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3.6.1 ユニバーサルメディア研究センター 超臨場感基盤グループ
グループリーダー 栗田泰市郎 ほか 8 名
多次元超臨場感環境再現技術の研究開発 概 要
現中期計画(平成 18 〜 22 年度)では、遠く離れた場所でもお互いに空間を共有しているような感覚の得ら れる超臨場感環境を提供することを目指し、それに必要な映像・音響を実現するため、電子ホログラフィによ る立体映像表示および 3 次元音響再生技術の研究を進め、将来の実用化へ向けたこれらの基礎検証システムを 構築することを目標としている。
この目標を達成するため、理想的な立体映像である電子ホログラフィについては、その基盤技術の確立を目 指し、試作を通じて技術と将来性の検証を行っている。これに必要な要素技術として、ホログラフィ像を見る ことができる角度範囲である視域を確保するための視域拡大技術や、ホログラフィ像の表示サイズの拡大、通 常照明光下での実写動画ホログラフィ用撮影技術、画質改善手法やカラー化手法の開発を行っている。視域拡 大は、超高精細液晶表示デバイスの活用や表示デバイスを視域ごとに分割駆動する技術を基本に、幅広く手法 の開発を行っている。また、実写動画像を撮影しホログラフィへ変換する技術を外部と連携をとりながら開発 している。
3 次元音響技術については、ホログラフィなどの空間像再生型立体映像に適した、全方向に異なる放射指向 性を有する音響再生技術の研究開発を行っている。従来にない構成のスピーカアレイによる音響再生方法の開 発を中心に、音響デバイスの新規設計を含む新しいシステム構築のための基礎検討も行っている。
平成 21 年度の成果
⑴電子ホログラフィ表示技術
最近実用化が加速している立体(3D)映像はほとんどが 2 眼式と呼ばれる方式で、手軽に実用化できる一 方で、立体映像を見ている時の疲労などの課題がある。これに対して電子ホログラフィは、人が奥行きを感じ る視覚的手がかりを全て再現できるため、原理的には疲労を生じない究極の立体映像技術と呼ばれている。し かし、その実現に向けては多くの困難な技術課題があり、特に、視域の拡大と表示サイズの拡大は最も重要な 課題である。平成 21 年度も前年度に引き続きこれらの課題克服に取り組んだ。
平成 21 年度初めには、800 万画素(略称 4K)の液晶表示デバイスを 3 枚用いたカラー電子ホログラフィ表 示システムを試作し、4 月に行われた全米最大の放送機器展である NAB ショーで展示した。
その後さらに、3,300 万画素(8K)の超高精細液晶表示デバイスを 3 枚用いてカラー表示システムを試作した。
試作にあたっては、表示サイズの拡大に対応して、原理的に発生する妨害光の除去などの具体課題を満足させ るため入念な検討を行い、新たな構成による光学系を試作した(図 1)。これらにより、視域角を水平 5.6 ゜に、
表示サイズを対角 4.2cm に拡大することに成功した(平成 20 年度は各々 4 ゜、1.5cm)。この成果は、電子ホ ログラフィとして世界トップレベルの性能を有するものである。このシステムによるホログラフィ表示像の例 を図 2 に示している。
図 1 3,300 万画素表示デバイスと 8K 試作システム 図 2 8K システムによるホログラフィ像の例 (通常のビデオカメラによる再撮画像)
表示デバイス
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⑵電子ホログラフィ用撮影技術
電子ホログラフィのもうひとつの重要な課題として、原理的には撮影の際にレーザー光照明が必要なことが ある。レーザー光照明を用いると撮影場所や撮影できる被写体に制限が生じる。このため、通常の自然光照明 下でもホログラフィ表示に必要な立体情報を取得する技術として、インテグラルフォトグラフィ(IP)と呼ば れる別の立体映像方式のカメラで撮影し、取得した情報をホログラフィに変換する技術の開発を行ってきた。
平成 21 年度は、この撮影・変換技術について、画素数を従来比 4 倍の 800 万画素(4K)に増加させた変換 装置を試作し、リアルタイムで撮影・表示できるカラー動画ホログラフィ像の画質を改善した(図 3)。この撮影・
変換システムも、⑴の 4K 表示システムと合わせて前記の NAB ショーで展示し、好評を得た。
図 3 リアルタイム撮影・変換システムの改善
⑶3 次元音響技術
これまで、物理的な法則に基づく音源の理想的な再現を目指した、全方向に異なる放射指向性を有する音響 再生の実現に向けた研究を進め、そのひとつとして、26 個のスピーカユニットを直径約 17cm の 1 つの球体 に組み込んだ 26ch 球形スピーカによる 3 次元音響再生システムの研究開発を行ってきた。
平成 21 年度は、この異なる放射指向性を持つ 26ch 球形スピーカの聴覚による評価を行った(図 4)。この 評価実験は、実際の演奏と球形スピーカの再生音に対して、被験者にはどちらがどちらかわからない状態で評 価するブラインドテストにより音響再現性の評価を受ける方法で行った。また、評価は同一の被験者に対して 曲を変えて複数回行った。この結果、被験者は 1 回目の評価では聴覚的に実演奏と球形スピーカを区別するこ とは困難であるという結果が得られ、球形スピーカの表現能力が高いことが示された。しかし 2 回目以降は、
音源の大きさを認識して実演奏と球形スピーカの区別ができるという結果が得られた。これは、人間が聴覚的 に認識する音源の大きさにより音のリアリティを評価している可能性を示すものである。また同時に、今回用 いた 3 次元音響を再現する精度がまだ十分でないという、今後の課題も明らかになった。
図 4 実演奏と球形スピーカの聴覚実験 実演奏と球形スピーカの配置
評価時の被験者の位置 被験者からは、実演奏と球形スピーカ
の配置が見えないようになっている。
平成 21 年度
(4K(800 万画素)ベース)
平成 20 年度
(HD(200 万画素)ベース)