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偏光の実験

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(1)

偏光の実験

2000/10/1

概 要

物理学実験II (光学・分光学)で行っている偏光の実験を行うにあたって必要な予備知識を まとめている。実験器具に関する一般的常識的知識と線形代数の初歩的知識はあらかじめ必要で ある。

目 次

1 道具立て 1

1.1

ホルダー類

. . . . 2

1.2

半導体レーザー

. . . . 2

1.3

検光子

. . . . 2

1.4

光センサー

. . . . 3

1.5

ガラス板

. . . . 3

1.6

ミラー

. . . . 4

1.7 1/4

波長板

. . . . 4

2 複素ベクトルによる偏光の計算 4 2.1

単振動の複素数表現

. . . . 4

2.2

光の電場の複素数表現

. . . . 6

2.3

光学素子の動作

. . . . 7

2.3.1

ポラライザー

. . . . 7

2.3.2

波長板

. . . . 8

2.3.3

反射鏡

. . . . 9

2.3.4

旋光性媒質(円偏光複屈折性)

. . . . 9

図 目 次

1

光センサーの回路とその応答特性

. . . . 3

2

複素平面

. . . . 5

3

楕円偏光

. . . . 8

1 道具立て

偏光の実験を行うための道具立てと各器具の特性を説明する。

(2)

1.1 ホルダー類

マグネットベースは磁石によって鉄製の台に吸着するが、レバーを動かすことによって着脱がで きるようになっている。レバーが

ON

の位置では強力に吸着するので、その状態で台から引きは がそうとすることも台上に置こうとすることも危険である。

ロッドスタンドは正確にはめ合わされた棒とパイプである。止めネジをきつく締めすぎてロッド に傷が付くと動かなくなる。ネジをゆるめる際、重力によって落下しそうな物には手を添えるなど の注意が必要。

回転ホルダーはネジによって回転をロックすることができるようになっているが、ロックしたま ま無理に回そうとすると摺動部が傷ついて使用不能になるので注意すること。角度目盛は2つの状 態の間の相対的な角度を測るのに役立つだけであるので、ゼロ点補正のような処理が一般には必要 になる。角度目盛に付いていることがあるバーニヤは

10

分割ではないので間違えないように。

1.2 半導体レーザー

可視レーザーダイオードをレンズや駆動回路と組み合わせ、回転ホルダーに取り付けて偏光の向 きを変えることができるようにしてある。半導体レーザーの出力光は直線偏光に近いが、より純粋 な偏光を得るためポラロイド偏光板がいっしょに取り付けてある。偏光の向きはポラロイド偏光板 の長辺の向きに等しいが、回転ホルダーの目盛りの0の向きが水 平であるとは限らない。水平方 向を見つけるためには、後述のようにガラス 板での反射率が偏光の向きによって異なることを利 用することができる。

出力光の強さは数ミリワット以下であり、レーザービームが皮膚に当たっても熱さは感じない が、直接目に入ると重大なダメージを及ぼすことも考えられるので注意。

使い終わったら電源を切るのを忘れないこと。 電池を電源にしている場合は、電圧が

5V

の上

2.5%以内に入るように調節してある。 その範囲を外れるのは電池が消耗していることを示す。

レーザー光の波長は

635nm

でヘリウムネオンレーザーと殆ど同じである。

1.3 検光子

グラントムソン偏光プリズムまたはポラロイド偏光板を回転ホルダーに取り付けたもの。グラン トムソン偏光プリズムはある向きの直線偏光は表面での反射などによる小さなロスを除いてそのま ま通すが、それと直交する向きの直線偏光は横にはねてしまってほとんど通さない。このときいろ いろな原因によって生じる漏れ光は

1/105

程度しかない。(この値を消光比という。)ポラロイド 偏光板はある向きの直線偏光を吸収して

1/1000

以下に弱めてしまうが、それと直交する向きの直 線偏光はほぼそのまま通す。

グラントムソン偏光プリズムはカルサイト(天然の弗化カルシウムの結晶)で作られていてたい へん高価である。消光比が高いため微妙な傷や汚れがすぐ影響を与える。ポラロイド偏光板は一方 向に引っ張って作った高分子フィルムで、非常に傷が付き易く水や溶剤に弱い。いずれの場合も手 などで表面に触れることは厳禁である。使用しないときはカバーをかけておく。

回転ホルダーの目盛りの読み取りがゼロのときに透過する偏光の向き(検光子の向きともいう)

はほぼ水平であるが数度のずれはある。普通、直線偏光を通したとき透過光の強さが最小になる位

置を基準として角度を測る。この位置では透過光の強さは殆どゼロなので、感度の高い光検出装置

を使うだけで角度の変化が容易に検出できる。 感度の高い光検出装置としては部屋を暗くした状

(3)

態での目視が優れている。

1.4 光センサー

resister silicon photodiode battery

(1.5V)

voltmeter +

- light

0 0.5 1 1.5 2 2.5

0 2 4 6 8 10

1:

光センサーの回路とその応答特性

光の強さを測る光センサーにはシリコンフォトダイオードを使う。シリコンフォトダイオードの 光電流は入射光強度に比例しているので光電流を測れば光強度がわかる。フォトダイオードの感度 は波長によって異なるが、635nm では約

0.43A/W

である。

光電流を抵抗器に流してその電圧降下を電圧計で測るようにしている

(図1)。ありきたりのもの

では電流計よりも電圧計の方が高精度が得やすいからである。この場合、図中のグラフのように抵 抗によって感度が異なる。電圧降下が約

1.9V

を越えると飽和が起きるのは、ダイオードに順方向 電流が光電流と逆方向に流れるからである。したがって、光が強い場合は飽和を防ぐために抵抗を 小さくする必要がある。逆に光が弱くて電圧計の感度が不足し相対誤差が増える場合は抵抗を大き くする。抵抗器には抵抗値と精度がカラーコードで表示してあるので、それを読むにはカラーコー ド表が必要である。

フォトダイオードの中は窓を通して見ることができる。 その中の四角い黒い部分がフォトダイ オード素子の本体で、レーザー光の全パワーを測るために光ビームの全体が常にこの部分の中央に あたるようにする。 レーザーと光センサーをむやみに離すとビームがセンサーからそれ易いので 注意。また、光ビームが広がりすぎていると全パワーが測れない。 その場合はレンズで調整して ビームを絞る。

光センサーは電灯や窓などからの外光にも影響を受けるので、その影響を除く工夫も必要であ る。 たとえば、測定したい光を遮った時の読み取りをゼロ点とみなす。 また、測定時には外光を 減らすために穴の開いた蓋を付けると良い。

1.5 ガラス板

厚さ数

mm

の透明度と平面度の良いガラス板で、表面が鉛直になるようにホルダーに取り付け てある。 指で触るなどして表面を汚さないように注意。少しでも汚れるとレーザー光が乱反射し て表面が光る。 しかし、傷が付きやすいので汚れても紙や布で拭いたりしてはいけない。 汚れが ひどくなれば超音波洗浄機やレンズクリーナーを使って汚れを取る。

光はガラス板の表と裏の両面で反射しどちらの反射率も同じである。 反射率は入射角と偏光の

(4)

向きおよびガラスの屈折率に依存する。屈折率が大きいほど反射率が大きい。また、偏光の向きが 入射面に垂直な光の方が平行な光よりも反射率が大きい。 入射面とはガラス表面の法線と入射光 線とを含む平面であり、入射角とはガラス表面の法線と入射光線との間の角である。 入射角がゼ ロの場合は入射光線も反射光線もガラス表面に垂直である。

入射面に平行な偏光を持つ入射光に対しては反射率がゼロになるような入射角がある。それをブ リュースター角という。 ブリュースター角は屈折率に依存する。これを利用して屈折率を測定す ることができる。 反射光が消えるには入射角がブリュースター角になっていることと入射光の偏 光が入射面に平行であることの両方の条件が成り立っていなければならない。 これは2つのパラ メーターを変えて最適条件をさがす例である。 この現象を利用すれば、直線偏光の偏光方向はガ ラス板

1

枚でわかる。 また、任意の偏光を持った光をブリュースター角で入射させると、反射光 は入射面に垂直な偏光方向をもった直線偏光になる。

1.6 ミラー

アルミニウムを蒸着した上に保護皮膜として弗化マグネシウムを蒸着して表面で光を反射するよ うにした表面鏡を使う。裏側にメッキを施して作った裏面鏡は表面での反射で像が2重になるので 使わない。ミラーは「鏡像変換」を行うが、入射角が0度に近いときには偏光に関してもそれが現 れる。たとえば、右回り円偏光は左回り円偏光になり左回り円偏光は右回り円偏光になる。(斜め 入射の場合にはアルミニウム表面でもっと複雑な現象が起こる。)

1.7 1/4 波長板

波長板にはプラスチック製のものや水晶を研磨して作ったものや雲母

(マイカ)

という鉱物でで きたものが使われている。波長板には面内で直交する2つの軸があり、この2軸の方向の偏光成分 の間に位相差を作る。

1/4

波長板ではこの位相差は

1/4

波長であるが多少はずれがある。実験結 果からこのずれの大きさを推定することもできる。

理想的な

1/4

波長板に適当な向きの直線偏光を通すと円偏光になる。それと直交する向きの直 線偏光なら逆回りの円偏光になる。反対に、円偏光を通すと直線偏光になるが、円偏光の回る向き によって直線偏光の向きが異なる。

直線偏光を波長板に通すとき、偏光の向きと波長板の1つの軸の向きとが一致していれば出てき た光はもとと同じ向きの直線偏光になるが、向きが少しずれていれば楕円偏光になる。これを利用 して波長板の軸の向きを決めることができる。実際には、波長板を入れない状態で検光子をレー ザー光の偏光の向きと直交させておき、波長板を入れて検光子を通る光の強さが最小になるよう に波長板の向きを調整する。これでレーザー光の偏光の向きと波長板の1つの軸の向きとが一致 する。

2 複素ベクトルによる偏光の計算

2.1 単振動の複素数表現

単振動の変位は振幅

A

と位相

φ

Acos(ωt+φ)

とあらわされる。複素数の実部を取り出す関

<

を使うと

(5)

Acos(ωt+φ) =<(Aexp(i(ωt+φ))) =<(exp(iωt)Aexp(iφ))

が成り立つ。この中の

Aexp(iφ)

は大きさ

A、偏角φ

の複素数であり「複素振幅」という。 これ を複素平面の中で示すと図

2

のようになる。 振動数が決まっていれば単振動と複素振幅とは一対 一に対応する。上の式でわかるように、複素振幅から実空間での振動の式を得るには複素振幅に

exp(iωt)

を掛けて実部を取るだけでよい。

複素振幅

a

であらわされる単振動と複素振幅

b

であらわされる単振動を足し合わせると

<(exp(iωt)a) +<(exp(iωt)b)

となるが、これは複素振幅

a+b

であらわされる単振動である

<(exp(iωt)(a+b))

と等しい。 したがって、単振動の和の複素振幅はもとの振動の複素振幅の和を計算すれば得られ る。 差についても同様である。 また、

k

を実数とすると

k<(exp(iωt)a) =<(exp(iωt)ka)

となるから、 単振動の振幅を定数倍にして得られる単振動の複素振幅はもとの振動の 複素振幅を 定数倍すれば 得られる。単振動

Acos(ωt+φ)

の位相を

α

だけ進めると

Acos(ωt+φ+α)

となる が、これは

Acos(ωt+φ+α) =<(exp(iωt)Aexp(iφ) exp(iα))

でありもとの振動の複素振幅

Aexp(iωt)

exp(iα)

を掛けたものが新しい振動の複素振幅になっ ている。

Aexp(iφ) exp(iα) =Aexp(i(φ+α))

であるから、単振動の位相と複素振幅の偏角の関係が保たれていることがわかる。

単振動のエネルギーは変位の二乗の時間平均に比例する。 時間平均を

h,i

であらわしこれを計 算すると

Acos(ωt+φ)¢2E

=

¿A2

2 +A2cos(2ωt+ 2φ) 2

À

=A2 2 .

φ

Aexp A

2:

複素平面

(6)

すなわち 単振動の変位の二乗の時間平均は複素振幅の大きさの二乗の半分である。また、二乗平 均の平方根を「実効値」というが、単振動ではこれは振幅の

2

分の

1、A/

2

に等しいことがわ かる。

最後に、同じ周波数の2つの単振動の積の時間平均をそれらの複素振幅

a = Aexp(iα)、b = Bexp(iβ)

であらわすと、

D

Acos(ωt+α)Bcos(ωt+β)E

= AB

2 cos(α−β) = 1

2<(ab) = 1 2<ab)

となる。 これは複素振幅のベクトルとしてのスカラー積の半分である。 振幅の積と位相差

α−β

によって変わる。また、各単振動の実効値の積に「力積」cos(α

−β)

を掛ければ得られる。

2.2 光の電場の複素数表現

一方向に進む平面波の単色光を考える。レーザービームは近似的に一方向に進む平面波の単色光 とみなすことができる。ただし、真空中ないし等方性媒質中で考える。 電場はベクトル量である が各成分は単振動と同様に複素数であらわすことができる。右手系の

X-Y-Z

直交座標系を

Z

軸が 光の進行方向に向くように取ると電場ベクトルには

X

成分と

Y

成分だけしか無く一般に次のよう になる。

µExcos(ωt−kz+φx) Eycos(ωt−kz+φy)

=<

µ

exp(iωtikz)

µExexp(iφx) Eyexp(iφy)

¶¶

ここで

k

は 波長の逆数の

倍で空間角周波数ともいう。空間周波数

k/2π

の次元は長さの逆数で あり、単位としては

cm1

がよく使われる。 この式の決ま りきっている部分を省略して

µExexp(iφx) Eyexp(iφy)

の部分だけを使って電場をあらわせばよい。これは複素振幅ベクトルである。足したり引いたり定 数倍したり位相をずらすのはこの複素振幅ベクトルを使って行えばよいことになる。

直線偏光は

X

成分と

Y

成分の位相が同じである。X 軸から右回り

(Y

軸の方向) に

α

だけ傾い た向きで電場が振動している直線偏光は次のようにあらわされる。

E µcosα

sinα

ここでは

E

は振幅と位相を含むスカラーの複素振幅である。 ベクトルの部分は規格化されている

(つまり成分の大きさの二乗の和が1になっている)

ので、電場の大きさの二乗平均は

E

の大きさ

の二乗の半分である。 この規格化されたベクトルの部分を偏光ベクトルと呼ぶ。 全体に大きさが 1の複素数をかけても、

X

成分と

Y

成分の相対位相も大きさも変わらないから、 偏光の向 きに も振幅にも影響しないことに注意してほしい。 したがって偏光ベクトルの両方の成分に

-1

i

(1 + i)/

2

を掛けても同じ偏光をあらわす。

円偏光は

X

成分と

Y

成分の振幅が同じで位相が

90

度異なっている。

exp(iπ/2) = i, exp(iπ/2) =

i

なので、位相のずれの符号によって次の

2

通りの円偏光がある。

E+=E µ1/

2 i/

2

, E =E

µi/ 2 1/

2

偏光ベクトルを規格化するために、

2

で割ってある。光の進行方向に対して前方から見て、 一

定の場所で時間とともに電場ベクトルが時計回りに回転するのを「右回り」、反時計回りに回転す

(7)

るのを「左回り」と定義すると、上の

E+

は右回り円偏光、E

は左回り円偏光をあらわす。X 軸 と

Y

軸を回転させて座標軸を取り直してみるとそれが確かめられる。たとえば、座標軸を右回り に

α

だけ回転すると

E+

のどちらの成分にも

exp(iα)

がかかる。これは座標軸を右に回転すると 全体の位相が遅れて見えるということであるから、 確かに右回りに現象が進行していることがわ かる。左回り円偏光では事情がちょうど逆になる。

右回り円偏光の規格化された偏光ベクトルを

e+=

µ1/ 2 i/

2

,

左回り円偏光の規格化された偏光ベクトルを

e=

µi/ 2 1/

2

と書く。スカラー積を計算してみればわかるようにこれらは直交している。これらを基底ベクトル として次のように任意の複素振幅ベクトル

v

を表現することができる。

v=v+e++ve

係数

v+

v

はそれぞれ

v

の右回り成分と左回り成分と呼ぶ。 通常の

x-y

座標での

x

成分と

y

成分を

vx

vy

とすると、2つの座標系の間の変換は次のように行うことができる。

µvx vy

= 1

2 µ1 i

i 1

¶ µv+ v

,

µv+ v

= 1

2

µ 1 i

i 1

¶ µvx vy

X

軸と

Y

軸を楕円の軸とする楕円偏光は、

E µcosδ

i sinδ

とあらわすことができる。ベクトルの部分が規格化されるような表現を選んでいる。これに回転の

行列

µ

cosα sinα sinα cosα

を作用させて

Z

軸のまわりに任意の角度

α

だけ回転すると図

3

のような一般の楕円偏光が得られ、

δ

α

で楕円の偏平率と軸の向きが決まる。また、

E

の大きさを二乗して

1/2

倍すれば電場の二 乗平均が得られる。 これは光のエネルギーの密度やエネルギーの流れの密度に比例する。

2.3 光学素子の動作

2.3.1 ポラライザー

ポラライザー(直線偏光素子)は一定の方向の偏光成分だけを通過させる。 その方向がポララ イザーの「方向」である。 その方向の偏光成分を損失無く透過させ直交する偏光成分は全く透過 させない理想的なポラライザーを考えよう。ベクトルのある向きの成分を取り出すのでベクトルの 射影操作になる。 したがって、ポラライザーの方向を

X

軸から右向きに測った角度が

θ

なら、

µcosθ sinθ

( cosθ sinθ)

(8)

という行列を入射光の複素振幅ベクトルに左から掛けるとポラライザーを通った後の複素振幅ベクト ルが得られる。通過した光の強度を計算する場合は大きさだけがわかればよいので、

( cosθ sinθ)

を入射光の複素振幅ベクトルに左から掛けるだけでよい。 ただし透過光の強度を得るにはさらに その二乗を計算する必要がある。

直線偏光をポラライザーに通すと、ポラライザーの向きが入射光の偏光の向きに一致したとき透 過光の強度が最大になるが、入射光の偏光の向きを正確に測るには透過光の強度が

0

になるよう なポラライザーの向きを求める方が良い。 この場合はポラライザーの向きと直交する向きが入射 光の偏光の向きである。 実際のポラライザーは完全なものではないし入射光も完全な直線偏光で はないために、透過光の強度がちょうど

0

になることは無い。 したがって、実際には透過光強度 の最小点を求めることになる。 また、入射光の偏光の向きがポラライザーの向きと一致している ときは理想的なポラライザーでは完全に透過するが、実際のポラライザーでは吸収や表面での反射 によって透過率は

100%にはならない。

2.3.2 波長板

波長板は複屈折によって2つの直交する偏光成分の間に位相差を作り出す。軸性のある結晶や分 子の向きをそろえて作られたポリマーは複屈折性を持つ。そのほか、ガラスのような固体を一方向 に圧縮することによって複屈折性があらわれる光弾性という現象や、固体や液体に強い電場をかけ ることによって複屈折性があらわれるカー効果などがある。波長板の一つの複屈折の軸の向きを

X

軸からの角度

ξ

であらわし、その軸の向きの偏光成分に対する直交成分の位相の遅れを

γ

とする と、理想的な波長板の作用は共通の位相の遅れを除いて次の行列であらわされる。

µcosξ sinξ sinξ cosξ

¶ µexp(iγ/2) 0 0 exp(iγ/2)

¶ µ cosξ sinξ

sinξ cosξ

この変換は「ユニタリ変換」であり変換の前と後とでベクトルの大きさや内積を変えない。

γ=π/2

では位相が

1/4

波長ずれるので

1/4

波長板という。 軸の向きを

ξ=π/4

となるよう に取れば、上の行列は

1 2

µ1 i i 1

となる。これによって、X 方向と

Y

方向の直線偏光はそれぞれ右回りと左回りの円偏光に変換さ れるし、右回りと左回りの円偏光はそれぞれ

Y

方向と

X

方向の直線偏光に変換される。

γ=π

Y

X Z

α

3:

楕円偏光

(9)

波長板は

1/2

波長板という。

ξ= 0

として考え、X 方向の 成分の位相のずれを共通の位相のずれ に含めてそれを除くと、変換の行列は

µ

1 0 0 1

となるから、Y 成分が反転することがわかる。たとえば、直線偏光を

1/2

波長板に通し

1/2

波長 板の軸の向きを調節すれば任意の向きの直線偏光が得られる。また、円偏光を通せば軸の向きには 関係なく逆回りの円偏光が得られる。

2.3.3 反射鏡

ミラーで光を反射させると空間反転になるが、Z 軸はあくまで光の進行方向に取り、Y 軸は入射 面に垂直に取って向きを変化させないことにすれば、X 成分だけが反転することになる。このよう に考えると、直線偏光の向きは

Y

軸に対して対称に反転することがわかるし、円偏光は逆向きに なることがわかる。したがって、反射鏡の効果は

1/2

波長板の効果に似ている。

光が斜めに入射する場合は入射光の偏光によって反射光の反射率や位相変化が異なる可能性が ある。 ガラスのような透明誘電体では入射角がある値の場合に入射面に平行な偏光成分の反射率 がゼロになってしまう。 このようになる入射角はブリュースター角といい屈折率に関係している。

これを利用すると決まった向きの偏光に対してはツーツー通る窓ができる。 また反射光を使う場 合は入射角をブリュースター角に固定したガラス板はロスのあるポラライザーの効果を持っている ことになる。 このポラライザーの軸は入射面に垂直と決まっている。

2.3.4 旋光性媒質(円偏光複屈折性)

天然の蔗糖溶液や酒石酸溶液は右回り円偏光と左回り円偏光とで屈折率が異なる。これは分子の 形状に起因するもので光学活性という。こういう物質は化学的に合成すると2種類の異性体が同じ 割合でできるが、生物が合成したり利用することのできる天然のものにはどちらか片方しか含まれ ていない。水晶のように鉱物でも光学活性をもつものがある。2種類の水晶は右水晶、左水晶と いって区別される。ファラデー効果といって、等方性の物質でも磁場をかけることによって光学活 性を生じることもある。これは物質中の電子がローレンツ力を受けて運動することによる。屈折率 の違いによって右回り円偏光に比べて左回り円偏光の方が

γ

だけ位相が遅れるとすると、入射光 の振幅ベクトルを透過光の振幅ベクトルに変換する行列はつぎのようになる。

1 2

µ1 i i 1

¶ µexp(iγ/2) 0 0 exp(iγ/2)

¶ µ 1 i

i 1

これは各円偏光成分を取り出して位相をずらし再び合成するという考えで得られる。これを計算す

ると

µ

cosγ sinγ

sinγ cosγ

となり、偏光の向きが

γ

だけ回転することがわかる。これを旋光性という。右回り円偏光に対す

る屈折率と左回り円偏光に対する屈折率が違うことと同じなので、円偏光複屈折性ともいう。

参照

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