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著者 下村 誠

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(1)

損失補償要否基準における「経済的に有益な利用 (economically beneficial use)」概念に関する一 考察 : アメリカの土地利用規制に関する裁判例を 中心として

その他のタイトル A Study of "Economically Beneficial Use"

Concept in "Taking Issue" : Focusing on Land Use Regulation Decisions in America

著者 下村 誠

雑誌名 關西大學法學論集

巻 53

号 3

ページ 566‑608

発行年 2003‑09‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/12160

(2)

は じ め に

第 ー

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第 一 魯 十

規制的収用の肘史

1

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且IJ

利用

﹁経済的に有益な利川﹂

連邦最高故判所レヘルての﹁経済的に

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益 な

利 用

﹂ 連邦控両裁判所レヘルての

学 説 と パ ラ ソ ロ 判 決

﹁経済的に付益な利川﹂

﹁ 分 母 間 哨 知

﹂ 連邦最高裁判所レヘルての﹁分母間迎

L

連邦控訴裁判所レヘルての﹁分母間題﹂

第 ぷ 叫 連 邦 最 高 故 刊 所 の 阿 答 む す ひ

︵パラソロ刊決とタホー湖刊けい︶

( e c o n o m i c a l l y   b e n e 要

i a l u s e )

アメリカの土地利用規制に関する裁判例を中心として

損失補償要否枯準における

﹁経済的に有益な

概念に関する

‑L

一 ヽ . ︑

.

‑ 1 1  

I i / i

,

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考察

(3)

立するのかに関して︑活発な議論がなされている︒ の意味が問われる︒ブレナン連邦最高裁判事は︑補償を要するのは︑公用収用権を用いた典型的な剥奪に限られず︑

(2 ) 

規制によっても収用は起こるとし││'いわゆる規制的収用

( r e g u l a t r o y t a k i n g )

︑次のように述べた︒﹁財産所 有者にしてみれば︑もしどちらにしろ彼からすべての経済的に有益な利用を奪う効果を持つならば︑彼の土地が公用

( 3 )  

収用されるかあるいは規制によって現状維持を命ぜられるかは問題ではないかもしれない﹂と︒典型的な剥奪と規制 的収用の﹁本質的類似性﹂を指摘したのである︒

アメリカでは︑この補償要否の問題を﹁収用問題

( t a k i n g i s s u e )

﹂と呼び︑換言すれば︑いつ﹁規制的収用﹂が成 近年︑連邦最高裁は︑収用問題に対して積極的に判断を下しており︑徐々に補償要否基準は整理されつつある︒詳

細は︑次章以下に譲るが︑なかでも一九九二年のルーカス判決は︑収用請求の中から一定の条件を充たす場合は原則

損 失

補 償

要 否

基 準

お に

け る

﹁ 経

済 的

に 有

な 益

利 用

﹂ 概

念 に

関 す

一 る

考 察

のために収用されない﹂と規定する ある︒これはわが国に限った問題ではない︒

憲法二九条三項は︑﹁私有財産は︑正当な補償の下に︑これを公共のために用ひることができる﹂と規定する︒こ

(l ) 

こでいう﹁用ひる﹂とは︑財産権の剥奪だけでなく︑各種の制限も含むというのが通説である︒しかし︑どのような 財産権制限には補償が要り︑どのような財産権制限には不要なのかという﹁補償要否の問題﹂は︑依然として難問で アメリカに目をむけると︑

アメリカ合衆国憲法修正五条は︑﹁⁝⁝何人も︑正当な補償なしに私有財産を公共の用

︵州に対しては︑修正一四条を通して適用される︶︒ここでも︑﹁収用

( t a k e )

は じ め に

︵ 五

六 七

(4)

し て

い る

︒ ﹁

少 な

く と

も ︑

アメリカの規制的収用の歴史は︑

(8 ) 

まず︑主題に関する限りで規制的収用の歴史を概観する︒

第 一 章 規 制 的 収 用 の 歴 史

を明らかにしていくことを目的とする︒

第 五 三 巻 三 号 として補償が必要であると判示し︑収用問題に一石を投じた

︵いわゆる︑カテゴリカル・ルールの採用︶︒同ルール は二段階の基準からなる︒まず①規制が︑財産所有者の﹁経済的に有益な利用﹂をすべて奪う場合︑公益と関係な

<補償が要求される︒しかしながら︑②規制がニューサンスおよび財産法の背景にある諸原則と一致する場合︑す

(5 ) 

なわち内在的制約を規制したにすぎないならば補償を拒むことができる︑というものである︒しかしながら︑﹁経済

(6 ) 

的に有益な利用﹂は︑未だ連邦最高裁が定義していない概念である︒

本稿は︑財産権制限の中でも土地利用規制に焦点を当て︑この補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念 本稿は︑著者の修士論文である﹁アメリカ合衆国における規制的収用の補償要否基準﹂を改題し︑修正したもので

あ る

( 9 )  

一九二二年のマホーン判決にさかのぼる︒ここでホウムズ判事は有名な言葉を残 一般的原則は︑財産はある程度まで規制され得る一方で︑もし規制が行き過ぎの場合︑収

( 1 0 )  

用であるとみなされるだろう﹂である︒そして彼は︑当該財産は規制後も所有者の所有のままで奪われてもいないし︑

規制は公共の用のためでもないので収用は起こっていないというブランダイス判事の見解︵反対意見︶を採用しな かった︒したがって︑物理的剥奪がなくとも︑また公共の用でなくとも︑規制によって収用が成立することが確認さ

関法

八 四

︵ 五

六 八

(5)

べて奪うかどうかという基準である︒ そのようななかで︑ 約五 0

年 後

八 五

︵ 五

六 九

( 1 2 )  

れた︒ここに規制的収用なる概念が誕生したのである︒しかしながら︑どの程度をもって﹁行き過ぎ﹂と判断するか︑

( 1 3 )  

言いかえれば︑補償不要の単なる規制と補償を要する規制︵規制的収用︶とを判別する基準は未だ見出せずにいた︒

( 1 4 )  

ペン・セントラル判決において︑連邦最高裁は︑補償要否を判断するいかなる公式

( s e t

f o

r m

u l

a )

ないとし︑本質的にその場限りの事実に基づく審理に徹する旨を再度述べた︒そして︑補償要否の考慮要素として︑

① 政 府 行 為 の 性 格

② 規 制 の 経 済 的 影 響

③ 投 資 に 裏 付 け ら れ た 期 待

( i

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t ,  b

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k e

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n s

)  

( 1 5 )  

程度を挙げる︒

うカテゴリーに該当すれば︑公益の考慮の必要なく自動的に補償を要するという原則を打ち立てたのである︒

の侵害

( 1 6 )  

その後も重要判決がいくつか出されたが︑全体としてみれば︑必ずしも一貫しているとは言えない︒しかしながら︑

( 1 7 )  

ペン・セントラル判決での比較衡量基準が定着しつつあったと言っていいだろう︒

一九九二年に上述のルーカス判決が出され︑規制が﹁経済的に有益な利用をすべて奪う﹂とい これまで連邦最高裁が判断を下した補償要否に関する事例は︑以下の三つのシチュエーションに整理できると考え

る︒すなわち︑①永久的物理的占有を伴う場合︵永久的物理的占有を伴う開発負担を課す場合を含む︶②経済的

( 1 8 )  

に有益な利用をすべて奪う場合︑③上記から洩れる場合︑である︒例えば︑①には︑ロレットー判決がある︒①の

( 1 9 )  

括弧書きにはノラン判決とドラン判決がある︒これら物理的占有に関わる事例は︑多くの規制的収用の中から容易に

( 2 0 )  

識別できるだろう︒しかしながら︑ロレットー判決自身が認めるように同判決の射程は狭い︒また補償が必要とされ

( 2 1 )  

るのは︑物理的占有に関わる場合だけではないので次なる基準が必要になる︒すなわち﹁経済的に有益な利用﹂をす

損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察

(6)

ま ず

︑ ( 1 )  

ルーカス判決を詳細に見ておく︒ ルーカス判決 第一節連邦最高裁判所レベルでの﹁経済的に有益な利用﹂ 第二章

﹁ 経 済 的 に 有 益 な 利 用

現在アメリカでは︑補償要否の判断にあたって︑多くの裁判所は︑まず①ルーカス判決での﹁カテゴリカル・

ルール﹂に該当するかどうかを吟味し︑該当しないならば︑つづいて②ペン・セントラル判決での比較衡量基準を

( 2 2 )

︵2 3 )

 

適用するといわれている︒いわば︑カテゴリカル・ルールは︑永久的物理的占有原則に続く第二の﹁ふるい﹂の役割 しかし︑﹁経済的に有益な利用﹂概念が不明確なままでは︑有効な﹁ふるい﹂として働かない︒本稿において﹁経

済的に有益な利用﹂概念を明らかにしていこうという試みもこのような理由からである︒

事 ︿

実 の

概 要

一九八六年に上訴人ルーカスは︑

を建てる目的で二区画の土地を購入した︒その時ルーカスの土地利用を妨げる法律はなかった︒

( 2 4 )  

は︑沿岸管理法

( B

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e n

t   A

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)  

のであった

︵経過措置及び適用除外を設けていなかった︶︒彼は︑同法を所管するサウスカロライナ州沿岸委員会を

相手取りつぎのように主張し訴訟を提起した︒すなわち︑もしその法律が正当なポリス・パワーの行使であったとし を果たしているのである︒

関 法 第 五 三 巻 三 号

八 六

一九八八年に州議会

︵ 五

O )

サウスカロライナ州沿岸島に近隣地域の住宅同様︑ 一世帯用住宅

を施行した︒同法は住宅建築というルーカスの土地利用を妨げるも

(7)

︿ 法

廷 意

見 ﹀

ま ず

スカリア判事が執筆し︑

レーンキスト首席裁判官︑ホワイト︑オコナー︑トーマス判事が加わった︒

( 2 5 )  

スカリア判事は︑本件を解決するために﹁有害利用基準﹂を適用することは誤りであるとし︑規制的収用を 判断する際に用いられてきた﹁本質的にその場限りの事実に基づく審理﹂を適用することなく︑少なくとも規制によ り促進される事件特有の公益の審査なしに補償を必要とする二つの規制行為カテゴリカル・ルールを例示し たのである︒その二つのカテゴリカル・ルールとは︑①財産への物理的侵害を所有者に強いる規制と②土地の経 済的に有益な利用あるいは生産的な利用をすべて否定する規制である︒②の根拠は︑土地所有者の立場に立てば︑有

( 2 6 )  

益な利用をすべて奪うことは物理的侵害に等しいからである︒そして︑本件の規制は②に該当する事例であるとした︒

また︑過去の有害利用基準が適用された事例において︑規制が上訴人の土地の価値をすぺて奪ったと主張されていな

( 2 7 )  

かった点を指摘し︑本件に有害利用基準を適用することは早計であるとした︒

損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察

裁量上訴が認められた︒ 効果を考慮することなく補償の義務を免れると判示した︒ ても︑その建築禁止は自分から土地の経済的に有益な利用をすべて奪うので︑正当な補償の支払いを要求する修正五

州の第一審裁判所は︑その禁止はルーカスの土地を無価値にしたと認定し︑

対し州最高裁は︑

八 七

ルーカスが同法の有効性について異議を唱えなかったことを理由に沿岸地帯での新築行為は有害で あるという﹁争いのない事実﹂を受け入れる義務があると判示した︒そして先例に照らして︑規制が公的ニューサン

スと同様に財産の﹁有害利用﹂を阻止することを予定しているときは︑収用条項のもとで︑財産価値に与える規制の 条及び修正一四条のもとで﹁収用﹂に該当する︑と︒

︵ 五

七 一

︱ 二

0 万ドルの補償を認めた︒それに

(8)

ブラックマン判事が反対意見を書いている︒ 検討していないので差戻に同意した︒ 次にスカリア判事はニューサンスに目をむけ︑所有者の土地に論理的に内在する要求として︑禁じられた利用の利 益がもともと土地所有者の権利の一部ではないと示された場合︑たとえ経済的に有益な利用をすべて奪う規制であっ

ても支持されると述べた︒そして︑

結論として︑上訴人ルーカスの建築行為がサウスカロライナ州においてニューサンスに該当するかどうかを確認す

︿ 同

意 意

見 ﹀

第 五 三 巻 三 号

︵ 五

七 二

ニューサンス例外に該当するかどうかを州が立証しなければならないとした︒

ケネディ判事は﹁︻当該︼沿岸地が開発規制のために︑すべての価値を失ったという⁝⁝認定に疑問を抱く﹂

(at

10 34 ) 

という微妙な立場に立った︒そして彼は︑財産からすべての価値を奪うとして規制的収用が申立てられた場合︑

その審査基準は︑規制行為が合理的な投資に裏付けられた期待を損なうかどうかでなければならないと主張した︒

したがって︑州最高裁は︑

︿ 反

対 意

見 ﹀

彼 は

ルーカスの新築行為が州規制のもとで所有者の合理的な期待であったかどうかを詳しく

カテゴリカル・ルールを設けることに断固反対の立場を示したが︑仮にカテゴリカル・ルールを支持すると

しても︑本件において経済的に有益な利用はすべて奪われていないと主張する︒なぜなら︑彼曰く︑上訴人ルーカス

は﹁ピクニック︑水泳︑テントでのキャンプあるいは移動可能なトレーラーでの生活﹂

(at

10 44 ) 

価値がまだ残っているからである︒そして︑これらの利用は︑州裁判所において経済的価値を持つと認められてきた

( 2 8 )

︵2 9

)  

と し ぅ

ケネディ判事が同意意見を書いている︒ る作業が十分ではないとして破棄差戻した︒ 関法

\  

J

という経済的利用

(9)

利用﹂が残されている︒その点をふまえ︑連邦最高裁は︑開発許可申請をすることにより﹁合理的な投資に裏付けら

( 3 5 )  

れた期待﹂を追求し得ると判示し︑財産価値の破壊というアギンズの主張を退けた︒

次にペン・セントラル判決をみてみよう︒同判決は︑

セントラルターミナル上に五 0 階の建増し許可申請をしたが︑市の歴史的建造物保存委員会により否定された事例で

ある︒主題に関して︑ ペン・セントラル側は︑ ターミナル上に建築する権利が否定されたので、その部分 d~ 工中権

(a ir i  r gh ts )

のすべての利用が否定されたと主張したが︑連邦最高裁はそのように文字通り理解することは正確

損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察 アギンズが望む土地利用は認められなかったものの︑

八 九

アギンズ判決とは︑

た︒条例のもとでも︑五軒まで建築可能であったが︑

破壊されたと主張したのである︒

この点に関する連邦最高裁の判断は非常に簡潔である︒すなわち︑﹁条例は開発を制限するけれど︑上訴人の土地

( 3 4 )  

﹃最善の利用﹄を妨げないし︑所有権の基本的な帰属を消滅させもしない﹂というものである︒

一エーカーにつき一軒︑合計五軒の住宅建築という﹁最善の

( 3 6 )  

アギンズ判決によって引用されている︒同判決は︑

︵ 五

七 三

グランド めた事例である︒彼の土地は︑ (

2 )

 

ゾーニングによって︑ 一世帯住宅︑付属建物及びオープン・スペース利用に制限され ﹁経済的に有益な利用﹂概念が︑

( 3 0 )  

ルーカス判決以前に注目を浴びたのは︑アギンズ判決である︒ルーカス判決

自身も同概念を用いた先例として引用している︒同判決は︑特定財産への一般的なゾーニング法の適用が収用となる

のは︑①条例が実質的に正当な州利益を促進しない場合︑②所有者の経済的に有益な土地利用を否定する場合︑と

( 3 2 )  

し て

い る

( 3 3 )  

オープン・スペースの定めをもつゾーニング条例の︑文面上の違憲宣言及び逆収用で補償を求

いかなる許可申請もせず︑彼は条例によって財産価値が完全に

(10)

ば︑すべての収益が否定されたことになる

ではないとした︒なぜなら︑市は﹁移転し得る開発権﹂

ま た

第 五 三 巻

︱ ︱ 一 号

﹃収用﹄が起こった場合に﹃正当な補償﹄

しての利用を続け得るし︑上訴人は︑

レーンキスト首席裁判官反対意見脚注一三は非常に示唆に富んでいるので引用する︒

︵ 五

七 四

( 3 7 )  

の制度を設けていたからである︒そして︑すでにニューヨー

ク州の裁判所が︑この

TDR

を﹁有益

( v a l

u a b l

e ) ﹂と認定している点をあげる︒すなわち︑﹁これらの

︻ 移

転 し

得 る

の代わりには到底なり得ないが︑それでも疑いなく同権 利は︑法律が上訴人に課したどんな財政的負担も軽減する︒その理由で︑規制のインパクトを計る際に︑考慮される

( 3 8 )  

べきである﹂と︒そして︑脚注三六において次のように述べたのである︒﹁⁝⁝将来︑状況が一変し︑ターミナルが

﹃経済的に有益

( e

c o

n o

m i

c a

l l

y

v i a b

l e )

﹂でなくなったということを上訴人が立証し得るならば︑上訴人は救済を得

( 3 9 )  

る︑と口頭弁論において市側は認めた﹂と︒

ターミナルビルの歴史的建造物への指定によっても︑上訴人は過去六五年間行ってきた財産利用駅舎と

ターミナルから利益を得ているだけでなく︑投資に対する﹁合理的な収益

( 4 0 )  

( r

e a

s o

n a

b l

e   r

e t u r

n ) ﹂も得ているという点が強調された︒

財産所有者が︑財産上のすべての合理的な収益を否定された場合︑唯一収用は起こるという原則には困難な概念 上及び法律上の問題が潜んでいる︒当法廷は︑様々な種類の財産︵農場地︑住宅財産︑商業及び工業地域︶

﹁合理的な収益﹂を定義しなければならないだけでなく︑吟味されるべき特定財産ユニットを定義しなければな らない︒たとえば︑本件で︑もし被上訴人が﹁空中権﹂のペン・セントラルによる利用を制限したとみなされれ なかった︒したがって︑当法廷は︑問題は規制が﹁所有者の財産利用上に不当に過酷な影響﹂を持つかどうかで

開発︼権は︑もし

関法

︵参照マホーン判決︶︒当法廷は︑意見中で︑これらの問題を解決し 九〇

(11)

こ と

に な

る ︒

し ︑ (

3 )  

あると解しているようでもあり︑また︑問題はペン・セントラルが﹁投資に対して

どうかであると解しているようでもあり︑はたまた︑問題は︑歴史的建造物が﹁経済的に有益﹂であるかどうか

( 4 1 )  

であると解しているようでもある︒

ここで整理しておきたい︒アギンズ判決とルーカス判決における﹁経済的に有益な利用﹂を比較検討してみる︒

まず両判決が用いる﹁経済的に有益な利用﹂という文言自体は同じである︒ルーカス判決はアギンズ判決を引用し

( 4 2 )  

て い

る ︒

最大の相違は︑

ルーカス判決はある財産ユニットにおける﹁すべて﹂の経済的に有益な利用に着目しているのに対

アギンズ判決はそうではない点である︒文字通り解すれば︑仮にある土地に一 0 種類の経済的に有益な利用が存

在するならば︑

ルーカス判決は一

0 種類すべてを︑

一 見

す る

と ︑

し か

し な

が ら

アギンズ判決は一種類でも奪えば︑それぞれの射程範囲内に入る

アギンズ判決の方が財産権保護に厚いように見える︒

ルーカス判決において注目すべき点は︑経済的に有益な利用がすべて奪われたと解したスカリア判

事法廷意見に対する︑ ブラックマン判事の反対意見である︒彼は︑ ルーカスが最も重要な権利の︱つである﹁第三者

を排除する権利﹂や﹁土地を譲渡する権利﹂を未だ持っているし︑﹁︒ヒクニックができるし︑水泳︑テントでのキャ ンプあるいは移動可能なトレーラーで生活することができる︒その唯一残された経済的利用がレクリエーションある いはキャンプである場合︑土地は経済的価値を持つ︑と州最高裁はたびたび認めてきた﹂と述べ︑本件において経済

損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察 つまり︑明確な回答はなかったのである︒

︵ 五

七 五

﹃合理的な収益﹄﹂を得るか

(12)

的に有益な利用はすべて奪われていないと主張する︒そうすると︑

ちはブラックマン判事が例示した権利や諸利用を﹁経済的に有益な利用﹂とはみなしていないことになる︒したがっ

( 4 3 )  

て︑法廷意見がいう﹁経済的に有益な利用﹂概念は︑反対意見がいうそれに比べて限定的で狭いものといえるだろう︒

ブラックマン判事が︑法廷意見がいう﹁経済的に有益な利用﹂とは﹁最有効利用﹂︵ここでは一世帯用住宅建築とし

( 4 4 )  

のことだと批判するのももっともである︒

て の

利 用

またスカリア判事は︑カテゴリカル・ルールの射程に関して全部収用の事例だけでなく部分収用の事例への適用も

( 4 5 )  

ほのめかしており︑﹁すべて﹂という文言は文字通り厳格なものではないようである︒

もう︱つの相違は︑公益の考慮についてである︒アギンズ判決は︑所有者の経済的に有益な土地利用を否定する場

合︑ゾーニング法の適用は収用となる旨述べる︒しかし︑その直後に﹁いつ収用が起こるかを判断する明確な基準は

( 4 6 )  

ないので︑問題は︑必然的に︑公益と私益の比較衡量を要する﹂と述べている︒

一方ルーカス判決は︑

ある︒たとえば︑結局公益を考慮することになる︑

ら︑この批判はやや的外れで︑これこそがスカリア判事の真の目的なのである︒すなわち︑彼の意図は補償要否の判

断におけるこれまでの規制目的重視を打破することにあったのである︒実際に︑

( 4 8 )  

解 さ

れ た

以 上

か ら

益な利用をすべて奪うとしても︑ 関法

第 五 三 巻 三 号

︵ 特

に レ

ク リ

ニューサンス例外は非常に限定的に スカリア判事をはじめ法廷意見に加わった判事た

カテゴリカル・ルールとして︑公益の審査を除外したのである︒しかしながら︑経済的に有

ニューサンスに該当する場合には補償不要という例外を設けた︒この点には批判が

( 4 7 )  

カテゴリカル・ルールの名に値しない︑などである︒しかしなが

ルーカス判決がいう﹁すべて﹂という文言は︑文字通りの厳格な意味ではないということ

︵ 五

七 六

(13)

ズ判決を引用し︑﹁州の行為が土地所有者のすべてあるいは実質的にすべての経済的に有益な財産利用を否定するか

どうかは︑請求者への経済的影響及び規制が投資に裏付けられた期待を侵害する程度﹂に注目すぺきであると判示し

た︒また︑この審査に必要なのはその場限りの事実に基づく審査であり︑法への事実の当てはめに他ならないとも判

損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察

裁 判

所 は

まず︑囚

されている︒ (

1 )

  それでは︑連邦控訴裁判所は︑このカテゴリカル・ルールをどのように理解したのかを見ていきたい︒ ニ つ

( 4 9 )  

エーション利用のようなものは含まれない︶︑

ルーカス判決においても公益の審査が全く行われない訳ではなく︑た

だカテゴリカル・ルールであるために︑例外であるニューサンスの範囲はこれまでに比べ狭く解されると言えるだろ

ルーカス判決以降︑連邦控訴裁判所レベルにおいて︑﹁経済的に有益な利用﹂概念に基づく請求がなされ解釈

d e

v e

l o

p m

e n

t )

 

( 5 0 )  

リ ゾ リ ュ ー シ ョ ン

・ ト ラ ス ト の 事 例 で あ る

︒ 本 件 は

︑ 住 居 計 画 的 一 体 開 発

( r e s

i d e n

t i a l

p l

a n

n i   u

t  

の許可期限の満了日を当初一九九 0 年八月八日であると郡の委員会から合弁会社に通知されていたが︑

条例の再解釈がなされ︑満了日を一九八五年七月一日と通知されたため︑この許可期限の短縮は同社の有益な財産利

用のすべてを奪うとして補償を求めた逆収用訴訟である︒

一般論として︑所有者の経済的に有益な利用を奪うゾーニング法の適用は収用になると判示したアギン

第二節連邦控訴裁判所レベルでの﹁経済的に有益な利用﹂

︵ 五

七 七

(14)

と判示した︒

第 五 三 巻 三 号

関法

示した︒合弁会社の財産は︑開発許可を受けていた当時︑

︵ 五

七 八

例の再解釈による開発許可期限の満了後六

0

0 万ドルに減少した︒さらに合弁会社は八

0

0 万ドルをすでに投資して

いた︒裁判所は︑州の行為は同社の投資に決定的な経済的影響を引き起こし︑﹁投資に裏付けられた期待﹂を完全に

破壊したとして収用を認めた︒

( 5 2 )  

フロリダ・ロックの事例は︑土地所有者による湿地での石灰石の採掘許可申請に対する陸軍工兵隊

( A r m y

C o

r p

s   o

f   E n g i n e e r s )  

裁 判

所 は

の不許可を収用であるとして︑ タッカー法のもとで訴訟を提起した事例である︒

ペン・セントラル判決に依拠し︑土地所有者への規制による経済的影響は﹁規制の賦課によって生じた

( 5 3 )  

公正な市場価格の変化﹂によって計られるべきと判示した︒

本件下級審では︑不許可とされる以前一エーカーにつき一万五

0

ドルの価値があった土地が︑不許可後一エー 0

カーにつき五

0

0 ドルの価値しかなくなり︑九五パーセントの価値減少があったと認定された︒そして︑

決にしたがって︑ ルーカス判

カテゴリカルな収用として扱った︒しかし︑控訴裁判所は︑不許可後一エーカーにつき五

0

0 ド

の価値しかなくなったという事実認定を拒み︑差戻した︒

( 5 4 )  

cクレイジョン・プロダクションの事例は︑牧場経営者である土地所有者が︑財産上での狩猟の権利を制限する

( 5 5 )  

ライセンス制度は経済的に有益なすべての財産利用を奪うと主張した事例である︒

裁 判

所 は

( B )  

アギンズ判決を引用し︑﹁︻ライセンス制度は︼控訴人の

﹃ 土

地 全

体 ﹄

の有益なすべての利用の破壊とは

( 5 6 )  

ならない︒なぜなら︑控訴人は︑︻狩猟ができないとしても︼放牧︑農場︑その他の家畜業に用い得るからである﹂

一 七

0

0 ドルの価値を有していたのに対し︑ゾーニング条

九 四

(15)

ニュー・ポート・ラーゴ

( 5 7 )  

︵ 以

下 N P L ) のための賃借契約は一九八二年七月一四日に満了することになっていた︒土地購入時︑同財産は空港利用という条件

付きで二世帯用住宅利用

( r e s i d e n t i a l

d u p l e x

RU ,    u 以下

2

s e ,  

ンロー郡の委員会は︑当該財産を

RU

,2

から私的な空港利用

( p r i v a t e a i r p o r t   u s e ,  

以下

P A ) ゾーニング局の提案を承認した︒そこで土地所有者が︑リゾーニングは補償を欠く収用であると主張したのが本件で 主題に関して︑本件は︑州裁判所と連邦地裁とで異なった判断をしている︒すなわち︑州裁判所は︑当該財産上

﹁認められる利用は︑私的な空港利用だけである︒当該財産に関するリゾーニングは︑⁝⁝所有者からいかなる合理

( 5 8 )  

的な利用をも奪うだろう﹂と判断したのに対し︑連邦地裁は﹁経済的に有益な利用﹂はすぺて奪われていないと判示 裁判所は︑リゾリューション・トラスト判決を引用し︑州の行為が土地所有者から経済的に有益な財産利用をすべ

て奪ったかどうかを判断するために︑規制の経済的影響と規制が投資に裏付けられた期待を侵害する程度を審査する

と 述

べ た

︒ まず経済的影響に関して裁判所は︑

として販売︵九八万ドル︶するよりも︑

九 五

の事例は以下の通りである︒

NPL は空港利用のための土地賃借契約

( b r e a k w a t e r )

  の土地を一九七九年︱一月一日に購入した︒しかし空港利用

にゾーニングされていた︒

一 九

0 年九月︱︱日︑

モ にリゾーニングする NPL

社は私的な空港︑造船台︑ビーチクラブ︑ボート用の保管庫の建築とい う利用が残っていると判示した︒また︑裁判所は市場価格にも言及し︑当該財産を

RU

,2

にゾーニングされた未開地 P

A にゾーニングされた土地として販売(︱二八万ドル︶する方が利益にな

損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察

したのである︒以下︑連邦地裁判決をみていく︒ あ

る ︒

( a i r p o r t   l e a s e )  

( D )  

に服するビーチフロント

︵ 五

七 九

(16)

控訴裁判所は︑連邦地裁判決を支持している︒

( 5 9 )  

フロント・ロイヤルの事例は︑土地所有者の土地がヴァージニア合併裁判所(Virginia

A n

n e

x a

t i

o n

  C o u

r t )  

命令によって郡に吸収合併され︑かつ同命令は郡に対して土地所有者に下水道処理事業を期限内に提供するよう命じ ていたにもかかわらず︑郡は義務を果たせなかったので︑事業提供の失敗は経済的に有益な利用をすべて奪うとして 違憲の収用を申立てた事例である︒土地所有者は︑土地の購入価格一

0 万七

0 0

0 ドル及び工業利用のための準備に

要した費用三 0 万ドル︑合わせて四 0

万七 0

0 0

ドルを既に費やしていた︒

裁判所は︑まず一般論として︑特定の規制がアギンズ判決の二つのカテゴリーのうちの︱つに該当するかどうかは︑

その場限りの事実に基づいて判断すると判示した︒そして︑投資に裏付けられた期待について︑土地所有者が土地を 購入した当時︑未だ裁判所による下水道処理事業提供命令は出されていなかったので︑土地所有者は下水道を提供さ れるという期待を持ち得ないとした︒また︑土地所有者は工業利用目的で土地を購入し下水道の提供失敗により同利 用ができなくなったと主張するが︑近隣土地所有者同様︑自費で下水道を引き︑後に費用を郡に請求することによっ

( E )  

に裏付けられた期待は侵害されていないとされた︒ での販売を挙げている ると判示した︒その他の有益な利用として︑当該地域にすでに住宅を所有している者に対するレクリエーション目的

次に︑投資に裏付けられた期待に関し裁判所は︑

N P

L の財産購入時の投資に裏付けられた期待を投機目的の土地

購入であったと認定した︒そして︑

N P

L は土地購入後︑実際に土地を売ったこともないし売買契約を交わしてもい

ない点および

RU

,2

としての販売はできなくなるとしても︑

P

A としての販売で十分な利益を上げ得る点から︑投資

関法

第 五 三 巻 三

︵土地所有者本人によるレクリエーション利用でない点に注意︶︒ 号

九六

︵ 五

O )

(17)

( 6 1 )  

マサチューセッツ州には規制後の残余利用に着目する伝統があったことを指摘する︒

次に﹁経済的に有益な利用﹂を︵すべて︶奪ったシチュエーションに該当するかどうかの判断も︑

み重ねであるという点である︒さらに﹁投資に裏付けられた期待﹂の侵害程度を重視している点も指摘できる︒前述

のリゾリューション・トラスト判決は︑﹁州の行為が土地所有者のすぺてあるいは実質的にすぺての経済的に有益な

財産利用を否定するかどうかは︑請求者への経済的影響及び規制が投資に裏付けられた期待を侵害する程度﹂に注目

すべきと判示する︒両者は広い意味での経済的影響とも言える︒ルーカス判決においても︑同意意見においてケネ

ディ判事が︑財産からすべての価値を奪うとして規制的収用が申立てられた場合︑その審査基準は︑規制行為が合理

損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察

た と

え ば

︑ セランドロ教授は︑

のように組み込まれたかによるものだろう︒ の市場価格の減少があったかを審理するアプローチがある︒これは︑ な経済的利用が残されているか (

2 )  

九 七

て工業利用は可能であると判示した︒実際に︑郡の下水道処理事業がなかったとしても︑その土地は未だ四 0 万五〇

0

0 ドルの価値を有しており︑価値減少は一パーセントにも満たない︒仮に適切に下水道処理事業を提供できていた

とした場合の価値は八一万ドルであり︑この場合でも価値減少は未だ五 0 パーセントでしかなく︑郡が当該土地に下

水道を引かなかったことにより︑土地所有者が経済的価値のすべてあるいはそれに近似する程度を奪われなかったと

( 6 0 )  

いうことは明らかであると判示した︒

連邦控訴裁判所判決を整理してみよう︒指摘できるのは︑まず①経済的﹁利用﹂に着目し︑規制後どのよう

︵残余利用︶を審理するアプローチと②経済的﹁価値﹂に着目し︑規制後どの程度

ルーカス判決がそれぞれの法域の州収用法にど

やはり事実の積

︵ 五 八 一

(18)

﹃投資に裏付けられた期待﹄

は︑期待概念がカバーする範囲が非常に狭いことにある︒彼は自問自答し︑期待概念のいう﹁期待﹂が購入あるいは し

て 引

用 ︶

ズ 教

授 は

に依拠しているとする︒しかしながら︑ ルーカス判決後の多くの裁判所がこの﹁投資に裏付けられた期待﹂基準を採用し審理を行っていると認め

ながらも︑同基準は︑

準が用いられている理由を︑

スカリア判事の﹁経済的に有益な利用すべての剥奪﹂基準よりも︑

( 6 4 )  

資に裏付けられた期待﹂基準のほうが︑士地所有者にとって勝訴しやすいからとする︒

一方エプスタイン教授によると︑

エプスタイン教授自身は︑同基準は不明確であり﹁われわれは

( 6 5 )  

というフレーズを徹底的に疑うべきである﹂と否定的である︒彼の同基準に対する不満

裏付けられた期待﹂ ( 1

)  

常に多くの裁判所が︑ 的な投資に裏付けられた期待を損なうかどうかでなければならないと明言している点を想起すぺきだろう︒実際に非

( 6 2 )  

ケネディ判事によって採用された基準を用いていると報告されている︒

ここでいう﹁投資に裏付けられた期待﹂は︑土地所有者が望んだ土地利用をいうのではなく︑﹁土地を購入した時 点での期待﹂であり︑﹁所有者の単なる一方的な期待てはなく︑客観的に合理的で︑適法な内容を持つもの﹂でなけ

( 6 3 )  

ればならないことは当然である︒

﹁経済的に有益な利用﹂がすべて奪われたかどうかを審理する際︑ 関法

第三節

第五三巻三号

へ の

依 拠

は ︑

︵ 五

八 二

︶ ルーカス判決が命じているのだろうか︒この点に関しては︑対立がある︒キャリー

スカリア判事によってきっぱりと拒絶されたと主張する︒そして︑非常に多くの裁判所で同基

スカリア判事もまた︑合理的な期待概念︵﹁投資に裏付けられた期待﹂と同義と

学説とパラゾロ判決

一部の連邦控訴裁判所が明言した﹁投資に

九 八

ケネディ判事の﹁投

(19)

ような地図が載せられたか︒道路は献納されたか︒ ②  労働によってのみ取得されるとすれば狭すぎ︑公益によって期待が頻繁にくじかれる危険を指摘する︒また︑規制が 服する期待は政府規制によって生み出されるという主張がまかり通るならば︑規制によっていくらでも期待をくじく

( 6 6 )  

ことができると指摘する︒

ともあれ︑多くの裁判所が﹁合理的な投資に裏付けられた期待﹂概念を用いていることは上述の通りである︒

として︑キャリーズ教授をして︑経済的に有益な利用が

( 6 7 )

︵6 8 )

 

た事例を紹介する︒リハードの事例である︒

四〇エーカーの湿地を相続したリハードは一世帯住宅の分譲開発を意図していたが︑リー郡の包括的土地利用計画

こ よ り

﹃ /

リハードの土地は資源保護地域

( R

e s

o u

r c

e P

r o

t e

c t

i o

n   A

r e

a )

 

有効なポリス・パワーの行使であると認めたものの︑同指定は彼の﹁合理的な投資に裏付けられた期待﹂を侵害する

として補償を求めた︒

裁判所は︑﹁土地所有者がすべてのあるいは実質的にすべての経済的に有益な財産利用を奪われたかどうかの問題

( 1

)

規制の経済的影響と

しなければならない﹂として︑具体的に次の八つの項目を挙げた︒

財産の歴史それはいつ購入されたか︒土地はいくらで購入されたか︒その土地はどこに位置しているか︒

権原の性格は何か︒土地の性質

( c

o m

p o

s i

t i

o n

)

①  を解くために︑事実認定者は

九 九

︵すべて︶剥奪されたかどうかの分析に最も有益と言わしめ

に指定された︒彼は︑同郡の指定行為自体は

( 2 )

規制が投資に裏付けられた期待を侵害する程度を分析

は何か︑また当初どのように利用されていたか︒

開発の歴史財産上に何が︑誰によって建てられたか︒それはどのように分類され︑誰に売られたか︒どの 損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察

︵ 五 八 一

︱ ‑ ︶

︳ー‑

ご 牧

(20)

ルの補償を求めた逆収用訴訟である︒ ( 2 )   ⑧  ⑦ 

第 五 三 巻 三 号 ゾーニングおよび規制の歴史どのように︑

いつ土地は指定されたか︒どのように利用が禁じられたか︒ど 州コモン・ローのもとでの土地所有者の合理的な期待は何か︒

州コモン・ローのもとでの近隣土地所有者の合理的な期待は何か︒

︵ 五

八 四

( 6 9 )  

おそらく最も重要なことだが︑規制後︑あるとして︑土地所有者の投資に裏付けられた期待の減少度はどうか︑

である︒そして︑同計画を適用した結果︑リハードの財産の実質的な価値の剥奪があったと十分な検討なく認定した 原審の裁判官

( M a g i s t r a t j e u d g e )  

に対し︑上記項目に沿って再審理するように差戻したのである︒

( 7 0 )  

パラゾロ判決において︑連邦最高裁は︑﹁経済的に有益な利用﹂とは何かという問題に再び直面した︒本件は︑

︵ 高

( u p l a n d )

と湿地で構成される︶

一八エーカーの土地の所有者による埋立て及びビーチクラブ建築許可申請に 対する不許可が経済的に有益な利用をすべて奪うと主張して︑

この点に関する連邦最高裁による回答は簡潔である︒すなわち︑﹁︻下級審︼

︻ 二

0 万ドルの︼開発価値を持っているので︑経済的に有益な利用はすべて奪われていない︑と判示した︒この点に

関して︑当法廷は︑同判断に同意する﹂というものであった︒

⑥  ⑤財産の現在の性格および限界は何か︒ ④権原が移ったとき︑開発はどのように変わったか︒ ③ 

のような指定の変更が起きたか︒

関法

ロード島沿岸資源管理委員会を相手取り︑三一五万ド

は︑当該財産のうち高地部分は未だ

100 

(21)

第一節連邦最高裁判所レベルでの﹁分母問題﹂

スカリア判事一人だけであった︒

1 0

 

また︑規制後も開発価値が二 0

万ドル残っているという事実認識に対して︑パラゾロは土地所有者に名ばかりの利 益が残されているからといって州は補償義務を免れることはできないと主張した︒連邦最高裁は一般論としては認め ながらも︑本件はそのような事例ではないとした︒そして規制によっても︑土地所有者は一八エーカーの土地上に住

( 7 2 )  

宅建築を認められているので︑財産は﹁経済的に無価値﹂ではないと判示した︒

本件のもう︱つの争点︵これが最大の争点なのだが︶

は︑規制後に取得した財産に対する収用請求の可否である︒

つまり︑規制の存在を知りつつ取得した土地所有者に﹁合理的な投資に裏付けられた期待﹂の生まれる余地があるの か︑という問題である︒この点に関し︑ペン・セントラル判決での枠組内ではあるが︑連邦最高裁内では︑差戻審に おいて財産の取得が規制後であることを考慮すべきであるというのが多数であり︑考慮すぺきでないと明言したのは

第三章

﹁分母問題﹂

審査に付される財産ユニットをどのように定義するのか︒どの財産ユニットから﹁経済的に有益な利用﹂を︵すぺ て︶奪えば収用となるのか︒これが分母問題である︒この問題は︑規制的収用に固有の問題である︒なぜなら︑物理

( 7 3 )  

的な剥奪であれば︑実際に奪った土地の市場価格を計ればよいからである︒

これまで分母問題に関しては二つのアプローチが存在した︒

損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察

︵ 五

五 八

(22)

が収用となるかどうかを判断する際︑当法廷は 中権﹂の利用を制限されるとすれば︑ 域︶に対する

第 五 三 巻 三 号

一区画の土地

( a s i n g l e   p a r c e l )

を別個の部分

まずその一︒規制的収用を生み出したマホーン判決は︑私人が地盤沈下を防止する法律を援用し石炭採掘業を営む 会社による石炭採掘の差止めを裁判所に求めた事例であった︒ホウムズ判事は︑石炭採掘権は石炭を採掘することに よって初めて利益を得るのであって︑﹁一定の石炭採掘を商業上実行不可能にすることは︑憲法が補償を要求するよ うな財産の剥奪あるいは価値破壊とほとんど同様の効果を持つ﹂と述べ︑採掘権を分母とする︒

その二︒ペン・セントラル判決では︑上訴人であるペン・セントラルは︑

ターミナルビル上に増築するための許可 中請が認められなかったので︑空中権のすべての利用を奪われたと主張した︒反対意見を執筆したレーンキスト首席 裁判官は︑﹁財産所有者が財産上のすべての合理的な収益を否定された場合︑唯一収用が起こるという原則には︑困 難な概念上及び法律上の問題が潜んでいる︒当裁判所は︑様々な種類の財産︵農場地︑住宅財産︑商業及び工業地

﹃合理的な収益﹄を定義しなければならない﹂と認めたうえで︑当該事例において︑もし上訴人が﹁空

( d i s c r e t e   s

e g m e n t s )  

マホーン判決に照らして︑すべての収益は否定される︑と述べた︒

しかし︑法廷意見は次のように述べたのである︒﹁﹃収用﹂法理は︑

に分けないし︑特定部分の権利が完全に消滅したかどうかを判断しようとはしない︒政府行為

︻個々の権利に焦点を当てるのではなく︼むしろ︑全体として︑当該 区画地の権利への侵害の性格および程度に焦点を合わせる︒本件では︑﹃歴史的建造物地﹄として指定されている︑

( 7 5 )  

市による課税単位である﹂と︒本件においては︑既存の建物をも審査対象にし︑空中権を分母としなかった︒この法 廷意見に見られるのが第二のアプローチである︒

( 7 6 )  

マホーン判決の事例に類似するキーストン判決において︑

関法

ペンシルヴェニア地盤沈下法は建物の下にある五

0

パ ー

1 0

 

︵ 五

八 六

(23)

セントの石炭を地表の安定のためにそのままにしておくよう命じていた︒法廷意見は慎重にマホーン判決と区別し︑

ペン・セントラル判決多数意見に依拠し︑収用は起こっていないとした︒

これに対して反対意見を執筆したレーンキスト首席裁判官は︑ここでもマホーン判決に照らして判断する︒地盤沈

( 7 7 )  

下を防止するため採掘を禁じられる部分の石炭は︑州法のもとで︑﹁疑いなく確認できる︑別個の財産利益﹂であり︑

( 7 8 )  

﹁州法によって定義される財産を分離し得る⁝⁝場合︑その特定財産への規制の効果を考慮することは適切である﹂

とし︑分母を限定する︒

このように︑法的に保護された権利あるいは利益を分母とする考え方︵マホーン判決の流れ︶

見︑収用が起こったかどうかを判断する考え方︵ペン・セントラル判決の流れ︶がある︒ルーカス判決において︑

損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察

1 0

三 と土地を全体として

︵ 五

八 七

ス カリア判事は︑このような先例の状況を矛盾しているとし︑ペン・セントラル判決における考え方を﹁極端で支持で

( 7 9 )  

き な

い 見

解 ﹂

と 明

︱ ︱

︱ 口

し た

︒ そ

し て

︑ ﹁

︻ 土

地 の

︼ 九

0 パーセントをその自然の状態のままにしておくことをディベロッ

パーに要求するとき︑その状況を︑所有者がその土地の負担を課せられた部分の経済的に有益な利用すべてを剥奪さ

れた状況として分析するか︑所有者が全体としてその土地の単なる価値減少を被った状況として分析するかは不明確

である︒分母問題に対する回答は︑所有者の合理的な期待が州の財産法によってどのように具体化されてきたかにあ

るかもしれない︒すなわち︑価値減少︵あるいは剥奪︶が申立てられている特定の土地利益に︑州法が法的承認や法

( 8 0 )  

的保護を与えてきたか︑どの程度与えてきたか︑にあるかもしれない﹂と述べた︒彼は限定的に分母を解するようで

( 8 1 )

︵8 2 )

 

ある︒ルーカス判決が︑分母問題を蒸し返したといわれる所以である︒

(24)

図 1 計 250 エーカーの土地 1 9 9 エーカー

開発済み 売却済み ( 6 . 4 除く)

5 1 エーカー 3 8 . 5  

次 に

裁判所は︑ し︑事実に基づき検討した︒

ルーカス判決後︑連邦控訴裁判所は︑分母問題をどのように処理したかを見ていく︒

( 8 3 )  

ラブラディーズの事例は︑土地所有者がもともと二五

O

エーカーの土地を所有しており︑そのうちの一︱・五 エーカーの湿地の埋立許可を求めた事例である︒申請が不許可となった一九八二年の時点では五一エーカーの未開発 地を所有していた︒残りの一九九エーカーは既に開発され︑六・四エーカーを除いて売却済みであった︒土地所有者 は︑五一エーカーのうちの︱ニ・五エーカーを開発できた︒なぜなら︑残りの三八・五エーカーは︑開発負担として献 エーカーの湿地の埋立許可を求めたのである

( a )  

関法

︱ニ・五エーカーのうち一エーカーは既に埋立てられており︑残りの一︱・五

︵ 図 1 )

政府側は︑適切な分母は二五

O

エーカーの土地であると主張し︑少なくとも︑許可が認められ なかった一九八二年の時点で売却されずに残っていた五一エーカーであると主張した︒これに対 し土地所有者側は︑所有者が開発を求めた︱ニ・五エーカーの土地が適切な分母であると主張し 裁判所は︑どちらの主張も採用しなかった︒そして︑これまでの連邦最高裁の一貰しない見解

を︑﹁先例は︑事実に基づく微妙な差異に考慮するよう︑柔軟なアプローチを採っている﹂と解

一九九エーカーの土地を分母から除外する際に︑売却された士地は︑規制が発効す

0  t 

納しなければならなかったからである︒

第二節連邦控訴裁判所レベルでの﹁分母問題﹂

第五三巻︱二号

1 0

︵ 五 八 八

(25)

三エーカーの高地であり、もう―つは九•四エーカーの湿地(湖底)

の浚渫及び埋立て許可を申請したが︑認められなかった︒そこで︑九・四エーカーを分母とし︑その部分の全部収用

を主張した︒

これに対して裁判所は︑分母を検討する際に︑﹁財産に関して請求者がどのような経済的期待を持っていたかに焦 点を合わせる﹂と述べる︒そして︑裁判所は︑たとえ二つの土地が法律上別個の財産で︑購入日が異なるとしても︑

五三エーカーの高地と九・四エーカーの湿地は同一の開発計画のもとで所有されているので︑審理において二つの土

( c )  

ており︑土地所有者に帰属していないので︑除外することは論理的であるとした︒

クレイジョン・プロダクションの事例︵第二章第二節cの事例︶

10

る以前に開発されているので︑分母に含まれるべきではないとして︑規制の時期を考慮に入れた︒

三八・五エーカーの土地を分母から除外する際に︑裁判所は︑献納される三八・五エーカーの土地は今や州に帰属し

︱ニ・五エーカーが分母として妥当であるとし︑全部収用を認めた︒

は︑土地所有者が諸権利の束のうちの一本の よ り 糸 財 産 上 で の 狩 猟 の 権 利 の 完 全 な 破 壊 を カ テ ゴ リ カ ル な 収 用 に 該 当 す る と 主 張 し た

︒ こ の 主 張 は

︑ 種 々 の財産権は物理的収用に対してなされるように規制的収用に対しても別個に分析されるべきであるとしたフロリダ・

しかし︑裁判所は︑完全な諸権利の束が分離されるはずがないとして︑

み︑ペン・セントラル判決で用いた﹁より伝統的な分析﹂に固執すると述べた︒

( 8 4 )  

フォレスト・プロパティーズの事例において︑土地所有者は︑二つの連続する土地を所有していた︒

損失補償要否基準における﹁経済的に有益な利用﹂概念に関する一考察

ロック判決に基づく︒

( b )   結論として︑裁判所は︑

であった︒所有者は︑住宅開発にあたって湿地

︵ 五

八 九

︱ つ

は 五

フロリダ・ロック判決でのアプローチを拒

(26)

つの土地として扱うべきだとし︑適切な分母は三︱一・七エーカーであると主張した︒

が道路によって分断されていること︑二つの土地が異なるタイプの財産であること︑すなわち︑異なるゾーニングに 服 す る こ と

︑ 二 六 一 エ ー カ ー の 土 地 は 規 制 が 生 じ る 以 前 に 売 却 さ れ た こ と 等 を 挙 げ て

︑ 適 切 な 分 母 は 五

0

. 七 エ ー

カーであると主張した︒

はあるけれど︑唯一のものではないとして︑ラブラディーズ判決に基づいて事実に基づく柔軟なアプローチを採る︒

そして︑裁判所は︑二六一エーカーの土地と五

O ・

七エーカーの土地は︑売却された当時︑規制は存在していなかっ たという意味で時間的に︑道路によって分断されているという意味で物理的に︑異なるタイプの財産であるという意

図 2 計 3 1 1 .7 エーカーの土地

これに対して︑

裁判所は︑財産取得及び開発のタイミングは分析のための適切な分母を判断する際に考慮されるべき︱つの要素で

2 6 1 エーカー 売 却 済 み

道 5 0 . 7 エーカー

埋立許可申請

関法

政府側は︑道路によって分断されている二つの士地は同時期に購入されたものであり一 パーム・ビーチ・アイリーズは︑二つの土地が決して共通の開発計画に属さないこと︑二つの土地

埋立て許可を申請したが認められなかった

第 五 三 巻 三

所有していた︒その土地は道路により︱︱つに分断されている︒道路の片側一一六一エーカー 号

の土地は既に売却されていた︒残りの五

O ・

七エーカーは︑

三エーカーの湿地︵湖底︶

( d )  

t  こ ° 地を分離しないと述べた︒結論として︑本件の適切な分母は六ニエーカーであると判示し

( 8 5 )  

パーム・ビーチ・アイリーズの事例で︑土地所有者は三︱一・七エーカーの上地を

からなっていた︒土地所有者は︑

︵ 図 2 )

︒ 一・四エーカーの高地と四九・ 五 0 ・七エーカーの浚渫及び

10

︵ 五

O )

図 1 計 250 エーカーの土地 1 9 9 エーカー 開発済み 売却済み ( 6 . 4 除く) 5 1 エーカー38.5  次に︑ 裁判所は︑ し︑事実に基づき検討した︒ ルーカス判決後︑連邦控訴裁判所は︑分母問題をどのように処理したかを見ていく︒( 83 ) ラブラディーズの事例は︑土地所有者がもともと二五 O エーカーの土地を所有しており︑そのうちの一︱・五エーカーの湿地の埋立許可を求めた事例である︒申請が不許可となった一九八二年の時点では五一エーカーの未開発地を所有していた︒残りの一九九エーカー

参照

Outline

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