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法制度改革と電子マネーにおける立法の可能性

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Academic year: 2021

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法制度改革と電子マネーにおける立法の方向性

株式会社野村総合研究所  研究創発センター   兼 情報・通信コンサルティング一部   副主任コンサルタント

 上田 恵陶奈

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はじめに

  電子マネーが喧伝され始めたのは1990年代後半にさかのぼることであり、大蔵省も「電子マネー及び電子 決済に関する懇談会」(通称:第一次マネ懇)および「電子マネー及び電子決済の環境整備に向けた懇談会」 (通称:第二次マネ懇)を開催して検討を進めた。しかしながら、並行して行われた国内外における電子マネー の実証実験が失敗したことから論点整理にとどまり、具体的な立法には至らなかった。   その後、電子マネー及びポイントを含めた企業通貨をとりまく法制度は、旧来からのスキームを柔軟に応 用することでどうにか凌いできた。大まかに言えば、①発行企業内のみで利用できるポイントは「自社割引 券」、②他店でも利用できるポイントは「景品」、③決済のための電子マネーは「プリペイドカード」といった具 合である。しかし、ここ数年、企業通貨は質量ともに急速に発達しており、こうした状況に対処すべく、立法 による本格的な手当が不可避であるという認識が高まってきた。そこで、②の他店でも利用できるポイントと ③の電子マネーは融合しつつある状況から、両方を含めた全体を「電子マネーとしての企業通貨」として検 討する。   ここでは、企業通貨のうち決済に使用され通貨性の高い電子マネーについて、その法律面の論点および 課題を整理する。まず、電子マネーの定義を提唱し、法的構成について既往の議論を概観した後、法律イ ンフラの状況と課題を契約面と事業面の両面から挙げることとする。

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1 電子マネーとしての企業通貨の定義

  「電子マネー」という語句は普及しているものの、その定義は人により視点により様々であった。こうした 定義の議論は概念的ではあるが、何を何のために議論するのかを明らかにする上で重要であるため、し ばしお付き合いいただきたい。以下に3つの定義例を挙げる。 z「決済手段の電子化の仕組みにおいて貨幣価値を有するものとされるデジタル・データ」(大蔵省「電 子マネー及び電子決済に関する懇談会(通称:第一次マネ懇)」報告書) z「利用者から受け入れられる資金に応じて発行される電磁的記録を利用者間で授受し、あるいは更 新することによって決済が行われる仕組み、または、その電磁的記録自体」(大蔵省「電子マネー及 び電子決済の環境整備に向けた懇談会(通称:第二次マネ懇)」報告書) z「その金額に応ずる対価を得て電磁的に記録された金額情報であって、その記録者との契約関係に 基づき、それを移転することによって、契約に基づく一定の範囲の金銭債務の弁済としての効力を 有するもの」(杉浦宣彦・片岡義広「電子マネーの将来とその法的基盤」(金融庁金融研究研修セン ター))   ここでは、その後の各種研究をも踏まえた法律面からの定義として、   「有償契約に基づいて発行される電磁的記録であって、契約に基づく範囲内で金銭債務を弁済する効力 を有する情報」

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  まず、自社の割引券や景品としてポイントを使用する場面と区別するため、決済に使用するものに限定 する。電子マネーによる決済は、「金銭債務の弁済」と言えよう。但し、これはEdyやSuicaのように電子マ ネーとして発行されているのに加え、発行企業以外で使用することのできるポイントを含めて想定してい る点に留意いただきたい。その上で、発行時の根拠と、決済時の根拠を分けて考える。これは、通貨や小 切手と比較することで、「電子マネーとしての企業通貨」の特色が浮かび上がるためである。       次に、発行時であるが、「電子マネーとしての企業通貨」は、通貨や手形・小切手のように法的構成や発 行権者などが法律に定められているわけではなく、当事者間の契約に基づくものである。電子マネーに は金銭による裏付けが必要であり、現時点ではプリペイド方式を採用する電子マネーが多い。しかし、今 後はポストペイの電子マネーも想定されるため、事前に金銭の担保を求めることは適切ではない。さらに、 景品としての付与であろうとも「電子マネーとしての企業通貨」に交換・充当可能である現状を踏まえ、電 子マネー保有者自身が金銭的な裏付けを行うことは必須ではないであろう。そこで、何らかの有償契約に 基づけばよいと考える。 契約 契約 法定=強制通用力 (通貨法、日銀法、民法) 決済時の根拠 契約 法定 (手形法、小切手法) 法定 (日銀法) 発行時の根拠 電子マネーとして の企業通貨 手形・小切手 通貨 通貨、手形・小切手との比較

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  また、決済時も通貨のように効果(本旨弁済として金銭債務を消滅させる効果)が法律で保証されてい るわけではなく、当事者間の契約に基づいて弁済に使用される。なお、弁済後にクレジットカードなどと同 様に求償関係が生じることが多いが、この点は契約内容の一部であり様々なパターンが考えられるため 定義に盛り込むべきとは考えない。   さらに、電子マネーという以上は、情報が電磁的に記録されていることが特色であるが、情報が金額の 形で記録されていることは必要ではないであろう。電磁的情報を弁済に用いることができるのであれば、 単位が「円」であるか「ポイント」であるかによって区別する必要はないからである。また、通常は単位を 定めた定量的記録であるが、定額サービスのような定性的な情報を併せ持つ可能性を当初から排除す べきではないと思われる。   最後に、「電子マネーとしての企業通貨」の情報をどのように利用するかは、契約によって様々な内容 が定められる可能性があることから、通貨や手形のように個別データが「移転」するか、プリペイドカード のように残高情報を「更新」するか、ポストペイとして事後請求額情報を「更新」するかといった技術面に は中立な定義が望ましい。   以上から、本書では「電子マネーとしての企業通貨」の法的性質を「有償契約に基づいて発行される電 磁的記録であって、契約に基づく範囲内で金銭債務を弁済する効力を有する情報」と定義するのである。

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 電子マネーが、誰の誰に対するどのような債権によって発行および弁済が行われるのかについては、多くの 説が提唱されて議論されており、以下が主な説である。 „電子マネーの情報を重視する構成 z金券説…債務の弁済に使用できる金券と同様の存在だと考える。 z価値説…電子データ自体に価値があり、売買時に価値が移転すると考える。 z代物弁済説…売主は、電子マネーそのものを代物弁済として受領すると考える。

2 電子マネーの法的構成

電子マネーの発行と弁済 電子マネー発行企業 売主 (店舗) 買主 (消費者) 電子マネー 利用履歴 電子マネー発行 代金 チャージ 代金 商品・サービス 電子マネー利用

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■裏付けとなる債権関係を重視する構成 z債権譲渡説…買主が電子マネー発行企業に対して持つ金銭債権が、決済時に売主に移転すると考  える。(デビットカードの法的構成) z支払指図説…買主が電子マネー発行企業に対して、売主に代金相当を支払うよう指図すると考える。 z免責的債務引受説…電子マネー発行企業が、買主の売主に対する代金支払債務を引受けて、買主  は免責されると考える。(プリペイドカードの法的構成)  これら各説には一長一短があり、各説の細かなバリュエーションも主張されており、いまだ結論は出ていな い。従って、内容の詳細および議論については既往の研究に委ね、ここでは割愛する。電子マネーの構成を 法律で一律に定めることは海外でも例がなく、最終的には契約内容(約款)に委ねられているという実情をご 理解いただければ十分である。

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(1)海外と比較した日本の特徴

 海外の電子マネーは、銀行を中心とする金融機関が密接に関与している例が多く、既存の金融業法で多 くの範囲をカバーすることができる。例えば、香港のOctopusを発行しているOctopus Card Limitedは、金融 機関の免許を取得しているし、フランスのMoneoは金融機関のみに発行が認められている。イギリスは、 2000年のEC指令に従って電子マネー発行企業の規制を定めたが、銀行には従来の業法を適用し、銀行以 外は銀行と同様の規制に服することを要求する形で金融業法の規制内容を実質的に維持した。  これに対し、日本ではむしろ金融以外の異業種が電子マネーに進出しており、既存の金融業法をそのまま 適用することが困難であるという事情がある。従って、日本における法制度は、安易に他国を参照すること はできず、自国に必要な制度を設計するという作業が必要になるであろう。

3 電子マネーをとりまく法制度

„ 電子マネーを金融の一部に位置づけ、従来の金融業の枠組みをそのまま維持 „ 香港のOctopusは金融免許を取得しており、仏のMoneoは金融業のみ発行可能 金融の枠組みのみで対応 フランス・香港 „ 電子決済は基礎立法を実施済み „ 航空マイルが圧倒的な存在で、現状ではポイントと電子マネーとの関連が生じていない 米国 „ 電子マネー発行業者が金融業の場合は金融の枠組みで、金融業以外の場合は金融の 枠組みに準じるなど立法済み „ 現実の発行事業者はなし 金融以外の業者も認める が金融の枠組みに準じて 対応 イギリス „ 電子決済、電子マネーとも立法措置なし „ Suica(JR東日本)、Edy(ビットワレット)、セブン&アイHLDGS.による独自電子マネーの いずれも、金融以外の事業者 金融以外の業者を想定し て対応すべき 日本 状況 法律の想定業種 エリア 諸外国の状況

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(2)電子資金移動および電子決済の基礎法  電子マネーが普及し始めたのはつい最近のことであるが、電子資金移動(EFT)や電子決済そのものは古く から存在した。それは、主に銀行や証券会社など金融機関との資金移動や決済であった。電子マネーという 新しい取引形態への対応には、従来の取引形態との整合的な制度設計という視点も欠かせない。  電子資金移動において消費者を保護するため、アメリカは1978年に連邦EFT法を定めている。次いで企業 間の大口取引を含む資金移動の一般規定として、アメリカでは1989年にUCC(統一商法典)の4A編が置か れ、各州で州法として採用された。そして、このUCC4A編を元に、UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)が 1992年に国際振込に関するモデル法を作り、それを元にECが1997年に国際振込指令を制定し、欧州各国に おける立法を促した。  しかしながら、同じくUNCITRAL加盟国である日本では、検討はされたもののこうした法律は制定されなかっ た。この判断の背景には、金融業界の自主規制と業法に基づいた行政のコントロールで対処可能であり、そ れを順守する大企業によって構成されていたという事情があると推測する。しかし、業種や規模を問わず多く の企業が電子マネーを支えていくには、従来の取引形態についても改めて明確なルールを法定し、権利と義 務のバランスを国際標準に則ったレベルに引き直すことを検討する必要があるように思われる。

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(3)消費者保護(倒産リスク)  企業が発行した通常のポイントは、企業が倒産すれば消えてしまう。無論、ポイントにも財産権が認められ るから、約款で排除されない限りは破産財団に対して一般債権者としての地位に立つことは可能であろう。し かし、電子マネーも同じような状態に置かれるのであれば、消費者は信用ある発行企業の電子マネーを慎重 に見極める必要に迫られ、多様な業種が電子マネーの普及を図ろうとしている現状からすれば、阻害要因と もなるおそれがある。従って、電子マネーの発行者が倒産した場合に備え、消費者の残高を保護する法制度 が必要である。とりわけ、今後は決済金額の上昇に連れて残高が積み上がることが予想されるため、必要性 が高まるであろう。  現在、EdyやSuicaなどの電子マネーは、事前に金銭をチャージし、その情報を格納したICチップつきのカー ドや携帯電話端末を持ち運んで決済に利用するため、プリペイドカードとして扱われ、「前払式証票の規制等 に関する法律」(通称:プリペイドカード法、プリカ法)が適用されている。プリカ法は、発行残高の半額を供託 させることで、発行者が倒産しても半額を消費者に返還させることを目的としている。  しかし、プリペイドであっても媒体の存在しない場合には、プリカ法が適用されない可能性が残る。そして、 ネットワーク上に保存された電子的価値を個人認証を経て利用する“サーバー管理型”の電子マネーは既に 存在する。さらに、ポストペイなどの電子マネーも登場すると考えられるが、これらにも現在のプリカ法では適 用できない。従って、電子マネー事業者の倒産リスクから消費者を保護する包括的な法律を用意する必要が ある。  また、チャージできる金額に上限を設ける発行者が多いが、これは、消費者にとっては盗難・紛失時だけで はなく倒産時のリスクを限定する効果がある。イギリスでは1枚あたり50ポンドに制限されている。

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(4)消費者保護(契約法)  消費者と電子マネー発行者との契約および、電子マネーを用いた売買契約を結ぶ場合、その契約内容は、 まったくの“契約の自由”に任されるのであろうか。このうち、電子マネーの運用に不可欠である認証について は、「電子署名及び認証業務に関する法律」(通称:電子署名法)が既に用意されており、要件・効果が明確 になっている。また、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」(通称:「電子 消費者契約法」)が錯誤無効の条件緩和や到達主義への修正などを用意している。  しかし、「なりすまし」や相続の可否など全てを発行者の定める約款に委ねてしまうことが適切か、疑問が残 る。決済のインフラとなるサービスは、 “ベストエフォート”で提供されるべきものではない。約款で発行者の免 責を広く認め、決済時に残るリスクを消費者に広く負わせることは適切ではない。現在、民法の一部であるい わゆる契約法について抜本改正に向けた検討が開始されているが、例えばこの中で決済手段に関する契約 については強行規定によって約款規制を敷く必要性があろう。

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(5)金融業法  消費者を保護するには、電子マネー発行者の業務内容および財務内容を規律する業法を定めることも、 前述の通り諸外国で例が見られる。その際に、金融の業法をそのまま適用することは、日本の電子マネー が異業種からの参入を主体としている現実からすればふさわしくないのだが、逆に金融業法を適用しない のであれば、電子マネー発行者が金融業法で認められている業務を行うことができるのかという問題も発 生する。  ポイントは、電子マネーとの境界が極めて低いだけではなく、さらに通貨との境界も低くなっている。交換 サイトがネット銀行と提携して、預金債権を介してポイントの「換金」を開始して久しく、現在では郵便口座 「ぱるる」への「換金」も開始されている。一方、現金でポイントを購入することを認めている例も海外を中心 に多くみられる(主に航空、ホテル業界。大手サイトとして、point.comを展開するPoint International社(カナ ダ)がある)。ポイントと通貨が相互に行き来できる状況になりつつあるのである。  例えば、日本で発行されたポイントを、交換サイト等を経由して海外企業のポイントに変換することは、現 在でも可能である。第三者にポイントを贈与することを可能とする海外企業も多い。これらの先には、電子マ ネーによって日本にいる人から外国にいる人に資金を移動させることが十分に想定される。では、それは通 常の送金行為のように為替業務として「外国為替及び外国貿易法」(通称:外為法)による規制を受けるの であろうか。電子マネーが国内の個人から海外の個人に移動することと、裏付けとなる資金移動が企業間 で行われることは別であり、後者は銀行を介して行われる限り問題はないとされている。もっとも、こうした資 金移動では、銀行では資金が移動する背景を知り得ないため、マネーロンダリングを判別しにくいなどの派 生する課題が懸念されている。

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(5)金融業法  (続き)  他のケースとして、ポイント・バンクなどと称して預かったポイントに利子を付けることは、「出資の受入れ、 預かり金及び金利等の取り締まりに関する法律」(通称:出資法)による規制を受けるのであろうか。さらに、 仮に規制を受けるとしても、たとえば銀行法に基づく場合は出資法の例外であることから、銀行が行うのであ れば問題ないはずであるが、ポイントをポイントのままの形で利子を付与することが可能なのか、預金債権 に交換した後に付与することが求められるのであろうか。  こういった論点について予測可能性を高めるためにも、電子マネーの事業者が可能なことと金融業に限っ て認められることの線引きが必要であろう。

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(6)対第三者  電子マネーを契約に基づく関係だと構成することは、差押債権者などの第三者を拘束できるか、強制執 行をどうするかといった論点を生む。強制執行は、要は、電子マネーに充当されている価値を債権者がど のように得ることができるかということであるが、どのようにその手段を確保するか諸説がある。カードその ものを差し押さえても媒体自体に価値はなく、競売で換金するには個人認証が障壁となる。銀行預金など を参考にしつつ、業法規制でクリアする問題なのか、民事執行法制の枠内で工夫する問題なのかを切り 分けるべきであろう。 (7)刑事法  媒体に格納された電子マネーを偽造・変造することは、決済手段に対する信頼を保護するため刑法に新 設された「支払用カード電磁的記録に関する罪」に該当する。一方、媒体を持たない電子マネーのデータ を偽造・変造することは同罪には該当せず、場合によって「電子計算機損壊等業務妨害」に該当すると思 われる。しかし、媒体の有無で扱いが異なることは適切とは思われず、「支払用カード電磁的記録に関す る罪」の対象を電子マネー全般に合わせて改正する必要があると思われる。  日本における電子マネーへの法制度面での対応課題をまとめると次のようになる。

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4 日本における電子マネーへの法制度対応課題

„電子決済の基礎法 z 事業者間の電子資金移動など、電子マネーの背後を支える法制度が未整備 z 欧米やUNCITRALなどの国際標準と整合的な法制度を立法する必要がある „消費者保護 z 倒産リスクに対し、プリカ法でカバーできないケースが生じるため、電子マネーを包括するよう改正が必要 z 英米に見られるような、消費者の自己責任金額を明確化する制度を検討する必要がある z 契約における約款規制を設け、消費者に不利益をもたらす一方的な契約の制限を検討する必要がある „金融業法との関連 z 為替、送金、出資といった行為との線引きを行うことで、電子マネーを扱う行為と金融業法との関係を明らかに し、ビジネスモデルの検討を容易にする必要がある „他制度との整合 z 契約を中心に電子マネーを構成する場合、対第三者、とりわけ強制執行の行い方について法制度上の対応を 検討する必要がある z 刑事法上、偽造・変造をどのように処罰し抑制するのか、位置づけを明らかにし、必要に応じて「支払用カード電 磁的記録に関する罪」の見直しを行う必要がある

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5 電子マネーと他とのつながり

„周辺領域との親和性に富む電子マネー z 電子マネーを考えるとき、電子マネー固有の論点のみに目を奪われるべきではない。価値の充当、本業のサービス、 電子マネーを登載する媒体といった様々な周辺要素と組み合わせて考えるべきである。その際、本業を伸長するため に必要な組み合わせは、業種・顧客層など個々の企業によって異なる。従って、トレンドを探り、勝ち馬の組み合わせ に乗るといった姿勢は間違いであろう。 z 電子マネーに価値を充当する場面では、現金だけではなく、銀行預金・クレジットカード・収納代行といった決済手段を 利用することが可能である。従って、即時決済、プリペイド、ポストペイのいずれもが候補に挙がる。さらに、ポイントプ ログラムから価値を充当するといった、一見すると金銭価値そのものではない手段も、すでに充当手段として登場して いる。 „ポイントの進化は、電子マネーとの境界を崩した z 自社の顧客を囲い込むために導入されたポイントプログラムは、最初に、提携先である他社での購買で自社のポイン トが蓄積できるというパターンへと拡張された。やがて、提携している複数社で共通のポイントを発行するパターンや、 それぞれが運営するポイントを交換できるパターンへと進んでいった。この提携先が増えれば増えるほど、ポイントの 使い先が増え、汎用性が生まれる。 z 一方、ためたポイントを交換する景品として商品券を用意する場合、広く使える商品券であるほど汎用性を持つことに なる。今では、ポイント交換サイトを通じて銀行預金に変換する例も珍しくない。 z このように、ポイント自体の流通性・決済性を高める動き、ポイントを交換する先に汎用的な決済手段となる景品を用 意する動きが進んだ結果、ポイントと電子マネーの区別は事実上消滅した。なお、海外ではポイントを購入できる例が 増えており、消費者の意思で価値を充当できるか否かで電子マネーとポイントは異なる、という区分も意味をなさない。 z 従って、制度上電子マネーを扱う際には、機能面から定義し、従来ポイントとされたものでも、定義に当てはまる場合 は電子マネーに含めて考慮するべきと考える。

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  電子マネーは、周囲と多様につながったビジネスモデルを生み出せる

„現在の電子マネーは、他の決済手段とも結合しうる拡張性を持つ „本業でのサービスとも親和性が高く、多様なビジネスモデルが模索されている

電子マネー

価値 の 充 当 媒体 本業で の 利用 クレジットカード 銀行口座 収納代行 ポイント 現金 ポイントプログラム 顧客購買履歴 本人認証 情報Push

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  汎用性を高めたポイントプログラムは、電子マネーと区別して扱うことは困難

„各社がこぞって導入したポイントプログラムは、他社との提携が進んだ結果、電子マネー化した „他社での決済に充当、銀行で現金化、Edyへのチャージと、ポイントと電子マネーの垣根は崩れている „何が電子マネーなのかを機能から定義し、機能に沿った整理を行う必要がある 自社で付与・利用 他社で付与 他社との共通化 他社ポイントとの交換 銀行口座での現金化 交換サイトでの交換 汎用ポイントを付与 ポイントを購入可能に ポイントを譲渡可能に ポイントで決済可能に 流通インフラの出現 航空マイルが中心 商品券への交換 決済機能との結合 (海外の事情) 電子マネーへの交換

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  電子マネーおよびポイントに関する現在の法制度

会計準則 „ 想定される使用額相当の引当金 を発行時に積む 「私的独占の禁止及び公正取引の確保 に関する法律」(=独占禁止法・独禁法) による不当廉売の規制 「不当景品類及び不当表示防止法」(= 景品表示法・景表法)による、総付け景 品の規制 「前払式証票の規制等に関する法律」 (=プリペイドカード法・プリカ法) „ ポイントを差し引いた売値が原価 を上回ること 割引 „ 発行できるポイントは他の景品と 合計で取引価額の10%以内 „ 発行法人が財務局に登録 „ 未使用残高の半額を供託 対応すべき規制等 (一部例外あり) 広い 使用範囲 (汎用性) 自社ポイント 景品 共通ポイント (流通する) プリペイド カード 電子マネー (媒体タイプ) 現在の 扱い 分類 „なお、現在のところ、ポイントに包括的な規定はなく、便宜的に電子マネーは「プリペイドカード」、ポイ ントは「景品」か「割引券」と同様に扱っている。 „そして、プリペイドカードは倒産リスクからの保全を目的としたプリカ法、ポイントは競争政策の視点に 立つ景表法・独禁法と、別々の視点に立った法制度で規律されている。 „要するに、汎用的な法律を援用して凌いでいる状況にあって、統一的な立法対応が不可欠である。

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《参考文献》 ・杉浦宣彦・片岡義広「電子マネーの将来とその法的基盤」(金融庁金融研究研修センター) ・杉浦宣彦「電子マネーの法的基盤整備について」(情報ネットワーク法学会誌3号) ・岩原伸作「電子決済と法」(有斐閣) ・森田宏樹「電子マネーをめぐる私法上の諸問題」(金融法学会『金融法研究』15号) ・小口光「電子マネーを取り巻く法的環境」(日経BP『IT法大全』)

参照

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