九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
都市圏域の構造把握とそれにもとづく広域的道路網 の評価に関する研究
吉武, 哲信
https://doi.org/10.11501/3071400
出版情報:Kyushu University, 1993, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
4.5
要約
本章は, 提案手法により設定された都市圏域にもとづき, 北部九州4県(福岡, 佐 賀. 熊本. 大分県)の各都市閣に関し, その地域情造とその変化を明らかにしたもの であり. その主要な内存を要約すれば以下のとおりである.
4.5.1 地域階層構造
-空間的構造とその変化について
(1)北部九州4県では. 昭和40・60年で主中心ゾーンが減少し副次中心ゾーンが増大す るとともに, 階層の連鎖も増大し孤立ゾーン数が著しく減少している. この間多くの ゾーンの階層が他の階層に転化しているが, それらのうち, 主中心ゾーンが他の主中 心ゾーンの都市圏域に吸収され副次中心ゾーン化するもの, 周辺ゾーンが成長し副次 中心ゾーン化するもの, そして孤立ゾーンが都市圏域に組み込まれ周辺ゾーン化する ものがほとんどを占める.
(2)主中心ゾーンと副次中心ゾーンを含めた中心ソーンの地理的分布をみると. 北部九
州地域の幹線交通網の整備状況とよく一致している.
(3)副次中心ゾーンは. 主中心ゾーンからある範囲内に存在するという意味で主中心 ゾーンとの間の位置関係で形成されているといえるが, 他の副次中心ゾーンとの位置
関係は, 主中心ゾーン相互のようにある距離を保つという関係にない.
(4
)昭和,10",,60年では, 4県いずれも主中心ゾーン数と孤立ゾーン数が減少し, 副次中心ゾーン数と周辺ゾーン数が増加しており, 地域の階層系列化が進行している. ま た. 昭和60年では主中心ゾーンの数は福岡県が最も少ない. これは福岡市, 北九州市 の強力な主中心ゾーンが存在するため, 多くの中心的ゾーンが副次中心ゾーン化して いるためである.
-居住・従業構造とその変化について
(5)県別に, 各階層地域の居住人口と第2,3次産業従業人口をみると, 福岡県において は居住, 従業人口ともに主中心地域, 副次中心地域そして周辺地域の順に大きい. そ の他の県では居住人口において副次中心地域よりも周辺地域の方が大きし 従業人口 においては副次中心地域が十分に発達していないといえる.
( 6)県別. 階層別の店-住, 従業人口の変動から都市機能の集中化. 分散化を解釈すれ ば. まず主中心地域への居住人口と従業人口の集中化が進むが. ある程度まで進行す ると, 従業人口の集中化がまず鈍化し. 次いで居住人口の集中化が鈍化するといえる.
これらの鈍化は. 副次中心地域と周辺地域で支えられるが. 副次中心地域と周辺地域
への分散化の問に於干の時間的ずれがあり, 高IJ次中心地域への分散化の方が早く始ま ると考えられる.
・通勤・通学流動による地域間結合構造について
(7)通勤・通学流動に着日して階層地域間の流動量を県別にみれば. 福岡県では, 主中 心地域での就業・就学機能を副次中心地域と周辺地域の居住機能が, 副次中心地域での 就業・就学機能を周辺地域の店住機能が支えており 佐賀県は, 主中心地域で展開する 就業-就学機能を, 主として周辺地域の居住機能が支えている. 熊本県は. 主中心地域 での就業・就学機能を周辺地域の居住機能が支え, 大分県では主中心地域での就業・就 学機能を. 周辺地域と副次中心地域の居住機能が支えている. また, これらの流動量 を経年的に比較すれば, いずれの県においても同階層の地域相互, 上位から下位階層 地域への流動量が増加しており, 地域間の結合関係がより複雑化しているといえる.
4.5.2 都市圏域の構造
-都市圏域の規伎と圏内ゾーンの階層構成について
(1)主圏域内の副次中心ゾーン数と周辺ゾーン数の関係は, 概ね周辺ゾーン数が副次中 心ゾーン数の2倍前後より多い傾向がある. ただし, 福岡. 佐賀, 北九州都市圏など では副次中心ゾーン数が相対的に増加し, 多極化しており. 逆に, 熊本や大分都市圏 などは副次中心ゾーン数が少なく少極的都市圏域である. 他方. 副次圏域内の副(々) 次中心ゾーン数と周辺ゾーン数の関係に関しては全体として明確な傾向はみられない.
. ゾーン間距離とゾーン階層について
(2)主中心ゾーン間の人口と時間距離の関係に関し, 主中心ゾーン人口が大きくなるに つれて. 時間距離も小さくなる傾向にある. これは特に大規模な都市は, 歴史的には 個別に発展, 成長してきたこと, 交通施設が主として大規模主中心ゾーンに重点的に 整備されてきたことによると考えられる.
(3)両主中心ゾーン人口が20万人以下の場合の主中心ゾーン聞の人口と時間距離の関 係は, 両主中心ゾーン人口は概ね等しくても. 時間距離が大きいグループと小さいグ ループが存在する. 前者には, 主中心ゾーン人口は小さいが, 周辺に存在する市町村 との兼ね合いで, 比較的広域の圏域を有するもののペアが存在しているものがある.
後者には. 主中心ゾーン悶で地形や交通施設の制約が厳しいぺアや. 距離的には非常 に近くとも歴史的な背;景から互いに独立なぺアがある.
(4)一方の主「ド心ゾーン人口が100万人以上である主中心ゾーンペアでは, 時間距離が 比較的短かく概ね60分前後であり, この点で他方の主中心ゾーン人口の大小にはさほ ど左右されない. このことは交通網が大規僕中心ゾーンを中心として整備されてきた
結果と考えられるが. その一方で時間距離がある値より小さくならないのは, 約60分 以下になると小規模な主中心ゾーンが副次中心ゾーン化するためであるといえる.
( 5)一方の主巾心ゾーン人口が20",60万人である主中心ゾーンペアの人口と時間距離 の関係は, 概ね90分以下で分布している. また, 一方の主中心ゾーン人口を固定する と, 他方の主中心ゾーン人口が大きくなるにつれて時間距離が小さくなる傾向がある.
これは. 主中心ゾーンが人口規模の大きい方との連関の中に位置づけられ, 時間距離 と人口規模との間にある積のシステムが形成されていることを意味する.
( 6)同一主圏域に属する人口1万人以下の副次中心ゾーン聞の時間距離は大小様々であ り, 人口の大きさとは関わりがない. 副次中心ソーンの位置や規模は, 他の副次中心 ゾーンとの関係よりも, 主中心ゾーンとの関係で定まるといってよい.
-居住・従業構造について
( 7)各都市圏域の人口規模をみると. 昭和60年においてはほとんどの都市圏域は居住 人口が20万人以下の小規模のものであり, 20万人を越える都市圏域は, 北九州都市 圏, 大牟田都市圏と各県庁所在都市の都市圏のみである.
(8)小規模都市圏域の居住人口はほぼすべてが減少あるいは停滞傾向にある. また, 中
・大規膜都市圏域では大牟田都市圏が居住人口減少から停滞に転じ. 北九州都市圏と佐 賀都市圏が停滞傾向をにある. 福岡, 熊本および大分都市圏は増加傾向にある. なお.
大牟田市と北九州市は工業を基幹産業とした都市であることで共通している.
(9)各都市圏域の第2,3次産業従業人口の規模をみると, 北九州都市圏, 大牟田都市圏 および各県庁所在都市の都市圏域のみが従業人口10万人を越えている. 中-大規模都 市圏域では. 福岡. 熊本, 大分および佐賀都市圏は増加し, 北九州. 大牟田都市圏は 停滞している.
(10)各都市圏域の全居住人口に占める主中心ゾーン, 高IJ次中心地域および周辺地域の 構成比からは, 北九州, 伊万里, 日田そして八代都市圏は主中心ゾーンの構成比が高 くl極集中型の都市圏域であり, 唐津や山鹿都市圏は周辺地域の構成比が高く均質分 散型といえ. また. 中津. 大牟田都市圏などは副次中心地域への集中度が高く数極集
中型といえる.
(11 )第2,3次産業従業人口に占める主中心ゾーン, 副次中心地域および周辺地域の構 成比から, 北九州都市圏は本都市圏は強度の1極集中型が崩れ, 数極集中型へと移行 しつつあり, 福岡都市圏は, 副次中心地域が従業機能を担っているが, この構造は経 年的に安定している. また佐賀都市圏は, 1極集中型へ進行しており. 熊本都市圏は,
わずかながら均質分散化傾向にある. 大分都市圏は, 経年的にl極集中の度合いを強 めている.
(12)副次中心地域の存布しない主 圏域で店住人口に着目すれば. 鹿島や竹田都市圏の ようなl極集中型のものから, 田川都市圏のように分散型のものまで多様な都市圏域 が存在する. 経年的には, 松烏, 嬉野, 玖珠, 本渡. 鹿島および竹田都市圏では主中 心ゾーンへの集中化が進行しており. 矢部. 同東, 小国, 高森および国見都市圏では 分散化が進行している. また, 第2,3次産業従業人口に着目すれば. 経年的に集中化 の傾向を示すものは松島. 玖珠と本渡部市圏であり. 一貫して分散化傾向を示すもの は国東都市圏のみである. また. 多くの都市圏域は昭和50年を境に集中化から分散化 へ転じている.
(13)居住人口をもとにクラッセンモデルにより中・大規模都市圏域の発展過程を調べれ ば. 北九州都市圏は, 郊外化(相対的分散)から郊外化(絶対的分散)に転じている. ま た. 福岡都市圏は都市化(相対的集中)から昭和50年を境にして郊外化(相対的分散) に転じ, 大牟田都市圏は逆都市化(相対的分散)から郊外化(絶対的分散)に転じてい る. 佐賀都市圏は再都市化(絶対的集中)から都市化(相対的集中)に推移し, 熊本都市 圏は. 都市化(絶対的集中)から都市化(相対的集中)に転じている. 大分都市圏は概ね 都市化(絶対的集中段階)にある.
(14)居住人口に着目し, 小規模都市圏域にクラッセンモデルを適用すれば, ほとんど の都市圏域が昭和40",45年の間で逆都市化(相対的分散)あるいは再都市化(相対的集 中)の段階にあるが, 以降, 再都市化(絶対的集中)や都市化(絶対的集中)段階になる ものが多い.
(15)第2ぅ3次産業従業人口を用い. 大規模都市圏域にクラッセンモデルを適用すれば,
北九州都市圏は都市化(相対的集中)から逆都市化(絶対的分散)となっており, 福岡都 市圏は一貫して都市化(相対的集中)段階にある. 佐賀都市圏は, 都市化(相対的集中) から郊外化(相対的分散)に推移し, 熊本都市圏は都市化(相対的集中)から郊外化(相 対的分散)に転じている. 大分都市圏は他の大規模都市圏域と異なり, 都市化(相対的 集中)から都市化(絶対的集中)に推移している. また. 中・小規模都市圏域では, 水俣 都市圏などいくつかの例外はあるが, 全体としては郊外化の傾向があるといえる.
(16)居住人口と第2,3次産業従業人口を用いたクラッセンモデルの違し、から. 従業機 能の方が比較的早い時期に郊外化へ向かう傾向があることが明らかになる.
(17)居住人口に着目し, クラッセンモデルを郊外に適用し, 副次中心地域と周辺地域 に着目した郊外の発展段階を考えると, 昭和40",50年では. 拠点的逆都市化(相対的 分散)と均質的再都市化(相対的集中)段階に属する都市圏域がほとんどであったが,
昭和50年以降は均質的郊外化(相対的分散, 絶対的分散)段階と均質的再都市化(絶対 的集中)段階に属する都市圏域がみられる. 北九州. 福岡両都市圏は, いずれの期間
においても拠点的郎市化(相対的集'1' )段階にあり副次中心地域の担う役割が大きい.
(18)第2,3次産業従業人口に関し上と同僚の分析を行なうと, 昭和40年以降, 均質 的郊外化( 相 対 的分散 および絶対的分散)の段階にある都市圏域が多い. また, 昭和 55",60年においては拠点的逆都市化( 絶対的分散)段階にある都市圏域もいくつかあ
り, これらに関しては副次中心地域のそれの減少が郊外の衰退を決定づけている.
・通勤-通学流動による地域間結合構造について
(19)主圏域である都市岡域における総通勤・ 通学流動量とその変化をみると, 流動量は 福岡都市圏が群を抜いて大きく. 次いで北九州. 熊本, 佐賀そして大分都市圏の順と なっている. また. 大牟田都市圏は昭和55年において流動量が2万人を越えて, 中規 模都市圏域に属するようになった. その他の小規模都市圏域に関しては, 流動量がl 万5千人以下で推移している.
(20)各都市圏域において通勤・通学の階層地域間流動の構成比から, 唐津, 熊本, 八代,
人吉および日田都市圏などは都市圏において周辺地域の居住機能の占めるウェイトが 大きいが. 大牟田, 中津都市圏などは副次中心地域のウェイトが大きい. また福岡都 市圏や北九州, 大分や佐伯都市圏では. 副次中心地域と周辺地域の両地域から主中心
ゾーンへ向かう流動の構成比がほぼ均衡あるいはそれに近いものもある.
(21)通勤・通学の階層地域間流動の構成比を経年的にみると, いずれの都市圏域におい ても同一階層間の流動や, 階層が高い地域から低い地域へ向かう流動の構成比が増加 している. 副次中心地域が存在しない都市圏域に関しても同様に地域聞の結合構造は 複雑化しているといえる.
(22)階層地域聞の通勤・通学流動の発生量に着目し, クラッセンモデルを用いて都市圏 域の発展過程をみると, ほとんどの都市圏域が昭和40"-'60年において郊外化(相対的 分散)段階にある. また経年的にみれば, 多 くの都市圏域は, 副次中心地域や周辺地 域に居住し, 自ゾーン以外で就業・就学する人々の増加が概ね昭和45,,-,55年において著 しかったが. これは圏域形成が活発であった時期とも一致している. 地域間流動の観 点からも当時の圏域形成が盛んであったといえる.
(23)階層地域間の通勤・通学流動の集中量に着目し. クラッセンモデルを用い都市圏域 の発展過程をみると, 都市圏域内の就業-就学機能は郊外へ分散化しているといえる.
(24)階層地域間の通勤・通学流動の発生量に着目し郊外の発展段階をみると, 昭和 40,,-,50年においては拠点的都市化(相対的集中)と均質的郊外化(相対的分散)段階に ある都市圏域が多いが. 昭和50",55年では均質的郊外化(相対的分散)段階に属する 都市 圏域が辰も多く, 昭 和 .55,,-,60 年ではそれに加え. 拠 点的都市化(絶対的集 中)段階 にある都 市 圏域が多い.
(25)階層地域間の通勤・通学流動の集中量からみた郊外の発展段階をみると. 拠点的都 市化(相対的集中)と均質的郊外化(相対的分散)段階に属する都市圏域が昭和40",60 年を通じて多い. したがって. 通勤・通学流動集中量からみれば, 多 くの郡市圏域郊外 は昭和40年以降, 継続して成長段階にあるといえる.
4.5.3 代表的都市圏域の内部構造
-多重境界悶域の空間的構造とその変化について
(1)北九州都市闘を構成するゾーン数は昭和40γ.50,60年において順に20,24,19であり.
昭和50年をピークとして以降縮小している. また, 多重構造をみると, 昭和40年か ら順に7,8,8重である. 地方生活圏. 広域市町村圏と本圏域を比較すれば. 昭和60年 における北九州都市圏は宗像市, 直方市と豊前市の周辺数市町において地方生活圏(広 域市町村圏)と異なっている.
(2)福岡都市圏を構成するゾーン数は, 昭和40,50,60年において順に31,36,36 ゾーン で. 昭和50・60年ではゾーン構成に変化はない. 多重境界構造に関しては, 昭和40年 からJI原に. 8,8,4重の境界を有している. 境界数が減少したことは圏域としての一体性 を強化したことを意味する. また地方都市圏との比較すれば, 北九州都市圏との重複 部分, 筑豊地域に属する数市町そして筑後地域の数市町で相違がみられる. 広域市町 村圏とは, 以上に加え甘木市周辺の数市町で相違がみられる.
(3)佐賀都市圏を構成するゾーン数は昭和40,50,60年において順に22,22,24で, わず かに拡大している. 多重境界構造は昭和40年からJI固に5,7,4重となり昭和50・60年で 境界数が減少し. 一体性のl郎、都市圏域が形成されたといえる. 地方生活圏および広 域市町村圏と比較すると, 地方生活圏は本都市圏域よりもかなり大きい. また, 広域 市町村圏は概ね本都市圏と等しいが, 東部と西部で若干の相違がみられる. ただし本 都市圏域の西部の境界はむしろ地方生活圏の2次生活圏界と一致している.
(4)熊本都市圏を構成するゾーン数は昭和40,50,60年で順に25,32,33 と拡大している.
昭和40年から50年にかけては東部, 南部に向かつての拡大が大きい. また多重境界 構造をみると, 境界数は昭和40年から}I闘に6,6 および7 でありわずかながら多重化傾 向にある. 地方生活圏. 広域市町村圏と比較すると, 地方生活圏は本都市圏に比して かなり大きいが, 広域市町村圏は熊本都市圏と比較的よく一致している.
(5)大分都市圏を構成するゾーン数は昭和40,50,60年で)1闘に11,15,15 ゾーンであり. 県 庁所在都市の圏域の中で最も規僕が小さい. また境界数は昭和40年から順に5,6,5 で ありゾーン数の増加のわりには変化していない. 都市圏域が拡大しながらもより一体 的な都市圏域が形成されたといえる. 地方生活圏. 広域市町村圏とを比較すれば, 地
方生活圏は本都市閣に比してかなり広く. 広域市町村圏は. 大分都市圏よりかなり小 さい. 他の大規僕都市圏は慨ね広域市町村圏と一致しているといえるが. 本都市圏に おいてその相逮は大きい.
-地域階屑と多重境界にもとづく都市圏域の社会経済構造とその変化について
(6)北九州都市悶を多重境界により4リングに区分し, 主中心ソーンから近い!阪にリン グ1, リング1 ・・・とする. 各リングに属する階層地域ごとに居住人口規模の動態に着 目すると, 本都市圏域においては. 居住機能の分散化はリング1の周辺地域とリング3 の副次中心地域が主として担っているといえる. また. 第2,3次産業従業人口の動態に 着目すれば. 従業機能の分散化はリング3の副次中心地域のみが支えているといえる.
(7)福岡都市圏を4 リングに分割して分析を行なうと, 居住人口に関しては, 福岡市の 伸びには昭和50年以降わずかながら鈍化傾向がみられるが, 他の地域に比べ圧倒的に 大きい. さらに. リング 3では福岡市からある程度の距離があるため, 副次中心地域 にまず居住人口が重点的に展開し次いで周辺地域にそれが広がっており, リング1 で は福岡市に近接しているため副次中心地域と周辺地域に同様に居住人口が伸びている といえる. また第2,3 次産業従業人口に着目すると, 福岡市のそれが急激に伸びてい るが. 居住人口に比べると鈍化の傾向が強い. リング1 の両階層地域は, 同地域が福 岡市に近接していることもあり従業機能の都市圏域内への分散化を受け入れているが,
リング3の副次中心地域は福岡市から比較的遠いことから独自の発展が従業人口の伸 びを主に支えているといえる.
(8 )佐賀都市圏を3リングに分割し, 居住人口の動態に着目すると佐賀市のみが大きく 増加している. 第2,3次産業従業人口に関しては, リング1う2の周辺地域が停滞あるい はわずかながら伸びているものの, 全体的には居住人口での傾向と類似している. こ れらから本都市圏域は. 佐賀市がいまだその居住, 従業機能の分散化が進行するほど の都市圏域を形成していないといえる.
(9)熊本都市圏を3リングに分割し分析すれば, 熊本市における居住・従業機能の発達
が著しいが, それに近接するリングlではまず従業機能が, 少し遅れて居住機能が発 達している. また, 主中心ゾーンから離れているリング2 とリング3の副次中心地域 へは従業機能の分散化が進行しているといえる.
(10)大分都市圏を2リングに分割し分析を行なえば, 大分市のみに居住・従業機能が 集rtlしており. その他の地域への機能の分散化はほとんどみられないといえる.
参考文献
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8 ) 山田浩之: 都市化の流れは変 わった, エコノミスト, pp.26 -33, 1984,11.
9) 建設省計画局地域計画官監修: 地方生活圏要覧昭和57 年度版, 1983.
第5章 地域階層構造にもとづく道路網整備水準の評価
5.1 序
都市圏域にもとづく広域的計画には. 医療, 教育. 都市的サービス施設などの広域的 施設の整備計画や, 上水の供給や下水処理などの水関連計画など多岐にわたる計画が あり, また, これらを立案・運営していくための組織に関する諸計画もある. 本章では,
前章まででえられた都市圏域構造にもとづく広域的地域計画への応用の例として道路 網整備計画を取り上げ, その整備水準の評価手法に関する検討を行なうものである.
具体的にはまず, 道路網整備水準の評価に関する既往の研究を整理し, 次いで. 本 研究における道路網整備水準の評価に関する基本的考え方を明らかにした上で・整備水 準評価指標の定式化を行なう. そして提案手法を福岡都市圏の現況と将来の道路網に 適用するとともに, 計画案の評価を行なうものである.
5.2 道路網整備水準の評価に関する既往の研究
5.2.1 道路網整備水準の諸内容
一般に, 道路には燦々な機能が要求されるが. それらを大別すれば交通機能と空問 機能があり. また交通機能はトラフィック機能とアクセス機能に区分される1) ここで.
トラフィック機能は道路網の交通需要処理機能に着目し. アクセス機能は移動のしや すさに着目したものである. また, 空問機能はオープンスペースとしての道路網の役 割に着目したものである.
本研究は, 広域道路網の整備水準の評価を行なうことを目的としており, またその 際要求される道路網の機能は. いかに都市圏内の交通需要を円滑に処理するかに関連 する. したがって本機能はトラフィック機能に該当するため, これに着目して道路網の 整備水準を把握した既往の研究を整理することとする. ただし, ここで区別しておく 必要があることは, 道路評価と道路網評価の違いである. 道路網がさほど発達してお らず, 道路が2地点間を結ぶものとして単体的に認識されていた時代においては, 道 路の網としての評価は必要なく, 舗装率, 改良率などを用いて個々の道路を評価する ことで十分であった. しかし 整備が進み道路網がより複雑化している近年において は, 従来のように道路を単体(リンク)としてとらえるのではなく, 網(ネットワーク) としてとらえることがより重要になってきており, 本研究においてもこの立場をとる ものである
トラフィック機能に着目し, ネットワークとしての整備水準の評価を行なった研究 は数多いが, それらを概観すればいくつかの分類軸により整理することができる. す なわち. 評価対象(不ットワーク全体. ネットワーク断面, ゾーン. ノード. ODぺア,
jレート, リンクなどのネットワーク構成要素). 評価状況(平常時, 非常時). 評価論点 (交通需要, 社会経済特性, 形態, システムなど)と評価機能(重要性, 連結性, 信頼 性, 階層性など)である. 以下ではこれらの分類軸のうち. 各研究を比較的明確に区 分できる評価論点に着目し, 既往の研究を整理することとする. ただし. ネットワー クを複数のユニットから構成される1つのシステムとみなし, ユニットの信頼性にも とづきシステム全体の信頼性を明らかにするネットワーク信頼性の評価研究に関して は. 演算に多大な時間を要する等の問題があり. いまだ簡易ネットワークを対象とし た研究が多く. それゆえ本研究のように都市圏域内の道路網のような広域的かっ大規 模なネットワークを対象とする場合には適していない. そこで以下では. 形態評価に 関する研究と. 交通需要や社会経済特性を考慮、した研究の2種に限ってレビューを行 なうこととする.
5.2.2 形態評価に関する既往の研究
ネットワークの評価を形態的に論じた研究は数多いが, グラフ理論やフラクタル理 論にその数理的基礎をおくものが多い.
グラフ理論では, ネットワーク全体の連結性や構造を表わすものとして表5-1に示 すようないくつかの指数が定義されており2). 道路網評価に適用されている. たとえ ば. α指数やγ指数により述書itfkを評価した研究3),4)や, 近接性指数により評価を行なっ た研究がある5) また, 木村・清水らの一連の研究6)"'8)は, 都市聞の道路網に関し. い くつのノードを経由して他のノードに到達できるかという観点からオーダーの概念を 導入し, 連結性と近接性の両面からの評価を行なっている. この点に関しては, 著者 らも国道, 主要地方道と県道といった道路規格と地域階層構造を考慮、しながら拡張γ指 数と迂回指数を提案し, 平常時の都市圏域内の道路網評価を行なっている9),10) これ らの研究は, グラフ理論が定義する指数を改良し, 実際の道路網評価へと応用したも のとして位置づけられる.
また. 以上のような形態を直接表現する指標でなく, ノード聞がリンクで結合して いるか否かを表わす隣接-行列の固有値理論を道路網評価に適用した研究もあり. それ らに関するレビ‘ューは山中らの文献11)に詳しい. そのなかでは, 代表的研究例とし て文献12)'"'-'14)があげられているが, 本法に共通する理論上の問題点として. 固有値 および固有ベクトルのグラフに即した数学的な解釈説明が充分に行なわれていない段 階で. 地理学的解釈が与えられている点が指摘されている. その上で著者は隣接行列 の最大固有値がグラフの形態的特性と相関する値であることを指摘し, グラフの形態 特性の評価の可能性を改めて検証している.
さて上に示した2つの方法は. グラフ理論にもとづいているため距離を考慮できな い問題があることで共通しており. これに対し. 実距離をもとに道路網の形態的評価 を行なった研究も現れてきている. たとえば先に示した文献8)は, グラフ理論がトポ ロジカルな距離しか扱えないことから, 実距離を用いた近接性を定義し評価を行なう とともに. あるリンクが通行不能の場合すなわち災害時の連結性と近接性の変化から 当該リンクの冗長性を定義してもいる. 著者らも, ノード聞の平均距離をもとに道路 網の形態的評価を行なうことを提案し15), グラフ理論によるF指数やγ指数などに比し て道路網の連結性をより本質的にとらえることができることを明らかにしている.
さらに, リンクがネットワーク全体に占める相対的重要度を各ODに対する最短 jレート構成上の重要度と関連づけて計量化を行なった研究16)や. 災害時においても安 定的なサービスレベルを確保するという観点から, 実距離にもとづいて代替性を評価
表5-1 グラフ理論におけるネットワークの形態を示す指標
指数 式
ケーニyヒ指数 J(; = ma.xd;j
n
近接性指数. Ai =
L
dijJ=1
回路指数 μ=m-η+p F指数 。=T九
n
γ指数 γ= :Lm
η(ηー1) α指数 α
=
一一2η-5 μ一一一一n n
シンベル指数・ D=
三二 乞
dリJ=l ;=1
ηf旨数. η=一一M
rr型M
付旨数. 1r = 一
T一-
数値区間
0<一μ<
�
η-1)(n-2)?,
0三F三η
;
I0<γ三1 0<α< 1
1 <π
意味・
ノードiから他ノードの 各々までの距離の最大値 特定ノードの到達可能性
ネットワーク全体の述結性
ネットワーク全体の 連結性の強さ
完全グラフを基準にした ネットワーク全体の連結性
当該ネットワークのμとそれが 完全グラフである場合のμの比 ネットワークを椛成する各 ノードの全体的なばらつき
平均リンク長
ネットワー クの慢雑さ d,j.ij聞の距離, m:リンク数, n:ノード数, p:ネットワークの成分数
M:ネyトワーク総延長距離. T:ネットワーク内の最遠2ノード聞の距離 注)九トポロジ一的距離だけでなく実距離を用いても定義可能
した研究lï)もある. また, 道路網の形態がその機能と別個に論じられているとの認識 から, ノード数の増加にともなう平均距離の増加率をもとにモデル道路網を用いて機 能と形態に関する考察を行なったもの18)などもグラフ理論的評価を拡張したものとし て位置づけられよう.
他方, フラクタル理論にもとづく研究19),20)は近年その緒についたばかりで研究蓄積 はさほど多くない. これらの研究は複雑な道路網の形態をフラクタル次元を用いてl 元的に表わすことができる点で興味深いが, 道路網の整備に対しフラクタル次元が鋭 敏に反応しないこと, そもそもフラクタル次元の絶対値が道路網整備水準尺度として どのような意味をもつかが明らかでないことなど20), 解決すべき問題が多く残されて し、る.
その他の形態汗価に関する研究としては. ホ一トンが発見した河川形態日Ijを用い道 路網の幾何学的な評価を試みたものや21), リンク長の2乗の逆数で与えられるグラビ ティ値を総リンク延長で除した値 (U値)をもとにネットワークの形態を論じたものが
ある22) これらは. グラフ理論やフラクタル理論とはまた異なった形態評価を行なえ る点で意義がある. また. 文献23)は. 幹線道路から末端道路に到る経路が. 木の幹 から太技. 巾枝. 細伎に至IJるような階層をなすべきであることに着目して道路網の評 価を試みており. 本研究も形態評価のーっとして位置づけられよう.
5.2.3 交通需要や社会経済特性を考慮した既往の研究
現実の道路網は様々な長さや容量のリンクで構成され. 多くのノードあるいはゾー ン間で発生する交通需要を処理する機能をもっており. これらを踏まえた評価をいか に行なうかが問題である. この点に関しては従来より多くの研究蓄積があり, 以下で 評価対象を軸としてそれらの整理を行なうものである.
まず, ゾーンを評価対象とした研究としては, 文献24). 25)があげられる. このう ち前者では. 世帯やサービス産業など個々の活動主体からみたソーンのアクセシビリ ティを定義し, それをもとに道路網整備水準の評価を行なっている. また後者は, ゾー ン問の理想的な所要時間と実際の所要時間の格差をもとに交通至便率を定義し, 道路 網の評価を行なったものである. これらはいずれも時間距離を用いる点で, 現実の交 通状況を踏まえた利便性と関連した評価を行なっていると考えられる.
また, 任意の2つのノード(ODぺアあるし1はノードペア) 間のネットワークの機能 を評価したものとしては. 所要時間に着目した研究が多い. 代表的なものとしては, 平 常時における定時性と速達性を安全余裕時間と無遅刻確率として評価し, 道路網の信 頼性を求めた研究26)や. 交通量配分を行なった上で所要時間の確率分布を求め, ネッ トワークの連結性と定時性を求めた研究27),28)がある. これらは, 現実の交通利便性が 交通需要により異なることをより明示的に扱った研究として位置づけられる. さらに,
災害時における評価として. 特定のノードペアに関するサービスレベルの維持に着目 した代替機能の評価を, 所要時間, 自動車の走行コストやノードの生活サービスポテ ンシャルを用いて経済的に評価した研究29),30)もあるが. 本研究はネットワーク評価と いうよりはむしろ代替路線の評価を行なったものとして位置づけられる.
リンクを評価対象としたものには. 形態的な観点からえられた連結性と近接性に,
リンクを利用するノードペアの両ノードの人口から人口エネルギーを求めそれを乗じ た値により評価を行なった研究31)や, リンクの物理的特性やその周辺地域の地域経済 活性度, 当該道路の利用レベルの依存度. アクセシビリティ等も考慮できる区間地位 指数を定義し. リンクのネットワーク全体に占める相対的重要度やルートの相対的重 要度を明らかにしたものがある32) 特に後者の研究は, 様々なリンクの物理的特性や
社会経済指標を考慮することで, 様々な観点からの評価を行なうことができる点に特 徴があるが, 何を評価指標に組み込むかによって評価のされ方が異なり. これらの関 係をし、かに考えるかに関して課題が残されている.
ネットワーク断面を評価対象とした研究は多くはないが, その例として文献33) が あげられる. 本研究は. 道路網をある断面でカットし. その断面を横切る交通の諸指 標を用いて. 当該断面のネットワーク全体に占める重要度とその断面が円滑な通行機 能を有する確率からネットワーク全体の性能を評価しようとするものである. これは ネットワーク断面を評価対象としたところに興味を引かれるが. 断面の設定やその断 面設定の変化に対する重要度の変化など. 検討すべき課題も多いことを著者自身が指 摘している.
5.3
道路網の構成要素と交通需要を考慮した評価手法
5.3.1 整備水準評価の基本的考え方
本研究は. 5.1に述べたように都市圏域内における道路網の整備水準の評価を行なう ことを目的としているが. 先のレビ、ューにおける分類軸については次の立場をとるこ ととする3.1),35)
評価論点としては, 形態評価ではなく交通需要を考慮した道路網の機能の評価を行 なうこととする. これは, トラフィック機能を端的に表現するためにはやはり交通需 要を明示的に扱うことが必要であるとの判断による. また. 交通需要をネットワーク 上に配分する作業自体, リンクの連結の仕方を含めた道路網の形態を大きく反映する ことは明らかであるから. この意味で結果的に形態的側面が評価に組み込まれている と考えることができょう.
評価状況としては. 都市圏域内の道路網整備計画を考える際にはまず平常時のネッ トワークの機能を対象とすべきこと, また近年は災害時における研究事例も多いが,
交通渋滞等による日常的な道路機能の低下も重大な課題であるとの認識にもとづき.
平常時を想定することとする.
さらに評価対象としてはリンクを採用する. これは道路網整備事業は最終的には個々 のリンクの整備を行なうことで実現されるため, 個々のリンクがネットワークにおい て果たす役割lの相対的重要度32)が明らかである方が道路網整備計画を考えやすく, そ れへの適用が容易になると考えられることによる.
ところで, リンクを評価対象としその重要度を明らかにする場合, 従来はネットワー ク全体を最初の評価対象とし. あるリンクが正常に機能している状態の評価値とそれ を切断した場合の評価値の差をもとに当該リンクの重要度を定める研究が多くなされ てきた8),32) しかし, これらは当該リンクを切断した時の影響, すなわち災害時の影 響をリンクの重要度としているため, 道路網が日常的に機能している状況におけるリ ンクの重要度とは意味的には必ずしも一致するものではないと考えられる. そこで本 研究においては, 交通需要配分を行なった上で, リンク重要度を直接に評価すること を考えるものである.
ここで問題はリンクの重要度をし、かなる観点から把握するかであるが, 本研究では まず. a)ルート. b)リンク. c)ODぺア(発着ノードペア)といった3つのネットワーク 交通の基本構成要素からの観点にもとづいて泡握し. 次いでそれらを総合的に評価す ることとする. すなわち. リンクがネットワーク上で占める相対的重要度は, どのよ うなODノード間を結び, どのようなルートとして使用され. またその時. リンクは
どのような状態にあるかを. 個別にあるいは総合的に反映して氾握されるものである.
これらのうち. a)に関しては. 最短ルートを構成するリンクの重要性に着目した研 究6),32)があり. またb)に関しては従来よりリンク交通量や渋滞率などを用いて個別に は考慮されてきたところである. しかし, c)に関する検討, すなわち当該リンクがど のような発着ノードペアを結ぶルート上で使用されるかという観点は, 従来の研究に おいて必ずしも十分に考慮されてはいなかったといえる. ネットワーク上では. 2つの
発着ノードはし1くつかのリンクを介して結ばれるが, それらのリンクの重要度は, そ
れぞれの発着ノードがもっ地域機能の重要性により自ずと異なると考えられる. たと えば. 大規僕な都市相互を結ぶルート上のリンクと, 地方山村相互を結ぶルート上の リンクの重要性とでは, 前者の方が大きいと考えることは自然である. また, 地域開 発などの理由からこの逆の評価を行ないたい場合もある. これらを実現するためにリ ンク重要度にODぺアの観点を特に考慮に入れるものである.
ただし. ここで発着ノードの重要性の基礎を何に求めるかが問題となる. たとえば 両ノードが代表するゾーンの人口規模や都市的サービスに関連するポテンシャル等の 指標も考えられよう. しかしこれらの指標は, たとえば重力モデルに示されるように,
OD交通量との相関が高いことは明らかであり. 上記a)やb)以外に改めてそのよう な指標を評価に取り込む必要はないと考えられる. そこで交通需要とはまた異なった 観点をもっ指標を採用することが考えられ. 本研究ではそれを地域階層構造に求める ことを提案するものである. 発着ノードが属するゾーンは, それが地域空間上で果た す機能に応じて階層構造をなし, それゆえ地域階層構造が地域を理解する上で重要な 視点であることは前章までの分析で明らかになったところである. また, この地域階 層構造は, 単にそのゾーンの社会的経済的特性のみにより決定されるのではなく, そ の周辺のゾーンとの関係の中で決定されていることから, ゾーンごとの人口などとは また異なった観点を提供することができると考えられる.
以上に加え. 地域階層構造を考慮するもう一つの理由として, その道路網整備計画 への活用があげられる. すなわち, 地域階層構造を道路網評価に組み込むことによっ て. あるノードが属するゾーンの地域階層が将来変化した場合に, 道路網におけるリ ンクの重要性がし1かに変化するかが明らかにでき, また, 政策的には実際より上位の 階層に属するものとして当該ゾーンを位置づけたい場合のリンクの重要性を明らかに できる. これらは地域政策的な観点を道路網計画に導入できる点で有効である.
5.3.2 リンク重要度評価指標の定式化
先のa)^-'c)の観点からのリンクの重要性を整理し,定式化を行なう. まずa)に関し ては. 同じ発着ノード問であってもその問にいくつかのルートが存在する場合. その ODぺアにとって多くの交通量が流れるルート. 空間距離の短かいルートを構成するリ ンクが重要であるといえる. これらの重要度を定式化すれば,それぞれ式5-1, 5-2 に示すlκiとH古のようになる. 前者は, ODノード'lJ問のルートTの交通量をその OD交通量で除し. これをすべてのODぺアに関し集計したものであり,また,後者 は,'lJ問のルートTの距離とその最短ルート距離の比を集計したものである. なお,こ こで空間距離のみを考慮し時間距離を用いていないのは, 同一ODノード間での交通 需要配分後の所要時間は全ルートに関し等しいと考える等時間原則による. また,以 上の他にルート速度に関するリンク重要度も考えることができるが,等時間原則から jレート距離が明らかであればルート速度も明らかになるため双方を考慮する必要はな
し 検討の対象から除外している.
b)では. 交通量が大きいリンク,速度低下が大きいリンクが重要といえる. した がって,リンクの重要度は,それぞれ全リンク交通量と当該リンク交通量の比,理想 速度と配分後の速度の比より式5-3, 5-4 に示すWItとWjfのように定義できる.
さらにc)に関しては次のように考えられる. 本研究は,通勤-通学流動からえられ た,主中心, 副次中心, 周辺ゾーンの3段階の階層構造にもとづくが35),階層の高い 主中心と副次中心ゾーン間で使用されるリンクは,階層の低い周辺ゾーン間で使用さ れるそれより重要と考えることができる.
この考えにもとづき,地域階層に関わるリンク重要度Wムは式5-6 のように定義 できるが. ここでノード階層に関わる重みω[Jをいかに与えるかが問題である. 例え ば.計画上の観点から政策変数的に与えることも考えられるが,ここでは式5-7のよ うに,発. 着ノードそれぞれが属する階層の組合わせ(以降階層ぺアとよぶ)における 10Dペア当たりの平均交通量が全交通量に占める割合をもとに与えることとする. ま た,この際,交通量でなく人口やアクセシビリティなど,社会経済(SE)指標をもと に定めることも一法であろう.
なお,これらの各重要度指標は. その値が大きいほど重要度が大きいと評価される.
WA
一H古
一R'J
L2二Zzt
b
TqiJ7・/Qij
s J r=l
R、3
L L L
xitr . diJin / dijrs j r=l
(5 - 1) (5 - 2)
IF;t
UL/乞UL (5 -3)L
mt
= Vj)VL( 'llL) (5 - 4)�v.ム
一 乞tUIJ55
γ (5 - 5)I,),r
W[J {S[J/LQij}/NJJ (5 - 6)
り
ここに,
Yぽ,H先H!/�, 1吋,H公:}I慣にヲリンクLのルート交通量,ルート距離?リンク
交通量,リンク速度,階層構造に関わる重要度.ωJJ:発着ノード人jがそれぞれ属する地 域階層の組み合わせによる重み Ririj間て使用されるルート数.53rhj聞のT番めの jレート上にリンクLが有(1),無(0). Qij:ノードZ,J聞の交通量. dijr:しj問のT番めの ノレートの実距離.d22日J間の最短ルート距離. UL:リンクLの交通量. vL, VL(UL):リ ンク理想速度と配分後の速度 S[J:ijがそれぞれ属する階層I,Jの階層ぺアに関する交 通量. NJJ:ijがそれぞれ属する階層I,Jの階層ぺアを構成するODぺア数.
5.3.3 提案指標の基本的特性
(1)
リンク重要度指標聞の相関分析 上で定義した5つのリンク重要度指標は,そ れぞれ固有の意味をもっているが, 値の出現の仕方が類似している指標が存在するこ とも考えられる. もしそのような指標が存在するならば,場合によってはすべての指 標を考慮する必要はなく.し、くつかの代表的な指標を選択し 評価を行なうことも考 えられよう. そこで,ここではモデルネットワークを用い,いくつかのシミュレーショ ンを実行し指標間の相関分析を行なうこととする.図5-1 に,分析に使用した格子状,放射状ネットワークを示す. シミュレーション は. 表5-2に示すようにQV式,OD交通量のタイプにより4穫としている. また交 通需要の大きさにより指標間の相関関係が変化することが考えられるため, 各シミュ
レーション内ではOD交通量を増加させることにより. すべてのリンクが理想速度で 使用される状態から,すべてのリンクが渋滞を起こすまでの数ケースを設定している.
なお, 需要配分にあたっては等分割配分法を用い,リンク重要度の対称性が確保され るよう配分回数は多めに20回とした.
これらの各ケースごとに相関分析を行ない, 常に相関係数が 0.8以上となる指標の 組み合わせを整理した結果を表5-2に示す. ネットワーク形状やシミュレーションの 条件の設定の仕方により,明らかに相関のパターンが異なることがわかる. また,シ ミュレーションごとにみれば. 相関の高い指標も多いが,全シミュレーションを通じ
す
、μ 、ノF �
L..LJ
I"t、
-Ø
て高い相関をもっ折原ぺアは存在しないことが明らかになる. 格子状と放射状のネッ トワークの大きな相違は. 前者はLP;
t
を除く全指標が1群になるケースが存在する一 方で. 後者は数昨に別れていることである. これは. 後者のネットワークでは, 長さ の異なるリンクが混在していることと関連している. これらから. 階層構造, リンク 特性. OD分布などが多様な現実の道路ネットワーク内の各リンクの評価のためには,すべてのリンク重安度指標を考慮すべきであると判断できる.
:A :8 :C
Nha ド一
一
ノド ノ心一心中ノ中次辺主副周
口。。
(2)
リンク重要度の感度分析 各リンク重要度指標の基本的特性を明らかにする ために, 重要度指標がどのような場合にどのような値をとる傾向にあるかを分析する.リンク重要度に影響を与えると考えられる要因は. 大きくは1)リンク特性に関する もの. 2)リンクの接続の仕方に関するもの. 3)OD交通量分布に関するもの. 4)地域 階層構造に関するものの4種が考えられよう. また, これらに属する具体的な要因と しては, 1)にはリンクの交通容量とリンク長があり, 2)には代替リンクの有無があげ られる. さらに. 3)では OD分布ノfターンと大量の交通が発生・集中する拠点的ノード のネットワーク上での位置が考えられt 4)では主中心ノードや副次中心ノードの位置 や数, そして切[Jの与え方があげられよう.
以下では, これらの要因に関し感度分析を行なうものであるがt 4)のωIJの与え方 に関しては, より複雑なネットワーク構造を有し. 各階層に属する発着ノード数も多 い現実のネットワークを使用して感度分析を行なう方が. 様々なリンクが示す全体的 な傾向を把握しやすいと考えられる. よってこの分析のみに関しては, 次節で福岡都 市圏内の道路網整備水準の評価とともに行なうこととする.
図5-1 相関分析に使用したモデルネットワーク
表5-2 相関分析のシミュレーションの内容と結果
リンク OD要素 本1: リンク容量が
QV式
交通量 A:B:C=3:5:8(
格子網)ヲ
SIM-1 一定 一定 5:7:9
(
放射網)SIM-2 3種*1 一定 本2:0D要素交通量が,
SIM-3 一定 5種*2 周辺ー周辺:周辺-副次:
SIM-4 3種ι 5種‘2 周辺-中心:副次五IH欠:
副次-中心=1:2:3:4:5
モデル SIM 相関係数0.8を基準とした指標のグルーピング 格子状 SIM-1
(Wr�' W/�, W/�),(Wr�' W1ム)
SIM-2
(WιwιWIιwム),(VV1�)
SIM-3
(W'!J ,(Wr�) ,(W1ιwか, (w,ム)
SIM“4
(WιWr�,WIιwふ), (Wl�)
放射状 SIM-1
(WιW/�),(WιW:h), (W/�)
SIM-2
(Wr�' W/�),(Wιwι), (Wl�)
SIM-3
(vVr�),(Wr�, vVムト(W,ιvV/�)
SIM-4
(W九),(WιW:h),(WI�)' (WI�)
a
)
リンク容量とリンク長に関する感度分析 図5-2は, リンク容量とリンク長に 関する感度分析に使用した格子状ネットワークを示したものである. 本ネットワーク においては全リンク長, 容量は等しくt OD要素交通量もすべて等しく設定している.また. 各ノードの地域階層もすべて等しい. ネットワークは左右対象のため, ネット ワークの左半分のリンクのみにリンク番号を付している.
まず, リンク3のみの容量を変化させた場合の感度分析を行なう. 図5-3に, リン ク容量の変化にともなう各重要度指標値の変化を示す. ただし, W
ふ
はノードの地域 階層を一律としており. かつωlJが等しく. かつ全リンク長が等しいため. 式5-5よ り叫古
とまったく同じ挙動を示すことは明らかであるから, 図示してはいない.図より. W1とLP;iの挙動が類似していることがわかる. これは. ネットワーク型が 単純かっOD要素交通量も均一であることから, ルート交通量とリンク交通量の相関
2 3 4
5 6
7 TITL
r r γ d 16.0
14.0
12.0
10.0
8.0
WA
リンク容量とリンク長に関する感度分析に 8.0
使用した格子状ネットワーク 図5-2
7.0
6.0
リンク3の容量が大きい場合はその重 要度が高く, 低い場合にはその逆の傾向を示す. また, リンク3の代替リンク的機能 を有するリンク2の重要度は, リンク3の重要度の変動と逆の変動を示す傾向がある が高いことによると考えられる. 両指標では,
5.0
ことがわかる. 他方, lVr�はリンク3の容量が大小いずれの場合も, 全リンクの容量
が同じ場合よりも重要度が全体的に高く評価される傾向がある. しかしこの場合, 特 7
リンク
5 8 3 4
2 6.0
e 7 5 4 3 2 4.0
また,
W/�
リンクにどのリンクの重要度が高くなるかといった明確な傾向は見当たらない.
リンク3の容量が小さい場合にその重要度は高く評価され, 大きい場合 に関しては,
これは容量の大きさによる交通需要配分時の速度低下の度合の違 は低く評価される.
wlf
70 60 50 40 30 20 1 0
。
W川
0.110
リンク3の代替的機能をもっリンク 2の重要度が, lVえやLVliにおける変動とは逆にリンク3の変動と同様の傾向を示して
いることは興味深い.
また, 本指標においては,
いによるものである.
0.100
リンク3のみのリンク長を変化させた場合の各指標値の変動を. 図5-4に示す. 不ツ
0.090
トワークの条件は先と同様である. 図より, 4つの指標に関しては, 重要度は概ね類似
0.080
0.060 0.070
リンク3の重要度はそのリンク長が短い ど リンク3以 場合に大きく評価され, 長い場合に低く評価される傾向があるといえる.
外のリンクの中にもたとえばリンク4,7のように大きく評価されるものがあるが,
のようなリンクが高く評価されるかの傾向は明確ではない.
した傾向を示しているといえる. すなわち,
7
リンク
e 4 5
3 7 2
リンク
リンク容量がすべて等しい場合
リンク3のリンク容量のみが大きい場合 リンク3のリンク容量のみが小さい場合
5 6 4 3 2
ー-0-
ーーーー・戸ーーー ーー-一一一ー
b) 代替リンクの有無による感度分析
代替リンクの有無と各重要度指標との関係 を明らかにするために, 図5-5に示すような2つのネットワークを考える. (B)図は.基本ネットワーク(A)図に代替リンク2'を追加したものである. ネットワーク上の全 リンク長は等しく, またOD要素交通量, ノードが属する地域階層も
リンク容量に関する感度分析の結果 リンクの容量. 図5-3
一律に設定している.
分析結果を図5-6に示す. いずれの指標においても代替リンクが存在する そしてそれらの代替的機能をもっリンク3の重要度が低く評価
図より,
リンク2とリンク2',
2・
1)ンク HT L
r r rd
0.50
3 4 2
1.50
1.00 1.0
0.0 3.0
2.0 4.0
2'
リンク
wh
2 3 4
2.0
1.0 1.5 0.00
0.5 0.15
0.10
0.05 7
リンク
7 リンク
WIt
6
6 5
5 4
4 3
3 2 2 TJrL r r rd
1 0 30
20
1 5 25 35 5.80 6.00
5.90 6.10
一ーかーリンク長がすべて等しい場合
一一←ーリンク3のリンク長のみが大きい場合
一一骨ー-リンク3のリンク長のみが小さい場合
7
リンク
7
リンク
2
8
6 5
5 4
4 3
3 2
W川
WA
0.084
0.083 0.085
0.082
0.081 6.10
6.00
5.90
5.80
0.00 2
0.0
リンク長に関する感度分析の結果
図5-4 2・
リンク 3 4
2' 2
リンク
4
トワーク
3
園基本ネy
同町
回
司 リンク2'を追1JI1
代替リンクの有無による感度分析の結果
3 図5-6
21 3 2
2
司. 4 4
(8)
代俳リンクの有無による感度分析に使用したネットワーク (A)
図5-5
16.0 rd
1 4.0
12.0
白川 10.0
9101112 リンク 8
7 6 4 5 2 3 1 8.0
4.0 2.0 0.0 6.0
21 ・H ・\H ・ \1 田、
8 9101112 リンク
:'::11
7 6 5 0.12
WA
0.10
•
(8)
5
10
2 『
4
6 7
9
11 12
(A)
3
8
0.08
リンクの位置に関する感度分析に使用したネットワーク 図5-7
0.06
0.02
0.00 0.04
されていることがわかる. また図をみると. �Vr
�
のみが, リンク1,4に関して(A)図で の重要度よりも(B)図でのそれの方が高くなっていることに対し, 他の指標ではリン ク2ぅ3の重要度が(A)図でよりも(B)図で低くなっていることで異なっている.は. リンク2うを設定した場合. 代替リンクのないリンク1,4が最短ルートを構成する 意味でより重要な役割を果たすことを意味していると考えられる.
これ
3 4 2
ru-u vv一YV
urL r r /u
ネットワーク上どのような位置にあるリンクが
c)
高く評価されるかを明らかにするために.
末端リンクに関する感度分析
8.0
6.0
2.0
。γ 4.0
8.0
6.0
4.0
2.0
図5-7に示すようなネットワークを想定す
9 1011 12 1)ンク 8
7 6 5 4 2 3 0.0 91011 12
8
リンク
7 6 5 3 4 2 0.0
る. すなわち(ß)図は(八)図の基本ネットワークからリンク5を削除したもので与え られる. 両図を用い分析を行なった結果を図5-8に示す. 図より, PV
A
とmi
での重要度の値の山方が類似していることがわかる. すなわち, リンク4の重要度が最も大 きく, 次いでリンク3とリンク2が続いている. これらは, 末端ノードに接続すると いう意味でのリンク2の重要度よりは, リンク5の切断にともなう補完機能を有する という意味での重要度の方が大きいことを意味している. wi
f
もこれらと同様の傾向その変動の仕方が顕著である. リンク速度はネットワークの変化に 対して鋭敏に反応するとし1える. また. �
引
は, リンク4のみが特に大きく評価されこれは末端ノードに発着するルートは必ずリンク2を使用するが,
を示しているが.
.基本ネyトワーク ロリンク5を削除
ている. それに連
なるリンクが複数あるため, 最短ルートとして多く使用されるリンク4の重要度が高
リンクの位置に関する感度分析の結果 図5-8
く評価されたものと考えられる.
d)
OD分布パターンに関する感度分析 現実の道路ネットワークにおいては. 特 定の拠点的ノードに大きな交通量が発生-集中する傾向がある. そこで, 重要度指標が 拠点的なノードの分布の仕方にともなうOD分布パターンとどのような関係にあるかリンク特性とノードの階層は を分析するものである.
図5-9に分析に使用した絡子状ネットワークを示す.
1 2 6 7 11 16 1 2 6 7 1 1 16
リンク リンク
(3) (4)
‘ (2)
.. ,, 4E・,,.‘‘ F 、 , ー 、 I '-
(5) (6) (7) (8)
(10) 7 (11) 8 (12) 9 (13)
(14) (15) (16) (17)
(19) 12 (20) 13 (21) 14 (22)
(23) (24) (25) (26)
(28) 17 (29) "1 B (30) 19 (31)
(32) (33) (34) (35)
(37) (38) (39) (40)
5 (9)
6 10
11 15
(27)
16 20
(36)
21 22 23 24 25
図5-9 OD分布ノマターンに関する感度分析に使用したネットワーク 表5-3 OD分布型による感度分析の内容
OD分布型 拠点的ノ ー ド 81Ml 均一分布型
81M2 少極集中型 7,8,9,12,13,14,17,18,19 81M3 一極集中型 13
0.05
W{と
0.04 fこだし,
一般OD要素交通量:拠点、的ノードに関する
OD要素交通量= 1:4 0.03
0.02 すべて等しい. また感度分析は, 表5-3に示すようにすべてのOD要素交通量が等し
い均一OD分布, し1くつかの拠点的ノードに集中するOD要素交通量が他に比べ大き い少極集中型OD分布, ただ1 つのみの拠点的ノードに集中するOD要素交通量が他 に比べ大きい一極集中型OD分布の3つのOD分布型に対してシミュレーショシを行 なった.
分析結果を図5-10に示す. ただしネットワークは上下, 左右対称であるからリン ク1ム6,7,11,16に関してのみ示している. 図より, どのリンクが高く評価されるかに 関しては, I,pc
i
とnot
-時
とI吋
がそれぞれ概ね類似した傾向をもつことがわかる.すなわち前者ではリンク2, 11,16が高く評価されている一方で, 後者ではリンク11ぅ16 の重要度が大きい. 両者・において共通してリンク11,16が高く評価されるのは, ネッ トワーク中心部に位置するため多くのODペアのルートとして使用され. 交通量も多 いことによると考えられる.
また各シミュレーション間で重要度を比較すると,
�VT�'
vVr�
とmf
に関しては,0.0 1
0.00
1 2 6 7 11 16
リンク
IISIMl
(均一OD分布〉図S
1M2
(少極集中型00分布)回S
1M
3 (一極集中型OD分布〉0.45 0.40 0.35 0.3 0 0.25 0.2 0 0.15 0.10 0.05 0.0 0
W川
2 6 7 11 16
リンク
図.5-10 OD分布ノfターンに関する感度分析の結果