サービス多国籍企業に関する理論・的考察
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(2) 358. 社の海外投資について所有特殊的優位性形成の対する理論的アプローチにおいては必要不可欠 観点から考察することの意義を示すこととす であると思われることから,まずサービスの特 る。. 性を確認しておくこととする。 一般に,サービ スは,財との比較において以下のような特性が. 1サ‑ビスの特性とサービスの国際的 提供. あるとされる。 ①「生産と消費の同時性・不可分性. サービス業は,一般に,農林漁業・鉱業(第. (simultaneity,inseparability)j. 一次産業)や製造業(第二次産業)ではない第. 財の場合,生産者と消費者は物理的・時. その下位分類を見 三次産業を指すことが多い。. 間的に離れていても問題がないのに対し,. ると,電気・ガス・水道業などのユーティリ. サービスの場合は,その効用が顧客の状態. ティー業から,運輸・通信業,卸売・小売業,. 変化であることから,生産と消費が同時で. 金融業,建設・不動産業,ホテル・飲食業,コ. なければならず,分離不可能ということ。. ンサルティング業など多岐に亘り,分類方法. ②「可変性・不均質性(variability,heter0. も,ビジネス・サービス(中間サービス,企業. geneity)」. 向けサービス)と消費者サービス(最終サ⊥ビ 財の場合,一定の生産要素と生産プロセ また,サー スを通じた品質の均質化が可能であるのに ス)など,目的に応じて多様である。 ビス分野におけるFDIには,サービス多国籍企 対し,サービスの場合は,顧客と相互作用 業によるものだけではなく,製造業や第一次産 しながら生産されることから,品質の均質 業に属する多国籍企業の実施するもの,具体的 化自体が困難であるとともに,品質の評価 には,現地販売,貿易取引,マーケテイング, が顧客によって異なること。 ③「無形性(intangibility)」 金融サービスなどのほか,R&Dに関するもの こうした非サービス業の多 まで含まれている。. サービスの本質が,有形の物質を通じた. 国籍企業によるサービス分野のFDIは,その. 効用の提供でなく,顧客に対する無形の直. サービス活動が本業のバリュー・チェーンに組接的な効用の提供であること。 み込まれたものであることから,本業に着目し ④「消滅性・非貯蔵性(perishability,non 他方,サービス多国籍企 た分析が必要である。. storability)J. 業によるFDIについては,当然それに相応しい 財と異なり,生産と同時に消費されなけ 別の分析アプローチが必要となるものと考えられば消滅し,それを在庫として貯蔵してお れるが,既述のようにサービス業の下位分類は くことが困難なこと。 極めて多岐に亘ることから,サービス多国籍企 こうしたサービスの特性は,財が物質である 業の考察にあたって過度な一般化を求めることのに対して,サービスが基本的に「状態の変化」 は困難なことが予想される。. の提供であることに起因するものであるが,具. しかしながら,サービスの特性とされる性質. 体的な個々のサービスにおいては,こうした特. を理解しておくことは,サービス多国籍企業に 性の備わり方も多様であり,すべてのサービス.
(3) サービス多国籍企業に関する理論的考察 にすべての特性が備わっている訳ではない。. た. なる視点から捉えなければならない可能性を示. だし,これらの特性によって,サービス貿易の. 唆するものと言えるだろう。. 概念は,財の場合とはおのずと異なってくる。. このようにGATSの定義では4モードあるも. WTO(WorldTradeOrganization:世界貿易機. のの,「消滅性・非貯蔵性」と「(生産と消費の). 関)はGATS(GeneralAgreementonTradein. 同時性・不可分性」といった,いわゆる「貿易」. Services:サービス貿易に関する一般協定)にお. に適さないサービスの特性のため,多くのサー. いてサービス貿易を図1に示す4つのモードに. ビスにおける海外市場への提供方法は,FDIを. 定義している。 なお,この定義における「貿易」. 通じた現地拠点の設立,または出資を伴わない. は,国際的なサービス取引と言い換えた方が理. 契約形態(non‑equityformsofinvestment)(3)が. 解しやすいものと思われる0. 太宗を占めてきたのが実態である。. 図1GATSにおけるサービス貿易の4モード 1. 国境を超える取引(第1モード) 生産卦消費者ともに移動せず,サービスが国境を跨ぐケ‑ス 0電話で外国のコンサルタントを利用する場合 0外国の力如グ通信販売を利用する場合など 海外における消費(第2モード) 2. サービスの消費者のみが移動するケース 0外国の会議施設を使って会議を行う場合 0外国で船舶・航空機などの修理をする場合など. そして,FDIと並んで非出資の契約形態が重 要な役割を果たしている点は,サービス業企 業の国際ビジネス展開における大きな特徴であ その理由として,UNCTAD(2004)では, る。 サービス業の比較優位が知識(knowledge)ベー スの無形資産にあるために有形資産や資本と切. り離すことが可能なこと,また多国籍企業と現 3,業務上の拠点を通じてのサービス提供(第3モード) サ‑ビスの生産者が,他国の領域内の業務上の拠点を通じてサービスを提供 地企業の双方の求める成果要求水準などを契約 mケース 0海外支店を通じた金融サービス 0海外現地法人が提供する流通・運輸サービスなど. によって明文化することが可能であることなど を指摘するとともに,サービス業には航空業な. 4. 自然人の移動によるサービス麗供(第4モ‑ド) ど規制業種が多く,そもそもFDIによる参入 サービスの生産者である個人が. 他国の領域内においてサービスを提供する ケース が困難という事情があることもサービス業固有 0招韓外国人アーチストによる娯楽サービス こうした契約形態に 0外国人技師の短期滞在による保守・修理サービスなど の理由として挙げている。 (出典)外務省HP Mp://Wfw. mofa. go.jp/mofaj/gaJko/wto/service/gats̲5.h'帆)を基に筆者にて一書随変。. よる海外市場への参入は,一種の技術輸出と見. つまり,財の場合には,第1モードの取引. 倣して第1モードに分類することが適当な場合. のみを想定すれば足りた「貿易」の概念も,. もあれば,サービス提供国における提携相手の. GATSにおけるサービス貿易の概念では,第2. 業務拠点を通じて提供するという観点から第3. モードや第4モードのような取引形態に加え,. モードに分類する方が適当な場合もあり,ケー. 従来の国際収支統計では居住者間取引として貿. ス・バイ・ケースで判断せざるをえないが,い. 易に含まれなかったFDIによるサービス提供. ずれにしても明確な区別は容易ではないと思わ. も第3モードとして対象となるのである(2)こ. れる。ただし,こうした区別は,FDIを採用す. のことは,伝統的な国際ビジネス理論において FDIの代替的な参入形態とされる,輸出やライ ンセンシングについても,製造業の場合とは異. るか,非出資の契約形態による参入を選択する かという決定要因の分析の観点からは重要な意 味を持たないため,本稿では更なる考察は割愛. 359.
(4) 360. する。. るのか,という問いを考察している。 ここで. こうした分類上の暖昧さに加え,情報・通信は,本稿の目的に直接関係しない第二の問いを 技術の進歩や,それに伴い,サービスから財へ 除き,彼らの見解を順に見ていくこととする。 まず,第一の問いについて,ボドウインら の変換(例:プログラマーによるプログラミン は,サービスと非サービスを分ける基準が数多 グからメディア媒体によるソフトウェアの提 供),又は財からサービスへの変換(例:音楽 くある中,「無形性」と「サービス生産におけ CDの販売から音楽のネット配信)が可能となる顧客との相互関係」の2つのうち少なくとも いずれかを充たすサービスを分析対象として重 ることによって,サービスの特性自体が暖昧と つま なってきている点には留意が必要である0 視し,国際的なサービスの提供を(丑貿易可能 り,その結果として,生産者・消費者の双方と サービス(foreign‑tradableservice),②立地制約 もに移動の必要がなくなるケースが新たに生ま サービス(location‑boundservice),そして③前 れ,「貿易可能化革命」や「オフショアリング」 2者の混合サービスの3つに分類可能であると そして,輸出かFDI7う、といった比較は, と呼ばれる状況が生み出されているのである。 した。 また,こうした動きが,サービス業の国際ビジ (参と③のサービスの場合には適切でないことな ネスへの参入において,従来のFDIという参入 ど,この分類方法には研究上の重要な合意があ この点は,財とサービスの特性の違 形態の選択に何らかの影響を与えている可能性 るとした。 があるのである。. いによって,サービスの場合には,そもそも純 粋な輸出が国際ビジネス参入の選択肢とはなり. 2サービス多国籍企業に対する既存理 論の適用可能性. えないケースが存在することを指摘したものと 言えるだろう。. (1)ボドウイン‑バルブリッチ‑ペリーの研究次に,第三の問いについて,ボドウインらは, 存在感の高まりに比べ,概念的・理論的分析サービス多国籍企業に見られるラインセンシン が進んでいなかったサービス多国籍企業に対し グや経営契約(managementcontract)といった 新たな形態の海外投資活動を考えると,旧来の て,製造業を分析対象として進化してきた国際 多国籍企業の定義ではうまく当てはまらないと ビジネスの諸概念・諸理論の適用可能性を検討 この見解はサービス業の国際ビジネス展 した。 したという意味では,ボドウイン‑バルブリッ チ‑ペリー(Boddewyn,Halbrich&Perrry1986)開が多様であるとの認識に基づくものと思われ るが,全く出資を伴わない契約形態とFDIの関 の研究が先駆的であるとされる。 ボドウインらは,第一に国際的なサービスの係をどう考えるのか,あるいは出資を伴う場合 提供とはどういうことか,第二にサービス多国 の出資比率の高低をどう考えるのかといった掘 籍企業を測定・比較する際の問題は何か,第三 その意 り下げた考察は一切加えられていない。 味で,サービス多国籍企業であるか否かに関わ に既存の多国籍企業の定義のサービス業‑の適 らず,国際ビジネス‑の参入形態が多様な業種 用は妥当か,そして第四にサービス多国籍企業 を理解するのに適切な既存FDI理論は存在すにおいては,旧来の多国籍企業の定義が適切で.
(5) サービス多国籍企業に関する理論的考察. 361. ない可能性があることを指摘しているに過ぎな. している。. いと言えるだろう。. このように,ボドウインらの議論は,サービ. そして最後に,サービス多国籍企業に対する. ス多国籍企業に対する既存理論の適用可能性が. 既存理論の適用可能性であるが,ボドウインら. あることを示したという点で一定の意味があ. は,多国籍企業は,国境を越える「内部化市. しかしながら,その可能性を強調する余り, る。. 場」の形成による不完全な中間財市場‑の対応. 彼ら自身が認識しているラインセンシングや経. であるとするバックレ‑‑カソン(Buckleyand. 営契約などに見られるサービス多国籍企業に固. Casson)の議論や,「内部化」を強調すると同. 有の国際ビジネス‑の参入形態の多様性などに. 時に知識における企業特殊的優位性を多国籍. ついて十分考察することなく,サービス多国籍. 企業の鍵となる特徴と見るラグマン(Rugman). 企業のための特別な理論は不要であると早計に. の議論,そしてOLIモデルとして知られるダニ. 結論付けている点については議論の余地が大き. ング(Dunning)の折衷理論(eclectictheory)(4) その上で, を主要理論として取り上げている。 幾つかの国際的なサービス業,特に国際的な銀. いものと考えられる。. 行業の場合には既存理論が適用可能とする議論. FDI理論として大きな影響を持つOuモデ. を紹介しつつも,その他のサービス業について. ルを用いたサービス多国籍企業の分析につ. は,OLIの性格に関して何らかの条件の追加や. いては,OLIモデルの提唱者であるダニング. 詳細な検討を提案している。. 具体的には,所有. (2)ダニングによるOLlモデルの適用. ダニング. (Dunning1989)自身も行っている。. 特殊的優位性(0)については,その源泉を「知. は,財とサービスの本質的な違いを「(生産と. 識」に求めれば,サービスと非サービスの間に. 消費の)同時性・不可分性」と「所有権の(移. 決定的な相違があると決め付ける必要はなく,. 転)問題」にあるとし,すべての経済活動のア. 各業種に固有の所有特殊的優位性をケース・バ. ウトプットは純粋な財と純粋なサービスの間に. イ・ケースで注意深く見ることに意味がある. あって,多くの財は中間サービスを,また多く. とした。内部化インセンティブ(I)について. のサービスは中間財を組み込んだものであると. は,解釈の範囲を拡大することによって既存理. の認識に基づき考察を行っている。. 論を通用しても大きな問題はないとし,立地特. ング自身によるサービス多国籍企業のOLI分. 殊的優位性(L)についても,立地制約のある. 析を概観する(なお,ダニングによるサービス. サービスの場合を除いて既存理論の適用に特別. の下位分類に基づくOu分析の具体例の一部. な問題はないとした。 そして結びとして,サー. は図2参照)0. ビス業の多様性に鑑み,下位分類を特定した分. まず,所有特殊的優位性(0)であるが,製. 析が,一般化するよりも有益な成果を生むとい. 造業との相違に加え,純粋な消費者サービスと. うことと,既存理論を容易に適用できることか. 中間サービスとでも異なることなどを指摘し,. ら,サービス業のための特別なFDI理論あるい. 下位分類別の具体例を例示することでサービス. は多国籍企業の理論は不要であるとの見解を示. 業における所有特殊的優位性が様々であること. 以下,ダニ.
(6) 362. 図2サービスの下位分類別OLI分析と 参入形態の事例 所 有 特 殊 的 優 位 性 (例 ) 商 業 銀 行. 立 地 特 殊 的 優 位 性 (例 ). .多 国 籍 企 業 や 外 国 .対 人 コ ン タ ク ト 人 へ の ア ク セ ス ‑政 臓制. いると言えるだろう。 内 部 化 イ ン セ ン テ ィ ブ (例 ). 参 入 形 態. .品 質 管 理 .範 囲 の 経 済. .多 く の 場 合 は l支 店 . M S. l資 金 流 通 如ト ワ lク 投 資 銀 行. .合 弁 倣 帽凱コ ン ソ Iシ ア ム の 場 合 も 有. .評 判 と 専 門 的 ス キ .顧 客 と の 按 近 I.. .提 供 サ lビ ス の 複 隷 .原 則 .1001子 会 社 性. 情 報 サ ー ビ ス /デ ー タ 転 送. .母 国 で の き 婚. ‑海 外 別的 犀 の 立 地 ‑資 本 集 約 順資 制 約 ‑期関 係 を 通 じ た 品 質 管 理. l品 質 管 理 l予 約 シ ス テ ム. .資 本 支 社 を 要 さ な い 予 釣 シ ス テ ム の 集 中 制 1. .貸 本 及 び 人 的 ス キ .顧 客 又 は 提 供 企 業 が .コ ア 資 産 の 消 散 か ら .混 在 .臥 市 塙 の 失 敗 が 大 き い 場 合 は .1001 の 保 護 ル 集 事 絶 地 理 矧 こ 移 力 会 社 ‑範 囲 と 規 如聴済 .情 報 取 引 の 外 矧 絹 子 サ. ‑長 軸品 lサ lビ ス の 品 質. .認 琵 l=関 す る 市 郎) 畑. ては,サービスの国際的な提供を,(内部化を 目的とした)FDIで行うケースと非出資の契約 形態で行うケースについて,それぞれ具体例を. 知に基づくサービスで,地理的拡散のメリット ‑多 様 .但 し 多 く は 少 数 出 資 ベ ン チ ヤ Ir又 は 契 約 関 係. I重 要 人 郁)数 育 廷 a. 性. 最後に,内部化インセンティブ(I)につい. FDIによるケースとしては,暗黙 示している。. .日 原 資 本 市 即)知.国 原 資 本 市 葛 .金 融 .グ ロ l′ て ル 投 資 戦 略 議 と 相 互 関 喋 市 場 へ の 接 近 I品 質 管 理 ホ テ ル. ように同列的な選択肢ではないことを示唆して. が大きい業種(例:銀行・金融サービス,情報 集約サービス,専門サービスなど),生産効率 性や最終アウトプットの品質保持の観点からブ ランドやイメージが重要な業種(例:広告,市 場調査,コンサルタント,消費者志向サービス など),非サービス多国籍企業の貿易関連子会. 他方,非出資の契約形態によ 社を挙げている。 (出典)ダニング(1989)の表2ffl一部を基に筆者作風 るケースについては,契約による成果要求水準 を明らかにした。 これは,サービス業の多様な. が明文化しやすく,出資がなくとも予約等のシ. 参入形態を考察するにあたり,下位分類毎に異ステムによるシナジー効果が発揮でき,またリ なる所有特殊的優位性をきめ細かく分析するこ スク回避も可能な業種(例:ホテル,レストラ との重要性を明らかにしたものと言える。 次に,立地特殊的優位性(L)であるが,ダ. ン,レンタカーなど),現地に特化した知識や カスタム化が必要な業種(例:ビジネス・サー. ニングはサービスの国際的な取引形態を,(力 ビス,娯楽,会計・法務,土木・建設業など), こ見られる,財と同様の) (最終サービスの提供も. マーケテイングや配送コストの観点から現地 輸出形態,(令(中間サービスの提供に見られる) エージェントを活用するケース,現地パート ライセンシングなどの出資を伴わない契約形 ナーとのリスクシェアを望むケースを挙げてい また,国際ビジネスへの参入形態をFDIに その 態,そして(彰FDIの3つに分類している。 る。 上で,立地特殊的優位性の有無に基づく輸出か向かわせる力とFDIとは逆に向かわせる力の 他の形態かの選択については,そもそも輸出可双方が存在するとの見解を示し,前者として, 能か否かの問題があるものの,サービス業の場規制緩和と技術・情報管理の進歩を,後者とし 合には,製造業で重要なコスト要因よりも顧客て,特化(specialization)の高まり,経済発展 への接近や現地の習慣・ニーズ‑の適応といっによる現地能力向上に伴う契約による対応可能 た要因がより重要であること,そして現地政府性の改善,サービス提供コストの高騰又は異な この るスキル・技術の要請,市場の失敗の減少を挙 の役割が重要であることを指摘している。 指摘は,輸出か否かの選択は,製造業の場合の げている。 このように,具体例を示すことで,.
(7) サービス多国籍企業に関する理論的考察. 363. 内部化インセンティブが下位分類毎に異なるこ. スがある。ジョーンズ(1995)は銀行の資金調. とを示したことと,近年の内部化を促進する力. 達を例に挙げ,同じ事業でも地域によって異な. と逆向きの動きを推し進める力の双方が存在す. る参入形態がとられる理由について,内部化理. ることを示した点は,サービス多国籍企業の. 論に基づく取引費用の多寡が参入形態の判断基. FDIの決定要因に関する分析の複雑さと,一般. 準として重要であることを示しているが,これ. 理論構築の困難さを浮かび上がらせたものと言. は内部化インセンティブの採用と所有特殊的優. えるだろう。 しかしながら,ダニングは,FDI. 位性の利用が一対一の関係にはないことを示す. 以外の契約形態による参入形態を一纏めにして. 良い例であろう。 また,所有特殊的優位性につ. おり,マジョリティ出資,マイノリティ出資,. いても,その多様性を認識しつつも,所有特殊. 全くの非出資といった出資比率の選択,あるい. 的優位性自体が参入形態に影響を与えうること. は合弁パートナー,ライセンシング相手との契. や,現地特有の知識・能力の確保など,所有特. 約内容などが,どのように決定されるかについ. 殊的優位性の形成・強化を目的としたFDIが. ての考察は特に行っていない。. 行われている点‑の言及がなされていない点も. このように,ダニングは,製造業との相違を. 不十分な点として指摘できるだろう。. 指摘しつつも,自身のOLIモデルのフレーム. 以上のことから,OLIモデルをサービス業に. ワークの中で,サービスの特性を踏まえた所有. 適用し,OLI各々の解釈範囲を拡充すること. 特殊的優位性を前提とした国際ビジネスへの参. で製造業と比較すること自体は可能であるが,. 入形態について,輸出か否かを立地特殊的優. サービス多国籍企業による多様な国際ビジネス. 位性で,FDIか出資を伴わない契約によるもの. への参入形態の選択について理論的に説明可能. かを内部化インセンティブで説明しようとし. なフレームワークか否かという点では議論の. しかしながら,サービスの場合は,そもそ た。. 余地があるものと考えられる。. も輸出形態が採用不能なケースが多いこと,ま. Ouモデルのサービス多国籍企業への適用に. た輸出でもFDIでもない非出資の契約形態が. よって,サービス多国籍企業と製造業多国籍企. 多様にあり,その意味合いも製造業におけるラ. 業のFDIの選択に関する動機・理由が異なる. イセンシングとは異なることなどから,輸出,. 可能性が浮かび上がることとなり,その結果,. FDL非出資の契約形態の3つが,必ずしも. 両者の戦略や組織などのあり方も異なってくる. OLIの有無の組合せに基づく代替的あるいは同. 可能性を示唆した点では大いに意義があるもの. 列的な選択肢となっていないという点が見過ご. と考えられる。. されていると言えるだろう。. しかしながら,. 例えば,ダニング. のOLIモデルでは,所有特殊的優位性を自ら. (3)ポーターの「匡Iの競争優位」論の含意. 利用することを選択しない場合に,FDIではな. 最後に,サービス多国籍企業自体を対象とし. くライセンシングが採用されることとなるが,. た議論ではないが,ポーター(Porter1990)の. サービス業の場合には,FDIによらずとも,自. サービス業の国際競争に関する議論について,. ら所有特殊優位性を利用することが可能なケ‑. サービス多国籍企業の分析あたって一定の含意.
(8) 364. があると思われることから言及しておくことすは,サービス業における国際競争増大の要因と ポーターは,サービス業の国際競争につい る。. して,「サービス・ニーズの類似性」,「サービ. て,(丑「活動的な買い手がサービスの提供を. スの買い手の流動性と知識レベルの向上」,「規. 求めて他国に出かける」ケース(GATSの第2. 模の経済と地理的範囲の拡大」,「サービス要員. モードに対応),②「ある国の企業が自国の人. の活動範囲の拡大」,「遠隔地の買い手との交渉. 材や施設を利用して他国でサービスを提供す. 能力の増大」,そして「国内企業から入手でき. る」ケースGATSの第1および第4モードに. るサービスのコスト,品質,範囲の相違が国に. 対応),③「ある国が外国にサービス用の事務. より相変わらず大きい」ことの6つを上げてい. 所を構え,外国勤務者または地元の職員を雇っ るが,そのうちの「規模の経済と地理的範囲の てサービスを提供する」ケース(GATSの第3. 拡大」,「遠隔地の買い手との交渉能力の増大」,. モードに対応)と3つの類型化を行いつつも,. そして「国内企業から入手できるサービスのコ. 各々の区別が暖味で混合型も存在すること,ま スト,品質,範囲の相違が国により相変わらず た,サービス業においても貿易と海外投資が密 大きい」ことの3点がサービス業に特徴的な推 こうした増大要因の下での 接に関連していることが重要であることを指摘進力と考えられる。 国際競争においては,ネットワーク,評判,そ している。 そして,サービス業と製造業との緊密な関係 して現地志向といった要素が重要な意味を持つ についても指摘し,両者の「繋がりの性質」に と考えられることから,サービス業の国際ビジ 第 ついて,次の3つのパターンを挙げている。. ネスへの参入動機・参入形態の分析において留. 一に,サービス業の多くが製造業企業のサー. 意すべき含意があるものと思われる。. ビスの外注化を通じて生み出されたことによ る「買い手と売り手の関係」,第二に,工業製. 3既存理論によるアプローチの限界と 今後の課題. 品の販売が関連サービス需要を創造する場合 に起こる「工業製品の販売と結び付いたサー ビス」,そして第三に,二番目の場合と逆の,. 以上見てきたように,製造業を分析対象とし て発展してきた国際ビジネス理論のサービス業. に対する適用は一定程度可能と言えるが,サー サービスの販売が関連工業製品に対する需要を ビス多国籍企業の多様な国際ビジネスへの参入 生み出す場合の「サービスの販売に結び付いた ポーターの指摘する 形態やその決定要因を説明することはできな 工業製品」の3つである。 サービス業と製造業の「繋がりの性質」のパ いこと,また,OLIモデルに代表される既存の ターンからすると,財に付随的なサービスと財 FDl理論では,サービス多国籍企業における の呼び水となるサービスとでは,同じサービス FDIの決定要因さえも十分には説明できないこ 業でも国際ビジネスへの参入形態の決定要因はとが明らかとなった。 また,サービス多国籍企業には,191吐紀の 異なること,また財と緊密な関係を持たない サービスの場合には,また別の決定要因が存在 ヨーロッパの貿易・海運会社や日本の総合商社 さらにポーター することが容易に想像できる。. のように,階層的経営に拠らずネットワーク型.
(9) サービス多国籍企業に関する理論的考察. 365. とも言える統制方法を利用した例が見られる。. められていると考えられる。. この点で,組織面においても製造業と異なる特. こうした課題を考えた場合,デイアドルフ. 徴がある可能性が認められる。. (Deardorff1985)がサービス貿易の特徴として. そして,国際ビ. ジネス‑の参入における非出資の契約形態の選. 指摘した,不在生産要素としての「マネジメン. 択は,サービス業におけるFDlが,ハイマ. ト」という概念に重要な含意がある可能性が考. (Hymer)的な「支配」という観点が重視され. えられる。つまり,サービス貿易の対象はサー. る製造業のFDIとは異なる参入動機に基づく. ビスそのものではなく,独自のマネジメント手. 可能性を示唆している。. こうしたサービス多国. 法,生産技術など,サービス生産に貢献する生. 籍企業の国際ビジネスに見られる組織面や参入. 産要素としての「マネジメント」であるとの認. 形態における特徴は,取引の内部化を狙いとす. 識に立つことによって,FDIもFDIによらない. る製造業のFDIとは一見相反するアプローチ. 契約形態も同様に,国際ビジネスにおける所有. のようにも見える。 また,ラグマンが,知識の. 特殊的優位性の利用方法と考えることができる. 「消散リスク(riskofdissipation)」などの観点. のである。換言すれば,サービス多国籍企業に. から,ライセンシングに対して否定的な見解を. おいては,FDIとFDIによらない契約形態の間. 採ったこととも矛盾する。. しかしながら,現実. の選択は,所有特殊的優位性を利用するインセ. は,サービス多国籍企業は,FDIによって取引. ンティブの有無に基づく選択ではなく,所有特. の内部化を図らずとも,契約によって報酬を掌. 殊的優位性の内容に応じた利用方法における選. 握し,ブランド価値を維持することを通じても. 択肢ということになるのである。. 所有特殊的優位性の利用を実現しているのであ. えると,サービス業の下位分類における所有特. る。. 殊的優位性に焦点を当てることで,FDIか契約. もっとも,ライセンシングをFDIの次善の策. このように考. 形態か,さらにFDlの場合でも完全所有か合弁. とする見方自体は,契約に関する国際的な権利. か,合弁でもマジョリティ出資かマイノリティ. 保護の体制が未整備であった時代背景を大いに. 出資か,そして契約形態の場合の契約内容は,. 反映したものであると思われる。. したがって,. といった分析がはじめて可能となるものと思わ. 情報・通信技術の進歩などの環境変化,それに. れる。. 伴うビジネスモデルの変化や国際ビジネスへの. また,ラグマンの指摘する,知識の「消散リ. 参入インセンティブの変化を含め,時間の経過. スク」の概念を,知識から所有特殊的優位性へ. に伴う諸変化が既存理論の前提とした状況認識. と拡充し,適用することも有益である可能性が. に影響を与えていないか改めて検証する必要が. すなわち,企業は,所有特殊的優位性の ある。. あるだろう。 その上で,サービス多国籍企業に. 「消散リスク」がある場合にはFDIを選択する. 最も特徴的な,伝統的なFDIとは異なる契約形. が,ない場合には,非出資の契約形態や実質支. 態による国際ビジネスへの多様な参入形態の選. 配を意図しないマイノリティ出資の合弁形態な. 択・決定要因について説明可能となるような既. どを選択すると考えることができるのである。. 存理論の修正,あるいは新たな理論の構築が求. もう少し詳述すると,所有特殊的優位性の「消.
(10) 366. 散リスク」が小さい,又は無いということは,したがって,個々の企業の戦略判断としては, 「模倣困難性」が高いということを意味する。 自らの所有特殊的優位性が何かということを適 つまり,参入障壁が高いということであり,そ切に認識し,その形成・維持・向上といった観 点も加味して国際ビジネスへの参入形態を選 の場合,企業は自らの取引コストの観点にのみ 択することが不可欠と思われる。 その意味で, 基づき参入形態を決定すれば良いことになる。 例えば,FDIが採用されるのはビジネス・サーサービス多国籍企業の国際ビジネスへの参入形 ビスの場合に多いが,これは,顧客に対する個態の選択に関する理論的分析においても,そう 別性が強いサービスについて,顧客に対する信 した所有特殊的優位性の形成・強化といった動 用,顧客との信頼関係といった所有特殊的優位 的パースペクティブを取り込むことが重要と考 性が消散しないよう,品質管理の観点からFDIえられる。 他方,フ が選択されると考えることができる。 4総合商社の海外投資についての考察 ランチャイジングが採用されるのは不特定多数 前節までにおいてサービス多国籍企業に対す を対象とする消費者サービスの場合に多い。 こ れは,確立したブランドやイメージ,そして. る既存理論の適用可能性と今後の課題について. ネットワークの存在による模倣困難性が極めて 考察した結果,多様なサービス多国籍企業を分 高く,契約相手もその企業の所有特殊的優位性 析するには,サービスの下位分類に基づく個々 にアクセスすることが狙いであることから,消 の業種別のアプローチが不可欠であるとの結論 本節では,日本を代表するサービス 散リスクが極めて小さいためと考えることがで に至った。 つまり,こうしたケースでは, きるのである。. 業企業の一つである総合商社を取り上げ,総合. 当該企業としては,積極的に内部化することで 商社の国際ビジネス‑の主な参入形態である海 外投資(5)が,サービス多国籍企業に関する今後 様々なリスクを抱え込まなくとも,契約形態に よって報酬を確実に掌握できるのであれば,敢 の理論研究における課題と考えられる所有特殊 えてFDIを採用する必然性がないということ 的優位性の形成・強化の観点からの分析対象と になるのである。. して有意義であることを示すこととする。. しかしながら,企業をゴーイング・コンサー 総合商社は,日本固有の存在と言われること 過去数度に ン(goingconcern)として考えると,所有特殊 が多いが,必ずしもそうではない。 亘る危機を乗り越え,依然として大きな存在感 的優位性を利用するための一過性の取引コスト を示しているという点では特異な存在と言える だけに基づく判断は戦略的に適切ではない可能 すなわち,サービス 性があるものと思われる。. が,一定の類似性を持った企業,あるいは組織. 業においては,取引の内部化によって,より安は,他国にも歴史的にも存在していた。 そうし 定的・確実な対顧客サービスの実現が可能とな た企業あるいは組織のうち,総合商社の海外 投資を理解するためには,19世紀後半から20世 るといった側面が否定できないことに加え,取 紀初めの英国の典型的なFDIの実施主体とさ 引の内部化が自らの所有特殊的優位性の向上・ 強化に繋がる可能性が考えられるからである。 れるフリースタンデイング・カンパニー(F,ree.
(11) サービス多国籍企業に関する理論的考察. 367. StandingCompany:FSC)との比較が一定の意. るFDIの実施においては,完全所有による経. 味を持つ。三宅(2006)は,両者について,そ. 営支配を目的とはせず,情報の獲得,情報の知. の組織設計と海外事業に対するコントロールの. 識への転換,本社と海外の間の知識フローの管. 仕方を比較した上で,FSCは,国内事業の拡張. 理,知識の活用による報酬の掌握といった様々. をH的とした米国型FDIとは異なり,複数の. な観点から,具体的な参入形態が戦略的に選択. 企業や個人の関係に基づくネットワーク型FDI. されている可能性を指摘しているのである。. の実施主体であって,総合商社との類似性が認 つまり,総合商社もFSCも, められるとした。 完全所有による支配を目的としてFDIを実施. それでは総合商社の海外投資は,どのような 特徴を持っているのだろうか。. 総合商社と他業. 種の海外投資を比較した場合,①海外法人の多. している訳ではないという見解を示しているの. 様さ,(多業種の多様さ,③形態の多様さの3点. である。こうしたFDIが存在したにもかかわら. が特徴的である。 先ず,海外法人の多さである. ず,今日のサービス多国籍企業の発展がなけれ. が,東洋経済のデータ(6)によれば,海外進出し. ば,製造業を分析対象として進化してきた国際. ている日本企業の平均海外法人数が約6社であ. ビジネス理論においては,FDIが内部化インセ. るのに対し,総合商社5社(7)の平均海外法人数. ンティブに基づく完全所有あるいは経営支配を. は約400社である。. 目的とした国際ビジネス‑の参入形態であると. 一目瞭然である。 次に,業種の多様さであるが,. の見方が引き続き支配的であった可能性は否定 できないのではないかと思われる。 ところで,そうした類似性を持ちながらも, FSCの多くは,なぜ総合商社と異なり,短命 に終わったのだろうか。. この点について,三宅. このことから,その多さは. 同じ5社で見た場合,海外法人数計1,998社の うち,本業である卸売・商業については全体の 30%足らずの565社で,残り70%以上のうち, 44%の884社は製造業(その内訳もまた多様で ある)が占め,その他も農林・水産業,鉱業・. (2006)は,FSCと総合商社の組織設計におけ. 資源開発から金融業,その他のサービス業まで. る意図の違いと,それに伴うFDIの意味合い. 極めて多岐に亘っている。. の違いを指摘している。. そして,ゴーイング・. 着後に,形態の多様. さであるが,これは1980年代後半以降に顕著に. コンサーンとして企業成長を目指す総合商社. なった特徴であり,後述の総合商社自身のビジ. のFDIは,単なる事業戦略の意味合いを超え. ネスモデルの変化と密接に結び付いたものと考. て,親会社の経営資源の内部蓄積への貢献を通. えられる。. じて,総合商社の企業存続と成長に貢献したの この仮説 ではないかという仮説を示している。 は,総合商社にとってのFDIの選択・決定要因. 海外投資の対象業種が多様であることからも 分かるように,総合商社は非常に多角化が進ん だ企業である。 伝統的なビジネスモデルが取引. の分析について,OLIモデル以外のアプローチ,. 仲介業であることから,ネットワークが重要な. 具体的には,企業の内部資源に着目したリソー. 意味を持つこと,知識やノウハウの公共財的性. ス・ベース・ビューに基づくアプローチが必要 つまり,総合商社によ なことを示唆している。. 格から「範囲の経済」の活用インセンティブが 備わっていること,そして取引相手である製造.
(12) 368. 業企業の内部化‑の対抗措置が必要であったこ 重視の姿勢から,単なる商権確保目的の名目的 となどが,総合商社の当初の海外投資を積極的 なマイノリティ出資が限定的になり,間接出資 こうした1960 に推し進めた要因と考えられる。. も勘案した実質的なマジョリティ出資のケース. 年代から1970年代にかけて急速に増大した総合 が三分の一以上を占めるようになっているので 商社の海外投資は,日本の海外投資の特徴とい wmこうしたビジネスモデルの変化は,程度の差 う文脈で活発に議論がなされた。 吉原(1979) は当時太宗を占めた商社参加型合弁に焦点を当 こそあれ,総合商社に共通して見られる傾向で て,商社と製造業企業の関係を一定のパイを奪 あることから,産業変化という視点から見る 三宅(2006)は,マクガバン い合う一種の競争関係であると見て,「商社参 こともできる。 ちなみに, 加型合弁の緊張モデル」と呼んだ。. (McGahan2004)の「コア活動」と「コア資産」. 吉原は,日本の多国籍企業の海外進出初期の特 の陳腐化に着目した産業変化の4パターンを援 徴として,合弁志向と商社参加型合弁の2点を. 用し,図3のように総合商社のビジネスモデル. 挙げたが,いずれも現在ではほぼ消滅してい. すなわち,左下の「関係的 の変化を分析した。. るとの見解を示している[吉原2001:191ペー. 変化」の状況にあった総合商社は,取引関係を. また,小島・小津(1984)は当時の総合 ジ]。. 安定化させるために「市場形成型」FDIを用い. 商社の海外投資を,製造業企業に見られる内部 て「商権」を確保することによって,取引先自 そして「商権」 化とは全く逆の動機に基づくもの,つまり事業 身による内部化の阻止に努めた。 の所有ではなく,事業に付随した物流のコント の確立後は,総合商社間での競争を圧力に,取 ロールを狙いとした「貿易補完FDI」であると 引先より付加価値の高度化を絶えず求められる 安室・四宮(1999)も同様に,貿易 主張した。. ようになることから,ネットワークや情報力の. からの収益に多くを期待して「商権」の形成を 強化による「コア資産」の入替が絶えず必要な 目的とする「市場形成型」FDIであると主張し 「創造的変化」の状況に移行したとの見解を示 このように当時の総合商社のFDIに対する た。. している。. 分析は,製造業との関係を基点とした視角に限. 図3稔合商社の産業変化. 定されていたと言うことができる。. コア活動. 他方,1980年代以降の総合商社の海外投資で. 脅威有. は,三国間取引の積極化や1980年代後半からの 商業機能から金融・投資機能へのシフトという ビジネスモデルの変化に伴って,従来とは異な. 脅 威 育. る動機に基づくものが増加し,こうした変化は すなわち,支 所有政策にも反映されている。 店・支社,あるいは持株会社・金融子会社と. 育 威 無. m. u. 徹底的変化 何も か由頓書 面意にある li. 創造的変化 資産や経営資源をたえずリ 二ユ ‑アルすべき産業. 市場取引⇒提携関係 ヘの移行. 今日のFDー は.優位性に対する報 刊の積極的掌握と 提供価値の高 度化.差別化を目的と した もの. 盟直垂 増進 取引関係が不安定な産業. 漸進的変化 小さ な変化を試みrそのフイ 一ド /く ツクに対応すべき産業. 「 市場形成型」 FDlは.取引安 定化のための防衛的措置. いった本社の実質的な出先を除き,完全所有に よる支配志向は引き続き低いものの,投資収益. (出所)三宅(2006) 86ページより..
(13) サービス多国籍企業に関する理論的考察. 369. このように総合商社の海外投資は,総合商社. センシーになるということは,顧客と同業でな. 自身の置かれた環境の変化に伴い,その目的も. い総合商社単独では基本的にあり得ない。. 変わってきたと考えられる。. がって,間接輸出の際の請負業者か,FDIの現. 商権確保目的のマ. イノリティ出資が基本形態ではなくなっている ことはその良い例である。. 地事業支援サービスの提供ということになる。. しかしながら,総合. しかし,いずれも総合商社の伝統的なビジネス. 商社の海外投資のインセンティブについては,. であり,これだけであれば総合商社の海外投資. 本社の出先的な現地法人を除くと経営支配のイ. が見てきたように多様化する理由は乏しい。. ンセンティブは低く,むしろ他者との関係を用. うしたことから,顧客の国際ビジネス展開の参. いて,いかに自らの知識を新たな収益機会に活. 入形態自体に第4の選択肢がある可能性が浮か. 用するか,その際に戦略的にどの程度の出資比. び上がってくる。 それが,総合商社との「コ. 率が適切か,という観点が重視されているとい. ペティション(c0‑opetition)」に基づく合弁形. う点においては基本的に変化がないように思わ. 態であり,一種の提携関係である。. 例えば,マイノリティ出資が今や太宗を れる。 占める訳ではないとは言え,製造業向けに限れ. ション」とは,ブランデンバーガ‑‑ネイルパ. ば依然8割を占めているという事実もある。. フ(BrandenburgerandNalebuff1996)が提唱し こ. た概念であるが,その本質は,補完的生産者と して自分が獲得できる価値を創り出すことにあ. は,その対象業種の多様性などを考えると,そ の内訳についての詳細な分析からの帰納的なア. 総合商社のケースに当てはめれ るとされる。 ば,総合商社が補完的生産者として自ら獲得で. プローチが必要であると思われる。. きる価値を創り出すことによって,パートナー. また,総合商社のビジネスモデルは,第一次. の企業は自らの所有特殊的優位性の「消散リス. 産業または製造業に属する企業を対象としたビ. ク」を気にすることなく,「支配」を前提とし. ジネス・サービスが基本であることから,それ. たFDI以外の形態を受け入れることができる. ら顧客の国際ビジネス‑の参入形態との関係に. のである。その際に,総合商社としては,単な つま. る契約関係ではなく,自らも出資を行う合弁形. り,総合商社は,顧客の国際ビジネス展開を前. 態を選好してきたということであり,これこそ. 提に自らの国際ビジネス‑の参入形態を検討せ. が商社としての「商権」確保の方法であったと. ざるをえない面があるのである。. 顧客の国際ビ. そ. 「コ‑ペティ. うしたことから,総合商社の海外投資について. ついても理解しておくことが必要である。. した. 言える。その意味で,今日の投資収益重視のビ. ジネス‑の参入形態を伝統的な3分類,すなわ. ジネスモデルへの変化は,補完的生産者として. ち輸出,ライセンシング,そしてFDIに分ける. 自ら創出した価値からの報酬の獲得方法に関す. と,顧客に対する総合商社の立場としては,間. る変化と言うことができるのではないかと考え. 接輸出の際の請負業者となるか,ライセンシン. られる。. グを受けるライセンシーとなるか,顧客のFDI. なお,総合商社の国際ビジネス‑の参入形態. による現地事業支援のサービスを提供するかと. については,輸出はあり得ないものの,大規模. いうことになる。 しかしながら,二番目のライ. プラント受注の際のコンソーシアムやターン.
(14) 370. キー契約といった必ずしも出資を伴わない契約 社が国際ビジネスへの第4の参入形態として 形態が採用されることは決して稀ではない。 し 「コ‑ペティション」という形態を提供してい たがって,総合商社が自ら出資も行うケースとる可能性が浮かび上がった。 全く非出資の契約形態との問での選択に関する これらの本稿における考察を踏まえ,総合商 選択・決定要因が何かという点の分析も今後の 社の多様な海外投資を分析し,いかなる判断・ 一つの課題であろう。. 基準で海外投資やその他の参入形態を使い分け. 以上見てきたとおり,いずれにしても,総合. ているのかということを明らかにすることに. 商社の海外投資については,内部化理論によるよって,総合商社の海外投資を通じた所有特殊 説明を超えたインセンティブがあることは確か 的優位性の形成・強化の仕組みを考察するとと 前節の末尾で,サービス多 であると思われる。. もに,サービス多国籍企業の海外市場への参入. 国籍企業の海外市場への参入形態に関する理論 形態に関する理論的分析のための示唆を導き出 的分析において,所有特殊的優位性の形成・強すことを今後の研究課題とすることとしたい。 化といった動的パースペクティブを取り込む重 要性を指摘したが,総合商社は,その意味で有 注 (1)2005年版通商白書によれば,第三次産業がGDP 意義な示唆を導出できる一つの分析対象である に占める割合は先進諸国では60%を超え,世界全 と考えられるのである。 体でも増加傾向を示している。 (2)第3モードのサービス貿易をカバーするものと おわりに して,2002年,関係国際機関によってFATS(Foreign 本稿を通じて,サービス貿易,すなわちサー. A胤atesTradeinServices)統計の作成が目指され. ることとなり,今後,サービス分野におけるFDI ビスの国際的取引には,財の場合とは異なる特 に関する統計的分析が可能となることが期待され 性があることから,Ouモデルにおいて国際ビ る。 ただし,FDIの基準として用いられる10%基 ジネスへの参入形態の選択肢とされる,輸出, ラインセンシング,FDIの3形態が,必ずしも. 準に対し,FATS統計では過半数基準を用いるなど の相違がある点には留意が必要である。 (3)具体的には,フランチャイジング,経営契約. (managementcontract),コンセッション,パート 代替的あるいは同列的な選択肢とはならないこ また,サービス多国籍企 とが明らかとなった。. ナーシップ,ターンキーBOT(build‑operate‑and. 業に特徴的な,契約に基づく国際ビジネスへのtransfer)などのプロジェクト契約などがある. (4)所有特殊的優位性(ownership‑specificadvantage 参入形態は多様であり,そうした非出資の契約0),立地特殊的優位性(location‑specificadvantage: 形態を含め多様な参入形態の選択・決定要因の L),そして内部化インセンティブ}nternalization 分析が今後の課題であることも明らかとなっ incentive:I)の3つがすべて揃ったときに,企業が FDIを実施する必要十分条件が形成されるという た。 考えを骨子とする理論。 そして,サービス多国籍企業に対する既存理(5)ここでの「海外投資」は,海外直接投資(FDD の定義に該当するものだけでなく,長期資本保有 論からのアプローチの限界と課題を認識した上 を前提としたマイノリティ出資を含む意味で用い で,総合商社をサービスの下位分類における具 ているが,純粋な証券投資は含めていない。 体的な分析対象として取り上げた結果,総合商(6)東洋経済新報社『海外進出企業データテキスト.
(15) サービス多国籍企業に関する理論的考察 版2006年版』。. なお,同データは,日本企業の出. 371. バード・ビジネスレビュー』2005年2月号,20‑35. 資比率が合計で10%以上(現地法人を通じた間接. ページ). 出資を含む)の世界127カ国に進出している現地法. 三宅真也(2006)「総合商社における海外直接投資. 人を対象とし,El本側出資企業4,127杜現地法人. (FDDの戦略的意味合い‑フリースタンデイン. 数20,741社(重複を含めば25,257社)を収録。 (7)三菱商事,三井物産,住友商事,伊藤忠商事,. グ・カンパニーFSCとの比較と商社ビジネスモ. 丸紅の5社。. 研究学会年報2006年』,79‑91ページ。 Porter,M. E. (1990),TheCompetitiveAdvantageof. 参考文献. Nation,∫,TheMacmillanPressLtd.,(土岐坤・中辻. Barney,J.B. (2002),GainingandSu∫tainingCompetitive Advantage,SecondEditionPearsonEducation,Inc. (岡. 甫治・小野寺武夫・戸成富美子訳『国の競争優位』. デルの変化に関する考察を通じて」『国際ビジネス. 田正大訳『企業戦略論一競争優位の構築と持続‑』. 上ダイヤモンド社,1992)。 佐々波楊子・浦田秀次郎(1990)『サービス貿易』東. ダイヤモンド社,2003). 洋経済新報社。. Brandenburger,A. M. &Nalebuff,B.. J.(1996),C0. opetition,HarperCollinsPublishersLtd(嶋津祐一, 東田啓作訳『ゲーム理論で勝つ経営一競争と協調 のコ‑ペティション戦略』日本経済新聞社,2003) J.,Halbrich,M. B. andPerry,A. C. Boddewyn,J. (1986),̀̀ServiceMultinationals:Conceptualization, MeasurementandTheory,JournalofInternational 17(Fall),pp.41‑57 ∫,Vol. Bu∫ines.∫Studie.. UNCTAD(2004),WorldInve.. ∫tmentReport2004:The ∫,UnitedNations ShiftTowaγ蝣cbService. 安室憲一,四宮由紀子(1999)「総合商社の「市場形 成型」直接投資の分析一英国フリースタンデイン グ会社との比較において‑」『商大論集』第50巻第 5号,81‑115ページ。 吉原英樹(1979)「商社参加の海外製造合弁企業」, 多国籍企業研究会編『日本的多国籍企業論の展開』. Deardorff,A.V. (1985),ComparativeAdvantageand. 法律文化社,第13章。. internationaltradeandInvestmentinServices,in Stern,R. M. (ed),TradeandInvestmentinServices:. 吉原英樹(2001)『国際経営〔新版〕』有斐閣,第7章。. Canada/USPerspectives,OntarioEconomicCouncil, pp. 39‑41 Dunning,J. H. (1986),"MultinationalEnterprises andtheGrowthofServices:SomeConceptualand 9No. Theoreticalissues,Se. γvicelndu,∫triesJouγnal,Vol. 2,pp. 5‑39 井上博(2006)「サービス多国籍企業の諸特徴」, 関下稔,板木雅彦,中川涼司編『サービス多国 籍業とアジア経済:21世紀の推進軸』ナカニシャ出 版,第2章。 Jones,G.(1995)TheEvolutionofInternationalBu. ∫ine∫∫: AnIntroduction,InternationalThomsonBusinessPress (桑原哲也,安室憲一,川辺信雄,榎本悟,梅野 巨利訳『国際ビジネスの進化』有斐閣,1998 小島清,小津輝智(1984)『総合商社の挑戦』産業 能率大学出版部,第8章。 McGahan,AnitaM. (2004)"HowIndustriesChange', 86‑94(西 HarvardBusinessReview,October2004,pp. 尚久訳「コア資産とコア活動の陳腐化に着目する 産業進化のダイナミズム」『ダイヤモンド・バー.
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