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未成年者と契約1必要品契約について一

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未成年者と契約

1必要品契約について一

吉 田 和 夫

はじめに

 具体的範囲や法律構成に違いはあるとしても︑一定の要件に該当する人々の﹁契約能力﹂ないし﹁行為能力﹂に何

らかの制約を課するという点では︑七七体系はある程度の共通性を有する︒そうした準則の根底に当事者たる本人の

保護という観点があることは疑いない事実であり︑保護の必要性自体はもちろん否定されるべきものではない︒しか

し︑民法あるいは契約法の無能力者制度が︑結局は有産者を保護するという機能を営む結果になりがちであること︑

また本来は保護のための規定であるはずのものが︑逆に本人︵未成年者︶にとって不利益となることもあり得るとい

うこと︑無能力者が﹁詐術﹂を用いるなど︑いわば保護のための制度を濫用することがありうること︑などがしぼし

ば指摘される︒また︑無能力老制度は︑法律上の保護者︵法定代理人・保佐人︶をもつ無能力者にとっては︑利益に       ︵1︶こそなれ不利益をもたらすものではないが︑保護者を欠く無能力者にとっては︑有害な場合すらあるというのもまた

早稲田社会科学研究 第45号  92(H4).10

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事実であろう︒本稿は︑未成年者と契約に関する様々な問題のうち︑比較的最近になって解釈論として有力化しつつ

ある﹁必要品﹂契約︵﹁必需品契約﹂あるいは﹁必需契約﹂と表現されることもある︶という概念につき︑民法制定

当時の経緯やその後の学説の動向を概観することによって︑解釈論として同理論の持つ可能性を検討するための出発

点とすることを目的とするものである︒

 さて︑日本法においては民法第四条第一項が﹁未成年者力法律行為ヲ為スニハ其法定代理人ノ同意ヲ得ルコトヲ要

ス但単二利益ヲ得又ハ義務ヲ免ルヘキ行為ハ此限二在ラス﹂と規定し︑同条第二項が﹁前項ノ規定二反スル行為ハ之

ヲ取消スコトヲ得﹂と規定した上で︑例外的に第五条が﹁目的ヲ定メテ処分ヲ許﹂した財産についてはその目的の範

囲で未成年者が随意にこれを処分でき︑ ﹁目的ヲ定メスシテ処分ヲ許﹂した財産を処分する場合も同様であるとして

いる︒こうした考え方は基本的にはドイツ法に由来すると見られる︵後述するように︑梅謙次郎博士はこれをドイツ

における﹁明示許可主義﹂と呼んでいる︶︒ これに対して︑イギリス法︑そして基本的にそれを継受するアメリカ法

においては︑かなり古い時代から一貫して︑生活に必要な食料品その他の﹁必要品﹂ないし﹁必需品﹂︑さらには医

療契約︑必要な教育を受ける契約︑法律的助言を受ける契約など﹁必需﹂と見られるものについては︑たとえ未成年

者であっても供給された物その他についてはその合理的対価を支払わねばならないという考え方が取られている︒

 英米法上のいわゆる必要品契約は︑通常︑以下のように説明される︒

 ﹁必要品﹂ ︵必需品︶について一八九三年動産売買法第二条︵QD巴Φo︷Ooo匹ω>o∬一◎︒OG︒りω●N︶は﹁本条において

必要品とは︑当該未成年者の生活の程度に適合し︑かつその売却および引渡の時点で現実の必要に適合するものをい

う﹂と定義する︒これは基本的には同法制定以前の法準則をそのまま条文化したものと見られている︒この場合の必

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未成年者と契約

要品とは︑生命を維持するために﹁必需﹂なものに限られるのではなく︑その身分や生活程度に応じて相当な生活を

維持するのに必要であると認められるものをいうのであって︑人によってその範囲が異なることになる︒それととも

に︑この基準に適合する必要品が︑売却・引渡の時点において現実に当該未成年者に必要であったことも必要とされ

︵2︶る︒また︑必需的な物品の供給契約に限らず︑医者に診察してもらう契約や︑法律的助言を受ける契約︑必要な教育      ︵3︶を受ける契約等︑未成年者に必需的なその他の契約をも含んでいる︒なお︑この場合に未成年者が負担する責任の法

的性質について︑それが契約責任的なものなのか︑あるいは準契約責任︑原状回復的責任としての性質を持つものな

のかという点については若干争いのあるところである︒

 以上のような必要品契約の法理は英米法特有のものとされ︑大陸法体系と異なり英米法体系においては包括的な法

定代理人の制度が存在しないことがその大きな原因となっていると言われている︒そうした制度的な違いはあるもの

の︑わが国の民法の制定当時においても︑この二つの考え方は対立し︑かなり激しいやり取りが行われたのである︒

 注

 ︵1︶ 四宮和夫﹃民法総則︵第四版︶﹄四七−四八頁︵弘文堂・一九八六年︶︒

 ︵2︶ 田中和夫﹃英米契約法︵新版︶﹄六四頁︵有斐閣・一九六五年︶︒

 ︵3︶ そのため︑これはむしろ﹁必需﹂契約と訳すべきだとも言われる︵田中・前掲書六六頁︶︒

一一

ッ法典制定当時の議論

 未成年にとって必要な行為については法定代理人の同意を不要とすべきであるとの意見は︑民法典の起草に際して

法典調査会の各種委員会で強く主張され︑法典調査会総会で一度その採用が可決されたにもかかわらず︑結論として

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は︑起草委員の一人である梅謙次郎博士の強硬な反対意見が最終的には多数の賛成を集めた結果︑明治二八年一二月       ︵4︶二〇日の整理会で削除されるに至っている︒基本的には︑起草委員側の提出した原案のようなドイツ法的な考え方を

採用するか︑あるいは﹁必要品契約﹂というイギリス法的な構成を採用するかが争点になったということができる︒

以下では主査会︑総会等の議論を順次概観していくことにしたい︒

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 ︵一︶ 第一〇回民法主査会︵明治一=ハ︹一八九三︺年一〇月三日︶

 ω まず︑第五条について﹁第五條 法律上ノ代理人力目的ヲ定メテ虎分ヲ許シタル財産ハ其目的ノ範囲内二四テ

未成年者随意二之ヲ庭分スルコトヲ得目的ヲ定メスシテ庭分ヲ許シタル財産ヲ虚分スル亦同シ︵ツユーリヒ六七〇︑

七五七︑芝草八四︶﹂︵現行第五条では︑﹁法律上ノ代理人﹂が﹁法定代理人﹂となっている等︑若干の修正がなされ

ている︶とする旨の書記朗読がなされ︑ ﹁本草ノ規定ハ既成法典中二存セス又外辺二世テモ法文二此規定ヲ掲クルモ

ノ稀ナリ而モ其必要歓クヘカラサルコトハ敢テ喋々ヲ待タス蓋シ未成年者ト錐モ修學其他ノ需要ノ繋目多少ノ契約ヲ

締結シ多少ノ財産ヲ虚分スルノ必要アルハ論ヲ待タス然ルニ若シ此等日需ノ行爲型付テ猶ホ一一法定代理人ノ同意ヲ

得タルニ非サレハ後日取消サルルコトアリトセハ誰レカ安ンシテ未成年者ト此等ノ取引ヲ爲ス者アランや是レ本営ノ

必要ナル所以ナリ︵英國二半テモ千八百七十四年冒富三ω菊①密h︾9第一條二掠レハ未成年者が必要品ヲ購ヒタル       ︵5︶ハ全ク有敷ナリトセリ是レ蓋シ本條ト同一ノ精神二出テタルモノナリ︶﹂という理由が述べられた︒ただし︑提案の

﹁理由﹂ではイギリスにおける制定法の条文が掲げられるなど︑一見すると﹁必要﹂概念を採用あるいは支持するか

のようであるが︑条文上はそのような立場がとられているわけではない︒

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未成年者と契約

 なお︑この﹁理由﹂については︑ ﹃未定稿本/民法修正案理由書 自第一編至第三編 完﹄と﹃以活版換騰爲/民       ︵6︶法修正案理由書﹄では︑その内容に相違があることが広中教授によって指摘されている︒

 ② このような提案に対しては︑まず﹁露分﹂という用語に関連して︑疑問が提示される︒すなわち︑未成年者

︵発言中では﹁幼者﹂︶も日用品等の売買の取引を行う必要があるが︑これでは結果的に相手方は一切取引に応じな

いということになり︑幼者の保護を害することになるのではないか︑との質問が土方寧委員から出された︒       ︵7︶ これに対しては︑梅委員から︑ ﹁虜分﹂には︑不動産も動産も金銭も入るとの回答がなされている︒

 ㈹ 次に具体的な事例に即した意見が提示された︒すなわち︑たとえぽ﹁月々十圓ノ學資金﹂を与えるとしておい

た場合︑その範囲内で使っている場合は﹁庭分ヲ許シタル財産﹂ということで有効ということになる︒提案の﹁理

由﹂にあるような﹁必要品﹂購入契約が有効ということになると︑買ったものが必要であるということが裁判上決ま

った場合は︑その代価がたとえ月々十円を超過していたとしても﹁必要﹂であれば有効となり︑支払義務を負うこと

になる︒となると︑目的が﹁修學﹂と決まっていた場合で︑もし修学に必要な物を買って十円を超過したときに︑

相手方としては︑十円以内ならば支払を求めることができるがそれ以上は請求できないということにならないだろう       ︵8︶か︒概ね以上のような趣旨の質問が提出された︒

 これに対しては︑ ﹁必要品︑品物ノ必要ト云フ方二重キヲ置ク方が宜カラウト云ウ事デアレハ此書キ方一往カナイ

ト思ヒマスルガ︑私共ノ考ヘデハ其方ヨリモ威分スヘキ財産ノ方ヲ言ツタ方が宜シイト思ヒマス︒要脚ハ必要デアル

カナイカト云フ事ハ詰リ程度ノ話テ見込テアル︑後トカラ必要デアッタラウ無カッタラウト云ウ事ハ大愛天明シ悪ク       ︵9︶イ事力往々アラゥト思ヒマス﹂との回答がなされた︵このように︑ ﹁必要﹂よりも﹁言分スヘキ財産﹂に重きをおく

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べきであるとの起草委員の見解は︑最後まで一貫して示され続けている︶︒

 すなわち︑まず︑学生が﹁修學﹂のための道具を買った場合︑それは当然有効ということになるのであって︑それ

が高価だとか︑さほど必要でなかったとか︑そういう事情があったかもしれないが︑それはそれでも構わないのであ

り︑それは有効と扱うべきであるとの考えが示され︑次に︑そもそも修学の用をなすかなさないかが争いになる可能

性もあるのであり︑ ﹁目的を定めない処分﹂と言う方が始めにある金額だけを与えたということであれぽそれで支払

えぽたとえどういう目的であったとしても後から苦情が起きることがない︑つまり﹁財産上ノ方カラ極メタ方量便宜

デハアルマイカ﹂というのが梅委員によって示された起草委員側の見解である︒ ﹁夫レデ結果二至ッテハ大シタ違ヒ

デハアルマイガ︑如何ニモ三崎サンノ申サレタヤウニ理由が違ツテ居ッテ英吉利法文ト二番ツテ︑謂ハ馬主ト客トカ      ︵10︶違ツテ居ルヤウテアリマス﹂というのである︒このような﹁財産ノ方カラ極メル﹂べきだとする考え方も︑起草委員

側から繰り返し示されている︒

 ω なお︑この発言に関連して︑条文の文言に関する二◇の修正意見が出された︒その第一は︑ ﹁未成年者力必要

ナル法律上ノ行爲ヲ爲スニハ其法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ルヲ要セスシテ之ヲ行フコトヲ得﹂と修正すべきだとする    ︵11︶ものであった︒これは︑未成年者がある行為を行った当時に︑その者にとってそのような行為がはたして必要であっ

たか否かの判断が事実上困難なのではないかという梅委員の意見に反論してなされたものであった︒すなわち︑確か

に判断は困難であるかもしれないが︑証明困難ということはこの問題に限らないのであって︑結局︑問題が発生する

のは︑未成年者がある行為を行い︑それを後日取り消そうとする場合ということになるが︑・その場合には︑ ﹁必要で

あった﹂ということを相手方が証明しなければならないということにしておけば︑・それで未成年者は十分保護される

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未成年者と契約

と土方委員は主張するのである︒イギリスにおいてこのような準則が数百年前から存在するということ︑そして﹁必

要であったか否か﹂を決するさいに特に困難があったという判決もないようだということも根拠として上げられた︒

 この修正意見に対しては︑もう少し文案を練らなければならないとしながらも︑やはり﹁必要品﹂といっても確か

に色々あるが︑それも裁判官の適当なる判断にまかせるしかないのであり︑結論的にその趣旨には賛成であるとする      ︵12︶意見も出された︒

 ⑤ 修正意見の第二は長谷川喬委員によるものである︒この修正意見は︑土方・末松意見に賛意を示しつつ︑第五

条ではなく第四条但書の文言について﹁但単二権利ヲ得債務ヲ﹂に続く部分を﹁免カレ又ハ未成年者二必要ナル法律      ︵13︶上ノ行爲ハ此限リニ在ラス﹂としたらどうかというものである︒

 ㈲ このように︑審議の当初より︑何らかの形で﹁必要﹂という概念を採用すべしとの意見が複数の委員より提出

されたのであるが︑これに対して梅委員は次のように具体的な例を示し.つつ︑反論している︒

 すなわち︑①﹁必要ナル行書﹂というと︑たとえぽ家を借りる契約︑さらには家を買うという契約すら﹁必要﹂と

いうことになって︑それでは際限なくなってしまうのではないか︒②また︑第五条では不充分であるという意見に対

しては︑実際そうではないのであって︑ ﹁何レ無致及取消ノ所﹂で適切な処理がなされるので特に不都合はないこと

      ︵14︶を示唆している︒ここでも梅委員は︑ ﹁諸君が御心配ニナル事柄ハ先キノ警語及取消ノ敷力ト云フ所デ救濟セラレル

カラ此庭ノ所ハ諸君ノ言ハルN所ノ必要品云々丈ケデハ如何ニモ漠トシテ限りガ要慎ラヌカラ斯ウ云フ風ニカ財産ノ

方デ限りヲ付ケテ置イタラ宜シカロウト云フ吾々ノ考ヘテア﹂るとの理由を追加し︑繰り返し﹁必要品﹂概念の導入

に対する強い反対意見を明らかにしている︒

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 ω 次に︑たとえぽ﹁遊蕩﹂に金を使った場合でもこれを取り消せるとすると︑相手方に迷惑がかかるのではない

か︑あるいは反対に﹁法律上ノ代理人﹂が遠方にいたり︑あるいは親に断らずに入院したようなケースで支払能力が

ない場合がありうるのではないかとの理由から︑やはりどうしても未成年者を保護するためには必要な行為は単独で

できるようにしておかなければならないのではないだろうか︑との意見が提出された︒

 これに対しては︑梅委員から︑ ﹁無能力老ハ削除ヲ得タル広野馬齢リテ傍ホ現二己レヲ利スル物ノ︑ミヲ返還スル責

二身ス﹂ ︵財産編第五五二条第二項︶によって処理可能であるとの反論がなされた︒すなわち︑例えば入院したよう

なときはその身体を治療するのであるから︑ ﹁此位己ヲ利シタ事﹂はないのであり︑治療によって自分を利したこと       ︵15︶について支払義務を負うことになるという︒

 これに対しては︑そう解すると第五条がほんんど必要のないものになってしまうのではないか︵末松委員︶との疑

問も示されている︒

 鋤さらに︑原案では︑ ﹁目的内において﹂ということになると一体いかなる目的を許されているのかということ

を相手方が知っていなければならないということになるが︑本人の言うことぽかりを信用するわけにもいかず︑﹁目的

の範囲内﹂ということを確認することはぎわめて困難となる︑そこで﹁之ヲ必要ト云フ事ニスルト相手方二於テ必要

力雨戸ト云フ事ヲ判断スレハ容易二分ルト思ヒマスカラ此鮎丈ケテモ困難が無クナル﹂との指摘がなされた︒このよ

うに考えれば︑ ﹁未成年者二必要ナ行為ト云フノテ大愛娘クナル様テアリマスケレトモ相手方ニナル人モ略ホ未成年

者ノ身分位置等ヲ考エレハ分ル﹂ことになるという︒提案の﹁理由﹂に書かれている冒智暮ω国①滞h︾9でも﹁必

要贔レ㍗にやかて砿﹁h約凍スル當時﹃二身分位置其他ノ事ヲ料酌スルト云フ畜ヲ書テアッタ様ニモ偲ヒマス義心モ成ルへ

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       ︵16︶クハ入レタ方が宜シイト思﹂うというのである︒

 このようにイギリス法を論拠として再度必要品概念の導入が提案されたが︑結局︑この日は仮に条件付の議決をし

たものとして︑提案老が再度協議した上で︑次の会に持ち出すこととされた︒

 ⑨ この主査会において提出された意見はある程度の説得力を持つものと言える︒また︑梅委員の明確な反論︵こ

の主査会︑あるいは以後の各種委員会で述べられている意見は最近の学説にも影響を与えているものと思われる︶に

もかかわらず︑ここでの議論は後に形を変え繰り返し提出されているのであり︑このことに注意する必要があろう︒

未成年者と契約

 ︵二︶第一一回民法主査会︵明治二六︹一八九三︺年一〇月六日︶

 ﹁未成年者の能力﹂に関する規定が議了になった後︑前回持ち越しとなった第五条についての修正案が再度提出さ

れた︒ まず︑土方委員は︑第五条の原案は︑ ﹁財産ノ虜分ヲ許スト云フ方ヲ本トシテ而シテ却テ此法文ノ主眼トシテアル

所ノ幼者二必要ナル行止ヲ許スト云フ事ヲ末トシ本末ヲ三又シテアル様二七﹂うとの認識を示した上で︑原案による

と﹁目的ヲ定メテ虎分ヲ許シタ場合ト然うサル場合トヲ問ハズ幼者二必要ナル法律上ノ行爲ヲ当芸ニスルト云フコト

ハ出血ナイ﹂のではないかと指摘する︒すなわち︑ ﹁法律上ノ代理人が豫メ財産ヲ渡シテ威分ヲ許シテ置イテモ其財

産ハ幼者二有益デナイ他ノ面戸使ツテ仕舞ツテ必要ナル行爲が看取ナクナル事ガアル﹂のではないかとする︵たとえ

ぽ︑書生が予め与えられた学費を遊興費などに使ってしまった場合などが考えられる︶︒

 そこで第五条については︑もう少し状況を限定して︑ ﹁未成年者ノ身分位置及ヒ状況二従ヒ必要ト認ムヘキ法律上

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ノ行幸ハ法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ズシテ之ヲ爲スコトヲ得しとしておけばよいのではないかと提案された︵文言に

ついては︑ ﹁未成年老二必要ナル法律︵上︶ノ行爲﹂としておけばよいとも考えられるが︑これではあまりに漠然と       ︵17︶しているとの説もあるので︑ ﹁身分位置状況﹂という文言を書き加えた︑と説明する︶︒

 これに対する賛成意見も述べられたが︑梅委員はこの修正意見についても以下のような反論を加えている︒

 梅委員の反対意見は︑基本的に前回の審議の際のものと同様であり︑要するにこの修正案では適用上の問題が大き

すぎるというものである︒すなわち︑仮に﹁身分位置状況﹂といった文言を付加したとしても︑それによって﹁必

要﹂の範囲を決定することはやはり困難であり︑そういった事柄を斜酌するにしても﹁必要﹂の範囲は大変に広いも

のであって裁判官の見方によってはいくらでも広くなりうるのではないか︑という論を例をまじえつつ展開する︒ま

た︑前回の主査会でも複数の委員から示されたイギリス法の概念導入の可能性については︑イギリスではこれまでに

﹁必要﹂ということについて確かに裁判例が蓄積されていることは認めつつも︑このことはかえって﹁必要﹂という

ことについては争いが起こりやすいことを表しているとの認識を明らかにしている︒この概念を採用した場合には︑

それだけの裁判例ができるまでが大変なのであり︑それよりは﹁財産ノ方デ限ツテ置ヶバ必要デアッタヵ何ウカヲ問

ハズシテ最初二目的ヲ定メテ許サレタモノナレバ其目的デアツタカ何ウカ又目的ヲ定メナカツタ場合ニハ虚分ヲ許シ

タ財産デアッタカ何ウカト云フ事サへ確カメレバ宜イ﹂とする︒

 そして︑修正案では﹁必要﹂の範囲が広くなりすぎるという点についても︑角度を変︑早ると反対にそれでは狭すぎ

ることになる可能性すらあるという︒たとえぽ︑小遣銭としていくぼくかの金銭を与︑兄て点いた場合に︑これを遊興

一等に使ってし壕い貸ζれ抵その亭亭起事いて﹁必要﹂なものではなかったから取り消すということになったので       ︻91ぜ

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は︑相手方も安心して取引することができず︑また未成年者にとってもせっかく自由に使うために与えられた金銭を

自由に使うことができなくなってしまう︒ ﹁右ノ如ク必要ト云フ事ハ或ル鮎カラハ廣過ギル或ル鮎カラハ狭心ギテ漏       ︵18︶レルモノが出来ル此二鮎カラシテ賛成スル事が出来ヌ﹂と再度反論した︒

 結局︑土方委員提出の上記のような修正案について採決がなされたが︑賛成者少数のため否決となり︑当初の原案

が採用されることで取り敢えず決着を見た︒

 この日の主査会においては︑前回より文言を明確化した修正案が提案されたのであるが︑梅委員は繰り返し﹁必

要﹂の範囲決定の困難さを理由として反論を行い︑依然として原案が維持されることとなった︒

未成年者と契約

 ︵三︶ 第四回総会︵明治二六︹一八九三︺年一〇月二七日︶

 この総会では︑第四条︑第五条の二箇条にわたって議論が繰り広げられた︒

 1 第四条関係

 まず第四条関連が議論された︒

 ω 一度は原案で決着したにもかかわらず︑この総会の場において再度修正案が提出された︒具体的には︑第四条

の原案では︑ ﹁未成年重力法律上ノ再訴ヲ爲スニハ其法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス但軍二権利ヲ二又ハ債

務ヲ免カルヘキ行爲ハ此限二在ス︒前項ノ規定二反スル行爲ハ之ヲ取消スコトヲ得﹂︵これも第五条同様︑現行法では

﹁法律上ノ代理人﹂は﹁法定代理人﹂となっているなど︑若干の修正がなされることになる︶ところを︑修正案は︑

この但書の部分を﹁但軍二権利ヲ得鉱山債務ヲ免カレ又ハ未成年老ノ身分位置及状況二黒ヒ必要ト認ムヘキ行愚臣此

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限二五ラスしとすべきであるというものであり︑先の主査会で第五条に関して提案されたものを︑形を変・兄て第四条

に含ませるものである︒すなわち︑前回提案の修正案は第五条に関するものであり︑今回提案のものは第四条但書を

修正すべしとするものであるが︑内容はほぼ同一とい︑兄る︒

 提案者の土方委員によれぽ︑ ﹁修正ノ事柄ハ五条デモ其形ハ此四条ノ但書ニシタイ﹂とされている︒基本的には︑

第四条は未成年者を保護するための規定であるが︑その結果取引の相手方がいなくなってしまうということになると

かえって未成年者を害することになるから︑必要な行為だけは一々同立日心を得なくとも単独にできるようにしなければ

ならないというのが第五条の趣旨であるはずだが︑第五条の原案では﹁理由﹂に書いてあるような趣意を達成するこ

とはできないということをその理由とす葡さらに具体的に︑﹁幼者・自分位地状況・從・必要・認・ヘキ行爲ハ云

々ト言ウ事﹂にしておけぽ︑ ﹁必要ト認ムヘキ行爲﹂というのだから︑たと︑兄ぽ授業料が無いため借りて払ったり︑

布団がなく呉服屋から信用借りするというようなことを有効に行うことができるのであり︑そういう品物の如何につ

いても身分位置等をみれば大抵必要の程度もわかる︵たとえぽ︑富豪の子は絹の着物を買ってもよくて︑貧しい家の

子はそうはいかない︶し︑たとえぽ通学しているのに足を傷めたから人力車に乗って通う︑そのときは車屋が月末払

の約束でのせてくれるとか︑あるいは体が悪いときに牛乳を母屋からとって飲むとかいうようなことができる︑とい

った具合に︑非常に具体的な提案理由が述べられている︒

 基本的には前回までの提案理由と異なるものではないが︑これに対して關直彦︑菊地武夫両委員が賛成し︑梅委員

が再度それに反論している︒

 ここでの反論も︑前回までと同様に︑ ﹁必要﹂という文言は規準としてはある場合には広すぎ︑またある場合には

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未成年者と契約

狭すぎるということが骨子となっている︒すなわち︑ ﹁必要ト云フ事ハ人々ノ見様デ違フ身分位地状況二慮シテ必要

ト云フテモ随分廣イ事デ裁判官ノ考次第デハ何ノ様ニデモ適用が出來ル﹂というのである︒

 梅委員は︑さらに具体的な反論を行っているが︑結局︑確かに原案では目的を定めた財産はその目的の範囲を相手

方が知ることは難しいという難点があることは認めつつも︑しかしその点については﹁必要﹂云々ということにして

おいてもやはり同様の問題が発生する可能性が高いということが論拠になっている︒そして︑たとえば︑下宿屋の宿

料とか必要な時の車賃とかいうようなものは︑実際に必要ということが明らかな場合には原則としてはその行為が取

り消しうべき行為でも︑その行為によって未成年者が利益を得ていれば︑ ﹁必要であった﹂という限度においてそれ

だけのものは償わせるというような条文を置く予定であり︑そうすれば下宿料とか必要な時に乗ったというようなも

のは相当の価格だけは払わなければならないことになるから︑たとえ行為を取り消しても相当の価格は払わなければ

ならないということになり・費用をかけて取消の訴を起こすものはないであろう・とも述べてい勉

 この後︑ ﹁必要﹂という文言について議論されたが︑採決の結果︑第五条の審議のときと同様に︑ここでも修正案

は賛成老少数ということで否決された︒

 ② 次に︑鳩山和夫委員より第四条但書を﹁但軍二権利ヲ得若シクハ債務ヲ免カレ園田未成年者ノ爲目皿必要ナル

行爲ハ此限二言ス﹂と修正すべきであると提案された︒しかしながら︑これも賛成少数で否決された︒さらに続いて︑

﹁但軍二権利ヲ得若シクハ債務ヲ免カレ又ハ未成年者ノ爲シタル日需其他必要ナル領導ハ此限二塁ス﹂とすべしとの      ︵21︶提案が長谷川喬委員からなされたが︑これも同様に否決されている︒

 ㈲ なお︑さらに第四条の審議の過程で︑次の第五条の削除案が出されるまでに至る︒まず︑法律上の代理人が目

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的を定めて許したる財産はその目的の範囲内において処分ができ︑目的を定めないものは随意に処分ができるという

ことであれば︑第四条で﹁同意ヲ得ルヲ要ス﹂とあるから既に同意を表したものが有効であるということは第五条が

なくともわかるのであり︑その上に第五条を置かなけれぽならないというのは︑土方委員の言うように﹁未成年者に

必要な行爲は同意がなくとも有効である﹂ということにしなければ不都合である︑すなわちここではじめて第五条の

必要性が出てくるのであり︑そうでなけれぽ第五条は無用といえるのではないか︑とする意見が出された︒      ︵22︶ これに対しては︑ ﹁四条丈ケデハ夫レ丈ヶノ事ヲ含マセルノハ少シ無理デハナイカ﹂との反論がなされた︒

 ω このように立て続けに第四条の修正意見︑ならびに︑第五条の削除案までが提出されたが︑ここでも結果的に

は第四条は原案のまま可決され︑続いて第五条の審議に移る︒

 2 第五条関係

 ω まず磯部四郎委員から︑改めて第五条の削除案が提出される︒理由の第一は︑例えば未成年者が親元を離れて

学問に従事するということになれぽそれについて父や後見人などから承諾を与えられているはずであり︑それは同時

にそれなりの費用がかかるはずであるから︑それだけの金を自由に処分するということについては前もって第四条の

規定によって法律上の代理人の同意を得ている事柄である︑というものである︒そしてこのように相当の費用を使っ

て学問をするということは﹁法律上ノ規程ヲ侯タズ︑慣習上扇ヅ今日マデスラモ是等ノ事二就テハ議論ノ起ツタト云      ︵23︶フ事﹂もなかったとする︒これに対して高木豊三委員が賛成意見を述べている︒

 ② 続いて鳩山和夫委員からは︑第五条については﹁第五条﹂の部分だけ残して全文を捌除し︑ ﹁未成年者ノ二刀      ︵24︶必要ナル行三二付テハ法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ルコトヲ要セス﹂とすべきであるとする修正動議が提出される︒ω

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未成年者と契約

の磯部委員の修正案と同じく︑基本的には第五条を削除すべしとする意見であるが︑この提案については同じく第五

条修正論者である磯部委員から︑ ﹁鳩山委員の修正案では︑必要な所為に限って同意を得なくとも有効になるという

ことになると︑その必要でないことについては一々その同意を得ることが必要になるという点において︑か︑昆って原      ︵25︶案よりも悪いのではないか﹂との意見が出された︒

 ㈲ これに対して︑梅委員より︑第一に﹁比較法的にはむしろ﹃必要﹄という文言を入れている方が少ない﹂こと︑      ︵26︶第二に﹁五条がなくとも四条があれば同じことだとの意見には賛同できない﹂旨の反論がなされている︒

 ω 結局︑議論は前回までと同様に平行線をたどった後︑採決に移った︒まずωの磯部委員の削除案が賛成少数で

否決され︑次に②の鳩山委員による修正案の採択に移ったわけであるが︑ここではかなり混乱し︑再度採択された結

果︑賛否同数となってしまい︑議長が原案に賛成したため原案通りということになったかのように見・兄た︒しかしそ

の直後︑江木衷委員より︑五条と六条の間に﹁未成年者ノ爲メ必要ナル半弓二付テハ法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ルコ

トヲ藩主ス﹂という一箇条を入れたいとの提案がなされ︑多少の混乱の上︑ついにここに至って︑半ば混乱に乗じた      ︵27︶かのような形で︑初めて修正案は賛成多数で可決されてしまう︒

 梅委員は︑五条が削除されない以上格別反対はしないとしながらも︑条文の体裁がかなり乱れることになるので︑

起草委員が次の会に改めて提出したいとの意見を述べて︑この日の会は取り敢えず終了した︒

︵四︶第五回総会︵明治二六︹一八九三︺年一〇月三一日︶       鵬その四日後の総会でこの問題が再度取り上げられた︒冒頭︑前回予告の通りまず梅委員より発言があり︑ ﹁第四條

(16)

ハ本文丈ケニシテ但書ヲ削ツテ仕舞ツテ而テ今ノ第五條ヲ第六條トシテ其間二﹃第五條 未成年者ノ爲メ必要ナル行

爲二型テハ法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ルコトヲ要セス﹄ト云フ事ニシテ其二項国持ツテ往ッテ﹃未成年老力軍二椹利      ︵28︶ヲ得又ハ債務ヲ免カルヘキ行斗出付キ二八シ﹄ト云フ事ニシタラ宜シカラウト思ヒマスしとの提案がなされた︒

 これに対しては︑文言についての修正意見︵﹁日置必要ナル重石﹂ ﹁生活生日需二必要ナル本四﹂とすべしとする

意見など︶がいくつか提起されはしたが︑前回議決されていることでもあり︑基本的には梅委員の説明通り了承され

た︒ ここにおいて︑前回総会および今回総会を通じて結果的に﹁必要﹂という概念が採用されたかのように思えたが︑

起草委員側は︑以後︑再び巻き返しを図ることになる︒

104

 ︵五︶第一回法典調査会整理会︵明治二七︹一八九四︺年=一月一八日︶

 約一年後のこの整理会で︑起草委員は原案への復帰を図り︑総会確定案の第五条を削除し︑同条第二項の規定事項      ︵29︶を第四条に移すという内容の﹁整理﹂を提案した︒

 梅委員によれぽ︑非常に激論の末︑しかも主査会・総会においても議論の末に第五条が加わることになったのであ

るが︑この度﹁整理﹂してみるとこれでは不都合であることがわかったという︒すなわち﹁何ウモ第五条ノ規定ト第

六条ノ規定ト云フモノハ重複二面ツテ居ツテドチラカーッアル方が穏ヤカデアル︒何ウモニツニナルト云フト同ジ事

ガニ所二規定シテアルノミナラズ主義が違ツテ如何ニモ不禮裁﹂であり︑﹁何ウモ主義ハ第六条ノ主義が宜シカラウ﹂

とい絶

(17)

 激論の末決まったものを︑再度﹁不体裁﹂を理由に﹁整理﹂するというかなり強引なこの提案に対しては︑当然な

がら批判の声が上がった︒すなわち︑たとえば︑ ﹁兎二角多数デ決シタモノヲ起草委員ノ目デ見ラレル所為於テ之デ

ハ不都合デアルカラ之ハ實質カラ愛ヘテ往ッタ方が至心ラウト云フヤウナコトデ直サレテハ整理ノ整理タル名が墜チ

テ仕舞ツテ整理ヲロ實トシテ起草委員ノ一己ノ意見ヲ其所へ當蝶貝ルト云フコトニナリマシテ甚ダ整理が何虎馬込ク       ︵31︶力分ラヌト云フヤウナコトニナラウト思ヒマス﹂ ︵磯部委員︶などという意見が出されたほか︑整理会そのものの性

格等についての質問も出された︒

 その結果︑梅委員の﹁整理﹂案について改めて採決されることになったのであるが︑結局起草委員側の﹁整理﹂案       ︵32︶への賛成者は少数で︑第五条は取り敢えず削除を免れることになった︒

未成年者と契約

 ︵六︶策四回法典調査会整理会︵明治二八︹一八九五︺年=一月=岡田︶      ︵33︶ ここでも起草委員は再度原案への復帰を図るべく︑前記﹁整理﹂案に引き続き︑ ﹁再議案﹂を提出した︒まず︑梅

委員による経緯の説明があった後︑ ﹁第四條第一項二左ノ事項ヲ加へ第五條ヲ削除スルコト 但軍二権利ヲ得又ハ義

務ヲ免ルヘキ行爲ハ此限二在ラス﹂とすべきことが提案された︒

 梅委員の説明によれば︑第六条の方は﹁財産﹂の方で限定しておいてその範囲内においては未成年者がほぼ能力者

と同じに扱われるとするのであり︑第五条の方は行為の性質が未成年者に必要であれば有効として不必要であれぽ取

り消すとするものであるが︑これは異なった二つの主義が二つ並んで条文化されているのだという︑前回までとほぼ

同様の説明がなされた︒つまり︑いかにも主義の違った同じ種類の条文が華字条並んでいるのは甚だ体裁がよくない

105

(18)

のでどちらかに決めたいのであるが︑起草委員としては第六条の規定の方が望ましいと考える旨の意見が示された       ︵34︶︵この理由も以前のものとほぼ同一である︶︒

 ただし︑この日は出席者少数ということもあって︑起草委員側からの﹁再議案﹂についての議決そのものは見送ら

れた︒

106

 ︵七︶第六回法典調査会整理会︵明治二八︹一八九五︺年=一月二〇日︶       ︵35︶ 前回示された﹁再議案﹂につき︑再び議論された︒この会においても梅委員は繰り返し第五条の削除案を主張す

る︒まず︑五条と六条は︑﹁同一ノ目的ヲ以テ唯主義ノ異ナツタモノガニツ蛇ンデ此盧二掲ゲテアルヤウナ課﹂であり︑

その目的とは﹁法定代理人が明示又ハ黙示ニテ許シタル行爲ハ未成年者が後トカラ取り消スコトハ出來ヌ﹂という趣

旨であるとの前提を述べる︒そして︑第五条は︑未成年者に必要な行為であれば法定代理人が知っていたとしても無

論許可すべきことであるからこれは許可したものと同一に考えるものであり︑第六条は︑明らかに許可した場合には

法律行為の各種について許可を受けなくともよいとするものである︑と説明する︒説明にあたっては︑前者をイギリ

ス法の﹁黙示許可主義﹂︑後者をドイツ法の﹁明示許可主義﹂と呼んでいる︒

 そして︑この二つの主義はどちらも成り立ちうるものであることは認めつつも︑起草委員の考えとしては︑ドイツ

法流の﹁明示許可主義﹂の方が明らかに明確であるとする︒

 すなわち﹁明ラカニ之レ丈ケノ財産ヲ威分シテモ宜シイ或イハ之レ丈ケノ目的ヲ以テ南分スルコトハ構ハヌ斯ウ言

ッテ財産ヲ限ツテ未成年者二渡シ垂直ハソ.レ丈ケニ付テハ未成年者が勝手二虚血が出盛ル斯ウナツテ居ル方が利益ガ

(19)

       ︵36︶多クテ害が少ナイ﹂との主張を展開する︒さらにここでも﹁必要﹂ということが極めて不正確であって︑どの範囲ま       ︵37︶       ︵38︶で及ぶものであるかの判断にあたっては︑それが広くなりすぎる可能性と︑狭くなりすぎる可能性の両方の危険性を

持つものであって︑判断には困難がつきまとうであろうことが繰り返し主張されているのである︒

 これに対しては︑土方委員より︑主義が異なる条文が二つならんでいても差し支えないのであって︑むしろ第五条

はそのまま残しておいて反対に第六条を削除すべきだとの意見も提出された︒しかしながら︑他に賛同もなく︑最終

的に磯部委員も起草委員側の再議案賛成に回ったことなどもあって︑大多数で﹁再議案﹂が可決され︑一度は採用さ       ︵39︶れたはずの第五条は最終的には削除される結果となった︒ここにおいて︑結果的には当初の原案に近い形で事実上の

決着が付くに至り︑ ﹁必要﹂ないし﹁必要品﹂といった表現ないし考え方は条文中には採用されないという方向が固       ︵04︶まったと言えよう︒

未成年者と契約

︵4︶ この経緯に言及するものとして︑須永 醇﹁演習﹂法学教室三七号︵一九八三年一〇月号︶一二〇頁︒また︑廣中俊雄

  ﹃民法修正案︵前三編︶の理由書﹄一六頁以下︵有斐閣・一九八七年︶︹以下では︑廣中﹃理由書﹄として引用︺が︑審議の

  経緯を非常に詳細に紹介する︒以下では家中教授の綿密な調査と分析に依拠しつつ︑制定過程をたどることにしたい︒

︵5︶ 法務大臣官房司法法制調査部監修﹃法典調査会民法主査會議事速記録 民法第一議案 法典調査會民法決議案︵日本近代

  立法資料叢書=二︶﹄二一二i二=二頁︵商事法務研究会・一九八八年︶︹以下﹃日本近代立法資料叢書=二﹄として引用︺︒

  廣中﹃理由書﹄参照︒

︵6︶病中﹃理由書﹄=バー一九頁︒すなわち︑前書では﹁本心ノ規定ハ既成法典中二存セス又外國二於テモ法文二此規定ヲ掲

  クルモノ稀ナリ而モ盗塁要訣クヘカラサルコトハ雲門テ蝶々ヲ待タス蓋シ未成年者ト錐モ蔦蔓其他ノ需要ノ爲メ多少ノ契約 07       一  ヲ締結シ多少ノ財産ヲ庭分スルノ必要アル二曹ヲ待タス然ルニ若シ是等日野ノ行合二野テ猶ホ一々法律上ノ代理人ノ同意ヲ

(20)

  得タルニ非サレハ後日取消サルルコトアルトセハ誰レ小安ンシテ此等ト取引ヲ爲ス者アランや是レ本條ノ必要ナル所以ナリ  ︵七言二於テモ千八百七十四年冒富昌諺図︒幕h︾9第一條二十レハ未成年者が必要品ヲ購ヒタルハ全ク有敷ナリトセリ是レ 聡

  蓋シ本條ト同一ノ精神涌出テタルモノナリ︶しとなっており︑議事録と符合している︒これに対して後書では︑﹁本窯ノ規定ハ

  既成法典中二十セス又外野二於テモ法文中二此規定ヲ掲クルモノ甚タ多カラス而モ其必要訣クヘカラサルコト神燈テ疑ヲ容

  レス蓋シ未成年者ト錐モ修學其他ノ需要ノ爲メ多少ノ契約ヲ締結シ多少ノ財産ヲ庭分スルノ必要アル曲論ヲ待タス然ルニ若

  シ此等B需ノ行春二付テ猶ホ一一法定代理人ノ同意ヲ得タルニ非サレハ後日取消サルルコトアリトセハ誰レ目安ンシテ未成

  年者ト此等ノ取引ヲ爲ス者アランや故二法定代理人ヵ目的ヲ定着又ハ之ヲ定メスシテ養分ヲ許シタル財産西暦リ有敷二之ヲ

  鴬豆スルコトヲ得ルモノトシ以テ未成年者ヲ保護シ併セテ取引ノ便利ヲ謀レリ︵英國二黒テモ千八百七十四年ぎ富艮ω閑︒蕃h

  >9第一単二捺レ測線成年者が必要品ヲ購ヒタルハ全ク讐敵ナリトセリ是レ蓋シ本條ト同一ノ精神二出テタルモノナリト錐

  モ亀田狭キニ失シ或ハ廣キニ過クルヲ以テ国籍濁法理往往行ハルル本條ノ主義ヲ採用セリ︶﹂となっているのである︒

︵7︶ ﹃日本近代立法資料叢書二二﹄二=二一二一四頁︒

︵8︶ 三崎亀之助発言︒ ﹃日本近代立法資料叢書=二﹄二一五頁︒

︵9︶ ﹃日本近代立法資料叢書=二﹄二一五頁︒

︵10︶ ﹃日本近代立法資料叢書=二﹄二↑五−二一六頁︒

︵11︶ 土方寧委員による︒ ﹃日本近代立法資料叢書=二﹄一=六−二一七頁︒

︵12︶ 末松謙澄発言︒ ﹃日本近代立法資料叢書一三﹄二︸七i二一八頁︒

︵13︶ ﹃日本近代立法資料叢書=二﹄二一八頁︒

︵14︶ ﹁未成年者が取消ヲ請求シタトキニ何ウナルカ︑取消ッ放シテハ往カナイ︑是非跡片付ケヲセンケレハナラヌ︑若シ未成

  年者が他人カラ得タル財産が其儘未成年者ノ資産中二在レハ返ヘサナケレバナラヌ︑資力其儘ニナクシテ未成年者ノ利益ト

  モ何ントモナラスニ消費サレテ居レハ返ヘスニハ及ハナイ︑若シモ其儘残ッテ居ラヌデモ夫レが未成年者ノ利益トナツテ居

  レハ其利益ニナツタ部分丈ケハ返ヘサナケレハナラヌト云フヤウナ事口先キノ無致及取消ノ所デ規定スル積モリテアル︑所

  ガ之ヲ諸君が仕切リト気遣フ所ノ湿生トカ云フヤウナ者ノ必要品八浜テ︑看テモ少シモ差支ヘナイ︑ト云フモノ入滅生が下

  宿屋二下宿シテ非常轟高イ下宿料ヲ串シテ居レハ其場合ハ假リニ之ヲ第五條ノ内ユ這入ラヌトシテモ︑成程其下宿ハ取消サ

(21)

未成年者と契約

  レルが併シ其下宿二軍テ利益ヲ得タナラバ其利益丈ケ竹返ヘサンケレハナラヌ︑夫レデ若シ不封土高イモノナラバ夫レ日取

  消ス事が出來ル︑併シ其場合目於テ裁判官が是ハ十銭高ク遣ツテ居ルトカ五銭高ク遣ツテ居ルカラ夫レ丈ケ返ヘセト云フヤ

  ウナ事モアリマスマイシ︑又五銭や十銭位ノ事ヲ以テ裁判所理訴へ出ル老モゴザイマスマイL﹃日本近代立法資料叢書=二﹄

  二一八−二一九頁︒

︵15︶梅発言︒﹃日本近代立法資料叢書=二﹄二一九−二二〇頁︒

︵16︶ 土方発言︒﹃日本近代立法資料叢書=二﹄二二四−二二五頁︒

︵17︶ ﹃日本近代立法資料叢書=二﹄二六ニー二六三頁︒

︵18︶ ﹃日本近代立法資料叢書=二﹄二六三−二六四頁︒

︵19︶ 法務大臣官房司法法制調査部監修﹃民法編纂法律取調委員會書類 民法編纂二關スル雑書 民法編纂二塁スル意見書 法

  典調査會 民法総会議事速記録︵日本近代立法資料叢書=一︶﹄八七一八八頁︵商事法務研究会.一九八八年︶︹以下﹃日本

  近代立法資料叢書一二﹄として引用︺︒

︵20︶ ﹃日本近代立法資料叢書=一﹄八八−八九頁︒

︵21︶ ﹃日本近代立法資料叢書一二﹄九二頁︒

︵22︶ ﹃日本近代立法資料叢書︸二﹄九〇1九一頁︒

︵23︶ ﹃日本近代立法資料叢書一二﹄九四頁︒

︵24︶ ﹃日本近代立法資料叢書一二﹄九五頁︒

︵25︶ ﹃日本近代立法資料叢書一二﹄九八1九九頁︒

︵%︶ 梅委員は︑ ﹁先刻カラ色々ト主査會ノ原案二期シテアル所ノ理由書二就テ議論が立チマシタガ︑夫レハ私モ随分時二限リ  ガアリマスカラ急イデ書イタノデ︑後トカラ見テ此理由ハ何ウモ不充分ト思フ事ガアツテ︑若シ再版ニデモスル時ガアレバ

  改メヤウト云フ事ヲ三人デ相談﹂︵﹃日本近代立法資料叢書一二﹄一〇一頁︶したとも述べている︒

︵27︶ ﹃日本近代立法資料叢書一二﹄一〇三−一〇四頁︒

︵28︶ ﹃日本近代立法資料叢書一二﹄一二ニー一一=二頁︒       09      1︵四︶ 廣中﹃理由書﹄三一頁︒

(22)

︵30︶ 法務大臣官房司法法制調査部監修﹃法典調査會民法整理會議事速記録 法典調査會民法整理案 民法商法修正案整理案       10  民法整理決議案法典調査會民法施行法議事要録 法典調査會民法施行法整理會議事速記録 法典調査會民法施行法案︵日本 1

  近代立法資料叢書一四︶﹄一頁︵商事法務研究会・一九八八年︶︹以下﹃日本近代立法資料叢書一四﹄として引用︺︒

︵31︶ ﹃日本近代立法資料叢書一四﹄三頁︒

︵32︶ ﹃日本近代立法資料叢書一四﹄五頁︒

︵33︶ ﹃日本近代立法資料叢書一四﹄九一頁以下︒

︵34︶ ﹃日本近代立法資料叢書︸四﹄九一−九二頁︒

︵35︶ ﹃日本近代立法資料叢書︸四﹄=二四頁以下︒

︵36︶ ﹃日本近代立法資料叢書一四﹄=二四一=二五頁︒

︵37︶ なお︑﹁就中英法ノ如ク狭クナツテ居レバ弊ハ少ナイケレドモ﹃必要ナル行為﹄杯ト廣クナッテ居りマシテ其範園ノ及ブ

  所ハ實二想像シ得ラレナイ﹂とし︑高利貸への弁済のために他の高利貸から新たに借り入れる例や住居建築・補修の例︑書

  籍・時計の購入の例などを上げてその見解を補充しているが︑イギリスやアメリカでの現実の運用を見ると︑必ずしも﹁必

  要﹂を狭く解しているとも言いがたいように思われる︒

︵38︶ ﹁必要品﹂としたのでは範囲が狭すぎるという議論がありうるため︵たとえば下宿料や授業料が﹁必要品﹂に含まれない

  可能性があるため︶︑第五条は﹁必要ナル行為﹂と広くなってしまったのであり︑このようなことからも判断の困難さが予

  想されるということが示唆されている︒

︵39︶ ﹃日本近代立法資料叢書一四﹄一四〇頁︒

︵40︶ なお︑その後︑明治二九年三月三日に開かれた帝国議会衆議院民法中修正委員会においても︑第五条にいう﹁﹃目的ヲ定

  メテ庭分ヲ許シタル財産﹄ト﹃目的ヲ定メズシテ庭分ヲ許シタル財産﹄ハ重複シテイル︵範園二冷覚ノ差ガアルノミデア

  ル︶︒﹃財産ハ其範園内二瀬テ未成年者が随意二之ヲ言分スルコトヲ得﹄二修正シタイ﹂︵沼田宇源太︶という修正動議︑お

  よび﹁﹃財産ハ其目的ノ範園内二於テ﹄カラ﹃目的ノ﹄ヲ削除スベキ﹂︵關信之介︶という修正意見が出されたが︑ともに否

  決された︵廣中俊雄﹃第九回帝国議会ノ民法審議﹄一〇三頁︵有斐閣・一九八六年︶︒

(23)

三 学説の概観

未成年者と契約

 ︵一︶ 以上のように︑具体的な文言をめぐり繰り返し議論がなされ︑数度にわたり修正が行われた結果︑最終的に

は少なくとも条文上はいわゆる﹁必要品﹂という概念が採用されることはなかったのであるが︑ ﹁必要品﹂概念その       ︵41︶ものについてはかなり古くからその趣旨に共感を示すものが見られる︒

 ω たとえぽ︑岡松博士は︑未成年者といえども就学その他の需要のために多少の取引をなし︑多少の財産を処分

する必要があるのであって︑これら日常の行為についても一々法定代理人の同意を得なければならず同意なき場合は

取消可能であるとすると︑﹁其煩二堪エサルノミナラス又何人モ安ンシテ未成年者ト取引ヲ爲スモノナキ画面ル可シ﹂

との認識を述べる︒そして︑それでは未成年の保護にはならないのであゲ︑そのような目的を達するためには︑イギ

リス法上の必要品︵口OOΦωω帥㎏一〇ω︶という考え方が﹁理論二合スル﹂とする︒

 しかしながら︑ ﹁是レ理論二合スルモ適用二不便ナルカ爲メニ本法ハツユーリヒ︑国号等二倣ヒテ本條ノ規定ヲ設         ︵42︶ケ﹂たものとされている︒

 ② また︑富井博士も︑必要品契約は﹁早行爲ノ性質及ヒ目的上ヨリ無能力ノ範園ヲ限定シタルモノナル山導二理

論上当ヲ得タルモノ﹂であると評価するものの︑ ﹁英國ノ如キ慣習ノカニ依リテ法律ノ活用ヲ見ルコトヲ得ル國二於

テハ中差不便ヲ感スルコトナカルヘシト錐モ所謂必要品ナルや否やヲ判定スルニハ外寸ナル標準ナキヲ以テ紛議ヲ生

スル虞ナキコトヲ得ス﹂との見方を示し︑そのような違いを理由に日本民法は﹁濁逸民法︵一一〇條︶及ヒツユーリ

111

(24)

       ︵43︶ヒ民法︵六七〇條︑七五七條︶﹂の例にならったのであると説明している︒

 ㈹ また︑鳩山博士は︑イギリス法においては未成年者の﹁需要﹂を標準とするのに対して︑日本法ではその﹁消

費﹂すべき財産を標準とするものであると述べ︑必要品であるかどうかの認定に困難がつきまとう点は確かに欠点で

あるが︑広く必要品の購入を目的とする債権契約を有効とするという点は長所であると評価する︒そして︑未成年者

の有する財産が目的を定めて処分を許されたものなのか否か︑またその目的の範囲如何を詳知することができないた

め︑未成年者の相手方が損失を被る危険ありとし︑立法論としてはもう少し取引の安全を考慮する必要があるのでは      ︵44︶ないかとの指摘を行っている︒

 ω 以上のように︑イギリス法的な考え方に共感を示すものや立法論としての可能性を指摘するもの︑あるいはイ      ︵45︶ギリス法そのものの研究・紹介等はその後もかなり見られるものの︑少なくとも解釈論として必要愚ないし必要品契

約に言及するものはほとんど見られなかったと言ってよいのではなかろうか︒

112

 ︵二︶ このような状況の後︑比較的最近になって︑ ﹁必要品契約﹂を解釈論の問題として扱い︑未成年老と契約を

めぐる問題に少なからぬ影響を与えたのが四宮博士である︒

 ω 四宮説は︑ ﹁無能力者制度は︑法律上の保護者︵法定代理人・保佐人︶をもつ無能力者にとっては︑利益にこ

そなれ不利益をもたらすものではないが︑保護者を欠く無能力者︵親権者のない未成年老の多くは後見人を欠くのが

実情︶にとっては︑無用︑いな有害でさえある︒国家が保護者となる制度をつくる必要があるとともに︑さしあたり︑      ︵46︶解釈として︑生活に必要な契約は有効になしうると解すべきではあるまいか﹂と説く︒

(25)

未成年者と契約

 すなわち︑英米法では︑親または後見人による扶助を受けない未成年者は︑生活のために合理的に必要な衣類.医

療・教育のための契約︵必要品契約︶をすることができるものとされており︑生活必要品の定型的な供給については︑

社会類型的行為と無能力による取消の理論で対応しうるが︑非定型的な必要品契約については︑少なくとも︑保護者

を事実上欠く未成年者に関する限り︑これを取り消しうるものとすべきではなく︑取消しうるとしたのでは︑取引相

手方の保護に欠け︑ひいては︑必要品契約を拒否されることになって︑未成年老本人の保護に欠けることになる︑と

の説を展開する︒

 ② このような四宮説をうけて︑須永教授は︑未成年者のレンタカー借受を例にとって事実的契約関係と関連させ

つつ︑限定的ではあるが︑四宮説を次のように積極的に評価する︒すなわち︑まず︑須永教授の説明によると︑ ﹁社

会類型的容態による生活必需資料の定期的供給﹂については行為能力の有無を問題話する余地はないとの前提に立っ

た上で︑ ﹁当該給付が利用者一般の生活にとって有する必需性の高さ︑給付内容の完全な定型化︑給付の事実的請求

に伴う利用者側の負担の軽易さ﹂などに加え︑ ﹁利用者側における行為能力の有無を供給者において識別することの

困難さ﹂などが行為能力の有無へ顧慮を不必要ないし不可能視させる条件であるとする︒

 そしてこれらの諸条件から未成年者によるレンタカー借受のケースを見ると︑行為能力の有無への顧慮を一般的に

不必要ないし不可能視させるほどとは思われない︑と結論付ける︒そして︑そのような事情を考慮した上で︑ ﹁当該

のレンタ・カーの借受けが︑当該の未成年者の身分や生活態度にとって必要であった場合にはじめて当該の契約を確       ︵47︶定的に有効視するという必要品契約の法理による解決の方がとられることになろうか﹂と述べられる︒

 ㈹ また︑米倉教授は︑四宮説と同様に﹁法律上の保護者11法定代理人︵親権者.後見人︶を欠く者﹂については︑

113

(26)

その未成年者の生活に必要な物品の供給契約︑医療契約︑必要な教育を受ける契約︑法律的助言を受ける契約等々︑      ︵48︶その未成年老にとって必要な給付を受ける契約︵必需契約︶の有効性を承認しないと︑契約の相手方の保護に欠け︑

ひいては未成年者が必需契約の締結を拒絶されることにもなり︑結局は未成年者にとっても不便︑不利な結果がもた

らされる︑との認識に立つ︒

 さらに︑米倉説では︑﹁必需契約﹂については﹁準契約﹂として相当な代価の支払で足りるとするのではなく︑﹁契

約﹂として確定的に有効と解すべきであるとされる︒この点についてイギリスでは必要品契約という表現をとりつつ

も︑その法的性質については︑契約的責任的なものというよりはむしろ準契約的︑原状回復法的性質を持つという見

蟹姦説である患わ絶その意味においても︑﹁相当な代価の支払いで足り・という考え方もありうるけれども︑

問題を複雑にすることが予想され︑それよりも︑契約として約定代価を支払うとする方がすっきりした解決となる﹂       ︵50︶旨明言される点は興味深い︒

 ω 以上のように︑必要品という概念︑あるいは必要品契約的発想は︑四宮説の登場以降次第に有力化してきたと

みることができる︒たとえぽ︑適用範囲について若干留保しつつ︑﹁﹃必需﹄という枠付けによって未成年老に不利益

がないこと︑および非定型的な取引行為に適用される理論の有用性から︑大方の支持をうけている﹂と評価し︑ ﹁必

需﹂という枠づけの理解によって︑三種の無能力者の通則的理論として位置づけることも今後の方向として考えられ

るのではないかとの指蓼行うも禦・たとえぽ父母・後見人のない未成年者がスーバ←ーケ・・で食料品を購入

する行為につき︑ ﹁必需品を目的とする購入契約については︑それが法定代理人のない鼠害年者によって独立に締結

された場合にも︑完全に有効である︵浄写物自体の性質のゆえに︑社会通念からいって︑これを購入する契約を未成

114

(27)

年者が独立で締結することがあらかじめ認められている︑

︵53︶

れる︒ とみるべぎである︶︑     ︵52︶と解すべきしとするものなどが見ら

未成年者と契約

 ︵三︶ しかしながら︑以上の諸説とは異なり︑ ﹁必要品契約﹂という概念について消極的な見解も見られる︒

 まず︑前述のように制定過程において梅博士も繰り返し主張してように︑ ﹁必要﹂の判定が法技術的に困難ではな

いか︑との指摘がなされている︒そうであるとするならぽ︑むしろ︑およそ法定代理人の同意がないかぎり︵法定代

理人欠訣︶の場合を含めて︶︑取消そのものは認めて取消後に返還を要する﹁現二利益ヲ受クル限度﹂の範囲の決定      ︵54︶に際して当該未成年老にとって必要か否かを顧慮する方が妥当だとするものである︒

 このような考え方に立つと︑たとえば衣類を購入したがまだ引渡を受けていないのであれぽそもそも現存利益がな

いから特に問題はなく︑取り消して代金の支払を免れるだけというこどになり︑治療に費やした費用のようなものに

ついては︑未払いの状態で取り消したという場合ならぽ︑当然支出すべきはずの医療費の支出を免れるのであるから

医療費相当額の現存利益があり︑支払後取り消した場合にも取消によって既に支払済の医療費の返還を相手方たる医

師に請求はできるが︑そうするとこの場合にも必要な治療を受けて当然支出すべきはずの社会通念上相当な医療費の

支出を免れることとなりそれによる善玉利益は残るということになるという︒すなわち︑ ﹁未成年者にとって必要か

否かによって取消そのものの許否を決めるのではなく︑取消は認めつつ現受利益の範囲決定に際して必要か否かを顧         ︵55︶慮する方がより妥当だ﹂と説明されるのである︒

 また︑日本民法上では︑法定代理人の付せられていない未成年者が少ないこと︑仮に法定代理人が付せられていな

115

(28)

い場A・であ.て転現受利益︵=二条三日︶の認定に際して本人に︑︒ての必要性の舞舞驚︑触ば楚不都鵬

合が存しないのであり︑殊更にかかる類型の契約を他の類型の契約から区別して特別に扱う必要はないということも

その根拠とされている︒

  て︑三角由和﹁市民法における未成年者保護と契約責任・不当利得責任のありかたードイッ民法学の教訓I﹂島大法学 ︵41︶ なお︑以下ではドイツ法に由来するいわゆる事実契約関係論︑社会類型的行為論などには言及し得ない︒最近の研究とし

  三五巻四号八三頁︵一九九二年︶参照︒

︵42︶岡松参太郎﹃七分民法理由上兵総則編﹄二六頁︵有斐閣書房・明治三一年︹訂正七版︺︶︵信山社.平成三年︹復刻

  版︺︶︒

︵43︶富井政章﹃民法原論 第一巻 総論﹄一五〇頁︵有斐閣・大正一一年︹第一七版合冊版︺︶︵有斐閣.昭和六〇年︹大正一

  一年合冊版復刻第一刷︺︒

   なお︑梅謙次郎﹃訂正増補 民法要義 巻之一・総則編﹄一九頁︵有斐閣書房・明治四四年︹訂正増補第三三版︺︶︵有斐

  閣・昭和五九年︹明治四四年版復刻第一刷︺︶には﹁必要品﹂についての記述は見られない︒

   その他に︑解釈論としてではないが︑民法第四条第一項但書に触れながらイギリスの﹁必要品売買契約﹂を論ずるものと

  して︑宮本英雄﹁未成年者ノ契約能力及ビ不法尊墨能力二関スル英國法﹂﹃英法研究﹄三三三頁以下︵弘文堂.大正=二年︶

  があり︑穂積重遠﹁未成年者の首に鑑札﹂ ﹃績有閑法学﹄七三頁以下︵日本評論社・昭和一五年︶に︑江木博士が必要品契

  約を有効呈する説を支持していたことが述べられている︵﹁現行民法ノ規定ノ如クナランニハ︑天下ノ未成年者ナル者皆ナ

  宜シク法定代理人ノ意思ヲ表示スベキ鑑札ヲ其首ニセンコト飼犬ノ如クナルコトヲ要ス︒而カモ世人ハ其鑑札ノ眞偽ヲ知ル

  コト能ハザルナリ﹂︶︒

︵44︶ 鳩山秀夫﹃日本民法総論︵上巻︶﹄六四頁︵岩波書店・大正=一年︶︒

︵45V冠木精喜﹁英法に於ける未成年者の契約﹂法律及政治三巻六号七〇頁以下︵一九二四年︶︑谷ロ知平﹃英米契約法原理﹄

(29)

未成年者と契約

  四三四頁以下︵有斐閣・一九三二年︶︑寺田四郎﹁英国法に依る契約締結能力﹂保険評論二九巻一号四三頁以下︵一九三六

  年︶︑田中和夫﹃英法概論﹄三五頁以下︵巌松堂書店・一九四三年︶︑守屋善輝﹁契約能力−英米法講座﹂綜合法学三一号六

  二頁以下︵一九六一年︶︑伊藤正己編著﹃新装版英米法概論︵現代法律学演習講座︶﹄三七〇頁以下︵青林書院・一九六一︹昭

  和三六︺年︹新装版昭和四一年︺︶︵小林規威執筆︶︑久木本金﹁イギリス法における未成年者の契約能力﹂英米法学=二号

  四一頁以下︵一九六二年︶︑長尾治助﹁イギリスにおける未成年者の契約能力﹂東外大論集一一号一四三頁以下︵一九六四

  年︶︑田中和夫・前掲書︵﹃英米契約法︵新版︶﹄︶六四頁以下︑森 達﹁未成年者の契約能力−民事判例研究冒8醤豊︒口巴

  日O蓉bご8尻9●く.9ロロ①ロ嘱0◎霞けOh︾O群馬ωO︷ZOミ囑O﹁ぎおお﹂東洋法学一〇三三号八五頁以下︵一九⊥ハ七年置︑砂

  田卓士﹃イギリス契約法改訂版﹄四二頁以下︵鳳舎・一九七〇年︹初版︺/一九八三年︹改訂版三刷︺︶︑並木俊士﹃アメ

  リカ契約法﹄一〇〇頁以下︵東洋経済新報社・一九七一年︶︑森 達﹃英米契約法要説﹄七〇頁以下︵文久書林・一九七二

  年︶︑田中和夫﹃英米契約法概説﹄四一頁以下︵新有堂・一九七七年︶︑望月礼次郎﹃英米法︹改訂第二版︺︽現代法律学全

  集︾﹄三四六頁以下︵青林書院・一九九〇年︹初版一九八一年︺︶︑砂田卓士・新井正男編﹃英米法原理︹補訂版︺﹄一二七頁

  以下︵青林書院・一九九二年︹初版一九八五年︺︶︵及川光明執筆︶︒

   また︑未成年者のクレジットカード問題などの予信の問題についてイギリス法との比較を行う興味深い研究として︑板東

  俊夫﹁未成年者に対する与信契約の効力とその法的規制一英法の展開から学ぶことi﹂龍谷法学二四巻三・四号三九七

  頁以下︵一九九一年︶がある︒

︵46︶ 四宮和夫﹃民法総則︵第四版︶﹄四七頁︵弘文堂・一九八六年︹初版一九七二年︺︶︒

︵47︶ 須永 醇﹁権利能力︑意思能力︑行為能力i権利能力︑意思能力︑行為能力︑不法行為能力︵責任能力︶の意義ならび

  に相互の関係について述べよ﹂奥田昌道・玉田弘毅・米倉明・中井美雄・川井健・西原道雄・有地平編﹃民法学1︽総論の

  重要問題︾﹄︵有斐閣双書・一九七六年︶九一頁以下︒

︵48︶米倉教授は︑田中・前掲書︵﹃英米契約法︵新版︶﹄︶にならって︑﹁物品の供給契約に限られないのであるから︑ ﹁必要品

  契約﹂﹁必需品契約﹂よりも﹁必需契約﹂という用語の方が適当だと説明される︵米倉明﹁行為能力︵三︶﹂法学教室二二号

  ︵一九八二年七月号︶三一頁以下︶       17      1︵49︶ 必ずしも明確とも言いがたいが︑契約責任的に説明するもの︑あるいはその可能性を否定はしないものとしては︑ ﹁未成

参照

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