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都市ごみと家畜を使った 砂漠化問題の解決

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Academic year: 2021

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ニジェール川

チャド湖

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FIELDPLUS 2015 07 no.14

サヘル地域の砂漠化問題

 世界最大の砂漠、サハラ砂漠の南 縁にはサヘルと呼ばれる地域が存在 する。サヘルにおける砂漠化の問題 は有名で、中学の社会科、高校の地 理の教科書ではかならず取り上げら れるトピックである。砂漠化は土地 の植物生産力が低下し、土地が荒廃 する現象を意味し、その原因は人口 の増加、畑の休閑期間の短縮と過耕 作、家畜頭数の増加、過放牧にある とされる。わたしが調査するニジェ ール共和国は、サヘル地域に位置す る国のひとつである。ニジェールの 人口増加率は、年率3.7%である。

この数字は、それほど高くないよう に思えるかもしれないが、20年ごと に人口が2倍になる驚異的なペース である。砂漠化のほかにも、干ばつ、

乳幼児の栄養失調、飢餓、経済格差 の拡大、テロや紛争の問題、治安の 悪化など、多くの問題が存在する。

 わたしの調査スタイルは、人類学 でいう参与観察、つまりコミュニ ティでの住みこみを基本としたもの である。西アフリカ最大の民族とさ れるハウサの農村に2000年から住 みこみ、村に家をつくって、住民と ともに生活し、人びととの交流や絆 を大切にしてきた。サヘル地域の抱 える問題を住民の視点から明らかに しようと努めてきた。

 村では人口が急増し、村びとの農 地が拡大しつづけている。この地域 には農耕民のハウサだけでなく、牧 畜民のフルベやトゥアレグも居住し ており、ウシやラクダ、ヤギ、ヒツ ジなどを飼っている。毎年、7月か

ら11月までの雨季になると、農耕民 と牧畜民の生活スタイルがぶつかり あい、紛争が発生する。牧畜民の家 畜が農耕民の農作物を食べてしまう ことで、毎年、この時期に、両者の 緊張関係が高まるのである。

砂漠化のメカニズムと 住民の対処方法

 サヘル地域における砂漠化とは、

どういう現象なのか、確認しておこ う。それは、地表面の土壌が風や雨 によって侵食され、流出することに よって土地荒廃が引き起こされる現 象である。この地域の土壌には砂が 多く含まれており、粒子の細かい粘 土が少ない。薪や建材を採取するた めの樹木の伐採、家畜の放牧による 植物の採食、農耕活動による地表面 の撹乱を受けると、砂が動きやすい 状態になる。そこに強風が吹いたり、

大雨が降ると、粒子の結合の弱い砂 の多い土壌が流れ去るのである。す ると、地中に埋まっていた堆積岩が 露出してきて、そこが荒廃地となる。

堆積岩はコンクリートのように硬 く、地表面に露出すると、そこには 植物も生えず、樹木の根がむき出し になってしまうのである。この土地 荒廃プロセスが砂漠化なのである。

 住民たちは、砂漠化から自分たち の畑をまもるため、日々の生活のな かで、ふたつの対策をとっている。

ひとつめは、家の敷地にたまるごみ、

家畜の糞や食べ残しの枯れ草、脱穀 作業で出てくるトウジンビエの穂軸、

ラッカセイの殻、使い古した女性の 腰布、子ども用の衣服、穴のあいた 都市ごみと家畜を使った砂漠化問題の解決と聞くと、

意外に思うかもしれない。都市ごみには有害物質が含まれている と考えられがちであるし、家畜は砂漠化をすすめる原因のひとつだと 考えられているからである。しかし、人口密度の高いサヘル地域で、

砂漠化の防止や緑化をしようとすると、「逆転の発想」が 必要になる。

フ ィ ー ル ド ノ ー ト 西アフリカ・サヘルにおける

都市ごみと家畜を使った 砂漠化問題の解決

大山修一

おおやま しゅういち / 京都大学

荒廃地の発生:風と降雨によって地表面の土壌が侵食を受けると、堆積岩が露出し、

荒廃地が出現する。侵食によって、樹木の根も露出する。

荒廃地に対する都市ごみの投入:ごみには大量の栄養分が含まれており、有用植物の 種子も含まれている。緑化するため、フェンス内の荒廃地にごみを投入する。

荒廃地における草地の造成:雨季の到来とともに、多くの植物が生育する。トウジン ビエやソルガム、カボチャ、アマランサス、ハイビスカスなどの作物と有用植物が多い。

ニ ジ ェ ー ル 共 和 国

サハラ砂漠

ニアメ 調査地

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FIELDPLUS 2015 07 no.14 鍋や皿などのごみを荒廃地に投入す

ることである。最近では、都市の内 部に蓄積するごみを持ち運び、自分 の畑に投入する人も出ている。もう ひとつの方法は牧畜民との野営契約 である。乾季になると、農耕民の村 びとたちはフルベやトゥアレグの牧 畜民に、家畜とともに自分の畑に滞 在するよう依頼する。畑には大量の 家畜の糞が落とされ、その糞が翌年 以降の農作物の養分となるのである。

この野営契約には、トウジンビエや 現金の謝礼が牧畜民に支払われる。

都市のごみをつかった緑化活動  わたしは2003年から、農村のご み、あるいは、都市のごみを利用し て、緑化の実験を繰りかえしてきた。

都市の生活者も近郊に農地をもち、

農業や牧畜をおこなっている人が多 い。その生活から植物や動物、すな わち生物に由来する有機ごみが大量 に出てくる。それらの作物のわらや 家畜の糞を荒廃地に投入するのであ る。2008年から開始した圃ほじょう場実験 では、1m2あたり20kgの有機ごみを 投入すると、1年目には46種の植物 が、乾燥重量にして1m2あたり496 グラムも生育してきた。植物は土壌 から養分を吸収して生長する。しか し、その植物を刈り取っていくと、

結果的に土壌から養分を収奪するこ とになり、3年目から土地はふたたび 荒廃していった。ごみの投入により 土地の植物生産力は回復するが、植 物を刈り取って、持ち去ると、土地 はすばやく荒廃することも分かった。

 2011年から、より大きな規模で、

都市のごみを荒廃地に投入すること にした。家畜が自由に植物を食べて いくと、草地は急速に荒廃してしま

うため、50m四方の荒廃地をフェン スで囲うことにした。そこに150ト ンの都市ごみを投入した。わたしが 日本や欧米の学会で、この活動を紹 介すると、かならず、重金属やビ ニール袋などの有害性が話題になっ た。そこで、都市のごみの化学性を 分析したところ、ごみには大量の栄 養分が含まれており、家庭から排出 された直後のごみには、有害物質は 含まれていなかった。有害物質が含 まれていたのは側溝のどぶさらいや 道路わきで長期間にわたって放置さ れているごみであった。

 ハウサの村びとたちは、荒廃地に ビニール袋がふくまれていることを 気にはしていなかった。逆に、ごみ にビニール袋がふくまれていること で、土壌中の水分が蒸発しにくくな り、乾燥や直射日光に弱く、捕食者 の多いシロアリの生息場所となって いると村びとたちは話した。乾燥地 のシロアリは、温帯地域のミミズの ように有機物の分解をすすめ、地表 面をやわらかくする働きをもつ。し かし、ビニール袋がフェンス外に飛 ぶことは、環境を汚染するという他 研究者の根強い意見があり、わたし は村びととともにごみをならし、ビ ニール袋が飛ばないよう、ていねい

に砂をかけていった。40℃以上にな る日中、ごみをならす作業は非常に 厳しいものだった。

 2012年9月、雨季のおわりに圃 場を再訪すると、ごみを投入した フェンスの内部は、みごとな草地と なっていた。この時期、農耕民と牧 畜民のあいだには緊張関係が高ま り、牧畜民は放牧地を探すのに苦労 する。その牧畜民の家畜をフェンス で囲われた土地へ入れた。最初、家 畜はフェンスのなかへ入ろうとしな かったが、人に追われてフェンスの なかに入り、落ち着くと、空腹を満 たすべく、旺盛に植物を食べはじめ た。わたしは、都市ごみによる緑化 活動のねらいが当たったことを確信 した。家畜が食べる植物がフェンス 内になくなっても、夜間、フェンス のなかに家畜をとどまらせ、糞が落 ち、栄養分を供給してもらうよう、

牧畜民にお願いした。

家畜の糞から生育する樹木  フェンス内の実験をはじめて3年 目の2014年11月。フェンスで囲わ れた圃場を訪問して、驚いた。フェ ンス内の草は家畜によって、すでに 食べられていたが、樹木が生長し、

茂みを作っていたのである。都市の

ごみには、副食のスープに使うバオ バブの種子、人が果肉を食べて吐き 出したナツメヤシの種子、飢餓に苦 しむ住民の救荒食料となるハマビシ 科の種子が含まれており、これらの 樹木が生育してきた。そして、アカ シアをはじめ、サヘル地域に生育す る樹木の種子が家畜によって、フェ ンス内へ運ばれてきたのである。一 部の樹木については、種子が家畜の 胃を通過することで、発芽が促進さ れる。家畜をフェンス内に入れて、

糞が落とされることで、フェンス内 には13種、283本の樹木が生育し てきたのである。それらは人間や家 畜が日常のなかで利用する樹木であ り、人の手が加わった二次的環境で ある。

 急激な人口増加と農地の拡大、家 畜頭数の増加、経済活動の活発化、

都市の拡大──どれも、砂漠化を進 める原因である。しかし、その条件 を逆手にとって、都市ごみや家畜を 砂漠化の防止と緑化に利用すること は可能である。これからの緑化と環 境修復には、単一樹種の森林をつく るという植林に集中するばかりでな く、都市ごみや家畜の有効利用にも とづく二次的環境の創造をめざすと いう逆転の発想が必要である。

家畜の放牧と糞の供給:フェ ンス内に家畜を放牧するが、

家畜が植物を食べるだけで は栄養分が持ち出されてし まう。そのため、フェンス 内に家畜を2週間ほど滞在さ せ、糞を落とし、栄養分を土 壌に供給する。

荒廃地における緑化実験:

10年以上にわたって、都市 ごみを使った緑化実験を繰り かえし、その有効性と安全性 を検証しつづけている。写真 の中央が実験圃場である。

樹木の生育:家畜の糞には樹木の種子が含まれ、雨季の到来とともに発芽する。

家畜の胃を通過することによって、種子の発芽が促進される樹木もある。

参照

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