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2. 採取試料と方法

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Academic year: 2022

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(1)

千本松原の樹木年輪を用いた長期的な水文・気候環境変動の復元の試み

名古屋工業大学 ○井川誠二 名古屋工業大学 正会員 庄建治朗

1. はじめに

治水・利水計画における計画規模の決定に際しては、過去の水 文資料をもとに推定された極値確率水文量が通常用いられる。近 年、整備水準の向上に伴い、より超過確率の小さい(再現期間の 長い)確率水文量の推定精度向上が要請されている。また、地球 規模の気候変動とも関連して、洪水や渇水の生起確率が増大して いる可能性について議論されている。そうした検討を行なうため には、できるだけ長期にわたる水文・気候データを得ることが必 要であるが、日本で測器による観測が行なわれるようになるのは 明治時代以降であり、それ以前の水文・気候環境を知るためには 古文書や樹木年輪といった代理データを用いる必要がある。

愛知・岐阜・三重の3県が県境を接する木曽三川(木曽・長良・

揖斐川)下流域は、古くから水害が頻発し、多くの治水対策工事 が行なわれてきた。その代表的なものの1つに江戸時代中期に行 なわれた宝暦治水がある。千本松原は、当時の治水工事に携わっ た薩摩藩士によって植えられたと伝えられており、樹齢

200

年近 いマツが多数生育している。本研究では、それらのマツの年輪か ら得られる情報を用いて長期にわたる水文・気候環境の変動の復 元を試みるものである。

2. 採取試料と方法

対象試料は、岐阜県海津市海津町油島の治水神社境内から揖斐 川と長良川の背割堤約

1km

にわたって生育する日向松(Pinus

densiflora)である。この一帯は千本松原と呼ばれ、宝暦 5

年(1755)

に完了した宝暦治水工事を記念して植樹されたと伝えられる。近 年は松食い虫による被害が相次いでおり、被害の大きいものは順 次伐倒されている。本研究では、伐倒されたマツの切り株(直径

70~110cm、樹齢 180

年前後)から、チェーンソーにより標本

を採取した(写真-1)。採取した標本はサンダーにより表面を研磨 し、2方向の測線を設定して、各標本・測線について年輪測定器

(司技研製)により

0.01mm

単位で年輪幅を測定した(写真-2)。

測定した標本の中には、伐採年や枯死年が明確でないなど、年 輪と実年代との対応が不明なものも含まれている。そこで、測定 した年輪パターンを相互に照合(クロスデイティング)して各年 輪形成年を確定すると同時に年輪数の読み間違いのチェックを行 なった。その後、樹木の年齢による生長量の変動を消去するため、

各測線についてスプライン曲線による基準化を行い、それらを平

写真-1 標本採取作業

岐阜 愛知県

三重県 木曽長良川揖斐川

図-1 標本採取地点

写真-2 年輪幅計測作業 1km

土木学会中部支部研究発表会 (2009.3)

II-005

-99-

(2)

0 2 4 6 8 1 0 1 2

1 8 2 0 1 8 4 0 1 8 6 0 1 8 8 0 1 9 0 0 1 9 2 0 1 9 4 0 1 9 6 0 1 9 8 0 2 0 0 0

年輪幅(mm)

N o 3 1 9 N o 3 1 1 N o 3 3 3

図-2 各個体の年輪幅測定値(2測線平均)

0 0 .2 0 .4 0 .6 0 .8 1 1 .2 1 .4 1 .6 1 .8

1 8 2 0 1 8 4 0 1 8 6 0 1 8 8 0 1 9 0 0 1 9 2 0 1 9 4 0 1 9 6 0 1 9 8 0 2 0 0 0

年輪幅指

図-3 標準年輪曲線

-0.20 -0.15 -0.10 -0.05 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30

4月 7月 10月 1月 4月 7月

相関係数

平均気温 降水量 日照時間

図-4 年輪幅指数と気象要素との相関係数 均することにより、標本採取地域を代表する

標準年輪曲線(マスタークロノロジー)を得 た。これらの作業には、アリゾナ大学年輪研 究所により配布されている

COFECHA

プログ

ラム及び

ARSTAN

プログラムを利用した。

本稿作成時点で計測が終了している3個体

(No319、

No311、 No333

とする)についての 年輪幅計測値を図-2に、標準年輪曲線を図-3 に示す。

3. 解析結果

標本木の生長がどのような環境要因に影響されているか調べるため、気象観測データとの相関分析を行な った。年輪データと比較した気象要素は、名古屋地方気象台における

1891

年~2007年の月単位の平均気温、

降水量および日照時間である。標準年輪曲線の各年の年輪幅指数と前年4月~当該年9月の各気象要素との 相関係数を図-4に示す。t検定により相関係数に

99%水準で有意性が認められた気象要素は、4月~5月の

日照時間及び前年5月の日照時間であり、マツの生長期前期にあたる春~初夏の日照条件が年輪幅と密接に 関係していることが窺える。

4. まとめ

年輪幅指数と気象データとの相関分析を行なったところ、この地域のマツの生長が春~初夏の日照時間に 影響されていることを示唆する結果が得られたが、本稿作成時点で標準年輪曲線を構成する標本は3個体の みであるため、標準年輪曲線に地域の環境条件と無関係な個体的特徴が未だ強く残されていると考えられる。

今後さらに標本数を増やし、標準年輪曲線や相関分析の信頼性を高めると共に、浸水記録等との照合も行な っていく予定である。

土木学会中部支部研究発表会 (2009.3)

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