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チャットコミュニケーションの葛藤解決における感情宥和行動の効果 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)チャットコミュニケーションの葛藤解決における感情宥和行動の効果 キ ー ワ ー ド :C M C , チ ャ ッ ト , 葛 藤 解 決 , 感 情 宥 和 行 動 , 動 機 帰 属 行動システム専攻 神田 梨華 1. 問題と仮説. 従って,チャットで会話をする場合には,会話内容(テ. IT 化の進む今日の日本において,チャットや電子メール といったコンピューターを介した言語情報のみにより構成 さ れ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ( Computer. Mediated. キスト)の表現そのものに対して,過剰に俊敏に反応・解 釈をするようになるのではないか,と考えられる. <要因②>:チャット参加者の参加目的…一般的にチャ. Communication:コンピューター媒介コミュニケーション,. ットの参加者は「社交家(socializers)」と呼ばれる特性を. CMC)の重要性は飛躍的に増大し,日常化も進んでいる.. 持つと言われている(Bartle,R. 1996) .. チャットは, 「面識のないもの同士がテキストのみを交換. この「社交家」は,「参加者同士が情緒的会話を楽しむ」. する(匿名性)」というCMCが持つ「気軽に参加できる」. という社会感情的要素を最も重要視しているため,チャッ. 特性を有しているだけではなく, 「離れていても同時に同じ. トルーム内では「他人に対し,感情的に不愉快な思いをさ. 行動を取っている」という「同期性」があることにより,. せない」というネチケット(ネット上のエチケット)の自. 他のCMCよりもいっそう身近なコミュニケーション方法,. 主的な遵守が比較的強く要求されている. (Wallace 1999) .. つまり「他者とのつながり」というリアリティを有するも. つまり,彼らは会話全体において,社会感情的要素・表. のとして受け入れやすい特性を示し,その結果チャットの. 現の使用やその帰属・解釈に対して非常に敏感な状態にあ. 参加者数(経験者数)は増加傾向にある.. ると言える.実際,チャット状況においては全表現中にお. しかし,もちろん,このチャットでも現実場面同様にト ラブルは発生しうる.具体的には,些細な会話のずれから. ける社会情緒的表現が 30%以上を占めている(Rice, R. E.., & Love, G. 1987) .. 葛藤が生じてしまうことや,誤解が発生し,その結果チャ. これらの要因によって,チャットルーム上においては会. ットルーム内の人間関係がこじれ,HPの管理人を奔走さ. 話相手の発言内容に対する意図帰属・解釈が好悪の感情的. せたり,他の参加者が不愉快になった結果,参加者が激減. 志向に対して偏りを引き起こすと考えられる.. し,チャットルーム自体が閉鎖に追い込まれる場合もある.. そして,この偏りがネガティブな方向へシフトしてしま. 一般的に,CMC上において,フレーミングなどの葛藤. った場合,会話相手に対して悪いイメージ像が構成され,. が発生する原因の一つとして,Wallace(1999)は, 「CMC. その後の相手の発言に対しても悪意を汲み取ってしまい,. では会話相手の発言内容に対する意図の帰属の段階で,好. その結果フレーミングや侮辱などの葛藤が生じ,円滑なコ. 悪に極端な判断がなされやすい」と述べている.. ミュニケーションからは程遠いものになる.. チャットの場合にこの見解を当てはめた場合,この帰属 バイアス現象の原因となる要因がいくつか考えられる.. 以上のような要因によって引き起こされるチャットルー ム上の葛藤やトラブルを解決,または未然に防ぐために,. <要因①>:チャットのチャンネル特性…チャットを始. 著者は社 会 感 情 的 表 現 方 法 の 一 環 と し て 位 置 付 け ら れ て. めとするCMCにおいては会話中の相手の口調・語調や表. い る「感情宥和行動」をチャットに適用して研究を進めた.. 情(社会的感情)が読み取り難い.これはCMCが音声や. チャットのコミュニケーション形態における表現方法は. 画像・映像面での機能が劣っていることに起因する.. 「テキスト」である.つまりキーボードに存在する記号・. そして更に,我々が普段の会話において相手の発言を解. 文字のみによってメッセージを交換する以上は,メッセー. 釈・帰属する際には,相手の性別や年齢などといった相手. ジの表現方法を創意工夫することによって丁寧さや,敬. のデモグラフィー(社会的文脈)にも大きく依存している.. 意・配慮といった社会感情的表現を文字で現し,伝達する. しかし,チャットルームにおいてはこれらのデモグラフ ィーは殆ど存在せず,仮にこれらの情報が開示されていた. ことが可能となれば良いはずである. 著者はこの「丁寧さや,相手に対する敬意・配慮を文字. としても,その情報が真実かどうかは保証されてはいない.. で表現する」という性質・機能を持つ「感情宥和行動」を. つまり,会話相手の信憑性や人柄を推し量るスケールは,. チャットルーム上でテキスト内容として使用することによ. 交換するテキスト自体の表現内容から判断するほかにない.. り,葛藤を未然に防ぎ,または発生してしまった葛藤をよ.

(2) り統合的に解決できるのではないか,と考えた.. き下げる効果がある,と考えられる.. 「感情宥和行動」とは, 「ある社会的相互作用場面におい. また,仮説1,および2が実証された場合,更にそれぞ. て,相手に怒りの喚起を予測したときに生じる行動で,服. れの動機帰属から和解志向に至る効果が得られるのか否か. 従的・萎縮したやりかたで表現され,相手に和解を目的と. を実証することも今回の研究の目的の一つとした.. した動機や感情を引き起こす行動( Keltner. 1997)」と定義 されている.言うなれば, 「感情宥和行動」は,相手の感情 面に訴えかける一つの方略と考えられる.. 2. 方法 被験者は,九州大学の学生 44 名(男性 10 名,女性 34. 感情宥和行動は,その機能から更に次の2つに分類され. 名) .被験者は,前述された 2 種類の宥和行動(先行宥和行. ている(Keltner , 1997).一つは相手の否定的感情が生起. 動・反応宥和行動)について,それぞれあり・なしの4つ. しないように抑制する目的で用いられる予備的な「先行宥. の組み合わせのうちから一つを実験条件として割り当てら. 和行動(anticipatory appeasement) 」であり,もう一つは. れた.. すでに喚起してしまった相手の否定的感情を緩和する目的. 各条件ごとの被験者数は,宥和行動なし条件,先行宥和. でフォローとして用いられる「反応宥和行動(reactive. 行動のみ条件,反応宥和行動のみ条件,2 種宥和行動条件各. appeasement)」である.. 11 名であった.. この「感情宥和行動」のサブカテゴリーである「反応宥. 被験者は,個別に隔離された部屋において,別室の女性. 和行動」と「先行宥和行動」の 2 種類の宥和行動にはその. 被験者を名乗る相手と,チャットの形式で会話をすること. 機能についてそれぞれ性質的に違いがあるため,使用の組. を実験者から求められた.一回の会話セッションは 20 分間. み合わせによって会話者の意図帰属・解釈に与える影響も. で,全部で 3 回の会話セッションを設けた.最初の 2 回の. 異なる可能性がある.そこで,以下のような仮説を考えた.. セッションはチャットのシステムや雰囲気,会話相手のお. <仮説1>:チャットルーム上で発言者(実験者)が先. およその印象を被験者に把握してもらうための練習のセッ. 行宥和行動を用いた場合には,用いなかった場合と比較し. ションであり,その後の 3 回目の会話セッションが実際の. て,発言者の発言に対する被験者からの「好意」の意図帰. 実験のセッションであった.. 属傾向がより増加する.. より現実のチャットルームの状況に近づけるため,1∼. 先行宥和行動は,相手の否定的感情が生起しないように. 2セッション目において,実験者・被験者とも比較的自由. 抑制する目的で用いられる行動である(Keltner , 1997).. に会話を進めたが,3セッション目において実験者は,そ. 具体的には,丁寧語やあいづちと言った,相手に対して. れまでのセッションの会話内容から得られた被験者の嗜好. より直接的に敬意や配慮を示す行動(発言)を示す. これらの行動は,相手に対して配慮を示すことによって. や趣味,志望などを真っ向から否定するメッセージを発言 し,被験者に対し対立者として葛藤状況を作り出した.. 好意的印象を与え,相互作用を円滑に行なうことを目標と. 第 3 セッションの会話中において,対立者である実験者. している行動である.つまり,会話相手に好意を喚起させ. の発するメッセージに含まれる宥和言語に関しては,. ることを意図していると言える.. Keltner (1997) による宥和行動の分類に基づいて,小林. 従って,この先行的宥和行動を会話内容として使用した. (2001)が作成したものをほぼそのままの形式で使用した.. 場合には,そうではない場合に比べて,発話者(実験者). また,実験条件に対する従属変数として, 「動機帰属」 , 「感. の発言に対する「好意」帰属・解釈のレベルをより増加さ. 情の知覚」, 「対処方略の方向性の選択」, 「親和性」の4種. せる効果がある,と考えた.. 類の変数を設け,セッション終了後,質問紙に回答させた.. <仮説2>:チャットルーム上で発言者(実験者)が反. この従属変数については,被験者が受容した宥和行動の背. 応宥和行動を用いた場合には,用いなかった場合と比較し. 後に対立者からの何らかの動機を帰属し,更にその後,そ. て,発言者の発言に対する被験者からの「悪意」の意図帰. の帰属に関して何らかの感情を知覚し,そしてその後自ら. 属傾向がより減少する.. の対処行動の方向性を態度として定めるであろう,という. 反応宥和行動は,特定の規範逸脱行動(他者への無礼な. 一連の因果関係の存在を考慮してそれぞれ設定した.また,. 振る舞いなど)の後で謝意や後悔の表明として反応的に生. 対処行動の方向性として和解志向などのポジティブな目標. じ,相手からの攻撃や追及を緩和する効果を持つ( Keltner,. 志向が選択された結果,最終的に対立者に対する親和性が. 1997)と定義されている.従って,この反応的宥和行動を. 高まると考えられるため,親和性を最終的な従属変数とし. 会話内容として使用した場合には,そうではない場合に比. て設定した.. べて,すでに知覚してしまった「悪意」のレベルをより引. 実験終了後,実際は実験者が今回の実験の会話相手であ.

(3) った旨を被験者に対してデブリーフィングし,同時に今回 の実験の概要についても解説を加えた.. また,先行宥和行動については,実験条件ごとの分散分 析においても,宥和言語得点ごとの相関係数の算出におい ても特に有意傾向を表すデータは得られなかった.. 3.結果と考察. これは,先行宥和行動に含まれる「です・ます」といっ. <1>感情宥和行動による動機帰属への影響:まず,動. た丁寧表現や「そうだね」といった相づち表現がCMC上. 機帰属に関する各カテゴリーを構成する下位項目(好意,. では一種のネチケットとして捉えられており,使用が常識. 敵意,利己心,自律的同一性,協調的同一性,経済的利益,. となっているため,被験者に対してポジティブなインパク. 罪悪感,情緒的共感の各帰属)の評定値の合計点をそれぞ. トを与える情報となり得なかった可能性が考えられる.. れ動機帰属得点とし,各々について先行宥和,反応宥和を. <3>感情宥和行動による対処方略の方向性の選択へ. 独立変数とする分散分析を実行した.先行宥和と反応宥和. の 影 響 :更に,対処方略の方向性の選択を構成する下位項. は被験者間要因,動機帰属得点は被験者内要因である.. 目(関係重視,パワー・敵意,公正,個人資源,経済資源,. その結果,罪悪感帰属においてのみ,有意な差が見出さ. 協調的同一性,自律的同一性の各志向)の評定値の合計を. れた(F(1,40)=12.34,p<.01) .罪悪感帰属に関する分散分析. それぞれの方向性選択の志向得点とし,各々について,先. において,反応宥和の主効果が有意であり反応宥和あり条. 行宥和,反応宥和を独立変数とする分散分析を実行した.. 件の被験者は,反応宥和なし条件の被験者に比べて,実験. その結果,各志向カテゴリー総てにおいて,先行宥和・. 者(対立者)の発言に罪悪感の帰属を強く行っていた.. 反応宥和条件による有意な差は見られなかった.. これに関しては, 「特定の規範逸脱行動の後で謝意や後悔. しかし,自律的同一性志向において,反応宥和の主効果. の表明として反応的に生じ,相手からの攻撃や追及を緩和. が有意傾向であった(F(1,40)=1.74,p>.10) .つまり,対立. する効果を持つ」という Keltner(1997)による反応宥和. 者が反応宥和行動を用いた場合,被験者は「自分の考えを. 行動の定義が動機帰属の段階に関して部分的に実証された,. 主張すること」や「相手の言いなりになろうとしないこと」. と言える.つまり,反応宥和行動が持つとされる謝罪・弁. と言ったいわゆる「我を張る」行動を控える効果があると. 明的機能が被験者の動機帰属の段階に関して効果を実証し. 考えられる.これは,反応宥和行動に含まれる謝罪の機能. たと考えられる.また,相関係数の算出によって,反応宥. が,被験者側の応報的戦略の発現を抑制したと推測できる.. 和言語得点と敵意帰属の間に負の相関が見られる傾向にあ. そして更に,志対処方略の方向性の選択の下位項目に関. ることが明らかになった.これらの結果,仮説2は部分的. して因子分析を実行した結果得られた5因子のうち,自己. に支持されたと考えられる.. 優先志向において,先行宥和の主効果が有意傾向を示し. <2 >感情宥和行動による感情知覚への影響:次に,感情 知覚に関する 11 項目(怒り,不愉快,反発,楽しさ,嬉し. (F(1,40)=1.85,p>.10),また先行宥和と反応宥和の交互作 用が有意傾向であった(F(1,40)=2.18,p>.10). さ,好意,安心,脅威,惨めさ,恐怖,緊張)の被験者の. これは,先行宥和行動に含まれる「相手に対する配慮」. 評定値について,主成分分析とバリマックス回転による因. や「相手に対する理解や受容を示す態度」が被験者の行動. 子分析を行った結果,固有値1以上の基準で「ポジティブ. 選択の段階で鏡に映したように作用した可能性が考えられ. 感情」と「ネガティブ感情」の2因子を得た.. る.つまり, 「対立者(実験者)が自分(被験者)に対して. 2つの因子に高負荷の項目の因子得点を各感情得点とし,. 配慮や理解を示しているのであるから,自分も同じように. それぞれについて,先行宥和(あり―なし) ,反応宥和(あ. 行動するべきだ」という思考の下, 「少なくとも自分の都合. り―なし)を独立変数とする分散分析を行なった.. を最優先するような行動はできるだけ慎むべき」という志. その結果,ネガティブ感情の分散分析において,反応宥. 向性の選択が為された,と考えられる.. 和の主効果が有意傾向を示し(F(1,40)=2.42,p>.10) ,また. <4>感情宥和行動による親和性への影響:実験プロセ. 反応宥和と先行宥和の交互作用が有意傾向を示した. スの最終段階として,被験者が対立者に対して最終的に抱. (F(1,40)=2.42,p>.10).反応宥和条件の被験者,及び2種. いた親和性(百分率で表現)を先行宥和,反応宥和を独立. 宥和条件の被験者は,その他の条件の被験者よりも,ネガ. 変数とする分散分析を実行した.その結果,各条件による. ティブ感情(特に怒りや脅威,緊張)を弱く知覚する傾向. 有意な差は見られなかった.しかし,後の感情宥和プロセ. にあった.これも,反応宥和行動が内包する謝罪や弁明の. スの検討においてポジティブ感情知覚からの強い正の影響. 機能が,被験者に対してネガティブ次元の感情の知覚を抑. が見られることが明らかになった.. える効果を発揮したと考えられる.これは仮説②を間接的 に支持し得る結果であるといえるであろう.. <5>感情宥和プロセスの検討:最後に,感情宥和プロ セスの因果連鎖を検討するため,回帰分析を4段階に分け.

(4) て行なった.一連のステップワイズ重回帰分析の結果を図. また,反応宥和行動により敵意の動機帰属が減少した結. 1にパス図として示す(最終的に先行・反応宥和行動と因. 果,自己優先志向の選択が低くなることが明らかになった.. 果関係の見られる各カテゴリー変数のみを図1に示す).. これは,対立者(実験者)が反応宥和行動によって表現し た謝罪・弁明の背後に敵意がないことを帰属した結果, 「自. <宥和行動>. <動機帰属>. <感情知覚>. <対処行動の. -.28*. 方向性の選択>. 分の利益や都合を最優先する」という自己中心的な行動の 選択を慎んだという因果関係が考えられる. 同様に,反応宥和行動により敵意の動機帰属が減少した. 先行宥和 自己優先志向. なった.これも,対立者(実験者)が反応宥和行動によっ. .53***. て表現した謝罪・弁明の背後に敵意がないことを帰属した. ネガティブ感情. 結果,「相手の言うことを何でも聞く人間と思われたくな. .81*** パワー志向 -.42** 反応宥和. 結果,自律的同一性志向の選択が低くなることが明らかに. 考えられるであろう.. .39** 敵意帰属. 親和性. -.51***. い」という我を張る行動の選択を慎んだという因果関係が. 少した結果,パワー・敵意志向の選択が低くなることが明. .68*** .48***. らかになった.これも,対立者(実験者)が反応宥和行動. 関係重視志向. によって表現した謝罪・弁明の背後に敵意がないことを帰. ポジティブ感情. .44**. そして同様に,反応宥和行動により敵意の動機帰属が減. .51***. 属した結果, 「とにかく相手を苦しめたい・罰したい」とい う攻撃的行動の選択を慎んだという因果が考えられる.. .38** 和解志向. また,反応宥和行動によって敵意の動機帰属が低くなっ た結果,ポジティブ感情の知覚が高くなり,さらにその結. 自律同一性志向. 果,関係重視志向,和解志向,親和性が高くなることが明 らかになった.これは,対立者(実験者)が反応宥和行動. 図1 感情宥和行動プロセスにおける各変数間のパス図. によって表現した謝罪・弁明の背後に敵意がないことを推 測した結果,対立者に対して好意や安心といったポジティ. 図1に示される因果関係について概観すると,まず,先. ブな感情を知覚し,さらにその結果,対立者との人間関係. 行宥和行動は,自己優先志向を直に弱くする作用があるこ. を大切にすることや目の前の葛藤を解決することを重要視. とが推測される.これは,先行宥和行動に含まれる「相手. した結果であると考えられる.これらの結果により,反応. への配慮を示す」機能が,先に述べた鏡返しの効果を自動. 宥和行動は,個人の内面に存在する親和性欲求を引き出す. 的にもたらしたと考察されるであろう.. 効果を有すると考えられる.. また,全体を通して,先行宥和行動の効果が反応宥和行 動に打ち消される傾向が見られたが,これは「チャット」. 主要参考文献. という文字だけで互いの意思疎通を図るチャンネルにおい. Bartle, R.(1996). Hearts, clubs, diamonds, spades:. ては,葛藤状況に置かれた場合,より直接的な謝罪表現に. Players who suit MUDs. Journal of MUD Reserch 1(1),. 対して注意が向きやすく,また相づちや賛同のような表現. Keltner, D., Young, R. C., & Buswell, B. N. (1997).. の使用がネチケットとして日常化しているため,ポジティ. Appeasement in Human Emotion, Social Practice, and. ブな情報としてより捕らえにくくなる可能性が考慮される.. Personality. Aggressive Behavior, 23, 359-374.. 次に,反応宥和行動は,まず動機帰属の段階で敵意の動 機帰属を引き下げる効果があることが実証された.これは 仮説2を指示する結果である. そして,反応宥和行動によって敵意の動機帰属が低くな. 小林宏美(2001).対人葛藤解決における感情宥和の効果. 平成 12 年度東北大学文学研究科修士論文. Rice, R. E., & Love, G. (1987). Electronic emotion: Socioemotional content. in a computer -mediated. った結果,ネガティブ感情の知覚が低くなり,逆にポジテ. communication network. Communication Reserch, 14,. ィブ感情の知覚が高くなった.これは,対立者の謝罪・弁. 85-108. 明的行動(反応宥和)の背後に敵意を低く見積もった結果 引き出されたと考えられる.. Wallace, P.(1999). The Psychology of The Internet. Cambridge University Press..

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