海事判例研究(松田)
判示事項
1 .船橋当直には、漁船が引船の右舷正横を航過した時点で、漁船が曳航索ある いは台船と衝突することを予見し、引船の探照灯を照射して、漁船に対して 台船の船体を明示する義務があったというべきである。
2 .曳船者と被曳船者が各運航につき個別具体的な指揮命令関係にあった、ある いは、被曳船者が引船の実質的な所有者として支配していたとまでは認め難 いから、被曳船者が商法690条に基づき本件事故による損害を賠償する責任 を負うとはいえない。
3 .漁船の共有者らは、義務なく当該漁船の曳航作業を営業の範囲内の行為とし て行った者に対し、商法512条に基づき、諸費用及び相当額と認められる報 酬等を支払う義務(この義務は、その性質上、不可分債務であるというべきであ る。)を負うものと認めることができる。
Ⅰ 事実の概要
本件は、平成22年 9 月27日に山口県長門市川尻岬北東方沖において発生した、
C(本訴被告、反訴原告、被控訴人)の所有する引船 T が B 社(本訴被告、反訴原 告、被控訴人)の所有する台船 S を曳航する引船列(以下、「本件引船列」という。)
判例評釈
〔海事判例研究〕
早稲田大学海法研究所・判例研究会[第14回]
引船列と漁船との衝突事故において引船列の過失の有無等が 問題となった事例
(広島高判平成28年 3 月11日海事法研究会誌232号49頁、原審:山口地萩支判平成27年 2 月 6 日海事法研究会誌233号63頁)
松 田 真 治
早法 96 巻 1 号(2020)
と A が所有し乗務する小型漁船 U 丸との衝突事故(以下、「本件事故」という。)
に関するものである。
A(昭和18年生、本件事故当時66歳)は、同人の所有する漁船 U 丸に乗務し、漁 業を営んでいた者である。A1(本訴原告、反訴被告、控訴人)は A の妻であり、
A2(同)、A3(同)、A4(同)は、A の子である。B 社は、海上運送業等を営む 株式会社であり、台船 S を所有している。C は、引船 T を所有し、船長として 運航していた者である。D は、本件事故当時引船 T に乗務していた二等航海士 である。
本件引船列は、台船 S(全長60m、機関なし)の両舷側クロスビットに固定され た長さ25m・直径32mm の 2 本のブライダルワイヤーの頂部に長さ50m・直径 85mm のナイロン製ロープを連結し、同ロープの他端を引船 T のトーイングウ インチから延ばした直径34mm の曳航ワイヤーと連結していた(これらを併せて、
「本件曳航索」という。)。本件事故当時、引船 T の船尾から測った曳航ワイヤーの 長さは175m であったので、引船 T の船尾から台船 S の船尾までの長さは約 310m であり、本件曳航索は、その両端部分を除き、海面下に沈んでいた。
平成22年 9 月18日、引船 T は、積荷を下した後の空の台船 S を引いて三厩港 から出航し、途中境港に寄港し、関門港若松区に向かい、日本海を南下した。引 船 T には、船長 C、一等航海士及び二等航海士 D が乗務しており、 4 時間交代 で単独の船橋当直に就いていた。同月26日午後 6 時30分から午後10時30分までは C が、同日午後10時30分から翌午前 2 時30分までは D が船橋当直に就く予定で あり、D は、午後10時25分、昇橋し、C から船橋当直を引き継いだ。D は、本 件事故の約 4 分前、引船 T の進行方向から右に30度の前方約 1 海里の地点に、
赤色の灯火を点灯している小型漁船(漁船 U 丸)を発見した。その後も、引船 T から見た漁船 U 丸の方位が変わらない状態で双方が針路を維持していたが、双 方の距離が約0.5海里となった時点で、漁船 U 丸が左転し、引船 T に緑色の灯火 を見せる状態となった。翌 0 時30分頃、漁船 U 丸が引船 T の右舷横を通過した 後に右転し、台船 S の右舷側ブライダルワイヤーに乗り上げて転覆し、台船 S の船底に引き込まれた。漁船 U 丸に乗務していた A は、転覆した漁船 U 丸の船 内で溺死した。なお、本件事故により転覆した漁船 U 丸は、B 社の手配により 港湾施設まで曳航された。この曳航作業に要した費用は B 社が支払った。
ところで、引船 T は、法定灯火であるマスト灯 3 個、舷灯一対、船尾灯 1 個 及び引き船灯 1 個を掲げていた。他方で、台船 S の法定灯火は舷灯一対及び船 尾灯 1 個であるところ、同船は少なくとも三厩港を出港後はこれらの法定灯火の いずれも掲げていなかったが、 9 個の点滅灯(以下、「簡易灯火」という。)を装備 していた。これは、境港を出航する時点で、台船 S の法定灯火のためのバッテ
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リーに対する充電は終わっていたので台船 S に法定灯火を設置することは可能 であったが、空の場合はこれを設置しないとの船長 C の方針により設置されな かったという事情があった。引船 T の船橋後部の煙突後方には後部探照灯(以 下、「本件探照灯」という。)が備え付けられている。その点灯用スイッチ及び可動 用スティックは操舵室天井右舷側のコントロールボックス内に設置されており、
本件事故当時、正常に作動していた。
C は、A1 らに対し、平成23年 5 月31日までに本件事故の損害賠償金の内払金 として500万円を支払った。他方、B 社は、A1 らに対し、同年 3 月 8 日までに、
転覆した漁船 U 丸の曳航に要した費用等を支払うよう催告した。
D は、平成24年 3 月29日、小倉簡易裁判所において、概略、汽笛信号又は発 光信号を行い、あるいは探照灯を照射して台船 S を曳航していることを確認で きる措置を講じるなどの業務上の注意義務を怠って本件事故を生じさせたとし て、業務上過失往来危険、業務上過失致死の各罪で、罰金30万円の略式命令に処 された。
また、門司地方海難審判所は、平成24年12月11日、概略、引船 T に表示され る連携された 3 灯のマスト灯を見て引船列であると判断するしかなく、仮に台船 S に表示された舷灯を見たとしても、それだけでは引船 T と台船 S が引船列を 構成していることを認識することができないとして、C が台船 S に法定灯火を 表示していなかったことは本件事故の一因とはならないとして、C を懲戒しない 旨の裁決をし、他方、D には漁船 U 丸に対する動静監視が不十分であり、探照 灯で台船 S を照射するとともにエアホーンによる注意喚起信号を行わずに進行 した職務上の過失があったとして、D を戒告する旨の裁決をした(門司海難審判 所平成24年門第10号)。
D は、東京高裁に対し、平成25年 1 月 8 日、門司地方海難審判所の裁決の取消 しを求める訴えを提起した(東京高裁平成25年(行ケ)第 2 号)。同裁判所は、概 略、D において本件事故を避ける余地が全くなかったということはできないが、
漁船 U 丸が引船 T の右舷を航過した後も注視し続けるべきであったとはいえ ず、漁船 U 丸との衝突の危険が相当程度あることを認識することもできなかっ たとし、仮に探照灯で台船 S を照射し警報を鳴らして注意喚起したとしても、A が直ちに危険を察知して回避措置を講じることができたともいえないとし、D に海技士としての職務上の過失があったと評価することはできないとして、D に対する上記裁決を取り消す判決をした。
A1 らは、山口地裁萩支部に対し、平成25年 4 月15日、本訴を提起した(B 社 及び C に対する損害賠償請求)。他方、B 社及び C は、同年11月28日、反訴を提起 した(B 社は、漁船 U 丸の曳航費用等を請求し、C は、損害賠償のほか、すでに A1 ら
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に支払った損害賠償金の内払金の返還を求めた。なお、平成26年11月 4 日に訴えの変更 申立書を提出し、請求を拡張した)。
本件の争点は、本訴関係として、① B 社及び C の責任原因、②本件事故によ り A に生じた損害、反訴関係として、③ B 社による漁船 U 丸の撤去費用及び報 酬の請求の可否、④ A1 らの C に対する損害賠償義務の有無、⑤本件事故により C に生じた損害、⑥ A1 らが C から受領した500万円が不当利得となるか否か、
である。
原審である山口地裁萩支判平成27年 2 月 6 日は、A1 らの本訴請求を棄却した 一方、B 社の反訴請求を認容し、C の反訴請求を一部認容した。
そこで、A1 らが、控訴した。
Ⅱ 判決要旨 原判決変更(A1 らの請求一部認容等)
1 .本訴関係:B 社および C の責任
控訴審は、本件事故の直接の原因を、A が、本件曳航索及び台船 S の存在を 認識しないままに漁船 U 丸を右転させ、台船 S の船首の直前まで漁船 U 丸を進 行させたことであるとしたうえで、A が、本件曳航索及び台船 S の存在を認識 していなかったことにつき、C 及び D に過失があるかを検討する。
( 1 )D は、漁船 U 丸の注意を喚起するために、引船 T の本件探照灯で台船 S の船体を照射する義務があったか。
控訴審は、まず、D の認識について検討する。すなわち、①本件事故の現場 海域についての D の認識(いか釣り漁船が多く出漁する海域。C からも注意するよ う引継ぎを受ける。)、②漁港に戻るいか釣り漁船の航路についての D の認識(漁 港を目指して右転することを認識し得た。)、③周囲の漁船が引船 T の法定灯火の意 味を正解しているか否かについての D の認識(小型漁船の船長が正解しているとは 限らない、あるいは正解していたとしても必ずしもそれに従った行動をとらない者が少 なからず存在するという現実を認識。)、④漁船 U 丸から見た台船 S あるいはその 簡易灯火の視認可能性についての D の認識(視認可能性が劣ることを認識していた と推認。船体の全部又は一部が浮かび上がるようなものでもなく、夜間航行経験を有す る二等航海士として、そのことを認識していたものと推認できる。)、⑤ D は、漁船 U 丸が引船 T の右舷正横を航過した時点で、漁船 U 丸が本件曳航索に接触し、あ るいは台船 S と衝突する可能性を認識し、あるいは認識し得たこと(海上保安官 に対する供述調書等から。)である。次いで、以下のように述べる。
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「法定灯火と異なる灯火を掲げる場合は、それが船舶であることを法定灯火と 同様の効果をもって示す義務があるというべきであること、引船 T の本件探照 灯で台船 S の船体を照射するのは容易であること…を考慮すれば、D には、漁 船 U 丸が引船 T の右舷正横を航過した時点で、漁船 U 丸が本件曳航索あるいは 台船 S に気付かないまま、右転して進行し、本件曳航索あるいは台船 S と衝突 することを予見し、引船 T の本件探照灯を照射して、漁船 U 丸に対して台船 S の船体を明示する義務があったというべきである。
なお、引船 T の本件探照灯で台船 S の船体を照射しても、それによって直ち に海面下の本件曳航索の存在までもが明示されるものではないが、本件事故前の 漁船 U 丸の航路に照らせば、A が本件曳航索の存在を認識していないことを前 提としても、台船 S の後方を航過したと認められるから、台船 S の船体の照射 により本件事故を回避することができたといえる。」
( 2 )C が台船 S に法定灯火を掲げなかったことは、本件事故との関係で過失と なるか。
「台船 S の簡易灯火は、その効果において法定灯火に代替し得るものではな く、簡易灯火の表示を理由として法定灯火の表示義務を免れることはできない。」
「…台船 S が法定灯火である舷灯を掲げていれば、A は、漁船 U 丸が引船 T の右舷正横を航過する前から、引船 T の後方にも船がいることを認識できたは ずである。A は、台船 S の存在を認識していなかったからこそ、引船 T を航過 した後に右転して台船 S の直前を横切る針路を定めたが、仮に台船 S の舷灯を 認識していれば、本件曳航索の存在を認識していないことを前提としても、台船 S の後方を航過する針路を定めたはずである。本件事故直前の漁船 U 丸の航路 及び漁船 U 丸と引船 T の速度(漁船 U 丸が12ノットないし13ノット…、引船 T が 7 ノット)に照らせば、台船 S のさらに前方(引船 T に近い側)を横切ろうとした とは考えられない。」
「したがって、仮に台船 S が舷灯を表示していても漁船 U 丸が本件曳航索に衝 突したとの主張は合理的なものではなく、台船 S が舷灯を表示することにより 本件事故を回避することができたと認めるのが相当であるから、C が台船 S に 法定灯火を表示しなかったことは本件事故と因果関係のある過失を構成するとい うべきである。」
( 3 )B 社の責任について
「A1 らは、引船 T が台船 S を曳航することが長年にわたり固定化していたこ と、C が B 社の信用の下に引船 T を運行していたこと等の事情を挙げて、引船
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T は事実上 B 社の船舶として、同会社の指揮命令の下に運航されていた旨主張 する。
しかし、引船 T は、B 社以外の海運会社が所有する台船を曳航することもあ り、台船 S も引船 T 以外の引船に曳航されることもあること…、C は、主とし て B 社と曳航契約を締結していたものの、目的地等の指示を受けるほかに具体 的な曳航作業につき B 社から指揮命令を受けることはなかったこと…に照らせ ば、B 社らの間には曳航代金と燃料費等を簡便に精算するなどの取引関係がある ものの…、それ以上に各運航につき個別具体的な指揮命令関係にあった、あるい は、B 社が引船 T の実質的な所有者として支配していたとまでは認め難いとい うべきである。
したがって、B 社が商法690条に基づき本件事故による損害を賠償する責任を 負うとはいえない。」
( 4 )過失相殺について
「過失相殺の割合につき考えるに、D が本件探照灯で台船 S を照射することは 容易であったこと、夜間の海上交通における舷灯の重要性を軽視すべきでないこ と、他方、… A が三連マスト灯の意味を正解していなかったことには過失があ るが、それは…小型船舶の船長等にとって必ずしも特異な例とはいい難いこと、
また、A が台船 S の存在を見落とした過失についても、…あり得ないこととはい えないこと等の事情を斟酌すると、A が負担すべき過失相殺割合を 6 割とする のが相当である。」
2 .反訴関係(B 社):漁船 U 丸の撤去費用・報酬請求の可否
「( 1 )漁船 U 丸は、本件事故により転覆し、その後、B 社の手配により港湾 施設まで曳航され、B 社は、これら曳航作業の手配によって177万6330円の費用 を支出した…。
( 2 )B 社が自己の事務ないし義務の履行として漁船 U 丸の曳航作業を行った ことを示す証拠はなく、また、漁船 U 丸の捜索費用に関する A1 らの主張内容
…に照らし、漁船 U 丸の船体の回収が A1 らの意に沿うものと認められること に鑑みれば、B 社は、義務なく A1 らのために漁船 U 丸の曳航作業を行ったと いうべきであり、また、漁船 U 丸の曳航作業は B 社の営業の範囲内の行為であ ると認められる(B 社は、サルベージ業、海上警備等を目的とする株式会社である…)
から、漁船 U 丸の共有者である A1 らは、B 社に対し、商法512条に基づき、上 記諸費用及び相当額(上記諸費用の40パーセント)と認められる報酬の合計248万 6862円及びこれに対する催告日の翌日である平成23年 3 月 9 日から商事法定利
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率年 6 分の割合による遅延損害金を支払う義務(この義務は、その性質上、不可分 債務であるというべきである。)を負うものと認めることができる。」
Ⅲ 評釈
1 .本判決の意義
本件は、夜間において、引船列の台船に漁船が衝突し、漁船船長が死亡した事 案において、一方で、その遺族が、引船所有者及び台船所有者に対して、商法 690条に基づき、損害賠償を請求し、他方で、遺族に対し、引船所有者が損害賠 償等を請求し、また、台船所有者が商法512条に基づき、漁船の撤去費用等を請 求したものである。原審は遺族側の請求を棄却したが、控訴審は、引船船長及び 船員の過失を認め、過失相殺を行った。
本判決の意義は、主に、以下の点にあろう。第 1 に、台船に簡易灯火を掲げる 場合、探照灯を照射して、台船の船体を明示する義務を引船船員に認めた点であ る。もっとも、これは本件事案における義務であって、一般的にこのような義務 が存在するわけではない。第 2 に、引船所有者≠台船所有者の引船列と第三船と の衝突において、指揮命令関係や所有者的支配に着目し、台船所有者の商法690 条の責任を否定した点である。第 3 に、サルベージ業等を営む株式会社が義務な く行った漁船の曳航作業はその営業の範囲内の行為であると認められるから、当 該漁船の共有者は、商法512条に基づき、費用及び報酬を同社に支払う義務を負 うとされた点、及び、同義務は性質上不可分債務であるとされた点である。
本件の争点は、多岐にわたるが、本稿では、引船船員 D が探照灯で台船を照 射する義務の有無( 2 )、引船船長 C が台船の法定灯火を掲げなかったことの過 失と本件事故との因果関係の有無( 3 )、台船所有者の責任の有無( 4 )、漁船撤 去費用請求の可否( 5 )、の検討を行うこととする。
2 .D の過失について
( 1 )各裁判所の判断の違い
原審・控訴審及び門司海難審判所の裁決を取り消した東京高裁における D の 過失についての判断に差異があるため、ここでポイントを抽出することとした
(1)い
。
第 1 に、原審と控訴審では、法定灯火の認識が異なっている(後述 3 ( 2 ))。 簡潔に言えば、原審は、引船 T の法定灯火が掲げられていた以上、D は敢えて 探照灯で台船 S を照射しなくてよいと考えているのに対し、控訴審は、台船 S の簡易灯火の視認可能性が法定灯火のそれよりも劣っているのだから、D は台
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船 S を探照灯で照射しなければならなかったとするのである。
第 2 に、法定灯火を正解しない者が存在する場合に、引船の船員は、それを前 提として行動しなければならないのか、という点である。たしかに、A が法定 灯火を正解していれば、本件事故は生じなかったであろうから、敢えて D が探 照灯で台船を照射すべき義務を負わせるのは過剰であるとの評価もできよう(原 審はこのような立場であろう。)。他方で、法定灯火を正解しない者が存在する以 上、衝突予防のために尽くすべきだというのであれば、控訴審のように、照射義 務を負わせるべきであろう(2)。
第 3 に、D が漁船 U 丸を注視し続けるべきだったか否か。これが、控訴審と 東京高裁の違いである。東京高裁では、海上衝突予防法 5 条(見張り)の観点か ら、過失の判断を行っている(もっとも、これは、控訴審の方では主張がなかったの かもしれない。)。東京高裁は、D の監視範囲には限界があり、引船 T の右舷正横 を航過した漁船 U 丸をその後も監視し続けることが、適切な見張りであるとは いい難いと考えているが、控訴審では、この観点からは何も言及されておらず、
単に、引船 T の構造(探照灯の点灯用スイッチ等の場所)から、「引船 T の本件探 照灯で台船 S の船体を照射するのは容易である」と述べている。
( 3 )本判決の評価
控訴審では、①本件事故の現場海域についての D の認識、②漁港に戻るいか 釣り漁船の航路についての D の認識、③周囲の漁船が引船 T の法定灯火の意味 を正解しているか否かについての D の認識、④漁船 U 丸から見た台船 S あるい はその簡易灯火の視認可能性についての D の認識、⑤漁船 U 丸が引船 T の右舷 正横を航過した時点で、漁船 U 丸が本件曳航索に接触し、あるいは台船 S と衝 突する可能性についての D の認識、が検討された。
控訴審では、「A は引船 T の灯火を認識していたが、三連マスト灯と引船灯の 意味を正解していなかったと認められる」、「小型漁船の船長の中には、三連のマ スト灯を見ても、それが曳航物件の後端までの距離が200m を超える動力船が表 示すべき法定灯火であるとは認識できない者が相当割合いると推認される」と述 べられており、「D も、小型漁船の船長が引船に掲げられた法定灯火の意味を正 解しているとは限らない、あるいは正解していたとしても必ずしもそれに従った 行動をとらない者が少なからず存在するという現実を認識していたというべきで ある」とされている。このような状況下では、他船が法定灯火を正解し、それを 前提とした航行を行うと信頼していたからといって、過失が否定されることはな いであろう。
それでは、仮に D が衝突する可能性を認識できていたとして、探照灯を照射
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しなければならなかったのであろうか。この点、控訴審は、先述したとおり、引 船 T の設備面から、探照灯による照射は容易であったとしているが、やはり、
D を取り巻く状況をも考慮すべきであったように思われる。他方で、東京高裁 は控訴審が重視した漁船の行動をあまり重視していないようである。このように 考えると、結局、探照灯で照射しなければならない状態に D を置いた C の問題 が主であるようにも思われる(東京高裁のように、D の過失は否定してもよかったの ではないだろうか。)。
3 .C の過失について
( 1 )海上衝突予防法における法定灯火と台船 S の灯火
台船 S(全長60m)に関しては、法の定める法定灯火は、舷灯一対及び船尾灯 1 個である(海上衝突予防法24条 4 項)。なお、法は、「他の動力船に引かれている 航行中の船舶その他の物件は、やむを得ない事由により前 2 項の規定による灯火 又は形象物を表示することができない場合は、照明その他その存在を示すために 必要な措置を講ずることをもって足りる」と規定する(同条 6 項)。
本件では、境港を出航する時点で、台船 S の法定灯火のためのバッテリーに 対する充電は終わっていたので、台船 S に法定灯火を設置することは可能であ ったが、空の場合はこれを設置しないとの船長 C の方針により設置されず、9 個 の点滅灯(簡易灯火)を装備していた。なお、台船 S の法定灯火である舷灯及び 船尾灯の視認距離は 3 海里(=5556m)以上とされている(同法22条)が、簡易灯 火のカタログ上の視認距離は、それに劣っていた。
( 2 )本判決の評価
原審は、C が法定灯火を掲げなかったことが法の規定に違反しているとしつつ も、以下のように判示し、C の過失を否定した。「台船 S の舷灯は引船 T と台船 S が引船列を構成し、その間にえい航索が存在していること自体を示すものでも ないのであって、仮に台船 S の右舷に緑灯が点灯していたとしても、これによ り A において航過した引船 T が引船列を構成しえい航索が存在していることを 認識し得たとはいえない。そうすると、C が台船 S の舷灯 1 対を掲げていなか ったことが本件事故の原因であったとは認め難い」。「むしろ、引船 T は、マス ト灯 3 個及び引船灯 1 個を点灯し、引船 T が引船列を構成しえい航索が存在し ていることを明示していたのであって、必要な措置を講じていたというべきであ る」。このように、原審は、C が台船 S の法定灯火を掲げなかった過失と本件事 故との間の因果関係を否定しているとともに、引船 T の法定灯火で十分であっ たかのような判示をしている。
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控訴審は、台船 S が法定灯火を掲げていれば、引船 T の後方にも船がいるこ とを認識できたはずであり、そうであれば台船 S の後方を航過する針路を定め たはずであるなどとし、「仮に台船 S が舷灯を表示していても漁船 U 丸が本件曳 航索に衝突したとの主張は合理的なものではなく、台船 S が舷灯を表示するこ とにより本件事故を回避することができたと認めるのが相当であるから、C が台 船 S に法定灯火を表示しなかったことは本件事故と因果関係のある過失を構成 する」とした。
少なくとも、原審は、台船の法定灯火を軽視しすぎており、妥当ではないだろ う。控訴審は、「台船 S の簡易灯火は、その効果において法定灯火に代替し得る ものではなく、簡易灯火の表示を理由として法定灯火の表示義務を免れることは できない。」と述べており、法定灯火と代替し得る灯火をすれば足りるとしてい るようではある(3)。しかし、本件では、簡易灯火の光到達距離は法定灯火にはるか に劣っていたのであり、法定灯火表示義務違反は疑いようがない。
4 .台船所有者(B 社)の責任
( 1 )A1 らの主張について
A1 らは、B 社が自己の所有する台船 S につき、実質的に C を指揮命令して運 航させていたのであるから、C と同様に商法690条により賠償義務を負う、と主 張する(4)。
商法690条は、「船舶所有者ハ船長其他ノ船員ガ其職務ヲ行フニ当タリ故意又 ハ過失ニ因リテ他人ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ」と定める。同条は、民 法715条の特則であり(5)、船主の責任を無過失責任として、同条のような免責要件 を認めていない。これは、船主は航海中の船舶乗組の船員に対しては、選任、解 任または監督の自由がなく、また高等船員は海技免状を有し、その職務に適任で あることにつき国家の保証のあるものなので、民法715条の免責要件を存置すれ ば船主は容易に免責事由を証明して常に免責されることとなるからであるといわ れる(6)。
それでは、引船所有者と台船所有者が異なる場合、台船所有者が商法690条の 責任を負い得るのか。なお、本件では、台船 S は機関もなく、船員もいなかっ たことから、台船 S の船員の過失を観念できず、引船 T の船員の過失による責 任を台船所有者 B 社に負わせる論理が求められる。一般に、曳船契約は、①物 品運送型、②請負型、③雇用型に分けられ、①②では、原則として、被曳船の船 主は責任を負わず、③の場合には、引船列の運行指揮権を被曳船が有することか ら、同船の船主が責任を負うと解されている(7)。商法690条の趣旨からすれば、被 曳船の船主の指揮下にある曳船の船員は、同条の「その他の船員」に含まれるも
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のと解し、被曳船船主の責任を肯定することができるものと解される(8)。
本件において、B 社が、C との関係は請負契約又は運送契約にほかならず、航 行に関する指揮権の一切は C にあり、B 社が指揮命令する関係にもないと主張 していることは、この①②と③の区別によるものである。
( 2 )本判決の評価
控訴審は、B 社が商法690条に基づき本件事故による損害を賠償する責任を負 うとはいえないとした。すなわち、控訴審は、①引船 T が B 社以外の海運会社 が所有する台船を曳航することもあり、台船 S も引船 T 以外の引船に曳航され ることもあること、及び② C は、主として B 社と曳航契約を締結していたもの の、目的地等の指示を受けるほかに具体的な曳航作業につき B 社から指揮命令 を受けることはなかったことから、各運航につき個別具体的な指揮命令関係にあ った、あるいは、B 社が引船 T の実質的な所有者として支配していたとまでは 認め難い、としたのである。
商法690条が報償責任・危険責任に基礎を置くものであるならば、曳船契約の 型によることなく、単に曳船を利用して利益を得ている被曳船の船主に責任を負 担させるべきであるとも考え得る。条文でいえば、当該曳船行為中は、「船舶所 有者」と同様の立場にあるという主張になるだろう。しかし、曳船行為中、事実 上指揮を行うこともできない被曳船船主に無過失責任を負わせることは、曳船の 利用を阻害するので、やはり好ましくないだろう。
また、本件でいえば、台船 S に簡易灯火ではなく法定灯火を点灯するよう
「指示」を C に与えていれば、本件事故を回避できたかもしれないが、そのよう な関与の仕方をすると、③雇用型に近づくと評価されるおそれもあり、B 社がそ のあたりも考慮して、C に一任していた可能性も考えられる。しかし、法令遵守 をするよう指示した程度で、雇用型と捉え、被曳船船主に責任を負担させるの は、―法令遵守を促すインセンティブを失わせることとなるから―、衝突予防の 観点からも妥当でない(もっとも、法令遵守を被曳船船主が曳船船主に指示できるよ うな立場かは場合に依るが。)。
本判決は、引船 T と台船 S が専属的に結びついていないということを責任否 定の理由に挙げているが、これは主に実質的所有者の支配性を否定する要因であ ろう。
筆者は、曳航をコントロールできない被曳船船主に責任を負担させることに消 極的であるから、本判決は妥当であると考える。
早法 96 巻 1 号(2020)
5 .撤去費用・報酬請求について
( 1 )B 社の請求について
B 社は、商法512条に基づいて、撤去費用・報酬を請求している。商法512条 は、「商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な 報酬を請求することができる。」と定めている。本条の「行為」は、事務管理と してなされる場合であっても差し支えないと解されている(9)。B 社は商人であるか ら、ここで問題となるのは、「その営業の範囲内」において「他人のために行為」
(事務管理)をしたといえるかである。以下で A1 らの反論を見てみよう。
ア 「他人のための事務」非該当という主張(10)
第 1 に、A ないし A1 らに遭難した漁船 U 丸について除去義務がないから、B 社が行った作業は事務管理の要件である他人の事務に該当しないとの反論である
(反論①)。この主張の根拠は、「何人も、船舶…を海洋に捨ててはならない。た だし、…遭難した船舶等であって除去することが困難なものを放置する場合は、
この限りでない。」と定める海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律43条 1 項である。漁船 U 丸が除去困難であれば A1 らは除去義務を負わない、という わけである。
第 2 に、B 社が台船 S の所有者であることから、漁船 U 丸の曳航作業は船員 法13条に基づく自己の事務として行ったにすぎないとの反論である(反論②)。 この主張の根拠とされる船員法13条は、「船長は、船舶が衝突したときは、互に 人命及び船舶の救助に必要な手段を尽」さなければならないと規定している。仮 に、本条が適用されれば、船舶の救助は B 社の事務ということになり、事務管 理は成立しないこととなる。この主張の難点は、台船所有者の B 社を本条にい う「船長」と同視できるか否かである。
イ 商法809条の趣旨
船舶または積荷の全部又は一部が海難に遭遇した場合、義務なくして、これを 救助した場合には、救助者は、救助料を請求することができる(商法800条・801 条)。しかしながら、故意又は過失によって海難を惹起したような場合には、救 助者は救助料を請求することができない(同法809条)。これは、沿革的には、海 難の誘発または海難に乗じる掠奪の弊風を禁圧しようとした、立法者の努力の現 れであるとされる(11)。
本件で、A1 らは、「商法809条の趣旨に照らせば漁船 U 丸の曳航作業について 報酬は発生しない」と主張しているが(反論③)、これは、B 社側の過失によっ て漁船 U 丸が沈没したのであるから、報酬・費用請求は認められるべきでない との考えであろう。これは、事務管理の成立を否定するものではなく、事務管理 が成立しても、信義則上、費用請求ができない、という主張であると整理でき
海事判例研究(松田)
る。なお、改正商法の下では、救助請求権が発生しない場合を、故意に限定した ため、このような主張は本件のようなケースではヨリ意味をなさないだろう。
( 3 )本判決の評価
控訴審は、「漁船 U 丸の船体の回収が A1 らの意に沿うものと認められること に鑑みれば、B 社は、義務なく A1 らのために漁船 U 丸の曳航作業を行ったと いうべきであり、また、漁船 U 丸の曳航作業は B 社の営業の範囲内の行為であ ると認められる…から、漁船 U 丸の共有者である A1 らは、B 社に対し、商法 512条に基づき上記諸費用及び相当額…と認められる報酬…を支払う義務(この 義務は、その性質上、不可分債務であるというべきである。)を負うものと認めるこ とができる。」と判示している。この判示は、一般的になされる商法512条の解釈 からして、基本的には妥当である。もっとも、宅建業者の非委託者に対する報酬 請求に関する最判昭和50年12月26日民集29巻11号1890頁が「客観的にみて、当該 業者が相手方当事者のためにする意思をもって」いたことを要求していたことを 考慮すると、当事者のためにする意思の認定が判決文上不明瞭である。すなわ ち、控訴審が「漁船 U 丸の捜索費用に関する A1 らの主張内容」としか根拠を 明示していないという点である。
また、控訴審は、A1 らの各反論に対して次のように応える。第 1 に、反論① に対しては、「漁船 U 丸に付き除去が困難(莫大な費用を要する、技術的に困難、
危険が伴う等)であったなど除去義務を否定するに足りる具体的な事情は見当た ら」ないと述べる。第 2 に、反論②については、「B 社が C を従業員等と同視し 得る程度に指揮監督していたと認めるに足りる証拠はなく、B 社が船員法13条に 基づく救助義務を負うものとは認めら」ないと述べる。第 3 に、反論③について は、「B 社がその過失により本件事故を惹起したとは認められず、また、C 及び D の過失を B 社の過失と同視することもできない」と述べる。いずれも妥当で あろう。
最後に、本件で特徴的であるのは、報酬支払義務が性質上不可分な債務である とされていることである。これは、B 社の主張に応えている部分である(12)。不可分 債務とされることにより、債権者である B 社は、債務者の 1 人に対して全額の 請求ができる(民法432条・430条)。大きなポイントとしては、不可分債務は、連 帯債務よりも絶対的効力事由が少ないので(同法434条〜439条が適用されない)、 連帯債務よりも担保力が強いことにある(13)。ところで、通説は、各債務者が共同・
不可分に受ける利益の対価たる意義を有する債務は、たとい可分給付を目的とす るものであっても、性質上不可分債務と解すべきであると言うが、判例において この論理により不可分債務とされたのは、共同賃借人の賃料支払債務(大判大正
早法 96 巻 1 号(2020)
11年11月24日民集 1 巻670頁)等のような共同でする物の利用の対価かまたは共同 で受ける労務の対価に関するものであり、不可分な共有物の売買契約の代金債務 についてまで不可分債務としたものはないとされる(14)。本件の費用・報酬支払債務 は、A1 らの共有する漁船 U 丸の曳航作業の対価に関するものであり、通説・判 例の流れからすれば、性質上不可分債務とされることは妥当である(15)。
( 1 ) 海難審判所は、職務上の故意又は過失によって海難を発生させた海技士等の懲戒を行うも のであるから(海難審判法 1 条)、民事責任における過失の認定とは視点が異なり得るのかも しれないが、本件では、門司海難審判所の裁決の取消しを行った東京高裁(同法46条 1 項)
が、D の過失を否定しているため、比較対象とした。東京高裁の判決内容については、公益財 団法人海難審判・船舶事故調査協会の裁決録検索によって入手した。なお、本件事故に関して は、運輸安全委員会『船舶事故調査報告書』(平成23年 8 月26日)の「35 引船雄昌台船東伸 漁船海栄丸衝突」という報告書がある。
( 2 ) もっとも、これは台船 S の法定灯火がなされていなかった本事案についてであり、法定灯 火がなされているのに、さらに照射しなければならないとまでは判示していないことに留意し なければならない。
( 3 ) もっとも、海上衝突予防法24条 6 項のいう「照明その他存在を示すために必要な措置」と いえるような灯火であっても、同項は「やむを得ない事由」がある場合の規定であるから、本 件のように節約のような運用として法定灯火以外の灯火をしても、法定灯火表示義務は免れな いであろう(そもそも、それでは節約にならないであろうから、あえて法定灯火以外の灯火を するインセンティブはないであろうが。)。
( 4 ) 漁船と台船の衝突事故について引船の船長の不法行為の責任を台船所有者が負った事案と して、東京地判平成23年 1 月26日判タ1358号162頁があるが、この事案においては、引船の所 有者と台船所有者が同一であったため、本件のような問題は生じていない。そのため、本件に は、引船所有者≠台船所有者パターンにおける台船所有者の責任が問われた一例としての意義 がある。
なお、機関部がなく自力航行できないが、曳航されて航行可能なコンテナ・バージが、その 使用目的、形状、取扱い等から見て商法684条の船舶にあたるとされた事例(東京高判昭和47 年 8 月23日判時681号79頁)があり、航海船の要件としては、自力航行能力を問わないものと 解されている(中村眞澄=箱井崇史『海商法』〔成文堂、第 2 版、2013年〕44頁)。
( 5 ) 田中誠二は、商法690条の立法理由として、「被害者を保護すること、ならびに船主が自己 の需要を満たすために他人を使用する以上はこれによって自己の活動範囲を拡張するものであ るから、その責任の範囲も拡張されるべきことのためである。」と述べる(田中誠二『海商法 詳論』〔勁草書房、増補第三版、1985年〕73頁)。
( 6 ) 田中・前掲注( 5 )73頁。
( 7 ) 箱井崇史(編)『船舶衝突法』(成文堂、2012年)124頁〔松田忠大〕参照。
( 8 ) 箱井(編)・前掲注( 7 )127頁〔松田(忠)〕。
( 9 ) 大判昭和 8 年 9 月29日民集12巻2379頁。
(10) 原審では、A1 らが B 社に対して漁船 U 丸の曳航作業を依頼したことはないとの反論もな されているが、商法512条に基づく報酬の請求は事務管理による場合を妨げないと解されるの
海事判例研究(松田)
であって、A1 らの主張はそれ自体失当である、とされている。
(11) 窪田宏『新訂概説海商法』(晃洋書房、1977年)222頁。
(12) B 社は、「漁船 U 丸に要した費用は、A1 らの共有物に関する費用であるが、その報酬債 務は性質上不可分債務に属すると解される。」と主張していた。
(13) 近江幸治『民法講義Ⅳ債権総論』(成文堂、第 3 版補訂、2009年)194頁。
(14) 潮見佳男『債権総論』(信山社、1994年)509頁。
(15) 本件に先立ち、不動産業者が、土地と建物等の等価交換契約を仲介したことにより、商法 512条に基づいて報酬請求権を取得する場合において、等価交換契約の当事者の報酬支払債務 が不可分債務であるとされた事例(東京地判平成 8 年 7 月 3 日金判1022号32頁)がある。