[ 文献紹介 ]
浅大腿動脈病変における
自己拡張型ナイチノール製ステント留置の長期成績に
対する術後血管内超音波検査(IVUS)所見の影響
IVUS Findings
-S.M.A.R.T.-www.cordisjapan.jp
上記サイトでは医療従事者を対象として様々な情報をご提供しています。福永 匡史
先生
兵庫医科大学 循環器内科 助教
川崎 大三
先生
森之宮病院 循環器内科 部長
三木 孝次郎
先生
兵庫医科大学 循環器内科 助教
Miki K, et al., Impact of Post-Procedural Intravascular Ultrasound Findings on Long-Term Results Following Self-Expanding Nitinol Stenting in Superficial Femoral Artery Lesions.
血管内治療(EVT)は、末梢動脈疾患(PAD)患者に対す る低侵襲治療として受け入れられている1-3。国際ガイドライン
であるTrans-Atlantic Inter-Society Consensus(TASC) Ⅱによれば、EVTの適用はその有効性と技術及びデバイスの 進歩により広がってきた1, 2。浅大腿動脈(SFA)は、臨床的に 再狭窄率が非常に高い最後の大きな動脈樹である。SFAは、 一般にびまん性の病変となり閉塞することが多く、また大きな動 きを受ける部分にあるため、EVTによる治療が難しい末梢動 脈である。SFA病変における最初のEVT成功率は狭窄病変 で95%、閉塞病変で85%超と報告されているが、EVTによる再 狭窄率は容認しがたいほど高かった3。より太いSFAへの自己 拡張型ナイチノール製ステント留置はSFA病変の治療には有 用かつ安全であることが証明されているが、手技は完全では ない4。自己拡張型ナイチノール製ステントで治療したSFA病 変の1年の一次開存率と二次開存率はそれぞれ84%、90%で あったが5、2年目の再狭窄率は約45%と報告されている6。 血管内超音波検査(IVUS)は、血管壁の断面像を高解 像度で得られる手段であり、冠動脈インターベンション及び EVTにおいて画像診断法として広く使用されている7。これま でのIVUSに関する研究の報告によれば、対照血管の断面積 (CSA)が小さいこと、ステントの拡張不十分、ステントの非対 称性、及びステントエッジの解離が、冠動脈インターベンション後 の標的病変再血行再建(TLR)と相関していた8, 9。冠動脈病 変へのステント留置後のIVUS所見がTLRの予測因子である ことは報告されているが、SFA病変に対するEVT後のIVUS 所見がTLRにどのように関係するかについてはほとんど知られ ていない。本研究の目的は、SFA病変に対し自己拡張型ナイチ ノール製ステントを留置した患者における術後IVUSの所見か らTLRの予測因子を調べることである。
浅大腿動脈病変における
自己拡張型ナイチノール製ステント留置の長期成績に
対する術後血管内超音波検査(IVUS)所見の影響
血管内治療、血管内超音波法、再狭窄、自己拡張型ナイチノール製ステント、浅大腿動脈 キーワード [ 背景 ] これまでの血管内超音波検査(IVUS)に関する研究では、対照血管の内腔断面積(CSA)が小さいこと、ステントの拡張不十分、 ステントの非対称性、ステントエッジの解離、組織の突出が、冠動脈インターベンション後の標的病変再血行再建(TLR)と関連して いることが報告されている。しかし下肢では、IVUSの所見が血管内治療(EVT)後のTLRと相関しているとの報告はない。 [ 方法及び結果 ] 自己拡張型ナイチノール製ステント留置後にIVUSを施行した患者における浅大腿動脈(SFA)計236病変を連続的に評価した。 ステント拡張率は最小ステントCSA/対照血管内腔CSA、半径方向のステントstent symmetry index は最小ステント径/最大ス テント径、軸方向のstent symmetry indexは最小ステントCSA/最大ステントCSAとして算出した。TLRは対象となる病変で75% 以上の再狭窄があった場合に施行した。平均観察期間は34±15ヵ月であった。TLRは42病変(17.8%)で施行された。TLR群と非 TLR群間で、ステント拡張率、stent symmetry index、組織の突出の有意差は認められなかった。多変量解析の結果、ステント全 長(オッズ比[OR] : 1.004、P<0.05)、遠位対照CSA(OR : 0.91、P<0.01)、ステントエッジの解離(OR : 3.51、P<0.01)は、TLRの独立し た予測因子であった。 [ 結論 ] SFA病変における細い血管へのステント留置とステントエッジの解離はTLRの高リスクの指標である。ただし、術後のステント拡張 不十分及びステント非対称性はTLRに関連していなかった。 兵庫医科大学 循環器内科 助教三木 孝次郎
先生 兵庫医科大学 循環器内科 助教福永 匡史
先生 森之宮病院 循環器内科 部長川崎 大三
先生患者及び病変
前向きに維持管理されているデータベースから、2006年9月 ~2010年9月に日本の兵庫医科大学にて新規SFA病変に対 するEVTが成功したすべての症例を後ろ向きに選択した。こ の期間に、自己拡張型ナイチノール製ステント留置に成功し、 血流障害のない新規SFA計439病変を今回の解析対象とし た。全症例について、運動及び至適な薬物療法を行ったにも かかわらずQOLに影響を及ぼすSFA病変の症状がみられた (Rutherford分類 2-6)。バルーン血管形成術のみを施行した 患者、再狭窄病変に対しステント留置を施行した患者、急性ま たは亜急性の虚血肢がある患者、12ヵ月以上の観察ができな かった患者については解析から除外した。試験プロトコルは兵 庫医科大学の施設内審査委員会の承認を受けた。後ろ向き の研究であるため、患者の同意書は免除された。手技
最初に下肢の診断的血管造影を実施し、2名以上の医師が EVTによる治療を行うことを決定した。EVTへのアプローチは 術者の裁量で決定した。6-Frシースを挿入後、未分画ヘパリン (5,000単位)を動脈に注射した。0.014/0.018インチのガイドワ イヤーを病変部まで進めた後、最適なサイズのバルーンを用い て前拡張を行った。血流を制限する解離またはリコイルが30% 超の狭窄を引き起こしている場合にS.M.A.R.T.® CONTROL® ステントを留置した。血管造影法で病変の近位部の対照血管 径を確認し、非拘束時に対照血管径より1~2mm大きい径の ステントを選択した。複数のステント留置が必要な場合には、ス テントが重なる部分の範囲は10mm未満とした。12気圧超で 対照血管径まで拡張するバルーンを用いて、すべての病変に 同じ方法で後拡張を行った。手技終了時に試験セグメントを一 定の安定した速度(約1mm/秒)で手動で引き戻し、IVUSコン ソール(s5TM Imaging System*1)とフェーズド・アレイ20-MHzIVUSカテーテル(Eagle Eye® Gold*1)を用いてIVUS画像を
得た。2剤抗血小板療法(アスピリン100mg/日とシロスタゾール 100mg/日、チクロピジン200mg/日またはクロピドグレル75mg/ 日)はEVTの1週間以上前から開始し、ほぼ全例で生涯にわた り継続した。
*1 米国カリフォルニア州Rancho Cordova、Volcano corporation
IVUS像の分析
すべてのIVUS像について、独立した経験豊富な観察者が 臨床情報及び血管造影の情報について盲検化された条件 でIVUS画像分析ソフトウェア(echoPlaque®*2)を用いて定量 的に分析を行った。最小及び最大ステントCSAを含む断面像 を選択し分析に用いた。近位及び遠位の対照部位は、同じ動 脈内(ステントに対して近位及び遠位20mm以内)とし、大きい 分岐がある場合は分岐手前の最も正常に見える断面像を選 択した。近位及び遠位対照部位の外弾性板(EEM)CSA、血 管内腔CSA、プラーク面積率([EEM CSA - 血管内腔CSA]/ EEM CSA)を測定した。ステント拡張率は、最小ステントCSA / ([近位対照血管内腔CSA + 遠位対照血管内腔CSA]× 1/2) として算出した。半径方向のstent symmetry indexは最小 ステント径/最大ステント径、軸方向のstent symmetry index は最小ステントCSA/最大ステントCSAとした9。さらに定性的な IVUS分析を実施し、ステントエッジの解離と組織の突出を調 べた。ステントエッジの解離は、視認できるフラップを伴うステント エッジ(ステントの近位部及び遠位部5mm未満)で血管内腔 表面が破裂と定義した10。また、エッジの解離は内膜か中膜で 分類した。内膜の解離は内膜のプラーク内での血管内腔表面 の破裂と定義し、中膜の解離は内膜の弾性膜まで広がる血管 内腔表面の破裂と定義した。組織の突出は、IVUS像におい て、円弧状に広がったステントストラット間でステント内部に組織 の突出が見られる場合と定義した10。組織の突出面積は、組織 の突出が最大となる断面像でステントCSAから血管内腔CSA を引いた値とした。*2 米国カリフォルニア州Santa Clara, Indec Systems
定義及びフォローアップ
高血圧は、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が 90mmHg以上、あるいは入院時に降圧剤を使用していること と定義した。脂質異常症は、総コレステロール220mg/dL以 上、LDLコレステロール 140mg/dL以上、HDLコレステロール 40mg/dL未満、空腹時トリグリセリド150mg/dL以上、または脂 質異常症治療薬の使用と定義した。糖尿病は、空腹時血糖 値126mg/dL以上、ブドウ糖負荷2時間後の血糖値200mg/ dL以上、HbA1c 6.5%以上、またはインスリンもしくは経口血糖 降下薬の使用と定義した。慢性腎臓病(CKD)は、3ヵ月以上 にわたり糸球体濾過量が60mL/min/1.73m2未満であった場 合と定義した。透析は末期腎不全に対する血液透析とした。 喫煙は、現喫煙者と元喫煙者の両方と定義した。冠動脈疾患 (CAD)は、CADと診断された場合、経皮的冠動脈インターベ ンションまたは冠動脈バイパスグラフト手術の既往がある場合、 または心筋梗塞の既往がある安定狭心症と定義した。脳血管 疾患は、一過性虚血性発作または虚血性脳卒中の診断によ る入院または神経科医の報告がある場合と定義した。Run-off vessel は手技後の血管造影にて評価した。 手技の成功は、残存狭窄が30%未満であり、血管造影で血 流を制限する解離がないことと定義した。症状及び足関節上 腕血圧比(ABI)など術後の臨床評価は、EVT後1、3、6ヵ月目 に実施し、その後は外来受診時の6ヵ月毎に評価した。観察期 血管内治療、血管内超音波法、再狭窄、自己拡張型ナイチノール製ステント、浅大腿動脈方 法
浅大腿動脈病変における自己拡張型ナイチノール製ステント留置の長期成績に対する術後血管内超音波検査 (IVUS)所見の影響
間中にPADの臨床症状再発またはABIスコアの低下が認めら れれば、標的病変の再狭窄を特定するためデュプレックス超音 波検査を実施した。標的病変のデュプレックス超音波検査で最 大収縮期血流速度比(PSVR)が2.4を越えておりステント内再 狭窄が疑われる場合11、診断的血管造影を実施した。TLRは、 血管造影上で75%以上の狭窄がみられた場合に、ステント留 置セグメント内またはステント近位もしくは遠位5mm以内で、経 皮的または外科的再血行再建などを実施した。統計解析
データは平均±標準偏差で示した。連続型変数は、対応の ないt検定またはMann-WhitneyのU検定を用いて評価した。 カテゴリー変数はχ2検定またはFisherの直接確率検定を用い て比較した。単変量及び多変量ロジスティック回帰分析を実施 し、TLRの独立した予測因子を特定した。単変量解析にてP< 0.05であった因子(女性、ステント全長、最小ステントCSA、遠位 対照EEM CSA、ステントエッジの解離)を多変量回帰モデルに 含めた。TASC Ⅱ分類及びステント数はステント全長に関連し ていたため、ロジスティック回帰モデルに含めなかった。P<0.05 を統計的に有意とした。患者及び手技
5年間で、兵庫医科大学にて新規SFA病変に対しEVT 439 件が施行された。このうち解析対象から除外した症例は、手技 中に自己拡張型ナイチノール製ステントが使用されなかった症例 (48病変)、膝関節下側の病変に追加のEVTを必要とした症 例(42病変)、IVUSカテーテルがステント内を通過しなかった症 例(37病変)、血栓病変にEVTが施行された症例(21病変)、 EVT後も大動脈腸骨動脈または膝窩の病変が認められた症 例(15病変)、EVTの開始時に失敗があった症例(5病変)、 IVUS像が解析には不十分であった症例(4病変)であった。 新規SFA病変に対してナイチノール製ステント留置を行ったが 12ヵ月以上観察できなかった31病変は解析から除外した。 平均観察期間は34±15ヵ月であった。この期間中、42病変 (17.8%)に対してTLRが施行された。初回手術からTLRま での期間は平均13±9ヵ月(4~45ヵ月)であった。患者のベー スライン特性を表1に示す。TLR群では非TLR群に比べて、 女性患者の割合が高く(37% vs. 20%、P=0.04)、年齢に有意 差はなかった(71.2±9.4歳 vs. 72.2±8.8歳、P=0.50)。2群間の 高血圧、脂質異常症、糖尿病、CKDの有病率、透析の実施 率に有意差はなかった。2群間で、重症下肢虚血(CLI)の比 率(14% vs. 21%、P=0.40)、シロスタゾールの使用(64% vs. 69%、P=0.59)は同様であった。病変と手技のベースライン特 性を表2に示す。TASC Ⅱ分類 C/D型の病変はTLR群のほ うが非TLR群よりも多かったが(76% vs. 56%、P=0.02)、慢 性完全閉塞(CTO)の病変の比率は同様であった(62% vs. 52%、P=0.29)。TLR群のステント全長は非TLR群に比べて長 く(213.1±75.4mm vs. 169.8±90.0mm、P=0.04)、ステント数は 多かった(2.4±0.8 vs. 2.0±0.9、P<0.01)。IVUS所見
術後のIVUSの所見を表3に示す。TLR群と非TLR群で、 ステント拡張率、半径方向のstent symmetry index、軸方向 のstent symmetry index(図1)、近位対照EEM CSA、また は近位対照血管内腔CSAに有意差は認められなかった。しか し、最小ステントCSAはTLR群が非TLR群に比べて有意に小 さかった(13.4±4.0mm2 vs. 14.9±4.3mm2、P=0.04)。また、遠位対照EEM CSA と遠位対照血管内腔CSAは非TLR群に 比べてTLR群では有意に小さかった(それぞれ32.3±10.7mm2 非TLR群(n=194) TLR群(n=42) P値 年齢(歳) 72.2±8.8 71.2±9.4 0.50 女性 38 (20) 15 (37) 0.04 BMI 21.9±3.6 21.6±3.6 0.54 高血圧 160 (82) 39 (93) 0.11 脂質異常症 111 (57) 29 (69) 0.17 糖尿病 126 (65) 39 (71) 0.48 喫煙 154 (79) 31 (74) 0.42 慢性腎臓病 107 (55) 16 (38) 0.06 透析 41 (21) 5 (12) 0.20 冠動脈疾患 72 (37) 14 (33) 0.73 脳血管疾患 45 (23) 10 (24) 1.00 ABI 0.67±0.18 0.63±0.17 0.27 間歇性跛行 重症下肢虚血 154 (79)40 (21) 36 (86)6 (14) 0.40 投薬治療 アスピリン チエノピリジン シロスタゾール スタチン 194 (100) 62 (32) 134 (69) 80 (41) 42 (100) 15 (36) 27 (64) 21 (50) 1.00 0.72 0.59 0.31 TLR ; 標的病変再血行再建 表1 患者のベースライン特性 非TLR群(n=194) TLR群(n=42) P値 慢性完全閉塞 100 (52) 26 (62) 0.29 Run-off vessel 0/1/2/3 12/49/75/37 3/12/16/11 0.83 TASC Ⅱ分類 A/B型 C/D型 108 (56)86 (44) 10 (24)32 (76) 0.02 ステント径(mm) 6.6±0.7 6.5±0.6 0.51 ステント全長(mm) 169.8±90.0 213.1±75.4 0.04 使用ステント数 2.0±0.9 2.4±0.8 0.002
TASC, Trans-Atlantic Inter-Society Consensus TLR ; 標的病変再血行再建
表2 病変・手技のベースライン特性
結 果
症例数(%)または平均値±SD
浅大腿動脈病変における自己拡張型ナイチノール製ステント留置の長期成績に対する術後血管内超音波検査 (IVUS)所見の影響
vs. 25.1±7.6mm2、P=0.006、22.8±8.0mm2 vs. 19.0±8.3mm2、 P<0.001、図2)。 エッジの解離は56病変(23.7%)でみられ、その内訳はステン ト遠位(28病変)、ステント近位(22病変)、ステントの近位・遠位 の両方(6病変)であった。これら56病変のエッジの解離のうち、 血管造影で検出されたのは14病変のみ(25%)であった。全体 としてのステントエッジの解離はTLR群が非TLR群より多かった (45.2% vs. 19.1%、P<0.001)。内膜のステントエッジの解離の 発生率は2群間で有意差は認められなかったが、中 膜での解離はTLR群のほうが非TLR群よりも多かった (23.8% vs. 7.2%、P=0.003)。ステント留置後の組織 の突出の発生率及び突出面積は2群間で同様であっ た。TLR病変の典型的なIVUS像を図3に示す。TLRの単変量及び
多変量ロジスティック回帰分析
単変量及び多変量ロジスティック回帰分析を行い、 TLRの独立した予測因子を調べた(表4)。多変量解 析により、ステント全長(オッズ比[OR] : 1.004、95%信 頼区間[CI] : 1.000-1.008、 P<0.05)、遠位対照EEM CSA(OR : 0.91、95% CI : 0.86-0.96、P<0.01)、ステント エッジの解離の総数(OR : 3.51、95% CI : 1.63-7.57、 P<0.01)がTLRの独立した予測因子であることが示 された。女性および最小ステントCSAはTLRの独立し た予測因子ではなかった。 図1 術後IVUS所見によるステント拡張率、 stentsymmetryindex(半径方向、軸方向)の評価 図3 TLRを施行した症例(69歳、男性) 図2 遠位対照血管の術後IVUS所見 TLR群 TLR群 TLR群 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 50 45 40 35 30 25 20 15 10 ステント拡張率 軸方向 半径方向 p=0.64 p=0.77 p=0.31 p<0.001 p=0.006遠位EEM CSA 遠位血管内腔CSA stent symmetry index
非TLR群 (mm2) 非TLR群 非TLR群 TLR群 非TLR群 非TLR群 TLR群 TLR群 TLR群 TLR群 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 50 45 40 35 30 25 20 15 10 ステント拡張率 軸方向 半径方向 p=0.64 p=0.77 p=0.31 p<0.001 p=0.006
遠位EEM CSA 遠位血管内腔CSA stent symmetry index
非TLR群 (mm2) 非TLR群 非TLR群 TLR群 非TLR群 非TLR群 TLR群 非TLR群(n=194) TLR群(n=42) P値 最大ステントCSA(mm2) 26.4±8.6 24.6±7.4 0.23 最小ステントCSA(mm2) 14.9±4.3 13.4±4.0 0.04 対照セグメント 近位EEM CSA(mm2) 近位血管内腔CSA(mm2) 近位プラーク面積率 遠位EEM CSA(mm2) 遠位血管内腔CSA(mm2) 遠位プラーク面積率 46.3±19.3 30.9±13.4 46.8±11.3 32.3±10.7 22.8±8.0 45.4±11.3 44.3±19.0 30.2±13.9 48.0±9.7 25.1±7.6 19.0±8.3 48.9±11.4 0.54 0.75 0.53 0.006 <0.001 0.07 ステント拡張率 0.59±0.17 0.57±0.16 0.64 半径方向stent symmetry index 0.65±0.11 0.66±0.11 0.77 軸方向stent symmetry index 0.59±0.15 0.56±0.15 0.31 ステントエッジの解離 内膜での解離 中膜での解離 37 (19.1) 23 (11.9) 14 (7.2) 19 (45.2) 9 (21.4) 10 (23.8) <0.001 0.13 0.003 組織の突出 26 (13.4) 7 (16.7) 0.62 組織突出面積(mm2) 3.8±2.6 3.9±2.1 0.92
CSA ; 断面積 EEM ; 外弾性板 IVUS ; 血管内超音波法 TLR ; 標的病変再血行再建 表3 術後IVUS所見 症例数(%)または平均値±SD TLR群と非TLR群で、ステント拡張率、stentsymmetryindex(半径方向、 軸方向)に有意差は見られなかった。 遠位EEMCSAと遠位血管内腔CSAは、非TLR群に比べてTLR群では有意 に小さかった。(順に、32.3±10.7mm2vs.25.1±7.6mm2、P=0.006、22.8± 8.0mm2vs.19.0±8.3mm2、P<0.001) (A)SFA症例(右肢)の自己拡張型ナイチノール製ステント留置後の血管造影 像。ステントエッジの解離は血管造影では確認できない (A1-4)ステント留置後のIVUS像 (A1)ステント近位における中膜での解離 (A2)最大ステントCSAにおける断面像 (A3)最小ステントCSAにおける断面像 (A4)ステント遠位における内膜での解離 (B)ステント留置8ヵ月後、血管造影ではステント内の再狭窄が見られる
浅大腿動脈病変における自己拡張型ナイチノール製ステント留置の長期成績に対する術後血管内超音波検査 (IVUS)所見の影響
IVUS所見を用いた本試験では、ステント全長が長い、遠位 対照血管が小さい、ステントエッジの解離があるという因子が、 SFA新規病変に対する自己拡張型ナイチノール製ステント留 置後のTLRと強く関連していることがわかった。ステントの拡 張不十分及び非対称性のステント拡張はSFA病変における EVT後のTLRとの関連は認められなかった。我々の知る限り では、本試験はSFA病変に自己拡張型ナイチノール製ステント を留置後、術後のIVUS所見と長期成績の関係を明らかにし た初めての研究である。 ステント留置は近年、PAD患者の侵襲治療の主流となって いるが、ステント内再狭窄は、SFA病変のステント留置手技の 30~40%に生じる可能性が報告されている4, 12, 13。これは、EVT 後に最も多くみられる早期合併症であり、いまだに大きな臨床 的課題である。IVUSによりステント留置後の冠動脈の断層像 が得られることから、我々は、SFA病変への自己拡張型ナイチ ノール製ステント留置後のTLR発生に関連する重要な特徴が わかると考えている。 これまでに報告されている再狭窄率は、FAST試験で 32%12、ASTRON試験で34%13、ABSOLUTE試験で36%4で あった。これらの再狭窄率はSIROCCO試験14の報告より比較 的高い。Dudaらは、自己拡張型ナイチノール製ステントを用い たSIROCCO試験において、ステント留置 群の24ヵ月目の再狭窄率は21%に過ぎな いと報告している15。ただし、SIROCCO試 験における平均病変長は83mmであり他 の試験より短い。この結果は、SFA病変に 対する自己拡張型ナイチノール製ステント 使用後のTLRにステント全長が関連して いるという本研究の結果を裏付けている。 今回の結果と同様に、Krankenbergらは、 SFA病変へのナイチノール製ステント留 置後12ヵ月目のTLR施行率は14.9%である と報告しており12、Schillingerらは留置後 24ヵ月目のTLR施行率は21.7%であったと 報告している6。女性、若齢、糖尿病、シロス タゾールの使用なし、CLI、CTO、TASC Ⅱ分類 C/D型病変、ステント破損はSFA 病変でのナイチノール製ステント留置後の 再狭窄と関連していた16-18。本研究の単変 量解析では、非TLR群よりもTLR群におい て女性およびTASC Ⅱ分類 C/D型病変 が多かったが、年齢、糖尿病、シロスタゾー ルの使用、CLI、CTOは群間で同様であっ た。過去の研究では、シロスタゾールの使用によりSFA病変へ のステント留置後の再狭窄が予防されると報告されている19, 20。 SFA病変へのステント留置後のシロスタゾールによる再狭窄予 防については、いくつかのメカニズムが示されている。シロスタ ゾールは内膜過形成を阻害し血管拡張作用がある21。本研究 と過去の研究の差については完全には明らかではなく、症例数 の差による可能性が考えられる。本研究ではSFA病変の患者 236人のみを対象とした。他の理由としては、試験における評価 項目の違いが考えられる。過去の研究では血管造影上の再狭 窄が評価項目とされていたが、本研究ではTLRを評価項目とし た。これらの理由により過去の研究と本研究の差を説明できると 考えられる。 ステント留置の確認は血管造影で判断するが、血管造影で はステントの完全かつ均一な拡張を評価する際に必要となる 三次元の形状はわからない。また、ステントストラットと血管壁の 密接な接触とステントの対称的な拡張は血管造影では確認で きない。中村らは、血管造影の結果は適切であったにもかかわ らず、IVUSでは不完全かつ非対称に拡張されたステントが多 かったことを報告している22。しかし、インターベンション後及び観 察時に連続的にIVUSの撮像を行った過去の研究では、ステン トを留置した部位内の観察時に、ステントの対称性と新生内膜 組織の量は相関していなかった23。さらに、個々のステントにおけ る最も悪いasymmetry indexは、全体的な新生内膜組織の 量と相関していなかった。これらのデータはステントの対称性は 単変量解析 多変量解析 OR(95%信頼区間) P値 OR(95%信頼区間) P値 女性 2.28 (1.11–4.70) 0.03 1.57 (0.70–3.50) 0.27 高血圧 2.76 (0.81–9.46) 0.11 脂質異常症 1.67 (0.82–3.40) 0.16 糖尿病 1.33 (0.64–2.77) 0.45 慢性腎臓病 0.50 (0.25–0.99) 0.06 透析 0.50 (0.19–1.37) 0.18 間歇性跛行 0.64 (0.25–1.63) 0.35 シロスタゾール 0.81 (0.40–1.62) 0.55 慢性完全閉塞 1.53 (0.77–3.01) 0.22 Run-off vessel 0/1 1.11 (0.55–2.25) 0.78 ステント径(mm2) 0.84 (0.50–1.42) 0.51 ステント全長(mm2) 1.006 (1.002–1.009) <0.01 1.004 (1.000–1.008) 0.04 最小ステントCSA(mm2) 0.91 (0.83–0.99) 0.04 1.05 (0.94–1.17) 0.38 対照セグメント 近位EEM CSA(mm2) 近位プラーク面積比 遠位EEM CSA(mm2) 遠位プラーク面積比 0.99 (0.98–1.01) 1.01 (0.98–1.04) 0.91 (0.87–0.95) 1.03 (1.00–1.06) 0.54 0.52 <0.001 0.07 0.91 (0.86–0.96) <0.01 ステント拡張率 0.62 (0.08–4.60) 0.64半径方向stent symmetry index 1.57 (0.08–32.27) 0.77 軸方向stent symmetry index 0.31 (0.03–2.87) 0.30
ステントエッジの解離 3.51 (1.73–7.10) <0.001 3.51 (1.63–7.57) <0.01
表4 TLRに対するロジスティック回帰分析
浅大腿動脈病変における自己拡張型ナイチノール製ステント留置の長期成績に対する術後血管内超音波検査 (IVUS)所見の影響
留置した部位内の新生内膜形成に影響しない可能性を示唆 している。本研究の結果と同様に、過去の冠動脈内超音波に 関する研究では、ステント拡張の非対称性が新生内膜組織量 および再狭窄率と関連していなかったことが報告されている24。 本研究ではSFA病変に対するステント過拡張は、必ずしも自己 拡張型ナイチノール製ステントの留置後に必ずしも必要ではな いことがわかった。この結果は、留置後も継続してステントが拡 張している可能性を示唆している。冠動脈では、ステントが持続 的に拡張する利点は血管の内膜過形成増加により相殺されて いるものの、自己拡張型ナイチノール製ステントはステント留置 6ヵ月後のIVUS像ではバルーン拡張ステントに比べてステント 径が大きかった25。しかし、今回の研究で使用したステントの種 類は過去の研究と異なるためメカニズムが異なる可能性があ る。さらに結果を再確認するにはIVUS所見を用いた前向きの 連続的な研究が必要である。 これまでのIVUS研究では、冠動脈病変へのステント留置 後、ステントエッジの解離が認められる病変におけるTLR発生 率は、ステントエッジの解離が認められない病変と同等であるこ とが示されている26。ただし、本研究では、TLR群のステントエッ ジの解離の発生率は非TLR群よりも有意に高かった。さらに、 ステントエッジの解離は、SFA病変への自己拡張型ナイチノー ル製ステント留置後のTLR発生の独立した予測因子の1つで あることがわかった。過去の報告と本研究で結果が異なる理由 は不明であるが、留置されたステントのタイプ(バルーン拡張型 ステンレススチール製ステント vs. 自己拡張型ナイチノール製ス テント)、動脈のサイズ(冠動脈 vs. 浅大腿動脈)の違いが関係 している可能性がある。本試験では、内膜におけるステントエッ ジ解離の発生率はTLR群と非TLR群で同様であったが、深部 の中膜におけるステントエッジ解離の発生率は非TLR群よりも TLR群で高かった。これは、深部でのエッジ解離後に血管壁に 対して持続的にかかった力が他の動脈損傷を引き起こし、内 膜過形成が起こっている可能性を示唆している。本研究では、 ステント留置後の血管造影では、IVUSにて確認されたステント エッジ解離の25%しか検出されなかった。これは、適切なステン トサイズまたはバルーンサイズを決定するというIVUSの用途に 加え、IVUSを用いたステントエッジ解離の確認がTLR予防の ため臨床現場で有用になる可能性を示唆している。研究の限界
本研究は、単一施設にて前向きに収集した観察データを後 ろ向きに解析したものである。大規模な患者集団にてこの結果 を再確認するためには、さらなる多施設前向き研究が必要であ る。これまでの研究では、ステントの破損がEVT後の臨床成績 に影響することが報告されているが27、ステント破損を検出する ためにX線像を撮影していないため、これらのデータは本研究 には含めなかった。本研究では、すべてのIVUS撮像を20-MHz IVUS トランスデューサーを用いて実施した。そのため、この所 見が他のIVUSシステムに適用できるかどうかは不明である。 ステントを留置したセグメントが長いため(TLR群で213.1mm、 非TLR群で169.8mm)、SFA病変を介したIVUSの引き戻しは 用手にて実施した。ほとんどのCTO病変において、前拡張を行 うことなくIVUSカテーテルを病変まで進めることはできないため (n=126, 53%)、手技前のIVUS所見は今回の解析に含めな かった。SFA病変におけるEVT後の血管造影及びIVUSによ る観察は兵庫医科大学ではルーチンでは行っていないが、血 管造影及びIVUSによる観察を行わなかった全症例において 症状が認められなかったため、血管造影の施行率が低いこと はデータの臨床的妥当性に影響しない。一方で、血管造影の 施行率が高いことにより再狭窄率に関するより信頼性の高い情 報が得られたが、本観察研究の主要評価項目の1つである虚 血によるTLRの発生率の情報は得られなかったと考えられる。 SFA病変において、小さな対照血管へのステント留置とステ ントエッジの解離はTLRの高リスクの指標であることがわかっ た。一方で、術後のステント拡張不十分とステント非対称性は TLRと関連していなかった。ステントの完全拡張は、SFA病変 への自己拡張型ナイチノール製ステント留置後の長期成績の 改善にはつながらない可能性がある。結 論
IVUS intravascular ultrasound 血管内超音波検査
CSA cross-sectional area 断面積
TLR target lesion revascularization 標的病変再血行再建
EVT endovascular therapy 血管内治療
SFA superficial femoral artery 浅大腿動脈
PAD peripheral artery disease 末梢動脈疾患
TASC Trans-Atlantic Inter-Society Consensus
EEM external elastic membrane 外弾性板
CKD chronic kidney disease 慢性腎臓病
CAD coronary artery disease 冠動脈疾患
ABI ankle brachial index 足関節上腕血圧比
PSVR peak systolic velocity ratio 最大収縮期血流速度比
CLI critical limb ischemia 重症下肢虚血
CTO chronic total occlusion 慢性完全閉塞
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