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4.3 波形検出および診断アルゴリズム

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Academic year: 2022

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(1)4.3 波形検出および診断アルゴリズム. 4.3. 波形検出および診断アルゴリズム. 4.3.1. 基線変動除去アルゴリズム. QRS COMPLEX. ECG INPUT. DELAY. MOVING AVERAGE. REJECTION. CALCULATION. MODIFIED SECOND DERIVATIVE. +. –. DELAY. OUTPUT. Fig.4.3.1 Baseline correction algorithm 基線変動除去アルゴリズムの構成は fig.4.3.1 のようになっている.その原理は, 心電図から QRS 波を取り除いたものに対して移動平均の計算を行うことにより 基線変動成分を抽出し,これをもとの波形から差し引くというものである.心電 図の基線変動を補正する手法は数多く提案されており [78]– [83],これらは優れた補 正能力を示すと共に,多様な基線変動パターンに対して適用可能である.しかし ながら過去に提案されたアルゴリズムは複雑であり,本システムのような低い処 理能力のプロセッサには移植できないため,アルゴリズムが単純である移動平均 を採用した. 0.5. 0.5s. 0.0 -0.5 -1.0 -1.5. (a) ECG. 0.0 -0.5 -1.0 (b) Baseline (averaging 256 points of ECG data). Fig.4.3.2 Baseline correction error caused by QRS complex. – 115 –.

(2) 4.3 波形検出および診断アルゴリズム. Fig.4.3.2 に示すように,移動平均演算を心電図データに対して直接適用すると, 算出された基線変動波形上に高い周波数成分と大きな振幅を持つ QRS 波の成分 が残留してしまう.そこで,波形検出の手法を基線変動除去の前の波形に適用し て QRS 波の位置を特定し,QRS 波のデータを QRS 波開始点の振幅で置換するこ とにより QRS 波の除去を行い,その結果に対して移動平均を計算して基線変動成 分を抽出した.基線変動の除去の目的は波形検出能力を上げるためでもあるが, QRS 波はその振幅が十分あるため,基線変動除去前に波形検出を行っても検出ミ スの発生は皆無であるため,このような構成でも問題はない.Fig.4.3.3 に心電図 からの QRS 波除去の様子と QRS 波を除去した心電図を用いて算出した基線変動 波形を示す. 0.5. 0.5s. 0.0 -0.5 -1.0 -1.5. (a) ECG without QRS complex. 0.0 -0.5 -1.0 (b) Baseline (averaging 256 points of ECG data). Fig.4.3.3. An example of QRS rejected ECG and the result of the moving average. 基線変動の計算に用いる移動平均演算に関しては,計算量削減のために処理方 法にさらなる改良を加える.一般に移動平均演算は次式のように表せる.. Aj =. 1 j+n−1 rk n k∑ = j− n. (4.3.1). ただしここで, rk は心電図データの k 番目のサンプルを表し,n は平均するサン プル数である.この式の計算には n による除算が必要であるが,一般に除算は加 減算に比べて計算量が多いので,この n を 2 のべき乗に制限することにより,除 算をビットシフト操作に置換し,次式のようにして計算量の削減を行う.. 1 Aj = p 2. j +2 p −1 −1. ∑r. k. k = j −2. (4.3.2). p −1. ここで p は平均するサンプル数を表す定数である.さらに,この式を以下のよう に変形する.. – 116 –.

(3) 4.3 波形検出および診断アルゴリズム. Aj =. 1 Sj 2p. (4.3.3). ただしここで,. Sj =. j +2 p −1 −1. ∑r. k. k = j− 2. p −1. = S j−1 + r j+ 2p −1 −1 − r j−2 p −1. (4.3.4). であり,S j は心電図サンプルの和である.式(4.3.4)より,S j は前の移動平均 S j−1 か ら簡単に求めることができることが分かる.式(4.3.2)の演算を行うには,移動平 均を計算するたびに rk の和を計算する必要があるため,たとえば 256 点の移動平 均を求めるには 256 回の繰り返し計算が必要となる.しかし,式(4.3.3)および式 (4.3.4)のような変形を施すことにより,一度 S j を求めれば,次の移動平均の計算 時に式(4.3.4)により S j を更新すればよいので,計算量を大幅に削減することが可 能である. また,式(4.3.2)中の p は基線変動除去能力を決定付ける重要なパラメータであ る.この値が小さいと心電図に含まれる高い周波数成分を除去しきれず,処理結 果の心電図にその成分が残留してしまうため,波形検出アルゴリズムあるいは診 断アルゴリズムが誤動作する可能性が高い.また,大きすぎると基線変動の抽出 能力が不十分となり,処理結果に基線変動が残留してしまう結果となる.p につ いてはシミュレーションによりその適正値を検討することにした.. 4.3.2. 波形検出アルゴリズム. 波形検出アルゴリズムは,システムの診断性能およびアルゴリズムの複雑さを 決定付けるという意味でもっとも重要な部分である.一般に検出精度とアルゴリ ズムの簡略化は相反する要求であり,双方の完成度を同時に高めることは難しい. 過去の研究においてさまざまなアルゴリズムが提案されている [84]– [96]が,これら を両立したものは存在しない.提案するシステムは伝送すべきデータを確実に送 信することが目的であるから,異常な心電図を見逃さない(false negative)ような仕 様とするとともに,雑音の混入などにより波形の検出が正常にできないデータに ついても異常心電図として分類することによりアルゴリズムの単純化を図ること にした. 本システムの目的に合致したアルゴリズムとして,二次微分波形による波形検 出手法を採用した.この手法はまず,基線変動除去後の心電図データに対して二 次微分波形を算出して心電図上に現れる特徴的な波形である P 波,QRS 波(QRS 群),そして T 波に関する始点,頂点,終点の位置を強調する.次に二次微分波形 上の特徴点を検出し,その点に対応する心電図上の特徴点を決定する. 波形検出の第一段階として心電図データの二次微分を計算するが,この計算ア ルゴリズムに改良を加える.基本的な二次微分の計算式は次のようになる.. – 117 –.

(4) 4.3 波形検出および診断アルゴリズム. Di = ai−1 + ai+1 − 2ai. (4.3.5). ここで ai は心電図データの i 番目のサンプルを表す.通常心電図の監視に用いら れるサンプリング周波数,たとえば 250Hz あるいは 500Hz において式(4.3.5)を適 用して二次微分を計算すると Di の波形は十分な振幅が得られないため,特に P 波 および T 波の検出を行うことができない.これを改善するため,二次微分の計算 式を隣り合うサンプル間の演算ではなく,次式のように離れたサンプル間の式に 変形した.. M i = 2ai − ai−d − ai+ d ,. d≥2. (4.3.6). ここで d は i 番目のサンプルからの距離を示す.式(4.3.6)中の d は心電図に対す る感度および二次微分波形上の特徴点と心電図上の実際の特徴点との一致性を決 定する定数であり,小さいと十分な振幅が得られず,大きいと心電図上の実際の 特徴点との一致性が悪化する.検出の安定性および実際の心電図の特徴点との一 致精度を両立するには d の値を適正に調整する必要がある.また,今回採用した 二次微分演算は特徴的な心電図波形のみならず,雑音も強調してしまうという欠 点があり,雑音を強調することにより発生したアーチファクトを特徴点として誤 検出する可能性がある.これを改善するため,二次微分演算のあとに基線変動の 計算に用いたものと同様の移動平均演算を挿入することにより雑音成分を抑制す ることにした.したがって,二次微分演算処理の最終結果は次式のようになる. q− 1. 1 j+ 2 −1 Bj = q ∑ M k 2 k = j−2q −1. (4.3.7). ただしここで,q は平均するサンプル数を決定する定数である.q の値については 小さいと雑音除去が不十分となり, 大きいと特徴点の位置があいまいとなるため, 最適値を決定するための検討が必要である. 波形検出の第二段階では,第一段階の処理により算出された二次微分波形に対 して波形検出処理を行い,特徴点を抽出する.正常心電図の波形およびその振幅 は特定の範囲内にあるので,二次微分波形上に現れる波形の形状,振幅および持 続時間は被験者が異なっても似通っており,これを利用して検出を行う.波形検 出は P 波,QRS 波および T 波であり,P 波,QRS 波そして T 波の検出が行われた 後,P 波の検出処理に戻る.Fig.4.3.4 に波形検出アルゴリズム全体の流れを示す. まず入力される心電図はどこから計測が開始されるか不明なため,検出開始時点 ではもっとも検出が容易な QRS 波の検出が行われる.次の T 波までの検出はシ ステムの動作を心電図にロックさせるための初期検出であり,ここでは診断は行 わない.次の P 波から始まり,T 波で終わる一連の検出処理により波形パラメー タが計算され,この値を用いて診断が行われ,再び P 波の検出に戻るような流れ となっているが ,P 波および T 波はその振幅が比較的小さいため,検出を逃す場 合がある.この場合には初期段階の QRS 波検出に戻るようになっている.. – 118 –.

(5) 4.3 波形検出および診断アルゴリズム. Start of detection. The first QRS complex detection T wave detection. P wave detection. Q or R detected?. yes. no End of P detected?. no. yes Diagnostic parameter calculation QRS complex detection Diagnostic parameter calculation. T wave detection. Too large T QT?. yes. no End of T detected?. no. yes Diagnostic parameter calculation Diagnosis. Fig.4.3.4 The flow of the wave detection algorithm Fig.4.3.4 に示した全体の流れにおける P 波検出アルゴリズムに関して説明を加 える.Fig.4.3.5 に P 波検出アルゴリズムのフローチャートを示す.P 波検出は T 波検出後の処理であり,T 波終点付近の波形の動揺が残留している可能性がある ため,検出に入る前に短い待ち時間を設けてこの影響を受けないようにしてある. この待ち時間の後,二次微分波形の振幅が一定値 TH P を超えるまでの間の極小点 を検索し,TH P を越えた時点でもっとも新しい極小点を P 波の始点と見なし,次 に二時微分が正の間,その最大値の検索を行う.二次微分が負の値になった時点 で二次微分の最大点を P 波頂点とみなし, 最初の極小点を検索して P 波終点とし,. – 119 –.

(6) 4.3 波形検出および診断アルゴリズム. P 波検出を終了する.最後に,検出された特徴点の位置をもとに,次式により P 波に関する診断パラメータである P 波持続時間 TP および P 波振幅 VP の値を計算 して次の QRS 波検出に移行する.ただしここで,t* および v* は心電図波形上の特 徴点の絶対時刻および電圧値を示しており,”Pstt”,”Ppk”,”Pend”はそれぞれ,P 波始点,P 波頂点および P 波終点を示す.. TP = t Pend − t Pstt v +v VP = vPpk − Pstt Pend 2. (4.3.8) (4.3.9). P wave detection. Decrement interval counter. Interval finished ?. no. yes Find local minimum. 2nd derivative<TH QS. yes. no 2nd derivative>THP. no. yes Find peak point. 2nd derivative>TH R. yes. no 2nd derivative<0 ?. no. yes 2nd derivative<TH QS. yes. no 2nd derivative increase. no. yes Diagnostic parameter calculation QRS wave detection. Initial QRS wave detection. Fig.4.3.5 P wave detection algorithm. – 120 –.

(7) 4.3 波形検出および診断アルゴリズム. また,P 波の振幅は小さいため,特徴点見逃しの際の復帰処理として途中 2 ヶ所 に Q 波始点検出を挿入し,途中で Q 波始点を検出した場合には初期状態に戻って QRS 波検出を行うようになっている .Fig.4.3.6 に P 波検出の例を示す.. 0.3. 0.04 s. T wave interval amplitude [mV]. 0.2 THP. 0.1. ECG 0.0 -0.1. Modified second order derivative. -0.2 Fig.4.3.6 An example of a P wave detection QRS complex detection. 2nd derivative<TH QS. no. yes Save Q wave start point. 2nd derivative>TH R. no. yes Find peak point. 2nd derivative< TH QS. no. yes 2nd derivative>TH QS. no. yes Save S wave end point Diagnostic parameter calculation T wave detection. Fig.4.3.7 QRS complex detection algorithm. – 121 –.

(8) 4.3 波形検出および診断アルゴリズム. Fig.4.3.7 に QRS 波検出アルゴリズムのフローチャートを示す.まず TH QS (< 0) を最初に下回る点を検索し,これを Q 波始点とする.次に TH R (> 0) を上回る点か ら R 波頂点の検索を開始し, TH QS を下回るまでの間検索を続ける.最後に,二 次微分値が再び TH QS を上回る点を S 波終点と見なし,検出された特徴点の位置 をもとに,次式により QRS 波に関する診断パラメータである QRS 波持続時間 TQRS , PQ 間隔 TPQ ,RR 間隔 TRR そして R 波振幅 VR の値を計算して次の T 波検出に移行 −. する.ただし,式(4.3.12)において, t Rpk は 1 拍前の R 波頂点の絶対時間を意味す るものとする.. TQRS = t Send − tQstt. (4.3.10). TPQ = tQstt − t Pstt. ( 4 . 3 . 11). − TRR = t Rpk − t Rpk. (4.3.12). VR = vRpk −. vQstt + vSend 2. (4.3.13). 以上に述べた QRS 波検出アルゴリズムにより実際の心電図上の QRS 波を検出 した例を fig.4.3.8 に示す. 0.04 s. 6.0. amplitude [mV]. 4.0 2.0 0.0. Modified second order derivative. THR. ECG THQS. -2.0 -4.0 Fig.4.3.8. An example of a QRS complex detection. Fig.4.3.9 に T 波検出アルゴリズムのフローチャートを示す.このアルゴリズ ムは,検出ミスに対応するための処理以外は P 波検出アルゴリズムとまったく同 一である.T 波検出は QRS 波検出後の処理であり,S 波終点付近の波形の動揺が 残留している可能性があるため,検出に入る前に短い待ち時間を設けてこの影響 を受けないようにしてある.この待ち時間の後,二次微分波形 の振幅が一定値 TH T を超えるまでの間の極小点を検索し,TH T を越えた時点でもっとも新しい極 小点を T 波の始点と見なし,次に二時微分が正の間,その最大値の検索を行う. 二次微分が負の値になった時点でその検索範囲における二次微分値の最大点を T 波頂点とみなし,最初の極小点を検索して T 波終点とし,T 波検出を終了する. 最後に,検出された特徴点の位置をもとに,次式により T 波に関する診断パラメ. – 122 –.

(9) 4.3 波形検出および診断アルゴリズム. ータである QT 時間 TQT および T 波振幅 VT の値を計算して次の QRS 波検出に移行 する.なお,ここでは T 波始点に関する診断パラメータを計算していないが,こ れは二次微分波形により検出された T 波始点の位置が臨床上注目すべき特徴点で はなく,またその検出精度が不十分であるという理由による.. TQT = tTend − tQstt. (4.3.14). VT = vTpk − vTend. (4.3.15). また,T 波の振幅は P 波の振幅に比べると大きいものの,被験者によっては T 波 の振幅が小さく検出しにくいものもあるため,特徴点見逃しの際の復帰処理とし て途中 2 ヶ所に検出異常の検査を挿入した.これは特徴点検出中に TQT が通常で はありえない大きな値となった時点で T 波検出を打ち切って初期状態からの QRS 波検出を行うというものである. T wave detection. Decrement Interval Counter. Interval finished ?. no. yes Find local minimum. Too large TQT ?. yes. no 2nd derivative>TH T. no. yes Find peak point. 2nd derivative<0 ?. no. yes Too large TQT ?. yes. no 2nd derivative increase ?. no. yes Diagnostic parameter calculation. P wave detection. Initial QRS complex detection. Fig.4.3.9 T wave detection algorithm. – 123 –.

(10) 4.3 波形検出および診断アルゴリズム. 以上に述べた T 波検出アルゴリズムにより実際の心電図上の T 波を検出した例 を fig.4.3.10 に示す.. 1.0. 0.1 s. QRS complex interval. amplitude [mV]. 0.8 0.6. ECG. 0.4. THT. 0.2 0.0. Modified second order derivative. -0.2 -0.4 Fig.4.3.10. 4.3.3. An example of a T wave detection. 診断アルゴリズム. Fig.4.3.4 に示したように ,診断処理は T 波検出完了直後に行われる.ここでは P 波,QRS 波,T 波それぞれの検出の最終段階で式(4.3.8)から式(4.3.15)により計 算された診断パラメータの評価を行う.評価の内容は,すべての診断パラメータ があらかじめ設けておいた各診断パラメータの正常範囲内であるかという単純な ものである.あらかじめ用意する各診断パラメータの最小値および最大値は健常 者の正常範囲をもとに定める.ただし,あまり範囲を広くすると異常心電図を見 逃す恐れがあり,範囲を狭くすると正常な心電図を異常と判定する確率が高くな ってデータの削減率が悪化するため,異常な心電図を見逃さない範囲で可能な限 り狭くすることが必要である.このためこの範囲は多くの被験者からの心電図を 実際に処理しながら決定してゆく必要がある.. – 124 –.

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参照

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