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公共施設の見学を社会科授業に活かす試み

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Academic year: 2021

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(1)

実践報告

公共施設の見学を社会科授業に活かす試み

一長崎歴史文化博物館、長崎地方裁判所・家庭裁判所、長崎市立図書館の見学一

はじめに

林 隆 弘 、 水 谷 綾 子 、 棋 謙 太 ( 長 崎 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 ) 福留真紀、池谷和子、飯塚知敬(長崎大学教育学部)

社会科教育の目的の一つは、子どもたちが地域の歴史、文化、産業等を理解す ることを通して、文化の新しい担い手となり、また社会の規範や公正さを大切に する良き市民として育っていくことを促すことにあるだろう。そしてこの目的の ために、子どもたちが地域の公共施設と充実した関わりを持つことは、これから ますます重要な課題になると思われる。公共施設や、資料(史料)と主体的・能動 的に交わることにより、子どもたちは、その後の人生に長く影響を及ぼすような 充実した体験を得ることができるだろう。

公共施設や資料との出会いと体験は、子どもたちだけでなく、大学生や成人に とっても重要である。ある出会いや体験が、その後の仕事や研究に深い影響を与 えたり、良き市民としての自覚を促す貴重な経験となることもあるだろう。そし て、生涯学習の充実が求められている今日、こうした施設の活用の重要性は今後

さらに自覚されていくと思われる。

ところで、こうした出会いと体験において、参加する側に一定の主体的・能動 的な態度や、予備知識等が前提とされることは言うまでもないだろう。何の予備 知識もなく、ただ受身の姿勢で見学に参加しでも充実した出会いや体験を期待す ることはできない。これは子どもにおいても、学生や成人においても同様である。

それでは、こうした充実した出会いと体験を産むために必要な、参加者の主体的 な態度や準備はどのようにして形成されるのであろうか。

こうした問題意識のもとで、私達は、今年度、教育学研究科の授業の一環とし て、長崎歴史文化博物館、長崎地方裁判所・家庭裁判所、長崎市立図書館の見学 を計画し、実施した。この小論は、見学に参加した教員と院生による、それぞれ の立場からの実践報告である。複数の公共施設を見学して考察することは、今回 が初めての試みであり、報告の内容はなお不十分なものと思われる。今後、こう した見学等の機会を増やし、考察を深めることにより、教育学部と公共施設との、

更に充実した関係を模索していきたいと考えている。

最後になりましたが、ご多忙の中、私達の依頼を快く引き受け、丁寧に施設や 資料を案内し、解説して頂いた、三施設の関係者の方々にこの場を借りて厚くお 礼申し上げます。

(2)

1、長崎歴史文化博物館(福留真紀)

)見学の概要

・日時:平成

27

6

6

日(土)

10

時半〜

12

時。

・見学者.教育学部教員

1

名 、 院 生

2

名 の 計

3

名。

筆者が担当している「歴史学研究」(学部

3年生対象)の授業の中で、毎年、

同館での研修を実施し、教育普及グループ研究員による、博物館と学校教育の関 係についての講義と、博物館のパックヤードツアーをお願いしている。今回参加 した院生は、その授業の受講経験者と、これまでに同館と仕事をしたことがある 者だったため、本見学会では趣向を変え、

2012

年に展示日ニューアルをした常設 展示を、同館研究グループ主任研究員の岡本健一郎氏に詳しく解説、および見学 者からの質問を受けていただき、院生が、博物館展示を社会科授業にどのように 取り入れていくか、自由に考える取り組みとした。

2

)今後の展望

社会科授業における博物館見学の意義の一つに、児童・生徒たちが、歴史史料 に、実際に触れることにより知的好奇心が刺激されることがある。同館には、「学 校向けプログラム」という、学年や学校側の目的に対応した様々なプランがあり、

それは、社会科以外の教科やキャリア教育にも及ぶ。博物館での展示室のガイド や講話、聞き取り調査をはじめ、出張授業、遠隔授業、移動博物館、貸し出し教 材のような取り組みも行われている。以前、

1

)に示した学部生の博物館研修の 講義の中で、小学生が「踏絵」を見て、その大きさに驚いたという話が紹介され たことがある。教科書の小さな写真に基づく授業では、その大きさが全くイメー ジできていなかったというわけだ。このように実物に接することによる新たな発 見は多い。その実例は、長崎歴史文化博物館教育実践報告書の『出会いが生み出 す学びのレシピ 〜学校×博物館=∞〜』(

2013

年)および『ーアウトリーチ活 動−

2005

2014

』(

2015

年)に詳しい。

本稿を執筆するにあたって、あらためて岡本氏に、今回の見学会の印象を伺っ た。院生を対象とする見学会は初めてで、歴史史料から長崎の歴史を理解しても らうだけでなく、展示の意図、観る人へのアプロ}チの仕方(一般向け、子供向 けと分かれていること。映像から史料への誘導など)も見てほしいと考えていた が、その目的は達成された。また、博物館のあり方にも興味を持ち、学生時代か ら博物館に親しみ、それをきっかけとして、将来、授業に取り入れるなど、学校 現場で活かしてほしいと考えている、とのことだった。

ほかにも「協力校・パートナーズプログラム」という、小中高の教員との研修 を実施するなど、学校現場との連携授業を多彩に進めている同館の取り組みに、

教育学部の学生・院生が積極的に参加することにより、学生たち自身の研究、お よび、より充実した社会科授業の構築が期待できる。今後とも、学部・院の授業 の中で、同館と連携した取り組みの機会を、増やしていければと考えている。

(3)

2、長崎地方裁判所・家庭裁判所(池谷和子)

)見学の概要

・日時、平成

27

1 1

13日(木) 13

時〜

14

時。

・見学者、教育学部教員

2

名 、 院 生

2

名 の 計

4

0長崎地方裁判所における説明ピデオと館内見学( 13

時〜

13

時半)

長崎地方裁判所においては、まずは司法の仕組みの全体像として、裁判所には 最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所といった種類が あり、それぞれどのような管轄の違いがあるのかということや、裁判の種類とし ては、民事裁判と刑事裁判があるが、それぞれの手続きの違い等を、分かりやす い説明ビデオを鑑賞することで理解を深めた。また裁判員裁判に関する詳しい資 料も頂いた。

続いて、地方裁判所の館内を見学し、特に長崎地方裁判所において一番大きな 法廷をじっくり見学させて頂いた。裁判員裁判をも行える法廷であり、大きなモ ニターや裁判員が証拠を見やすいように設置された最新機器等を見学したり、実 際に裁判官、検事、弁護士、被告人等の席に座らせて頂いたりした。

0長崎家庭裁判所における説明と館内見学( 13

時半〜

14

時)

地方裁判所の裏にある長崎家庭裁判所へ徒歩で移動し、そこでは裁判所事務官

(人事を担当する係長)から、裁判所の中でも特に家庭裁判所のあらましゃ業務 についてお話を頂いた。家庭裁判所は、少年事件(非行少年に対する処遇を決め る)や家事事件(離婚の争いや養子縁組の許可などの家庭で生じた問題を解決す る)の業務を行っており、プライパシー等により審判は非公開であるが、一般市 民にとって非常に身近な裁判所であるということであった。

続いて、家庭裁判所の館内を見学させて頂いた。子供の様子を見られるように おもちゃが置いである部屋の隣にマジックミラーのある部屋があったり、少年審 判の法廷では、地方裁判所の法廷とは違って、裁判官が少年と目を合わせやすい 高さに設定しであり、少年法上「審判は懇切を旨として和やかに行う」というこ

とを体現している造りとなっている等、大変興味深いものであった。

2

)教育的観点から見た裁判所見学の意義

社会科教育においては、単に教科書だけで社会の仕組みゃ状況を学ぶだけでは 不十分で、実際にその場所に行ってみたり、施設見学をしたり、そこで働いてい る人の話を聞くことで、より現実的なイメージがしやすくなり、理解も進むこと になる。特に、裁判所に関しては、実際に館内や法廷を見せて頂き、職員の方か

らのお話を聞くことで、堅く難しいイメージ、自分は一生涯関わらないだろうと いうイメージから、自分の生活にも身近かも知れない、より詳しく知ってみよう という興味も出てくるであろうと思う。今回は、残念ながらスケジュールの関係 上、地方裁判所における裁判の傍聴は叶わなかったが、次回には、刑事裁判と民 事裁判の傍聴も見学スケジュールの中に入れると、ニュースで聞く裁判の実態が

より鮮明に理解出来るようになるのではないかと考えている。

(4)

3

、長崎市立図書館(飯塚知敬)

)見学の概要

・日時、平成

27

1 1

13日(木) 14

時半〜

16

時半0

・見学者、教育学部教員

3

名 、 院 生

2

名 の 計

5

0

館長による図書館の役割の説明と質疑応答(

14

時半〜

15

時半.会議室)

館長から、図書館が地域の情報の拠点や地域の読書施設としての役割を持って いること、また地域の情報の保存と活用、住民の生涯学習を支援する役割を担っ ていることについて説明があった。また、図書館には、資料の貸出、レブアレン スサーピスの他に、お話し会、映画会、講演会、講座などの取り組みがあること、

県立図書館が資料の保存を重視するのに対し、市立図書館は市民のニーズに答え ることを重視している等の説明があった。

続く質疑応答では、指定管理者制度や

PFI

制度について、ベストセラー等の人 気の集中する書物に対する取扱いについて等の質問や、調ベ学習や団体貸し出し に対する図書館の対応についての質問等が出され、館長から丁寧な説明があった。

O

館長と担当者による館内の案内(

15

時半〜

16

時半)

55万冊の蔵書をコンピュータ管理できる自動化書庫や、自動貸出機等の設備、

テレビ画像の編集設備をもっスタジオ編集室、蔵書の修理などボランティア活動 の部屋等を見学した。また学習室や生涯学習室、こどもとしよかん、視覚障害者 のための対応装置や新聞の保存等について説明を受けた。最後に館内の空間に延 びる吹き抜けのクロスロードと、それを彩る美しいステンドグラスについての説 明があった。

2

)今後の展望ー教育学部と市立図書館の連携

長崎は歴史的にも、国際商業都市としても多くの貴重な資料を有しており、さ らに被爆という未曾有の体験を経ていることから、資料の保存が市立図書館の重 要な役割であることはもちろんである。しかしそれだけでなく、市立図書館は、

資料にあるように、「能動的な市民の自己形成と、活力ある市民社会づくりへの貢 献」、「市民力」の向上という積極的な役割を目指している。このような役割には、

教育学部の役割と共通する部分がかなりあるように思われる。それゆえ、これか ら相互の連携を深めることで双方が利益を得ることができる領域が多くあるので はないだろうか。私は今後の展望として、以下の

3

つを考えてみた。

①図書館見学等の交流において、子どもの主体的な態度や予備知識等の準備を、

どのようにして教育現場で育成していくことができるのか、研究を進めること。

②生涯学習は、市立図書館にも教育学部にも共通の課題である。市立図書館が実 施している様々な行事や試みは、教育学部にとっても大いに参考となるだろう。

③資料には「図書館の自由に関する宣言」や、基本的人権のひとつとしての「知 る権利」について述べられている。市立図書館のこのような社会的な役割につい て理解することで、市民としての自覚をより具体的な仕方で深めることができる。

(5)

4

、長崎歴史文化博物館を授業に活かす試み〜日蘭貿易の学習〜(林 隆広)

高等学校で実施される日本史 Bの授業で、日蘭貿易はどのように扱われている か、最も情報量の多い教科書である山川出版社の『詳細日本史 B』(以下、山川教 科書)をもとに確認する。山川教科書では「・・鎖国により、日本に来航する貿易 船はオランダ船と中国船だけになり、貿易港は長崎

1

港に限られた。オランダは パタヴィア(ジャカルタ)においた東インド会社の支店として長崎の出島に商館 をおき、貿易の利益のみを求めた①。−明滑交替の動乱がおさまると長崎での貿 易額は年々増加した③・・(①は脚注で、「オランダ船は、中国産の生糸や絹織物・

毛織物・綿織物などの織物類と、薬品・砂糖・書籍などをもたらした。

1660

年 代 にヨーロッパで斤の価格が上昇すると、銀にかわって小判が輸出されるようにな った」、③も脚注で「輸入品は、中国産の生糸・絹織物・書籍のほか、ヨーロッパ からの綿織物・毛織物・東南アジアの砂糖・蘇木・香木・獣皮・獣角などであっ た。日本からの輸出品は、銀・銅・海産物などがおもであった) ・』と記述され ているロここでは、禁教令および寛永の渡航禁令を経て「いわゆる鎖国」が成立 し、制約された他国との交流の中で長崎に出島と唐人屋敷が形成されたことを説 明する内容の記述が中心である。脚注で主要な貿易品を触れてはいるが、初期の 主要な輸入品であった生糸が圏内生産の増加や日朝貿易の伸展により、やがて輸 入されなくなる事実など、長崎での日蘭貿易がどのような実態であったのかにつ いて踏み込んだ説明はなされていない。一般的な意識(あるいは先入観)からい って、「日蘭貿易」と聞けば外洋船がー捜千金を求めて官険的に波講を越え、準か 欧州の珍しい文物をもたらす、いわば欧州と極東の直接的な貿易を想像する場合 が多いと思われる。そのため、これから検討する授業は、そのような先入観を打 破するとともに、近世における巨視的な国際交流を理解するうえで有益な内容と

なることが求められる。

提案する授業は

1814

(文化

11

)年の出島における貿易品の記録をもとに構想 することにする【石田

2004Jo

この年にオランダ船が持ち込んだ貿易品を整理し、

教材化したものがく別紙

1

>である。この資料を生徒に提示し、オランダ船がど のような物品を招来したか確認させる。次に、貿易品を分類し、その貿易品がど の地域からもたらされたか生徒に考えさせる。この際、可能であれば代表的な貿 易品の実物を用いたカード<資料

2

>を作成し、大きな世界地図の上に配置する 活動を涯で行わせるなど、生徒の主体的な活動を積極的に取り入れて行うことを 考えたい。実物の準備として、例えば羅紗であれば毛織物、更紗であれば絹織物、

蘇木やエイ皮など、インターネットで比較的安価に購入できるものも多い。実物 の入手が難しい場合は、写真で代用してもよいだろう。またこの活動に

ALT

教員 を加えることも検討したい。長崎大学近郊の高等学校であれば、多文化社会学部 の留学生との連携も可能かもしれない。他国や多文化に属する人たちとの協同作 業は、より深い印象となって生徒の理解を促すだろうロこの活動を通して理解で

(6)

き る こ と は 、 日 蘭 貿 易 と い う も の が ア ジ ア 的 要 素 の 強 い 貿 易 に 立 脚 し て い る と い うことである。オランダは

1602年 に そ れ ま で の 諸 貿 易 会 社 を 統 廃 合 し て 東 イ ン

ド会社を設立してインドネシアのジャワ島(パタヴィア)に商館を構えて拠点と したが、ここを基点に中継貿易を展開し、その最も重要な輸出先が日本であった。

例えば、欧州から輸入される品物は毛織物が主体であり、数量もさほど多くない。

一 方 、 東 南 ア ジ ア か ら は 日 蘭 貿 易 当 初 は 生 糸 、 後 に 白 砂 糖 が そ の 容 量 の 大 多 数 を 占めるほか、絹織物や綿織物、鮫や蘇木など種類も数量も多い。今回、提案した 授 業 は 、 日 蘭 貿 易 の 構 造 が 実 は 東 南 ア ジ ア を 基 点 と し た ア ジ ア 中 心 的 な 貿 易 で あ ったことを生徒に理解させる、ある意味で生徒の先入観を打破することを目的と しているが、ここに空間的分布論(貿易品の原産地)だけでなく時間的推移(貿 易 品 の 時 間 的 変 化 ) を 加 え る と 、 江 戸 時 代 当 時 の 日 本 社 会 の 産 業 ( 特 に 生 糸 の 生 産 量 の 増 加 ) や 食 文 化 ( 特 に 白 砂 糖 の 使 用 増 加 ) の 変 化 と い う 視 点 で の 授 業 も 可 能であろう。

【参考文献】石田千尋

2004『 日 蘭 貿 易 の 史 的 研 究 』 吉 川 弘 文 館

< 資 料1> 

1814(文化11)年 オ ラ ン ダ 船 積 み 荷 一 覧

項 目狸々詞品

F

数 量 ※ 現 代 一 般分 類

12&  36m

9 &  

1  42& 

1  49

ラ分シかャ ら な い ほ ど 毛 羽 立 た せ

1  43& 

12& 

i n  

12& 

1  6 &  

1  12& 

10& 

2  40

量芭同 89&  綾 織 の 毛 織 物

2  40& 

: : 喜

40& 

3  25& 

置3表司ム奪;ガ担J面車やb店Jム叩望L工レ~帝aスぎF由3宇に国らS民

瞳 軸

4  200& 

5  5000& 

1開29。~渇2反~

議 糖

828000 

前冨ー…画4守禽柏禽岩面山匂包932

e

キ三z

10  10000 

11 T 2000 

と百して里使香用 とも

12 

158

13  60800 

14  1600 

15  20000 

< 資 料

2 >

; ミ ミ 〆

震霊能F者圭程

m

意思〉

J

胡 持 軍J 蚕軍オミザ 白 砂 野 奮J

産地〈マスクデータ)

欧州(英国〉

謹呈烹T

J

(7)

5

、裁判所見学を授業に活かす試み 〜裁判員制度の学習〜(水谷綾子)

来年の「選挙権年齢

18

歳へ引き下げ」に関連して、衆議院の選挙人名簿から 無作為に抽出された候補者の中から選任される「裁判員」について、

18

歳から の選任が可能になるのかということが注目されているロこの点について、法務省 では「裁判員は当分の問

20歳以上の方から選任されることとなります」(法務省 H P

より抜粋)としているが、これまでも法制審議会は「選挙権年齢が引き下げ られるならば」という前提で

18

歳成人が適当であるという方向性を示しており、

固としても民法の成年年齢を

18

歳に引き下げる方向で現実的に動いていくと予 想される。そうすると、高校生が裁判員として裁判に参加するということは現段 階ではあまり現実的ではないが、高校卒業後社会人となる「

18

歳』が裁判員に 選任されることは、近い将来想定して授業しなければならない。

高等学校公民科の学習指導要領では、「政治・経済」の内容とその取扱いにおいて、

「裁判所を扱う際には、国民の権利を守り社会の秩序を維持するために法に基づ く公正な裁判の保障があること、公正な裁判のためには司法権の独立が必要であ ることを理解させる。また、『裁判員制度を扱うこと』(内容の取扱い)を通して、

国民の司法参加の意義を理解させるとともに、刑罰の意義、犯罪被害者の救済や 犯罪者の更生に触れるなど指導を工夫することが考えられる」と明示されている。

1 8

歳の有権者として、国や地方における議会政治とのかかわりがより身近な問 題となるうえで、「司法」のあり方にもより関心を高め、「法に基づく公正な裁判 の意義」を主権者として守っていくという視点から考える授業が重要となる。そ こで、「現代社会」や「政治経済」における「裁判所のしくみと人権保障」と関連 して、実際に裁判所見学や裁判の傍聴を授業に取り入れ、高校生として裁判員制 度の重要性(必要性)や裁判員に選ばれた場合の不安や疑問などについて、裁判 の専門家(裁判所職員や裁判官など)から直接学ぶ授業プログラムを計画したい。

①裁判所見学(裁判傍聴) : 

2

時間程度

.裁判に関する基本的な講義(裁判所職員) ・・授業で学習した裁判のしくみを ふまえた内容

.裁判員制度に関する研修…実際の法廷で簡単なロールプレイングなど

.裁判の傍聴・裁判員制度による刑事裁判が理想的

*裁判員の役割や意義、問題点や疑問などを次の授業で話し合うことを前提に、

気づきをしっかり記入させておく。

(8)

②裁判員制度を考えるテーマ学習(裁判所の出前講座と連携)

略 案

学習の流れ 指導上の留意点

・前時の裁判所見学(裁判傍聴)で|*裁判所からの講師を紹介 の活動を振り返り、本時は、「実際に

自分が裁判員をつとめるつもりでそ の役割や課題を考える」というねら いを確認する。

展開 |・

4 〜 5

名のグループに分かれる。 |・「もし自分が裁判員なら」

(  3 5

分) |・各自で、裁判所での気づきから「裁|という視点で、重要性だけ 判員制度について考えたこと」とし|でなく不安な点や疑問点な て、できるだけたくさんの「気づき」|ども積極的にあげていくと

まとめ

(  1 0

分)

や「考え」を付筆に書きだす。 |いう方向性を示す。

・それぞれの「気づき」「考え」をグ|・裁判所職員の方には、裁 ループ内で発表(模造紙に張り付け|半

J I

員に対する生徒の率直な る)し、同じようなものをカテゴリ|意識に触れてもらう。

一分けしていく。

* K   J

法の活用

・どんな書き方でもよいの で、できるだけたくさんの 付筆を記入させる。

.グループ内では他の人の

・ 完 成 し た カ テ ゴ リ 一 分 け を も と | 意 見 を 否 定 し た り 批 判 し た に、各グループの協議内容を発表す|りしないよう注意する。

る。 | ・ グ ル ー プ 分 け す る 際 に は、裁判員の「意義」「難し さ」「問題」などのタイトル でまとめさせる。

.裁判所講師の講評 |・「公正な裁判による社会 疑問点に関する解答や課題(問題|正義を守る 1という視点で、

点)の克服に向けた今後の取り組み|裁判との関わりを考えさせ について

.本時の授業を通して、自分の生活 と裁判との関わり方について考えた ことをまとめる。

る。

(9)

6

、長崎市立図書館を授業に活かす試み(横 謙太)

全国学校図書館協議会の「第

61

回学校読書調査」によると、

2015

5

月にお ける

1か月間の平均読書冊数は、小学生は 1 1 . 2冊、中学生は 4 . 0冊、高校生は 1 . 5冊であり、中学校段階から平均の読書数が大幅に少なくなっていることが読

み取れる。中学生以降は学習内容が増え、部活動など読書以外の活動に時間をと

られることが原因のひとつではと考える。また、中学校では小学校での授業より も図書館や図書室を利用した授業が行われにくいということも理由のひとつでは ないかと予想するロそれだけではなく授業内外で生徒が調べ学習を行なう際も、

現在は書物だけではなくインターネットを活用する場合も多いのだろう。また、

新宿区立の小・中学校を対象にした、「この 1 か月間で、学校の図書館の本(図 鑑や辞書も入ります)を使って、調べたり勉強したりしましたか。(授業中に使っ た場合も入ります。)」という質問に対して「はい」と回答した中学生の比率は

29.8%

であったが、「この

1

か月間で、インターネットを使って、調べたり勉強し たりしましたか。(授業中に使った場合も入ります。)」という質問に対して「はい」

と答えた中学生の比率は

71.5%

であった。また、このアンケートによると、「本を 使って勉強した」小学生低学年の比率が

70.6%

、高学年の比率が

59.1%

であるこ とから、中学校段階から学習において本を用いる機会が少なくなっていることが よく分かる。

このような現状を打開するための方法のひとつとして、中学校段階での教科授 業における図書館や書物を利用した授業展開、教育プログラムの編成が必要では ないだろうかと考える。『中学校学習指導要領解説社会科編』の「第

3章

指 導 計画の作成と内容の取扱い」においても「指導の全般にわたって、資料を選択し 活用する学習活動を重視するとともに作業的、体験的な学習の充実を図るように する。その際、地図や年表を読みかつ作成すること、新聞、読み物、統計その他 の資料に平素から親しみ適切に活用すること、観察や調査等の過程と結果を整理 し報告書にまとめ、発表することなどの活動を取り入れるようにする。

Jとされて

いる。また、地理・歴史・公民の

3

分野それぞれの目標にも様々な資料の選択や 活用について言及されている。以上のことから中学校社会科の各分野で積極的に 図書館や書籍資料を活用した学習活動を計画し実践することが必要であることは 明らかである。

長崎市立図書館を利用した学習計画として、中学

2

年生の地理分野での「身近 な地域の調査」の授業を想定した。この授業で市立図書館を利用するように想定 した理由としては、学校図書館やその他の施設、インターネットなどよりも郷土・

地域に関する資料が集めやすいと考えたからである。利用する市立図書館のサー ビスとしては、図書館見学と利用法の説明、資料の探し方・調べ方についての講 義(レファレンス)、団体貸出を想定している。これらの活動を通して、地域施設 である市立図書館に興味と親しみを持ってもらい、授業後も自主学習等で進んで

(10)

利用しようと思ってもらうことがねらいである。このねらいを達成するためには、

生徒一人一人が活動を通して市立図書館の利用法を身に付ける必要がある。また、

図書館での調べ方や文献調査の方法を市立図書館での活動を通して指導すること で、本を使った学習・研究の方法を身に付けさせることも狙いのひとつであるロ 生徒が将来高校や大学へと進学した場合、本を使った調査・研究は必要不可欠で あると考えられるため、その時の助けとなるように中学校段階でこの授業を想定

した。

授業展開

①調査テーマの決定(

1

時間)

• 4

6

人程度の班を構成し、自分の住む県(長崎県)もしくは自分の住む街(長 崎市)についての疑問を挙げて、その中から研究テーマ、仮説(予想)、どんな ことを調べる必要があるか、どのようなことが分かる資料が欲しいかなどをま とめ、研究計画を想定する。

②図書館見学(

2

時間)

・職員からの説明を聞き、施設内を見学することで、市立図書館がどのような場 所であるのか、またその利用法について学習する。

−調べ学習の仕方、資料の調べ方について講義を受ける。

−学習した内容をふまえて、研究計画に沿って必要な資料を収集する。資料を探 すことが難しい場合は、レファレンスサーピスを利用する。

③資料研究(

1‑2

時間)

−市立図書館で見つけた資料を基に、研究を続ける。この時、追加で資料が必要 になった場合に備えて教師は生徒たちの研究テーマを考慮しながら団体貸出の サーピスを利用して市立図書館の本を学校に用意しておく。

④研究のまとめ・発表(

1‑2

時間)

−調べてわかったことを班ごとにレポート用紙にまとめ、それを基に発表する。

また、活動の振り返りとして、市立図書館を利用した調べ学習に対する生徒の 感想を書かせる。もし可能であれば、市立図書館を利用しての感想や見学に対 する感謝状と共に研究内容をまとめたレポートを市立図書館へ送付できるとい いだろう。

参照

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