九州:[業大学研究報告(工学)No,55 ヱ987年12月 39
金属 MoO3接触における圧力効果
(昭和62年6月30日 原稿受付)
電子工学教室大学院生森
邦彦
遠 山 尚 武
Stress Effect in a metal−MoO3 Contact
by Kunihiko MORI Naotake TOYAMA
Abstract
When a mech証nical stre5s is applied to the MoO3 film deposited on a metal surface, there yields an electric field of 105、・ノm, though a MoO3 cry5tal belongs to the point group(m m m). This phe−
nolnenon, therefore, cannot be exPlained by l〕iezo effect,
In this paper, we have investigated the clependence of yielding voltage on pres5ure,三1nd the re−
1atlon between the voltage and the MoO3正ilm thlckness and b巴ween tlle vohage and the kind of metal on which MoO3 is depo5ited. Furthernlore we have investigated the changes of characteris.
tics in metaLMoO3 system with mea5tlremenuemperature or annealing temperanlre.
A5 the resuh, we have fQund that the origin of the stress effect in a metal−MoO3 contact exist at the interface of a metal.MoO3 contact, alld thal tlle vohage IIlcreases with pressure over the range of small stress and becomes consta鯖with respect to pressure to the extellt of large st祀ss.
Furtlle巾ore we have found that the changes of the cllarac爬ristic50f metal.MoO3 sy部em due to annealing have correspondence t・the phase transiti・n in MoO3 film.
圧rピ答やIE説[一†E圧特性, 及ひ¶工i荒]氏打tイ直を団1]定した0
1.まえがき →
2.実験方法
MoO3, WO3等の遷移金属酸化物は,エレクトロク
ロミック材料として表示素子等に利用されている。これ 測定用の試料はスライドグラスを金属膜で覆い,その
らの中でMoO3は点群mmmに属し圧{E性を持たない 上にMoO3膜を蒸着したものである。試料作成の手順
はずにもかかわらず,これを金属表面に蒸着し機械的な を図一1に示す。まず,洗浄したガラス板に金属膜を形 圧力を加えると膜1享方向に107V/cmもの電界が発生す 成する。使用する金属はAg, Al, Cr, Mo, Cu, A11,む る。ステップ状の圧力を加えると,電圧は急激に上昇し Niでそれぞれ,厚さ約2000Aで基板を覆いその上に
て最大値に産した後次弟に減衰する。今回の宝験ではこ MoOユを0.1−0,5μmの1享さで蒸着する.熱処理用の試 のピーク仙の圧力の大きさに対.する依存性を調べた。ま 料は,上試の試料を]50℃,175℃.200℃、250℃,た,この電圧の発生源がMoOコのパルク内部か金弱一 300℃,350℃で,それぞれ大気中で1時間加熱して作る。
MoO3界而かを調べるため, MoO3膜の厘さや金属を これらの試料を先端の直径がlmmでAl、 Cr, Ptをス
種々変えて,加圧時の電圧を測定した。吏に測定時の温 バッタIjングした鋼棒で加圧する。.度や試料作成時の熱処理温」度を変えた場合の加圧時の電 圧力に対する応答電圧は図一2国,(b]に示す加圧襲置
』0 森 邦彦・遠山尚武
ガラス基挺 下地金属
\ \
⊂=コ⇒[::当
φ6.Omm 加麟
l
§ \ 晶.
⊥ Mooユ顧 リード組 / ユ1−5輪 2。・・A仁
一一一下地金属 試料 ㊨一一ガラス基板
図一1 試料の製作手順
力 誼
員/ 四
ii バッフ丁アンプ ⇒__加圧捧
1 Q加圧捧 入力へ ii
ガラユ撒 /鼎
{・川旺範肌5−5kgW {b)加圧糊0』2〜lkgW
図一2 加圧装置
o 恒聞朽 で測定する。(a)に示す装置の加圧範囲は0.5〜5kgW,
(bはα02一工.OOkgWである。電圧測定のプロ・ク図を 図一3に示す。
一 . 測定計器へ 3.実験結果と考察
一 . 「「一
試料を加圧した時の応・答電圧波形の例を図一4に示す。
荷重は2.5kgWで一定である。発生する電圧の極性は常 図一3 1置圧測定のブロック図 に下地電極側が加圧棒{即1に対して高電位となる。
波形の特徴を以下に述べる。t<05仁c.即ち加圧前 t<脈ccでは圧力が印加されると電圧は急激に上昇し.
は加圧枠は試料に接触しているだけだが.すでに0.1V 極大値{以後ピーク電圧と呼ぷ)に達すると減衰を始め
以上の電圧が発生している。これは,接触した状態です る。F55亡cまでは約5secの1時定数で減衰し,その後
でに約0.02kgWの力が作用しているからである。 は圧力が大きい程早く.指数関数的に減衰していく。
金属一Mσ03接触における圧力効果 41
0.3 ピーク
9 電圧
ロ ピ 0.2
曽籔
0.10
≧ 2.5
遥百
o.35
0.28
口 o・21 三
目
も 0.141
口
0.07 O IO 2〔} 30 40I o
l 時聞[SCc〕 0 1 遷移領域
o O o
1 下地金属 Au 接鮭金属 A1
I i!1度 300K
1.0 2.0 3.0 4』 5.0 飽和領壇 加」「〔[kg1、F]
図一5 圧力に対するピーク電圧
〔〕
0 !0 20 30 40
時mj〔・cc] 巳12。 ・
o o
図一4加圧時の蹴圧 三…一
曇刷゜ : § ° L 。 下地蜘。,
3.2 ピーク電圧の圧力依存性 0.03 荷重1.5kRw
図一5に圧力に対するピーク電圧の測定結果を示す。 温度300K
む下地金属はAu,接触金属はAl,測定時の温度は300K, O LO 2.0 3.o 鞭理はされていない。イ緬が0〜0.35kgWの範囲で M・°・耳莫叩[㌔1
は電圧は圧力につれて増大し,約0・25Vまで達する。 図一6 ピーク電圧のMoO3膜厚に対する依存性
0.35kgW以上の加圧ではピーク電圧はほぽ一定で約
0.26Vである。0−0.35kgWの範囲を遷移∬i域10.35
kgW以上の範囲を飽和領域と呼ぶことにする。 0.3 ヨ.3 ピーク電圧のMoO3膜圧に対する依存性
図一6にMoO3膜原に対するピーク電圧の関係を示 ロ
ー o.2 す。図より,膜厚とピーク電圧の問には比例閲係はみら 昌 れないことがわかる。結果について1次回帰分祈を行う 〔と』醐線の傾きは・.16×lr・V/rで・陀ピーク 国゜・1
Au
o
CrAI o Mo ONi o OO
°A・ c・ 鑑金塁。三、1 荷」下:1』kRw
電圧は膜厚に対しほぽ一定である。もと電圧の発生源が
M…バルク内にあるならば.ピーク電圧は‖鯉に比例 ゜、.。 、』 5』 、.,
するはずである。この結果から電圧の発生源は少なくと 下地金属の側刑数[ev]
もMoO3パルク内ではないことがわかる。
図一7 ピーク電圧の下地金属に対する依存性 ヨ.4 ピーク電圧の下地金属に対する依存性
電圧の発生源が金属一MoO3界面で起こっているなら
ば,ピーク電圧は下地金属の孔類に関して依存性をもつ 電圧の大きい順にA11, Ni, Cr, Mo. Al. Cu, Agと はずである。図一7に下地金属の種類に対するピーク電 なり,電圧とイ・国r閃数の]・II関は小さい。しかし,下地金 圧の閲係を示す。ここでは,金属を特徴づけるパラメー 属の種類によってピーク;E圧が異なるという結果は,電 ターとして仕」lr閲数をとることにする。図より,ピーク 圧の発生源が金属一MoOコ界面であることを示している。
42 森 邦彦・遠山尚武
下地金属 Cr O」 接触血属 Al f苛」直 3.⑪}{91V
一 〇、3 と
ヨ
三 〇・2 _9_一「』一一r一σ一
] 0
0.]
o,28
目
■ 0.14 1
0.07
0 0
250 2η 290 310 330 0 100 200 300 400 温度[K] 熱処理温度[℃ユ
図一8加麟の酬の温度とピーク髄 図一9熱処翻度に対するピーク駈(。、)
3.5 ピーク電圧と測定時の温度
図一8に,加圧時の試料の温度とピーク電圧の閏係を
示す。下地金属はCr.接触金属はAL荷重は3. OkgW O.28 0
で,即ち飽和領域での加圧である。この結果よリピーク電圧の温度依存性はほとんどないことがわかる。 ζ仕21 ご
3.6ピーク電圧と熱処理温度 簑ω・
試料の熱処理温度に対するピーク電圧の関係を,下地 L 鑓がA。,C,の場合について,各々図一9,図一ユ0に 巳゜7 示す。ピーク電圧は熱処理温度が150℃まではほぼ一一定 0
だ坑約180℃を境に急激1、小さくな1,,約25。℃以上に ゜ °° 2°° 3°° 4°°
熱処理温度[℃〕
なるとほとんどOVになる。これは図一1】に示す熱処理 図_10熱処理温度に対するピ_ク電圧(Cr)
温度に対するMoO3膜の色と状態の変化の閏係と対応
しているu。即ち.ピーク電圧が約0.25Vで一定となる範囲では膜は透明なアモルファス状態でピーク電圧が急 状態一_アモルフ丁ス 丁c 鋸 lp、_
コしてい.る。 1
拠馳L 100 200 300 400
3.7 試料の電流一電圧特性と直流抵抗 熱処理昌度[℃]
金属一M・°・醐系を醐一半導イ1こ離系とみなすと 図一11熱処理温度1、対するM。。、膜の色と状態
整流性などの電気的特性が期待できる。 の変化まず,熱処理をされていない胡合について述べる。図
ゴ2に試料の電流一電圧特性を示す。下地金属はCr.
接触金属はAl, M。0ユ膜厚は4.Oμmである。荷重は0 図一]3に0加圧と荷重がIkgWの]易合の電流一一電圧特 加圧で加圧枠を接触させた状態である。図の白丸は下地 性を示す。測定は,圧力応答電圧が充分OVに近づいた
電極に対し加1王桂側力:正となるように印加した場合で, 後行われた。結果より,加圧時の電流は加圧しない場合 黒丸ほその逆方向に印加した場合を示す。ここでは,加 より大きい。即ち直流抵抗が小さくなることがわかる。圧控卸が高電位の場合を順方向とする。国より順方向と 次に熱処理温度に対するMoO:辻ζ1のill[流抵}プこを図一14
逆方向の1−V特性はほとんど一致していて整流性はみ に示す。下地金属はAu,接触金属はAl,順方向屯圧
られない.従って以下の測定はすべて順方向のみとする。 2.5Vで測定する。詰果より.抵抗値はアモルファス状
金属一M。03接触における圧力効果 43
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O● O舶方r句
O● ●逆方向 o●O● 下地金属 CT・
● 接腱金属 Al o MoOユ胞草4・0/1 m
101 q 103 邑
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ウ リニ已 ]在
茸
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=
]oo10−1
100 20〔〕 30〔〕 400
熱挺1理温度[℃]
図一14 MoO3膜の熱処理温度に対する直流抵抗 値
0 1.0 2,0 ヨ.〔}
印加電圧[V]
(1)圧力に対するピーク電圧はM。03膜厚への依存性は 図一12試料の電流・一電圧特性 小さく,下地金属の種類に大きく依存している。従って,
電圧と発生源はMoO3膜のパルク内部よ1〕もむしろ金 属とMoO3の界面であると考えられる。
● ● ● ● ● ● ●
● o
o
● o
o
● o OO加圧
●加圧]kgw o o 下地金属 Auo 接触金属 M
O MoO3膜厚 4.0μm
②圧力の大きさとピーク電圧との関係は圧力が0〜
0.35kgW/皿m2以上では,ほとんど変化しない。
㈲ 測定時の温L度や熱処理温度の変化に対する圧カー電
圧応答やMoO3の直流抵抗は250℃付近で急激に減少す る。これはMoO3の状態が250℃付近でアモルファス状
態から多結品状態へ変化することに対応している。5.謝辞
本実験を行うにあたり,協力していただいた,湯越真 一氏(現九州電力),及び山下暢彦氏(現NTT)に厚く b LO 2.0 3.0 感謝の意を表します。また,図の作成に協力していただ 印加電圧[v] いた当研究室のm石正宏氏,及び原口喜行氏に謝意を表 図一13 加圧時と0加圧時の電流一電圧特性 します・
」参 考 文 献
態のときは10LlO4MΩでほぼ一定だが多結品状態では
1G−L]0Ωである.これは、先 、述べ燃処理i醜1謝 ])TIlk・hl・・U−d K・1・°・…k…」…」・AI・・1・P11・・…1巳1・
SUPP1.24−・1】9([985)
する加圧特性の結果と対応している。