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特集 障害別アプローチの理論 関西理学 14: 27 31, 2014 筋緊張異常に対するアプローチ 鈴木俊明 1, 2) 谷万喜子 文野住文 1, 2) 1, 2) 米田浩久 鬼形周恵子 1, 2) 2) Approach for Abnormality of Muscle Tonus Toshi

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筋緊張異常に対するアプローチ

鈴木 俊明

1, 2)

  文野 住文

1, 2)

  鬼形 周恵子

2)

谷 万喜子

1, 2)

  米田 浩久

1, 2)

Approach for Abnormality of Muscle Tonus

Toshiaki SUZUKI, RPT, DMSc

1, 2)

, Yoshibumi BUNNO, RPT, MS

1, 2)

, Chieko ONIGATA, RPT, MA

2)

, Makiko TANI, LAc, Ph.D.

1, 2)

, Hirohisa YONEDA, RPT, Ph.D.

1, 2)

Abstract

For the adequate management of abnormal muscle tonus, it is important to first determine the underlying etiologies. These include primary causes such as spasticity, rigidity, and flaccidity, and secondary causes such as muscle and skin shortening. This study discusses whether abnormal muscle tonus is directly caused by primary etiologies or by a combination of primary and secondary etiologies, and describes treatment strategies for both types. Specific approaches for the management of abnormal muscle tonus are as follows.

For secondary impairments such as skin and muscle shortening, measures to directly stretch the muscles and skin are considered effective. For primary impairments, prolonged stretching, motor imagery, and measures to enhance voluntary movements are important approaches. Patients can be self-trained in these approaches, which can improve the muscle tonus by altering brain and muscle function.

Key words: muscle tone, spasticity, muscle shortening

J. Kansai Phys. Ther. 14: 27–31, 2014

はじめに

筋緊張異常は、さまざまな疾患にみられる。例えば、

脳血管障害片麻痺患者における筋緊張異常には、痙縮の ような一次的障害によるものだけでなく、筋短縮のよう な廃用症候群、いわゆる二次的障害によるものがある。

また、運動器疾患でも、筋力低下ではなく筋緊張異常と 表現する場合がある。このように、われわれセラピスト にとって筋緊張異常は常に意識されるべき状態である。

しかし、筋緊張異常という用語、そして筋緊張異常の評 価を正しく用いているかというと疑問に感じる。本稿で は、まず筋緊張異常と判定する場合のポイント、つぎに、

筋緊張異常へのアプローチについて述べる。

筋緊張異常と判定する場合のポイント

筋緊張とは、「筋を伸張した場合の抵抗感」のことであ る。われわれは、患者の問題となる動作を観察し、その 問題点が筋緊張の異常であれば、筋緊張検査をおこなう。

罹患筋が四肢の筋であれば、その筋を伸張させた場合の 抵抗感をみるのである。脳血管障害片麻痺患者であれば、

Modified Ashworth Scale がその代表的な検査である。しか し、体幹筋のように充分に伸張できない部位である場合 には、実際に動かした際の筋収縮の程度で検査するわけ である。具体的な例を挙げる。座位で麻痺側への側方体 重移動をおこなった場合に、麻痺側腸肋筋の筋緊張亢進 で充分な体重移動ができなかったとする。この時セラピ

1)関西医療大学大学院 保健医療学研究科 2)関西医療大学保健医療学部 臨床理学療法学教室

Graduate School of Health Sciences, Graduate School of Kansai University of Health Sciences

Clinical Physical Therapy Laboratory, Faculty of Health Sciences, Kansai University of Health Sciences

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ストは、「座位で麻痺側方向に体重移動する際には、最初 に麻痺側腸肋筋の筋緊張が一旦低下しないと筋長が伸び ないために側方移動を阻害する」ことを検査前に知って おく必要がある。セラピストは、正常な反応とその時に 必要な筋収縮の状態を把握しておき、正常な筋収縮の程 度と比較した場合に過剰な筋収縮がある場合に筋緊張が 亢進していると判定するのである。もし、麻痺側腸肋筋 だけを筋伸張することができれば、その時の抵抗感も正 常域より増加していると考えるわけである。このことを 理解して、筋緊張異常という表現をする必要がある。

脳血管障害片麻痺患者の筋緊張異常は、「上位中枢の 障害から生じた弛緩、痙縮が病態である」と言いきれれ ば理想的であるが、実際はそうではない場合が多い。筋 緊張異常を認める患者が急性期の方であれば弛緩や痙縮 が筋緊張異常の要因であると考えてよいが、慢性期の方 では筋緊張を認める要因は一次的障害の弛緩、痙縮だけ でなく、筋短縮や皮膚短縮のような二次的障害も存在す ることが充分に考えられる。要するにわれわれが筋緊張 異常の原因を明確にすることは、不可能に近いわけであ る。そして、弛緩、痙縮の程度を判定する検査はないため、

筋緊張検査という検査でさまざまな要因を総合的に検査 しているわけである。

著者らは、多くのセラピストより、「脳血管障害の筋緊 張異常とは、筋力低下ではないか」という質問をいただ く。筋緊張異常を呈する筋は、必ず筋力低下をともなう といっても過言ではない。しかし、筋力低下ではなく、筋 緊張異常と表現する必要がある。その理由は、われわれ が臨床の場面で検査可能な筋力測定はMMTだけしか存 在しないことにある。脳血管障害片麻痺患者の罹患筋の 筋緊張異常をMMTで検査しようとすると、検査肢位を 保持することができないことが多い。具体的な例として、

麻痺側上肢を挙上することができない原因が三角筋前 部線維の筋力低下であるとした症例を考える。この場合、

MMTでは麻痺側肩関節屈曲90°に保持した位置を検査開 始肢位とする。しかし、多くの症例では、病的屈曲共同運 動により肩甲帯挙上、後退をともなう。MMTの検査では、

このような動作が出現しないように肩甲帯をとめる必要 がある。しかし、この肩甲帯の運動をとめてしまうこと で、MMTの開始肢位を保持できない場合が認められる。

要するに、MMTでは脳血管障害片麻痺患者の筋力を正 しく評価できないのである。脳血管障害片麻痺患者の麻 痺筋には必ず筋力低下を認めるので、正しく個別の筋力 を評価できる新しい検査方法の開発が必要になる。また、

読者のなかには、「筋緊張検査は不要である。筋力検査で 問題点を明確にできる。」と考えている方も多いと想像す る。その方々に対して質問したいことがある。それは「筋 力低下は、筋緊張が低下している場合にも亢進している 場合にも起こることを知っていますか?」ということで

ある。著者らは、脳血管障害片麻痺患者の罹患筋の筋力 検査法が開発され、筋力低下が判定された場合でも、全 ての症例で筋力トレーニングをするのではなく、ある症 例では筋緊張を抑制して筋力を発揮しやすくする必要が あると考える。要するに、もし、脳血管障害によって生 じた一次的障害への筋力検査が確立されたとしても、機 能障害レベルの問題点の把握には筋緊張検査は必要であ る、ということである。

一方、運動器疾患における筋機能の評価は、MMTで ある。MMTは関節とその運動方向で規定された検査で あり、個々の筋の筋力を検査する方法ではない。例えば、

膝関節伸展のMMTであれば、大腿四頭筋の筋力検査を おこなっているわけであり、内側広筋単独、外側広筋単 独、といった個々の筋力を検査することは不可能なので ある。そこに、筋機能検査としてのMMTの限界がある。

その理由がよくわかる、具体的な例を挙げる。歩行の立 脚中期で膝関節屈曲がみられる場合には、内側広筋の筋 力低下が考えられる。しかし、その場合でも膝関節伸展 のMMTが正常域であることがある。そうすると、内側広 筋の筋緊張異常を考える必要がある。現状では、内側広 筋の筋緊張異常を検査する方法としては触診が考えられ る。将来、内側広筋だけの筋力検査が確立されたら筋緊 張異常という表現は不要になるが、さて、どうなるだろ うか。

また、MMTの検査方法と、問題となる運動が合致し ない場合には、MMT ではなく、筋緊張検査が必要とな る。具体的には、広背筋が挙げられる。広背筋は肩関節 内旋、伸展に作用する筋である。しかし、筋の走行上、体 幹側屈に作用する筋でもある。体幹側屈を認める場合に は、他の筋と同様に広背筋も罹患筋の一つとして考える ことができる。体幹側屈に問題があってもMMTが正常 域の場合があり、このような症例では、広背筋の筋緊張 異常を考える必要がある。

筋緊張異常は筋に一様に出現するわけではない。著者 ら1)は、パーキンソン病患者の腹直筋の筋緊張が部位に よって異なることを組織硬度計のデータを用いて報告し た。腹直筋の筋緊張亢進により体幹屈曲を認める症例の 腹直筋を上部、中部、下部の3箇所に分け、左右両側に対 して組織硬度計を用いて組織硬度の違いを検討した(図 1)。組織硬度計の結果と座位姿勢を検討すると、次のこ とがわかった。座位で胸椎屈曲が著明な症例は腹直筋の 上部、体幹全体が屈曲している症例は中部、そして骨盤 後傾が著明な症例では下部の組織硬度が増加していた。

また、同じ部位でも左右差を認める症例があり、そのよ うな症例は体幹側屈を認めることもわかった。この研究 を通して、腹直筋は部位によって筋緊張が異なるため、

筋腹中央部の筋緊張が腹直筋全体の筋緊張を表している のではないことが示唆された。また、著者らは、歩行中

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に麻痺側肘関節屈曲の連合反応を認める脳血管障害片麻 痺患者の上腕二頭筋の筋緊張が部位によって異なること をT波で検討した2)。その結果、安静時において筋腱移行 部でのT波振幅亢進を認め、筋腹中央部ではT波振幅の 亢進を認めなかった。また、その傾向は、非麻痺側上肢 に筋収縮を促した場合に著明であった(図2)。これらの 報告から、筋緊張異常は部位によって異なる場合がある ため、理学療法のアプローチでは筋緊張異常を認める部 位に対して直接的に筋伸張する必要があることがわかっ た。

筋緊張異常へのアプローチ

筋緊張異常に対してアプローチする際に大切な点は、

われわれセラピストは筋、皮膚のような外受容器に対し てアプローチをおこなっているということを忘れてはい けない。外受容器へのアプローチは「脳機能を変化させ ることができる」と主張するセラピストがいる。それは、

正しくもあり、間違いでもある。著者ら3)は、脳血管障 害片麻痺患者の麻痺側肩関節外転90°、肘関節伸展位に したときの、麻痺側母指球筋からのH波を検討した。筋 伸張中には、全例でH波振幅は低下するが、筋伸張後は 図1 組織硬度計の測定部位と計測の様子

図2 T波検査方法とダイレクトストレッチ前のT波変化

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徐々に筋伸張前程度に戻るもの、筋伸張後すぐに筋伸張 前程度に戻るもの、筋伸張後に筋伸張前よりも亢進する ものと、タイプ分類ができた(図3)。H波振幅は脊髄神 経機能の興奮性の指標である。この研究では、麻痺側肩 関節内転筋群、肘関節屈筋群の筋緊張を抑制させること で、遠位筋である麻痺側母指球筋から記録したH波振幅 が低下するわけなので、主として筋伸張をおこなってい る肘関節屈筋群に対応する大脳皮質の興奮性が低下し、

皮質内で母指球筋に対応する皮質レベルの興奮性が低下 することは考えられる。また、肘関節屈筋群の筋伸張に

よりIb抑制が生じることで脊髄レベルの興奮性を低下さ

せ、脊髄内で母指球筋に対応する脊髄レベルの興奮性を 低下させることも考えられる。麻痺側肘関節屈筋群の筋 伸張中は全例で母指球筋に対応するH波振幅が低下して いるものの、筋伸張をやめることでH波振幅が回復する。

このことから、外受容器への刺激により脳機能は変化す るが、その刺激をやめることで脳機能は刺激前の状態に 戻ることがわかる。

このように、外受容器へのアプローチは、脳機能を変 化させにくい可能性があるが、筋機能を正常化させるこ とは可能であるため、重要である。筋緊張異常を認める 二次的障害の要因には筋短縮だけでなく、皮膚短縮も考 えられる。筋短縮と皮膚短縮に対するアプローチは異な る。皮膚短縮へのアプローチは、皮膚だけを伸張させる ようにデリケートな刺激を与える必要がある。筋短縮へ のアプローチは、短縮部位が伸張できるように把持して 筋を筋線維方向に伸張し、次にこの伸張刺激をおこない ながら筋を回旋させることで更に筋伸張がおこなわれる。

筋緊張異常を認める原因が二次的障害である場合には、

皮膚伸張、持続的筋伸張をおこなうが、一次的障害であ

図3 脳血管障害片麻痺患者の肩関節および肘関節周囲筋の持続的筋伸張前後の母指球筋H波変化

(5)

図4 治療の展開について

る場合も持続的筋伸張は重要である。しかし、これまで の著者らの研究でも、持続的筋伸張がどこまで脳機能に 影響を与えるかは、疑問である。そのため、脳機能に直 接的に影響を与えるためには随意運動を促す必要があ る。ここでの随意運動とは、病的共同運動に影響される ものではく、協調性のある分離運動のことである。しか し、随意運動が可能になる過程は簡単ではない。そこで、

著者らがおこなっている方法として、運動イメージをと もなわせた運動療法である。運動イメージが充分にでき れば、そのあとには随意運動をおこなうことが容易にな る症例が多い。また、随意運動ができない症例へのアプ ローチとしては、運動イメージだけをおこなわせること も良い。著者ら4)の健常者を対象にした運動イメージの 研究から、必要な随意運動にできるだけ近い環境で運動 イメージをおこなわせることが重要であることがわかっ た。具体的には、コップを麻痺側手指で持たせることを 目標にするには、セラピストがコップを持たせる肢位を させて、その肢位で運動イメージをおこなわせることで ある。反対に筋緊張亢進が原因で随意運動ができない症 例では、リラックスイメージが効果的である。著者ら5) の健常者を対象にした1分間のリラックスイメージの研 究では、リラックスさせる方法が重要であると報告した。

罹患筋をリラックスするようにイメージさせる方が、全 身をリラックスさせるよりも脊髄神経機能の興奮性を低 下させるという結果であったためである。このように運 動イメージを用いた運動療法は、随意運動を可能にする 準備になると考える。

最後には、これらのアプローチを患者自身が自主的に おこなうようにする必要がある。患者自身の適切な自主

的トレーニングを習慣にすることが、脳機能を正常化さ せることにつながり、本当の意味での筋緊張異常に対す るアプローチになると考える。

筋緊張異常に対するアプローチの手順をまとめると図 4のようになる。

おわりに

筋緊張異常の考え方と、それに対するアプローチにつ いてまとめた。筋緊張異常の評価では、まず、筋緊張異常 の原因をみつけるように努力することが重要である。そ の原因には、痙縮、筋強剛、弛緩のような一次的障害や、

皮膚短縮、筋短縮のような二次的障害があるが、厳密に 判定することは困難である。しかし、適切な筋緊張検査 をおこなうことで、二次的障害が混在しているか否かは 判定できる。

筋緊張異常に対するアプローチでは、まず、二次的障 害である皮膚短縮、筋短縮には障害されている部位を直 接的にアプローチすることが重要である。次に、一次的 障害へのアプローチとして、持続的筋伸張と運動イメー ジのアプローチ、随意運動を促すトレーニングが大切で ある。最終的には、セラピストがおこなうアプローチを 患者自身が自主的におこなえるようにすることが重要で ある。この自主的なトレーニングを習慣化させることが 脳機能を変化させ、筋緊張異常を改善させる重要なポイ ントである。

文 献

1) 鈴木俊明・他:筋緊張検査における検査のポイント.関西

理学 12: 1–6, 2012.

2) 鈴木俊明・他:反射運動の筋電図学的評価―F波・T波.

理学療法 21: 1381–1391, 2003.

3) Suzuki T, et al.: Effect of continued stretching of the affected arm in patients with cerebrovascular disease by examining H-reflex characteristics. Electromyogr Clin Neurophysiol 43: 51–56, 2003.

4) Suzuki T, et al.: Excitability of spinal neural function during several motor imagery tasks involving isometric opponens pollicis activity. NeuroRehabil, 33: 171–176, 2013.

5) Suzuki T, et al.: Excitability of spinal neurons during a short period of relaxation imagery. Open General Internal Medicine Journal, 6: 1–5, 2014.

参照

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