。韓国人日本語学習者は、「怒り」と前後の文脈ないしの単音節で聞いた場合、

「怒り」、「喜び」、「驚き」を混同しやすい。また中国人日本語学習者は、「皮肉」の感情に 関する認識が弱いなど、日本語の音声の中に感情が含まれている場合、日本語母語話者との

(11)

3 認識が異なっていることが明らかになった。

そこで本稿では、丁(2013)を踏まえて、研究目的として以下のものをあげたい。

第一に、日本語母語話者と外国人日本語学習者がパラ言語的情報の違いによる日本語の感 情表現をどのように判断するか、すなわち、聞き手としての判断基準を探り、日本語母語話 者と円滑なコミュニケーションを行うための指針として検討していくことにしたい。

第二に、日本語で表している「感情」と世界的に表している感情との関係と日本語のパ ラ言語的情報の関連について明らかにしたい。

1.2.2. 研究内容

本研究では日本語の感情表現の内、パラ言語的情報に関する研究であり、特に日本語母語 話者及び外国人日本語学習者を聞き手としての認識に関する内容である。

人間がパラ言語を介して表している感情とはユニバーサルなものであるか。それともそれ ぞれの国によって異なるものなのか。さらに日本語の中ではパラ言語的情報として表現して いる感情は他国とのどのような差があるのだろうか。

本研究の内容としては、日本語母語話者と外国人日本語学習者が日本語のパラ言語的情報 を聞いてどのように認識するか、また、その手がかりにどのようなものが存在しているかを 探索的に検討する。分析方法として多変量解析法を用いてより詳しく分析を行う。

さらに、日本語教育学面で「パラ言語的情報」の教育方法の一つとしてスマートフォン用 アプリケーションの開発について紹介する。

1.3. 本論文の構成

本論文は内容別に大きく三つから構成されている。

第Ⅰ部の序論では、2つの章に構成されている。

第1章の「序章-パラ言語的情報に関する研究の必要性-」では、本稿の研究目的と研 究内容、及び本稿の構成を概観する。

第2章の「先行研究」では、日本語の感情とパラ言語的情報とは何か。今まで研究され てきた感情に関する先行研究を述べ、日本語の感情とパラ言語的情報に関する先 行研究を概観する。また、本稿でのパラ言語的情報の位置付けを述べる。

第Ⅱ部の各論では、日本語のパラ言語的情報に関する認識の差異について、日本語母語話

(12)

4

者をはじめ、韓国人日本語学習者、中国人日本語学習者、インドネシア日本語学習者を対象 として検討する。分析にあたって、多変量解析法を用いて量的・質的分析を行う。各国別に 日本語のパラ言語的情報に関してどのような手掛かりで認識しているかを明らかにするこ とを目的とする。

第3章の「日本語のパラ言語的情報からみた日本語母語話者の認識」では、日本語母語話 者に聞き手として認識調査を行う。実験協力者から得られたデータを用いて多変量 解析法を用いて検討する。

第4章の「日本語のパラ言語的情報からみた韓国人日本語学習者の認識」では、韓国人日 本語学習者を聞き手として認識調査を行う。第 3 章と同様に多変量解析法を用い て検討する。

第5章の「日本語のパラ言語的情報から見た認識差-日本語母語話者と韓国人日本語 学習者の対照分析-」では、第3章の日本語母語話者の結果と韓国人日本語学習者 との結果が同様であったため、その差異を検討する。

第6章の「日本語のパラ言語的情報からみた中国人日本語学習者の認識」では、中国人 日本語学習者を対象として実験を行い、多変量解析法を用いて分析を行う

第7章の「日本語のパラ言語的情報からみたインドネシア人日本語学習者の認識」では、

インドネシア人日本語学習者を多少として実験を行い、多変量解析法を用いて分析 を行う。

第8章の「パラ言語的情報の音声の特徴に関する質的分析」では、質的分析を行う。

第3章から第7章までは、日本語母語話者をはじめ3つの国の日本語学習者を対 象とした実験の結果を潜在的にどのような要素が隠れているかについて数量的に 分析を行った。しかし、統計的な分析では現実世界の感覚的な問題が改善できな いことで根本的な問題に関してもう少し分析しないといけないことを感じた。

そこで、第8章では、プロトコル分析の発話思考法を用いてインタビューを実施 し、得られたインタビューを文字化する。また、文字化したデータを数値化し、

コレスポンデンス分析行う。日本語母語話者および、外国人日本語学習者が日本 語の感情というパラ言語的情報が含まれている音声を聞いた時、何を手掛かりと して判断しているか、つまり日本語の感情を判断する過程にどのような音声の特 徴が判断基準として存在しているかを明らかにする。

第Ⅲ部の結論の第9章では、、日本語のパラ言語的情報に関して、日本語母語話者及び

(13)

5

外国人日本語学習者の認識の差異を述べ、本論文の全体をまとめる。

最後に補遺として「日本語教育への提案-「eduVoice」開発を中心に-」では、日本語の パラ言語的情報に関する認識を日本語教育面に応用することと、日本語教育における新しい 試みとしてスマートフォンのアプリケーションケーションである「eduVoice」の開発を紹介 する。

本論文の構成について以下の図1-1に構成図を示す。

図1-1 本論文の構成図

(14)

6

第 2 章 先行研究

第2章では、本稿で扱われている「感情」と「パラ言語的情報」に関する用語の定義を 述べる。それと共に、今まで研究されてきた先行研究を概観し、本論文の位置づけを示 す。

藤崎(1997)は、パラ言語的情報について、「書き言葉に転写すると推測不可能となる 情報で言語情報を補助ないし変容するために話者が意図的に生成する情報。(中略)発話に 込められた話者の意図、態度や発話のスタイルなどが該当する。パラ言語情報は離散的で あると同時に連続的である。例えば話者の意図が断定にあるか質問にあるかは離散的な差 異であるが、それぞれの意図や強さには連続的な変化が認められる。」と述べている。

本研究で扱っている「パラ言語的情報」とは人間の「感情」とどのような関係があるの だろうか。「感情」と「パラ言語的情報」に関する先行研究を概観する。

2.1. 感情と音声

そもそも感情というものは何なのか。また、どのような感情があり、人間は日常生活の中、

どのような感情を表出し、認識しているか。

森・前川・粕谷(2014)は「感情は外部からの刺激だけではなく楽しかった出来事を思い 出すなど、内部からも起こる。(中略)感情状態の変化は、主観的経験、生理的反応、身体 的な行動をもたらす。(中略)感情は音声に影響する。影響を受ける部分の一つは音声の言 語的側面である。」と述べている。

日本をはじめ東アジア圏には、日本はじめ、東アジア文化には「喜怒哀楽」という言葉 がある。感情を表す言葉に訳すると、「喜び・怒り・悲しい・楽しい」という意味になる が、人間には東洋文化でいう「喜怒哀楽」以外にも日常生活で対人関係において様々な感 情を表出し、様々な感情を認識している。

感情に関する研究には様々な分野がある。古くは、心理学で、言語学でまたは哲学での研 究が基礎研究として行われていた。また、広くは地域や国境を越えて特徴や差異などを社会 的で触れた研究も見える。くわしくみると、感情を表す語彙などについての音声象徴語の研 究・及び意味論。統語論での研究がある。また、感情を表す表現に関する研究として、音声 学面で、音響的面での研究がある。あるいは、ロボットなどがかかわる工学的な研究などが

(15)

7

挙げられる。言語的な意味や特徴などの分析したものが挙げられる。

この節では、感情に関する心理学面での研究を簡略に紹介する。

感情とは、人間や動物に何らかの外部や内部の刺激によって行動を起こす際、生まれて くる心理的・生理的なものである。感情を研究している分野は、心理学や生理学もしくは 医学だけではなく、言語学、教育学、社会学など広範な学問分野に関係している。しか し、学問分野における感情に関係する用語の使用は統一されておらず、しばしば混同して いる。有斐閣の「心理学辞典」では「感情」を以下のように説明している。

「感情(Feeling)の広義には、感情とは経験の感情的あるいは情緒的な面を あらわす総称的用語である。しかし、feel, fuhlenというような英語及びド イツ語の表現が 示すように、皮膚感覚的な感じというように狭義に考えて、

むしろ情動あるいは情緒emotionを上位概念とする考え方もある。さらに、

わが国では英語の翻訳にさえ意見の一致が見られていないものがあり、例え ば矢田部達郎はemotionを情緒と訳し、affecionを情動と訳したが、最近で

はemotionをmotionという言葉の含みを重視してか情動と呼ぶことが一般

化してきている。

情動(Emotion)あるいは情緒は、急激に生起し、短時間で終わる比較的 強力な感情であると定義される場合が多い。情動は主観的な内的経験である とともに、行動的・運動的反応として表出され、また内分泌腺や内臓反応の 変化などの生理的活動を伴うものである。より広義の意味を含む感情と明確 に区別することは難しい。」

しかし、学問的にも統一されてないことが現実である。

森・前川・粕谷(2014)では、感情を「自分の身に危険が追っている場面では顔が青ざ め、冷や汗が出る。このような『生理的反応』と、自分がある心の状態にあると意識して いることを、感情の『主観的経験』と自分の身に危険が追っている場面で何かを話せば、

声はか細く、うわずったものになるかもしれない。誰かがこの声を聴けば、この人は怖が っているのだと感じる。この例は音声による感情の表出である。『表出行動』には、音声の

(16)

8

ほかにも感情や姿勢などあらゆるノンバーバルな行動が含まれる」と三つの側面でまとめ ている。

感情の理論的もモデルがいくつか提唱されたが、ここでは「基本感情説」と「感情の次 元説」について述べる。

「基本感情説」とは、研究者によって微妙に異なるが、6から14種類の感情を基本感情 と仮定している。しかし、多くの研究者に「怒り」「喜び」「悲しみ」「驚き」「恐れ」「嫌 悪」を6大感情と呼ばれている。ただし、この6大感情は必ずしも定まってはいない。

「感情の次元説」とは、感情状態を2次元または3次元空間上のペクトルと考え、感情 の類似性をペクトルの類似性で説明しようとする。「基本感情説」と異なるのは特別な感情 状態を仮定しない。本稿では、Russell(1980)の感情の2次元説を取り上げる。図2-1

は、快―不快、覚醒―睡眠の2次元による感情の円環モデルである。

図2-1 感情の円環モデル(Russellの円環モデル)

ここまでは、感情に関する心理学分野での先行研究を簡略にまとめた。

(17)

9 2.2. 感情に関する研究分野

2.2.1. 文法に関する研究

日本語の感情に関しての研究としてまず文法の研究について述べる。

日本語の「文法には、テンス・アスペクト・ヴォイスなどと並んでムードという文法カテ ゴリーがあり、命令(行け)、禁止(行くな)、意志・勧誘(行こう)、仮定(行けば)、否 定(行かない)、質問(行くか)など、話し手の意図や判断の表現に関ることが知られてい る。日本語において、一層直接敵に話し手の態度を表現しているのは、「行こう、行こう ね、行こうぜ、行くのか」のような文末表現である。文末表現は言語の一部分であるが、

その機能は音声の韻律的特徴と複雑に相関しており、韻律的特徴の分析抜きには正しい言 語学的な分類が困難であると考えられている。」

2.2.2. 音声に関する研究

韻律にみられる感情表現についての研究として飯田・伊賀・安村(1997)がある。

飯田・伊賀・安村(1997)は4種類の感情(喜び、怒り、驚き、悲しみ)を男性1名女性2 名の話者によるフレーズ(「何言ってんの」)をサンプリングした。サンプリングを元に発声 された発話の音響的特徴を検討すると共に、聴取実験によって、どの程度聞き手が話者の感 情を理解できるかを検討した(ここでは、聴取実験の結果のみをのべる)結果、認識率は全

体49.9%で、5%の有意水準で有意であった。怒りの感情の認識率がどの話者についても最

も高く、全体 65%であった。怒りの感情の聞き分けに寄与する物理パラメータとしては発 話速度と最大パワーが有力である。男性話者の悲しみは、正解者10人中9人が男性という ように、女性よりも男性の方が男性話者の悲しみを正しく聴取した。また、男性話者の喜び は喜びというより照れている印象を受けていることから認識率は0%だった。さらに、サン プル・フレーズ(「何言ってんの。」)はWH-疑問文だが、感情を変えて発声されると、そ の発話の含む意図も変化する。つまり、本来、純粋な疑問文であれば、上昇型で終わるピッ チ形状が喜び・怒り・悲しみの3感情で下降型となっている。これは、話者が新情報を求め ているのではなく、その前の会話のやり取りで既知となっている情報に対して、自分の印象 を感情表現によって伝達していると考えられる。感情は状況や話して-聞き手との関係、発 話意図、態度、性別や年齢などの個人情報に依存する。また、文脈や語彙そのものが話者の 話し方に影響するとも考えられ、方言や語彙のアクセント型とフレーズ全体の音響パラメー タの関係に重要な研究課題である。

(18)

10

表2-1 感情の認識率

Total 女性1 女性2 男性1

喜び 42.4% 62.1% 65.1% 0%

怒り 65.8% 60.5% 79.0% 57.9%

驚き 43.9% 51.8% 20.0% 54.4%

悲しみ 47.7% 63.6% 33.3% 46.2%

Total 49.9% 59.5% 49.4% 39.6%

次に、「怒り」の音声の特徴分析に関する研究では、武田・西澤・大山(2001)がある。

武田・西澤・大山(2001)は「怒り」の度合いを平常・軽い怒り・怒り・激怒の4段階の感 情で分け、発話速度・基本周波数の観点から検討を行った。その結果、怒りの度合いが大き くなるにつれて次第に発話速度が速くなるが、激怒になると速度が遅くなった。

一般に怒りの度合いが強くなるにつれて、発話速度が速くなり、基本周波数が高くなる。

これは興奮し、血圧が上がり、声門下圧が上昇し、声帯の緊張が強くなる結果、基本周波数 が上昇すると考えられる。さらに激怒になると基本周波数は上昇するが、逆に発話速度は遅 くなる。これは筋肉の異常な緊張のため調音器官の働きが鈍くなり、調音器官の働きが鈍く なると考えられる。言葉がはっきりしなくなる。これも異常に調音器官に力をこめるためと 考えられる。

次に、日本人の顔と声による感情表現の収録とその評価に関する研究として、高木・平松・

田中(2011)がある。高木・平松・田中(2011)は、基本6感情(喜び・怒り・悲しみ・嫌

悪・驚き・恐怖)に中立的な意味を持つ短文「そうなんですか」「これなに?」「さようなら」

「はいもしもし」「どうなってるの?」「大丈夫?」を表情と音声を録画録音し、評価実験を 行った(ここでは音声評価のみに取り上げる)。

(19)

11

表2-2 音声評価の混同行列 感情判断

喜び 怒り 悲しみ 嫌悪 驚き 恐怖

意図音声

喜び 60.7 8.0 9.1 8.5 12.0 1.7

怒り 4.1 53.0 5.7 23.4 12.5 1.4

悲しみ 1.3 6.5 57.5 10.9 7.0 16.8

嫌悪 4.6 28.7 14.2 39.2 9.8 3.5

驚き 12.7 8.9 14.1 6.6 52.3 5.5

恐怖 3.3 4.9 32.7 5.6 29.6 23.8

表内の値は、実験参加者による感情ごとの回答率を示している。下線の値は正答率である。

モデルが演技するように意図して発話した音声を聴いて、実験参加者が回答した。実験結果、

音声に関しては恐怖感情を除いて、モデルの意図した感情はチャンスレベルを超えて判断さ れた。しかし、音声においても恐怖を意図した場合の正答率は低く、悲しみと判断される率 が高かった。判断される感情の混同については、怒りは嫌悪と悲しみ、恐怖と、嫌悪は怒り と、恐怖は悲しみ及び驚きと混同される傾向にあることが窺えた。意図した感情が嫌悪の場 合には、表情と音声の混同は同様であったが、そのほかについては違いがみられた。

2.3. パラ言語的情報に関する研究

2.3.1. パラ言語的情報の定義

本論文での関心であるパラ言語情報について、日本では藤崎の研究が引用されることが 多い。

藤崎(1997)は、音声に含まれている情報について、言語的情報、パラ言語的情報、非言 語的情報の3つにまとめている。

第1の言語的情報(Iinguisitc information)とは、離散的記号の集合とその結合規則によ って表現される情報であり、書き言葉によって明示的に表現されるか、文脈から一意かつ容 易に推測することが可能である。このように規定された言語情報は離散的であると共に範疇 的である。例えば、日本語単語のアクセント型に関する情報は、有限個のアクセント型のな かから一つの型を指定しているという点において離散的である。

第2のパラ言語的情報(paralinguistic information)とは、書き言葉に転写すると推測不

(20)

12

可能となる情報で言語情報を補助ないし変容するために話者が意図的に生成する情報。(中 略)発話に込められた話者の意図、態度や発話のスタイルなどが該当する。パラ言語情報は 離散的であると同時に連続的である。例えば話者の意図が断定にあるか質問にあるかは離散 的な差異であるが、それぞれの意図に強さには連続的な変化が認められる。

第3の非言語的情報(non-linguistic information )とは、話者の年齢、性別、個人性、

身体ないし感情の状態などの要因に関わる情報。これらの要因は、発話の言語的・パラ言語 的内容とは直接に関係せず、話者が意図的に制御することも一般には不可能である。(中略)

パラ言語的特徴と同じく非言語的特徴もまた離散的であると同時に連続的である。

本論文では藤崎が述べているパラ言語的情報の概念を用いることと、それに沿った研究を 進めたい。

2.3.2. パラ言語研究の難しさ

パラ言語に関する研究が遅れている理由について前川(2002)は以下のように述べてい る。

第一に、パラ言語情報には強弱の程度差が存在する。実験的検討のためにはパラ言語情報 の離散的な種別と同時に強度においても統一のとれたデータを収集しなければならない。

第二に、パラ言語情報の呼称の問題がある(Crystal 1969)。本研究がそうであるように、

被験者に対して特定のパラ言語情報を指定するためには、それらを「疑い」「関心」など呼 んで区別する必要がある。しかし、これらの呼称の提示する対象が話し手(研究者)と聴き 手(被験者ないし他の研究者)の間で一致することが経験的に保証されているわけではない。

パラ言語情報に関するデータ収集では文脈を精密に指定する等の方法を用いて、実験者の意 図するパラ言語情報を被験者に正確に伝える必要がある。

第三に、これは上述した第二の問題の拠ってきたる原因であると考えられるのだが、種々 のパラ言語情報の意味論的構造が未解明である。パラ言語情報が意図的に表出される情報で ある以上、そこには言語情報に比べればゆるやかであるとしても何らかの意味論的構造が存 在すると予想されるのであるが、その構造は部分的にすら解明されていない。そのため、研 究で取り上げる複数のパラ言語情報がパラ言語情報全体のどの部分を代表するものである が、そして相互にどのような意味関係におかれているかを知ることが難しい。

以上のように、前川はパラ言語情報の研究には種々の困難について述べたが、前川をはじ

(21)

13

め、音声によるパラ言語情報の伝達におい主要な役割を果たすと想像される発話の韻律構造 に関する音韻論的・音声学的研究は1980年初頭以来、理論と実験の両面において格段の進 歩を遂げといる。

2.3.3.日本語及び日本語教育分野での先行研究

パラ言語的情報に関する研究は、前川をはじめ多くの工学的な研究が近年盛んでいる。工 学的な研究は主に音声の認識ソフトウェアの開発や音声の合成などに用いられていること が多い。

本研究での分野である日本語教育や、外国人のためのパラ言語に関する研究は管見の限り 見当たらない。

2.4. 本論文の意義

これまでの先行研究を踏まえ、日本語のパラ言語的情報に関する研究を進める。本論文で は、日本語によるパラ言語的情報にはどのような特徴がみられるか、また、そのパラ言語的 情報の認識にかんして、日本語母語話者と外国人日本語学習者とはどのような差がみられる か、母語別ではどのような差異がみられるかを明らかにする。

以上の研究は日本語母語話者を対象としたものだったが、本研究では、外国人日本語学習 者を聞き手として感情音声を聞いた、外国人日本語学習者(韓国語母語話者・中国語母語話 者・インドネシア語母語話者)および日本人との刺激語句の「そうですか」を比較し各国の 実験協力者は刺激語句「そうですか」をどのように捉えられるかをはかることにする。

(22)

14

第Ⅱ部 各論

(23)

15

第 3 章 日本語のパラ言語的情報からみた認識差

-日本語母語話者を対象として-

3.1. はじめに

第3 章では日本語母語話者を対象としたパラ言語的情報に関する認識調査の分析と結果 を中心に述べる。

日本語教育における音声指導については日本においても海外においても盛んではなく、日 本語の教育には日本語の文字をはじめ、文法や会話を中心として授業が行われている。しか し、日本語では韻律も重要である。例えば高低アクセントにより単語の意味を区別する場合 がある。また、イントネーションによっても話者の表現意図が変わる。このように日本語の 音声には、様々な情報が内包されている。藤崎(1994)も「日本語の音声は、文字言語の情 報だけではなく、単なる叙述・断定・疑問・勧誘・反論など様々な意図をもって発音し、そ の意図をかなり明確に伝達することができる」と述べている。藤崎が述べているように、日 本語はアクセントやイントネーションが豊かであり、日本語母語話者の間では無理なく相手 の表現意図に気づいてコミュニケーションに大きな問題が生じる可能性は少ないだろう。さ らに、日本語母語話者は相手の顔の表情や行動、身振り手振りなどを見ずに電話などでもか なり正確に相手の意図を聞き手として聞き取っている。このような日本語の音声に関する研 究は徐々に進んでいるが、日本語の感情に関する研究やパラ言語的情報及び非言語的情報に 関する研究はまだ盛んではなく研究を進めるうえでの様々な難しさが報告されている。

パラ言語的情報について主に研究されている分野としては、スマートフォンやロボットな どに人間の音声を入れて人間との意思疎通を図ったり、人間が話している音声を認識させて 動作ができるようにするなど、工学と医学など最先端の分野での研究が進んでいる。また、

感情に関する研究は、心理学を始め、ヒューマン・コンピューター・インタラクションを含 む工学・言語学・教育学・医学・障害学など広範な学問分野に関係している。工学の研究は 人間とのコミュニケーションを自由自在に実現する機械を作る研究であり、医学や障害学で は障害を克服するための医学面での研究が中心である。日本語教育学においてはどのような 研究がなされているのだろうか。

ここでは、日本語教育学の観点から、日本語の音声の中で特に感情に注目したい。日本語 の感情というカテゴリーはパラ言語的情報によって伝えられることがある。パラ言語的情報

(24)

16

に関する研究については前章を参照されたい。本章は、日本語母語話者が感情を込めた刺激 語句を聞いてどのようにそれを判断しているかに関する研究である。つまり、聞き手が日本 語の感情(文脈なしの刺激語句)を聞いた際、どのように判断しているか、また、潜在に隠 れている要素は何かという聞き手の認識に関する実験とその分析である。

3.2. 研究目的

ここでは、事前に用意した10種類の感情(パラ言語的情報の特徴を変化させたもの)に ついて、日本語母語話者はどのように判断して、認識するか検討する。また男女の声質の異 同と認識の異同も検討対象とする。

3.3. 先行研究

日本語の感情やパラ言語的情報に関する研究は様々な分野で行われている。前述のように 心理学だけではなく、工学の音声情報処理や言語学、教育学、医学、障害学など広い範囲の 分野に関係している。しかし、日本語教育学の立場ではまだ盛んではなく、研究の厳しさや 難しさなどが報告されている。

ここでは、日本国内で行われている日本語に関する感情とパラ言語的情報に関する先行研 究を概観し、その先行研究を踏まえて研究を進めることにする。

3.3.1. 日本語のパラ言語的情報に関する研究

日本語のパラ言語的情報に関する研究は日本語教育より、心理学・工学の方が言語学より 進んでいる。ここでは工学的な研究である藤崎(1994)と森山・斉藤・小沢(1999)をと りあげる。また、日本語教育学や言語学及び音声学に関してのパラ言語的情報の研究として は前川(1999)の研究をとりあげる。

藤崎(1994)は5つの感情表現語「喜び・悲しみ・怒り・恐れ・驚き」を東京出身俳優2 名に発話してもらい録音した。刺激語句は『あ、雨だ』と『もうこれで終わりだ』である。

刺激語句のみ提示した場合と、表3-2に示すような後続文脈を提示した場合の異同につ いて検討した。その結果、文脈なしの発話でも感情の同定の精度はかなり高いが、文脈があ る場合の発話に対する同定精度がさらに高いことが示された。

(25)

17

表3-2 『あ、雨だ』に対する5通りの後続文脈

感情 : 後続文脈

喜び・安堵 : これで今日は働かされなくってすんだ。

悲しみ・楽段: これで折角の運動会が流れてしまう。

怒り・非難 : 誰だ、明日は絶対晴れるなんて言ったのは。

怖れ・不安 : このままでは堤防が危ない、どうしよう。

驚き・困惑 : 家に干してきた布団をどうしよう。

森山・斉藤・小沢(1999)の研究では、表3-3の46個の感情語(主観評価実験におい て用いる評価語-森山・斉藤・小沢(1999)を示しながら、「おまえ」「そんな」「みろよ」

「はやく」の4つの刺激語を男性声優4名にできるだけ色々な感情に分散するように発話 してもらった。それぞれの言葉について「平静音声1」と「感情音声」、約10種類ずつ、計 445音声2を収録した。

その中、有意な評価語3を選択して9個「怒り・喜び・皮肉・恐れ・悲しい・驚き・媚・

穏やか・おかしい」の感情語に絞り、日本人の男子学生16名、女子学生2名に7段階評定 尺度を用いて評価してもらった。評価してもらったデータを因子分析した結果、「快-不快」

「緊張-弛緩」「注目-拒否」という3つの因子が抽出された。

この研究で、森山・斉藤・小沢(1999)は、「音声が感情を含んだ時に生ずる物理的な変 化として『声高さ』『抑揚』といった成分が支配的であることも分かった」と述べている。

ただし、この研究では男性のみの音声であり、女性の音声は含まれていない。

1 「平静音声」は棒読み、あるいは感情が含まれていない音声である。「感情音声」については互いにほぼ独

立な感情を含むものである。

2 15種類の欠損データについて論文に掲載されていない。

3森山他(1999)では、445音声に対して、各日常感情語について、感情音声が平静音声に比べてどのよう な感情を含んでいると感じるかを評価する主観評価実験を行い、有意な評価後を選択する実験を行った。

(26)

18

表3-3 森山・斉藤・小沢(1999)感情語(アンケートの評価項目)

1. 怒り 2. 喜び 3. 嫌悪 4. 侮り 5. おかしい 6. 心配 7. 優しい 8. 安堵 9. 憤慨 10. 羞恥 11. 穏やか 12. 憧れ 13. 苛立ち 14. 不平 15. 切望 16. 気の毒な

17. 寛容 18. ほくそえむ 19. 失望 20. 叱責

21. 悲しい

22. 恐れ 23. 憎い 24. 軽蔑

25. 嬉しい

26. 皮肉

27. 無関心

28. 賞賛 29. 誇り 30. 愛 31. 嘆き 32. こび

33. 満足 34. 退屈

35. 苦しい

36. 期待 37. 幸福 38. 好き 39. 嫌い 40. いや 41. 落胆 42. 非難 43. 不安 44. 驚き 45. 慌て

46. あきれ

前川(1999)の研究は、日本人男性に6種類の感情を「パラ言語的意味」を込めて発話し

てもらい、その発話をもとにピッチ曲線と持続時間を測ったものである。まず、「そうです か」というテキストを男性1名に6種の「パラ言語的意味」をこめて発話した資料のピッチ と発話持続時間の変化の典型例を示した(図3-1参照)。

パラ言語的情報の存在が顕著に表れたのは以下のものである。

A感心、D落胆、S疑念の特徴は、①発話の冒頭と末尾の持続時間が大幅に延長される。

②発話冒頭に低ピッチが持続する区間が生じる。③S疑念では発話末の上昇に先だって低ピ ッチが持続する。④A感心とS疑念ではアクセント核の実現タイミングが遅れて後続モー ラ「デ」の時間領域に侵入する。⑤アクセント核による下降はA感心よりもS疑念のほう が急峻である。⑥S疑念やD落胆などのパラ言語的情報が指定された発話では、発話冒頭 に低ピッチ区間で母音波形の振幅が減少し周期に著しい不規則性が生じる「喉頭化」が観察 されることがあった。これは声質の変化もまたパラ言語的情報の伝達に関与していることが

(27)

19 示唆されている。

図3-1 パラ言語的情報をになった「そうですか」の

ピッチ形状と持続時間(図中の縦線はモーラ境界)

また前川(2005)は、「パラ言語情報は、話者が意図的に表出する情報でありながら文字に

は転写されない情報であり、話し言葉の本質に深く関係している」と述べている。

さらに前川(1996)(1999) (2006)の研究では、「パラ言語的情報は離散的なカテゴリーを 構成するが、その内部で、連続的な変化が可能なタイプの情報である(中略)パラ言語的情 報の影響は、ピッチ・持続時間(発話速度)・母音フォルマント周波数などに顕著に認めら れることを確認した。」と述べている。前川(1999)のでは、表3-1に示したように、藤 崎(1994)の研究を引用し音声情報を分類されている。

(28)

20

表3-1 藤崎による音声情報の分類

離散的なカテ ゴリーをなす

カテゴリー内 で連続的な変 化が観察され

るか

意図的に表出 可能

言語的情報 Yes No Yes 音韻・統語

・談話情報

パラ言語的情報 Yes Yes Yes 意図・心的態度 強調など

非言語的情報 No No No 性別・身体状態

・情動など

3.3.2 感情表現に関する研究

感情表現に関する研究については、エリクソン・昇地(2006)をとりあげる。

エリクソン・昇地(2006)は、男性と女性の感情音声の認識差について研究したもので、

5つの感情表現である「怒り・悲しみ・驚き・疑い・喜び」について、ピッチ曲線を測った

(図3-2参照)。

図3-2 エリクソン・昇地(2006)の「バナナ」のピッチ曲線

(29)

21

この研究は、日本語母語話者(男性10名、女性10名)と日本語をまったく知らない英 語を母語としているアメリカ人(男性11名、女性9名)・韓国語を母語としている韓国人

(男性3名、女性6名)を対象にしている。実験対象者は男女合わせて49名である。研究 方法としている実験協力者に刺激語句である「バナナ」4を5つの感情音声で聞いてもらい、

5つの感情音声をどのように聞き捉えているかを測ってみた。その結果は、男性より女性の ほうが5つの感情の認識が高かった。

国別ではアメリカ>韓国>日本の順であった。また、韓国人男女は共に怒りの感情に 100%認識していることが分かった。

しかし、この論文は、女性の音声のみを刺激語句として使っており、なた、実験協力者も 統制がとれていない。男性の音声の刺激語句を聞いた実験協力者はどのように感情音声を捉 えるか、また「バナナ」以外の刺激語句はどのような結果になるかが疑問である。

3.4. 研究概要 3.4.1. 感情語

本研究での感情語とは10種類(怒り・喜び・皮肉・恐れ・悲しい・驚き・媚・穏やか・

おかしい・疑い)の感情をいう。

3.4.2. 刺激語句

刺激語句としては先行研究である、エリクソン他(2006)で用いた「バナナ」、前川(2006)

で用いた「そうですか」、 森山他(1999)で用いた「早く」を利用した。先行研究で用いら れた3つの刺激語句は女性音声のみか男性音声のみで行っていた実験である。本稿では、男 女両方の音声を用いて実験を行った場合、先行研究とどのような差がみられるかを確認する。

さらに、先行研究で使用した3つの刺激語句に多様な使い方がある「すみません」を追加 して 4 つの言葉を刺激語句として日本語母語話者がどのように判断するかを把握するため の調査を行う。ただし本章では、男女音声の差5、及び「すみません」の意味の多様性につい ては扱わないことにする。

4エリクソン・昇地(2006)の研究の 刺激語である「バナナ」は英語も、韓国語も「バナナ」であり、感情 に関しては日本語の感情を含まれている。

5男女音声について第8章で扱っているので第9章を参照されたい。

(30)

22 3.4.3. 音声サンプル

音声サンプルは、4つの刺激語句「バナナ」「早く」「すみません」「そうですか」を男性と 女性の声優各1名に10種類の感情(怒り・喜び・皮肉・恐れ・悲しい・驚き・媚・穏やか・

おかしい・疑い)を込めて発話してもらい録音した。録音した音声数は計80 種類になる。

音声サンプルを録音する際、専門音声ディレクタ-・日本語母語話者2名が聞いて、もっ とも自然な感情表現になるように録音した。この80種類の音声サンプルを感情込めた音声 と呼ぶ。

3.4.4. 実験協力者

実験協力者は、東京と神奈川県に居住している大学生・大学院生で、男性5名、女性14 名で、合わせて19名である。

3.4.5. 実験方法

実験方法は用意した10種類の感情(怒り・喜び・皮肉・恐れ・悲しい・驚き・媚・穏や か・おかしい・疑い)を込めた刺激語句「バナナ・早く・すみません・そうですか」の音声 を3回ずつ流した。実験協力者にはアンケートシートに5段階評定尺度を用いて評価して 判断してもらった(参考資料1参照)。実験協力者には何回練習をさせて、やり方がわかっ た時点に本調査を始めた。

3.4.6. 分析方法

分析方法は以下の順で行う。

(1)得られたデータを平均値と標準偏差を単純集計し、その結果から 10種類の感情にど

のように認識しているかを検討する。

(2)探索的因子分析6を行い、因子を抽出する。まず、第一から得られた平均値を用いて、

6因子分析は多変量解析法の一つで、複数の変数の関係性をもとにした構造を探る際によく用いられる分析 方法である。因子分析の目的は、実際に測定されるものではなく、測定された変数間の相関関係をもとに導 き出される潜在的な変数を見つけることである。即ちある観測された変数(例えば質問項目への回答)がど

(31)

23

項目別得点をもとに因子分析を行い、10種類の感情項目についての要因を抽出すると ともに各要因の主要素を抽出する。

(3)確認的因子分析7を行う。探索的因子分析で得られえた因子が、確認的因子分析でも同

様の結果として現れるか確認することが目的である。具体的には、探索的因子分析で得 られた結果をもとに、各因子に10種類の感情項目を観測変数として確認的因子分析を 行う。

(4)共分散構造分析を用いて、因子と10種類の感情項目との因果関係を明らかにする。共

分散構造分析とは、まず、先行研究や実質的・科学的知見等に基づき、分析者自身が新 た仮説を立て、そこからさらに、予め関係があると思われる構成概念と観測変数との関 係を指定してモデルを作成し、そのモデルとデータと適合度を統計的に検証する分析方 法である(豊田2007)。

共分散構造分析では、変数間の共分散(相関)をもとにして、構成概念(潜在的因子)や 観測変数間の関係性(構造)を分析する。今まで行ってきた他の因子分析では、共分散や相 関という言葉は表に出ていないが、やはり変数間の共分散(相関)をもとに潜在的な因子を 探る手法なので、その点では共分散構造分析であるといえる。異なる点は、共分散構造分析 においては、前述の通り、因子の間にどのような関係があり、その因子が観測変数にどう関 係しているのかといった「構造」を予め決めておいて分析することである(松尾・中村2002、

朝野・鈴木・小島2005)。

松尾・中村(2002)によると、共分散構造分析では必ず構造方程式を作る必要があり、そ の構造方程式を作るためには潜在的な因子にどのようなものがあるのかを探索的に調べな くてはならないという。換言すると、探索的因子分析を続けているうちに、そこから得られ た知見をもとに仮説を立てることが可能であるということである。また、事前に仮説が存在 せず、探索的に得られた多数の変数がある場合には、そのデータを観察し、データに対する

のような潜在的な因子から影響を受けているかを探る手法である。(小塩2012)探索因子分析は、因子数お よび因子と観測変数との関係について特別の仮説を立てずに探索的に因子を探るタイプである。(山際・服部 2016)

7確認的因子分析は検証的因子分析とも呼ばれ、因子と観測変数との関係に関する研究仮説の敵切性をデー タから確認するタイプである。

(32)

24

理解を整理した上で、探索的モデリング8を進めることができると考えられる。

なお、これらの分析にはすべてSPSS for Windows 22とAmos22を用いた。

3.5. 分析結果

3.5.1. 単純集計の結果

今回筆者が用意した感情を込めた音声は80種である(刺激語句4種類・感情10種類・

男女音声)、その80種の感情音声についてアンケート調査を行った。

実験協力者に1つの音声を3回ずつ聞いてもらい、アンケートシートに感じた感情につ いて5段階尺度で評価してもらった。1つの音声には10種類の感情を評価するようにした。

10 種類のすべての感情についてどのように感じたか、即ち聞き手としての認識調査を行っ た。

実験協力者から得られた5段階評定尺度のアンケート結果を基に単純集計をした。表3-

4は日本語母語話者の平均値と標準偏差であり、各男性音声と女性音声に4つの刺激語句を 表す。

今回の実験ではこちらが意図した感情表現への評価で平均値2以下としたケースは、表3

-4からもわかるように、女性音声の中で、刺激語句「早く」の<おかしい>という感情項 目の1か所のみみられた。また、平均値が3以上になった項目は多くみられた。

8共分散構造分析で一般的に用いられる確認的モデリング(モデルの配置も因果関係も既知)とは少し異な り、データからモデルを探索し、有益な知見を得ようとする方法である(朝野・鈴木・小島2005)

(33)

25

表3-4 評価項目別平均得点

刺激 語句

感情語

男性音声 女性音声 刺激 語句

感情語

男性音声 女性音声

M SD M SD M SD M SD

バ ナ ナ

怒り 3.16 1.3 3.96 1.27

す み ま せ ん

怒り 3.05 1.22 3.26 0.81 喜び 3.83 0.38 3.8 0.31 喜び 2.37 1.39 3.53 1.34 皮肉 2.79 1.69 2.56 1.32 皮肉 2.68 1.64 3.83 1.33

恐れ 3.26 1.14 3.16 1.72 恐れ 3.32 1 3.21 1.32

悲しい 3.32 1.6 3.79 1.35 悲しい 3.37 1.12 3.37 0.96

驚き 3.21 1.23 3.52 0.71 驚き 3.58 1.34 3 1.16

媚 2.83 1.71 2.72 1.62 媚 3.21 1.54 3.37 1.53

穏やか 2.89 1.76 3.16 1.54 穏やか 2.21 1.51 3.79 1.38 おかしい 3.32 1.16 3.28 1.6 おかしい 3 1.31 3.37 1.64 疑い 3.89 1.34 3.63 1.33 疑い 3.05 1.33 3.95 1.54

早 く

怒り 3.53 0.96 3.83 0.38

そ う で す か

怒り 3.26 1.85 3.32 1.34 喜び 3.79 1.38 3.32 1.32 喜び 3.37 1.01 3.68 0.58 皮肉 3.21 1.36 2.21 1.27 皮肉 2.05 1.08 3.37 1.3 恐れ 3.32 1.26 3.37 1.26 恐れ 3.37 1.4 3.89 1.15 悲しい 3.21 1.32 3.32 1.12 悲しい 3.73 0.56 3.37 1.07 驚き 2.37 1.34 3.37 1.32 驚き 3.21 1.23 3.37 1.07

媚 2.58 1.84 3.37 1.81 媚 2.05 1.54 3.58 1.63

穏やか 2.53 1.58 2.83 1.68 穏やか 3.11 1.52 3 1.67

おかしい 2.73 1.7 1.37 0.96 おかしい 3.32 3.25 3.53 1.71

疑い 3.32 1.17 3.32 1.16 疑い 3 1.31 3.11 1.29

(網掛けは平均値2以下・M:平均値・SD:標準偏差)

(34)

26 3.5.2. 探索的因子分析

刺激語句「バナナ・早く・すみません・そうですか」に「怒り・喜び・皮肉・恐れ・悲し い・驚き・媚・穏やか・おかしい・疑い」の感情を込めた10種類の感情音声を日本語母語 話者が聞いて認識する時にどのように判断するか、ちなみに、日本語母語話者が潜在的にパ ラ言語的情報についてどのような構造を持っているかを探索した。

尺度の作成にあたり、10種類の感情音声に想定した計80項目について19名の日本語母 語話者の評価値を用いて探索的因子分析を行った。その際、重みをつけない最小二乗法9で 因子回転は Kaiser の正規化を伴うバリマックス回転10により因子分析を行った。固有値

111.0の因子は3因子であり、累積説明率12は35.6%であったので、3因子を採用13すること とした。回転後の因子パターンを表3-5に示した。

各因子に高い負荷量14を示す項目群の内容から、因子の意味について検討する。

第1因子は<恐れ>(.951)、<驚き>(.472)、<悲しい>(.472)の感情項目からネガテ

9 重み付けのない最小二乗法(Unweighted Least-Squares Method)。因子抽出法の 1つ観測相関行列と 再生相関行列の差の平方和を最小化する。

http://www.ibm.com/support/knowledgecenter/ja/SSLVMB_22.0.0/com.ibm.spss.statistics.help/spss/ba se/idh_fact_ext.htm)

10直交回転法の 1 つ。各因子の負荷量が高い変数の個数を最小化します。この方法では、因子の解釈が単 純化される。直交回転のメリットは因子間相関が0なので、因子負荷に大きさだけに注目して解釈を行えば よいことである。因子をイメージしやすことも多い。(山際・服部2016)

11固有値は、各因子 (成分) が入力フィールドのセットにおける分散を要約する能力を示す。相関行列を使 用する場合は、モデルでは指定値よりも大きな固有値を持つすべての因子 (成分) が保持される。

(http://www.ibm.com/support/knowledgecenter/ja/SS3RA7_16.0.0/com.ibm.spss.modeler.help/clementin e/factor_experttab.htm)

12因子によって観測変数の分散を説明できる割合である。(山際・服部2016)

13抽出した因子の数とその根拠は、SPSSの出力を用いる場合、相関係数行列の固有値、累積説明率、スク リープロットなどを参考にして因子数を判断する。

14因子の解釈には、観測変数が共通因子から受ける影響の強さを表す因子負荷量を使用する。解釈に使用す る因子負荷量は快の求め方、具体的には因子の回転と呼ばれる方法に応じて表示されるラベルが異なる。(山

際・服部2016)

(35)

27

ィブな感情を受容していることから第1因子に『ネガティブ受容』と名付けた。第2因子 は、<喜び>.735)、<媚>(.575)<おかしい>(.454)、<穏やか>(.293)の感情項目 から第2因子に『ポジティブ』と名付けた。第3因子は、<皮肉>(.666)、<疑い>(.551)、

<怒り>(.303)の感情項目から『不快』と名付けた。

表3-5 因子分析結果-日本語母語話者

因子

1 2 3 共通性15 M SD

【ネガティブ受容】

恐れ .951 -.132 .005 .921 1.87 1.37

驚き .472 .070 .167 .256 1.73 1.24

悲しい .472 -.140 -.082 .249 1.66 1.26

【ポジティブ】

喜び .052 .735 -.168 .572 1.78 1.33

媚 -.184 .575 -.044 .366 1.81 1.33

おかしい -.067 .454 -.108 .222 1.84 1.32

穏やか -.003 .293 .091 .094 1.54 1.05

【不快】

皮肉 -.031 .062 .666 .448 1.72 1.21

疑い -.051 -.113 .551 .318 1.80 1.30

怒り .141 -.048 .303 .114 1.69 1.24

15共通性(communality)は、各変数が共通因子で十分に説明されているかどうか示す。つまり抽出された 因子によってどれくらい説明されているかを示している。因子抽出後を読む。(山際・服部2016)

(36)

28 3.5.3. 確認的因子分析

従来の探索的因子分析とは違って、確認的因子分析(「検証的因子分析」ともいう)は、

因子・変数間の構造の単純化を目指すため、絶対値の大きな因子負荷と0に近い因子負荷と の差異を明確化し、かつ同じ変数が複数の因子にまたがって大きな因負荷を持たない構造に する方法である。すなわち、分析者が設定した仮設のもとで分析をするという点で探索的因 子分析とは大きな違いがある(山際・服部2016)。

前節の探索的因子分析(表3-5)で得られた3つの因子の項目をもとに、潜在変数間の 相関を仮定した確認的因子分析を行い、測定モデルの適合を確認する。分析はAMOS 22を 用いて行った。3つの因子からそれぞれ該当する項目が影響を受け、すべての因子間に共分 散を仮定したモデルについて最尤法16による共分散構造分析を行った。

その結果、カイ二乗17は690.415、適合度指標(GFI18:Goodness of Fit Index)は.918、

修正適合度指標(AGFI19:Adjusted Goodeness of Fit Index)は.892であり、比較適合度 指標(CFI:Comparative Fit Index)は.684 であり、平均二乗誤差平方根(RMSEA20:Root

Mean Square Error Of Approximaiton)は.101 であり、情報量基準(AIC21:Akaike`s

Information Criterion)は716.415であった。カイ二乗値が有意であり、CFIが0.9より小

16因子抽出法の1つ。サンプルが多変量正規分布から抽出されている場合に、観測された相関行列を生成し た可能性が最も高いパラメータ推定値を生成する。相関には変数の一意性の逆数で重みを付け、反復アルゴ リズムを使用する。

17 χ乗検定は、因果モデルと測定変数の分散共分散が同じかどうかの検定である。帰無仮説として「構成さ れたモデルは正しい」という設定を行うのでχ値が対応する自由度のもとで、一定の有意水準の地よりも小 さくなければ、モデルは棄却されないという意味で採択される(有意でなければ採択される)

18通常0から1までの値をとり、モデルの仮説力の目安となる。GFIが1に近いほど、説明力のあるモデル といえる(GFIが高くてもよいモデルというわけではないので注意)

19値が1に近いほどデータへの当てはまりがよい。GFI≧AGFI」であり、GFIに比べてAGFIが著しく 低下するモデルはあまり好ましくない。

20モデルの分布と真の分布との乖離を1自由度あたりの量として表現した指標。また一般的に、0.05以上で あれば当てはまりがよく、0.1以上であれば当てはまりが悪いと判断する。(小塩2012)

21複数のモデルを比較する際に、モデルの相対的な良さを評価するための指標となる。また複数のモデルの うちどれがよいかを選択する際には、AICが最も低いモデルを選択する。

(37)

29

さく、RMSEAは0.1より少し大きかったが、その他の適合度では当てはまりがよい値であ

った。このことからモデルが十分にデータを説明していると判断する。

測定モデルを描いたパス図を図3-1に示す。図3-5の単方向の矢印の数値は標準化さ れた因果関係を表し22、双方向の矢印の数値は相関係数を表している。

以下に尺度として用いる10項目について改めて示す。まず、<恐れ><悲しい><驚き

>で構成される因子は『ネガティブ受容』であり、<喜び><媚><おかしい><穏やか>

で構成される因子は『ポジティブ』である。次に<皮肉><疑い><怒り>で構成される因 子は『不快』である。

パスが有意となったのは、『ネガティブ受容』から<恐れ>(.71,P<.001)<悲しい>(.59,P

<.001)<驚き>(.54,P<.001)である。『ポジティブ』から<喜び>(.66,P<.001)<媚

>(.63,P<.001)<おかしい>(.59,P<.001)<穏やか>(.28,P<.001)である。『不快』

から<皮肉>(.57,P<.001)<疑い>(.62,P<.001)<怒り>(.43,P<.001)である。す べてのパスが有意な結果となった。

図3-3 共分散構造分析の結果

図3-3を解釈すると、『ネガティブ受容』は<恐れ><悲しい><驚き>の3つの感情 項目の中で、特に<恐れ>に対して影響を与えていることがわかる。また、『ポジティブ』

22因果関係及び相関係数(標準化解の場合)・共分散(非標準化解の場合)等を「パス係数」ともいう。な お、本稿では因子の関係の強さを調べるため、またデータそのものに絶対的な単位が存在しないため、標準 化解釈を行うことにした。

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