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本指針の利用にあたって本指針の利用にあたり 留意すべき事項を以下に述べる ( 耐震化計画の概要 ) 地震対策は水道施設の耐震化やバックアップ機能の強化等の耐震化対策と震災時に応急復旧や応急給水を計画的に行うための応急対策に大別される 大規模地震等において 住民の生活等を守り 水使用における不便 不安

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水道の耐震化計画等策定指針

平成 27 年 6 月

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本指針の利用にあたって

本指針の利用にあたり、留意すべき事項を以下に述べる。 (耐震化計画の概要) 地震対策は水道施設の耐震化やバックアップ機能の強化等の耐震化対策と震災時に 応急復旧や応急給水を計画的に行うための応急対策に大別される。 大規模地震等において、住民の生活等を守り、水使用における不便、不安が生じない ように安定した給水を行うためには、水道施設全体を更新等により耐震化して地震によ る被害を未然に防ぐことが必要である。しかしながら、我が国全体におけるそのような 耐震化の実現は50~100 年後を目標としていることから、それまでの措置として応急 対策が必要となる。したがって耐震化計画は耐震化対策を中心として検討し計画するが、 応急対策についても体制確保に向けて必要な事項を検討することとする。 本指針は水道事業者等が耐震化計画を策定するための指針であるが、指針の名称(水 道の耐震化計画等策定指針)において「等」を付しているのは、地震対策以外に津波対 策や水害対策を含んでいることによる。 (更新を基本とした耐震化) 水道施設を耐震化する方法としては、更新(※現行の耐震基準に基づいた更新)およ び耐震補強がある。更新は全ての水道事業者等において更新計画等に基づいて行われて おり、耐震化を推進するための確実かつ有効な方法である。 耐震化計画が未策定の水道事業者等においても、現在有している更新計画等を基本と して重要給水施設に供給するライン(施設・管路)を優先して更新する等の水道施設全 体の耐震性を効率的・効果的に高める耐震化方針を織り込むことで、耐震化を考慮した 更新計画を策定でき、これを耐震化計画とすることができる。このように耐震化計画は 独立した計画でなくとも、耐震化の視点を織り込んだ更新計画や整備計画でもよい。 (対策・検討事項の選定等) 本指針は全国の小規模から大規模の水道事業者、水道用水供給事業者における利用を 考慮して、耐震化対策と応急対策の全体を対象に耐震化計画策定のための検討事項を網 羅的に示している。 各水道事業者等においては、保有する水道施設の配置、規模、形式および地域特性等 を踏まえて必要な対策・検討事項を選定して耐震化計画を策定する。この際、当面実施 すべき対策を選定してそれに必要な項目のみを検討して数年程度の計画期間とする計 画でも良く、そのようにして策定した計画を耐震化計画とすることができる。 また、事業の進捗をみながら、PDCA サイクルなどにより耐震化計画を見直し、将来、 段階的に対策や検討事項を拡充しても良い。

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(水道の耐震化計画策定ツールと計画事例) 水道事業者等が本指針に基づいて耐震化計画を容易に策定することができるように、 以下に示す内容の「水道の耐震化計画策定ツール(簡易ソフト)」を作成するとともに、 その解説および同ツールを使用した計画策定事例を示した「水道の耐震化計画策定ツー ルの解説と計画事例」を作成した。 <水道の耐震化計画策定ツールの概要> ・耐震化計画が未策定の水道事業者等であっても、自ら計画を策定できるように、 必要なデータ等を様式シートに入力することで耐震化計画を策定できる簡単な 方法を採用。 ・さらに水道事業者等における計画策定の労力に応じて、3つのタイプの耐震化計 画策定ツールを作成。 ・最も簡単なタイプでは、様式シートのみを使用して建設年度等を入力することに より必要最小限の耐震化計画が簡単に策定可能。 さらに施設や管路の耐震診断の指針・基準のリストや水道事業等の耐震化計画の事例 等を掲載した「資料編」を作成した。 耐震化計画の策定にあたっては、(1)本指針に示す診断方針とともに、(2)「水道の耐 震化計画策定ツールの解説と計画事例」の簡易耐震診断例や建設年代による耐震性概略 判断例、(3)「資料編」の耐震診断の指針・基準リストを確認し活用することにより、 耐震診断等を計画的かつ効率的に進めることができる。 耐震化計画の策定にあたっては本指針と合わせて、これらのツール・資料を活用願い たい。 なお、「資料編」については、厚生労働省において定期的に情報を更新し、HP 等で 随時公表するので、適宜、参照されたい。 【指針改定のポイント】 (記載内容等の充実) ①東日本大震災等における被害状況を踏まえて、水道施設の被害想定方法や地震対策 等の内容を充実し、さらに津波対策について追記。 ②広島市等の土砂災害を踏まえて水害対策の内容を充実。 ③被害想定方法、地震対策等について、ポイント(枠線内)と解説により、個別に分 かりやすく説明し、さらに策定フロー図、用語の説明等を追記。 (計画策定の容易化) ④耐震化計画は、地震対策や検討事項について項目を選定して策定して良い旨を明記。 (耐震化方針を織り込んだ更新計画、地震対策の一部を対象とした計画でも良い等) ⑤耐震化計画を容易に策定することができる「水道の耐震化計画策定ツール(簡易ソ フト)」および「水道の耐震化計画策定ツールの解説と計画事例」を作成。

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目 次 第Ⅰ部 耐震化計画の基本的考え方 ... 1 1. はじめに ... 1 2. 耐震化計画の位置付け等 ... 2 3. 耐震化計画の策定手順 ... 5 4. 用語の説明 ... 8 第Ⅱ部 水道の耐震化計画策定指針 ... 9 1. 基本情報の整理 ... 9 2. 水道施設の被害想定 ... 10 2.1 施設の耐震診断および水供給等の影響の検討 ... 10 2.1.1 施設の耐震診断方法および水供給等の影響の検討方法 ... 10 2.1.2 施設の耐震診断の進め方 ... 12 2.2 管路等の被害想定および水供給等の影響の検討 ... 13 2.2.1 管路等の被害想定 方法および水供給等の影響の検討方法 ... 13 2.2.2 管路等の被害想定の進め方 ... 15 2.3 断水予測 ... 16 3. 耐震化の目標設定 ... 17 3.1 計画期間等 ... 17 3.2 水道施設の耐震化目標等 ... 17 3.2.1 水道施設の機能維持水準 ... 17 3.2.2 水道施設の耐震化目標 ... 18 3.3 水道の供給目標等 ... 18 3.3.1 水道の供給目標 ... 18 3.3.2 水供給に関する目標 ... 21 4. 地震対策の検討 ... 22 4.1 地震対策の概要 ... 22 4.1.1 地震対策の体系 ... 22 4.1.2 地震対策の選定の考え方 ... 24 4.2 被害発生の抑制 ... 25 4.2.1 施設の耐震化 ... 25 4.2.2 管路の耐震化 ... 26 4.2.3 給水装置等の耐震化 ... 28

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4.3 影響の最小化 ... 28 4.3.1 施設のバックアップ機能の強化 ... 28 4.3.2 管路のバックアップ機能等の強化 ... 29 4.3.3 給水の継続 ... 29 4.3.4 二次災害の防止等 ... 30 4.4 復旧の迅速化 ... 31 4.4.1 応急復旧の迅速化 ... 31 4.4.2 情報管理設備の整備 ... 31 4.4.3 応急復旧体制の整備 ... 32 4.5 応急給水の充実 ... 32 4.5.1 応急給水施設の整備 ... 32 4.5.2 応急給水体制の整備 ... 33 4.6 危機管理体制の強化 ... 34 4.6.1 活動体制の整備 ... 34 4.6.2 情報連絡体制の整備 ... 35 4.6.3 防災計画・訓練 ... 36 5. 耐震化計画の策定および推進 ... 37 5.1 耐震化計画の策定 ... 37 5.2 耐震化のための財源の確保 ... 39 5.3 耐震化の効果 ... 39 5.4 耐震化の推進に向けての留意事項 ... 40 第Ⅲ部 水道施設の津波対策 ... 42 1. はじめに ... 42 2. 水道施設の津波被害想定 ... 42 3. 津波対策の検討 ... 43 第Ⅳ部 水道施設の水害対策 ... 45 1. はじめに ... 45 2. 水道施設の水害想定 ... 45 3. 水害対策の検討 ... 46 水道の耐震化計画等策定指針検討会開催要綱……… 50 水道の耐震化計画等策定指針検討会委員……… 51

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第Ⅰ部 耐震化計画の基本的考え方

1.はじめに

近年、我が国では、大規模の地震が度々発生しており、平成23 年 3 月には東日本大 震災が発生し、水道施設は未曾有の被害を受け、広範囲・長期間に及ぶ断水が生じてい る。 このような状況を踏まえ、厚生労働省では、「新水道ビジョン」(平成25 年 3 月) において、強靱な水道を目指すべき方向性の一つとし、自然災害等による被災を最小限 にとどめる強いしなやかな水道を理想に掲げている。この理想の実現には、水道施設の 耐震化推進が急務であり、南海トラフ巨大地震など、大地震発生の逼迫性が指摘されて いる昨今において、計画的・効率的に耐震化を進めていく必要がある。 しかしながら、現状の水道施設における耐震化の状況については、決して高いといえ る状況ではない。水道の耐震化計画は水道施設の耐震化整備を効果的・効率的に進める ために不可欠なものであるが、全国の水道事業者等における耐震化計画の策定状況は、 38%(平成 25 年度)と低く、特に中小規模の事業者において策定率が低い状況にある。 新水道ビジョンでは、「特に耐震化計画策定が遅れている水道事業については、その 取り組みを促進する技術的支援として、各水道事業の特性に柔軟な指針を示すなど、耐 震化計画策定の促進を図る」としており、中小規模事業者を中心として耐震化計画の策 定を支援する必要がある。 「水道の耐震化計画等策定指針」は、阪神・淡路大震災を教訓として、平成9 年に「水 道の耐震化計画策定指針(案)」として策定され、その後新潟県中越地震等を踏まえて平 成20 年に改定されたものである。本指針は上記指針について東日本大震災の経験や新 たに得られた知見等を反映することにより、水道事業者等における耐震化計画内容のレ ベルアップを図るとともに、計画未策定の事業者を解消するため、中小規模の事業者等 における計画策定の容易化を目的として改定したものである。 耐震化事業を計画的に推進するためには、住民や関係者における耐震化に向けた合意 形成が何より重要であり、水道事業者等は本指針に基づき耐震化計画を策定し、耐震化 の取り組みについて住民等に分かりやすい情報を提供し、理解を得ることに努める必要 がある。

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2.耐震化計画の位置付け等

1)水道法および国の水道計画等における耐震化の規定・方針 (1) 水道法における水道施設の耐震化に関する規定 水道施設の耐震化に係る基準については、平成 18 年度から平成 19 年度にかけて検討 会・審議会を重ね、その検討結果を反映した施設基準省令の改正を平成 20 年 3 月に公布、 同年 10 月に施行した。この改正により、水道施設の重要度を2つに区分し、それぞれが 備えるべき耐震性能の要件を明確にしている。 既存施設については、全ての水道施設を直ちに省令に適合させることが困難であると いう実情を考慮し、当該施設の大規模の改造の時までは、改正後の規定を適用しないと の経過措置が置かれているが、既存施設においても、破損した場合に重大な二次被害を 生ずるおそれが高い施設や破損した場合に影響範囲が大きく応急給水で対応できないこ とが想定される重要な施設など、優先的に耐震化を実施すべき施設については、早期に 耐震化を完了することが重要である。 また、平成 23 年 10 月 3 日の水道法施行規則の一部改正により、規則第 17 条の 2 にお いて規定されている、水道事業者が需要者に対して行うべき情報提供の項目に「水道施 設の耐震性能および耐震性の向上に関する取組等の状況に関する事項」を追加しており、 水道事業者は年 1 回以上、水道の耐震化に関する情報提供を行う必要があり、耐震化の 効果や震災時の連携等について説明するなど、耐震化の推進に向けてより効果的な情報 発信に努めることが重要である。 (2) 国の水道計画等における耐震化の方針 国土強靱化アクションプラン 2014 および新水道ビジョンでは、水道施設の耐震化の方 針を以下のように示しており、水道事業者等においてはこれらを踏まえて耐震化計画の 目標や対策を検討する。 ①国土強靱化アクションプラン 2014(平成 26 年 6 月 3 日 国土強靱化推進本部) ・当面、各水道事業者が耐震化計画の策定を進め、これに基づいて基幹となる管路や 配水池、浄水施設に加え、断水エリア、断水日数の影響が大きい施設、管路を優先 して耐震化を進める。 ・重要度の高い施設(病院、避難所等)を設定し、これらの施設への供給ラインから 優先的に耐震化を実施する。これにより、我が国全体の上水道の基幹管路の耐震適 合率を平成24 年度の 34%から、平成 34 年度に 50%とすることを目標としている。 ・自家用発電設備等の整備促進、省電力化、配水池の増強、再生可能エネルギー等の 導入等を促進する。 ②新水道ビジョン(平成 25 年 3 月 厚生労働省健康局) 危機管理対策を重点的な実現方策として、その中で水道施設の耐震化について以下の

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方針を示している。 ・耐震化計画の策定を推進し、全国で耐震化を推進し、水道施設耐震化率の底上げを。 ・当面の目標として、優先的に重要な給水施設(病院、避難所など)をあらかじめ設 定のうえ、当該施設への供給ラインについて早期の耐震化を。 ・将来は、水道の基幹施設の全てについて耐震化の実現を。 また、優先的に実施する必要性の高いものを10年程度で実施し、次に断水エリア、 断水日数の影響が大きい施設・管路を優先して耐震化を推進し、最終的には耐震化が必 要な施設の全てをクリアすることで、50年から100年先には水道施設全体が完全に 耐震化することを水道事業等の耐震化計画策定に盛り込むことを求めている。 2)耐震化計画の位置付け (1) 地域の上位計画との整合等 耐震化計画における想定地震および避難所、救急病院等の重要施設の設定、耐震化対 策や応急対策の考え方等については、市町村等の総合計画や地域防災計画等との整合を 図る。 また上位計画である水道事業ビジョン等において耐震化計画を位置付け、両計画は整 合を図って推進することが望ましい。 (2) 耐震化計画と実施対策および本指針と他の指針・基準との関係 (耐震化計画と実施対策) 水道の耐震化計画は、水道施設の耐震化等の耐震化対策と地震発生後の応急復旧や応 急給水等の応急対策について検討し計画する(図 1)。 計画策定後、耐震化対策については、耐震化方針に基づいた更新、耐震補強、バック アップ機能強化等の施設整備を行う。 また、応急対策については、応急復旧体制や応急給水体制の整備、BCP・応急活動 マニュアルの策定および防災訓練等の事前対策を行う。

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図 1 耐震化計画の位置付け (本指針と他の指針・基準との関係) 水道施設の耐震化に関しては、「水道施設耐震工法指針・解説 2009 年版 公益社団法 人 日本水道協会」等の指針・基準がある。耐震化対策については、本指針に基づき、 水道施設全体の耐震化を検討した上で、上記の指針・基準により個別の施設・管路を対 象に耐震診断を行い、必要に応じて耐震工法等を検討して、耐震化整備を行う。 応急対策に関しては、「地震等緊急時対応の手引き 平成 25 年 3 月改訂 公益社団法 人 日本水道協会」等において、地震等の災害における相互応援や応急活動等が定められ ている。応急対策については、本指針に基づき、体制確保に向けて必要な事項を検討し た上で、上記の手引き等との整合を図り、BCP・応急活動マニュアルの策定をはじめ として事前対策を実施する。 応急対策 (応急対策の実施対策) ○応急復旧体制の整備 ○応急給水体制の整備 ○BCP・応急活動マニュアルの策定、防災訓練等 (耐震化対策の実施対策) ○耐震化方針に基づいた更新 ○耐震補強 ○バックアップ機能強化の施設整備等 耐震化対策 耐震化計画 水道事業ビジョン (計画期間:10 年程度)

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3.耐震化計画の策定手順

(耐震化計画の策定フロー) 水道の耐震化計画の全体の策定フローは図 2(P7)に示すとおりであり、基本情報の 整理、水道施設の被害想定、耐震化の目標設定、地震対策の検討および耐震化計画の策 定および推進により構成される。 耐震化計画は、まず基本情報を整理して、水道施設を施設および管路に分けて被害想 定等を行う(「1.基本情報の整理」、「2.水道施設の被害想定」)。 その結果を踏まえ、計画期間を定めた上で、水道施設の機能維持水準や耐震化目標の 設定ならびに応急復旧期間や応急給水量等の水道の供給目標等の設定を行う(「3.耐震 化の目標設定」)。 次に設定した目標に基づき、施設や管路の耐震化対策を中心に地震対策を検討する (「4.地震対策の検討」)。 検討した耐震化対策等は、耐震化目標に基づいて優先度等を定めるとともに、必要に 応じて更新計画等との整合を図り、更新計画等の財源の確保や将来の財政収支の見通し を検討してスケジュールを定める。さらに耐震化による応急復旧期間、耐震化率等の効 果等を求めて、耐震化事業の目的、概要等と合わせて住民・関係者に説明し理解を得る ように努める(「5.耐震化計画の策定および推進」)。 (対策・検討事項を限定した耐震化計画の策定等) 水道施設の耐震化計画は、地域の自然的・社会的条件および水道事業の規模、水道施 設の状況や財政状況等を考慮して策定する。 耐震化計画の策定にあたり、水道事業の組織体制や財政状況によっては、図 2 に示す 検討事項のうち、耐震化による効果等を考慮して当面優先して実施する耐震化対策を選 定し、それに必要な事項のみを部分的に検討してもよい。 例えば、更新計画を基本として、水道施設全体の耐震性を効率的・効果的に高める耐 震化対策(重要給水施設に供給するラインの施設・管路の更新を優先した耐震化等)に よる耐震化計画などが考えられる。 また、このような方法で一度耐震化計画を策定し、その後、耐震化事業の進捗をみな がら、PDCA サイクルなどにより耐震化計画を見直し、将来において耐震化対策の範囲 や検討事項を段階的に拡充してもよい。 なお当面優先して実施する耐震化対策に関し、新水道ビジョンでは、重点的な実現方 策として施設耐震化方策を掲げ、その中で「当面の目標として、優先的に重要な給水施 設(病院、避難所など)をあらかじめ設定のうえ、当該施設への供給ラインについて早 期の耐震化を。」としており、当該供給ラインや基幹管路等において、耐震性が低く経 年化の進行した施設や管路の耐震化については優先的に実施する。 これを踏まえ、当面優先して実施する耐震化対策の例としては、以下があげられる。

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<当面優先して実施する耐震化対策(例)> ・基幹施設を優先した耐震化 ・重要給水施設に供給する管路を優先した耐震化 ・老朽化施設、老朽化管路の更新を基本とした耐震化(老朽化施設、老朽化管路の中 でも、重要給水施設に供給するラインを優先し、更新と耐震化の効果的な推進を図 る) ・復旧が困難な施設・管路を優先した耐震化 ・液状化地域に整備された施設・管路の耐震化 また、耐震化計画の検討事項は図 2 に示すものを基本とするが、計画書の構成につい ては住民や関係者への説明、事業予算区分などを考慮して、水道事業者等において設定 してよい。(例えば、「4.地震対策の検討」を耐震化対策と応急対策に区分する等) なお、耐震化計画は独立した計画ではなく、耐震化の視点を取り込んだ整備計画、あ るいは更新計画でもよい。 財政面、人材面等の理由から耐震化計画の策定が困難な中小規模水道事業者等におい ては、周辺市町村等と連携して広域的に計画策定に取り組むことが考えられる。この場 合、周辺市町村等との調整などの新たな取り組みが必要となるが、他の水道における耐 震化等の取り組みが把握でき参考となること、また連携が深まることにより、事故・災 害時の応援の際も有効である。

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図 2 耐震化計画策定フロー ※本図は耐震化計画の全ての検討事項を示しているが、耐震化効果等を考慮して当面優先実施する対策を選定し、それに必要な事項のみを部 分的に検討してもよい。 ※計画書の構成については、本図を参考に住民や関係者への説明、事業予算区分などを考慮して設定してよい。 START ・水道施設 (施設、管路等の状況) ・想定地震等 想定地震、震度、加速度、速度、液状化危険度 他のライフライン等の想定被害 ・災害対策施設等 (避難所、医療施設、緊急輸送道路等) ・水道経営 (財政の状況) 2.1 施設の耐震診断および水供給等の影響の検討 1)施設の耐震診断 ・水源 ・構造物等 ・設備 2)水供給等の影響検討 ・施設のバックアップ能力 ・水供給等の検討 ・二次災害のおそれ 2.2 管路等の被害想定および水供給等の影響の検討 1)管路等の被害想定 ・管路の耐震性分類 ・管路の被害想定 ・管路付属設備 ・水管橋等 ・給水装置等 2)水供給等の影響検討 ・管路のバックアップ能力 ・水供給等の検討 ・二次災害のおそれ 2.3 断水予測 1)断水人口等の予測 2)断水期間の予測 3.1 計画期間等 3.2 水道施設の耐震化目標等 3.2.1 水道施設の機能維持水準 3.2.2 水道施設の耐震化目標 3.3 水道の供給目標等 3.2.1 水道の供給目標 1) 応急復旧期間 2) 応急給水量等 3.2.2 水供給に関する目標 5.1 耐震化計画の策定 5.2 耐震化のための財源の確保 5.3 耐震化の効果 5.4 耐震化の推進に向けての留意事項 END 1.基本情報の整理 2.水道施設の被害想定 3.耐震化の目標設定 5.耐震化計画の策定および推進 4.地震対策の検討 4.2 被害発生の抑制 4.2.1 施設の耐震化 4.2.2 管路の耐震化 4.2.3 給水装置等の 耐震化 4.3 影響の最小化 4.3.1 施設のバックアップ 機能の強化 4.3.2 管路のバックアップ 機能の強化 4.3.3 給水の継続 4.3.4 二次災害の防止等 4.4 復旧の迅速化 4.4.1 応急復旧の迅速化 4.4.2 情報管理設備の整備 4.4.3 応急復旧体制の整備 4.5 応急給水の充実 4.5.1 応急給水施設の整備 ・運搬給水 ・拠点給水 ・仮設給水 4.5.2 応急給水体制の整備 4.6 危機管理体制の強化 4.6.1 活動体制の整備 4.6.2 情報連絡体制の整備 4.6.3 防災計画・訓練

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4.用語の説明

本指針において使用している用語の説明を表 1 に示す。 表 1 用語の説明 用 語 説 明 共 通 基幹施設 ・取水施設、貯水施設、導水施設、浄水施設および送水施設 ・配水本管に接続するポンプ場、配水池等 基幹施設等 ・耐震化を優先的に進める施設として、基幹施設に下記の施設を加えたもの。 ・破損した場合に重大な二次災害を生ずるおそれが高い施設 ・水道の災害時応急対策拠点となる庁舎施設 ・応急復旧が困難な施設 基幹管路 ・導水管、送水管および配水本管 ・配水本管については、「水道施設の技術的基準を定める省令 第 1 条第 7 号イ(3)」 を基本とするが、水道事業の規模、配水区域の広がり、市街化の状況、配水管 路の口径・流量・配置状況等を勘案して、水道事業者等において適切に定める ものとする。 重要給水施設管路 ・災害拠点病院、避難所、防災拠点などの重要給水施設に供給する管路(重要給 水施設に供給する導水管、送水管、配水本管、配水支管)。 重要給水施設基幹管路 ・重要給水施設管路のうち、基幹管路(導水管、送水管、配水本管) 基幹管路等 ・耐震化を優先的に進める管路として、基幹管路に下記の管路を加えたもの。 ・重要給水施設管路(重要給水施設基幹管路を除く) ・破損した場合に重大な二次災害を生ずるおそれが高い管路(基幹管路を除く) ・応急復旧が困難な管路(軌道横断、河川横断、緊急輸送道路等)(基幹管路を 除く) 耐 震 化 地震対策 ・地震に対して安定給水や復旧・応急給水を計画的に行うための対策であり、耐 震化対策と応急対策により構成する。 耐震化対策 ・施設や管路の耐震化等の地震による被害発生を抑制する対策とバックアップ機 能の強化等の影響を最小化する対策により構成する対策。 応急対策 ・地震により被害を受けた施設・管路の復旧を迅速化する対策と応急給水を充実 するための対策および危機管理体制を強化する対策により構成する対策。 耐震化計画 ・地震対策について検討する計画。耐震化対策を中心として検討し、応急対策は 体制確保に向けて必要な事項を検討する。 耐震管 ・レベル2地震動において、管路の破損や継手の離脱等の被害が軽微な管。 ・液状化等による地盤変状に対しても、上記と同等の耐震性能を有する管。 耐震適合管 ・レベル2地震動において、地盤によっては管路の破損や継手の離脱等の被害が 軽微な管。 レベル1地震動 ・当該施設の設置地点において発生するものと想定される地震動のうち、当該施 設の供用期問中に発生する可能性の高いもの。 レベル2地震動 ・当該施設の設置地点において発生するものと想定される地震動のうち、最大規 模の強さを有するもの。 簡易耐震診断 ・水道施設の耐震性について、チェックシート等を用いて簡易に診断する方法。 詳細耐震診断 ・水道施設の耐震性について、構造計算等を行って詳細に診断する方法。 ・耐震性の有無・耐力等は詳細耐震診断により最終的に判定する必要がある。

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第Ⅱ部 水道の耐震化計画策定指針

1.基本情報の整理

水道の耐震化計画策定にあたっては、水道施設の被害想定、地震対策の検討、耐震化 計画の策定および推進などに必要な基本情報を収集し整理する。 表 2 水道の耐震化計画策定に必要な基本情報 区分 基本情報 水道施設 施設 水源、構造物、設備、場内連絡管路について、位 置、規模、構造、仕様、建設年次および地盤情報等 管路 埋設管路、水管橋、給水装置等について、位置、 口径、管種・継手、仕様、建設年次および地盤情報 等 想定地震等 想定地震 想定地震 地震動、液状化危険度 想定地震による震度、加速度、速度および液状化 危険度の分布 他のライフライン等 の想定被害 電力、下水道等の停止期間等 災害対策施 設等 避難所、医療施設等 位置、応急給水量 緊急輸送道路 ルート 水道経営 財政等 財政収支計算データ

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2.水道施設の被害想定

水道施設の被害想定は、地域防災計画等に基づき、想定地震とそれによる震度、加速 度、速度および液状化危険度等を設定した上で、施設と管路に分けて耐震診断や水供給 等の影響の検討を行い、断水状況を予測する。 これらの被害想定の全体の検討事項を以下に示すが、水道事業者等においては、地域 の自然的・社会的条件、水道事業の規模、耐震化による効果等を考慮して当面実施する 耐震化対策を選定して、選定した対策に関する耐震診断や水供給等の影響の検討のみを 行ってもよい。 2.1 施設の耐震診断および水供給等の影響の検討 2.1.1 施設の耐震診断方法および水供給等の影響の検討方法 1)施設の耐震診断 施設は、水源、土木構造物、建築構造物、場内連絡管路、設備等の施設形態毎に耐震 診断を行う。 2)水供給等の影響の検討 施設の複数化、浄水確保、停電対策等のバックアップ対策について検討する。 また、耐震診断結果を踏まえて、震災後の各施設の水供給の可否等を想定するととも に、復旧困難施設の抽出、二次災害のおそれの検討を行う。 [解説] 1)施設の耐震診断 取水場、浄水場、ポンプ場、配水池等の施設は、水源、土木構造物、建築構造物、場 内連絡管路、設備等により構成される。 過去の地震では、これらの施設形態の全体に被害が生じており、各々の被害の態様お よび影響(水供給への影響、復旧の困難さ、二次災害のおそれ)は異なる。 したがって、施設の耐震診断はこれらの施設形態毎に行うこととし、詳細耐震診断を 中心として以下に方法を示す。 (1) 水源 ダムなどの貯水施設については、「水道施設に関する技術的基準を定める省令」に則 り堤体や基礎地盤の安定性を検討するとともに、土堰堤等については法面の安定性を検 討する。 (2) 構造物等 ア) 地盤 地盤等の崩落のおそれがある施設周辺の法面等については、安定計算等により法面の 安定性を検討する。施設用地の造成等が多い山間部では、地盤崩落等により構造物が移 動・沈下することがあるため注意を要する。 液状化等の地盤変状のおそれがある軟弱地盤、人工地盤(埋立部、盛土部)について は、地盤の液状化計算等により、液状化の発生の有無・程度、地盤の沈下量等について

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検討する。 イ) 土木構造物、建築構造物 耐震性が低いおそれがある土木構造物、建築構造物について、地盤の液状化計算結果 等を踏まえて、構造計算等により構造物の部材および杭の強度、基礎部の耐力等を検討 する。 過去の地震では建設年代の古い構造物に被害が多く、特に1979 年(昭和 54 年)以前の 耐震基準により整備されたもの、さらに高架水槽等の重心の高い構造物に被害が多いこ とから、注意が必要である。 なお、構造物が老朽化している場合、強度が低下することがあるため、必要に応じて 老朽度調査を行い耐震診断に反映させる。 また市町村合併等により継承した水道施設については、建設年代が古く、耐震性が確 保されていない場合があるため、注意が必要である。 地震による構造物の目地の損傷等により、設備室に構造物の貯留水が浸水することが あり、また地下水位の高い場所、河川の近傍等の場所においては地下水が浸水すること があるため、浸水の発生について検討する。 ウ) 場内連絡管路 構造物との取り合い部の管路は、過去の地震において被害が非常に多いため、地盤の 液状化計算等の結果等を踏まえて、伸縮可撓管部を含めて地震による離脱・破損につい て検討する。 埋設管路については、使用している管種・継手や地盤条件等を基に耐震管や耐震適合 管およびそれら以外に分類し、耐震性を把握する。 (3) 設備 地震により移動・転倒・落下するおそれがあるフロッキュレーター、傾斜板、汚泥掻き 寄せ機等の水中機械や薬品タンク、電気盤等の設備は、必要に応じて据付部の構造計算 等を行い固定方法について検討する。 ケーブル類・設備配管は、構造物との取り合い部、目地部等について、伸縮性、可撓 性の確保について確認する。 2)水供給等の影響の検討 (1) 施設のバックアップ能力 施設のバックアップ能力を確保しておくことで、震災時等において安定した水供給を 行うことができる。 基幹施設等を中心に、施設が複数化されているか、緊急遮断弁等により浄水確保が可 能か、自家用発電設備等による停電対策(想定停電時間に対する燃料備蓄量(稼働時間) による対応の検討を含む等)のバックアップ対策の状況を確認する。 (2) 水供給等の検討 各施設について、耐震診断結果をとりまとめ、震災後の水供給の可否等を想定する。 耐震診断結果より耐震性が低く、被害箇所の探知や復旧工事等に長期間を要すると想

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定される復旧困難施設があれば抽出する。 (3) 二次災害のおそれ 耐震診断結果より、土堰堤等の貯水施設や施設周辺の法面の崩壊による影響、配水池 等の土木構造物等の被害による水の流出による影響、塩素ガス設備等の被害による影響 などの二次災害の発生のおそれについて検討する。 2.1.2 施設の耐震診断の進め方 1)耐震診断の方法と手順 施設の耐震診断方法としては、簡易耐震診断、詳細耐震診断等がある。 耐震診断は簡易耐震診断を行って対象施設を選定した上で詳細耐震診断を行う等、段 階的に行うことが効率的である。 2)図面・資料の整備等 施設の耐震診断にあたり、図面・資料等が不足し、不明な事項がある場合、現場調査 により確認することを基本とするが、それが困難な場合は、当該施設の建設時の設計水 準・施工方法等より推定する。 [解説] 1)耐震診断の方法と手順 施設の耐震診断方法としては、土木構造物等を対象としてチェックシート等を用いて 簡易な診断を行う簡易耐震診断、構造計算等により施設の耐震性を詳細に診断する詳細 耐震診断がある。また、建設年代により施設の耐震性を概略で判断することもできる。 <耐震診断方法> ①建設年代による耐震性の概略判断 ②チェックシート等を用いる簡易耐震診断 ③構造計算等による詳細耐震診断 耐震性の有無・耐力等を最終的に判定するためには詳細耐震診断を行う必要がある。 しかし耐震診断方法が詳細になる程、耐震性判定の精度は高くなるものの、労力が必要 となる。 したがって、耐震診断は段階的に行うことが効果的であり、簡易耐震診断を行って対 象を選定した上で詳細耐震診断を行う、あるいは基幹施設等のみを優先して行うなどに より進める必要がある。 耐震化計画の策定にあたっては、上記の事項を考慮した上で、耐震診断方法はいずれ の方法を用いても良い。 2)図面・資料の整備等 耐震診断にあたっては、図面等の竣工図書、構造計算書等の設計図書、ボーリングデ ータ等が必要である。 このような図面・資料が十分整理・保管されておらず、不明な事項がある場合、現場

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調査により確認することを基本とするが、それが困難な場合は、当該施設の建設時の設 計水準・施工方法等より推定する。 2.2 管路等の被害想定および水供給等の影響の検討 2.2.1 管路等の被害想定 方法および水供給等の影響の検討方法 1)管路等の被害想定 管路は、管路(埋設管路)、管路付属設備、水管橋等、給水装置等の管路形態毎に耐震 診断を行う。 2)水供給等の影響の検討 複数系統管や系統間の連絡管等のバックアップ対策について検討する。 また、被害想定結果を踏まえて、震災後の各管路の水供給の可否等を想定するととも に、復旧困難管路の抽出、二次災害のおそれの検討を行う。 [解説] 1)管路等の被害想定 導水管、送水管、配水管は、管路(埋設管路)、管路付属設備、水管橋等により構成さ れ、さらに給水装置を使用して住民等に給水される。 過去の地震では、これらの管路全体に被害が生じており、各々の被害の態様および影 響(水供給への影響、復旧の困難さ、二次災害のおそれ)は異なる。 したがって、管路等の耐震診断はこれらの管路形態毎に行うこととし、詳細耐震診断 を含めて以下に方法を示す。 (1) 管路(埋設管路) 管路(埋設管路)は、基幹管路、重要給水施設管路、破損した場合に重大な二次災害 を生ずるおそれが高い管路、応急復旧が困難な管路(軌道横断、河川横断、緊急輸送道 路等)を特定して以下について検討する。 (管路の耐震性分類) 導水管、送水管、配水本管、重要給水施設管路および配水支管等に分けて各管路につ いて、管種・継手および地盤条件から耐震管や耐震適合管およびそれら以外に分類し、 耐震性を把握する。 (管路の被害想定) 既往地震の被害データから研究開発された管路被害予測式を用いて、管種・継手、口 径、地盤条件、液状化の可能性、地震動等の情報を入力して管路被害想定を行い、被害 率、被害件数を推計する。 東日本大震災等では液状化発生地区、盛土地区に管路被害が多く発生しており、管路 被害想定にあたっては、ハザードマップ等により旧河道、埋立地等の液状化の可能性が ある地区、盛土地区を十分把握して行う。 また、以下に示す路線、場所等については、地震により大きな管路被害が生じるおそ れがあるため、別途抽出して必要に応じて、地盤の変位・歪みおよび液状化の計算、こ

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れらに基づく管体発生応力および継手部の伸縮量等の計算を行って、伸縮可撓管部を含 めて抜け出しや破損等について検討し被害を想定する。 ・中山間地域等で盛土により造成された道路(盛土部分では地震により地盤変状が生 じるおそれがあるため) ・局所的に大きな被害が生じるおそれのある活断層の近傍、地滑りが想定される箇所、 地層が変化する箇所、不等沈下が予想される箇所等 なお、東日本大震災等では、地下水位の高い地区において布設に際し転圧等による埋 戻し土の締固めが不十分な管路が液状化して被害が生じているため、このような施工に 起因する液状化にも留意する必要がある。 このような管路被害が想定される路線、箇所では、必要に応じて液状化等による地盤 変状の計算を行い、管路の耐震性を検討する。 (2) 管路付属設備 仕切弁、空気弁、消火栓等の管路付属設備については、既往地震では、ブロック積の 弁室の破壊ならびに弁室との取合部の管路、仕切弁等のフランジ部、継ぎ足し配管の空 気弁等が被害を受けているとともに、ウォーターハンマーによる空気弁の破損等が生じ ている。管路付属設備については、これらの形式等の状況を把握し必要に応じて被害想 定に含める。 (3) 水管橋等 耐震性が低いおそれがある水管橋、橋梁添架管について、地盤の液状化計算結果等を 踏まえて、構造計算等により上部工の耐力や支承部の伸縮継手の耐震性、落橋の可能性、 下部工・基礎部の耐力等を検討する。 また構造物との取り合い部の管路や伏越し部の管路についても、液状化計算等を行っ て伸縮可撓管部を含めて抜け出しや破損等について検討する。 (4) 給水装置等 給水装置は一般に管路に比べて地震による被害は多いが、配水管の分岐部から下流側 直下の止水栓(第一止水栓)までの公道下等の給水管は、配水管と同時に応急復旧を行 う必要があるため、その被害は応急復旧作業・期間に大きく影響する。 また、宅内の給水装置についても地震被害が多く、特に重要給水施設については被害 による影響が大きいため注意が必要である。 給水装置については管種・継手の使用状況を把握し、既往地震による被害実績等を基 に、被害想定を行うことが望ましい。 また、受水槽は震災時の浄水の確保、応急給水の受水のために重要である。重要給水 施設を中心に受水槽についても、据付状態、流出側配管破損時の貯留水流出防止策等に 留意する必要があり、受水槽管理者に耐震化や応急対策について説明し、耐震性を把握 すること等を促すことが望ましい。

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2)水供給等の影響の検討 (1) 管路のバックアップ能力 管路のバックアップ能力を確保しておくことで、地震により一部の系統の施設や管路 に被害が生じても健全な他の系統から水供給を行うことができる。 基幹管路を中心に、複数系統管や系統間の連絡管等が整備されているか等の管路のバ ックアップ対策の状況を確認する。 (2) 水供給等の検討 管路の被害想定結果をとりまとめ、震災後の基幹管路等の水供給の可否等を想定する。 被害想定結果より耐震性が低く、被害箇所の探知や復旧工事等に長期間を要すると想 定される復旧困難管路があれば抽出する。 (3) 二次災害 のおそれ 耐震診断結果より、斜面配管等からの水の流出による二次災害の発生のおそれについ て検討する。 2.2.2 管路等の被害想定の進め方 1)被害想定の方法と手順 管路や水管橋等の耐震診断等は簡易耐震診断などを行って対象を選定した上で詳細耐 震診断を行う等、段階的に行うことが効率的である。 2)図面・資料の整備等 管路や水管橋等の耐震診断等にあたり、図面・資料が不足し、不明事項がある場合、 現場調査により確認することを基本とするが、それが困難な場合は、当該管路、水管橋 等の建設時の使用管種・継手、設計水準・施工方法等より推定する。 [解説] 1)耐震診断の方法と手順 管路や水管橋等の耐震診断方法等は、土木構造物等と同様に簡易耐震診断、詳細耐震 診断などがあり、これらを段階的に行ったり、基幹管路を優先して行う等により効率的 に進める必要がある。 2)図面・資料の整備等 管路や水管橋等の耐震診断等にあたっては、土木構造物等と同様に、図面・資料が必 要である。それらが不足し不明事項がある場合、現場調査により確認することを基本と するが、それが困難な場合は、当該管路の建設時の使用管種・継手および水管橋等の建 設時の設計水準・施工方法等より推定する。

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2.3 断水予測 1)断水人口等の予測 施設の耐震診断、管路の被害想定の結果等を基に、断水人口や重要給水施設への給水 状況を予測する。 2)断水期間の予測 施設の耐震診断、管路の被害想定の結果等から、断水期間を予測する。 [解説] 1)断水人口等の予測 施設の耐震診断、管路の被害想定の結果等から、断水範囲、断水人口ならびに病院や 避難所、防災拠点等の重要給水施設への給水状況を想定する。 断水人口等は、耐震診断結果等に基づく水源から配水池までの基幹施設および導・送 水管の水供給の可否、被害想定結果に基づく配水管の被害状況等より予測する。 断水人口等の予測では、想定される停電に対し自家発電設備等による対応を考慮する ほか、受水を行っている水道事業は水道用水供給事業の断水の有無の想定を踏まえて行 う。また、施設や管路のバックアップによる水供給を考慮する。 重要給水施設については、上記に加え、当該施設に配水する配水本管や重要給水施設 管路の被害想定結果を基に給水状況を予測する。 2)断水期間の予測 断水期間(応急復旧期間)については、施設は耐震診断結果を基に復旧期間を想定す るとともに、管路は想定被害件数を基に、投入作業者数、復旧速度等を設定して予測す る。 断水期間の予測は給水区域全体のほか、重要給水施設に対して行う。

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3.耐震化の目標設定

阪神・淡路大震災、東日本大震災をはじめ、既往の大規模地震では水道施設の応急復 旧に長期間を要した水道も見られ、被災地の住民においては水が十分確保できないこと による不便、水を確保するための労力、これらに伴う不安は非常に大きなものであった。 大規模地震においても、水道の応急復旧はできる限り速やかに行うべきであり、また、 断水地区においては応急給水量を段階的に増加させる等により、住民の生命、生活の維 持を図る必要がある。 このため、「2.水道施設の被害想定」の結果を踏まえ、計画期間等を定めた上で、 水道施設の機能維持水準を設定し、施設や管路の耐震化率などの指標により計画目標年 次における水道施設の耐震化目標を設定する。 さらに、震災が住民生活に与える影響を考慮して、水道の応急復旧期間、応急給水量 等の水道の供給目標を定めることが望ましい。 3.1 計画期間等 耐震化計画の計画期間は10 年間程度を基本とし、適切に定める。 [解説] 耐震化計画の計画期間は水道施設の更新等を考慮すると長期的なものが望ましいが、 事業化の期間として10 年間程度を基本とし、水道事業者等において適切に定めて、計 画目標年次を設定する。 当面必要な耐震化対策を選定して耐震化計画を策定する場合、計画期間は数年程度で も良く、事業の進捗をみながら将来、順次、対策や検討事項を拡充しても良い。 3.2 水道施設の耐震化目標等 3.2.1 水道施設の機能維持水準 基幹施設・管路等を設定し、地震時における水道施設の機能維持水準(耐震性の水準) を定める。 [解説] 地震時における給水の確保および早期の応急復旧を効果的に行うために、水道施設の 耐震化目標として機能維持水準を定める。 「水道施設に関する技術的基準を定める省令」に基づき、基幹施設・管路等について は、レベル1地震動に対して、当該施設の健全な機能を損なわず、かつ、レベル2地震 動に対して、生ずる損傷が軽微であって、当該施設の機能に重大な影響を及ぼさないこ ととする。 基幹施設・管路等以外の施設・管路は、レベル1地震動に対して、生じる損傷が軽微 であって、当該施設の機能に重大な影響を及ぼさないこととする。

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これらを踏まえ、各施設・管路について能力や重要給水施設への給水等の機能および 重要度を考慮して基幹施設・管路等を設定し、水道施設全体の機能維持水準(耐震性の 水準)を定める。 3.2.2 水道施設の耐震化目標 水道施設の耐震化目標は、耐震化の現状や計画期間において実施できる耐震化整備量 等を踏まえて適切に設定する。 [解説] 水道施設は重要給水施設に供給する基幹施設・管路等を中心に全体を耐震化すること が望ましいが、計画目標年次における水道施設の耐震化目標は、耐震化の現状や計画期 間において実施できる耐震化整備量等を踏まえて水道事業者等において適切に設定する。 耐震化目標とする指標としては以下があるが、これらは現状値と計画値を対比する等 して耐震化の実施効果をわかりやすく示す。 <水道施設の耐震化目標の指標(例)> ・浄水施設耐震率、ポンプ所耐震施設率、配水池耐震施設率 ・基幹管路の耐震化率、基幹管路の耐震適合率 ・重要給水施設管路耐震化率、重要給水施設基幹管路耐震化率 ・管路の耐震化率 3.3 水道の供給目標等 3.3.1 水道の供給目標 地震に対する水道の性能は水供給状況により表すことができ、水道の供給目標として は応急復旧期間や応急給水量等がある。 これらは水道施設の耐震化による効果でもあり、水道の供給目標は、水道施設の耐震 化目標との関係等を十分把握した上で設定することが望ましい。 1)応急復旧期間 計画目標年次において目標とする応急復旧期間は、被災者の不安感の軽減、生活の安 定等を考慮するとともに、水道施設の耐震化の状況および計画期間において実施できる 耐震化整備量等を踏まえて適切に定めることが望ましい。 2)応急給水量等 応急給水は応急復旧期間において復旧段階に応じて、①目標水量、②住民の水の運搬 距離の目標を定めることが望ましい。 [解説] 水道の供給目標の設定にあたり、現状と計画目標年次および50~100 年後の将来の3 ケースを対象に水道施設能力に対する耐震化対策と応急対策の関係を比較したものを図 3 に示す。

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耐震化水準によって、耐震化対策により対応する範囲と応急対策(応急復旧・応急給 水)により対応する範囲が定められるが、一般に現状では耐震化されている能力が小さ いため、応急対策で対応する範囲が大きくなる。 これに対して、水道施設全体が耐震化されている将来(50~100 年後)においては、 応急対策による対応は限定的、極小的なものになると考えられる。 一方、将来(計画目標年次)においては、水道施設の耐震化目標と整合を図って耐震 化する範囲および目標水準を設定し、応急対策で対応する範囲を定め、復旧体制等を想 定して目標とする応急復旧期間を求める。 図 3 耐震化対策と応急対策の関係 図 3 の3つのケースについて、地震発生からの期間における給水人口を比較したもの を図 4 に示す。 現状、将来(計画目標年次)、将来(50~100 年後)と耐震化の段階が進むにつれて、 断水人口が減少し、応急復旧期間が短縮され、応急対策により対応する範囲が小さくな る。また、耐震化の段階が進み、断水人口が減少することにより応急給水は相対的に充 実するとともに、応急復旧期間の短縮により配水管を利用した仮設給水を早期に行うこ とができるため、応急給水はさらに充実する。 なお、図 4 の関係を考慮すると、応急復旧期間および応急給水量等のほか、断水人口 や断水率等を水道の供給目標とすることができる。 現状 将来(計画目標年次) 水 道 施 設 能 力 ←耐震化 目標水準 :応急対策による対応 :耐震化対策による対応 将来(50~100 年後) ←耐震化 現状水準 耐震化する 範囲 全体水道施設能力 応急対策で 対応する範囲 応急対策は 限定的、極小的

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図 4 耐震化対策と給水状況の関係 1)応急復旧期間 水道事業において目標とする応急復旧期間は、被災者の不安感の軽減、生活の安定を 考慮して2週間以内とすることが望ましいが、水道施設の耐震化の状況および計画期間 において実施できる耐震化整備量等を踏まえて水道事業者において適切に定める。 また、病院や避難所、防災拠点等の重要給水施設については、医療用水、被災者の飲 料水・生活用水等をできる限り早期に確保する必要があるため、応急復旧期間は1週間 以内とすることが望ましいが、耐震化の状況等を考慮して水道事業者において適切に定 める。 水道用水供給事業においては、受水水道事業における応急復旧作業に必要な用水を供 給するために、耐震化の目標とする応急復旧期間は5日以内とすることが望ましいが、 耐震化の状況等を考慮して適切に定める。 2)応急給水量等 応急給水は、1)で設定する応急復旧期間において、復旧段階に応じて、 ①目標水量 ②住民の水の運搬距離 の目標を定めることが望ましい。 各段階における応急給水方法は、応急給水量等の目標を確保できるように設定する。 応急給水量等の目標設定例を表 3 に示す。 なお、表 3 に示す応急給水量等の目標は一例であり、水道事業者においては極力早期 の復旧に努める。 耐震化による 応急復旧期間の短縮 耐 震 化 に よ る 給 水 人 口 の 増 加 ( 断 水 人 口 の 減 少 ) 現状 給 水 人 口 期間 将来(50~100 年後) 将来(計画目標年次) 例:4週間以内 例:2週間以内 例:0日(断水は 限定的、極小的) 地震発生

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表 3 応急給水量等の目標設定例 地震発生 からの日数 目標水量 住民の水の 運搬距離 (都市部の例) 主な給水方法 備考(水用途) 地震発生~ 3 日まで 3㍑/人・日 概ね 1km 以内*1 拠点給水(耐震性貯水槽等)、 運搬給水を行う。 飲料等 7 日*2 20~30㍑/人・日*3 概ね 250m 以内 配水本管付近の消火栓等に仮 設給水栓を設置して仮設給水 を行う。 飲料、水洗トイ レ、洗面等 14 日 被災前給水量 (約 250㍑/人・日) 概ね 10m 以内 宅内給水装置の破損により断 水している家屋等において仮 設給水栓および共用栓等を設 置して仮設給水を行う。 注)目標水量、水運搬距離は、当該地区での井戸水使用等の水確保手段、地形などの条件にできるだけ配慮する。 *1 本例では概ね 1km 以内としているが、住民の水運搬労力の軽減を考慮してできる限り短縮することが望ましい。 また、住民等に対して日常から水の備蓄等を呼びかけ、応急給水を確保する必要がある。 *2 7 日目以降は必要に応じてさらに仮設給水栓を設置し、市民の水運搬距離を短縮し応急給水を充実する。 *3 目標水量は、飲料、洗面等の使用水量として 20 ㍑/人・日とし、これに水洗トイレ(1~2 回/人・日程度)の使用 水量を見込む場合は 30 ㍑/人・日とした。20 ㍑/人・日とする場合、水洗トイレの水量は、風呂の貯めおき水や 河川水等水道以外で確保する。 3.3.2 水供給に関する目標 水供給に関する目標は、水道施設等の状況や整備方針等を踏まえて適切に設定するこ とが望ましい。 [解説] 地震対策は、「被害発生の抑制(耐震化)」の対策のほか、水供給に関する「影響の 最小化」、「復旧の迅速化」、「応急給水の充実」の対策がある。 水供給に関する目標は、水道施設等の状況や整備方針等を踏まえて水道事業者等にお いて適切に設定することが望ましい。 水供給に関する目標の指標としては以下があるが、これらは現状値と計画値を対比す る等して実施効果をわかりやすく示す。 <水供給に関する目標の指標(例)> ○影響の最小化に関する指標 ・事故時配水量率、事故時給水人口率 ・自家用発電設備容量率 ○復旧の迅速化に関する指標 ・ブロック化率 ・復旧作業用水確保率 ○応急給水の充実に関する指標 ・給水人口1人当たり貯留飲料水量 ・緊急遮断弁整備率 ・給水拠点密度

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4.地震対策の検討

地震対策は施設や管路の耐震化等を行う耐震化対策と震災時に応急復旧や応急給水を 計画的に行うための応急対策に大別される。 大規模地震等に対して安定した給水を行い、復旧を早めるためには、耐震化対策が不 可欠であるが、水道施設全体の耐震化は当面、困難であるため、本指針では耐震化対策 を基本としつつ、応急対策についても体制確保に向けて必要な事項を示す。 4.1 地震対策の概要 4.1.1 地震対策の体系 地震対策の体系は図 5 に示すとおりであり、以下のように大別される。 <地震対策の分類> □耐震化対策 ○被害発生の抑制(耐震化) ・地震が生じても水道施設に被害が生じないようにする対策 ○影響の最小化 ・水道施設に被害が生じても、バックアップ等によりできる限り給水範囲を拡大 し、断水が生じないようにする対策 □応急対策 ○復旧の迅速化 ・地震により生じた水道施設の被害に対して、応急復旧を迅速に行うための対策 ○応急給水の充実 ・断水地区に対して、充実した応急給水を行うための対策 ○危機管理体制の強化 ・震災時の諸活動を計画的かつ効率的に行うための対策 図 5 は地震対策の全体を示しているが、水道事業者等においては耐震化効果等を考慮 して当面優先して実施する対策を選定し、それに必要な対策のみを部分的に検討しても よい。

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図 5 地震対策の体系 地震対策 耐震化対策 被害発生の抑制 施設の耐震化 水源の耐震化等 (耐震化) 構造物等の耐震化 設備の耐震化 管路の耐震化 管路の耐震化 管路付属設備の耐震化 水管橋等の耐震化 給水装置等の耐震化 給水装置等の耐震化 影響の最小化 施設のバックアップ機能の強化 施設の複数化 浄水の確保 停電対策 管路のバックアップ機能の強化 系統連絡管等の整備 複数系統管、連絡管、ループ管等の整備 配水ブロック化、バルブ適正配置 給水の継続 浄水薬品、燃料等の確保 二次災害の防止等 構造物、地盤対策 薬品注入設備対策 斜面配管対策 消火用水の確保 応急対策 復旧の迅速化 応急復旧の迅速化 復旧優先順位の設定 (応急復旧対策) 復旧が行い易い給水装置の整備 情報管理設備の整備 情報管理システム等の整備 監視制御設備の整備 応急復旧体制の整備 復旧作業人員の確保 復旧資機材の確保 応急給水の充実 応急給水施設の整備 運搬給水基地の整備 (応急給水対策) 拠点給水施設の整備 仮設給水場所の設定等 応急給水体制の整備 給水作業人員の確保 給水車、給水資機材の確保 危機管理体制の強化 活動体制の整備 初動体制の整備 受援体制等の整備 関係機関・住民との連携 情報連絡体制の整備 通信設備、情報連絡体制の整備 広報・広聴体制の整備 防災計画・訓練 BCP、応急活動マニュアルの策定 防災訓練の実施 ※本図は地震対策の全体を示しているが、耐震化効果等 を考慮して当面優先実施する対策を選定し、それに必 要な対策のみを部分的に検討してもよい。 ※地震対策の構成は本図を参考に、住民や関係者への説 明、事業予算区分などを考慮して設定してよい。

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4.1.2 地震対策の選定の考え方 図 5 に示す地震対策について、水道の供給目標に対する効果をみると、被害発生の抑 制(耐震化)は断水人口等の低減、応急復旧期間の短縮の両方に効果があり、影響の最 小化は断水人口等の低減に効果がある。また、復旧の迅速化は応急復旧期間の短縮に効 果があり、応急給水の充実は応急給水量の確保に効果がある。 断水人口等の低減、すなわち安定給水という点では、耐震化対策である被害発生の抑 制(耐震化)と影響の最小化が有効であり、この中で被害発生の抑制(耐震化)は応急 復旧期間の短縮の点でも効果がある。 大規模地震等において安定した給水を行うためには、このように耐震化対策が重要で あるが、水道施設全体の耐震化には長期間を要するため、それまでの措置として他の水 道事業者等の応援を受けて行う応急給水等の応急対策により対応する必要があり、地震 対策はこのような効果等を十分考慮して選定する。 なお、被害発生の抑制(耐震化)について、水道施設を構成する各々の施設・管路は、 既往の地震では様々な種類・形態のものに被害が及びその状況は異なること、基幹施設・ 管路等かそれ以外で地震被害を受けた場合の水供給影響は異なること等を考慮して、ト ータルでバランスのとれた形で優先して耐震化する対象を選定する必要がある。 また、このような考え方で当面の耐震化対策を検討し、将来において対策を拡充して もよい。 なお、対策の検討が困難な中小規模の水道事業者等においては、周辺市町村等と連携 して耐震化計画を策定し、耐震化対策や応急対策に広域的に取り組むことが考えられる。

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4.2 被害発生の抑制 4.2.1 施設の耐震化 施設の耐震化は既往の地震による被害状況等を踏まえて、以下に示すように施設形態 に応じて適切な対策を検討する。 1)水源の耐震化等 水源はダム、原水調整池等の耐震化および水源水質対策について検討する。 2)構造物等の耐震化 構造物等は地盤の液状化対策、崩落対策とともに、土木構造物、建築構造物および場 内連絡管路の耐震化について検討する。 3)設備の耐震化 設備は構造物への固定対策およびケーブル類、設備配管の耐震化について検討する。 [解説] 施設の耐震化は既往の地震による被害状況等を踏まえて、以下に示すように施設形態 に応じて適切な対策を検討する。 耐震診断を行い、その結果、構造的な強度等が不足する水源、構造物、設備について は、最新の耐震基準に基づいて、必要な補強または更新を検討する。 施設の補強および更新の選択は、各々の費用と使用可能年数、耐震化の効果とその発 現時期、耐震補強工事における水供給の可否、施工ヤードの確保等を考慮して方針を定 める。 1)水源の耐震化等 (1) ダム、原水調整池等の補強対策 ダム、原水調整池については、耐震診断により構造的な強度が不足する場合、二次災 害の防止等を考慮して、土堰堤等の崩落防止、漏水防止等の補強対策を行う。 (2) 水源水質対策 地下水等は地震により濁水が発生することがあり、また湧水等では湧出量が変化する ことがあるため、それに備えて浄水処理装置(ろ過機等)の設置や他系統との連絡など を検討する。 地下水や湧水等を使用している中小規模水道等では、特にこのような水源水質の変化 に留意し、対策を検討する。 2)構造物等の耐震化 (1) 地盤の液状化対策、崩落対策等 地盤の液状化等に対して、基礎地盤の耐力、杭基礎等の強度が不足する場合、地盤改 良や杭基礎の補強、地下水位の低下等の対策を検討する。 施設周辺の斜面・法面の安定性が計算の結果、確保できず、地盤崩落により二次災害 のおそれや水供給に支障があると想定される場合、斜面・法面の補強等の対策を行う。 山間部を造成して施設用地を確保していることが多い中山間地域の水道施設では、特 に地盤崩落等に留意して対策を検討する必要がある。

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(2) 土木構造物、建築構造物の耐震化 土木構造物については、耐震診断により構造的な強度が不足する場合、底版や側壁、 頂版等の増し打ち、耐震壁の設置等の補強対策を行う。 建築構造物についても同様に、ブレースおよび耐震壁の設置等の補強対策を行う。 構造物からの漏水や目地等からの地下水の浸入により、設備等の水没のおそれがある 場合、目地の補強を含めて躯体の漏水防止対策を行う。 (3) 場内連絡管路の耐震化 耐震性の低い埋設管路等については、管路の耐震化と同様に、耐震性の高い管路に更 新する。 構造物との取り合い部の管路は、地震による地盤の沈下量等に十分対応できる伸縮可 撓管の設置等を行う。 架空部の管路は、補強等により管体を十分に支持する。 3)設備の耐震化 設備は地震による移動、転倒により破損が生じないように、アンカーボルト等により 構造物に強固に固定する。フロッキュレーター、傾斜板、汚泥かき寄せ機等の水中機械 については地震による水面動揺等により脱落等が生じないように構造物に強固に固定す る。 ケーブル類は構造物との取り合い部、構造物の目地部、盤との接続部など、地震によ る変位が生じやすい部分に余長を持たせる。 設備配管については、場内連絡管路と同様に、構造物との取り合い部等において、伸 縮可撓管の設置等を行う。 4.2.2 管路の耐震化 1)管路(埋設管路)の耐震化 管路(埋設管路)は、耐震性の低い管種・継手の管路を耐震性の高いものへの更新を 検討する。 液状化の可能性がある地区等、管路被害が発生し易い地区の管路はさらに優先度を高 める。 2)管路付属設備の耐震化 管路付属設備は、弁室の強化、弁室との取合部における伸縮可撓管等の設置、フラン ジ部の強化、継ぎ足し配管の空気弁等の固定、空気弁のウォーターハンマー対策等につ いて検討する。 3)水管橋等の耐震化 水管橋は、上部工の強化や支承部の伸縮継手の耐震性確保、落橋防止措置、下部工・ 基礎部の強化、伸縮可撓管の設置等について検討する。橋梁添架管は、支持部の補強、 伸縮管の設置等について検討する。

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[解説] 耐震性の低い管路、管路付属設備、水管橋等について、更新に合わせて、あるいは補 強により耐震化する。 1)管路(埋設管路)の耐震化 (管路の耐震化) 管路(埋設管路)について、基幹管路、重要給水施設管路、破損した場合に重大な二 次災害を生ずるおそれが高い管路、応急復旧が困難な管路(軌道横断、河川横断、緊急 輸送道路等)を優先して、鋳鉄管、石綿セメント管、硬質塩化ビニル管(TS 継手)等 の地震による被害が多い管種・継手を中心に耐震性の低い管路を耐震性の高い管路に更 新する。 (管路被害が発生し易い地区の耐震化) 液状化の可能性がある地区・路線、盛土地区、活断層の近傍、地滑りが想定される箇 所、地層が変化する箇所、不等沈下が予想される箇所等については、さらに優先度を高 めて耐震性の高い管路への更新および必要に応じて十分な変位量・伸縮量を有する伸縮 可撓管の設置等を行う。 また管路布設に使用した埋戻し土が液状化しないように、必要に応じて埋戻し土の適 切な締固め、石灰やセメント系の固化剤添加による固化等を行う。 なお、中山間地域では管路は盛土道路に布設されていることが多く、基幹管路であっ てもバックアップ機能がない単一ルートのものが多いため、このような管路についても、 優先度を高めて耐震性の高い管路への更新を行う。 2)管路付属設備の耐震化 仕切弁、空気弁、消火栓等の付属設備は、更新あるいは補強により、また管路の更新 に合わせて弁室の強化、弁室との取合部における伸縮可撓管等の設置、フランジ部の強 化、継ぎ足し配管の空気弁等の固定、ウォーターハンマーに対する空気弁(中実形状の フロート弁体、およびフロート弁体案内、遊動弁体が強化されたもの)の更新等を行う。 3)水管橋等の耐震化 水管橋は耐震診断により耐震性が低いと判定されたものについて、上部工の強化や支 承部の伸縮継手の耐震性確保、落橋防止措置、橋台基礎の河川護岸からの独立を含めた 下部工・基礎部の強化、所要の変位量・伸縮量を有する伸縮可撓管の設置等を行う。 橋梁添架管は、道路橋の耐震性を確認した上で、支持部の補強、伸縮管の設置等を行 う。 また構造物との取り合い部の管路や伏越し部の管路についても、所要の変位量・伸縮 量を有する伸縮可撓管の設置や構造的な強化を行う。

図 1  耐震化計画の位置付け  (本指針と他の指針・基準との関係)  水道施設の耐震化に関しては、「水道施設耐震工法指針・解説  2009 年版  公益社団法 人  日本水道協会」等の指針・基準がある。耐震化対策については、本指針に基づき、 水道施設全体の耐震化を検討した上で、上記の指針・基準により個別の施設・管路を対 象に耐震診断を行い、必要に応じて耐震工法等を検討して、耐震化整備を行う。  応急対策に関しては、「地震等緊急時対応の手引き  平成 25 年 3 月改訂  公益社団法 人  日本水道協会」
図 2  耐震化計画策定フロー  ※本図は耐震化計画の全ての検討事項を示しているが、耐震化効果等を考慮して当面優先実施する対策を選定し、それに必要な事項のみを部分的に検討してもよい。 ※計画書の構成については、本図を参考に住民や関係者への説明、事業予算区分などを考慮して設定してよい。 START・水道施設 (施設、管路等の状況)・想定地震等想定地震、震度、加速度、速度、液状化危険度他のライフライン等の想定被害・災害対策施設等 (避難所、医療施設、緊急輸送道路等)・水道経営 (財政の状況)2.1 施設の耐震診
図 4  耐震化対策と給水状況の関係  1)応急復旧期間  水道事業において目標とする応急復旧期間は、被災者の不安感の軽減、生活の安定を 考慮して2週間以内とすることが望ましいが、水道施設の耐震化の状況および計画期間 において実施できる耐震化整備量等を踏まえて水道事業者において適切に定める。  また、病院や避難所、防災拠点等の重要給水施設については、医療用水、被災者の飲 料水・生活用水等をできる限り早期に確保する必要があるため、応急復旧期間は1週間 以内とすることが望ましいが、耐震化の状況等を考慮して水道事
表 3  応急給水量等の目標設定例  地震発生  からの日数  目標水量  住民の水の 運搬距離  (都市部の例)  主な給水方法  備考(水用途)  地震発生~  3 日まで  3 ㍑/人・日 概ね 1km 以内 *1 拠点給水(耐震性貯水槽等)、 運搬給水を行う。  飲料等  7 日 *2 20~30 ㍑/人・日*3   概ね 250m 以内  配水本管付近の消火栓等に仮設給水栓を設置して仮設給水 を行う。  飲料、水洗トイレ、洗面等  14 日  被災前給水量  (約 250 ㍑/人・日) 概ね 10
+2

参照

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