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1997 年に CAC は リスクコミュニケーションの以下の定義を採用した ; リスク査定者 リスク管理者 消費者およびその他の利害団体の間におけるリスクに関する情報と意見の双方向的交換 リスクコミュニケーションは 全ての統合された過程と手順としても説明されている a) リスク解析過程内における全て

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鳥インフルエンザ A (H7N9)のリスクコミュニケーションの取組み

リスクコミュニケーションのための指針

Addressing avian influenza A(H7N9) risk communication

Guidelines for risk communication messaging FAO, 2015/9/28 (仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六 目次 1.緒言 2.目的 3.一般的考慮事項 4.リスクコミュニケーションの課題 5.メッセージの作成とその時期 6.結論 7.参考資料 8.附属資料:メッセージの作成の手引き 1.緒言 インフルエンザ A (H7N9) ウイルスの発生への対応は、広範な領域の配置を 必要とする。高病原性鳥インフルエンザH5N1 とは異なり、H7N9 は感染した 鳥に病気の兆候が引き起さない低病原性のウイルスである。その結果、動物と ヒトの接点における人獣共通感染症リスクの家禽からの信号はない。このこと は、健康に見える家禽から潜在的な危険を動物作業関係者に説得することを困 難にする。したがって、リスクコミュニケーション能力は、動物衛生と公衆衛 生の専門家、疫学者、ウイルス学者、獣医師およびこの新たなウイルスがもた らすリスクを軽減する作業をしているその他の多く人々にとって、決定的な重 要性を持っている。 1.1 リスクコミュニケーションとは何か? 3 つの主な特徴が、従来の一方向的な情報伝達からリスクコミュニケーショ ンを区別する。リスクコミュニケーションは、 1. 全ての利害関係者(多くの場合一般大衆を含む)の間における双方向の コミュニケーションとして概念化される 2. 事実に基づく情報とともに、利害関係者の価値観と認識を明確に考慮す る 3. 専門家は全ての意思決定を行った後で使用するのではなく、「リスク解 析とリスク管理に統合する時最も効果的になる」(WHO、2007 年)。 1998 年の FAO・WHO 合同専門家協議会は、コーデックス規格委員会(CAC) による1997 年のリスクコミュニケーションの定義を要約した。

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- 2 - 1997 年に CAC は、リスクコミュニケーションの以下の定義を採用した; 「リスク査定者、リスク管理者、消費者およびその他の利害団体の間における リスクに関する情報と意見の双方向的交換」。リスクコミュニケーションは、 全ての統合された過程と手順としても説明されている。 a) リスク解析過程内における全ての利害団体を含み、情報伝達される b) 透明性と信頼性のある意思決定過程の確立を手助けする c) リスク管理の決定において信頼性を付与できる。 1.2 インフルエンザ A (H7N9)のリスクコミュニケーションになぜ従事す るか? 現在の査定は、発生動向調査とリスク管理に戦略的かつ的を絞って適時に介 入することによって、当局はインフルエンザA (H7N9)が未発生の国へ侵入する

リスクを減らすことができるとしている(FAO, 1998; FAO, 2013a, b)。しか しながら、市民の助けなしに政府はこの目標を達成することはできない。 リスクコミュニケーションは、一般大衆が参加・連携して政府の活動に貢献 する鍵を握っている。事前対策とリスク低減が成功の機会をつかむために、一 般大衆はそれらの活動を支援しなければならない。全体的なH7N9 事前対策お よび対応の役割を果たす上で、家禽の消費者、生産者および流通業者を含め、 一般大衆の理解を高め、市民を力づけるために、政府が重大かつ緊急のことと してリスクコミュニケーションに取組むことをFAO は勧告する。リスクコミュ ニケーションは、リスク解析の過程全体を通してリスク査定者、リスク管理者 および意思決定者の間での理解の共有を推進する上でも不可欠である。 2. 目的 リスクコミュニケーションは、政府当局が経験している同じレベルの懸念を 対象の聴衆に再現する試みである(Sandman, 2013)。リスクコミュニケーシ ョンは、聴衆の視点から学び、考慮する目的も持っている。全体的な目的は、i) 過剰反応や過小反応を減らす、ii) 適切な予防措置を取る気を起させる、iii) 課 せられたリスク低減対策の支援を起すことによって、リスクを減らす手助けと なることにある。 H7N9 の場合、国内および国際的な動物衛生と公衆衛生の専門家は、一般大 衆(養鶏農家を含む)よりも大きな懸念を現在経験している。したがって、H7N9 のリスクコミュニケーションの包括的な目標は、リスクを低減し、健康増進の 行動を促進するために、H7N9 のリスクに関する一般大衆の関心を高めること である。 この文書においてFAO は、家畜衛生の観点から鳥インフルエンザ H7N9 ウ イルスに関連するリスクのコミュニケーションにおける国家当局に手引きを提 供する。この文書の特別な目的は、以下のリスクコミュニケーション活動に従 事する当局を支援することである。 1. H7N9 によってもたらされるリスクに対する関心を高める 2. H7N9 侵入・拡大の防止のための政府の活動に対する一般大衆の支援を 促進する

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- 3 - 3. 不必要な製品の忌避を減らす 4. 公衆衛生および家禽に関連する生活の両方に関して、H7N9 およびその 他の病原体によってもたらされるリスクを減らすため家禽市場網の長 期的な改善を推進する。 3.一般的考慮事項 3.1 求められるメッセージの内容 この文書は、H7N9 のリスクコミュニケーション計画の包括的な手引きを提 供する。それは、とくに発生動向調査、リスク査定およびリスク管理の活動に 関して、リスクコミュニケーションを国の鳥インフルエンザ危機管理計画に統 合するための出発点となることを意図している。特別なリスクコミュニケーシ ョンのメッセージおよびそれらを広めるために使用する普及手段は、個々の背 景を考慮した後で国や地方の当局によって決定されなければならない。あらゆ る潜在的な利点は、特定の状況に対して適切かつ現実的なメッセージに翻訳し なければならない。状況や文化の違いにかかわらず、リスクコミュニケーショ ンのメッセージは、可能な限り、不安、自己満足さらには拒絶をも含む利害関 係者の知識・態度・慣行(KAP)について尊重する理解を表明する。 3.2 包括的なリスク解析の一部 この文書で提供される手引きは、個別的ではなく、リスク査定、リスクの特 性解明、リスクコミュニケーション、リスク管理を含むリスク解析に対する包 括的な取組み方の一部として考慮しなければならない。さらに、H7N9 のリス ク解析は、家禽市場網の性質およびその動態を考慮しなければならない。それ らの選択肢は、科学的証拠、家禽市場の傾向、文化的な感受性、社会経済への 懸念、政府の投資と政策ならびに国際規則に関する更新された背景に固有の情 報を含むように状況の変化に応じて定期的に評価し、調整することが重要であ る。 FAO は、鳥インフルエンザやその他の脅威を軽減するために、全体の価値 網に沿って最善の慣行を促進する動物衛生、公衆衛生および政府の高度の投資 を推奨する。この文書に含まれる全てのコミュニケーション手引きは、動物衛 生管理における最善の慣行に関する各国に対するFAO の包括的手引きを背景と して解釈すべきである。 3.3 動機と感情が不可欠 最も効果的な行動変化をもたらすコミュニケーション活動は、対象とする聴 衆に実際の社会経済利益をもたらす健康増進活動を促進するものでもある。こ の点で、対象とする聴衆によって実施され受入れられた場合、発言した聴衆に 具体的な利益をもたらす健康保護活動を工夫するための負担は政策立案者と科 学機関に課せられる。殺処分と移動制限によって鳥インフルエンザを管理する ための努力の歴史は、多くの利害関係者、とくに農民がその費用はあらゆる具 体的な利益よりもはるかに大きいと感じることを示唆している。これが真実で ある限度において、リスクコミュニケーションの最善の慣行は次のことを求め る;i) その現実を認める、ii) その苦悩を共有するかまたは少なくとも検証す る、iii) 他者に対する想定される害を避けるために一部の利害関係者に対する

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- 4 - 現在の害を行うことに内在する難問を認めて共有する。本質的に、効果的なリ スクコミュニケーションは科学的な側面とともに感情的な側面を考慮に入れる。 リスクコミュニケーションのこの重要な感情的な側面は、リスクの感情的な 側面よりもリスクの技術的な側面を伝えることに、しばしば当然のこととして、 より簡単に思う当局と専門家にとって困難である。それにもかかわらず、思い やりを共有し、共感を分かち合い、感情的な鋭さを持つことは、効果的なリス クコミュニケーションに必要な側面である。 (つづく 2015/10/1) 3.4 対象とする聴衆 この文書は、リスクコミュニケーションに従事する活動の手助けとして、動 物衛生および公衆衛生の専門家によって利用されることを意図している。この 目的のため、国のリスクコミュニケーション・メッセージの対象とする聴衆と して、この文書は次の4 区分に焦点を当てている。 1. 家禽の消費者 2. 家禽の生産者 3. 生鳥市場(LBM) の労働者 4. 家禽の仲介業者(取引業者および輸送業者を含む) 特記しない限り、この文書におけるメッセージ作成の手引きは、上記の聴衆 の全てに適用することを意図している。現実の適切な対象とする聴衆への一般 大衆の実際の分析は、問題となる国のシナリオの特定の政治、文化、社会経済 的な考慮事項に基づくことは注意すべき重要性がある。知識・態度・慣行(KAP) の研究および意見や態度に関する質的研究を含め、リスクの感じ方(perception) の解析は、必要なこととして実施し、可能な限り考慮に入れなければならない。 3.5 最善の慣行 熟練したリスクコミュニケーションは、信頼の構築、維持あるいは回復を期 待して可能な限り以下の全ての最善の慣行を採用している。 これらの慣行の目的は、対象とする聴衆との信頼感を促進するためである。 これは、次の絶好のチャンスを当局に提供する;i) 予防行動を促進する、ii) 懐疑、自己満足・無関心および過剰反応を減らす、iii) 非難し返すことおよび 不信感の可能性を減らすことは、推奨事項が彼ら自身に正しくないか効果がな いことを判らせる、iv) 非政府、非科学的な視点に興味を持ち、恩恵をもたら すことがなくなる、v) 除外ではなく関与の環境を作る。 ● 状況の展開とともに、早期に、頻繁かつ透明性をもって知らせる ○ 事態の展開の中で初期に作成したメッセージが知識の蓄積とともに 変わるかもしれないことを警告する ○ 不確実性のレベルについて公開する ○ さらに確実にするあなたの願いを共有する ○ 推奨事項を変更する時、変更する事実を強調し、なぜ変更する必要 があるかを説明する ○ 過度の楽観、および過度の警戒を推定しない

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- 5 - ○ 検討している最悪の事態、および最も可能性の高いシナリオを共有 する ○ 聴衆の過度の不安や過度な自己満足に対して(軽蔑ではなく)共感 を示す ● 過剰に安心しない ○ 「状況は制御下にある」と言う誘惑を避ける ○ 「政府は可能で必要な全ての措置を取っている」と言う代わりに、 あなたの活動範囲を伝え、それらを詳細に説明する ● あなたが現実的に達成できることを言う ○ 現実的予測を立てる;何が予測できるかを人々に告げる ○ 非現実的な約束をしない;聴衆が聞きたいだろうとあなたが思って いることを相手に告げる誘惑を避ける ● 不確実性を共有し、提案を公開する ○ あなたの状況について事実と感情的な背景を共有することによって、 不確実性のレベルを聴衆に伝える ○ 誠実さと共感を採用する ○ 聴衆に寄り添い、その見解に耳を傾ける ● 特定の行動を提案する ○ リスクを減らすために相手が行うことができる現実的なことを人々 に提案する。すべきではないことを人々に告げることは必要だが、 可能な場合は常に、コミュニケーターは聴衆がリスクを軽減するた めに実施できる実際の行動を強調しなければならない。 ○ 関心が過度および過少な両方の人々が、除外または反対を感じるこ となく、あなたの計画の一部として理解できるよう、「最も推奨さ れる」行動を中心にして一連の行動を提案する ● 具体的な利点と負の効果を伝える ○ 可能な場合は常に、推奨した行動に従うことの期待される現実的な 利点をコミュニケーションに結びつける ○ 具体的で短期的な利点が存在しない場合、人間性と敬意をもって、 あなたの活動の背後にある根拠を明確な言葉で説明する ○ 政府の活動によって引き起こされる可能性があるあらゆる負の効果 について共感をもって認識する ● 人々の状況に親身になり、かれらの要望に敏感になる ○ 人々は次のことに時間を必要とする;i) 恐ろしい、新しい状況に 適応する、ii) 当局が信頼でき適格であるかどうかを決定する、iii) 推奨される予防措置が達成可能かどうかを検討する ○ 人々の恐怖が軽蔑と侮辱ではなく、尊重と共感をもって扱われる場 合、彼らの最初の恐怖からより迅速に「回復する」可能性がある ○ 人々が突然恐怖に陥る時(たとえば家禽を食べる)、当局は彼らの 公衆衛生上の懸念を証明するためより懸命に取り組む必要がある (たとえば家禽業界の安定性など政治的または経済的問題を最大に 配慮するように見られるよりも)

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- 6 - ○ 技術的なリスクを伝えるために親身になってリスクコミュニケーシ ョン・メッセージを採用する(とくに、食品安全上のリスク、なら びに自然で一般的な人間の本能が家禽を避ける突然の恐怖に襲われ た人々に対処する時) ● 当局の委任なしで利害関係者に過剰な責任を負わせないために、利害関 係者を含める ○ リスク低減活動の主な負担が人間集団の小さい部分に一般的に課せ られることを認識する(すなわち養鶏農家、取引業者、流通業者は 「最前線」にいる) ○ H7N9 リスク低減の最前線にいるそれらの事業者のほとんどが貧し く、政治的発言力が限られ、社会を変えるための政治力がしばしば 制限されていることを認識する ○ リスク低減は人間社会全体の責任であることを伝えるためにあらゆ る努力をする ○ 最前線の農家やその他の人々を支援するため、社会的・政治的変更 を加える力を持つ集団を対象とする ● 可能な場合は常に、一般大衆の順応性についての潜在的な動機とメッセ ージを関連付ける。たとえば、 ○ 動機は地球規模の健康を守ること。分岐点は、ウイルスを拡散し、 ヒトを曝露するリスクを高めるので、生きた家禽の違法な取引を避 けことがある ○ 動機は、殺処分を含むその後の対応・制御策の農家の生活への影響 を減らすことである。分岐点は、最初の場所における発生を避ける ために生物学的安全性を強化することである。 ○ 動機は、長期的な事業収益を向上させることである。分岐点は、認 定された「インフルエンザ清浄」家禽に対する割増価格を設定し、 高品質、安全な生産、輸送および販売の慣行を備えた流通網を通し て顧客の基盤を拡大することである。 (つづく 2015/10/3) 3.6 普及手段(channel) 聴衆は、通常、複数のコミュニケーション普及手段を通してメッセージを 受け取る。一つあるいは一連の普及手段は、全ての背景に適しているとは限ら ず、実際には、それぞれの地理的・人類学的・社会経済的シナリオが、情報と コミュニケーションのために人々が利用する普及手段を決める。FAO は、どの 普及手段が問題となる 聴衆に的を絞って最も適切であるかを判定するため普及 手段解析することを奨める。普及手段には次の例が含まれる。 ● 国際的、国内的および地元のマスメディア(テレビ、ラジオ、新聞) ● スピーカーを用いた広報 ● Web ページ ● 討論集会 ● E メール発送 ● 印刷雑誌、専門誌、出版物

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- 7 - ● 生の会議や催し ● 地域の劇場 ● 役割演技シナリオ ● グループ演技 ● 普及討論会 ● 1 対 1 の面談 4.リスクコミュニケーションの課題 4.1 インフルエンザウイルスの概要 情報が少ない社会 インフルエンザウイルスによってもたらされるリスクのコミュニケーショ ンは、重要な課題である。顕微鏡的脅威として、インフルエンザウイルスは目 で確認されることなく人を殺し、情報の少ない多くの背景においては理解され ないまま死亡している。一部の聴衆は、顕微鏡的病原体の存在や機能をほとん ど理解しておらず、科学とその他の信念とをほとんど区別できない。 情報が多い社会 家禽を飼育している世界の大半は、動物飼育の一般的部分として家禽のイン フルエンザに慣れている。公衆衛生面では、季節的規則性のため、人々の大半 は通常、「壊滅的流行よりも慢性的発生」としてヒトのインフルエンザを扱っ ている(Sandman and Lanard, 2005)。インフルエンザは、毎年数千万人に感 染している。「インフルエンザ様疾患」は、毎年数十万人を殺している。ただ し、これらの死亡の規則性および通常の家禽疾病やマイナーなヒトの病気とい う「風邪」の一般的用語は事実を大きく曲げて伝えており、多くのインフルエ ンザウイルスとくに鳥インフルエンザウイルスはヒトや動物の世界流行によっ て人間の健康を破壊する可能性があるので潜在的危害をもたらしている。 4.2 インフルエンザのリスクを脱感作する 世界流行インフルエンザウイルスは、広範な地域に亘って人口のかなりの部 分に迅速かつ容易に病気を引起す。世界流行インフルエンザウイルスは、広範 な地域に亘って動物の間で迅速かつ容易に広がる。 歴史的および最近のインフルエンザ世界流行 大量のヒトの死亡を引き起こした世界流行インフルエンザの最後は1918~ 19 年のスペイン風邪であった。約 100 年前に発生し、その世界流行の破壊は一 般大衆の意識から脱落している。ごく最近の世界流行(すなわち 2009 年の H1N1)は、持続的なヒトの高い死亡率を引起さず、正当なこととして、強烈な コミュニケーションと最初に高められた一般大衆の警報を伴っていた。いくつ かの国際組織は、深刻な世界流行が科学的に現実化する可能性を人々に警告す ることに失敗するよりも、人騒がせな早い段階で(後で批判を受けるリスクを 覚悟して)警告することを選んだ。H1N1 世界流行による死者数が予想よりも はるかに少数で終わり、より多くの人々 が自分たちの生命を失わなかったは幸 運である(ECDC, 2014)。ただし、初期警報の高レベル、世界流行の後半まで 警報を引き下げなかったことと、広範囲の破壊がなかったこととの著しい落差 は、ヒトや動物の将来の世界流行の脅威に対して一般大衆を脱感作した。

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- 8 - H5N1 高病原性鳥インフルエンザ(HPAI) 1996 年に発見されて以来、病原性鳥インフルエンザ H5N1 はヒトや動物の 世界流行の脅威となる可能性を示してきた。発生と最初の拡大の間(とくに、 2005 年と 2006 年のヨーロッパに侵入時)、国内的および国際的なコミュニケ ーション活動は、公衆衛生に関して世界的鶏警鐘を鳴らし、H5N1 HPAI による ヒトへの本物のリスクに対する国際社会の関心を一時的には成功裏に高めた。 しかしながら、世界流行はやって来ず、発生国の数が劇的に減った。H5N1 HPAI が依然として引起す可能性がある広範囲にわたる壊滅的な死亡に世界は未だ見 舞われていない。このことは、このウイルスの最近の国際的拡大(2014 年後半 ~2015 年初期)に直面してさえ、H5N1 HPAI および類似のウイルスが引き起 こし得る破壊に対する無頓着と脱感作を導いている。 インフルエンザ以外の脅威 家畜生産の特定の背景において、インフルエンザウイルスは、小規模、中規 模および大規模な所有者が同様に日常業務の一部として管理しなければならな い多くの脅威の一つに過ぎない。病気、害虫、微生物および他の要因は、常に、 家畜の数を減らし、牛乳、卵、その他の畜産物の生産を損ない、選抜された動 物の有効性と家畜の農業関連利用を減らす脅威となっている。動物関連の生活 をしている何百万人もが、動物の健康に対する脅威の効果的な管理に依存して おり、インフルエンザウイルスはそれらの脅威の一つである。さらに、インフ ルエンザウイルスの予防と制御は、その他の脅威がより定期的に、経済損失を もたらすことから、動物の所有者の優先度がしばしば低い。 4.3 新型鳥インフルエンザ H7N9 ウイルス H7N9 は H5N1 HPAI よりもリスクコミュニケーションの課題がさらに大 きい。H5N1 HPAI と同様に、H7N9 は家禽とヒトの両方に感染し、両ウイルス とも世界流行の可能性がある。H5N1 と H7N9 の両方とも、感染したヒトの驚 くほど高い死亡率を引き起こす(すなわち、それぞれ約59%と 35%、WHO, 2014)ただし、H7N9 は出現のこの時点で、遺伝的にヒト感染により適応して いる(Uyeki and Cox, 2013)。H5N1 HPAI は、侵入し広がった場合に家禽を 壊滅させ得るが、H7N9 は家禽を殺さず、鳥に病気の徴候をほとんど示さない (Swayne et al., 2013)。 この文書の目的において、H5N1 HPAI は主に鳥に影響し、H7N9 は主にヒ ト に影響を与えることを単純な表現で強調することが重要である。両方とも家 禽に由来する。遺伝子再集合ウイルスは、ウイルスの様々な形態を導き、した がって将来的に異なる状況を生み出す可能性がある。現在の国際的共通認識は、 H7N9 は家禽の間で循環しており、ヒトは感染した家禽または汚染された環境 との接触(たとえば、生鳥市場や家禽の輸送やと殺)によって感染するとされ ている(FAO, 2014)。 (つづく 2015/10/4) 5.メッセージの作成とその時期 第5 節のメッセージの全ては、FAO の洞察と経験に基づいている。ただし、 それらは既成の画一的な解決策ではない。それらは、技術的な目標、対象とす る聴衆の背景およびリスク管理活動を融合した仮説である。

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現実世界のシナリオにおいて、メッセージの作成には3 つのアイデアを考慮

する;i) あなたの最初のメッセージ、ii) あなたの聴衆の関心、iii) あなた の活動(計画済み、実施中、完了)。この「メッセージ作成ミックス」は、知 識、双方向コミュニケーション、共感、計画を介してメッセージを作成するた めに使用される循環的な過程である。状況の進化とともに、定期的なモニタリ ングとメッセージの有効性の評価結果に基いて頻繁に繰り返さなければならな い(すなわち、初回のメッセージが所望の効果を示さない場合、あなたのメッ セージを再考して改善する時期である)。 図 1: メッセージ作成ミックス 5.1 最初のメッセージ リスク管理者は、個人、地域社会、企業、その他の事業体に渡す必要がある 特別の知識を持っている。それらの技術的なアイデアは、最善の慣行と理想的 な標準に根ざしている。それらのアイデアを単純なメッセージにすることが、 メッセージ作成する最初のステップである。基本的に、あなたの最初のメッセ ージは質問への答えである;「彼らが何を知り、感じることを私は求めるか?」 5.2 聴衆の関心 聴衆は、自分自身の経験、知識、目的を持って会場に来る。最も重要なこと は、あなたのメッセージと発表者の両方に関して、彼らは自分の真実、信頼お よび価値の感想を持っていることである。あなたは、リスクコミュニケーショ ン活動に成功のチャンスを得るために、彼らの関心と比較・対照し、最終的に 最初のメッセージに組み込まなければならない。「彼らは何を知りたがってい るのか?」、「彼らはそれをどう感じているのか?」および「彼らは誰を信頼

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- 10 - しているか?」とあなたは自問し、それからあなたの聴衆に直接手を差し伸べ る。まさに、あなたの聴衆の心にある主な疑問が何かを積極的に聞き出して議 論を通して学習する。これらはあなたの聴衆の関心を形成する。 H7N9 に対する聴衆の関心の例としては、 ● 私の農場や私の市場でこれらの研究者が行っていることは何か? ● この状況は、私の家族、友人あるいは私自身に脅威を与えるか? ● 私の事業を危険に晒すか? ● 検査で H7N9 陽性となった場合、私の鳥に何が起こるか? ● 市場を閉鎖することが本当に必要か? ● 市場は何時再開されるのか? 5.3 あなたの活動 理論的には、発生動向調査やリスク管理の活動をする前に、あなたは事前対 策のコミュニケーションに従事しているだろう。ただし、これは常に可能とは 限らない。したがって、リスク管理者は、コミュニケーション活動を始める前 に、H7N9 に対して保護する活動を事前に行うことができる。あなたが既に何 の活動を実施しているか、それはあなたが現在実施している活動か、あなたは 将来どのような戦術を計画しているかを吟味しておくことが重要である。それ らの活動とその背景にある意義は、あなたが発信する最後のメッセージに統合 しなければならない。 5.4 新しい、改善されたメッセージ あなたの最初のメッセージ、あなたの聴衆の関心ならびにあなたの結論を考 慮に入れて、進行中または計画されている活動は、背景にあるリスクを伝える 効果的なメッセージを作成するための効果的な方法とすることができる。 5.5 あなたのメッセージのタイミング 一般的に、メッセージは、発生動向調査とリスク管理活動が行われる前、最 中およびその後に配信しなければならない。 ● 聴衆が今後の介入策に対して期待を準備する前にあなたのメッセー ジを配信し、あなたの聴衆の役割がそれらの活動および彼らの事業 や生活への潜在的な影響に役割を果たすことができるようにする。 ● あなたの活動期間を通してあなたのメッセージを再確認することは、 対象とする聴衆とのコミュニケーションを維持し、実施を容易にす る理解と信頼を構築ために不可欠である。 ● あなたの活動が完了した後で訪問、電話、声明および報道によって あなたの活動を追跡調査することは、継続的な積極的参加を促進す る鍵である。聴衆からのフィードバックを聴くことは常に不可欠で あり、それは「聴衆の関心」となり、メッセージを継続的に改良す るメッセージ作成ミックスに継続的に再利用しなければならない。 6. 結論 現在のH7N9 の状況に対応するには、公的および民間領域の幅広い分野な らびに全体の参加が求められる。科学と政策の専門家はこの対応の骨格を提供 するが、リスクコミュニケーションは、人間の健康や養鶏関連の生活に対して

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- 11 - H7N9 がもたらすリスクを減らす上できわめて重要な役割を果たしている。リ スクコミュニケーションは、技術的なデータを説明する際の能力の向上だけで はなく、共感できる人間的な方法で技術情報を提供することも含んでいる。リ スクコミュニケーションは、このウイルスに関する一般大衆の関心のレベルを 正当かつ適切に引上げる手助けとなり、政府の活動に大衆の支持を取り付け、 製品回避の大きさと期間を減らし、それによって市場のショックを軽減し、長 期的な市場基盤整備および家禽市場網に対する健康増進の取組み方を促進する ために採用しなければならない。 7. 参考文献(省略) 8.附属資料:メッセージの作成の手引き A. 一般的関心事 B. 食品の安全性 C. 一般大衆は何ができるか C.1 全ての聴衆 C.2 家禽の消費者 C3. 家禽の生産者と仲介業者 C.4 生鳥市場の管理者と労働者 D. 政府は何をしているか D.1 発生動向調査 D.2 市場閉鎖 D.3 休日と夜間の禁止事項 D.4 動物種の隔離や禁止 D.5 人々、生きた家禽およびと殺地域の隔離 D.6 市場の清掃、消毒、副生物の廃棄 D.7 排水溝 D.8 輸送ケージの洗浄 D.9 衛生的なと殺、脱羽および処理 D.10 定期的な市場検査 D.11 と殺の中央集中化 D.12 市場の再構築 D.13 農場段階での制御措置 D.14 野生動物の管理 以下の説明は、メッセージ作成ミックス の過程(第 5 節で説明)を使用し て、リスク管理者が自らの背景に固有のメッセージを作成する際に使用する開 始点として提供されている。 重要:下記の説明は、メッセージとは見なされず、そのままの形で広めるこ とを意図していない。あらゆる説明がメッセージに利用され、その後広められ る前に、背景の留意点に基づいて、全面的な見直し、解析、評価および修正が 最初に必要である。さらに、多くの説明には、当局における高レベルの信頼の

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- 12 - ある十分は資金のある領域を含む特定の状況でのみ適用できる推奨事項が含ま れている。それぞれのアイデアは、背景の中で吟味し、修正、配布あるいは破 棄しなければならない。 A. 一般的関心事 ● H7N9 は、人間の健康へ脅威をもたらすウイルスであり、インフルエン ザ世界流行を引き起こす可能性を持っている。 ● 世界流行は予測することができない。それは発生する可能性があり、世 界的な健康の脅威となる。さらに、世界流行発生の可能性を減らすため の手順を実行することができる。 ● H7N9 は、感染者にインフルエンザ様の症状を引起し、とくに未治療の まま放置するとしばしば死亡する。我が国における死亡率は、約X から Y の範囲である。 ● H7N9 は、感染した家禽の分泌物との直接接触を介してヒトに伝播する。 ヒトからヒトへの伝播は観察されていない。ただし、H7N9 は哺乳類を 感染するため高度に適応しており、それは、持続的にヒト・ヒト感染す る能力を獲得する可能性があることを意味している。 ● 持続的なヒト・ヒトの感染は、次の可能性を大幅に高める;i) ヒト集 団全体に急速に広がる、ii) 世界中でヒトの死亡率の率が高い。 ● ヒトは、感染した家禽または汚染された環境(たとえば、生鳥市場、家 禽の輸送、と殺作業)との接触を介してH7N9 に感染する可能性が最も 高い。 ● H7N9 は家禽において病気の明らかな徴候を起さない。したがって、ウ イルスを家禽集団で検出することは難しい。リスクに基づく積極的発生 動向調査を適用する必要がある。 ● H7N9 は発生地域の家禽集団で循環している。ただし、どの程度広がっ ているか推定することは困難である。 ● H7N9 によるヒトの死亡を防ぐには、個人、地域社会、地方、国および 地域レベルにおいて持続的な、協調した、公的および民間の活動が求め られる。 ● H7N9 から保護する公衆衛生は、全ての関係者の共通の責任である。 ● H7N9 は野鳥に感染しないと思われ、現在の証拠は H7N9 の拡大に野鳥 が役割を果たしていないことを示している。野鳥はそっとしておくべき である。 (つづく 2015/10/5) B. 食品の安全性 ● 家禽製品は、適切な調理、衛生および加熱手順を行えば、安全に食べら れる(附属資料1.A)。 ● 適切な加熱手順は、H7N9 ウイルスを完全に不活化し、適切に加熱され た肉を食べるヒトにとって無害にする。 ● H7N9 ウイルスは生きた家禽の上部気道に感染するので、肉、骨および 皮膚などの家禽製品は消費者にリスクをもたらさない。ただし、家禽が

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- 13 - 関連する新たな病気が現実のものとなった時、当初および一時的に家禽 を食べることを恐れることは人々にとって理性的なことである(ヒステ リックであってはならない)。 C. 一般大衆は何ができるか C.1 全ての聴衆 ● 家禽の消費者、生産者、取引業者および仲介業者は、ヒトの追加死亡お よびH7N9 世界流行のリスクの軽減に重要な役割を果たす。 ● くしゃみをする時は口を覆い、鼻をかんだ後はティッシュを適切に捨て、 風邪様症状を示している者と接触した時は頻繁に手を洗う(WHO, 2014)。 C. 2 家禽の消費者 ● 処理された家禽製品の購入を選ぶ。それができない場合、当局と家禽労 働者が清掃と再構築を通して生鳥市場を安全な状態にできるまでのX 期間は加工された家禽製品を購入するようにする。 ● 以下の適切な生物学的安全慣行を証明した販売者を選ぶ。 ○ 動物種別に分けた清潔なケージ ○ 消費者と生きている鳥との間の防護壁 ○ 衛生的なと殺設備 ● 最低限の予防策として、上記の推奨事項の一部または全部が不可能な場 合、生鳥市場における生きた家禽との直接接触を避ける(とくに、と殺 中)。 ● 適切な食品の調理、衛生および加熱手順に従う。 C. 3 家禽の家禽の生産者と仲介業者 ● 家禽流通網における家禽生産者、輸送業者、販売業者およびその他の全 ての仲介業者は、個々の生産単位へのウイルスの侵入リスク、市場網を 通して内部および外部へ広がるリスクを最小限に抑えるための生物学 的安全措置を利用しなければならない。 ● 適切な生物学的安全措置は以下を含む。 ○ 野鳥、齧歯類またはその他の害虫を排除するための柵や網 ○ 清掃と消毒が容易なコンクリート床張り ○ 農場訪問者に対する入場制限 ○ 入場する者に対する踏込消毒槽と使い捨て衣類 ● 適切な生物学的安全措置と衛生措置は、一般的に、H7N9 やその他の病 原体から動物やヒトを保護するのに役立つ。 ● 衛生と生物学的安全措置は、家庭農場、商業事業体および生鳥市場にお いて強化しなければならない。これは、ウイルスの侵入、拡大、最終的 にヒトの暴露のリスクを減らすために役立つ。 ● 可能な最善の措置をもってしても、世界流行のリスクはゼロに減らすこ とはできない。ただし、家禽の発生の多くは、それらの最善の慣行の一 部または全部を実施することによって止めることができる。

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- 14 - ● より効果的な生物学的安全措置をあなたが実行すれば、H7N9 やその他 の有害なウイルスが流行するリスクを一層緩和する。 ● 発生した時、封じ込め措置を素早く実施すれば、流行をより速く止めら れる。 ● 封じ込め措置には以下を含むことができる。 ○ 発生農場・地域の検疫およびそれらのより広い地域における家禽の 移動制限 ○ 罹患した家禽と鳥の殺処分と廃棄 ○ 発生施設の清掃と消毒 ○ 発生施設周辺半径 10 km 地帯の家禽飼育施設の発生動向調査 C. 4 生鳥市場の管理者と労働者 ● 生鳥市場に適切な衛生状態を確保することで命を救える ● 生鳥市場に適切な衛生施設を設けることによって、長期的に資金を節約 できる ● 衛生措置の実施には、全ての利害関係者(たとえば、市場の運営者、出 店者、地方当局、獣医療当局、公衆衛生当局および販売業者)の協議と 関与が必要である ● 適切な衛生には以下を含む。 ○ 清掃と消毒が容易なコンクリート床 ○ 施設内に生きた家禽が残っていない夜間の市場閉鎖 ○ 市場閉鎖後の毎日の清掃と消毒 ○ 家禽の積み下ろしと販売の区域の分離 ● 全ての場所における全ての家禽販売者がこれらの全ての推奨された改善 事項を達成している訳ではない。したがって、上記より安価で達成可能 な達成可能な推奨事項を上記の高価なものから分離できることが重要 である。それには、少なくとも販売者は以下のことをしなければならな い。 ○ 異なる鳥種を分離し、野鳥が家禽の繋留場所に侵入することを防ぐ ○ 販売区域と積み下ろし区域からと殺区域を分けるとともに、それら へ一般市民が入るのを防ぐ ○ 可能ならば、夜間は家禽を市場に置かない(市場が閉鎖される時間 に残った家禽は、市場に戻ることがないように、と殺、殺処分ある いは移動しなければならない) ○ 死亡または病気の家禽の販売を自粛する。 D. 政府は何をしているか 下記のメッセージは、各国固有の対象とする聴衆に基づいて、地方レベルで 実施されている政府の実際の活動に関連させて出発点として利用することがで きる。 D.1 発生動向調査 ● 当局は、H7N9 やその他の人獣共通感染症の鳥インフルエンザウイルス によってもたらされるヒトの健康に対するリスクを軽減し、家禽が関連する生

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- 15 - 活への影響を減らす包括的活動の一環として、家禽における H7N9 に対する発 生動向調査プログラムを実施している。 ● この発生動向調査プログラムの主な活動は以下の通りである。 ○ 生きた家禽と周囲の環境(高、中、低リスクの地域)の定期的サン プリング ○ H7N9 およびその他の鳥インフルエンザウイルスのサンプルの定期 的検査 ○ あらゆる H7N9 陽性家禽の出荷元と配送先に関する情報の定期的収 集 ● 優先度の高い発生動向調査地域には以下が含まれる。 ○ H7N9 発生地域と接する未発生地域 ○ 発生地域と関係する生きた家禽や家禽製品の合法的または違法な取 引関係のある未発生地域 ● 中程度の優先順位の発生動向調査地域には以下が含まれる。 ○ H7N9 発生地域・国から輸入する地域と取引がある未発生地域 ● 優先度の低い発生動向調査地域には以下が含まれる。 ○ 発生地域と地理的または取引の関係がない未発生地域 ● 発生動向調査の目的 ○ 高または中程度の優先順位地域の発生動向調査の主な目的は、H7N9 ウイルスの侵入やその他の鳥インフルエンザウイルスの存在の早期 発見である ○ 優先度の低い地域の発生動向調査の主な目的は、鳥インフルエンザ ウイルスの監視および国内の事前対策推進である ○ 発生動向調査の包括的な目的は、事前対策を推進しヒトと動物の健 康に対するリスクを減らすため、鳥インフルエンザウイルスの侵入、 拡大および発生の方法と場所について定期的な理解を維持すること にある。 ● 早期発見と早期対処の重要性は以下の通りである。 ○ 発見が早ければ、政府の活動が、ウイルス拡散の機会を減らし、家 禽のさらなる感染とヒトに対するリスクを軽減できる可能性をより 高める。 ○ 家禽生産システムへの H7N9 拡大の可能性を減らすことは、家禽生 産システムにおける侵入と定着を制限し、家禽と接触するヒトが H7N9 に感染する機会を減らすために役立つ。 (つづく 2015/10/6) D.2 市場閉鎖 論理的根拠 ● H7N9 検出のため市場を一時的に閉鎖する必要がある。H7N9 鳥インフ ルエンザウイルスは、以下の特徴を持っている。 ○ 感染したヒトの約 40% を殺す ○ 家禽において病気の徴候をほとんどあるいは全く示さない

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- 16 - ● 市場を安全にするために、現時点では適格でない箇所を革新して再構築 する必要がある。したがって、一般大衆にとって安全でないために、市 場を一時的に閉鎖する必要がある。 ● 市場閉鎖の実施は、家禽における H7N9 拡大のリスクを減らす手助けと なり、それによってヒトの病気と死亡を防ぐことができる。 ● 当局は、公衆衛生を保護するために、市場を閉鎖する市場管理者および 作業員との連携に取り組んでいる。 ● 当局は、収入を保護するために、できるだけ早く市場を再開するかまた は代替の取引の場を提供するよう市場管理者および作業員と連携して 作業している。 あなたの措置が影響を受けた者に大きな困難を引き起こしているという自 分自身の意識を示す説明を定期的に追加する。理想的には、影響を受けた者達 が経験していることをあなたが部分的に理解していることを示すために、影響 を受けた特定の個人の簡単な個別的状況を話す。 詳細 ● 市場は、ウイルスのさらなる拡散を防ぐことを期待して、人道的な淘汰 の緊急措置を求める。 ● 市場は、鳥やヒトの H7N9 感染の可能性を減らすために、改善された洗 浄と消毒の施設、設備および慣行を求める。 ● 市場は、一般大衆の健康にとってより安全な取引のため、大幅な再構築 を求める(再構築に関しては後の箇条書きを参照)。 ● 当局は、できるだけ早く再開するために、市場管理者および作業員と一 緒に必要な改善に取り組んでいる。 ● 市場は、 X 日に再開を予定している。 ● 代替として、生物学的に安全な取引会場を X、Y、Z の場所に用意してい る。 ● 政府は、この閉鎖・淘汰・再構築によって影響を受ける取引業者に金融 支援を提供している。 ● (支援が取引業者の通常収入よりはるかに低い場合)金融支援が取引業 者の損失を完全には補填していないことを謝罪する。 満たすべき誘因 ● 市場の改善は、健康を保護できる。H7N9 に感染したヒトはごく少数に 過ぎないが、致命率は高い。家禽市場網を改善する特別な活動を実施す ることは、H7N9 だけでなくその他の健康の脅威がもたらす健康上のリ スクを減らすことができる。 ● 市場の改善は、市場をより効率的に再構築し、家禽の取引高を向上させ、 廃棄物やH7N9 以外の病原体による家禽の死亡率を減らし、インフルエ ンザ清浄認定家禽製品による上乗せ価格を可能にする。 ● 当局は、影響を受けた家禽の取引業者や仲介業者のため資金調達の仕組 みを提供している。 ● 当局は、市場再構築に関連する改善された慣行の訓練を行っている。

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- 17 - ● ヒトの健康を保護するため、現在、家禽は制御された食鳥処理場で集中 的にと殺されている。その家禽は現在、X、Y、Z 地区で販売されている (D.11 参照)。 D.3 休日と夜間の禁止事項 論理的根拠 ● 休日や夜間に市場における家禽または家禽製品をなくすることは、一般 大衆と従業員の健康を保護する。 ● 休日や夜間に禁止することは、洗浄と消毒を組み合わせた時、鳥インフ ルエンザウイルスおよびその他の病原体の伝播を一時的に中断でき、そ れによって鳥を保護し、損失を減らすことができる。 ● 「休日」という用語は、生きた家禽が施設内に残ってない市場全体の 24 時間閉鎖を意味し、この期間は適切な洗浄と消毒のために使用しなけれ ばならない。 詳細 ● 当局は、適切かつ実現可能な休日を特定するために取引業者と一緒に作 業している。 ● 販売と返品の手配が行われている。 ● 当局は、それぞれの日の終わりに残った家禽の数を減らすために、取引 業者と販売業者が予想される羽数について事前に計画することを要請 する。 ● 夜間の禁止は、一日の終わりに売れ残った鳥のと殺を要請する。 満たすべき誘因 ● 政府は、販売日の終わりに売れ残った鳥の工業的凍結を支援する販売業 者への金銭的誘因を承認している。この新しい協定は、市場における仕 事と生活のバランスの改善を支援する。 ● この新しい協定は、動物の健康リスクを軽減し、それによって動物の損 失を減らし、生きている動物における家禽の取引業者と販売業者の投資 を保護する。 ● この新しい協定は、H7N9 のような潜在的に致命的なウイルスに感染す るヒトのリスクを減らす。 D.4 動物種の隔離や禁止 論理的根拠 ● 当局は、感染していない家禽を保護する障壁とケージを改善するために 市場管理者と一緒に取り組んでいる。 ● 当局は、H7N9 が家禽に感染する機会を減らす障壁とケージを改善する ために市場管理者と一緒に取り組んでいる。 詳細 ● 人々と生きている鳥やと殺活動との間の障壁は、家禽の間で「目に見え ない」循環をしているウイルスがヒトに感染する可能性を減らす。この ウイルスはヒトに対して致命的であるが、家禽に病気を起さない。

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- 18 - ● 市場や輸送中に家禽をそれぞれ仕分けるケージは、とくに H7N9 は鳥を 病気にしないので、未感染の家禽がウイルスに感染する可能性を減らす のに役立つ。 ● この特定の鳥種(たとえば、黄色鶏、ウコッケイ)がより頻繁にウイル スを保有することが示されており、一時的な禁止は、ヒトと他の鳥への H7N9 暴露リスクの軽減に役立つ。 満たすべき誘因 ● 政府は、必要な設備基盤を変更するため市場管理者と費用分担を実施し ている(すなわち、ケージ、飼育区画、輸送方法の改善)。 動物種の分離により顧客が興味ある種を容易に見分けられることで、売り上 げを伸ばす。 D. 5 顧客、生きた家禽およびと殺区画の分離 多くの場所において、人々は購入する前に家禽を間近で観察するため接近す る。近付かないよう注意するが、目的は、鳥の間でウイルスの拡散を減らすと ともに、彼らを保護することである。 理論的根拠 ● 人々、生きた家禽およびと殺区域をそれぞれ分離することは、H7N9 ウ イルスがヒトや他の鳥に感染する可能性を減らすことができる。 ● 感染 した生きている鳥は、病気の兆候を示さないで、ヒトや他の鳥を感 染させ得る。 ● 病気のヒトは生きている鳥を感染させることがあり、汚染されたと殺区 域の水やと体は両方に感染する。 詳細 ● 物理的な障壁は、顧客を養鶏ケージ、と殺・脱羽区域およびと体から離 す。 ● ケージは、鳥の種類ごとにそれぞれ分ける。 満たすべき誘因 ● 政府は、市場で生きている鳥と触って検査する一般的慣行について、文 化的に受け入れ可能な代替策を作成するため地域の指導者と一緒に取 り組んでいる。 ● 政府は、と殺区域に透明な障壁を設置する助成金を支給する。 ● 当局と市場管理者は、地域の全ての主要な市場についてこれらの変更を 一様に実施するに合意した。 ● 政府は、分離の必要性に対する一般大衆の意識を高めるためにマスメデ ィアのキャンペーンを始めた。 D.6 市場の清掃、消毒、副生物の廃棄 論理的根拠 ● 市場をより清潔にすれば、ヒトと家禽にとってより安全になる。 ● 表面、ケージ、装置および殺設備の定期的な清掃は、生きている鳥およ びそれと関連する物にヒトが暴露される可能性を減らすことができる。

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- 19 - ● 生きている鳥およびそれと関連する物は H7N9 ウイルスを運ぶことがで き、鳥は兆候を示さないため、清掃、廃棄物および死体の安全な処分を 通した予防とその他の注意事項は、ヒトの健康を保護する最善の方法で ある。 詳細 ● 市場は、設備基盤と清掃・衛生手順の両方を改善するために再構築され ている。 ● 市場労働者は、表面の清掃、廃棄物の適切な処分、適切な消毒および個 人防護具(PPE)の着用について改善された慣行を訓練されている。 満たすべき誘因 ● 政府は、無料で訓練を実施している。 ● 当局は、新しい洗浄装置、消毒剤および個人防護具(PPE)の備蓄の手 配の費用分担に関して市場管理者と一緒に取り組んでいる。 ● 個人防護具(PPE)は、ヒトの健康に影響を与え得る H7N9 ウイルスと その他の多くの病原体から清掃者をより適切に保護する。 ● 政府は、洗浄・消毒の計画の見直しを部分的に支援している。 ● より一層清潔にすることは、市場においてウイルス拡散または定着する 機会を減らし、清浄化した市場で家禽群の人道的淘汰などの制御活動は もはや必要なくなる。 (つづく 2015/10/7) D.7 排水溝 論理的根拠 ● 適切な排水は市場をより清潔にし、したがって市場をより安全にするの に役立つ。 ● 使用した水の排水は、下水管を定期的に清掃する限り、糞便、体液およ びその他の汚染物質の蓄積を避けることができる。 ● 鳥インフルエンザウイルスは、停滞した水の中で数日間生き残り、その 後ヒトや家禽に感染し得る。 詳細 ● 市場管理者および政府関係者は、改良された排水システムを敷設してい る。 ● 市場労働者は、排水システムを使用する訓練を受けている。 満たすべき誘因 ● 政府は、包括的市場基盤修復の一部として排水改善を支援している。 ● 排水の改善は、家禽の殺処分のようなより過激な制御措置の必要性をな くする。 D.8 輸送ケージの洗浄 論理的根拠 ● 当局は、生鳥市場で循環している H7N9 ウイルスによる農場の感染リス クを減らすために、トラックとケージを洗浄する新しい手順を推進して いる。

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- 20 - ● 卵の輸送箱、家禽のケージ、ならびにトラックのホイールですら、感染 していない農場にウイルスを運び、農場で感染を起し得る。 ● 鳥インフルエンザウイルスは、適切な条件、すなわち湿った、涼しい環 境において数日間生き残ることができる。 詳細 ● ケージ、トラック、輸送箱は、公衆衛生とくに家禽労働者を保護するた めに、定期的に水と洗剤で徹底的に洗浄する。 ● 洗浄が確実に行われるよう認証システムを実施し、文書化する。 満たすべき誘因 ● 当局は、卸売市場に対して消毒剤、洗浄剤、動力洗浄機および訓練を提 供している。 ● 認証システムは、この市場の製品を競合他社から区別するのに役立つ。 D.9 衛生的なと殺、脱羽および処理 論理的根拠 ● H7N9 やその他の病原体への職業的曝露を防ぐには、改善された衛生学 および個人的防護が必要である。 ● と殺、脱羽および処理は、作業員がウイルスに曝露される主要なリスク 区域である。 詳細 ● 作業員は、適切な個人防護具(PPE)を着用し、定期的に手を洗う必要 がある。 ● 脱羽機には、ウイルスの生存の可能性を減らすためにお湯を使用する。 満たすべき誘因 ● 市場の包括的再構築の一部として、当局と市場管理者は新たな設備にお ける処理中の衛生を改善し、訓練する。 ● 政府は、作業員の健康保護のために個人防護具(PPE)を提供する。 D.10 定期的な市場検査 論理的根拠 ● 当局は、ウイルス清浄の市場を維持するために、生鳥市場の H7N9 ウイ ルス検査を定期的に実施している。 ● 生鳥市場の H7N9 ウイルスの系統的検査は、ウイルス侵入をできるだけ 早く検出するのに役立つ。 ● 検査は、生物学的安全対策の有効性を確認するために必要である。 詳細 ● 検査は、X 日の頻度で実施される。 ● 検査は、あなたの鳥に害を与えないだけでなく、再販価値を下げること もない。 ● 検査を支援することは、あなたの市場を安全に保つ方法である。我々が 何かを早く検出すれば、それだけ早く我々は問題を取除き、市場活動を 維持できる。

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- 21 - ● 包括的な市場再構築の一環として、訓練、スケジュールおよび装置が提 供されている。 満たすべき誘因 ● 当局は、感染した当事者を糾弾するのではなく、市場全体の取組み方に ついて生鳥市場の労働者と連携して作業している。 ● H7N9 は共通の脅威であり、一般的な解決策が必要である。 ● 生きた家禽と市場環境の定期的で適切な検査は、H7N9 ウイルスが検出 された場合の措置を適時に実施する可能性が高まり、それによって公衆 衛生リスクおよび病気の制御措置に関連する経済的損失を減らす。 D.11 と殺の中央集中化 ● 政府および家禽生産者は、中央集中化したと殺システムに移行している。 ● 中央集中化したと殺システムは、生きた鳥との接触を介してウイルスに 曝露される消費者のリスクを大幅に削減する。 ● 防護具と訓練を含む措置は、食鳥処理場職員の健康を保護するために実 施される。 ● 食鳥処理場から出荷される家禽製品は、消費者のリスクを軽減するため に処理されている。 D.12 市場の再構築 ● 市場における現在の慣行は、H7N9 の伝播と拡大を促進している。 ● 政府は、家禽市場網労働者の将来の長期的経済的便益とともに、公衆衛 生学的安全性と食品の安全性の両方を向上させる計画の費用分担につ いて民間部門と一緒に作業に取り組んでいる。 ● 政府は、事業を展開する新しい、改善された方法への民間部門の投資の ため財政的誘因を提供している。 D.13 農場段階での制御措置 予防接種 ● 予防接種は、X、Y、Z の理由から、現在推奨できない。 ● 予防接種は、今後の選択肢である。予防接種の目的は、家禽の免疫力を 増強し、ウイルスの排出を減らすことによってヒトの健康への脅威を軽 減することである。 ● 予防接種は、今後の選択肢である。政府は、家禽の予防接種を支援して いる。 人道的淘汰 ● 淘汰は、ヒトの健康上のリスクを減らすために必要な場合のみ採用され る。 ● 淘汰は、トレーサビリティ、移動制御および補償を含む包括的制御計画 の一部である。 ● 政府は、あなたの地域社会の健康を守るためにあなたの助けを必要とし ている。

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- 22 - ● 当局は、あなたの損失を補償するだろう。 生物学的安全対策 ● とくに優先度の高い地域の農場は、鳥インフルエンザウイルスに関連す る既存の注意事項を守らなければならない。 ● 政府は、インフルエンザ清浄の鶏の流通に長期的な改善を支援する準備 ができている。 ● 当局は、この長期的な介入策の社会経済的費用の分担に取り組んでいる。 農場の移動と輸送の制御 ● H7N9 感染から家禽を保護するために農場の出入りを規制する必要があ る。 ● 出入り地点における車両とケージの洗浄と消毒に加えて、ウイルスが家 禽の間で広がるリスクを軽減し、ヒトの健康を保護するために、検証と 適切な個人防護を実施しなければならない。 ● 政府は、訓練と手段を提供する。 ● 当局は、封じ込めることができるあらゆる非認証資材を検査する。H7N9 陽性と判明したそれらの資材は破壊される。 D.14 野生動物の管理 ● 野鳥は、H7N9 ウイルスの感染源または保有動物とはみなされない。 ● 追加の予防措置として、野鳥の取引は規制される ● 公園において野生動物に餌を与えることは、ヒトおよび野生動物の相互 間で病気が感染する可能性を減らすために禁止されている。(完) 訳注:リスクコミュニケーションの適切な日本語訳は未だ見当たらず、理解が 難しい。「情報交換」や「情報伝達」では一方的であるため、「双方向的情報 交換」としても、しっくりこない。本文の「3.3 動機と感情が不可欠」に「殺 処分と移動制限によって鳥インフルエンザを管理するための努力の歴史は、多 くの利害関係者、とくに農民がその費用はあらゆる具体的な利益よりもはるか に大きいと感じることを示唆している。これが真実である限度において、リス クコミュニケーションの最善の慣行は次のことを求める;i) その現実を認める、 ii) その苦悩を共有するかまたは少なくとも検証する、iii) 他者に対する想定 される害を避けるために一部の利害関係者に対する現在の害を行うことに内在 する難問を認めて共有する」と記載されていた。BSE、口蹄疫、鳥インフルエ ンザが日本で発生した時、「なぜ殺すのか?」と問い詰められ、「流行拡大を 防ぐ最善の方法だから」と説明してきたが、それだけでは不十分だと指摘して いる。「殺さずに済む方法を見つけることができないでいる」と被害を被る農 家と感情を共有することが、理性的説明に先立って必要とされている。 その上で、殺処分に代る方法、たとえば予防接種の限界などについて丁寧に 説明すべきである。ヒトのインフルエンザには予防接種で対応しているが、感 染を防ぎ切れず、症状を軽くするだけである。家禽の感染予防は、それでは不 十分であり、ヒトの感染を防ぐためにはウイルスを保有している状態をなくさ なければ解決にならない。この難問を共有することが重要なのである。

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