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争 点 整 理 及 び 人 証 調 べ の 充 実 策

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(1)民事訴訟法の現状と問題点. 争点整理及び人証調べの充実策. 一. 西. 民事訴訟法の現状と問題点 争点整理の充実策 今後の課題. 証拠調べの充実策. 口. 元. 争点整理及び人証調べの充実策. 三二五. ーセント間違いのない事実︵真実︶に基づいて紛争を解決することは無理である︒したがって︑国民の負担のもとに. のような訴訟制度をとろうが︑それが人間による紛争解決である以上︑いくら長期間審理をしたとしても一〇〇パ. 民事訴訟は︑国民の間の紛争を適正︑公平︑迅速かつ経済的に解決することをその理念としている︒しかし︑ど. 1 はじめに. 四 三 二 一.

(2) 早法六九巻四号︵一九九四︶. ︵1︶. 三二六. 運営される国家制度である民事訴訟においては︑国民の二ーズに応える期間及び費用の範囲内で可能な限り正しい. 解決を目指すことが使命となる︒そこで︑以下においては︑現在︑わが民事訴訟制度が国民の二ーズに応えている か否かにつき検討してみよう︒. 2 民事訴訟の問題点. 仮に民事司法が国民の二ーズに応えているのであれば︑民事紛争の増加に応じて国民の裁判所利用回数が増える. はずであるから︑まず︑国民経済活動︵経済活動が活発になれば︑当然それに伴って紛争が増加するはずである︶と訴訟. 事件︵民事・行政事件︶の新受件数を比較してみよう︒司法統計をみると︑日本が戦後を脱出したといわれる昭和四. 〇年から平成三年までの地方裁判所の訴訟事件の新受件数は︑多少の変化はあるものの︑ほぼ年間一〇万件から一. 三万件の間を上下しているのであって︑この間のGNPの飛躍的増大︵名目国民総生産でみれば︑昭和四〇年度・三三 ︵2︶ 兆六七三〇億円から平成三年度・四六〇兆四四五一億円へと増加している︶と比較すると︑訴訟事件数は︑極めて少ない. と言えよう︒GNPが経済活動の指標であり︑いわば経済取引の活発さを表すものとすると︑経済取引が増大すれ. ば︑それに伴ってトラブルも増大し︑民事紛争も増大するはずであるが︑前述のように民事訴訟事件は︑せいぜい. 漸増の域を出ていないのである︒このことからすれば︑民事訴訟として裁判所に登場しない多くの民事紛争が存在 ︵3︶. するものと思われる︒これらのいわば隠れた民事訴訟の中には︑弁護士によって示談等で処理される紛争も多いと. 思われるが︑弁護士数がその間に約二倍程度︵昭和四〇年・七三四三名︑平成三年二万四三一二〇名︶しか増大してい. ないことからすると︑多くの民事紛争は︑事件屋又は暴力団等によって非合法的に処理されている可能性がある︒ このような現状は︑極めて由々しき問題であるといわなければならない︒.

(3) 3 法曹人口. 民事訴訟の現状. 日本の法曹︵裁判官及び弁護士︶人口は︑平成三年においては︑裁判官︵簡裁判事を除く︶定員二. ω. 平成三年の最高裁を含む全裁判所の訴訟事件︵民事・行政事件︶の新受件数は︑二五万. 〇二二人及び弁護士数一万四三三〇人である︒これに書記官及び弁護士事務所事務員等の法曹を補助する職員等が. 事件数及び 処 理 体 制. 存在する︒. ω. 一四九四件︵うち︑地方裁判所の新受件数は︑一二万一〇四〇件である︶である︒. 通常︑地方裁判所においては︑民事一か部は︑裁判長一名︑右陪席裁判官一名及び左陪席裁判官一名で構成され︑. 裁判長と右陪席裁判官が単独事件を担当し︑全員︵左陪席裁判官が主任裁判官となる︶で合議事件を担当する︒そして︑. 一か部で年間約五〇〇ないし六〇〇件の事件を処理し︑裁判長及び右陪席裁判官は︑それぞれ年間約二〇〇ないし ︵4︶ 二五〇件︵月約二〇ないし二五件︶の単独事件を処理し︑全員で年間約八Oないし一〇〇件の合議事件を処理する︒. そして︑各部においては︑通常︑各単独係︵裁判長係及び右陪席係︶は︑それぞれ週二日を開廷日︵通常︑午前一〇. 時から一〇時三〇分までが弁論にあてられ︑午前一〇時三〇分から正午までと午後一時から四時までが証拠調べにあてられ. る︒ただし︑午後の証拠調べの途中︑若干の休憩時間がある︶とし︑週一日を和解日としている︒また︑合議係は︑週一. 日を開廷日としている︒したがって︑単独事件を処理する裁判官は︑週三日︵単独二日・合議一日︶の開廷日︑週一 日の和解日及び週︸日の起案︵記録読み︶日という勤務体制となっている︒. そして︑平成三年の司法統計によると︑地裁の民事事件︵第一審通常訴訟事件︶の既済事由の内訳は︑判決が四五・. 三二七. 五パーセント︵判決で終わった事件のうち︑欠席判決によるものが四丁八パーセントである︶︑和解が三四・七パーセン 争点整理及ぴ人証調べの充実策.

(4) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 三二八. 現在︑地方裁判所において行われている民事の通常事件︵東京地裁等の通常部に配点されるよう. ト︑取下げが一六・六パーセントである︒. ⑥ 審理の実情. な事件のうち単独係に配点される事件︶の審理は︑平成三年の司法統計に私の実務経験を併せて推測するに︑一般的に. は次のようなものであると思われる︵期日が数か月ごとに五月雨的に開かれるので︑﹁五月雨式審理﹂といわれる︶︒. ①訴え提起←②第一回弁論期日︵訴え提起後約二か月.訴状陳述及び答弁書陳述等がなされる︹通常︑法廷では当事者. が﹁訴状のとおり陳述します﹂などと言うことにより︑訴状等の陳述がなされたものとされている︺︒そして︑次回弁論期日. が約二か月後に指定される︶←③第二回弁論期日︵準備書面陳述及び書証の提出等︶⁝⁝︵証拠︹人証︺調べ期日まで︑約. 二か月に一回の割合で計五回程度の弁論期日が開かれる.なお︑弁論に要する時間は︑約三分程度である︶←④証拠調べ︵人. 証調べ︶期日︵二︑三か月に一回の割合で︑計四回程度の証拠調べ期日が開かれ︑計三︑四人の証人等を計四時間程度の時間. をかけて調べる︶←⑤和解期日︵和解は訴訟係属中適宜試みられるが︑ここでは︑裁判官が心証をとった後に和解勧告する. ものとする.和解期日は︑証拠調べ期日の約二か月後に開かれる︶←⑥最終弁論期日︵通常︑和解打切り後約二か月の弁論. 必要最小限度の審理期間. そこで︑地裁における右職務体制を前提にして︑人証調べが必要な通常訴訟事. 期日が指定される︶←⑦判決言渡期日︵通常︑結審後約二か月の言渡し期日が指定される︶︒. ㈲. 件の審理期間︵訴え提起から判決による処理までの期間︶を算出してみよう︒. 仮に各単独係の手持件数︵年間処理件数︶を二〇〇件とすれば︑対席判決となる事件のみについて証拠調べが必要. だとしても︵実際には︑和解で終わる事件も︑証拠調べをした後に和解となるものが多いから︑証拠調べが必要な事件はも. っと多くなる︶︑前記既済事由の内訳からすると︑約五〇件が証拠調べが必要となる︒そこで︑前記証拠調べ可能時間.

(5) ︵開廷日・月八日×一日四時間H月三二時間︶を一事件につき証拠調べに必要な時間︵平均︑計四時間︶で割ると︑月に. 八件しか証拠調べすることができないこととなり︑五〇件の証拠調べをするのに約六か月必要となる︒これに第一. 回期日までに必要な二か月︑弁論及び和解︵平均二か月一回︶に必要な一二月︵第一回期日を除く弁論等六回×一戸︶及. び判決作成期間︵二か月︶を加えると︑二二か月となり︑これが現状では理想的な審理期間︵現状を前提とすれば︑物. 理的最低審理期間といってもよい︶となる︵なお︑審理期間と審理時間は別であって︑審理期間が長いからといって必ずし. も審理時間が長いとは限らない︒ちなみに︑右審理方法を前提にすると︑一つの事件にあてられる審理時間は︑弁論一回三分. 程度であるから︑弁論時間計一八分︹六回×三分︺であり︑これに証拠調べ時間計四時間及び和解時間三〇分を加えると︑四. 時間四八分程度となる︶︒しかし︑現実には︑当事者の準備不足等で期日が延期されることが多く︑証拠調べを要する. 事件の審理期間は︑地裁において通常二年以上︵平成三年の司法統計によると︑六か月を超える第一審通常訴訟事件のう. ちの対席判決事件の平均審理期間は︑二五九か月である︶となる︒したがって︑現在の一般的な審理方法を前提にすれ. ば︑約四時間四八分の審理をするために︑約二年の期間が必要となる︒この審理期間が長いか短いかについては︑ ︵5︶. 最終的には国民の判断を待つしかないが︑二年という審理期間は︑現代の経済活動のスピードに照らすと︑やはり. 長いように思われる︒以上の審理期間を短縮するためには︑そのうちの主要な期間である弁論期間︵争点整理期間︶. と証拠︵人証︶調べ期間を短縮することが重要である︒そのためには︑一回の弁論︵争点整理︶期日を無駄にするこ ︵6︶. 三二九. となく︑充実した争点整理をして︑弁論期日回数を極力少なくした上で︑整理された争点に絞った証拠調べをする ことが必要となる︒以下においては︑争点整理と証拠調べの充実策を検討してみよう︒. 争点整理及び人証調べの充実策.

(6) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 三三〇. ︵1︶ これまでの民事訴訟の議論では︑真実発見のみを言うだけで︑どの程度の真実︵真実さの確率︶をどのような方法︵コスト︶で. 司法離れを引き起こしたように思われる︒国民の司法離れに危機感を持った弁護士から︑司法サ!ビスの納期という概念が提唱さ. 発見すべきかという議論が乏しかったように思われる︒このような目的的議論が乏しかったことが訴訟遅延を招き︑ひいては国民の. 訟手続試案︵迅速訴訟手続要領︶﹂ジュリ九一四号四〇頁以下︶︒. れ︑通常事件を一年で終了させる﹁迅速訴訟手続要領﹂が発表されている︵第一東京弁護士会民事訴訟促進等研究委員会﹁新民事訴. ︵4︶. ︵3︶. 井上治典ほか﹁︿座談会﹀民事訴訟法改正への視点﹂法時六六巻一号三四頁以下︹吉村発言︺は︑担当した事件の審理期間から. 地裁の民事事件の新受件数と既済件数は︑ほぼ同じである︵前掲データムッタ民事訴訟一一八頁参照︶︒. 事件動向や司法のキャパシティー︵法曹人口等︶等のデータについては︑林屋礼二編著﹃データムック民事訴訟﹄が詳しい︒. ︵2︶ 平成四年版経済白書七三頁参照︒. ︵5︶. みて︑法改正を必要とする程遅延していない旨主張する︒しかし︑司法統計上︑人証調べを要する事件の審理期間が約二年というの. このような訴訟運営の改善の提案に対しては︑弁護士会を中心として︑裁判官等の増員が実現されない限り訴訟遅延は解消しな. は︑国民感情からすると︑やはり遅延しているといわざるを得ないであろう︒ ︵6︶. いとして︑疑問視する傾向が強い︒確かに︑裁判官の増員が訴訟促進の大きな原動力になることは否定できないところであるが︑そ. 立つものであるから︑裁判官の増員には必然的に書記官等の増員が必要となる︒書記官等の増員が必要となれば︑それに伴って庁舎. れだけでは訴訟遅延は解消しない︒まず第一に︑裁判は︑裁判官のみならず書記官等の多くの裁判所職員の協力があって初めて成り. である国民の合意がない以上︑直ちに実現できるものではない︒第二に︑民事司法は︑裁判所のみならず︑弁護士等の活動に大きく. 等の設備の拡充が必要となってくる︒これらのいわばハードの拡充は︑国家予算等に大きな影響を与えるものであるから︑税負担者. 依存している︒裁判所の職員のみを増員しても︑当事者の代理人となる弁護士等の増員がなければ︑訴訟遅延は解消されない︒次回. 期日の指定の際︑弁護士が既に他の事件の期日が指定されていると言うので︑次回期日が先の方に指定されることは︑日頃よく見る. 光景である︒このようなことを防止するためには︑弁護士の増員が必要となろうが︑弁護士の増員は︑弁護士の生活を脅かす危険も. あるし︑弁護士の養成が司法研修所で国民の税金で行われていることからすると︑税負担者である国民の理解も必要となってこよう. ︵弁護士に対する国民の﹁ぼったくり﹂のイメ!ジと弁護士自身が持つ﹁自由と正義の擁護者﹂のイメージとのギャップについては︑. 前掲﹁︿座談会﹀民事訴訟法改正への視点﹂三七頁︹佐藤発言︺参照︶︒以上のような問題点を無視して︑ハ!ド面の改善がない以上.

(7) 従来︑争点整理とは︑直接事実レベルでの主張整理をいうものとされてきた︒しかし︑. 争点整理の充実策. での改善の余地が多く残されているように思われる︒. 訴訟遅延は解消しないなどと言って︑手を撲いていてもよいとはいえない︒法曹には︑現行法の下でも︑訴訟運営というソフトの面. 二. 間接事実の重要性. 1 争点整理の手法 ω. 直接事実が直接に立証対象となることは少なく︑多くの場合︑当事者は︑直接事実を推認する間接事実の存否をめ. 証拠力についての認識の一致. 当事者は︑証拠調べにおいて︑争点についての裁判官の心証を自己に有利. ぐって争うこととなる.したがって︑争点整理の目的が証拠調べの対象を明確にすることにあるならば︑少なくと ︵1︶ も重要な間接事実の段階までの争点整理は︑是非とも必要である︒. ③. な方向に持っていこうと努力するわけであるから︑争点についての裁判官の心証の程度︵証拠力の評価︶が分からな. ければ︑どの程度の立証をすればよいか迷うこととなる︒例えば︑ある事実について︑裁判官が既に書証によって. 立証︵証拠力︶充分と判断しているならば︑その事実について証明責任を負う当事者は︑その事実についてさらに証. 人等の人証調べをする必要はないわけである︒逆に︑他方の当事者は︑その事実について︑裁判官の心証を動揺さ. せるための立証活動をする必要が出てくる︒このように︑当事者は︑争点についての裁判官の心証を基準又は目標. 三三︸. にして︑立証活動をするわけであるから︑人証調べに入る前には︑争点についての裁判官の心証の程度︵証拠力の評 争点整理及び人証調べの充実策.

(8) 早法六九巻四号︵一九九四︶ ︵2︶. 争点及び証拠力︵心証︶の事前開示. 価︶が明らかにされていることが必要となる︒. ㈹. 三三二. 以上のように︑充実した証拠調べのためには︑争点及び証拠力の評価. ︵心証︶の事前開示が必要となるが︑そのためには︑従来のような法廷での弁論手続︵現実には︑準備書面交換期日に. 堕している︶ではなく︑当事者と裁判官が同じテーブルを囲んで書証等に基づき争点について充分議論して︑証拠調. べの対象等を事前に明らかにすることが必要となってくる︒現在︑各地裁で導入が図られているラウンド・テーブ ル法廷は︑このような争点整理の場所として極めて相応しいものであろう︒. また︑争点等の事前開示を徹底するためには︑少し複雑な事件になると︑口頭による争点整理では不十分であり︑. 何らかの形で争点を書面化︵争点整理案の作成︶する必要が出てくる︒しかし︑書面化の際に留意すべき点は︑書面 ︵3︶. 化による裁判官の事務量の増大と職権化の危険性である︒すなわち︑書面作成に多くの時間をとられ︑それが判決. 作成に直接結び付かないのであれば︑極めて効率が悪く︑実務には到底定着しない︒また︑書面化する上で︑ある. 程度裁判官が主導権を発揮することは必要であるが︑それが過度になると︑当事者の主張していない事実を重要な 間接事実であるなどと指摘したりして︑不公平な取扱いとなる危険性がある︒. 以上のような危険を防止するためには︑争点整理案を直ちに判決に転用することができ︑かつ︑間接事実の整理. については当事者の自主性を重んじるような配慮が必要である︒私は︑このような点に配慮して︑以下のような争. 点整理案︵争点整理期日において︑裁判所と当事者が協同して間接事実を争点整理案に書き込んでいくという意味で︑﹁争点. 整理ワータブック﹂と呼んでいる︶を作成して︑事前に当事者に配付して︑人証調べの前に争点整理︵立証プラン︶期. 日を入れて︑ラウンド・テーブル方式で当事者と協同して争点整理︵立証プラン作成︶を行っている︒.

(9) 「争点整理ワークブック」のモデル. 丈寸 不口. る. 争占. 争点. 』、、. o. 事案の概要図. ・・②①. (主40,反20) 止口. ②甲. 人. ①証人(主30,反15). 原甲. 証乙. 1 ● ■. 立証計画. ×○ ・ ・○× ●. 裁 判 認. 件 争点整理 及 び 人 証 調 べ の 充 実 策. る. o ■ ●. 2. ・抗否請・ ・弁. 張. 案. 求 ■. 対・ す・. ・・⑤@ ● ● ● o ■ D. め た 口心、. 整 理. 者 の. 求・・求事 原・・原者 因・・因の に・・ 、 王 ●. ・ に. す 雪刃. 事争番 者点号. 当 事実 ・請当. 事 当 一事. 第 一二 二. 第 (争1〉 (争2). 第. 三. ・四 抗・ 弁・. 三… 証 拠. o. 右争点整理案は︑三段に分かれ︑上段は︑判. 決に直接転用できるように判決の事実︵直接事. 三三三. 事実等を記載する程度にとどめ︑その補充は︑. 裁判官は︑当事者の準備書面等から拾った間接. と下段は︑当事者の自主性を重視する観点から︑. とを示し︑×が否認することを示す︶︒そして︑中段. の○及び×は︑当事者の認否を示す︒○が認めるこ. ついての証拠方法を掲げる︵なお︑証拠方法の上. は︑争いのある事実︵直接事実及び間接事実︶に. 告に有利な間接事実である︶を記載する︒下段に. ①︑②が原告に有利な間接事実であり︑@︑⑤が被. 事実を推認させる重要な間接事実︵モデルでは︑. 容易であろう︶︒中段には︑上段の争いのある直接. ベルまでの争点整理をすると︑新様式判決の作成も. と記載することとする︵このような間接事実のレ. かにする趣旨から︑請求原因︑抗弁︑再抗弁等. 実︶摘示と同じものにし︑証明責任の所在を明ら. o.

(10) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 三三四. 争点整理のためのラウンド・テーブル期日において︑当事者が自主的に行うことにしている.その際︑裁判官は︑. 下段の証拠の証拠力について暫定的な心証を開示し︑その点についての当事者の意見を聞くことが必要である︒そ. 当事者の情報収集手段の拡充. れによって︑当事者は︑証拠調べ︵人証調べ︶において︑どの点を重視してどの程度の証明活動をすればよいか明ら ︵4︶ かとなり︑充実した証拠調べが可能となろう︒. 2. 現行民事訴訟法は︑裁判資料の収集責任を当事者に負わす弁論主義を採用している︒このような制度の下におい. て充実した争点整理を行うためには︑当事者が事前に充分な証拠︵情報︶を収集していることが必要である︒しかし︑. 文書提出命令等の現行の証拠収集手段は︑極めて貧弱なものである︒しかし︑現行法の枠内でも︑実務の運用の工. 夫でかなり改善できるように思われる︒以下においては︑その改善の工夫の主要な例を挙げよう︒. ω 文書提出命令 文書提出命令は︑実務上︑よく利用される証拠収集手段である︒そのため︑裁判例は︑そ ︵5︶ の提出義務について拡大解釈等をすることによって︑利用範囲を広げる努力を続けてきた︒しかし︑文書所持者が. 自己の秘密を侵害すると言って︑文書提出命令に従わないことが多く︑文書提出命令の実効性を奪う結果となって. いる︒そのための対策として︑提出命令違反の効果として︑文書に関する相手方の主張を真実と認めることができ ︵6︶. るという現行民事訴訟法三一六条の制裁よりも強い制裁として︑申立人の証明主題︵証すべき事実︶を真実とみなす. という解釈も主張されている︒しかし︑このような制裁は︑文書の所持者が当事者の場合にはかなり効果を発揮で ︵7︶ きると思われるが︑文書の所持者が第三者の場合には︑そのような制裁を課すことは困難である︒そのためには︑. 制裁強化とは違った観点から︑文書の所持者の秘密保護の手段をとる必要がある︒私は︑これまで︑提出文書を訴.

(11) ︵8︶ 訟記録に綴じないという工夫をすることによって一般公開を禁止するという方法を主張してきた︒さらに︑提出を. 求められた文書を裁判官のみが閲読するという方法も検討の余地があるように思われる︒すなわち︑申立人は︑当. 該文書を閲読せずに︑そのような文書があるとの推測の下に提出命令を申し立てるわけであるが︑裁判所は︑提出. 義務の存否及び提出の必要性を判断するためには︑提出命令の判断をする前に当該文書を閲読する必要があろう︒. そのために︑裁判官が提出を求められた文書を閲読して︑提出義務の存否等を判断して︑文書提出命令の可否を決. 定できるのではなかろうか︒文書所持者は︑当該文書が申立人等に公開されることを危惧するわけであるから︑裁 ︵9︶ 判官のみに公開をとどめれば︑文書所持者の秘密の侵害を最小限に抑えることが可能となる︒その際︑問題となる. のは︑当該文書を提出命令の判断のために閲読すると言っても︑担当裁判官が閲読するわけであるから︑裁判官の. 心証に影響を与える点である︒しかし︑裁判官は︑提出命令を出さなかった文書については︑それを証拠として採. 用して事実認定できないわけであるから︑特段の問題は生じないように思われる︒裁判官の心証を問題にして︑提. 当事者のみによる事情聴取. 実務上︑第三者的証人の場合︑他人の紛争に関わりたくないということなど. 出命令の実効性を減殺することの方が問題であろう︒. ⑭. の理由から︑法廷に出頭して証言をすることを拒否する者が多い︒このような場合︑勾引︵民訴二七八条︶すること. も可能であるが︑手続等に時間もかかり︑また︑病人等の場合は︑現実問題として勾引は困難である︒また︑出張. 尋間も可能であるが︑他の事件の審理日程の関係で︑それも困難を伴う︒このような例外的な場合︑裁判所は︑当. 事者の同意の下に︑裁判所外で当事者双方が証人予定者に会って事情聴取することを認め︑その状況を録音又は録. 三三五. 画するなどして︑それを証拠として提出させれば足りるように思われる︒その際︑裁判所の質問事項を事前に当事 争点整理及び人証調べの充実策.

(12) 早法六九巻四号︵一九九四︶. ︵10︶. ︵11︶. 三三六. 現行民事訴訟法八八条は︑当事者又は訴訟代理人が専門的・技術的知識を補うため︑裁判. 者に伝え︑当事者が証人予定者にその点についても質間することによって︑法廷での証人尋問とほぼ同じ効果を発. 輔佐人の活用. 揮することができよう︒. ⑥. 所の許可を得て輔佐人を選任することを認めている︒実務では︑公害訴訟等で輔佐人が選任される程度でそれほど. 活用されていないが︑建築毅疵事件等の専門的知識が必要となる事件においては︑建築士等の専門家を輔佐人に選. 医療過誤事件等の専門知識が必要な事件においては︑手術方法の適否などという争. 任して︑争点整理等に立ち会ってもらうことにより︑争点整理を充実することが可能となろう︒. ㈲ 専門家による説明会. 点の判断の前提問題として︑体の構造・機能︑薬の効能等の基本的な知識が︑裁判所のみならず当事者にも欠けて. いる場合が多い︒このようないわば大学の学部レベルの講義に出てくるような基本的な事項についても︑法廷で交. 互尋問することは︑極めて非能率で当事者も理解が困難である︒このような場合︑当事者の意見を聞いた上で︑当. 事者の推薦する中立的な専門家︵民事訴訟法八八条の輔佐人となる︶を招いて︑争点の判断の前提となるような基本的. 事項についての説明会をするなどして︑当事者の情報収集に協力することが必要なのではなかろうか︒このような. 3. 書記官の活用. 裁判官の補助体制 ︵13︶. 現在︑裁判官を補助する者として︑書記官が配置されている︒しかし︑現実は︑書記官の. 手続をとることによって︑当事者も︑尋問に必要な情報を充分に収集することができ︑その結果︑充実した証拠調 ︵12︶ べが可能となろう︒そして︑当事者から要求があれば︑その状況を録画するなどして記録すれば足りよう︒. ω. 職務の大半は︑証拠調べに立ち会って︑尋問調書を作成することになっている︒多くの書記官は︑週一日の立ち会.

(13) い︵平均的人証調べ時間は︑約四時間である︶であるが︑その他に和解期日の立ち会い︑送達事務等の職務に追われ︑. 立ち会った週のうちに尋問調書を作成することは困難で︑多くの未作成の調書を抱えているのが現状である︵通常︑. 人証調べ一時間につき︑三ないし五倍の反訳時間が必要である︶︒このような状況にある書記官に対し︑裁判所法が予定. している調査事務等の補助事務を要求するのは︑到底無理である︒その結果︑裁判官は︑多くの事件を抱え︑一人. で調査事務から判決作成事務までをこなさなければならないこととなり︑充分な争点整理時間をとれないのが実情. である︒このような状況を打破するためには︑準備書面の交換に堕している争点整理︵弁論︶を活性化し︑口頭の討. 論によって充分争点を整理し︑無駄な証拠調べを極力少なくすることが大切である︒その結果︑書記官も過大な調. 現在︑医療過誤訴訟等の専門的知識を要する事件が増大している︒このような事件の. 書作成事務から解放されて︑調査事務等の補助事務を行うことが可能となってくる.そのことにより︑裁判官も︑ ︵14︶ 事実認定及び法解釈という本来の職務を充実することができよう︒. ω 調停委員との連携. 場合︑法律家としての裁判官は︑その事件の特質を理解するための専門的知識に欠けている︒このような場合︑一. 部の裁判所に︑国税庁等から出向してきている調査官がいるが︑数も限られているし︑その分野も限定されている︒. したがって︑裁判官の専門知識の補充という目的を達成することは困難である︒しかし︑各地の裁判所には︑医者︑. 建築家等の専門家である調停委員が民事調停を行っている︒これらの調停委員の専門知識を利用することが検討さ. れてもよい︒その一つの方法として︑医療過誤等の事件では︑争点整理をする上で必要があれば︑当該事件を一旦. 調停に回し︑調停委員に医者等の専門家を指定して︑調停に並行して争点整理をすることが考えられる︒その際︑. 三三七. 問題となるのは︑調停が不調に終わったときに︑その争点整理の結果を担当裁判官にどのようにして伝えるかとい 争点整理及び人証調べの充実策.

(14) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 三三八. うことである︒私は︑弁論に戻った際に当事者が争点整理の結果を準備書面という形で弁論期日に提出することに. 民事訴訟法三〇一条以下は︑裁判官の専門的知識を補充する目的で︑鑑定人を選任して︑. よって︑争点整理の結果を担当裁判官に引き継ぐことができると考えている︒. ㈹ 鑑定人の活用. 口頭又は書面による鑑定意見を聞くという証拠調べを規定している︒しかし︑実務上︑裁判官や当事者が専門的な. 事柄について口頭による鑑定意見の陳述を聞いて理解するのは困難であるから︑鑑定人は︑宣誓をした後︑後日鑑. 定書を作成して裁判所に提出するのが通例である︒しかし︑医療過誤事件等の専門知識を要する事件では︑裁判官. のみならず代理人も︑鑑定書を読んでも理解が困難であるから︑当事者の方から鑑定人の尋問を申請し︑交互尋問. で尋問が行われることとなる︒しかし︑素人の弁護士が尋問するわけであるから︑的を外した質問をしたり︑争点. とは直接関係のない極めて基本的な事項の質問に長時間を割いたりして︑極めて効率が悪いし︑争点についての充. 実した証拠調べをも阻害している︒これでは︑裁判官の専門的知識を補充するという鑑定の目的を達しない︒そこ ︵15︶. で︑鑑定書を理解するために︑当事者の立ち会いの下︑裁判官が鑑定書の内容について鑑定人に口頭で自由に質問. できるという手続が必要となる︒その際︑大切なことは︑当事者の同意を得た上で︑交互尋問のような形式にこだ. わらずに裁判官が自由に質問して︑その専門知識を補充できるような方法をとることである︒その結果︑当事者も︑. その質問状況を聴くことによって︑鑑定書の理解を深めることができ︑その後の訴訟対策を練ることができること. となる︒そして︑その結果については︑後日︑鑑定人から鑑定補充書を提出してもらうのが適切であろう︒それに. よって︑鑑定書の趣旨を理解し︑鑑定書の見解とそれとは異なる意見との相違点︵争点︶を発見することが可能とな. る︒その結果︑争点に的を絞った充実した鑑定人等の尋問が実現することとなる︒.

(15) 4. 争点整理メニューの選択 ︵16︶. 以上のような工夫をした上で︑事件の性質等に相応しい争点整理が可能となるように争点整理のバリエーション. を拡大することが必要である︒私は︑現行法の下では︑以下のような争点整理メニューが可能であると考えている︒. ①﹁準備書面交換型﹂︵主に準備書面を交換することによって争点整理をするもの︶及び﹁討論型﹂︵書証等に基づいて︑. 主に当事者双方が討論することで争点整理をするもの︶ ︵17︶ ②﹁法廷型﹂︵法廷で争点整理をするもの︶及び﹁ラウンド・テーブル型﹂︵ラウンド・テーブル法廷等を使用して︑当 事者と机を囲んで争点整理をするもの︶. ③﹁弁護士中心型﹂︵弁護士が中心となって争点整理をするもの︶及び﹁当事者参加型﹂︵争点整理に当事者又は準当事 者が参加して︑意見等を述べて争点整理を行うもの︶. ④﹁公開型﹂︵公開して︑傍聴人出席のもとに争点整理をするもの︶及び﹁非公開型﹂︵当事者等のみに争点整理への参加 を認め︑一般第三者の傍聴を認めないもの︶. 準備書面交換型は︑自然科学等の専門的知識が必要であって︑法律家である弁護士がその場で討論するのが困難 な事件等に相応しい.. これに対し︑討論型では︑過去の事実の存否︵記憶の正確性︶や法律の解釈等が問題となっている事件等において. は︑双方が討論することによって︑争点が浮かび上がり効果的な争点整理が期待できる︒. 法廷型は︑関係者が多い事案や社会の注目を集め︑傍聴者の多い事件に適当である︒. 三三九. これに対し︑ラウンド・テーブル型は︑建築綴疵事件等の専門的知識を必要とする事件において︑図面等を見な 争点整理及び人証調べの充実策.

(16) 早法六九巻四号︵一九九四︶. がら争点整理できる点で極めて有用である︒. 三四〇. 弁護士中心型は︑法律問題が争点となっている事件や当事者同士が一同に会すると互いに感情的となって充分に 争点整理ができない事件等に相応しい︒. これに対し︑当事者参加型は︑事情が複雑であって︑当事者等の同席を求めて︑当事者等から直接説明を受ける. 方が理解の容易な事件に相応しい︒また︑事件の解決に関与したということから︑当事者が満足感を得ることがで きるというメリットもある︒. 公開型は︑社会の注目を集め︑公開の必要性の高い事例に相応しい︒. これに対し︑非公開型は︑当事者のプライバシー侵害等の危険があるような事件に相応しい︒. 以上のような争点整理メニューの組合せで︑タイプーからタイプー6まで一六通りの組合せが可能となる︒裁判所. は︑争点整理をする際︑当事者の意見を聞いた上で︑事件の性質等に照らして︑相応しいタイプを選択することが. 間接事実を含めた争点整理の重要性については︑木川統一郎﹁ラウンドテーブル方式の主張整理﹂三ケ月章先生古稀祝賀・民事. 大切である.. ︵1︶. 証明度については︑小林秀之﹃証拠法﹄六六頁以下参照︒. 手続法学の革新中三〇六頁以下︑古閑裕二﹁争点整理の技法と審理方式ω﹂司法研修所論集八六号一一二頁以下参照︒ ︵2︶. ︵3︶現行民事訴訟法も︑争点整理手続として︑①口頭弁論︑②準備的口頭弁論︵民訴規二六条︶︑③準備手続︵民訴二四九条以下︶. 定する争点整理手続の間題点については︑上原敏夫﹁訴訟の準備と審理の充実﹂講座民事訴訟4一九一頁以下参照︒. を規定している︒しかし︑これまで︑どの手続も︑いろいろな原因で︑充分に争点整理機能を発揮することができなかった︒現行法 が予.

(17) ︵4︶. 竹下守夫涯野村秀敏﹁民事訴訟における文書提出命令︵一︶︑︵二︶﹂判例評論二〇四号二頁以下・二〇六号二頁以下︑時岡泰﹁文. 訴訟運営の協同主義については︑山内八郎﹁書記官事務と民事訴訟法の改正﹂法時六六巻一号八二頁以下参照︒. 書提出命令の範囲﹂民事訴訟法の争点二三二頁以下︑野村秀敏﹁文書提出命令﹂新・実務民事訴訟講座2一六九頁以下︑本間義信﹁文. ︵5︶. 書提出義務﹂吉川追悼論集・手続法の理論と実践下巻一九一頁以下︑佐藤彰一﹁文書提出命令﹂講座民事訴訟5二七一頁以下︑佐藤. 竹下守夫﹁模索的証明と文書提出命令違反の効果﹂吉川追悼論集・手続法の理論と実践下一六三頁以下参照︒申立人の立証しよ. 彰一﹁文書提出義務﹂民事訴訟法の争点︹新版︺二六二頁以下参照.. うとする事実を真実と認めるという制裁を認めた判例として︑東京高判昭和五四年一〇月一八日東高時報三〇巻一〇号二四九頁が. ︵6︶. ある︒. ︵8︶. 提出文書を裁判官のみが閲読するという取扱いは︑同じ書証を裁判官と相手方が閲読するという規定︵民訴規三九条︶に反する. 西口元﹁文書提出命令再考﹂早法六一巻三・四合併号三〇八頁以下参照︒. ︵7︶最高裁判所事務総局﹃民事訴訟手続に関する改正要綱試案﹄も︑過料の金額の引上げに止まっている︒ ︵9︶. 同意が必要であろう︒なお︑民事訴訟手続に関する改正要綱試案は︑文書提出義務の存否の審理手続として︑裁判官のみが当該文書. おそれがあるので︑現行法の解釈論としては少し無理がある︒そこで︑現行法の下でこのような取扱いをするのであれば︑当事者の. このような処理は︑アメリカ法のディスカバリーのうちの証言録取書︵ディポジション︶に似ているが︑供述者が宣誓を行わな. を閲読できるとする改正を打ち出している.. い点が異なる.アメリカ法のディスカバリーについては︑小林秀之﹁民事訴訟の焦点iディスカヴァリ問題を中心にー﹂法時五五巻. ︵10︶. 一一号一七頁以下参照︒民事訴訟手続に関する改正要綱試案も︑公証人が関与する宣誓供述書及び陳述録取書を認めている.. 専門家による説明会を現行法上のどの手続に位置づけるかは困難な問題である︒民事訴訟法ご三条一項四号所定の裁判所の. ︵n︶菊井維大・村松俊夫﹃全訂民事訴訟法1﹄四九一頁以下︑兼子一ほか﹃条解民事訴訟法﹄二四五頁以下参照︒. 釈明処分としての鑑定に近いが︑説明人に宣誓を命じないところが異なる︒説明人を当事者の輔佐人とするのが最も無難であろう︒. ︵12︶. ともあれ︑現行法上明文の規定がない以上︑説明会の実施については︑当事者の同意を求めるのが適当である︒. 三四︸. の変遷については︑全国書協本部書記官制度研究会﹁裁判所書記官制度改革の変遷﹂書協会報九一号二頁以下参照︒. ︵13︶書記官の職務については︑白石悦穂﹁裁判事務と書記官の役割﹂新・実務民事訴訟講座1一二一頁以下参照︒なお︑書記官制度. 争点整理及 び 人 証 調 べ の 充 実 策.

(18) 兼子一ほか・前掲条解民事訴訟法一〇三三頁参照︒. 山内八郎・前掲法時六六巻一号八一頁以下参照︒. 早法六九巻四号︵一九九四︶ ︵M︶ ︵15︶. 三四二. 論準備手続︑④書面による準備手続を設けることを提案している︒さらに右改正要綱試案は︑訴訟の進行に関する協議等を行う進行. ︵16︶民事訴訟手続に関する改正要綱試案も︑争点整理手続として︑現行法上の①口頭弁論︑②準備的口頭弁論のほかに︑新たに③弁. 事件の性質等に応じたきめ細かい処理をすることを可能にするであろう︒. 協議期日という手続も認めている︒このように︑争点整理のバリエーションを拡大することは︑従来の硬直化した訴訟運営の改善に. ラウンド・テーブル型の争点整理としては︑実務で広く利用されるようになった﹁弁論兼和解﹂手続がある︒弁論兼和解につい. ての論稿は多いが︑代表的なものとして︑鈴木正裕﹁﹃弁論兼和解方式﹄について﹂民訴三六号一頁以下︑東京地方裁判所における. 証拠調べの充実策. ﹁弁論兼和解の標準的な運用への提言﹂民事裁判資料一九七号を参照されたい︒. 三. 証拠調べの現状と問題点. 多くの民事事件の証拠調べは︑準備書面の交換による争点整理が主流であることもあっ. ㈹ 現状の証拠調べ︵人証調べ︶の問題点. る︒以下においては︑現状の人証調べの間題点を指摘してみよう︒. た尋問が行われることとなるが︑効果的な人証調べが行われないのであれば︑争点整理の改善もその効果が半減す. その結果︑漂流型審理となり︑訴訟遅延の最大の原因となっている︒争点整理手続の改善によって争点に的を絞っ. て︑充分争点整理をしないまま︑人証調べに入る結果︑不必要な尋問等が多い上に反対尋問が効を奏していない︒. ① 証拠調べの現状. 1. ︵17︶. 貢献し、.

(19) ア 書証の当日提出. 五月雨式審理に慣れきった弁護士は︑人証調べの当日になって証拠調べに使用する書証. を提出することが多い︒それを﹁後に提出する甲一号証によれば︑⁝⁝﹂などと言って証人尋問に使用するので︑. 相手方の弁護士が︑その書証について充分検討していないとして︑反対尋問は後日に行いたいと要求することもあ. 時間無制限. 多くの裁判官は︑証拠調べ期日を指定する際︑開始時刻を指定するだけで︑証拠調べ時間を. る︒そのために尋問を続行する結果︑徒に証拠調べが続行されることとなる︒. イ. 指定することが少ない︒その結果︑弁護士は︑長く尋問する方が有利であるし︑依頼者を満足させると思って︑長. 反対尋問の目的は︑主尋問に現れた事項について質問して︑当該証人の信用性を減少. 時間尋問し︑一日で主尋問と反対尋問を終える予定であったものが︑主尋問さえ終了せずに主尋問を続行すること. 無意味な反対尋問. もある︒. ウ. することにあるのであるから︑主尋問を聴いて証人の弱点を発見し︑その点に集中して鋭く尋問することが最も重. 要である︒しかし︑日本の現状は︑証拠収集手段の貧弱なことや︑証人尋問技術を磨く場が少ないということから︑. 多くの場合︑反対尋問は︑主尋問で聞かれた点について﹁さきほど証言したことは本当ですかP﹂などと質問する. 日本人の性向. 日本人は︑絶対神を信じる者が少なく︑ある人との義理のためなら嘘をつくことも厭わな. ような主尋間の上塗りの尋問のほとんどであって︑反対尋問が成功する例は極めて少ない︒. 工. いという性向︵真実をあるものとの相対的関係でとらえる思考︶があるといわれる︒このような性向があるかどうか確. かな証拠はないが︑証拠調べの現場では︑貸金の受領などといった明らかな事実について︑同じ事実を経験してい. 三四三. ると思われる証人が全く反対の証言をして真向から対立することが多い︒このような場合︑どちらかが嘘をついて 争点整理及び人証調べの充実策.

(20) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 三四四. いることが明らかであるにもかかわらず︑どちらも平気な顔をして証言する︒おそらく当事者の一方に義理があっ. てその人のためなら嘘をついてもよいという価値感があるのであろう.このような場合︑現在多く行われている五. 月雨式審理では︑後日尋問される証人は︑先の証人調書に目を通して尋問の準備を行い︑尋問対策を練るというこ. 証拠調べの改善策. 従来︑証拠調べは︑五月雨式に証人を隔離して交互尋問で行うものという固定. とが行われる︒これでは︑到底真実を発見することは困難である︒. 2. ω 証拠調ベメニューの選択. 観念が強く︑性質等の異なる事件であっても︑同じ証拠調べ方法をとることが多かった︒しかし︑事件の性質等に. 応じてそれに相応しい証拠調べをするのが︑真実発見を可能にし︑ひいては国民の権利保護につながるのであれば︑. 証拠調べ方法のバリエーションを広げる必要があろう︒そこで︑私は︑現行法の範囲内で︑次のような証拠調ベメ ニューを用意することが可能であると考えている︒. ①﹁交互尋問型﹂︵当事者が主尋問及び反対尋問を行うもの︹民訴二九四条︑民訴規三三条︺及び﹁審尋型﹂︵裁判所が中 心となって尋問するもの︶. ②﹁五月雨型﹂︵証拠調べ期日に一人の人証調べを行い︑そのような証拠調べ期日を二︑三か月に一回開くもの︶及び﹁集 中型﹂︵数人の人証を一回程度の証拠調べ期日において集中的に調べるもの︶. ③﹁隔離尋問型﹂︵証人尋問を個別的に行い︑後に尋問すべき証人を法廷に入れずに尋問を行うもの︶及び﹁在廷尋問型﹂ ︵後に尋問する証人を在廷させたまま︑他の証人の尋問を行うもの︹民訴二九八条︺︶. ④﹁個別型﹂︵人証を一人ずつ個別に尋間するもの︶及び﹁対質型﹂︵数人の人証を同時に尋問するもの︹民訴二九六条︺︶.

(21) 交互尋問は︑一問一答式で交互に尋問することによって︑実体的真実の発見を可能にするという方法であるが︑. 弁護士に+分な情報収集能力があることがその前提であるので︑日本のように情報収集手段が不充分な所では︑必. ずしもその機能を発揮できない危険性がある︒これに対し︑審尋型は︑例外的な証拠調べ方法であるが︑証人が当 ︵1︶. 事者に対し極めて強い反感を持って︑尋問に素直に応じないような場合には︑裁判所が中心になって尋問し︑それ を当事者が補充する方が真実発見にかなう.. 五月雨型は︑一人の証言を聞いた上でないと他の証人尋問が充分にできないような場合︵いわば︑証人尋問がディ. スカバリー機能を有する場合︶などには︑適切な方法である︒しかし︑そのような必要性のない場合まで︑五月雨型の. 証拠調べをすると︑前記のとおり︑後に調べる証人は︑先に調べた証人の証言調書を読んで︑反対尋問の対策を講. じるなどの弊害もあって︑逆に真実発見を困難にするなどの危険性もある︒このような場合︑数人の人証を集中的 ︵2︶ に尋問する集中型を採用して︑人証相互間の矛盾を浮き彫りすることが重要となってくる︒. 隔離尋間型は︑後に尋問する証人が同席していては︑後の証人が口裏を合わせるなどの危険性がある場合に︑有. 効な方法である︒これに対し︑在廷尋問型は︑他の証人の在廷に牽制されて虚偽の証言を控える場合や前の証人の ︵3︶ 証言を聴かせることによって後の証人に記憶を喚起させることができる場合などに有効な方法である︒. 個別型は︑民事訴訟法が定める原則的な方法であるが︑直接同じことを経験した証人が全く異なる証言をするよ ︵4︶. うな場合は︑対質型の尋問を採用し︑数人の証人を同時に尋問することによって︑証言の矛盾を浮き彫りにし︑真 実発見を容易にすることができる︒. 三四五. 以上の証拠調ベメニューによれば︑その選択によって︑タイプー︵交互尋問・五月雨・隔離尋問・個別型︶からタイ 争点整理及び人証調べの充実策.

(22) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 三四六. プー6︵審尋・集中・在廷尋問・対質型︶までの一六通りの組合せが可能となり︑事件の性質等に相応しいきめ細かい審. 争点整理の結果を証拠調べに結び付けるためには︑証拠調べに入る前に︑裁判. 理が可能となる︵前掲﹁争点整理ワークブック﹂の立証計画欄に証拠調ベメニューの選択の結果を記入する︶︒. ⑧ 立証プラン作成の必要性. 所は︑当事者双方と証拠調べの方法について事前に打合せをすることが必要である︒その際に打ち合わせる事項は︑. ①尋問方法︑②尋問事項︑③尋問順序︑④尋問予定時間︑⑤人証調べに使用する書証等である︒. 第一に︑尋問方法については︑証拠調ベメニューから適宜事件の性質等に応じて適切な尋問方法を選ぶ︒その際. に注意することは︑当事者の意見を最大限尊重することである︒最も事案の内容を知っている当事者の意見を無視. することは︑決して真実発見に繋がらないし︑スムーズな訴訟運営をすることはできない︒. 第二に︑尋問事項については︑争点整理された間接事実等についてどの証人に聞くかを打ち合わせる︒その際に. 注意すべき点は︑裁判官が安易に証人の信用性に係わる事実を述べるなどして︑反対尋間の妨害とならないように することである︒. 第三に︑尋問順序については︑人証をどういう順番で調べるかを相談する︒. 第四に︑尋問予定時間については︑当該事件に割り当てられる尋問時間に関して人証ごとのおよその配分時間を 決める.. 第五に︑書証の当日提出という慣行が充実した証拠調べを阻害する大きな原因であるので︑人証調べに使用する. 書証についての打ち合わせにおいては︑弾劾証拠として使用するものを除き︑その書証についての調査が可能な余 ︵5︶ 裕をもって事前に提出する旨合意することが大切である︒.

(23) 以上のような打ち合わせをすることによって︑日本のように︑契約書等の書面を作成することが少ない結果︑証. 言等に頼らざるを得ない上に︑当事者も充分な情報収集手段を持たない所では︑事前に立証命題を明らかにし︑充. ⑥. 終了証人 の 待 機. 尋問方法の工夫. 多くの事件で︑当事者は︑証人尋間が終了すれば︑もうその証人に尋問することができ. 分な事前準備ができるように配慮することが可能となる︒. ア. ないと思い︑関連すると思われる事項については全て尋問しようとして︑予定時間をオーバーすることが多い.こ. のような場合︑一応終了した証人に対し︑他の証人の尋間が終了するまで傍聴席︵又は退席してもらう︶で待機する. よう依頼し︑他の証人の尋間後必要があれば︑待機していた証人を再尋問することを許せば︑当事者も安心して予. 定時間に尋問を終了することができるし︑対質的効果も期待できる︒そして︑多くの場合︑傍聴席等で待機してい. た証人に対して再尋問することは稀であり︑結果的に効率のよい尋問をすることができるし︑当事者も︑再尋問を. 打ち合わせ時間の設定. 争点整理手続で主尋問で使用する書証の事前提出を約束しているにもかかわら. することによって︑もれなく尋問することが可能となる︒. イ. ず︑証拠調べ直前に発見されたなどのやむを得ない事情で︑当日書証が提出されることがある︒このような場合︑. 多くの場合︑相手方は︑その書証については︑検討する余裕がないので︑反対尋問は次回にしてほしい旨主張する.. しかし︑このような場合︑︼応主尋問を聴いた後︑︸旦証拠調べを中断して︑相手方に関係者等とその書証につい. 三四七. て打ち合わせをすることを許すことによって︑その日のうちに反対尋問が可能となることが多い.このような工夫 をすることによって︑徒に審理が遅延することを防止することができる︒ 争点整理及び人証調べの充実策.

(24) 早法六九巻四号︵一九九四︶. ウ 主尋問先行︵反対尋間集中︶. 三四八. 日本のように証拠収集手段が不充分な国では︑人証調べがディスカバリー機. 能を有しているので︑多くの弁護士は︑一人の人証を調べた後にその結果に基づいて事実調査をすることを希望す. る︒これが集中証拠調べを阻害している大きな原因である︒そこで︑このような弁護士の希望に配慮して︑ディス. カバリーの趣旨で複数の人証の主尋問のみを一期日に集中し︑その後の期日で複数の人証の反対尋問を集中的に行 うという︑いわば準集中証拠調べも検討の余地がある︒. ︵1︶ 民事訴訟法二九四条は︑交互尋問を規定し︑裁判官の補充尋問は当事者の尋問が終わってから行うものとし︑尋問の順序を変更. ることは否定できないところであるから︑当事者の同意があれば︑交互尋問による利益を放棄したものとみなして︑裁判所が先に尋. して当事者の尋問よりも先に裁判所が尋問することを許す規定を設けていない︒しかし︑裁判所が中心となって尋問する必要性があ. 問することも可能であると思われる︒なお︑民事保全法一一条は︑尋問順序を変更して︑裁判所が当事者よりも先に尋間することを. 集中証拠調べについては︑一部の裁判官が実施している程度であり︑その理論的解明も不充分である︒集中証拠調べについては︑. 認めている︒. ︵2︶. 二二八四号一三頁以下︑井垣敏生﹁民事集中審理について﹂判タ七九八号六頁以下︑井垣敏生ほか﹁︿座談会v民事集中審理につい. 西野喜一﹁民事集中審理の問題点﹂判時二一一四一号三頁以下︑田村洋三﹁民事集中審理について㈹︑qD﹂判時一三八三号三頁以下︑. て﹂判タ八二八号六頁以下参照︒. ︵3︶ 隔離尋問の例外については︑斎藤秀夫編著﹃注解民事訴訟法㈲﹄一〇五頁以下参照︒. ず学界も︑証拠調べについての研究が不足していることが原因であると思われる︒対質の具体的方法についての研究が期待されると. ︵4︶ 真実を発見しやすい尋問方法として︑対質が規定されているにもかかわらず︑実務ではほとんど行われていない︒実務のみなら. ころである︒. ︵5︶ 民事訴訟手続に関する改正要綱試案では︑人証調べにおいて使用する予定の書証は︑弾劾証拠として使用するものを除き︑その.

(25) 人証調べを開始する相当期間前に提出しなければならないと定める︒問題は︑事前提出の合意に反して︑人証調べ当日に提出してき. である︒. 今後の課題. た書証の取扱いである︒訴訟上の信義則に違反するものとして︑その採用を留保することができないであろうか︒検討を要する問題. 四. これまで多くの審理充実策が提言され︑平成五年一二月には︑民事訴訟手続に関する改正要綱試案も発表された.. しかし︑これまで︑幾度となく民事司法改革が実行されたにもかかわらず︑それが実務に定着することはなかった︒. その原因は︑いろいろなことが考えられるであろうが︑最も大きな原因は︑訴訟の現場に根ざした検討が不足して. いたことにあるように思われる︒学界と実務との交流が不足しているという日本の現状を考慮すれば︑訴訟の現場. で国民の権利の救済に努力している法曹実務家から︑現場に根ざした積極的な提言をすべきであろう︒その前提と. 三四九. して︑法曹は︑独善に陥らないためにも︑国民の二ーズを探究して︑常に国民に対するより良き司法サービスを心 掛けることが肝要であろう︒. 争点整理及び人証調べの充実策.

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