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方 法 対象児 : 子どもに良い放送 プロジェクトの第 9 回調査において 文字 図形模写への回答 があった 8 歳児 836 人を対象とした 調査時点 (011 年 1 月 ) において 695 人が 年生で男とも平均年齢は 8 歳 7 か月 年齢範囲は 8 歳 5 か月 ~8 歳 9 か月 14

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文字・図形模写調査の結果



子安増生・郷式 徹

 本プロジェクトでは、幼児期の重要な認知・表現の発達を調べる課題として、描画(drawing) 課題を4年間、そのうち人物画(human figure drawing)課題を2年目からの3年間実施し、 2~3歳までの幼少期の描画発達に「ビデオ子守」的な過度なビデオ視聴がネガティブな効果を 有すること、人物画の描画能力の発達に大きな性差があること―女児が巧みであり、性差は年 齢とともに拡大していくこと―などを明らかにしてきた。  対象児が小学校に上がると、重要な発達課題の一つに漢字の学習がある。漢字は、学校教育で は学年別に配当され、筆順とともに教えられる。しかしながら、低学年までの子どもたちは、複 雑な漢字を一種の「図形」として認識している可能性が高い。この段階で重要なことは、図形と しての漢字を実際にどのように認識し、表現するかである。たとえば、多くの子どもたちは人気 アニメ『崖の上のポニョ』の「崖」の字を何十回とみているに違いないが、この字を模写 (copy)させると、かなり困難を感じる子どもが多いだろう。また、テレビ・アニメなどのタイ トルにしばしば含まれる「撃」「魔」「麗」「隊」などについても然りである。本研究では、テレ ビ・ビデオ視聴は「図形としての漢字」の認知・表現にどのような影響を与えているのかを調査 する。  また、図形そのものに関しては、幼児や低学年の児童 では苦手とされる「ひし形」の模写と、児童の視覚認知 能力の評価に用いられる Rey-Osterrieth の複雑図形 (右の図1、以下「レイの図形」と略す)も併用した調 査が有用であると思われる。ひし形模写は、知能検査の 代表的検査であるビネー式検査では6歳相当の課題であ るが、本研究では、対象児が8歳ということを勘案し、 ひし形を2つ組み合わせたより複雑な図形に変更した。 レイの図形は、1940 年代にスイスのジュネーヴ大学に

勤務するレイ(André Rey)とその弟子のオスターリート(Paul-Alexandre Osterrieth)が神経 心理学的診断及び発達診断のテストとして開発し、図形と得点法を標準化したものである。  本研究での対象児(8歳5か月~8歳 11 か月)は、小学校2年生と3年生にまたがってい る。年齢的には最大6カ月程度の差であっても、従来のいくつかの課題と同じく模写課題におい ても、2年生と3年生という学年差、すなわち教育経験の差が表れる可能性が高い。  本研究では、以上の模写課題の発達における学年差と性差、人物画の発達との関連性、および メディア視聴の影響について検討する。 図1.Rey-Osterriethの図形  &  

 

     

 

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方 法

 対象児: “子どもに良い放送”プロジェクトの第9回調査において、文字・図形模写への回答 があった8歳児 836 人を対象とした。調査時点(2011 年1月)において、695 人が2 年生で男女児とも平均年齢は8歳7か月、年齢範囲は8歳5か月~8歳9か月、141 人が3年生で男女児とも平均年齢は8歳 10 か月、年齢範囲は8歳 10 か月~8歳 11 か月であった。  実施時期: 2011 年1月。  手続き: “子どもに良い放送”プロジェクトでは、毎年1月に対象児の家庭にメディア視聴調査 票と子どもの発達やしつけ観などを尋ねる質問票を郵送し、郵送で回収を行っている。 その際、子ども自身が回答する形式で本調査を行った。用いた調査用紙はA4用紙 で、図2のような3つの模写課題(漢字4字、ひし形、レイの図形)が印刷されていた。

うらのせつめいをよんで からやってください。 書きうつしもんだい 図2.模写課題の調査用紙  また、調査用紙の裏面には次のような教示が印刷されていた。   やりかた:左ひだりの文も字じまたは図ず形けいとおなじものを右みぎのはこに書かきいれてください。        ふだんつかっている筆ひっ記き具ぐ(エンピツとケシゴム)で書かいてください。        むずかしくて「できない」と思おもったら、やらなくてもだいじょうぶです。   おねがい:お子こさんがおひとりで行おこなってください。他ほかの紙かみで練れん習しゅうしないでください。

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結 果

 模写課題の評定方法  定規の使用は想定外であったが、その使用の有無を分析に含めた。  漢 字 漢字は、常識的に判断して「きれいな字だと感じるか」という観点で、「5=非常に 良い、4=良い、3=普通、2=悪い、1=非常に悪い」の5段階で評定した。  ひし形模写 ひし形模写は、①定規の使用の有無、②ひし形の各辺が直線になっているか、③ ひし形の角が大きなものと小さなものに書き分けられているか(角が全て 90 度の正方形や長方 形になっていないか)、④ 2 つの図形の辺と辺が交差しているか、の4項目について評定した。 ①「定規の使用の有無」については、定規を使用して描いているかどうかで判断した。 ②「ひし形の各辺が直線になっているか」については、「2=すべて直線、1=一部直線、0 =まったく直線になっていない」の3段階で評定した。なお、ひし形ではなく、星状の図形 になっている子どもがいるが、この項目でチェックすることが可能である。定規未使用の場 合、おおよそまっすぐであれば直線とみなした。 ③「ひし形の角が大きなものと小さなものに書き分けられているか」については、「2=2つ のひし形ともに描き分けられている、1=片方のひし形のみ描き分けられている、0=2つ の図形とも描き分けられていない」の3段階で評定した。なお、ひし形ではなく、正方形も しくは星型の図形を描いている子どもがいるので、この項目でチェックした。 ④「2つの図形の辺と辺が交差しているか」については、「2=すべての辺が交差している、 1=一部の辺が交差していない(片方の図形の辺がもう片方の図形の頂点を通っている)、 0=まったく辺と辺が交差していない」の3段階で評定した。  レイの図形 レイの図形は、①定規の使用の有無、②モデル図形にある各要素が描けている か、③全体のバランスが良いか、の3項目について評定した。 ①「定規の使用の有無」については、定規を使用して描いているかどうかで判断した。 ②「モデル図形にある各要素が描けているか」については、「4=完全、3=1か所のみ脱 落・重複・誤り、2=一部脱落・重複・誤り、1=かなり脱落・重複・誤り」の4段階で評 定した。 ③「全体のバランスが良いか」については、「4=かなり良い、3=良い、2=悪い、1=か なり悪い」の4段階で評定した。なお、レイの図形が多くの要素からなる複雑な図形である ため、「モデル図形にある各要素が描けているか」と「全体のバランスが良いか」の判断に 関しては、「定規の使用の有無」に関わらず判定できると考えた。  2名の評定者による評定結果と分析のためのデータ整理  836 人分のデータを対象とし、心理学を専攻とする2名の大学院生が本研究の目的を知らされ ることなく、前述の評定方法に従い評定を行った。評定者間の評定のズレに関して、4つ以上の 段階で評定しているもの(漢字、レイの図形の「モデル図形にある各要素が描けているか」およ

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び「全体のバランスが良いか」)については一致率と相関係数、その他の指標については一致率 から検討した。  漢字の評定については、無回答および一部無回答の 58 人を除き、評定者間の評定値の完全な 一致は 47.1%だったが、両者の相関は高かった(r=0.72, p<.01)。ひし形模写で「物差しを使用 しているか」については、評定者間で 90.0%、「ひし形の各辺が直線になっているか」について は 78.5%、「ひし形の角が大きなものと小さなものに書き分けられているか」については 83.3%、 「2つの図形の辺と辺が交差しているか」については 89.3%の一致率であった(無回答および筆 跡が薄くて判別不明のもの 12 人を除く)。  レイの図形模写(無回答および線が筆跡が薄くて判別不明のもの 35 人を除く)で「物差しを 使用しているか」については、評定者間で 91.2%であった。「モデル図形にある各要素が描けて いるか」についての一致率は 80.6%、相関は .76(p<.01)だった。「全体のバランスが良いか」 については一致率は 66.5%だったが、相関は .78 と高かった(p<.01)。すべての指標において、 少なくとも一致率か相関のいずれかは高かったことから、評定方法については妥当なものとみな し、評定者間で一致しなかったデータに関しては、著者の一人(郷式)が判断した。  さらに、ひし形模写の「ひし形の各辺が直線になっているか」、「ひし形の角が大きなものと小 さなものに書き分けられているか」、「2つの図形の辺と辺が交差しているか」については0、 1、2点の評定で正規性に疑問があることと、「ひし形の各辺が直線になっているか」、「ひし形 の角が大きなものと小さなものに書き分けられているか」の相関が .562、「ひし形の各辺が直線 になっているか」と「2つの図形の辺と辺が交差しているか」の相関が .496、「ひし形の角が大 きなものと小さなものに書き分けられているか」と「2つの図形の辺と辺が交差しているか」の 相関が .685 と比較的高かったことから、ひし形模写についてはこれら三つの指標の合計を新た な指標(以下、「ひし形合計得点」と呼ぶ)として分析することにした。なお、「ひし形の各辺が 直線になっているか」、「ひし形の角が大きなものと小さなものに書き分けられているか」、「2つ の図形の辺と辺が交差しているか」とこれら三つの指標の合計の相関係数はそれぞれ .815、 .874、.857 であった。  漢字模写における性差と学年差の検討  漢字模写課題で定規を使用した子どもはいなかったので、表1の模写された漢字の美しさの評 定値について、2(性別)×2(学年)の二要因分散分析によって検討した。その結果、模写さ れた漢字の美しさの評定値には性別の主効果(F(1,815) =4.92, p<.05, η2=.006)と学年の主効果(F(1,815)=37.17, p<.01, η2=.044)が見られた。すなわち、男児よりも女児 のほうがきれいな字を書き、また、3年生のほうが2年生 よりもきれいな字を書いていた。なお、交互作用は見られ なかった。 表1.性別および学年ごとのによる     漢字模写の平均評定値(SD) 2年生(364人) 4.16 (1.71) 3年生(68人) 5.27 (1.23) 2年生(315人) 4.44 (1.54) 3年生(72人) 5.56 (0.93) 男児 女児

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 ひし形模写における性差と学年差および定規の使用・不使用の関連の検討  ひし形模写では無回答および筆跡が薄くて判別不明 のもの9人を除く 827 人中 378 人が定規を使用してい る と 判 定 さ れ た。 な お、 性 別 × 学 年 別 の Mantel-Haenszel 検定において、性別および学年と定規の使 用・不使用の人数パターンの関連は見られなかった (表2)。  ひし形合計得点(表3)について、2 (性別)×2(学年)×2(定規の使用・不 使用)の分散分析を行った。その結果、性 別 の 主 効 果 が 見 ら れ(F(1,819)=6.13, p<.05, η2=.001)、男児よりも女児のほう が得点が高かった。また、定規の使用・不 使用に関する主効果が見られ(F(1,819) =83.77, p<.01, η2=.093)、定規を使用した模写のほうが使用していない模写よりも得点が高かっ た。二次の交互作用、全ての一次の交互作用および学年の主効果は見られなかった。  レイの図形における性差と学年差および定規の使用・不使用の関連の検討  レイの図形の模写では無回答および筆跡が薄くて 判別不明のもの 32 人を除く 804 人中 281 人が定規 を使用していると判定された。性別×学年別の Mantel-Haenszel 検定において、性別および学年と 定規の使用・不使用の人数パターンの関連は見られ なかった(表4)。  これに基づき、レイの図形の模写の「モデル図形にある各要素が描けているか」(表5)につ いて、2(性別)×2(学年)×2(定規の使用・不使用)の分散分析を行った。その結果、性別 の主効果が見られ(F(1,788)=6.54, p<.05, η2=.008)、男児よりも女児の得点が高かった。また、 定規の使用・不使用に関する主効果が見られ(F(1,788)=8.03, p<.01, η2=.010)、定規を使用した 模写のほうが使用していない模写よりも得点が高かった。二次の交互作用、すべての一次の交互 作用および学年の主効果は見られなかった。さらに、レイの図形の模写の「全体のバランスが良 いか」(表5)について、2(性別)×2(学年)×2(定規の使用・不使用)の分散分析を行っ た。その結果、性別の主効果が見られ(F(1,788)=19.72, p<.01, η2=.024)、男児よりも女児の得 点が高かった。また、定規の使用・不使用に関する主効果が見られ(F(1,788)=92.37, p<.01, η2 =.105)、定規を使用した模写のほうが使用していない模写よりも得点が高かった。また、学年 と定規の使用・不使用の交互作用が見られた(F(1,788)=8.59, p<.01, η2=.011)。そこで、学年に 表2.ひし形模写における性別および学年    別の定規の使用・不使用の関連パタ ーン(人)          表4.レイの図形における性別、学年別、   および定規の使用・不使用の関連 パターン(人)        表3.性別、学年別、および定規の使用・不使用による  ひし形模写における合計得点平均値(SD) 定規不使用 定規使用 2年生 219 151 3年生 32 37 2年生 167 150 3年生 31 40 男児 女児 定規不使用 定規使用 2年生 245 113 3年生 41 27 2年生 199 108 3年生 38 32 男児 女児 2年生(219人) 4.17 (1.73) 3年生(32人) 4.03 (1.60) 2年生(151人) 5.22 (1.26) 3年生(37人) 4.48 (1.46) 2年生(167人) 4.43 (1.56) 3年生(31人) 4.48 (1.46) 2年生(150人) 5.50 (1.02) 3年生(40人) 5.78 (0.42) 男児 女児 定規不使用 定規使用 定規不使用 定規使用

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関する単純主効果の検定を行ったところ、定規使用の場合においてのみ学年差が見られ(F (1,788)=12.87, p<.01, η2=.016)、3年生のほうがバランスよく図形を描いていた。なお、定規の 使用・不使用に関する単純主効果の検定を行ったところ、どちらの学年でも定規を用いた場合の ほうが用いなかった場合よりもバランスよく図形を描いていた。二次の交互作用、学年と定規の 使用・不使用の交互作用以外の一次の交互作用および学年の主効果は見られなかった。 表5.性別、学年別、および定規の使用・不使用によるレイの図形の模写における合計得点平均値(SD) 2年生(211人) 2.96 (1.00) 3年生(32人) 4.03 (1.60) 2年生(146人) 3.15 (0.89) 3年生(36人) 4.48 (1.46) 2年生(156人) 3.15 (0.79) 3年生(29人) 3.21 (0.90) 2年生(146 人) 3.29 (0.81) 3年生(40人) 3.48 (0.78) 2年生(211人) 2.29 (0.83) 3年生(32人) 2.16 (0.72) 2年生(146人) 2.77 (0.93) 3年生(36人) 3.08 (0.91) 2年生(156人) 2.53 (0.70) 3年生(29人) 2.52 (0.79) 2年生(146 人) 3.10 (0.86) 3年生(40人) 3.55 (0.75) 定規不使用 定規使用 男児 女児 男児 女児 定規不使用 定規使用 定規不使用 定規使用 定規不使用 定規使用 モデルにある各要素が描けているか 全体のバランスが良いか  定規を使用した場合と不使用の場合では、模写の内容が異なると思われる。本来、本研究では 模写において定規を使用することは想定していなかった。また、漢字模写では定規を使用したデ ータが存在しなかった。ひし形およびレイの図形においては、性別と定規の使用の有無の関連は 見られず、また、ひし形模写の合計得点およびレイの図形の模写の「モデル図形にある各要素が 描けているか」、「全体のバランスが良いか」のそれぞれに対して、2(性別)×2(定規の使 用・不使用)の分散分析を行ったが、交互作用は見られなかった。そのため、以下の分析では定 規を使用せずに模写を行ったデータのみを分析対象とした。  模写課題間の相関の検討  漢字の上手さ、ひし形合計得点、レイの図形の模写の「モデル図形にある各要素が描けている か」、「全体のバランスが良いか」それぞれの相関を男女別に定規不使用のケースのみを対象に人 物画データとの相関を検討した(表6および7)。なお、ここまでの結果において、学年差はほ とんど見られなかったので、以後の分析において学年差は検討しなかった。表6および7の結果 は、男児および女児の両方とも、指標間相互に中程度の有意な相関があることを示している。

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表6.男児における模写課題間の相関係数 漢字 ひし形合計得点 相関係数 0.375 N 244 相関係数 0.470 0.424 N 281 228 相関係数 0.524 0.433 N 281 228 すべての相関係数が無相関の検定において1%水準で有意 ひし形合計得点 レイの図形 モデルにある各要 素が描けているか 全体のバランスが 良いか 表7.女児における模写課題間の相関係数 漢字 ひし形合計得点 相関係数 0.314 N 194 相関係数 0.293 0.364 N 231 176 相関係数 0.466 0.44 N 231 176 すべての相関係数が無相関の検定において1%水準で有意 ひし形合計得点 レイの図形 モデルにある各要 素が描けているか 全体のバランスが 良いか  模写データと人物画データとの関連の検討  “子どもに良い放送”プロジェクト第6回調査(2008 年)では、男児 475 人(平均年 齢 68.13か月、月齢幅 65 ~ 71か月)、女児 425 人(平均年齢 68.16か月、月齢幅 65 ~ 71か月) が男性像および女性像の人物描画を行った 。人物画は、「顔のみ」と「顔+胴」に分かれ、描 画内容の評定(5段階)の結果に基づき得点化を行うとともにグッドイナフの(Goodenough, F. L.)の DAM(Draw-A-Man)得点を求めた。この第6回調査の人物画データのうち、今回 の模写課題に参加した子どものデータについて表8に整理した。 表8.模写課題に参加した子どもの第6回調査の人物画データ評定値およびDAM得点 平均値 SD 人数 平均値 SD 人数 顔のみ 2.63 0.80 94 3.22 0.88 41 顔+体 2.04 0.82 139 2.76 0.87 145 顔のみ 2.30 0.84 93 3.13 0.88 40 顔+体 1.93 0.74 136 2.70 0.75 149 男性像 10.25 4.82 237 13.18 5.35 189 女性像 9.86 4.72 237 13.04 5.16 189 DAM得点 男児 女児 男性像 女性像 評定値  5歳時点での人物画の描画能力と7歳時点の模写能力の関連を調べるために、人物画データの 各指標(表8)と模写課題の各指標(漢字評定、ひし形合計得点、レイの図形「モデル図形にあ る各要素が描けているか」、「全体のバランスが良いか」)との相関を男女別で調べた(表9)。そ の結果、男児では5歳時に人物画(男性像および女性像)を顔と体で描いた場合の評定値とひし 形合計得点および男性像の DAM 得点とレイの図形の「モデル図形にある各要素が描けている

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か」の得点の間の相関のみが見られなかった。一方、女児では5歳時に人物画(男性像および女 性像)を顔と体で描いた場合の評定値と模写課題の各指標は、女性像の顔と体で描いた場合の評 定値とひし形合計得点の相関を除いて、有意な相関が見られた。また、DAM 得点に関しては、 男性像、女性像ともにひし形合計得点との相関は見られず、女性像と漢字との相関も見られなか った。また、相対的に男児の人物画データの各指標と模写課題の各指標との相関よりも女児の相 関のほうが小さかった。 表9.模写データと人物画データの相関 漢字 ひし形合計 得点 モデルにある各要 素が描けているか 全体のバラン スが良いか 漢字 ひし形合計 得点 モデルにある各 要素が描けてい 全体のバラン スが良いか 相関係数 0 .26 0.29 0.28 0.26 -0.08 0.10 -0.01 0.10 N 153 94 105 105 74 41 47 47 相関係数 0.36 0.21 0.30 0.44 0.28 0.24 0.32 0.29 N 243 139 160 160 294 145 176 176 相関係数 0.38 0.35 0.41 0.34 0.15 0.19 0.19 0.26 N 154 93 103 103 73 40 46 46 相関係数 0.31 0.20 0.27 0.32 0.29 0.15 0.36 0.29 N 236 136 157 157 300 149 182 182 相関係数 0.24 0.18 0.13 0.23 0.17 0.15 0.30 0.27 N 401 237 268 268 374 189 228 228 相関係数 0.22 0.24 0.20 0.26 0.11 0.07 0.20 0.21 N 401 237 268 268 374 189 228 228 ゴチックの相関係数が無相関の検定において1%水準で有意 レイの図形 男児 女児 評定値 顔のみ レイの図形 顔+体 顔のみ 顔+体 DAM得点 男性像 女性像 男性像 女性像  模写データとメディア指標データとの関連の検討  次に、模写に及ぼすメディアの影響について検討する。第5回調査および第6回調査では人物 画描画に対するメディアの影響を調べるために、メディア接触の指標として、テレビ接触量、② テレビ接触単独、③テレビ接触専念、④ビデオ接触量、⑤ゲーム接触量の5指標を用いた。そこ で、今回(第9回調査)の場合も、メディア接触の指標として、前回の分析と同じく①テレビ接 触量、②テレビ接触単独、③テレビ接触専念、④ビデオ接触量、⑤ゲーム接触量の5つについ て、模写課題に参加した子どもの分析結果を表 10 として整理した。 表 10.模写課題に参加した子どもの第9回調査のメディア接触指標の値 平均値(分) SD 平均値(分) SD テレビ接触時間量 113.08 73.08 126.11 77.82 テレビ接触子どもだけ 36.57 36.94 33.28 35.57 テレビ専念 34.06 32.03 29.99 26.44 ビデオ接触量 19.09 25.09 18.49 23.58 ゲーム接触時間量 21.41 25.90 16.45 23.10 男児(279人) 女児(232人)  メディア接触と模写能力の関連を調べるために、メディア接触の各指標(表 10)と模写課題 の各指標(漢字評定、ひし形合計得点、レイの図形「モデル図形にある各要素が描けているか」、 「全体のバランスが良いか」)との相関を男女別で調べた(表 11)。その結果、男児においてはテ レビ接触時間と模写課題の指標との間には有意な相関が一つもみられなかったが、女児において はテレビ接触時間量と漢字の評定値(r=-.15, p<.01)、および、テレビ接触時間量とレイの図形

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の「全体のバランスが良いか」の評定値(r=-.23, p<.01)のそれぞれの間に、有意な低い負の 相関が見られた。 表 11.模写データとメディア指標の相関 漢字 ひし形合計得点 モデルにある各要素が描けているか 全体のバランスが良いか 漢字 ひし形合計得点 モデルにある各要素が描けてい 全体のバランスが良いか 相関係数 -0.06 -0.03 -0.06 0.00 - 0.15 -0.06 -0.14 -0.23 N 425 245 279 279 380 193 232 232 相関係数 -0.01 -0.02 -0.13 -0.06 0.01 -0.04 -0.09 -0.03 N 425 245 279 279 380 193 232 232 相関係数 -0.09 0.01 -0.03 0.02 -0.08 -0.08 -0.13 -0.06 N 425 245 279 279 380 193 232 232 相関係数 -0.04 -0.08 0.02 -0.02 0.03 0.06 0.05 0.04 N 425 245 279 279 380 193 232 232 相関係数 -0.05 -0.14 -0.09 -0.15 0.00 0.04 -0.10 -0.08 N 425 245 279 279 380 193 232 232 ゴチックの相関係数が無相関の検定において1%水準で有意 ゲーム接触時間量 テレビ専念 ビデオ接触量 男児 女児 レイの図形 レイの図形 テレビ接触時間量 テレビ接触子どもだけ

考 察

 漢字模写課題における性差と学年差  漢字模写課題では、テレビ・アニメなどのタイトルにしばしば含まれる「撃」「魔」「麗」「隊」 の模写を求めた。模写された漢字の美しさの評定値には有意な性差が見られ、男児よりも女児の ほうが高かった。また、年齢は数カ月しか違わないにもかかわらず、3年生のほうが2年生より もきれいに漢字を模写できていた。これは1年分の学校教育の経験の長さによる影響と考えるこ とができよう。  ひし形模写における性差と学年差  ひし形模写課題のひし形合計得点について、男児よりも女児の得点が高かった。言語能力は女 児が、図形処理能力は男児が平均的に優れると言われていることは、本研究では逆の結果となっ た。  レイの図形における性差と学年差  レイの図形の模写では「モデル図形にある各要素が描けているか」および「全体のバランスが 良いか」について、男児よりも女児の得点が高かった。図形処理能力は男児が女児よりも平均的 に優れるという結果は、ここでも見られなかった。なお、「モデル図形にある各要素が描けてい るか」については学年差は見られなかったが、「全体のバランスが良いか」については、学年と 定規の使用・不使用の交互作用が見られ、定規を使用した場合、3年生のほうが2年生よりもバ ランス良く図形を描いていた。これは1年分の学校教育の経験の長さによる影響で、特に学習指 導要領において3年生の算数では「二等辺三角形や正三角形を定規とコンパスを用いて作図する 活動」が含まれる(文部科学省、2008、p. 123.)ことの影響が考えられる。ただし、この定規を 用いた作図の影響がひし形模写には見られなかったことには注意すべきである。

(10)

 模写とメディア指標の関連  メディア接触の各指標と模写課題の各指標との相関では、男児においてはテレビ接触時間と模 写課題の指標との間には有意な相関はないが、女児においてはテレビ接触時間量と漢字の評定 値、および、テレビ接触時間量とレイの図形の「全体のバランスが良いか」の評定値のそれぞれ の間に、有意ではあるが低い負の相関が見られた。なぜ、テレビ接触のマイナスの影響が女児の みに見られたのかは、本研究のデ-タからだけでは解釈することは難しい。 参考文献

Cox, M. V. (1992). Children’s drawings. Penguin Books. (コックス著・子安増生訳『子どもの絵 と心の発達』.有斐閣.1999.)

Goodnow, J. (1977). Children Drawing. Open Books. (グッドナウ著・須賀哲夫訳『子どもの絵 の世界―なぜあのように描くのか―』.サイエンス社.1979.)

服部淳子 (2004). Rey-Osterrieth Complex Figure を通してみた子どもの視覚認知能力の発達 ―視覚認知能力の描画方略との関連について―.愛知県立看護大学紀要,10, 1-10. 小林重雄(1977). グッドイナフ人物画知能検査ハンドブック.三京房. 小林重雄(2002). グッドイナフ人物画知能検査(DAM)松原達哉(編著),『心理テスト法入門 第4版―基礎知識と技法習得のために―』.日本文化科学社.pp. 92-94. 文部科学省 (2008). 小学校学習指導要領解説 算数編. http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/ ――――――――――――― i  調査用封筒に A4 判画用紙(横置き)2枚と油性ペンを同封して郵送した。「おとうさん (おかあさん)でも、先生でも、おともだちでも、だれでもいいので、男の人(女の人)の 絵を描いてください。」という保護者の指示により、子ども自身に油性ペンで人物画2枚を 描いてもらった。

参照

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