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日本英語学会第
10
回年次大会記武内 道千
この秋 日本英語学会 は創設10周年 を迎 えた。
これを記念 して11月7日と8日に東京外 国語大学 にて開かれた年次大会 は、盛況 に して、特色ある もの となった。 ここで、10年 とい うタイムスパ ンに立 って本大会の特色 を述べてみたい。
まず、昨年の第9回大会 に始 まり、今年第2回 目のワークシ ョップの報告か ら始めたい。大会初 目の午前 中 (9:30‑12:00)に企画 された この ワー クシ ョップは、昨年の予想以上の盛況 をそのまま 受け継いで、6つか ら7つにプログラムが増 え、
いづれ も活発 な討論が行 われた とい うことである (七室 に発表者 は45人 を数 えた)。私は井谷 玲子 氏 と共同で応募 し、採用 され 「関連性理論 ‑よ り 説明力のある語用理論 を目指 して
‑
」 とい うタイ トルでワークシ ョップをもった。大阪の四天王寺 仏教大学の山崎 英一氏 に加 わって もらい、慶庵 大学の西 山 佑司氏 をコメンテーターに迎 えた。80部用意 したハ ンドアウ トがす ぐなくなって しまっ た。論文発表者 を公募せず、三人だけで関連性理 論 とい う一つの有機的理論の 目指す ものと方法が、
全体像 としてで きるだけ見 えるようにと心 を砕 い て、 4月以来準備 して きた。
三人の発表論文のタイ トル (発表順 )は次の通 りである。
関連性理論の輪郭 :武内 道子
関連性理論の枠組 を使 って (1)‑解釈的用法 と してのか :井谷 玲子
関連性理論の枠組 を使 って (2)‑条件文の位置 づけ :山崎 英一
5月 と9月 と10月にまとめ役 として (当 日は司 会 を兼ねた)私 は、大阪に山崎氏 を訪れ、ディス カッシ ョンをもった。電話 によるや りとりは十数 回に及んだであろう。下阪の一回は言語セ ンター か ら旅費 をいただいたことを記 して、謝意 を表 し たい。
10周年 を記念す る事業の一環 として、海外か ら 二人の学者 を招いて特別 ワークシ ョップ (第一 日 午後 ) と特別講演 (第2日午後 )が もたれた。一 人は40歳 とい う若 さでジュネーブ大学言語学科長 をつ とめるルイジ ・リッツイ氏。統語論、ロマ ン ス語学専攻で、原理 とパ ラメタ一によるアプロー チの今 日の生成現論の基礎 を築いた人である。彼 の 目下の主要な研究テーマの一つである心理動詞 (Psych‑verb)の分析 に関 して、4人の発表者 と 共 にワークシ ョップが もたれた. もう一人は、38 歳のM IT脳 ・認知科学科教授ステ イ‑ヴン ・ピ
ンカー氏で、文法獲得理論の第一人者 と目される。
今 回のワークシ ョップでは、項構造の獲得 に関 し て、これまでの言語学 ・心理学の研 究成果 を駆使
した注 目すべ き見解 を発表 した。また特別講演で は、 リッツイ氏 はパ ラメタ‑アプローチの比較統 語 論 に お け る 有 用 性 を ("Comparative Syntax:A ParametricApproach")、 ピ ンカ ー 氏は規則 ・不規則動詞 について規則 と記憶の相互 作用性 を ("RulesofLanguage")論 じた。 両 人 とも、現在第‑線で活躍 し、将来的に も大 きな 影響力が期待 される学者で、明快でエネルギッシュ な語 り口とあわせて、多様 な趣味 をもつ千人 を越 す会員 を引 きつけた。
特別企画 に伴 って、本大会 の研 究発表は二 日目 の午前 中のみにな り、発表数 をかな り制限す るこ とになった。 しか し、ワークシ ョップの45名 を含 めて、本大会の発表者総数 は97名の多 きに達 し、
その6割余が女性であった ことは、特筆すべ きで あろう。東武バ ンケ ッ トホールでの会員懇親会 も とりわけ華やかであった。二人の海外研究者、来 年度か らの新会長、副会長 をは じめ、初代会長の 安井 稔氏、唯一の女性会長の井上 和子氏が話
をされた。
83年 に上智大学で産声 をあげた 日本英語学会の 10年 は、そのまま日本の英語学研 究の変遷 と重 な る。英語学会が年々質的に も量的に も充実 して き
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た とい うことは、 日本の英語学研究の隆盛その も の とみな して よいだろう。隆盛のひとつに、会員 の海外での活躍 とい うことがある。海外 の学会 は 単 に参加することか ら、研 究発表、講演がポ ピュ ラーになって きた し、海外での出版 も活発である。
この傾向は英語学会創設 と時 を同 じくして始 まっ た と思 う。
二つ 目にいえることは、興味の対照が多岐に亘っ て きたことであろう。 この学会 は始めか ら、英語 をは じめ とす る個別言語の実証的研究 と、一般理 論的研究の間にフィー ドバ ックが働いていた と思 うが、 どうして も統語分析 中心、 しか もGB理論
が巾をきかせて きた とい う感 は否めなかった。今 大会では、発表がGB理論の枠組一辺倒でな く、
新 しい視点 に立 った ものが、 目立 った (私 たちの ワークシ ョップ もそのひ とつ)。理論 内の異端 に 対す る、また隣接諸分野 に対す る寛容 さを見た よ
うに思 った。
実証 と理論が ダイナ ミックにかかわ りあい、相 互触発的ない き方が研 究の原動力であるが、既成 の枠組 にとらわれない 自由で批判的な 目と、寛容 の精神が加 われば、次の10年 もさらに大 きく発展 す るであろうことは間違いない。そ う確信 して会 場 をあ とに した。
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