ア ビ テ ヴ ム ケ ゾ
阿
毘
羅
訴
欠
の
唱
え
方
に
つ
い
て
酒
井
紫
朗
一 去 る 昭 和 廿 八 年 八 刀 一 日 号 の ﹁ 高 野 山 時 報 ﹂ ( 一 三 四 二 号 ) 並 に ﹁ 密 教 文 化 ﹂ 第 二 四 、 五 合 併 号 に 於 て 前 者 に は ﹁ 胎 蔵 界 大 日 如 来 の 心 呪 に つ い て ﹂ 、 後 者 に は ﹁ 大 勤 勇 三 摩 地 に つ い (1) 害 て ﹂ な る 論 考 を も つ て 彼 の 文 殊 菩 薩 の 心 究 た る 阿 羅 波 遮 那 ( A Ra Pa Ca Na ) が A=anutpada(本 不 生 )、 Ra=raga(染 着 ) 、 Pa=Paramartha(勝義 諦 ) 、 Ca=carya(行 ) 、Na=Nairatma ( 無 我 ) の 夫 々 の 言 葉 の 頭 文 字 を 集 合 し て 出 来 て ゐ る 如 く こ の 阿 毘 羅 討 欠 の 五 字 が 夫 々 本 不 生 ( Anutpada)、言 語 (vae)、 塵 垢 (Rajas)、因 (Hetn)、虚 空 (Kha)の頭 文 字 の 集 合 体 で あ り 、 大 日 経 具 縁 品 に 次 の 如 く 我 が 証 せ る 無 生 の 法 は 語 の 境 界 を 捨 離 し て 一 切 の 過 失 な し 、 さ れ ば 因 と 縁 よ り 離 れ た り 空 の 智 ぱ 虚 空 に 等 し 。 阿 毘 羅 拾 欠 の 唱 え 方 に つ い て ( 我 覚 本 不 生 。 出 過 語 言 道 。 諸 過 得 解 脱 。 遠 離 於 因 縁 。 知 空 等 虚 空 。 ) (漢 大 正 蔵 、 蔵 服 部 本 十 八 巻 九 頁 b 、 八 五 頁 と 説 か れ て ゐ る 如 く 真 諦 門 と し て は 大 日 如 来 の 一 切 法 本 不 生 、 離 言 説 、 離 塵 垢 、 離 因 縁 、 等 虚 空 の 五 種 三 摩 地 を 表 は し 、 俗 諦 門 に て は 五 大 即 ち 五 輪 を 表 示 し て 、 方 ( 地 ) 、 円 ( 水 ) 、 三 角 ( 火 ) 、 半 月 ( 風 ) 、 空 点 ( 空 ) と し て の 塔 婆 形 で あ つ て 人 体 即 宇 宙 を 表 現 し て ゐ る こ と を 述 べ 、 更 に は こ の 五 字 の 意 趣 す る 処 は 大 日 経 具 縁 品 に 次 の 如 く 菩 提 道 場 に 坐 し て 四 魔 を 降 伏 し た る が 故 に そ の 時 、 大 勇 者 と 梵 天 等 の 諸 天 の 衆 は 一 切 の 怖 畏 な き 声 を 以 て 喜 び の ま ま 叫 び を な せ り そ れ よ り 以 来 我 は 勇 者 大 勇 者 と 称 せ ら る 。 ( 我 昔 坐 道 場 。 降 伏 於 四 魔 。 以 大 勤 勇 声 。 除 衆 生 怖 畏 。 是 時 梵 天 等 。 心 喜 共 称 説 。 由 此 諸 世 間 。 号 名 大 勤 勇 。 ) 一-75-密 教 文 化 二 へ 漢 大 正 蔵 、 十 八 巻 九 頁 b 蔵 服 部 本 八 四-八 五 頁 と 説 か れ て ゐ る 如 く 阿 ( A ) に よ り て 一 切 法 本 不 生 を 悟 了 せ る 勇 者 (vira ) た る 大 日 如 来 が 斜 (Hum ) の 念 怒 三 摩 地 に よ つ て 四 魔 を 降 伏 し 、 一 切 智 々 た る 空 (kha ) の 自 性 (kham ) を 示 し た も の で あ る こ と を 報 告 し 、 そ の 唱 へ 方 も A vira hum K ham. と し て 毘 の 音 を 古 来 の 相 伝 た る 短 韻 で な く し て 長 韻 に 唱 ふ べ ぎ で あ る こ と を 注 意 し た の で あ つ た 。 註 (1)密 教 文 化 第 十 八 号 三 二 頁 、 三 七 頁 参 照 。 二 其 後 こ の 唱 へ 方 に つ い て 確 実 な 一 つ の 聖 教 量 ( 経 証 ) を 得 た の で こ こ に 報 告 し て 置 き た い と 思 ふ 。 そ の 説 か れ て ゐ る 経 軌 (1)(2) と は 漢 訳 と し て 全 訳 は な い が 部 分 訳 の あ る 西 蔵 訳 ﹁ 吉 祥 、 金 剛 道 場 荘 厳 と 名 つ く る 恒 特 羅 大 王 ﹂ ( Sri-Vajramandalam-K a ra -nama tanraraja)で あ つ て 、 参 考 の 為 に そ の 西 蔵 文 具 文 を 先 に 出 し 、 次 い で そ の 和 訳 を 附 す れ ば こ の 経 軌 中 次 の 如 (3) く 示 さ れ て ゐ る の で あ る 。 こ れ は 零Mantra-kasaputa ( 真 言 秘 義 処 方 ) と 名 づ け ら れ て ゐ る 。 今 や 一 切 佛 の 真 言 の 真 実 を 釈 す べ し 。 最 初 に 行 ず る も の を な し て 第 二 は 説 者 と 釈 さ る 第 四 の 音 を 以 て 普 ね く 圧 し 第 三 は 火 の 名 あ り 。 因 な ぎ が 故 に 少 し の も の を 第 四 と し て 明 か な ら し め て 第 六 の 声 と 差 別 な く そ の 上 に 点 が 住 す 。
-76-一 切 法 は 虚 空 に 等 し と 再 三 釈 さ れ た り そ は 第 五 と 知 る べ し 五 文 字 は 大 力 な り 。 五 文 字 は 五 力 の 自 性 よ り 生 じ た る 尊 主 大 威 力 た る 偏 主 、 有 の 主 を 生 じ た り 大 威 力 な る も の は 三 有 よ り よ く 解 脱 せ し め 五 文 字 は 六 趣 よ り 解 脱 せ し む る の 主 六 神 通 を よ く 与 へ し め て 無 垢 な り 。 た る こ と を 明 か な ら し め て ﹂ と あ る よ り 因 ( h e tu)の h 字 を 指 し 、 ﹁ 第 六 の 声 ( 音 ) と 差 別 な く 、 そ の 上 に 点 が 住 す ﹂ と は 白 葺 に し て 合 し て hum 毎 と な る 。 二 切 法 は 虚 空 と 等 し ﹂ と は 虚 空 (kha)で あ つ て 、 ﹁ そ れ は 第 五 と し る べ し ﹂ と はk h g m で あ る 。 以 下 の 偶 は こ の 阿 毘 羅 畔 欠 の 五 字 に 対 す 讃 嘆 の 文 で (8) あ る 。 因 み に 注 釈 に ょ れ ば 此 等 の 偶 は 世 尊 大 勤 勇 ( 勇 者 ) の 真 言 な り と 説 明 さ れ て ゐ る 。 等 で あ る 。 此 等 の 偶 文 を 一 寸 読 ん で は 何 を 云 つ て ゐ る も の (5) か 見 当 が つ か な い と 思 は れ る が 既 に ﹁ 真 言 の 記 憶 詩 に つ い て ﹂ な る 小 稿 に 於 て 述 べ た 如 く 梵 語 の 母 音 ( Ali)と 父 音 (Kali)と 字 義 尺 を 基 準 に し て 考 察 す る な ら ば 次 の 如 く 解 読 す る こ と が (6) 出 来 る の で あ る 。 尚 又 此 の 経 軌 の 注 釈 が 西 蔵 大 蔵 経 に 収 録 さ れ て ゐ る の で そ の 助 を か り る こ と に す れ ば 次 の 如 く で あ る 。 先 づ ﹁ 最 初 に 行 ず る も の ﹂ と は 一 切 音 の 最 初 は 阿 ( a ) 字 で あ る 。 ﹁ 第 二 は 説 者 ﹂ と は くvadin の v 字 を 指 し ﹁ 第 四 の 音 を 以 て 普 く 圧 し ﹂ と は く 字 に 一 点 を 附 し て 首 と な る 。 ﹁ 第 三 は 火 の 名 あ り ﹂ と は 羅 ( ra)字 で あ る 。 ﹁ 因 な き が 故 に 少 し の も の を 第 四 と し て 明 か な ら し め て ﹂ と あ る 処 は 他 版 と の 校 合 (7) を な し て ゐ な い 現 在 意 味 を 了 解 し 難 い が 注 釈 に ﹁ 因 よ り 離 れ 以 上 の 説 明 を 総 合 す る と A vi ra hum と な る の で あ る 。 こ れ に ょ り て 正 し く く 同 と 長 韻 で 唱 へ な け れ ば な ら ぬ わ け で あ る 。 吾 が 真 三三口 宗 は 如 来 の 真 実 言 を 唱 へ る こ と が 宗 是 で あ つ て み れ ば 、 た と え 一 字 の 読 み ち が い が あ つ て も 許 さ れ な い は ず で あ る 。 か か る 意 味 よ り 古 来 の 相 伝 に こ だ わ る こ と な く 、 こ の 聖 教 量 ( 経 証 ) に よ つ て も 明 か な る 如 く 長 韻 に 唱 へ な け れ ば な ら な い も の と 思 わ れ る の で あ る 。 こ の 点 を 特 に 強 調 し 提 唱 し た い 所 謂 で あ る 。 註 (1)大 正 蔵 、 八 八 六 番 佛 説 金 剛 道 場 荘 厳 般 若 波 羅 蜜 多 経 中 一 分 。 (2)東 北 目 録 四 九 〇 番the 鉄 収 載 。 (3)tha 鉄 三 八 a 5 (4)同 三 九 13 5-四 〇 a-阿 毘 羅 餅 欠 の 唱 え 方 に つ い て 三 -
77-密 教 文 化 四 (5)密 教 文 化 第 三 十 一 号 (6)東 北 目 録 二 五 一 五 番 (7)i 秩 三 四 二 a 6 (8)同 a 7 こ の 稿 は 昭 和 三 十 二 年 度 同 学 会 春 期 大 会 に 於 て 発 表 せ る も の で あ る 。-32 ・ 6 ・ 19-追 記 北 京 影 印 版 西 蔵 大 蔵 経 甘 、 丹 両 蔵 が 出 版 さ れ つ つ あ る が 小 稿 引 用 の ﹁ 金 剛 道 場 荘 厳 軌 ﹂ が 収 蔵 さ れ て ゐ る 秘 密 部 tha 秩 は 未 だ 出 版 さ れ て ゐ な い の で 校 合 す る こ と が 出 来 な か つ た 。 ナ ル タ ン 版 も 手 近 に 閲 蔵 す る こ と が 出 来 な い 現 状 な の で 果 し 得 な か つ た 。-32 ・ 9 ・ 25-- 7825--