光学的手法を用いた電子パッケージの微視的計測
内野正和
*1森田康之
*2東藤貢
*2新川和夫
*2Particle Measurements of Electronics Packages using Optical Methods
Masakazu Uchino, Kazuyuki Morita, Mitsugu Todo and Kazuo Arakawa
スペックル干渉法,並びにモアレ干渉法を用いてICチップの動的な温度変化過程(熱膨張)の変形計測を行い,
電子パッケージの信頼性評価のための実計測方法の検討を行った。スペックル干渉法の干渉縞はノイズが多いのに対 し,モアレ干渉法の干渉縞は非常に鮮明な干渉縞が得られた。しかしながら,スペックル干渉法は測定対象物が鏡面 以外のほとんどのものが測定対象であるのに対し,モアレ干渉法は格子を貼り付けるため,高度な技術が必要となる。
また,スペックル干渉法では干渉縞が2画像間の変位分布として得られるため,干渉縞が密になり干渉縞の判別が難 しくなる前に基準となる初期画像を更新することで変形を続けて計測することが可能であるが,モアレ干渉法では密 になれば計測はできない。このようにそれぞれの方法で利点,欠点があり,それぞれを相補的に利用することで非常 に高精度な計測が可能であると考えられる。計測例として駆動させたICチップの水平方向の面内変位分布を両計測 法を用いて計測した結果を示す。
1 はじめに
IT 新技術として電子機器の高性能・高機能化(複合 化・融合化) ,小型携帯化(高密度化)の動きが急激に進 行しており,これを支えるキーテクノロジーは超高密度 実装技術である。現在の技術開発は,複数部品の搭載に あたって従来の平面的に配置する二次元実装から部品を 積み重ねた三次元実装に移行し,部品間の配線を短縮,
実装面積効率を高めシステムの高密度化を図っている。
しかしながら,その実現にはパッケージ材料の小型化や 構造,複雑化する組立技術,異なったデバイスの混在,
発熱対策等の課題が上げられ,その信頼性の評価技術が 非常に重要となっている。本研究では光学的手法を用い て電子パッケージの微視的計測を行い,電子デバイス信 頼性評価のための実計測法の確立を目指す。
2 計測方法
レーザ光を粗面に照射した場合,レーザ光は粗面で散 乱・反射し,レンズ等を用いて結像させるとレーザのコ ヒーレンシによってランダムな位相の光が干渉し,ぎら ぎらと輝く斑点模様が観察される。この干渉パターンは スペックルパターンと呼ばれる。スペックル干渉法は,
測定面上に2つ以上の光路を通ったレーザ光を重ね合わ せた時に生じるスペックパターンを利用して変位を求め る
1,2)。図−1 に面内変位の光学系を示す。この光学系は
測定面の法線に対して対称な2方向からレーザ光を照射 し,法線方向から観察する。そして測定面が面内方向に u だけ変形したとすると,変形前後で二つの光路を通る光 の位相差 ∆φ は次式で表される。
λ θ φ 4 π
usin
=
∆
(1) ここで, λ はレーザの波長で, θ は照射光が測定面の法 線となす角である。また,変形前後のスペックルパター ンの差の絶対値 I を取ると次式のようになる。
⎟⎠
⎜ ⎞
⎝
⎟ ⎛ ∆
⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛ +∆
=
sin 2
sin 2
4
a1a2φ ϕ φ
I
(2)
これは位相差 ∆φ が π の奇数倍 ((2n+1)π) の場合は強度 が最も大きくなり,偶数倍 (2πn) の場合は強度がセロ
Object surface
wavelength λ
Z X
CCD
θ Lens
wavelength λ
Displacement
u
θ
* 1 機械電子研究所
* 2 九州大学
図−1 スペックル干渉法を用いた面内変位計測
系の概略図
となることを示している。これによりスペックルの干渉 縞が形成される。この原理を利用し,得られる縞分布と 式(1)よりレーザ照射方向の面内変位分布を求めること ができる。
次にモアレ干渉法
3,4)による面内変位計測の概略図を 図−2 に示す。試料表面に空間周波数fsの光回折格子を 転写し,平行にしたレーザ光を次式の角度αを満足する ように2方向から照射する。
sin α
=fsλ (3)
ここで,λはレーザの波長である。このとき一次反射回 折 Ad,Bd は試験片表面に対して垂直に発生するため干渉 が起こらず干渉縞は生じない。しかし(b)のように試験片 が変形すると,回折格子の空間周波数が変化し, Ad,Bd の回折角も変化する。そのため互いに平行ではなくなり 干渉縞が発生する。このときの変位量 u は次式で表され る。
fs
u N
=
2 (4)
ここで N は縞次数であり,この縞次数や縞次数間の位相 を評価することで変位量を求めることができる。
3 計測結果
ICチップ(HD74SL04N:19x5 mm
2)を基板に装着し,電 流を流し駆動させたときの熱膨張をスペックル干渉法,
モアレ干渉法を用いて計測した結果を図−3 に示す。S-*
はスペックル干渉計測結果でM-* はモアレ干渉計測結果 で,10,30 の意味はそれぞれ導通後,約 10 秒,30 秒後の 変形の干渉縞を表している。スペックル干渉法の計測結 果には画像処理を行い,縞にコントラストをつけている。
今回計測に用いた光学系は照射角が 47.5 度で,式(1)よ り干渉縞1本に対応する変位量は 429nmと見積もられる。
また,モアレ干渉法では式(4)より干渉縞1本に対応する 変位量は 417nmと見積もられる。スペックル干渉法によ る干渉縞は変形前と変形後の2枚の画像を利用して得ら れるが,モアレ干渉法では試料表面の直接観察で,変形 に応じた干渉縞が得られる。スペックル干渉法による干 渉縞は得られた画像にはノイズが多く,画像処理を行い,
コントラストを上げているのに対し,モアレ干渉法の干 渉縞は非常に鮮明な干渉縞が得られている。これは計測 に用いたカメラ解像度の違いも一つの原因であるが,ス ペックルという不規則な散乱光の干渉を利用している計 測原理の違いによるところが大きい。しかしながら,ス ペックル干渉法は測定対象物が鏡面以外のほとんどのも のが測定対象となり,表面処理が可能であれば,白や銀 色のスプレーで色づけすることで鏡面の計測も可能であ り,モアレ干渉法のように格子を貼り付ける手間のかか る工程が不要である。また,スペックル干渉法では干渉 縞が2画像間の変位分布として得られるため,干渉縞が 密になり干渉縞の判別が難しくなる前に基準となる初期 画像を更新することで変形を続けて計測することが可能 である。初期画像を変更した例を図−4 に示す。図−4 は図−3 S-30 を 0 秒から 10 秒(図−3 S-10)と 10 秒か ら 30 秒の2つに分割している。このようにスペックル干 渉法では縞が観察しにくい場合(図−3 S-30)でも初期 画像を変更することで解析することが可能となる。
(a) 変形前
4 まとめ
スペックル干渉法,並びにモアレ干渉法を用いて IC チップの動的な温度変化過程(熱膨張)の変形計測を行 い,電子パッケージの信頼性評価のための実計測方法の 検討を行った。それぞれの方法で利点,欠点があり,そ れぞれを相補的に利用することで非常に高精度な計測が 可能であると考えられる。今後は当所で研究しているス 図−2 モアレ干渉法の概略図
(b) 変形後
S-10 M-10
S-30
M-30
図−3 スペックル干渉法とモアレ干渉法の干渉縞 . S: スペックル干渉法 M: モアレ干渉法
(a) 0-30 s
(b-1) 0-10 s (b-2) 10-30 s
図−4 スペックル干渉法による干渉縞の分割図 (a) 通電 30 秒後の変位分布, (b-1) 通電 10 秒後の変
位分布, (b-2) 通電 10 秒から 30 秒後の変位分布
ペックル干渉法に関して動的位相解析法の検討を行う。
具体的には計測した画像の独立した1画素に着目し,時 系列に画素毎の強度変化を評価する手法である。来年度 以降,本解析手法の研究を進める。
5 参考文献
1) Pramod, K. R., Digital Speckle Pattern Interferometry and Related Techniques, John Wiley & Sons, Ltd Press, Chichester (2001).
2) Uchino, M., Two-Directional Simultaneous Measurement System of the Surface Deformation using Speckle Interferometry Method, Proc. of the APCFS & ATEM’01, (2001), 863-839.
3) Post, D., Han, B., and Ifju, P., High Sensitivity Moiré, Springer-Verlag, New York, (1994)
4)