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剖検時実測した胸腔容積値について

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(1)

(跳騨88第繍46糊)

〔原 著〕

剖検時実測した胸腔容積値について

東京女f医科大学第2病理学教室(主任 梶野昭教授)

   教授 梶

       カジ

益子 幸子・葛西

マシコ  サチコ   カサイ

日i    l:1召

 タ         アキラ

庸子・上田 国臣

ヨウコ   ウエダ   クニナミ

(受付 昭和46年5月31口)

On the Volume of Thoracic Cavity Measured on Cadavers Akira KAJITA, M.D., Sachiko MASHIKO, M.D.,

Y6ko KASAI, M,D. and Kuniomi UEDA, M.D.

DcpartInent of Pathology, Tokyo Women s Mcdical Collcgc

  The authors tried to determillc thc approximate value of thc thoracic cavity volurnc(TCV)on 77 cadavcrs(39 males and 38艶males). After rcmoving thc heart and Iungs and mcasuring the chcst blood volumc, watcr was丘Iled in thc thoracic cavity and the vo1瓦1me ofwater was mcasured. TCV of the new.

born was about l 50 cm3 and thc mean and standard deviation of TCV of thc adult was 4,256」=758 cm3

(male)and 3,015±610cm3(飴malc). The increase of TCV in thc male group above 60 years was noted.

Allometric食)rmula of thc relation between TCV:body weight was calculated and loose isometrシwas shown. Tcv(cm3)/body weight(kg)value was g L2±25・3(male)and 77・9±20.4(免male).

The relative proρortion of the components of TCV, heart and lung tissue and chest blood volumc was calculatcd and the remained volume which correspondcd to the gas volume in the c乱daver lung was calcu−

Iatcd as 2.151(male)and 1.371(艶male)in thc adult, which also showed the tcndency to increasc in the malc abovc 60 year.

        1 はじめに

 胸腔(Cavum thoracis)とは,横隔膜によって 腹腔との間を境いされた体腔の一部である.それ は,二つの胸膜腔および心膜腔,大動脈,食道,

気管などを含む縦隔からなっている.その大部分 は,いうまでもなく肺および心臓を入れた胸膜腔 および心膜腔である.脊椎動物の内で,両懐類 や昆虫類では,心臓をいれる心膜腔が前方に位置 し,腹部臓器と肺をいれる肋腹膜腔が後方に位置 している.哺乳類になって始めて横隔膜ができ上

り,胸腔と腹腔が完全に分離したのである(図 1).横隔膜の下方転位による吸気という様式が 換気の効率を一だんと尤めたことはいうまでもな

い.

 胸腔という限られた空間に,肺,心臓という重 要な臓器が収められているという事情は,種々の 病的過程の進行の上で無視できない要因である.

異常な心肥大における圧迫性無気肺などはその著 しい例といえよう.私たちは,胸腔容積値を知る 目的で,解剖時その実測を行なってみた.その方

(2)

法は十分厳密なものではなく,例数も少ないが,

ここにおよその見積りを算出して若干の検討を加 えておきたい.

        II方  法

 男子39例,女子38例について,解剖時,心臓および肺 を取り出し,胸部屍血量を測定したのち,胸腔に水を満 たしてこの量を測定した(図2).このさい,胸腔内に はなお大動脈,食道,気管など縦隔臓器が残っているか

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  Reptltia      MalTlmaLia

図1.脊椎動物の進化と胸・腹腔の分離.(Giersberg    &Rietschel:Vergleichende Anatomie der   Wirbeltiere. Bd.2,1968より臨写).

図2.胸腔の概観,心臓と肺を取り出し,胸部屍血    量を測定した後,胸腔内に水を満たして,そ    の量を測定した.

TIlora。.ca>ity(L)

6「

∪{:舗e

5−     o              Q    o 4       亀     3  。 。

:.  ● 1髪_.._

  10  20

o

ら,ここで測られているのは胸膜腔および心膜腔に相当 する容積である.ここでは,かりにこれを「胸腔容積」

と呼んだ.胸腔は,もちろん前面に向ってkonvexであ るから,仰臥位をとる屍体の胸腔内に満たされた水は,

胸腔の本来の形態を正確には再現しないが,私たちはこ の値をもつて胸腔容積の近似値として採用した.

        III結果と考察  表1に測定値の概要を示した,

 1.胸腔容積の成長

 胸腔容積は,新生児では150cm3前後であり,

      

    QQ:・0・

        o    Q

       :  お

.. 堰v.  :㍉.

      ●鱒      ●

        ●          age

L一一一

 30   40   50   60   170

図3.年令と胸腔容積.

80Y

これが15才前後ですでに成人値に達する(図3)。

成人の胸腔容積値はかなり変動の多い量である が,その平均,標準偏差と変動係数を,体重,身 長のそれとともに次にあげる.これは,20才以上 の例,男子26例,女子27例についての値である.

 胸腔容積

 男子:4,256±758cm3(18%)

 女子:3,0!5±610cm3(20%)

 体重

 男子:47.3±8.6kg(18%)

 女子:40.0±7.9㎏(20%)

(3)

表1(a)引例の胸腔容積の実測値とその配分.(男子).

SN

2803 2667 2828

2851.

2664 2930 2880 2850 3076

年 令 0日 2月 9月 9月 5年

8 15

病     名 無  気  月市

大動脈縮窄,心室中隔欠損,

卵門孔開存

トウシック・ビング症候群 急性骨髄性白血病

腹腔内出血

ア』ノルドキァリ=奇形 フアロー4徴症

181燭脈内凱厚沖膜鮒

19

綜維断裂

僧帽弁閉鎖不全

体 重

(kg)

 2.5}

3.5 6.0 8.0 14,0 13.5 40.0 57.0

2991[23 3146[2生

3042126

2727 3040 2968

301.1

3004 2863

27 30 31 32 一≧o 42 2953, 42 2961 2848 2949

44 47 57

44.5

糸球体腎炎

157・5

心室・1・隔欠損,大」rlL管転f1211312

心窒中隔欠損 44.0

僧帽弁狭窄兼閉鎖不全 [9.・

心房中隔欠損

急性骨髄性白血病

右心房室拡張

線 維 肉 腫 心  肥  大

リソバ肉腫

阻  石  坐 上二二,肝 28671

29691 58 58

心 筋 硬 三 冠  硬  化 胃     癌

2933!58 再生不良性貧血

2891 3033 31QI 3220 3083 2959 2992 2967 2997

65 膵 癌

66 68 68 72 74 75 76 77

心 筋 硬  塞 大 動 脈 瘤 心  肥  大 心 筋 硬 塞 肺  結  核

腎  腫  瘍 胆 の う 癌

41.0 49.0 64.5 44.0 4σ.0 50.5 53.0 50.5 54.0 63,0 4百75 43.5

3096

4σ.0

81

62.0 39.5 46.5 48.6 29。5 41.0 46.3 47.8 心 筋 硬 塞 145.5

身 長

(cm)

 52.0 90.0 68.0 72.0

胸腔容積

(cm3)

  ユ40 300 880 700

/10.0 ユ,!80 106.0

175.0 168.0 ユ70.0 175.0 152.0 170.0

].67,0

164.0 161.0 174.0 166.0 162.0 162.0 162.0

].66.0

160,0 170.0

1,000 3,500 5,000 4,500 3,200 4,葛oo 5,600 4,000 4,500 3,250 4,150 3,500 4,200 3,800 3,400 2,700 4,000

心 臓

(%)

 爲=9 25.0

7.4

64

6.4 12.8 20。1 10.6

(%)

36.4 23.3 13.6 2.6 12,7 22.0 22.6 18.2

胸部屍」但 量(%)

 57τゴ 31.7 22.7 28,6

].].4

152.0 160.0 171.0 176.0 160.0 151.0 154.0 不 明

163.0 157.0 153.5

14.0 38。6 11.4

17.8117.111召.7

11.9    15.9 9.2 8.9 11.4 11.1 8.9 12.4 7.3

1LO

7.5 9.1 9.3 ユ3.0 4,000  1  9.8 4,200  1  6.7 4,800 4,500 6,000 4,50Q 5,000 5,000 4β00 5,200 3,500 4,650

6。9 3.8 ユ3.3 8.7 9.9 8.2 5.0 6.3 7.7 6.6

13.3

!0.9 17.9 22.4 34.8 14.5

.34.9 15.8 52.1 27.9 27.0 32.3 34.4 12.f−

24.0 1!,3 15.3 13.3

/3.9 15.0 1/.3 16.2 22.3 12.2

互6.6

19.5 42.3 46.3 34.0 6.2 18.8 17.7 27.4 16.8 25.6 42.6 28.3 22.0 14.0 10.4 7.8 19.8 23.1 13.9 16.0 8。1 8.7 13.7 12.0

メ5   一鳳 ヌし  エ

(%)

 670一 20.0 56.3 62.4 69.5

5L2

166.0

18.7 59.8 48.4

4,400 8.3 15.9

25.6 58.0 37.9 24.4 32.5 50ユ 54.3 40.1 45.8 23.6 37.4 21.1 26.4 33。8 67.2 58。7 77.1 51.6 54.9 62.3 60.8 75.6 68.8 56.3 69.2 22.7   53.1

表1(b)各例の胸腔容積の実測値とその配分.(女子).

SN

含227 2814 2706 2977 3927

年 令 5日 18日 3月 6月

化膿性脳膜炎 リウマチ性心炎 心i窒rl」隔欠損

体 重

(kg)

2ユ5

3.0 4.2 4.5

7月 肺 の 出 血

身 長

(cm)

胸腔容積

(cm3)

46.5[

53.o1 58.。片18、

心 臓

(%)

17017・6

180110.8

65.0 6.8   67,0

 −684一

390 380

20.5 15。9 15.8

(%)

31。2 24.7 27.0 27.9 31.6

胸部屍血 量(%)

35.3 50.0 16.2 25.6 26.3

気 :量

(%)

25.百…一

14.5 36.3 30.6 26.3

(4)

3294 3135 3540 358ユ 3/34 3635 2911 3543 2986 3356 3045 2894 3650 3095 2862 2845 3164 3051 2950 3538 3046 3361 3578 3053 3349 3166 3024 2887 3198 3612 3034 2907

1年5月 2年6月 5年

7 14 27 28 28 41 48 50

5!

発疹,心室中隔欠損 フア・一5徴症 心室中隔欠損 胃平滑筋腫 心内膜床欠損

7.6 8.5 17.0 32.0 41.5 リウマチ性心疾患 144,5

月市 動 1脈 硬 イヒ 141.0

胃壁フレグモーネ [4.5 大動脈弁狭窄,閉鎖不全

絨毛上皮腫

糖  尿  病 クモ膜炎,クモ膜下出血

52 乳

53 54 55

心  肥  大 ノトテンパッヒェル症候群

子  宮  癌 59 肝  硬  変 62 子  宮  癌

50.0 50.0 45.0 33.5 33。0 36.5 34.5 44.5 50.0 47.0

77.0 80,0

!05,0 132.0

]、50.0

162.0

!58.0

550

5!0 ユ,400 1,200 3,200 3,800 3,750

18.2 20.6 17.5 11.7 14.4 13.4 11.7 ユ43.0

153.0

12,800  3,250

7.9

65 膵  壊  死

65

158.0 161.0 157.0 160.0 142.0 155.0 152.0 154.0 152.0

49・01156・0

40.5  1  150.0

3,000 3,600 2,500 3,700 2,770 3,500 2,600 3,000 2,700 2,500

21.1 10.0 11.9 12.4 4.3 15.3 ユ4.9 ユ0.8 9.0 11.ユ 11.6 2,500    ].0.0 2,500    !5.2

27.3 Id.6 18.6 30.8

283

26.8 ユ2.5 26.4

66 僧1隔弁狭窄,閉鎖不全

66

67 68 70 74 76 79

直  腸  癌 僧帽弁,大動脈弁の肥厚

子  宮  癌 胆 の う 炎 子  宮  癌

耳歯f欧でヒ, 冠硬でヒ

42.5 27.0 33.0 42.0 59.0 38.0 29,0 30,0

145.0

、150.0 ユ52.0 153.0 154.0 138.0 146.0 ユ46.0

29.4 58.0 17.4 35.8

392

29.6 17.7 20.8 16.3 32.6 20.8

3,500 2,500 3,700 4,800 2,1GO 3,000 2/500

5.1 8.0 一τ3.9 5.0 11.9 4.0 10.8

212

20.4 13.1

!0.0

!6.8 18.6 22.9 17.3 30.8

49.1 78.4 15.7 42.5 48.1 57.9 13.3 32.9

79 80

腎 孟 腎』炎 35.0

胆 の う 癌 32。0

147.0 142.0

29.4 ユ3.7 17.2 14.0

!3。2 29.2 28.6 36.5 18.3 18.1 ユ4.0 28.8

81 83

膀  胱  炎 卵 巣 嚢 腫

34,0

2,530 3,300 147.0 3,000 L34,0 i 145.0 2,aoO

17.4 6.7 ユ0.3

9.6 12.3 9.6 54.1 6.5 17.1 7.3 10.4

!7.0 22.1

13.9 22.3 7.8 1 26.2

].2.1

10.0 18.3

5.4 0.0 48.2 15.0 9.2 1.9 62.5 32.8 20.1

183

53.5 37.8

43..3

25.9 38.8 31.9 56.4 38.2 53.6 40.0 54.8 69.5 72.4 15.2 69.9 48,1 71.4 48,0 43.5 67.3 57.4 47.7

 身長

 男子:163.O土7.3Cln(5%)

 女子:15LO±6.4cm(4%)

 いずれの計測値についても男子が女子を明らか に上廻つている.なお,胸腔容積と体重の変動係 数はほぼ等しい値をとつている.

 次に,個体全体の成長を基準にとつた時に,そ の一部である胸腔容積の成長がどのような関係に あるかを,体重(X)と胸腔容積(y)の間のア

ロメトリー.式   Y=うxα で表わすと,

  男子;y=86.3λ11・02

  女子:y;62,7×1・02

となる,この計算には,0〜29才の例(男子17 例,女子14例)のみを用いた.

 すなわち,相対成長係数:は男女ともにほぼ1で あつて,両対数方眼紙の横軸に体重,縦軸に胸腔 容積をとつて実測値をプロットすると,ほぼ45度 の勾配をもつ直線を中心に撒布する(図4).相関 係数は男子0・968,女子0・938である.胸腔が体 重のほぼ1乗に比例して成長することは,体重の 成長をはるかにこえたテンポで成長する先天性心 疾患の心臓がもつ「空間占有過程」としての意味

を明らかに示すものといえよう1).

 なお,身長(めと胸腔容積(y)間のアロメ

(5)

ThQrac.ca>ity(し)

5

2

1 O

叫/

L.

male

o  ●

o o

o o fenユale

    ユ    し ヒ エ    コ   ゴ     ヨヘヨ ヨ  

    2  3 4 5    10   20 304050        BOdy weighヒ〔kg)

図4.体重を基準にした胸腔容積の相対成長。

  両対数グラフ.

Tho10c.cavil>〔L)

G

5 4

3

2

τ

qp

03

。。B (bS

 O    O

濃一8・ζ

  ○

o o

o

 10   20   30   40   5D   60   70

     Body weigh士 (k9)

図5. (a)体重と胸腔容積(男子).

ThOrOC.cavity〔し)

6

5

4

3

2

1 0

8

oo

 o  OO   Oo  Q  o

⑩(b      

  %。

  o O OO OO

  O

o

o

  

 8

6

_Q_」._ ._⊥一.一_.一L_.一_L.._一L.___よL____L_

  10   20   30   40   50   60   70        Body weigh ヒ Lk9〕

 図5(b)体重と胸腔容積(女子).

トリー式を算出すると,

  男子:y=0.015翠・44(r=0.938)

  女子:y=0.008翠・54(r=0.981)

となる.相対成長係数は2.4〜2.5である.

 20才以上,すなわち成人例で算出すると,体重 1kg当りの胸腔容積値は,

  男子:91.2±253cm3(変動係数=28%)

  女子:77.9±20.4cm3(変動係数=26%)

 性別の差は5%の危険率で有意である.体重1 k9当り90cm3(男子)ないし80cm3(女子)とい

うのが平均である.しかし変動係数はかなり高い 値を示す.すなわち,成長期に,体重と密接な相 関を保って成長した胸腔容積であるが,成長が停 止した以後の時期になると,胸腔容積は体格(体 重,身長)への依存性を失ってしまうようにみえ る(図5).体重あるいは身長と胸腔容積間の相関 係数を求めても,有意水準以下の値しかえられな い.これは,剖検時測られる胸腔容積が,体格 以外に,横隔膜位や呼吸停止時のレベルの違いな

ど,多くの要因に影響されるためであろう.

 一つの要因として加計の影響があげられる.

 成人例を60才までと61才以上の2群に分ける と,男子ではこの2群の問に胸腔容積値に有意の 差が認められる(有意水準1〜2%)、平均値およ び標準偏差を示すと,

21〜60才 3,975±692cm3 61才以上 4,705±658cm3

女子ではこの2群間に有意の差は認められない.

すなわち

  21〜60才  3,114±528cm3   61才以上 2,935±=676cm3

それぞれの年令層における男女間の差も0.1%以 下の危険率で有意と認められる.

 男子の高年例における胸腔容積の増加は体重に は依存していない.胸腔容積(cm3)/体重(㎏)

値も,21〜60才と61才以上では後者で明らかに増 加する(危険率2〜5%)のであって,21〜60才 では性別の差は有意に検出できないのに,61才以 上では男女の差は有意になる(危険率0.1%以

下).すなわち,

(6)

男子21〜60才    61才以上 女子 21〜60才    61才以上

84.6±25.8cm3 107.6±19.1crn3 75.8士19,4cm3 79.7±21.6cm3

となり,胸腔容積の絶対値よりもむしろこの相対 値の増加が目立つのである,

 2. 胸腔容積の内容について

 心臓および肺の組織容積は,かりに比重を1と 仮定すれば,その重量から直ちに求められる.し かし臓器としての心臓容積は,心組織の容積に心 腔内血液量が加わったものであり,肺容積は,肺 組織容積に肺内気量および肺門,肺割而から流出

した肺内語液量が加わったものである.

 肺内面液量のうち,肺門から流出した分は,心 腔内血液量,心近傍の大血管(主として静脈)内 血液とともに,胸部屍血量としてとらえられる量 である.ただし,胸部心血[量には,上肢および頭 蓋,すなわち胸腔外からの1血液が一部加わること は避けられない.幼児例の一部で,心,肺重量,

胸部屍血量を加えた和が,すでに胸腔容積を上廻 るものがあるのはこのためであろう.

 心臓,肺(いずれも組織容積),胸部屍血量の胸 腔容積にたいする割合を求めると,

  男子:心臓10.1±4..3%,肺20,2±9.9%,

胸部屍血量22.8土12.8%.

  女子:心臓12.0±4.5%,肺24.2±9.1%,

胸部扇町1量25,5±16.8%.

 残りの47%(男子)ないし38%(女子)は,屍 体の肺内に残った空気量に近いものと考えること ができよう.成人例だけでその平均値を求める と,男子2,151,女子L37 Zになる.この値は,

成人の機能的残気量(中位量)として文献にあげ られている数字にかなり近い.たとえば朽木2)に よれば,それは男子2.2!♂,女子1.44」であると

いう.

 図6は,年令順に配列した凶冷について,胸腔 容積の各区分への配分を図示したものである.

 気量にわりあてられる量は,女子では,絶対的 にだけではなく,相対的にも男子より下廻る.女 子では,心,肺組織容積,胸部屍血量が,いずれ

も胸腔内で相対的に大きい割合を要求しており,

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6(b)年令順に配列した各例の胸腔容積の内訳.

れだけ気量に当る部分が少なくなる.

また気量の占める割合は,次のように,加令に つて男女ともに著しく増加する.

 男子 21〜60才 39.8士14.1%

    61才以上 62.9±9.4%

 女子 21〜60才 35.2±17.6%

    61才以上 53.1土15.8%

これに代つて,心,肺組織容積,胸部屍1血量:は ずれも相対的に減少する.

この結果,気量の絶対値も加令によつて次のよ に増加するが,男子の21〜60才と61才以上の両 の間の差は明らかに有意である.

 男子 21〜60才 1.64±0.73」

    61才以上 2.96±0.521  女子 21〜60才 1.12±0.67Z     6!才以上 1,58士0.71Z 3. 胸腔容積の意i義

植物の開放的な成長とは対比的に,動物体で

,外胚葉が一おう外枠をこしらえ,その中を細 687一

(7)

胞が充填しながら成長するというやり方が特徴的 である3).このような,動物体における表面の規 制効果はきわめて一貫していて,多くの生理的・

病理的過程の進行は,頭蓋腔,胸腔,腹腔,骨盤 腔など,きまった空間内の事件として進行し,

したがってある要素の量的増大は,「空間占有過 程」として,直ちに他の要素への圧迫という作用 を結果することになる.先天性脳水腫における骨 縫合,泉門の離開,先天性心奇形における胸壁の 岬町(Herzbuckel)など,乳児ではみられる外枠 の側の妥協は,もちろん成入では稀である.

 胸腔容積は,体格や呼吸停止時のレベルなどで 変動するほか,男子ではとくに加州による拡張傾 向が認められる.

 また,胸・腹腔を隔てている横隔膜は筋性の組 織であって,本来の生理的機能からいってもrigid なものではなく,そのレベルも固定したものでは ありえない.解剖時観察する横隔膜位にしても,

かなり変動するものである.例えば,肝が腫大し ても,横隔膜のレベルが上って,肋骨弓の下に肝 下縁が僅かしか出ていないこともある.このよう なことがおこるのは,肺組織がpliableであるこ とが条件のように思われる.肺の滲出が広汎で,

かつ肝のうつ血を伴うような事態であれぽ,当 然横隔膜には上下から張力がかかることになる であろう.このように横隔膜位は,肺および腹腔 臓器とくに肝の状態によって変動する.

 胸腔内で,心肥大や胸膜腔の滲出液,気胸,あ るいは胸郭内腫瘍などが,胸腔内の空間的reserve をせぽめることはいうまでもない.肺炎性滲出や 胸腔内血液量の増加なども同様の意義があると考

えてよかろう.このさい,女性の方が胸腔が相対 的に小さく,空間的なreserveがせまいことは,

一般に肺は重量の性差が目立つ臓器で,肺重量/

体重の比も男子が女子にくらべて大きはこと4),

女子では派手な肺滲出がおこりにくい5)ことなど とも関係があるかと思われる.

 乳幼児例では,心,肺組織容積,胸部屍血量の 和がすでに胸腔容積の大部分を占める例がしばし ぽ見られることも注目される.また60才以上の例 で,気量への配分が著明に増加することは,この 年令層で一般的になる気腫局面の表現であろう か.胸腔容積の配分が基礎疾患や年令によってど のように変わるかは,胸腔という機能形態のあり 方を示す一つのindexとしてなお検討に値いする

と考えている.

        IV まとめ

 私たちは,男子39例,女子38例について,剖検 にあたって胸腔容積を測定し,その絶対・相対成 長,成人胸腔容積の代表値と散布度,胸腔容積の 内訳などについて検討し,胸腔容積およびその内 訳に影響する諸因子,とくに加令の影響について 検討を行なった.

 (本論文の大要は東京女子医科大学学会第169回例会 において発表した)

        文  献

1)梶田 昭・他:東女医大誌34626(昭39)

2)朽木英一:東京医学会雑誌53(別輯)195(昭  ユ4)

3)前川文夫:科学29203(昭34)

4) 梶田  日子:1友長 6 (3 ・ 4) 34 (H召42)

5)梶田 昭:東女医大誌35774(昭40)

参照

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