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福 田 倫 子 ・ 永 井 千 絵

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(1)

携帯メールのやりとりは、どのように始まり、

どのように終わるのか 福 田 倫 子 ・ 永 井 千 絵

How  t o  s t a r t  and end e ‑ m a i l s  on the mobile phone  M i c h i k o  Fukuda .  C h i e  N a g a i  

The aim of this study is  to自ndout the characteristics of opening  and closing in  e‑mail conversation on the mobile phone written in  J apanese mainly by young people. 80 exchanges were examined.  The results were as follows: 

(1)  As for opening section. many exchanges have the mutual  recognition between a sender and a receiver. however, some  of them have the sudden introduction of a new topic with no  appeal to the receiver 

(2)  As for closing section. some exchanges has no closing section  because of the characteristics of e‑mail on the mobile phone.  (3)  As for closing section. it  is  sometimes seen that the pre‑closing 

or Leave‑taking is  disregarded 

1 ̲ はじめに

現代の日本では実に様々な種類のコミュニケーション・ツールを利用 することができる。手紙、電話、ファックスはもとより、インターネッ

トを利用した Eメールやチャット、 ffilXlをはじめとするソーシャル・

ネットワーキング・サービス

( S o c i a lN e t w o r k  S e r v i c e

, 

S N S )

など多岐 に渡る。

(2)

これらのコミュニケーション・ツールの中でも、飛躍的な普及を遂げ ているのが携帯電話であることは周知の事実であろう。そして、携帯電 話を用いたコミュニケーションのうち、音声通話よりもメールの方が多 いという報告がみられる。三宅

( 2 0 0 1 )

では、大学生

1 3 6

名の調査で音 声利用

1

日平均1.

7 2

回に対し、メールは

1

日平均

9 . 9 8

回であった。また、

アイシェア

r t y p e

リサーチ

( 2 0 0 8 )

Iでは、

2 0

代から

4 0

代を中心とした調 査の「今年最も利用した携帯電話の機能は」という問いに対する回答は、

音声利用が

2

1.1%であるのに対し、メールの利用は

5 4 . 7 %

であった。こ のように携帯電話でのコミュニケーションは、音声通話よりもメールで のやりとりの方が活発に行われていることが分かる。

本研究では、このように日常のコミュニケーションに不可欠となりつ つある携帯メールでのやりとりにおける、開始部と終結部に着目して分 析・考察を行い、その実態や機能を明らかにすることを目的とする。な ぜなら、従来の電話会話には開始部や終結部に特有の形式がみられてい るが、それでは音声会話に近いと言われる携帯メールでどのような変化 が起こっているのかを考察するためである。また、実際に携帯メールを 使用しているときにやりとりがなかなか終わらずに困った、という筆者

らの経験も研究動機の一つである。

なお、本研究では携帯電話を使った電子メールを中村

( 2 0 0 5 )

に従い、

「携帯メール」と呼ぶ。

2 .  

携帯メール利用の背景

2‑1.

携帯メール利用の状況

モパイル社会研究所の「ケータイ利用アンケート調査

J ( 2 0 0 8 ) "

1 0

http://japan.cne.tcom/marketing/story/0.3800080523.205697.00.htm 00.01.30検索) http://www.mobaken.jp/research/research2008/r08̲01  (10.01.30検索)

(3)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第22号

代から60代の

1

日当たりの携帯メールの送受信数を調査している。

1 0

代、 20代では送受信とも

1 0

通を超え、 60代でも送受信ともに2通以上あるこ

とから幅広い年代において、携帯メールが通信手段のーっとして定着し つつあることを示していると言える。

表 1 年代別1日当たりの携帯メール送受信数

l日当たりの携帯メール l日当たりの携帯メール 送信数(単位:通) 受信数(単位・通) 10代 18.3  22.8  20代 13.1  17.6  30代 7.3  11.6  40代 8.5  12.3  50代 5.3  7.8  60代 2.4  2.9 

次に、送受信数が多い若年層に関する、より詳細な調査結果を示す。

内閣府の「第

5

国情報化社会と青少年に関する意識調査について(速 報)

J : l  

(平成19年

7

月)は、全国の10‑ 29歳の男女2.468名を対象とし た調査を行っている(うち小学生319名、中学生451名、高校生396名)。

「携帯電話等

( PH  S

を含む)の使用状況j を見ると、小学生で31.3%.

中学生57.6%.高校生96.0%が「利用している」と回答している。さら に、平成19年12月の「第5回情報化社会と青少年に関する意識調査につ いて

J I

によると、 l日に携帯電話等でメールを発信する回数は、中学 生、高校生で男女を問わず f21回以上」が30%を超え(高校生女子は 41.4%)、さらに1日に f51回以上」発信する比率は中学生男子で13.7%、 高校生女子で13.5%にのぼる。

http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/jouhou5/ g.pdf  (10.01.25検索)

http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/jouhou5/gaiyou.pdf (10.01.25検索)

(4)

このように携帯電話の普及と携帯メールの利用頻度の高さは、複数の 調査で裏付けられている。

2‑2.

携帯メール利用の実態

2  ‑1

で示したように、携帯メールの利用は若年層で顕著にみられ る。若者が携帯電話で形作る世界は、「フルタイム・インティメート・

コミュニティ

( f u l l ‑ t i m ei n t i m a t e  c o m m u n i t y  

:常時密接関係の共同体

) J

と表現されることがある(中島・姫野・吉井 1999)が、この傾向は携 帯メールにおいてもみられるのだろうか。

2‑2‑1.主要な携帯メールの相手

よく携帯メールをやりとりする相手は「普段よく会う友人」が最も多 いことが先行研究および調査で報告されている (e.g;三宅 2001;モパ イル社会研究所 2005) 2位以下は各調査で結果が異なるが、「同居の 家族

J r

普段あまり会わない友人

J r

恋人

J r

別居の家族」などが続く。

2‑2‑2. やりとりの内容

中村 (2005)は、携帯メールのやりとりの内容を 2つのタイプに分類 している。約束などの道具的な利用と、身の回りの話題やその時の気持 ちなど、おしゃべりのような内容でコミュニケーションそのものを目的 とした利用である。前者が「道具的コミュニケーション

J

と呼ばれるの に対して、後者は「コンサマトリー

k o n s u m m a t e l y

:自己充足的)な コミュニケーション」と呼ばれる。そして、田中 (2001)の大学生を対 象とした調査結果では、携帯メールでやりとりする内容は、①その場 の出来事や気持ちの伝達 (73.6%)②事務連絡 (66.7%)③とくに用件の ないおしゃべり (65.l%)④質問 (59.5%)⑤相談 (54.3%)⑤緊急連絡

(5)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第22

(49.6%) ⑦所在確認 (57.3%) ⑧予約・注文 (3.0%) ⑨その他 (0.7%) であった。①「出来事や気持ち」、③「おしゃべり

J

は特に緊急を要す るものではなく、前述の分類のコンサマトリーなコミュニケーション に該当するだろう。また、⑤「相談」も道具的というよりはコミュニ ケーションを求めて行う活動だと考えられる。このような状況を、田中 (2001) は、

r T

緊急連絡」ゃ「所在確認」といった携帯の「役に立つ」

機動性よりも「その場の気持ち

J

とを伝えるといったキブンの機動性が 上位に位置している。「実況中継」化は進んできているといえるだろう。」

と述べている。

2‑2‑3.

携帯メールを利用する若者の心理

それでは、若者はどのような心理でこのような携帯メールのやりとり をしているのだろうか。ここでは携帯メールの特性に起因する関係の促 進と悪化について中村 (2005) の説を示す。

中村 (2005) によると、携帯メールには、面と向かうと言いにくいよ うな感情が言いやすくなる性質があり、その理由は、メールが表情や声 色といったコミュニケーシヨン上の手がかり(キュー)を欠いている ことにある。この性質は、まだあまり親しくない者同士のコミュニケー ションを促進するなどの効果もあるが、逆に、あまり親しくない関係で 近づきすぎてしまい、かえって関係が悪化してしまう危険性もある。そ れは、キュー・レスであるがために、相手の反応が伝わりにくいことに 起因する。そのような状況を回避するためか、若者の携帯メールでは

「気遣いの作法」が注意深く行われる。すぐに返信したり、絵文字など のビジュアル表現を多用したりすることで、誤解を避けたり、表現をソ

フトにしたりし、双方が傷つくのを回避しているのである。

(6)

3 .  

携帯メールの特性

三宅 (2005)は、携帯メールと音声通話のメディア特性を以下のよう な表にまとめている。

表2 場帯電話のメール、音声通話のメディア特性 携帯メール 音声通話

①  方向性 一方向 双方向

②  着信 即時/ほほ即時 即時

③  送信 非同期 同期コ

④  記録性 あり なし

⑤  距離感 あり 少ない

@  街室性 強い やや強い

⑦ 拘 束 性 なし あり

⑨通信の長さ 短い 長い

三宅 (2005)は、表2に基づいて、メールを利用する若者のコミュニ ケーションに関する考え方を次のようにまとめている。「相手との「直 で

J

プライベートなつながりを大切にしたい(⑥)ので、自分の出し たメッセージにはすぐに反応がほしい(②)。ただし、相手とのやり取 りで自分に余裕がなくなるのは避けたい(余裕をもって自分を表現した い) (①③④)。それには、ある程度の距離感や断続感が必要であり(⑤

⑧)、話を始めたり切ったりする自由も確保しておきたい(⑦

) J

。対面 会話や音声通話との比較で、携帯メールは、会話のやり取りに関する精 神的負担が少なくてすむ、対人距離のとり方においても、距離感と親密 感という、一見相反するような感覚を適度に保つことのできる空間であ ると述べている。

日作動を時間的に一致させること。シンクロナイズ(広辞苑第5版)。

(7)

文 教 大 学 言 話 と 文 化 第22

ここまで携帯メール利用の実態や特性、利用者の心理について述べて きた。携帯メールは音声通話と比較すると、発信側の自由度が比較的高 く、対人的には距離感と親密感という、相反する感覚を適度に保つこ とができるコミュニケーション・ツールである。携帯メールを利用する 若者は、普段よく会う友人に対して、コンサマトリーなコミュニケー ションを目的とし、出来事や気持ちを「実況中継」している。その際、

キュー・レスに起因する摩擦を回避するため「気遣いの作法」を注意深 く行っている。次節では携帯メールのこのような特性や心理面から生じ る、談話形式の特徴を明らかにするために、まずは電話会話(固定・携 帯)の談話的特徴に関する先行研究を示す。

4.  電話会話の開始部と終結部

ここでは、物理的な距離を持った会話である、電話会話の先行研究を 示す。

4‑1.開始部

①電話会話の開始部

シェグロフ (2003.pp376)は、例えば警察にかけられた電話を受け取 る際の第一声である「警察です

J

などは、最初の発話ではあるが会話へ の最初の寄与ではなく、それ自体が反応であると述べている。呼び出し /応答連鎖の構造においては、情報量がより少ない側である受信者が最 初に話す立場にあり、発信者が既に予想していたはずのことを追認する のである。

②携帯電話会話の開始部

田中 (2000)の大学生アンケートによると、携帯電話における発信者 の開始表現には、「暇ー?

J  r

どこにいるのー?

J

などが用いられ、相手

(8)

と自分の確認がないという特徴を指摘している。一方、鶴田

( 2 0 0 5 )

は、 固定電話でみられるような正式な名乗りはないが、相互認識がなされて いることを示している。携帯電話を固定電話と比較対照し、携帯電話 が「個人性

J 1

受け手とかけ手の特定性

J 1

特定性に対する信頼

J

3

つ の特徴を持つことから、携帯電話では、かけ手はほぼ間違いなく話をし たい人物に電話をかけることができ、受け手は電話を受ける前からかけ 手を特定した状態で会話が始まることになる、という特徴を挙げつつも、

会話の開始部でみられる、

100

ちゃん?

J

やニックネームでの呼びか け、「もしもーし」というフォーマルな場面では使用されにくい呼びか け、かけ手と受け手が声を合わせて発話する、などを相互認識の根拠と して挙げている。

4‑2.

終結部

4‑2‑1.

電話会話の終結部 ( 1) Schegloff & Sacks (1973) 

エ ス ノ メ ソ ド ロ ジ ー の 手 法 を 取 り 入 れ た 、 代 表 的 な 会 話 研 究 に Schegloff & Sacks  (1973)がある。会話の終了に関する最初の問題は、

「ともに会話を行っている者どうしが全員一緒に、ある話し手の発話が 完了しでも他の話し手の談話を引き起こさず、しかも、この発話の完了 がある話し手の沈黙としても聞き取られることがないような[完了]点 に、到達するといったことは知何にして組織だてられているのであろう か

J

(北浮・西阪(訳)(1989))だとしている。

彼らは終結部の構造をPre‑closingとClosingの2つの部分に分けるこ とを提案している。前者は、会話の参与者の一方が、「もうこれ以上話 すことがない」との声明を出し、もう一方がそれに同意する部分であり、

後者はPre‑closingの声明に同意が得られた時に、電話の参与者が最終

(9)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第22

発話交換を行い、電話会話が終了される部分である(林

2 0 0 2 )

。さらに、

彼らは終結部に含まれる構造として「隣接対 (adjacencypair) 

J

という 概念を用いている。隣接対の構造的な特徴は、①

2

つの発話からなり

②この構成成分としての

2

つの発話は隣接した位置に置かれ ③各々の 発話をそれぞれ別々の話し手が生成する、の

3

点である。そして機能的 な特徴は、隣接対の発話聞には、「挨拶一挨拶

J 1

提案一受諾/拒否」の ような、別の場所ではあり得ないような親密な関係が形成されることで ある。この隣接対の直列的な配列により、会話の終了が可能になる。

(2 

)岡本(1

9 9 0 )

岡本(1

9 9 0 )

は、 ClosingsectionをPre‑closingとLeave‑takingの

2

つ に大きく分け、 Closingsection開始のために機能する構成要素

( 1

じゃ、

そういうことで

J 1

長くなると悪いから」など)をPre‑closingの「方略」

とし、それを受けて会話の終結を完了させるまで

( 1

また、電話します」

「御家族の方によろしく」など)をLeave‑takingとした。 Leave‑taking は、別れによって

2

人の関係が損なわれるという可能性を「つくろう

J

、 つまり「お互いの関係の再肯定

J

(Clark & French 1981)の機能をもっ。

そして、 Leave‑takingとPre‑closingの境界は暖昧であるとした。

岡本によるClosingsectionにおけるPre‑closingの関係を図示すると以 下のようになると考えられる。

Closing section 

Pre‑closing 

× 

(Pre‑closingの 拒 否 ) (Pre‑closingの 承 認 )

Leave‑taking 

会 話 の 復 活 会 話 終 了

ClosingsectionにおけるPrelosingとLeave‑takingの関係

(10)

以上のような先行研究をもとに、携帯メールのやりとりにおける開始 部と終結部の調査方法を次節で、調査結果の分析・考察を次々節で述べ る。

5 .  

方法

5‑1.

調査協力者

大学生を中心とする成人で、男性17名、女性46名の計63名。メールの やりとりがあった間柄は、友人、親子、兄弟姉妹、先輩後輩、知人、交 際相手、クラスメート、初対面など様々である。

5‑2.

調査期間

提供されたメールのやりとりが実際に行われた期間は2006年 ‑2008  年で、やりとりの時間帯は、早朝、夜中など統ーされていない。

5‑3.

分析対象

やりとりの始めから終わりまでを 1つのメールとし、 80のメールを収 集した。メーjレの総数と調査対象の人数が一致しないのは、複数のメー ルを提供した協力者があったためである。

6 .  

結果の分析と考察

6‑1.

開始部分

携帯電話での会話において、田中 (2000)は、相互認識がないことを 指摘し、鶴田 (2005)は、正式な名乗りはないが相互認識はなされてい ると指摘している。会話に近いとされる携帯メールではどのように開始 されるのだろうか。

80のメールの1ターン目のみをとりあげ、次のように分類した。

(11)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第22号

3 携帯メールの開始部の機能と分類

内容 メール数 比率(%)

挨拶 21  26.3 

2  名乗り 2  2.5 

3  受信者の名前を呼ぶ 8  10.0  4  受信者の所在の確認 2  2.5  5  受信者への配慮 2  2.5  6  受信者の予定の確認 10  12.5  7  受信者への質問 14  17.5  8  受信者への依頼 3  3.8 

報告 13  16.3 

10  事前のやりとりが推測されるもの 4  5O

11  その他 8  10.0 

※1 13.受信者の名前を呼ぶ」に他の項目と重複するものがあるため、合計は 80を超えるO

※2 比率は80を100%として算出した。

最も多いのは「おはよう

J 1

久しぶり」ゃ「よ

J 1

ちわj などの言語 的に簡略化されたものを含む

I

l.挨拶

J

(21: 26.3%)、次に「バイト か ら の 電 話 来 た ?

J  1

毒 届 い た ?

J

などの

1 7 .

受信者への質問

J

(14: 

17.5%)、続いて「テスト終わった

J 1

米沢牛食ってきたぜ」などと

1 9 .

報 告

J

(13: 16.3%)が続く。

鶴田 (2005)が携帯電話の会話に関して指摘している「相互認識」に は、ニックネームでの呼びかけ、フォーマルでない呼びかけ、唐突な話 題の導入などが含まれている。本研究のデータでも、ニックネームでの 呼びかけ

(100

ちゃん

J100 

(敬称無し

) J

、 フ ォ ー マ ル で な い 呼 び かけ

( 1

J 1

ちわ

J 1

はろー

J

など言語的に簡略化された挨拶)、唐突

(12)

な話題の導入

( 1

今日自主練する?

J

など

1 6 .

受信者の予定の確認」、

「バイトからの電話来た?

J  1

毒届いた?

J

など

1 7 .

受信者への質問

J

「ムムのメールアドレス教えて

J

など

1 8 .

受信者への依頼」、「テスト 終わった

J

1米沢牛食ってきたぜ」など 19.報告

J )

がみられる。これ

らは、相互認識ができていることを前提とした開始の仕方だと考えられ る。特に 19.報告」は受信者への働きかけの機能を持たない内容で開 始される点で特徴的である。鶴田 (2005)の携帯電話の会話においては、

唐突な話題提供であっても「あんさ(あのさ

) J 1

どこまで行ったの」と いった受け手への働きかけの機能を持つ発話がみられた。携帯メール には相互認識はないとした田中 (2000)でみられた唐突な話題提供も

「暇ー?

J  1

どこにいるのー?

J

など働きかけの機能をもったものであっ た。しかし、 19.報告」は、働きかけの機能はなく、直接会って行う 会話の一部分を切り取ったかのような様相を呈しており、携帯メールの 開始部の特徴だと言えよう。

6‑2.

終結部

先行研究から、電話会話における終結部はいくつかに分類できるが、

岡本(1990)の日本語の会話ではPre‑closingとLeave‑takingに分けられ る。日本語の電話会話の終結部の分類には小野寺(1992)もあるが、分 析の結果、携帯メールには小野寺(1992)が述べているような人間関係 再確認の部分、つまり謝りの発話の繰り返しがあまり見られないことか ら、岡本の分類に基づいて考察する。本研究でメールの終結部を分析し たところ、 Pre‑closing、Leavetakingも無く唐突に終わるもの、また一 方がPre‑closingを呈しでも無視されるもの等が見られた。

例示した携帯メールは誤字脱字があった場合にも原文のまま掲載して いる。なお、絵文字を転載した

URL

は引用資料を参照されたい。

(13)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第22

6 ‑2 ‑ 1.  Pre‑closing、Leave‑takingともに無いメール

Pre‑closingもLeave‑takingも無いメール数は14であった。その終結の 仕方はさらに

2

つのタイプに分類される。

l

つは、送信者が欲しかった 情報が入手できた時点で突然終了するタイプ、もう lつは雑談が長く続 いた後、突然終了するタイプである。

(1)情報入手後に突然終了するタイプ 例

1:  ( A =

送信者

B=

受信者、以下同様)

A:

合宿何持って行けばいいんかな(出

l ? )

去年はあったかかった o手I~)

?  ? 

B:去年はTシャツ、スパッツで練習してたけど、一応ロンTは持っ ていったほうがいいと思うよ(沼

) J

A:そっか(当官)私服は持ってく? ?てか、集合は私服なのかな C''''" 

l ? )  

あとお金はどんぐらい持ってく?

B:飛行機のるし、飲みもあるから私服は持って行くよ(会)お金 は昼食代とドリンク代、あとはお土産代とか買えるくらいは持 っていったほうがいいかな?

例lでは、送信者Aが合宿に持って行く物を尋ね、受信者Bが答えて いる。必要な情報が入手できた時点で送信者Aは受信者Bへの返信を中 止している。

2

A:明日って8時くらいに浦和で大丈夫?

B:A

ちゃん、大変なことになりやした。明日バイト入っちゃって少 し遅れるかも。てか、

00

のアドレスムムじゃない?

(14)

A:少しってどんくらい!

?OO

の間違えて前のに送っちった B:庖長には早くあげてくれッて言ったから忙しくなくなったら9時

くらいにはあげてもられると思うンだけど…何時までッて決まっ てないからさ。ご飯食べに行くの?

2

では送信者が集合時間と受信者の予定を確認し、受信者がどのく らい遅刻するかを答えている。受信者が最後のターンの最終文で質問を しているにもかかわらず、送信者は自分が欲しい情報が入手できた時点 でやりとりを終了している。

1

も例

2

も最後のターンで雑談が始まろうとしたが、道具的な利用 が発信者の目的であったためにpre‑closingの兆しも見えないまま突然終 了している。

(2 )雑談後に突然終了するタイプ 例

3

(前略)

A:こんなクソ暑いのに勉強したくね‑ (:]) 

B:

明日あたりにプールにでも行こうかと思います(百)もうテスト 終わったの?

A:うん

C J

う)行ってきな‑‑ (官二百)てか今日プール行ってたら最 高だったな‑(す)めちゃくちゃ暑かったしCJ'~)まだ終わっ てないよ(ユ'",,)もう終わったん?

B:今日はやぱかった(凶)テストは終わったよ(会)あとはレポー トlつだけ(百)

A:ね 今日やぱかったんね(:])歩いて学校行っただけで息切れし たし("'"凶)まじか‑‑いいなあ

p '

J)早く遊びたいわあ‑‑

(15)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第22

(

h b

百)てか海とかいくん?

B:海は行かないですね(日)もう 6年位行つてない(日)

例3では、発信者Aの最後のターンで海について受信者Bに問いかけ を行い、受信者Bは最後のターンで質問に答え、さらに海に関する自分 の情報を述べているにもかかわらず、発信者Aは返信を行っていない。

このパターンは(1)の情報入手後に終了するパターンに類似している とも言えるが、海に関する情報は雑談からの流れで発信者Aから提起し た話題であり、発信者がやりとりを開始した目的ではない点で異なって いる。

6‑2  ‑2. 

Pre・closingまたはLeave‑takingを無視したメール

ここでは、送信者か受信者のいずれかがPre‑closingやLeave‑takingを 行なったにもかかわらず相手から無視され、やりとりが続いたものを分 析する。

4

A: よ(~.)明日何時に競技場行く?

:00

君に荷物番頼まれてるから始発かな(持=1:"',/',,)7時にムム 着く予定(員)

A:補助員が 8時集合らしく、道に自信がないので誰かいないかなあ と思ってC'

n

ありカfと(百)

Pre‑closinrr 

B:

そうなんだよね(",,,)朝早くからごめんね(話‑+‑+)且且主墓三=

れたみたいだったよ(官)

Pre‑closin疋無視>

送信者Aが質問をした理由に続けて、Pre‑closingの機能を持つ「お札」

(16)

を述べたので、やりとりは終結に向かっていたが、受信者Bは再び他に も補助員を頼まれた人がいる、という新しい話題を出しPre‑closingを無 視している。ただし、送信者Aからは返信はなく、やりとりが突然途切 れる結果になっている。

5

(送信者Aは友人2人と一緒に遊んでいる場へ受信者Bを誘っている。) A:来てよー(歯)これは私から(惨)ちょっとでいーから(計) B:A- ごめん(~~)みんなと会ったら長居したくなっちゃうか

らさあ(趨)

A:B

ちゃん、ちょっとでいーからおいでって(1

0

・・(注:レン タルビデオ庖)の上のA企(注:飲食庖)にいるから(穆) B:みんな‑(ゐ)ごめんね(歯)< Pre‑closing > 

A:ζ

主 了 . .

(:B

だ返生丘三王皇位擾盟 u 呉屋

2

玄是主主主主

もうねー(曲)< Leave‑

吸虫之

B:もちろんだよ(上矢印 x2)みんなによろしくねっ(歯11') 豆民佐佐建思g.e.

A:B

ちゃん、二人のどちらか会いたくないんでしょ

( ! 1 )

<Leave‑taking無 視 >

B:うん… (φ) っていうのはウソよ(笑) (働刊)突然誘われるの 苦手なだけ(笑)

A:そっか(歯)んじゃ今度から先にメールするね(ゆ)確かに行 きなりだとねー(会)っていーなかー今日もいきなり参加(趨) 二人が死んでるよ(歯)Bちゃんに嫌われてるって(暢) B:メールありがとね(儲噂) 3人で楽しんで‑ (J)) 

<再びLeave‑t北ing> むしろみんな大好きだし‑(儲9)

(17)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第22

A:

ウソっぽい(笑)

BY

二人。本当にごめんなさいって(曲)何が だろーねー(計) <再びLeave‑takillll無 視 >

例5では、受信者Bは謝罪でPre‑closingを行い、それに対して送信 者Aも未来の予定について述べるLeave‑takingを行い、やりとりが終結 するかに見えた。しかし、送信者AのLeave‑takingに対する受信者Bの Leave‑takingが提示された時に送信者Aは新たな話題を出し、やりとり を続けようとしている。

l

ターンずつのやりとりの後、受信者

B

はお礼 と相手への配慮を示し再ひ~Pre-closing を行ったが、 A はまた別の話題を 始めようとした。しかしBからの返信はなく、突然途切れたような終結 を見せた。

7 .  

まとめ

以上、携帯メールのやりとりにおける開始部と終結部の分析・考察を 行った。本研究から明らかになったのは以下の3点である。

l点目は、開始部で、簡略化された相互認識が行われているものと 行われないものとが見られた点である。鶴田

( 2 0 0 5 )

が携帯電話の会話 に関して指摘している相互認識と同様に、ニックネームでの呼びかけ、

フォーマルでない呼ぴ、かけ、唐突な話題の導入などがみられた。ただし、

唐突な話題の導入の中で働きかけの機能を持たない「報告」から始まる 例も見られた。これは携帯メールの特徴的な開始の仕方だと言える。こ の現象は、鶴田

( 2 0 0 5 )

が提示した携帯電話の特徴、「個人性

J

["受け手 とかけ手の特定性

J

["特定性に対する信頼」と、田中

( 2 0 0 1 )

の「実況 中継」化が携帯メールでさらに加速化していることの表れではないだろ

うか。

2点目は、終結部において、岡本(1

9 9 2 )

の分類によるPre‑closing、

(18)

Leave‑takingともに無いメール、つまり終結部そのものが無い場合があ る点である。それらはさらに、送信者が欲しかった情報が入手できた時 点で突然終了するタイプと雑談が長く続いた後、突然終了するタイプの 2種類に分類される。 Leave‑takingは、別れによってふたりの関係が損 なわれる可能性を「つくろう」ための発話交換であり、その主な機能は

「お互いの関係の再肯定」である。したがって、 Leave‑takingの無い携 帯メールは互いの関係の悪化を「つくろう」行為がないと言える。この ようにClosingsection無しにやりとりが終了する原因は、携帯メールの 特徴である拘束性のなさ(外部事情のせいにしてコミュニケーションを 簡単に切断できる)と一度に送信できるメッセージの短さ、非同期であ ること(時聞をずらしながらやりとりする断続的なコミュニケーシヨン になる)にあると考えられる。

3点目は、終結部において、 Pre‑closingまたはLeave‑takingが無視さ れる場合がある点である。一方が終結に向けて進めようとしても、もう 一方がそれを無視した形で新たな話題を始めようとすると、無視された 側は返信をしないことでやりとりを強制終了に向かわせる。電話の会話 ではこのような現象は生じにくく、携帯メール特有の現象だといえる。

キュー・レスの状況だからこそ生じる蹴睡であり、逆にキュー・レスの 状況を利用して一方的にやりとりを途絶えさせることも可能になる。双 方が傷つくことを回避する「気遣いの作法」とは一見相反するようだが、

強制終了させても了承される状況に対する何らかの共通理解があり、そ の後も人間関係が壊れることはないという保障があることが推測される。

8 .  

おわりに

これまで、携帯メールはその新規性から、その文体や絵文字の使用、

使用者の心理面の分析などの特性に注目が集まっていた。本研究は携帯

(19)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第22号

メールを談話の一つの在り方と捉え、やりとりの形式を分析・考察した 点が有意義であると考える。

付記本研究は文教大学文学部平成20年度卒業論文「携帯メールはどの ようにして終わるのか

J

(永井千絵未公刊)に追加、再構成したもの である。データ収集にご協力くださった皆様にこの場を借りて御礼申し 上げます。

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桧文字

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第22

h t t p : / / c g i . w a p 2 . j p /  e m o j i /  e z w e b / ? a c t = f i n d & c a t e g o r y =  1  d o c o m o

絵文字

h t t p : / / w w w . n t t d o c o m o . c o . j p / s e r v i c e

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mode/make/contentl  p i c t o g r a p h /  e x t e n t i o n / i n d e x . h t m l  

モパイル社会研究所「ケータイ利用アンケート調査

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回情報化社会と青少年に関する意識調査について (速報)J

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回情報化社会と青少年に関する意識調査について

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参照

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