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日本金属学会誌第 69 巻第 11 号 (2005) 繰り返し重ね接合圧延 (ARB) により結晶粒超微細化されたニッケルの内部摩擦 小泉雄一郎 1 植山将宜 1, 辻伸泰 1 南埜宜俊 1 太田健一 2 1 大阪大学大学院工学研究科知能 機能創成工学専攻 2 京都工芸繊維大学工芸学

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大阪大学大学院生,現在コマツ株(Graduate Student, Osaka University, Present address: Komatsu Ltd.)

繰り返し重ね接合圧延(ARB)により結晶粒超微細化

されたニッケルの内部摩擦

小泉雄一郎

1

植 山 将 宜

1,

辻   伸 泰

1

南 埜 宜 俊

1

太 田 健 一

2

1大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻 2京都工芸繊維大学工芸学部物質工学科

J. Japan Inst. Metals, Vol. 69, No. 11(2005), pp. 9971003  2005 The Japan Institute of Metals

Internal Friction of UltrafineGrained Nickel Produced by Accumulative RollBonding(ARB) Yuichiro Koizumi1, Masanori Ueyama1,, Nobuhiro Tsuji1, Yoritoshi Minamino1and Ken'ichi Ota2

1Department of Adaptive Machine Systems, Graduate School of Engineering, Osaka University, Suita 5650871 2Department of Chemistry and Materials Technology, Kyoto Institute of Technology, Kyoto 6068585

Internal friction (Q-1)of nickel sheets highly deformed up to an equivalent strain (e) of 4.8 by the Accumulative RollBond-ing (ARB) process was investigated in order to clarify the dampRollBond-ing mechanism of the ultrafinegrained materials produced by se-vere plastic deformation. Although the strength increased with increasing number of the ARB cycle (N ), the maximum value of Q-1was obtained at N=4 (e=3.2). At relatively small e about 1, where dislocation cell structure was formed, relatively small Q-1below 5×10-3was obtained. The dislocations within the cell walls appeared to be tightly pinned at high density of nodes or other dislocations. In the middle range of e, where the ultrafine grains having diameter lager than 0.2 mm were formed, a high valued of Q-1greater than 5×10-3was obtained. In the ultrafine grains, dislocations without the pinning by nodes or other dislo-cations were observed. At the largest e of 4.8, where the grain size was as small as 0.15 mm, the Q-1was smaller than 4×10-3. The distance of the dislocation motion under vibration stress seemed to be small due to the fine grain size. The change in the Q-1 with number of the ARB cycles was attributed to the changes in the dislocation density and the distance of dislocation motion un-der vibrating stress which is controlled by the pinning points and the grain boundaries.

(Received May 2, 2005; Accepted September 1, 2005)

Keywords: internal friction, damping, ultrafine grain, nickel, accumulative rollbonding (ARB), severe plastic deformation

1. 緒 言 機械の高速化や軽量化には,材料の高強度化が必要である とともに,振動,騒音の抑制が求められる1,2).一般的に, 金属材料の強度と振動減衰能(制振性)の間には相反する関係 すなわち,強度の高い材料ほどその制振性は低いという傾向 が見られる35).例えば,サイレンタロイなどの強磁性型制 振材料は,内部摩擦の起源となる磁壁の移動を容易にするた めに焼鈍により結晶粒を粗大化させて用いるが,その結晶粒 粗大化により強度は低下する5) 近年,構造材料の高強度化を目的として,強ひずみ加工に よる結晶粒超微細化の研究が数多くなされている6).これま

でに,Equal Channel Angular Pressing(ECAP)7), High Pressure Torsion(HPT)8,9), Accumulative RollBonding

(ARB)10,11)等の強ひずみ加工により,1 mm 以下の結晶粒径 を有する超微細結晶粒材料が,鉄11),銅7,8),アルミニウ ム7,10)等で得られており,粒径 10 mm 以上の通常粒径材の数 倍の高強度を有することが示されている.上記のような一般 的な強度と制振性の関係からは,結晶粒超微細化による高強 度化に伴い制振性は低下すると予想される.しかし,強ひず み加工による結晶粒微細化においては,強度が上昇するにも かかわらず制振性は低下せず,むしろ向上するということが 報告されている12,13).例えば,ECAP により結晶粒超微細化 された銅は,平均粒径 10 mm の通常粒径材の約 2 倍の強度 と同時に約 5 倍の内部摩擦を示す12).また,我々は,ARB により結晶粒超微細化された 1100 アルミニウムと高純度ア ルミニウムが,各々通常粒径材の 2 倍以上の強度をもつ が,約 10 倍もの高い内部摩擦を示すことを見出した13).強 ひずみ加工による結晶粒超微細化において強度と制振性の両 方が向上する理由として,Valiev ら12,14)は,非平衡粒界に よる内部摩擦を提案している.一方,我々は ARB されたア ルミニウムの内部摩擦と結晶粒サイズとの関係が,両端を結 晶粒界に拘束された転位の弦振動モデルから予想される関係 と一致すること,また粒径が大きく粒界密度が低い方が内部 摩擦が高いことから,内部摩擦の原因は非平衡粒界ではなく 超微細結晶粒内部に存在する転位であると提案した13).一 方,熱間加工して焼入れ後液体窒素温度での 35圧延によ り結晶粒超微細化された 1810 ステンレス鋼の内部摩擦は 平均粒径 73 mm の通常粒径材の内部摩擦とほぼ同等であ

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Table 1 Chemical composition of the nickel sheet used in the present study (mass).

C Si Fe Cu Mn S Ni 0.01 0.04 0.13 0.03 0.24 0.001 Bal. り,ひずみ振幅が高い場合にはむしろ小さくなると報告され ている15).このように強ひずみ加工あるいは他の加工によ り得られた超微細結晶粒材料の内部摩擦については,まだ報 告例が少なく,一定の傾向は認められていない.この原因と して,材料,加工ひずみの導入法,そしてそれら結果として の組織の違いが考えられるが,統一的には理解されていな い.これまでに報告されている加工により結晶粒超微細化さ れた材料の内部摩擦は,アルミニウム,銅,1810 ステンレ ス鋼と,いずれも fcc 金属の内部摩擦である.これらと同様 に fcc 金属であり,構造材料としても重要なものにニッケル がある.しかしながら,これまで強ひずみ加工により結晶粒 超微細化されたニッケルの内部摩擦を測定した例はない.さ らに ARB は,アルミニウム,銅に適用された例はあるもの の,ニッケルに施された例はない. 以上の背景の下,本研究では,ニッケルに ARB を施し, 加工に伴う強度と内部摩擦の変化を調べるとともに,これま でに報告されている,加工により結晶粒超微細化された材料 の内部摩擦と比較し,加工により製造された超微細結晶粒材 料の内部摩擦の特徴と,その機構について考察することを目 的とした. 2. 実 験 方 法 供試材として Table 1 に示す化学組成をもつ純ニッケル冷 延焼鈍板を用いた.板厚 1 mm×板幅 30 mm×長さ 150 mm の二枚の供試材に対し,表面処理としてアセトンによる脱脂 ならびに SUS 304 ステンレスワイヤによるブラッシングを 施した後,処理した表面同士を付き合わせて積層し,1 パス 圧下率 50(相当圧下ひずみe=0.8)の接合圧延を施した. この圧延により得られた板を長手方向に二等分することで, 出発材とほぼ同じ形状の二枚の板材が得られる.その二枚の 板に上述の表面処理と接合圧延を再び施した.この表面処理 から圧延までの工程を 1 サイクルとする ARB を,最大 6 サ イクル(e=4.8)まで施した.尚,圧延は,ロール直径 310 mmの二段圧延機を用い,ロール周速 17.5 m/min.(相当ひ ずみ速度 ·e=19 s-1),室温,無潤滑の条件で行った. 種々のサイクルの ARB を施した厚さ 1 mm の板(以下,n サイクルの ARB を施した板材を n サイクル ARB 材と記 す.)から,JIS 5 号試験片の 1/5 の大きさ(平行部長さ 10 mm,平行部幅 5 mm)の引張試験片ならびに,板幅 5 mm× 長さ 60 mm の内部摩擦測定用試験片を,長手方向が圧延方 向と平行になるようワイヤ放電加工機により切り出した.試 験片表面には,400~1000 番のエメリ紙による機械研磨を 施した. 引張試験は,室温大気中にてクロスヘッドスピード 0.5 mm/min.-1(初期ひずみ速度 8.3×10-4s-1)の条件で行っ た.内部摩擦測定は,室温,大気中の無風状態で,逆さ振り 子式のねじり自由減衰法を用いて行った.ひずみ振幅は 5.6 ×10-5から 5.6×10-3の範囲で変化させた.ヤング率を, 内部摩擦測定用試料を用いて,縦振動自由共振式ヤング率測 定装置により測定した.また,縦断面(TD 面)に対し,0.05 mm のアルミナ粉を用 いたバフ研磨を施 した後,荷重 50 gf,負荷時間 10 s の条件でビッカース硬度測定を行った. 透過型電子顕微鏡(TEM)による内部組織観察は以下のよ うに行った.ARB 材より,TD 面に平行な,長さ 3 mm,厚 さ約 0.2 mm の薄片を放電加工により切り出し,厚さ 80 mm となるまで 1000~1200 番のエメリ紙により機械研磨した後, 30過塩素酸酢酸溶液を用いて,電圧 50 V,液温 11°C の条 件にてツインジェット電解研磨を施し薄膜とした.広範囲の 組織観察は明視野法にて,高倍率での転位の観察はウィーク ビーム暗視野法を用いて行った. 3. 実 験 結 果

Fig. 1 に,1 サイクル ARB 材,3 サイクル ARB 材,6 サ イクル ARB 材の TEM 組織を,視野の中心より得られた制 限視野回折図形(SADP)とともに示す.Fig. 1(a)に示す 1 サイクル ARB 材においては,比較的転位密度の低い領域と それを取り囲むように分布する高密度に転位が集積した領域 とから成るセル組織が観察された.SADP には単一方位か らの回折図形が観察され,回折点の形状も点状であることか ら,大きな結晶方位差は認められない.セル壁と粒界を区別 せずに測定した板厚方向の平均結晶粒(セル)厚さは 0.41 mm であった. Fig. 1 ( b ) に 示 す 3 サ イ ク ル ARB 材 で は , 1 サ イ ク ル ARB 材と比べて,高密度に転位が存在する領域が減少し, 圧延方向(RD 方向)に伸長した微細な組織が観察された. SADPには入射波を中心とする円の周方向に伸びた回折点 が観察され,方位差の小さい粒界が多く形成されていること が示された.小角粒界と高角粒界を区別せずに測定した板厚 方向の平均結晶粒厚さは 0.24 mm であった. Fig. 1 ( c ) に 示 す 6 サ イ ク ル ARB 材 で は , 3 サ イ ク ル ARB材に比べて,より微細な組織が形成されており,明瞭 な界面が増えていた.粒の形態は RD 方向に伸長したものと なっていた.SADP では,入射線を中心とする円周方向に 伸びた回折点があり,大きな方位差を有する複数の結晶の回 折点が重なっていることから,大角粒界と小角粒界が混在し ていることがわかる.小角粒界と高角粒界を区別せずに求め た平均結晶粒厚さは 0.14 mm とより微細になっていた.6 サ イクル ARB 材中に見られた圧延方向に伸長した組織は,ア ルミニウム10,16)や鉄11,17)に ARB を施した場合に形成される 超微細結晶粒組織(ラメラバウンダリー組織17))と酷似して おり,ニッケルにおいても,ARB により形成される典型的 な超微細結晶粒組織が形成されたといえる. Fig. 2 に,種々のサイクルの ARB 材のウィークビーム暗 視野像を示す.いずれのサイクルにおいても結晶粒内部に転 位が観察されたが,その分布や形態はサイクル数によって異 なった.Fig. 2(a)に示すように 1 サイクル ARB 材中の転位

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Fig. 1 TEM micrographs and corresponding SAD patterns of the nickel sheets ARB processed to (a) 1 cycle, (b) 3 cycles and (c) 6 cycles. Observed from TD.

は,セグメントの短いものが多く,転位同士が絡みあってい るか,あるいは,ネットワークを形成していると思われる. Fig. 2(b)に示す 3 サイクル ARB 材においては,比較的長い セグメントを有する転位が観察され,転位間の間隔が大きく なっている.また,転位には不純物原子や空孔等の点欠陥に よるピン止めを示唆するカスプが多数見られた.Fig. 2(c) に示すように 6 サイクルの ARB により比較的長いセグメン トをもつ転位が増えているが,転位線の長さは微細化した結 晶粒のサイズに制限されている.またこの場合にも,転位に は,不純物原子や点欠陥によるピン止めを示唆するカスプが 観察された. Fig. 3 に,ARB サイクル数の増加に伴うビッカース硬度 の変化を示す.出発材の硬度は HV120 であったが,1 サイ クルでは HV260 と 2 倍以上に上昇した.2 サイクル以降, 変化は緩やかとなるものの,サイクル数の増加とともに硬度 は上昇し続け,6 サイクルでは HV318 に達した. Fig. 4 に出発材ならびに各サイクル ARB 材の内部摩擦 (Q-1)のひずみ振幅(Dg )依存性を示す.出発材の Q-1は, Dg=5.6×10-5で 1.5×10-3からDg=5.6×10-3で 2.5× 10-3Dg 値に対してわずかに増加している.各サイクル ARB 材の Q-1は 5.6×10-4以下のDg では,約 2×10-3 ら 4×10-3の範囲にあり,ARB サイクル数による差もほと んどなく,出発材の Q-1と同様の増加を示している.一 方,高Dg では 3, 4, 5 サイクル ARB 材の Q-1は大きく上 昇し,ひずみ振幅依存性が顕著となった.4 サイクル ARB 材の Q-1は最も高く上昇し,Dg=5.6×10-3で 9.5×10-3 に も 達 し た . 5 サ イ ク ル ARB 材 の Q-1は , 3 サ イ ク ル ARB 材の Q-1と同様の Dg 依存性を示し,また,6 サイク ル ARB 材の Q-1は 2 サイクル ARB 材の Q-1とほぼ同じ Dg 依存性を示した. Fig. 5 に,ARB サイクル数に伴う Q-1の変化を,各Dg ごとに示す.1 サイクルの ARB では,全てのDg において Q-1は 1×10-3程度上昇しているが,2 サイクル以降の変化 は Dg により大きく異なった.5.4×10-4以下の Dg におい ては,全てのサイクル数で Q-1は約 2~4×10-3の範囲にあ った.一方,高Dg( Dg=1.8×10-3,Dg=5.4×10-3)での Q-1は,4 サイクルで最大値(Dg=1.8×10-3で 5.8×10-3, Dg=5.4×10-3で 9.5×10-3)を示している.6 サイクルでの Q-1は,全ての Dg で低い値を示し,3×10-3近傍に集まっ ている.

Fig. 6 に,ARB サイクル数の増加に伴うヤング率(E )の 変化を示す.出発材の E は 200 GPa であったが,1 サイク ルの ARB により E は 220 GPa にまで上昇した.2 サイクル 以降は 5 GPa 程度の増減はあるものの,ほぼ一定となっ た.尚,図中に示した点線および破線は各々,室温でのニッ ケルの E の文献値18)と,磁気変態点以上の温度における E の温度依存性を室温まで外挿した値20)である.出発材の E は文献値に近く,ARB 材の E は外挿値に近い. 4. 考 察 純ニッケルの内部摩擦は,ARB により大きく上昇し,4 サイクルで最大値を示した.この内部摩擦変化の考えられ得 る原因として,粒界緩和19),Zener 緩和19),磁壁移動19),転 位緩和19),そして Valiev らが提案している非平衡粒界の緩 和14)がある.一般的な粒界緩和は 0.3T m(Tmは融点)以上の 高温で発現するものであり21,22),室温での発現は考え難い. 同様 に Zener 緩和 も 0.4Tm以上の 高温で 発現す ること か ら19),室温での内部摩擦変化の原因とはなり得ない.磁壁 移動による内部摩擦については,転位や結晶粒界の存在によ り著しく抑制されるため19),転位と粒界を導入する ARB に よる内部摩擦の上昇を説明できない.さらに,磁壁移動が生 じ易い場合,磁歪の影響によりヤング率は低下し,磁気変態 点以上の温度でのヤング率の温度依存性の外挿値よりも低く なるDE 効果がある20),磁壁移動による内部摩擦の発現であ れば DE 効果が観察されるが,出発材の E は低く DE 効果

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Fig. 2 Weak beam dark field images of the nickel sheets ARB processed to (a) 1 cycle, (b) 3 cycles and (c) 6 cycles. Ob-served from TD.

Fig. 3 MicroVickers hardness of the ARB processed nickel sheets as a function of number of ARB cycle.

Fig. 4 Internal frictions of the nickel sheets ARB processed to various cycles as a function of strain amplitude.

Fig. 5 Internal frictions of the ARB processed nickel sheets at various strain amplitudes as a function of number of ARB cycle.

が現れているのに対し,ARB 材の E は,磁気変態点以上で の E の温度依存性を室温へ外挿した値に近く,DE 効果は消 失している(Fig. 6).従って,ニッケルの ARB 材の内部摩 擦への磁壁移動の寄与は極めて小さいといえる. 転位運動による内部摩擦は,振動の最大振幅での弾性エネ ルギーに対する転位運動により消費されるエネルギーの比で 与えられるので,転位に働く摩擦力と振動応力下での転位の 掃引面積の積に比例する13).摩擦力は転位密度や粒径に依 存しないので,ARB による内部摩擦の変化は転位の掃引面 積の変化に依存する.この転位の掃引面積は転位密度と転位 の平均移動距離の積に比例する.ここで転位の平均移動距離 は転位のピン止めサイトの間隔に密接に関係することから, Fig. 2(a)(c)から転位密度とピン止めサイト間の転位のセ グメントの長さを測定した.その結果を粒径とともに Table 2に示す.尚,TEM 観察用薄膜の厚さは不明であるが,同 一の観察条件で同等の明度が得られていることから,各

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Table 2 Average length of dislocation segments, dislocation density and average grain size of the ARB processed Ni sheets. Number of ARB cycles Length of dislocation segments,l/nm Dislocation density,r/m-2 Grain size, d/mm 1 16 4.0/t0×107 0.41 3 25 2.3/t0×107 0.24 6 22 2.4/t0×107 0.14

Fig. 6 Young's modulus (E ) of the nickel sheet as a function of number of ARB cycle. Dotted line and dashed line indicate the E of recrystalized nickel in the literature and that deter-mined by extrapolation of the temperature dependence of E20) above magnetic transition temperature (358°C) to the ambient temperature, respectively.

TEM 像の視野での膜厚はほぼ等しいと考えられるので,仮

の厚さ t0を用いて算出した値を示している.

1 サイクル ARB 材中には,Fig. 2(a)に示したように,転 位が高密度に集積しているが,これらの集積した転位は,異 なるすべり系の転位とのタングルや転位同士の反応により ノード23)を形成しているため,平均ピン止めサイト間隔(転 位セグメント長さ)は小さい(Table 2).従って,1 サイクル ARB材では転位密度は高いものの,振動応力下での転位の 運動距離が小さいため,内部摩擦は高くならないと理解され る. 3 サイクル ARB 材中においては,高密度に集積した転位 が少なく(Fig. 2(b))転位密度は低下していた(Table 2).こ れは,集積していた転位の多くが,対消滅や結晶粒界への転 化24)により消滅した結果と考えられる.転位密度の変化の みから考えると内部摩擦は低下することになるが,転位双極 子やノード等が減少しており転位の平均移動距離が増大して いることからは内部摩擦が上昇することも考えられる.ただ し,転位双極子,ノード,粒界に拘束されていない転位も空 孔や不純物原子には緩く固着されていると考えられ,ひずみ 振幅が小さく転位に働く力が小さい場合,転位は空孔や不純 物原子などの緩い固着点から離脱できないため転位の平均移 動距離は小さく内部摩擦も小さいと考えられる.ひずみ振幅 が大きくなり転位にかかる力が上昇するにつれて,緩い固着 点から離脱できる転位のセグメントが増し,転位の平均移動 距離は増す.すなわち,GranatoL äucke 機構25)(以下 GL 機構と記す)により,高ひずみ振幅程より大きく内部摩擦が 上昇し,内部摩擦のひずみ振幅依存性が大きくなったと理解 される. 6 サイクル ARB 材中においては,結晶粒がさらに微細化 されていた.転位密度と転位セグメントの平均長さについて は,ともに 3 サイクル ARB 材中と同等である(Table 2). しかし,結晶粒微細化により,粒界に繋がる転位の割合が増 す.転位が粒界に繋がる点は一種のノードであり,転位は粒 界で強く固着されていると考えられる.そのため,ひずみ振 幅が増しても転位は粒界から離脱することできず,従って, 転位平均移動距離も上昇しない.このことが,6 サイクル ARB 材の内部摩擦が顕著なひずみ振幅依存性を示さなかっ た原因であると考えられる. 一方,非平衡粒界による内部摩擦では ARB に伴う内部摩 擦の変化の説明は困難である.非平衡粒界による内部摩擦 も,非平衡粒界の量と各粒界の非平衡度に依存した緩和のし 易さという 2 つのパラメータにより決定されると考えられ る.粒界の非平衡度に関する定量的データは現時点では不明 であるので,非平衡粒界の内部摩擦への寄与について定量的 議論はできないが,定性的には次のように考えられる.粒界 の密度を考えると,粒径の小さい,すなわち粒界密度の大き い 6 サイクル ARB 材が,粒径の大きい 3 サイクル ARB 材 よりも低い内部摩擦を示したことを説明できない.一方,粒 界の性質を考えた場合も,加工度の高い材料よりも加工度の 低い材料で粒界の非平衡度がより高いとは考え難く,結晶粒 微細化に伴う内部摩擦の変化を説明できない.非平衡粒界の 寄与が現れなかった原因が,非平衡粒界の緩和による内部摩 擦自身が発現し難いためなのか,それとも ARB 材中には非 平衡粒界がほとんど含まれていないためなのかは不明である. Fig. 7 に,ARB により結晶粒超微細化されたニッケルと アルミニウム,ECAP により結晶粒超微細化された銅,熱 間加工後液体窒素温度で圧延された 1810 ステンレス鋼の 内部摩擦のひずみ振幅依存性を示す.比較のため,ARB 前 のニッケルの冷延焼鈍板(0 サイクル ARB 材)の内部摩擦も 示している.Table 3 には各超微細結晶粒材料の加工ひずみ 量と粒径を示している.まず,ニッケルでは,4 サイクル ARB 材,6 サイクル ARB 材ともに,全てのひずみ振幅にお いて 0 サイクル ARB 材よりも高い内部摩擦を示している. この内部摩擦の原因は,前節でも述べたように,転位による ものと考えられる. 本研究と同様の条件で 5 サイクルまで ARB された 1100 アルミニウムと高純度(99.99)アルミニウムの内部摩擦で は13),1100 アルミニウムの内部摩擦のひずみ振幅依存性は, 10-3以下の低ひずみ振幅域においてのみ見られ,それ以上 のひずみ振幅において内部摩擦は一定であり,一方,高純度 アルミニウムの内部摩擦は,約 11×10-3の高い値を示し, ほと んどひず み振幅依 存性を示 さない13).い ずれの場 合 も,ニッケルの ARB 材の内部摩擦ならびにそのひずみ振幅 依存性とは大きく異なる.1100 アルミニウムの ARB 材の 平均結晶粒厚さは約 0.25 mm である.1100 アルミニウムの 5 サイクル ARB 材は,ニッケルの 6 サイクル ARB 材中と 比べて,結晶粒厚さが大きく最大の転位の運動距離が大きい ため内部摩擦は大きいと理解することができる.また,高純 度アルミニウムと比べて顕著な内部摩擦のひずみ振幅依存性 が現れたことについては,粒径が大きいことに加えて転位に

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Fig. 7 Internal frictions of various ultrafinegrained materials produced by severe plastic deformation or straining process as a function of strain amplitude.

Table 3 Equivalent strain and grain size of ultrafine grained materials produced by severe plastic deformations or straining at 77 K subse-quently to hot working and quenching.

Material Method Equivalent strain,e Grain size,d/mm Reference

Ni ARB(6 cycles) 4.8 0.14 this work

Ni ARB(3 cycles) 2.4 0.24 this work

1100Al ARB(5 cycles) 4 0.25 Koizumiet al.13)

99.99Al ARB(5 cycles) 4 0.67 Koizumiet al.13)

Cu ECAP 3 0.2 Mulyukovet al.12)

1810 stainless steel Hot roll and cold roll at 77 K ― 0.15 Mulyukovet al.15) は固着点の存在を意味するカスプが多数観察されていること から13),最大の転位の運動距離が大きくかつ純度が低いた め粒内に不純物元素による緩い固着点が多く存在し GL 機 構が発現したためと理解される.また,高ひずみ振幅側でひ ずみ振幅依存性がなくなることについては,全ての緩い固着 点から離脱し,結晶粒界によってのみ固着されている転位 は,それ以上ひずみ振幅が大きくても粒界による固着からは 離脱することができないためと説明されている.一方,高純 度アルミニウムは,約 11×10-3と高い内部摩擦を示し,ほ とんどひずみ振幅依存性を示さない13).これは,粒径が 0.4 mm と大きく転位の運動距離が大きいため内部摩擦は大き く,不純物による転位の固着点が少ないため GL 機構によ るひずみ振幅依存性が現れないと理解される13).このよう に,ARB されたニッケルとアルミニウムにおいて内部摩擦 ならびにそのひずみ振幅依存性に差が現れた原因について も,転位による内部摩擦で説明できる.また,粒径の小さい 1100アルミニウムよりも粒径の大きい高純度アルミニウム がより大きい内部摩擦を示したことも,内部摩擦の主因が非 平衡粒界ではなく転位であることを支持している. 一方,低温加工された 1810 ステンレス鋼は,ニッケル の 6 サイクル ARB 材の約 3~7 割の低い内部摩擦値を示し ており,そのひずみ振幅依存性も小さい.ECAP された銅 は,ニッケルの 4 サイクル ARB 材より高い内部摩擦を示し ており,そのひずみ振幅依存性も大きい.Table 3 に示すよ うに,ステンレス鋼は,相当ひずみが小さいにも関わらず, 結晶粒サイズは 0.15 mm と,ニッケルの 6 サイクル ARB 材 と同程度に微細である15).従って,このステンレス鋼の内 部摩擦が低いのは,ニッケルの 6 サイクル ARB 材と同程度 に結晶粒が微細であることに加えて,合金元素の存在やフェ ライトに変態し転位芯構造が複雑となることで,転位運動が 困難となるためと説明できる. ECAP された銅に与えられた相当ひずみは 3 であり,本 研究の ARB では 4 サイクルで与えられる相当ひずみとほぼ 同等である.結晶粒径も 0.2 mm と,ニッケルの 6 サイクル ARB 材や低温加工されたステンレス鋼に比べて大きい.こ のことから,ECAP された銅は,粒径が比較的大きいため 転位の運動距離が大きく,比較的大きな内部摩擦と GL 機 構による内部摩擦のひずみ振幅依存性を示したと,説明でき る. 以上のように,強加工により結晶粒超微細化された種々の 材料の内部摩擦を,転位による内部摩擦で説明しても矛盾は ない.現時点で,強加工により結晶粒超微細化された材料の 内部摩擦の測定例は未だ乏しく,著者らの知る限りこれら以 外にはない.また,非平衡粒界の性質が金属種によってどの ように異なるかも不明であるため,非平衡粒界による内部摩 擦の存在自体を全く否定することはできない.しかしなが ら,非平衡粒界による内部摩擦では,粒径が大きい材料の方 が高い内部摩擦を示すことやひずみ振幅依存性を説明するこ とは困難である.また,最近,強ひずみ加工により非平衡粒 界が形成されること自体を疑問視する研究結果も報告されて いる27) 5. 結 論 ニッケルに ARB を施し,その内部摩擦測定ならびに,引 張試験,硬度測定,ヤング率測定,透過電子顕微鏡による組 織観察を行い,以下の知見を得た. 4 サイクルまでの ARB では,ARB サイクル数が増すにつ れて硬さが増すにも関わらず内部摩擦は大きく上昇し,4 サイクル ARB 材の硬度と内部摩擦は,各々出発材(冷延

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焼鈍材)の約 2 倍,約 2~4 倍となる.5 サイクル以上の ARB では,硬さはさらに増すものの内部摩擦は低下し, 5 サイクルでは 3 サイクルと同程度にまで,6 サイクルで は 2 サイクルと同程度にまで低下する.また,ひずみ振 幅依存性も 4 サイクルで最大となる. 1 サイクルの ARB ではセル組織が形成され,セル壁中の 転位は十数 nm 以下の短いセグメントを有している.3 サ イクルの ARB では,平均結晶粒厚さ 0.24 mm の超微細結 晶粒組織が形成され,結晶粒内部には数十 nm 以上の比較 的長いセグメントをもつ転位が存在する.6 サイクルで は,平均結晶粒厚さが 0.15 mm にまで減少し,転位の長 さは粒厚さと同等となる. 1, 2 サイクル ARB 材では,加工ひずみ量が小さく転位セ ル組織しか形成されず,転位密度は高いものの,転位は 他の転位やノードにより強く固着されており,その運動 が困難であるため内部摩擦は小さい.また,固着点から の離脱も困難であるためひずみ振幅依存性も小さい.3, 4 サイクル ARB 材では,加工ひずみ量が大きく超微細結晶 粒が形成され,転位密度は減少するものの,転位のセグ メントは長くなり,転位の平均移動距離が増すため内部 摩擦は上昇する.また,粒内に存在する緩い固着点から の離脱により GL 機構が働きひずみ振幅依存性が顕著と なる.6 サイクル ARB 材では加工ひずみ量がさらに増し て粒径がより小さくなり,転位の長さが粒径で制限され るため,転位運動は困難となり内部摩擦は低下する.ま た,粒径が小さくなると,GL 機構の発現が抑制され, ひずみ振幅依存性は小さくなる. ARB により結晶粒超微細化されたニッケルとアルミニウ ム,ECAP により結晶粒超微細化された銅,熱間加工し て焼き入れ後液体窒素温度で加工された 1810 ステンレ ス鋼の間における,内部摩擦とそのひずみ振幅依存性の 違いは,組織の違いとその結果としての転位による内部 摩擦の違いにより説明できる. 非平衡粒界による内部摩擦では,ARB に伴う内部摩擦の 変化,および強ひずみ加工により製造された超微細結晶 粒材料同士の内部摩擦の違いを説明することは困難であ り,非平衡粒界の影響はあるとしても極めて小さいと考 えられる. 本研究の遂行に際し,日本学術振興会科学研究費補助金基 盤研究(B)15360366 の支援を受けた.ここに謝意を表す. 文 献 1) A. Nagamatsu: KougyouZairyou45(1997) 1820. 2) N. Igata: Kinzoku74(2004) 237240.

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11) N. Tsuji, Y. Saito, H. Utsunomiya and S. Tanigawa: Scr. Mat. 40(1999) 795800.

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Komatsu and M. Kiritani: Mat. Sci. Eng.A350(2003) 108116. 27) N. Tsuji, X. Huang and H. Nakashima: Proc. 25thRISØ Int. Nat. Symposium on Materials Science, Evolution of Deformation Microstructures in 3D, Ed. by C. Gundlach, K. Haldrup, N. Hansen, X. Huang, D. Juul Jensen, T. Leffers, Z. J. Li, S. F. Nielsen, W. Pantleon, J. A. Wert and G. Winther (2004) pp. 147170.

Table 1 Chemical composition of the nickel sheet used in the present study (mass).
Fig. 1 TEM micrographs and corresponding SAD patterns of the nickel sheets ARB processed to (a) 1 cycle, (b) 3 cycles and (c) 6 cycles
Fig. 3 MicroVickers hardness of the ARB processed nickel sheets as a function of number of ARB cycle.
Table 2 Average length of dislocation segments, dislocation density and average grain size of the ARB processed Ni sheets
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