個人情報保護法の運用に関する実態調査 調査結果
(06.3.13 現在)編集委員会委員社・・・・57社
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目 次
1.個人情報の扱いの変化
(1)官公庁 ①中央省庁・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 ②自治体・役所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 ③警察・検察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 ④消防・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 (2)病院・学校・その他地域の公共施設・機関 ①病院・福祉施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 ②教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 ③自治会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 (3)一般企業、一般市民、その他 ①一般企業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 ②一般市民・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 ③その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・262.取材・報道現場での影響
(1)官公庁 ①中央省庁・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 ②自治体・役所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 ③警察・検察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 ④消防・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 (2)病院・学校・その他地域の公共施設・機関 ①病院・福祉施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 ②教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 (3)一般企業、一般市民、その他 ①一般企業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 ②一般市民・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 ③その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・411.個人情報保護法施行後の「個人情報」の扱いの変化
(1)官公庁 ①中央省庁 <一般的傾向> *中央官庁のキャリア職員人事異動で、最終学歴や生年月日、本籍地などの情報が一部 公表されなくなったり、本人の同意を必要としたりするようになった。(朝日東京) *「個人情報だから」「本人の意向」などの理由で情報を出し渋るケースが増加している。 人事異動や不祥事の発表で個人名を伏せたり、略歴を簡略化する場合が多くなった。 選管が立候補者(予定者も含む)の情報を明らかにしないことも。 *官公庁、公共機関全般に、取材対象者が職員などの個人が特定される情報については 「プライバシー」「個人情報の保護の観点から」「公表の基準外」というような理由で 公表を拒むケースが増えている。職員の不祥事の場合が特に同様の対応が多い。明確 な理由説明を避けたいために使う常とう句と感じられるが、機関によっては基準がま ちまちな面が見られる。 ※以下は、各省庁における幹部公務員の略歴公表内容(05年12月末現在、読売新聞 調べ)。○は、本人の同意がなくても公表、△は本人同意を得て公表、×が公表せず。 省庁 略歴を公表している 幹部クラス(以上) 生年月日 最終学歴 卒業年次 本籍地か 出身地の 都道府県 採用試験 種別 職歴 最高裁 地家裁所長 ○ ○ ○ - ○ 法務省 審議官級、検事正 ○ ○ X ○ ○ 警察庁 課長級 ○ ○ ○ X ○ 経産省 課長級 △ △ △ △ ○ 外務省 課長級公館長 △ △ △ △ △ 総務省 局長級 △ △ △ △ △ 防衛庁 内局課長・将官 △ △ △ △ △ 文科省 課長級 △ △ X △ △ 厚労省 課長級 △ △ X △ △ 国交省 局長級 △ △ X X △ 財務省 課長級 △ △ △ X ○ 金融庁 課長級 △ X X X △ 環境省 審議官級 X年齢発表 △ X X ○ 農水省 審議官級 X年齢発表 X X X ○ 内閣府 課長級 X生年発表 X X X ○ 宮内庁 課長級 X生年発表 X X X ○<具体事例(省庁別)> A.内閣府 *2005年夏(7月26日付政策統括官人事など)にこれまで公表していた幹部職員 の人事情報(生年月日、最終学歴、本籍地、採用区分)を非公表とすることを決めた。 根拠は行政機関個人情報保護法第8条の「利用目的以外の目的のために保有個人情報 を利用し、または提供してはならない」という規定で、内閣府は「生年月日などの情 報は人事管理が目的で、報道目的で保有しているのではない」と説明した。 B.厚生労働省 *05年6月、医師や歯科医師などの国家資格試験で、報道各社を通じて公表していた 合格者の氏名発表を、個人情報保護法に抵触する恐れがあるというのが理由で、05 年 度からやめることを決めた。報道発表が「利用目的外」だからという理由となってい る。03年度までは住所(区市郡)と漢字で氏名を報道機関に提供してきた。04年 度は個人情報保護法の全面施行を前に「法の趣旨を踏まえた措置」として、カタカナ 名で発表していたが、05年度からは受験地と受験番号だけの発表になる。厚労省は 「落ちたことが分かる」という実名発表に対する一部の受験生の反発を根拠にしてい る。しかし、合格者約10万件のうち、非公表の要望は数十件にとどまるという。 *100歳以上の高齢者で名前を公表してほしくない人について、数年前から非公表(性 別、生年月日のみ公表)にしているが、法施行後に非公表の該当者が増えた。 *幹部の人事異動で発表される経歴から出身県が削除された。「大学名は採用の公平性な どを国民に確認してもらう材料となるが、出身県は別」との判断から。省内の座席表 と連絡先が記載されたガイドブックの外部提供(クラブ各社含め)を06年度から中 止。 *05年8月30日に国立病院機構(厚労省所管)が発表した医師の懲戒処分では、処 分対象者の名前はもちろん、年齢や性別、勤務先などあらゆる情報を個人情報だとし て公表しなかった。機構側は「国の公表基準に従っている」と説明したが、性別まで 公表しないのは明らかに行き過ぎ。 C.国土交通省 *05年4月、事故や事故につながりかねない事案などの発表の際にこれまで付してい た機長名を削るよう、担当係長が指示を出した。「個人の権利利益を保護する観点」 という。06年1月下旬にも、国会議員が耐震強度偽装事件の姉歯元建築士に対する 聴聞記録を開示するように求めたのに対し、これを拒否した。 *幹部人事について経歴を局長以上に限ると通達。 *人事発表で本籍地、出身地(05年7月26日付人事から)が非公表になった。航空 局のイレギュラー運航情報でパイロットの名前が非公表になるケースがあった。 *北海道内の出先が行政処分した事業所の代表者名を隠すなど、異常なまでの萎縮が見 受けられる。 *出先機関の名古屋市の中部地方整備局は懲戒処分を受けた職員の肩書きや年齢だけで はなく勤務先の事務所名や所在県さえ公表を拒んだ。 D.宮内庁 *05年3月末、新たな長官の人事発表で、生まれた月日(生年は公表)や最終学歴を
当初伏せて発表した。これが保護法に関する情報非開示の最初の動きだった。新長官 はそれまで同庁次長で、厚生省(当時)の次官経験者でもあり、何度も経歴は発表さ れているので無意味だが、「個人情報なので」と説明した。課長、室長以上の幹部の 人事全般についても、生年月日の月日、最終学歴、自宅住所を非公表にしている。 E.外務省 *職員の異動時に生年月日や出身などを発表しなかったり、幹部の自宅などを記した名 簿を公表しなくなったりした。大使を務めたOBがどこへ再就職しているかなども、 個人情報だからと答えないようになった。また、05年12月に発覚した在上海領事 館員自殺事件では、個人情報を理由に、名前や年齢、事実関係などの情報を公表しな かった。 *海外での災害の邦人被害者について外務省は家族の意向を理由に実名を公表しないこ とが増えているが、実際には、外務省が被害者の家族に「個人情報保護を理由に公表 しないでいい」と説得した例があった。 F.防衛庁 *陸上自衛隊目達原駐屯地(佐賀県)では05年8月、酒気帯び運転で検挙された隊員 の懲戒処分を発表した。しかし、発表文には本人の氏名、年齢、所属部隊はおろか、 事件の詳細も書かれていなかった。 G.総務省 *記者クラブに定期的に配布される幹部職員の連絡先が書かれた手帳が、従来の住所録 (電話番号も)から、電話番号のみの手帳に変更された。手帳は、05年11月2日 現在の大臣や副大臣、政務官のほか、局長や官房長といった課長級以上の職員(消防 庁含む)の氏名と勤務先と自宅の電話番号が記載されている。 *行政相談イメージソングの歌詞を全国から募集していた総務省秋田行政評価事務所 が、大賞受賞者が事務所の職員だったことを隠すため、受賞者名を偽名で公表してい た。同事務所では当初、個人情報保護などを理由に職業や年齢も明かさなかった。 H.人事院 *発表資料で以前から公表している項目のうち、生年月日の中の「日」を外すようにな った。 *人事の発表の際、生年月日や出身地を書いた紙と、略歴を書いた紙の2種類を出して いたが、課長クラスについては、略歴の発表を止めた。 I.財務省 *異動する幹部職員の略歴公表に関し、生年月日、入省時点の最終学歴、出身地につい て当該職員の同意を得られた場合に限り公表することになった。 J.文部科学省 *課長級以上の人事の発表の際、本籍地の公表を廃止した。 K.農林水産省 *幹部職員の人事に関し、本籍地と最終学歴は公表の対象から外した(ただし、報道機 関から個別の要請があれば公表)。 *獣医師試験の合格者について、漢字での氏名と住所地の都道府県名を非公表にし、受 験番号だけにした。
*大分県では農政事務所など国の出先機関で、各種委員の連絡先などを問い合わせても 渋る傾向にある。 L.環境省 *幹部職員の人事情報が05年4月から大幅に削られて公表されるようになった。それ までは課長級以上であれば生年月日、本籍地、職務履歴がすべて載っていたが、05 年7月以降は年齢と学歴、直近の職務履歴が出されるのみ(生年月日は希望者が公表 するようになったが、拒否する幹部もいる)。 M.経済産業省 *05年末、これまで毎年、記者の要請があれば比較的自由に提供していた幹部名簿(課 長以上の自宅電話番号など記載)を、「今年から出さないかも」「出してもいいが退会 時に名簿返却を」などと言い出した。「各社で扱いには十分注意する」とし、1社1部 だけ提供を受けることで折り合った。 N.気象庁 *懲戒処分を受けた職員の氏名はおろか、所属の気象台や年齢すら伏せて報道発表し、 報道各社が当局に強く抗議するという事例があった。懲戒処分を受けたのは、東京管 区気象台管内(関東甲信越と東海・北陸の17都県にある地方気象台の50代の男性 係長。05年4∼7月の深夜に計7回、気象台の女子更衣室と休憩室に無断複製した 鍵で侵入、ロッカーを開けたり、ベッドで寝るなどした。処分は同年8月1日付で、 停職1か月。係長は同日、依願退職した。報道発表は同8月2日。なお気象庁当局は、 懲戒処分の公表に当たっては個人が識別されない内容を基本とすることを定めた人事 院の通知(03年11月)を根拠に、所属の気象台や年齢を伏せたとしており「個人 情報保護法とは関係ない」と言っている。 ②自治体・役所 <一般的傾向> (職員名簿などの非公開) *地方の自治体などで、幹部職員録から、住所や電話番号が消え、名前と肩書だけの記 載になった例が多い。 *十勝管内では個人情報を盾に、市役所でサークルや町内会の代表者の連絡先を教えて くれなくなった。ただ、職員によって対応に違いがあり、厳しい人とそうでない人が いるなど、庁内でも意思統一が図られていない。 *青森県では市町村議会の人事案件、各種審議会委員等の選任などに関する取材で、異 動対象の人物の住所、年齢などが配布資料に記載されないことがあった。所管課は「個 人情報に関する項目と思われるため公表しなかった」と回答した。例えば、05年弘 前市9月議会で、市監査委員1人と教育委員1人の選任に関する人事案件のうち、教 育委員の生年月日、住所の記載がなかった。 *青森県では税務署が所得番付の職業を教えてくれなくなった。 *山形県では公の機関の会議などで民間委員や出席者の名前以外は伏せられるようにな った。報道機関向けの資料から名簿だけを抜き去って提供するケースもあった。公的 な事業、イベントの参加者についても同様な傾向。
*福島県では審議会などの委員名簿は氏名だけで、連絡先などの情報を示さなくなった。 *新潟県では官庁の職員録や町内会長などの名簿類が出なくなった。 *新潟県では役場などで例年発表されていた職員名簿(課、係の担当など)が発表され なくなっている。 *職員互助会が作成する職員名簿で従来は課長以上の住所、電話番号を記載していたが、 個人情報保護法の施行を受けてやめた。 (処分発表の匿名化) *各地の職業安定所で、職員が資格取得確認通知書を間違って別人に交付した際、どう いう職員がだれのものをどんな人に渡したのか、性別、年令を含めいっさい答えない。 *「懲戒処分者の肩書、年齢、性別」(山梨県)、「審議会の委員名簿」(大分県)などの 非公表が見られた。青森県教委では懲戒免職者の実名公表を05年夏から取りやめた。 兵庫県相生市の労基署は、アスベスト被害関連での労災申請の有無の取材に対し、「病 気の程度や申請時期、認定時期など個人情報保護のため一切言えない」と回答。個人 を特定するものではないと協力を求めたが拒否された。 *職員の不祥事で、処分者の名前を公表しなくなった自治体が急増。長野県では懲戒免 職になった職員さえ匿名で発表した。 *滋賀県庁、大津市役所、及び県内市役所が職員を懲戒処分にした場合、報道発表で職 員の氏名が伏せられ、所属と年齢のみになった(現時点で、懲戒免職事案はなく、匿 名発表の処分内容は減給と戒告に限られる)。 (その他) *ある方面で活躍したり、成果を挙げている人などを紹介してくれるよう秋田県や市町 村に依頼した場合、従来ならすぐその場で紹介してくれたものだが、現在は「対象者 の了解を得た上で、お知らせします」という返事が多くなった。 *山形県では名前がニュースであるはずの各種表彰事業で、被表彰者の名前や住所を公 表しないケースが増えてきた。これは市町村の地域レベルにも広がっている。 *茨城県では全般的に「個人情報があるので」と情報提供を渋るケースが増えている。 *大分県では市役所が表彰関係者の住所、職業を出さない傾向にある。 <具体事例(地域別)> (北海道) *札幌市が役職者名簿から学歴を削除し、窓口では住民票などを発行する際、名前では なく受け付け番号で呼び出すことにするなど、従来普通に行われていたことが秘匿の 対象となってしまった。 (東北) *岩手県は感染症や食中毒の発表で、管轄の保健所名しか明らかにせず、発生場所の自 治体名さえ公表しない。 *仙台市は06年1月、営利目的による住民基本台帳の閲覧を禁止する事務取扱要領を 策定した。2月10日の閲覧予約申し込み分から適用。①本人・家族による当該世帯 ②国、地方自治体職員や弁護士、司法書士などが資格、職務で行う場合③報道目的や、 研究機関による研究目的―の閲覧などを除いて原則禁止とした。
*秋田県が懲戒処分の発表で年齢、性別を非公開に(05年7月29日発表文から。県 知事が8月1日の会見で表明。その後、9月26日に年齢、性別は発表するが、所属 の課と職名は非公開にする方針に転換)。 *山形県東根市では法施行に伴って、市の委嘱によって各地区の納税組合長が市税未納 者宅を回る、納税組合制度を廃止した。 *福島県内の女子中学生がインフルエンザ脳症で死亡したケースで、県は「個人が特定 される」として、住所について「県北」とのみ公表し、年令については回答を拒んだ。 (関東) *県の防災ヘリが出動すると、群馬県消防防災課から以前は被救助者の氏名、住所、年 齢、負傷程度が広報されていたが、全面施行後は性別と年齢のみになった。 *05年11月、栃木県の福祉施設で知的障害児をいすに拘束していたかどうかの調査 で、県障害福祉課が個人情報(障害児が特定される)だからと結果を明かさなかった。 *東京でおきた集中豪雨の被害者の情報を、税の減免のため東京都に提供した中野区の 職員が、個人情報保護条例に反したとして訓告の処分を受けた。杉並区では東京都へ の情報提供を拒否した。 *天皇皇后両陛下の三宅島訪問の事前レク(2月27日)で、現地で両陛下と懇談する 島民を、都が明らかにしなかった。「個人情報保護法もあるので」と、都が持ち帰って 検討することになった。官庁の発表では、過剰反応としか思えない反応がある。三宅 島の懇談は、取材設定がされており、カメラも入る予定で、島民の名前を明らかにし ない理由は乏しい。 *東京都が硫黄島の慰霊祭に出席する遺族の氏名や住所を個人情報ということで一切公 表せず。 *06年2月1日、横浜市が「市の委託事業で、外郭団体の委託先社員が利用者の個人 情報を不適正利用した」とだけ記者発表。理由は被害者側が一切の公表を望まず、望 まないことに特別の事情が認められるためとし、その他一切の公表を拒んだ。このた め、どのような問題が起こったのかを読者に知らせることが全くできなかった。市は 発表について「不祥事を隠さない」との姿勢だと強調したが、実際には何も公表して いないのに等しく アリバイ づくりとの印象を受けた。 *05年春の褒章・叙勲の発表でトラブルがあった。埼玉県が解禁日付きで事前に報道 に提供する名簿に市町村名しかなく、詳しい住所がなかった。これまでは、地番も明 らかにされ、紹介記事のための事前取材の重要な情報だった。県に抗議すると、当初 は「個人情報に当たる恐れがあるので」と説明。しかし、翌日「内閣府に確認したと ころ、報道関係には提供しても問題がないとのことだった」として、地番も明らかに した。 (中部) *浜松市では表彰者の住所の大字を省略したり、公式でない会合でマスコミ配布資料に 委員名簿を付けないケースが増えた。 *長野県は05年、「天下り」をチェックするため課長級以上の再就職状況を本人の同意 がないと公表しないことを決めた。全員同意して公表されたが06年以降は不明。 *新潟県魚沼市の選管は05年、市議選の立候補者に対する事前説明会終了後は予定者
の名を非公表とし、事前審査後も住所や職業を明かさなかった。報道各社の要請で結 局公表したが、当初の理由は「プライバシー保護」だった。(読売東京) *05年10月、国勢調査員を装った人間による調査票回収事件で、新潟県や新潟市は 本来注意を喚起するために必要なはずの「発生場所」を含め、性別などの関連情報を 「本人の了解を得ていない」として公開を拒んだ。(新潟) *05年5月の上越市シニアスポーツ大会で高齢者2人が骨折などのけが。取材に対し、 市の担当職員は個人情報を理由に実名、住所などを公表せず。職員は「本人に確認して いないが公開は望んでないはず」と答えた。職員の恣意的な判断で決めている。 *富山県砺波市がこれまで提供していた職員録、各種団体や委員会名簿を出さなくなった。 *富山県で旧福岡町と同教育委員会(合併で現高岡市)が発表する功労者、入賞者などの 名簿が名前だけになり、住所などがなくなった。 *福井県庁では05年5月配布の県職員録から、課長や幹部の住所、自宅電話番号を削除 した。04年版までは自宅住所・電話番号を明記。県政記者クラブが「取材に支障があ る」と申し入れた結果、半年後に幹部職員の携帯・自宅電話番号を記した連絡先一覧を 各社に配布した。 *愛知県高浜市選挙管理委員会が市長選立候補者の一人について、生年月日の公表を拒否 (選挙は05年8月28日投開票)。 *名古屋市では、消防局で個人情報が流出、車掌が乗らずに電車が発車してしまった地下 鉄職員の不祥事などについて氏名、年齢、性別を非公表。 *三重県がフェロシルト不法投棄事件で05年11月、メーカーと副工場長を刑事告発し た際、副工場長の名前を個人情報保護の名目で公表しなかった。 (近畿) *滋賀県庁は05年4月の人事異動以降、職員録(県庁内で販売)の幹部職員の住所を掲 載しなくなった。 *滋賀県の職員の処分に関して、処分程度によって実名発表をしないケースが出てきた。 従来はすべてのケースについて実名、所属などを公表してきたが、現在は、氏名公表は 免職・停職のみ。減給・解職については事例によって判断すると変更された。05年春 ごろ、懲戒処分の記者発表で、県職員課は「個人情報保護法に合わせて基準を検討して いる」「個人情報審査会の意見がまとまっていない」として、処分した職員の名前、所属 などを公表することを拒否。05年12月27日に審議会が「取り扱いを変更する理由 はない、従来どおり実施機関の判断で行うべき」とする答申をまとめた。これを受けて 県職員課は同日、懲戒処分に関する氏名公表基準を作成し、審議会から お墨付き を もらって公表基準を厳しくした。 同じ滋賀県でも、教職員の処分については、すべてのケースで実名を公表。住所、氏 名などを公表した上で、教員が処分されたことが実名で新聞に掲載されると生徒の心情 を害するため「教育的配慮」を求める形になっている。実名掲載するかどうかは報道機 関側の判断で行っている。 *滋賀県高島市の情報公開・個人情報保護審査会委員が05年12月に決まったが、会長 など役職を発表しなかった。こちらの求めに応じて氏名は出したが、年齢や職業につい て担当者は「知らない」の一点張りだった。
*05年夏、読者から「大津市の社会福祉協議会が市から65歳以上の名簿をもらえない ため敬老会の案内状を出せず困っている」と相談があり市役所に尋ねたところ「条例に 基づき名簿は提供できない」という答えだった。関係者が協議して結局は、敬老会開催 の目的で開く社会福祉協議会にのみ提供することに改められたが、混乱を招いた。 *税務署の高額納税者公示で事前レク、公示後取材に対する情報開示が公示内容の住所、 名前、税額に限られた。従前行われていた職業等が開示されなくなった。06年度から 公示制度自体が廃止される。 *兵庫県の広報担当者は、「報道機関の側は適用除外で守られているが、情報を提供する官 公庁の側は適用除外対象になっておらず守られていない。訴えられたら対処できない」 としている。 *兵庫県庁が保管している関係団体、企業などの名簿の閲覧が、保護法施行以後、使用理 由とともに申請し、担当課の了承が必要となった。 *兵庫県が石綿関連企業の周辺影響調査を発表した際、中皮腫になった住民の人数を聞く と、「個人情報保護の観点から」という理由で回答拒否。記者クラブが強く抗議し、結 局、1時間後に公表された。 *和歌山県内でノロウイルスなどの感染症の集団感染が起きた際、発生場所の自治体名す ら明らかにしなかった。 *和歌山県で、税金を滞納した企業の土地、建物を役所が差し押さえた事案で、個人情報 保護法を理由に、企業名が明らかにされなかった。 *奈良市議選立候補予定者説明会の報道資料で、約60人のうち15人について何らかの 項目が空白に。選管は「本人の意向」と説明(05年7月)。 (中国・四国) *岡山県職員名簿(冊子)は04年度分まで県政記者クラブ各社に配られていたが、05 年度分からは「内部資料」扱いとなり、報道各社といえども、外部に配布されなくなっ た。 *岡山県倉敷市は市内の小中学生を対象にしたポスター、作文コンクール表彰式で学校名 を伏せた受賞者名簿を報道各社に提供。 *岡山県関係の各種発表資料で、表彰者など個人にかかわる内容については、原則として 住所は市町村まで、年齢はなくなった。取材で質した場合、ほとんどの場合は本人の意 向を確認した上で開示されるが、本人の承諾が得られなかったり、確認できない場合は 「個人情報保護法にかかわるので言えない」と拒まれたりしたケースがある。 *広島法務局が05年7月1日付の人権擁護委員委嘱について、新任委員5人のうち1人 を匿名で発表した。従来は実名だった。理由は「個人情報保護法により本人の希望」。当 方が①職務の性格上、多くの人に知ってもらってこそ仕事ができる。だから紙面でも紹 介してきたが、匿名では意味がない②報道目的であり法の適用にあたらない③人権擁護 委員法で「関係住民に周知せしめるよう適切な措置をとるよう明記している―と反論し たところ、「法の解釈の間違いだった」と名前を公表した。 *広島県労働委員会が05年4月と6月の2回、不当労働行為認定事件を発表した際、企 業名と労組名は公表したが、代表取締役名、労組委員長名を仮名にした。従来は実名発 表してきたケースだが、「本人の承諾を得ていない」の一点張り。承諾を得る努力をしな
いことの言い訳に使われているようだ。 *広島県三次市が、指定管理者制度の公募施設に応募した団体の申請書の公表を「企業の 経営ノウハウが入っている」などの理由で拒否。広島県は公表している。 *広島県呉市が05年夏以降、災害時の負傷者の名前、年齢、職業などを公表しなくなっ た。 *05年11月8日 徳島労働局は公金25万円を不正支出し、「裏金」づくりにかかわっ た男性職員を懲戒処分(戒告)にしたが、処分対象者の氏名、所属部署、年齢の公表を 拒んだ。「(国家公務員の懲戒処分に関する)人事院の公表指針では『個人が識別されな いよう』となっている」「職員が特定されれば、事案と無関係の家族に迷惑が及ぶ」と非 公表の理由を「個人情報の保護」とした。 *愛媛県の自治体が教育委員名簿の提供を拒否。 *高知県・市では、職員録に職員の住所、電話番号の記載がなくなった。 (九州) *福岡県のある町が連絡先の入った町議名簿の提供を拒否。 *個人情報保護を所管する福岡市総務企画局は「原則、公開であるという姿勢で情報公開 を積極的に行っている」とするが、対応はまちまちなのが現状。取材するこちら側が、 個人情報についての問題点、見識を深めておかなければならない。 *佐賀県社会保険事務局は年金過払いなどの事務ミスを文書で県政記者室に投げ込むこと があるが、過払いした受給者の年代、年齢はもちろん男女の性別さえ発表しない。 *長崎県の各種会議の事前の投げ込み資料に委員名簿、出席者名簿が添付されないケース が出てきた。 *05年8月19日、長崎社会保険事務局が、業務改革や意識改革に取り組むため、学識 経験者や事業主代表、被保険者代表らを委員に選任したサービス改善協議会を立ち上げ た。事前の報道機関へのニュースリリースで、肝心の委員の姓名しか記していなかった。 「名前だけではどのような関係者か分からない」と指摘したが、「それは個人情報です」 と出し渋った。事務局は「事前に委員の了解が得られておらず、個人情報は個人が識別 できるかできないかの考えに基づいている」との認識。「氏名だけだと個人特定はでき ず、生年月日や住所、役職名で特定できる」とも説明した。「法にのっとり厳しく運用 した。罰則を意識し、出さない方が間違いない」と解釈を話した。 *大分市は、大分県民生委員児童委員協議会に新生児情報を出さなくなった。 *宮崎県は食中毒患者の所在地を保健所管内で発表しているため、市町村単位での発表を 求めているが、個人情報保護を理由に応じていない。 *宮崎県門川町の公金着服事件で、町の総務課長が職員1人の所属部署の公表を「現職で 個人が特定される」と拒否。 *沖縄県伊良部町は、選挙取材の際に、町議会議員の住所や電話番号を問い合わせたのに 対して個人情報だとして明らかにしなかった。 ③警察・検察 <一般的傾向> (被害者、容疑者等の匿名発表)
*警察発表でも、被害者や事故の当事者の氏名を「個人情報だから」と言って匿名扱いす る事例も目につくようになってきた。ただし、「保護法〇〇条があるから」ではなく、単 に「個人情報だから」という言い方。工事中の倉庫が火事になり、「何の倉庫か」「業種 は?」と聞いても「個人情報だから」と当直責任者が拒む事例もあった。 *警視庁は被害者の名前を広報文に載せなかったり、多額窃盗や強盗の発生を広報しない 署が増えた。また、死亡交通事故でも遺族の希望を理由に死者の名前を出さないことが ある。公表しない理由を言わずに「こちら(警察)の判断」と逃げることがほとんど。 *以前から匿名が多かった警察の発表でも説明に個人情報を持ち出すことがある。被害者 の関係者や遺族が、個人情報を理由に警察に匿名発表を要請することもあるという。 *事件、事故の取材で被害者、容疑者らの氏名、詳しい住所(地番など)を伏せることが 増えている。特に、被害者の場合は「被害者が公表してほしくないと言っている」こと を理由に伏せることが多い。交通事故、火災、心中などはもちろん、殺人事件の被害者 名も遺族の強い意向で出さないというケースもあった。 *秋田県では雪下ろしなどの自損事故の警察発表の場合、住所、氏名の匿名・実名の扱い は各署でこれまでもまちまちだったが、実名の場合でも「なお、家族から匿名にしてほ しいとの強い要望がでています」などの記述が発表用紙に記されるケースが多くなった。 *山形県では事件・事故の被害者について保護法を意識し、匿名志向が極端に強まった。 報道発表に際し、各署の事件・事故担当者が被害者から匿名を強く要請され、広報担当 の副署長が県警本部広報相談課にその旨を伝えてくるケースが急増している。同課が実 名で発表するよう指導し、発表段階では実名に切り替わることが多いが、副署長が板挟 みになり対応に苦慮している。この傾向は今後、犯罪被害者等基本計画の策定により、 さらに強まると思われる。 *埼玉県警では、交通事故によるけが人の名前を、法を理由に発表しなくなった。 *新潟県警の事件事故発表で被害者の氏名、住所、年齢などを発表しないケースが顕著に なっている(雪の落下による重傷者発生の際、「個人情報保護法もある」として負傷者名 をAさんと発表。本人は匿名を希望していなかったなど多数)。 *警察の事件発表で強盗の被害者や被害店舗について住所、氏名を伏せる例が増えた。担 当部署に取材するとコメント扱いとして公表はする。どうも保管されている公文書に個 人情報を残したくないとの理由のようだ。 *警察が交通事故の加害者・被害者を発表する際、個人情報保護を理由に名前や住所、職 業などを明らかにしないケースが増えている。 (その他) *新潟県警の異動発表で個人情報保護を理由に、警部補の名簿を出すのをやめた。 *性犯罪や被害者の強い要望がある場合、地検が起訴状を提供しなくなった。被害者名を 匿名にするのは理解できるが、起訴状をださないのはおかしい。放火事件で、加害者と 被害者が親せきのケースで被害者の要望で起訴状が出なかったケースがある。 <具体的事例(地方別)> (北海道) *06年2月24日、北海道留萌館内天塩町で、車内で練炭自殺を図ったとみられる夫婦
が発見された事案で、警察は一命を取り留めた夫は実名、死亡した妻は匿名という変則 的な発表をした。妻の名前を警察に尋ねると「個人情報保護で死亡者の名前は明らかに できない」という説明。死に切れなかった夫は自殺を繰り返す可能性があるから匿名と いう判断はあり得るが、なぜ夫だけ公表されたのか、納得のいく説明はなかった。その 後、警察は妻の実名も明かしたが、記事送信は見送った。 (東北) *05年3月13日、青森県弘前市で3歳児が自宅敷地内でワゴン車にひかれ死亡した 事故で、警察は死亡者名を公表せず、メディアの抗議を受けて実名発表に切り替えた。 警察が、個人情報保護あるいは親族の「名前を出さないでほしい」との要望を受けて、 被害者の実名を出さないケースが非常に目立っている。 *青森地検八戸支部が起訴状の写しを報道機関に提供する際、それまで公表されていた 被告の住所のうち、「大字」以下が伏せられるようになったケースがある。 *05年8月、八戸市で起きた女性理容師殺人事件で、重要参考人の男性が凍死体で発 見された。06年2月、捜査本部は凍死した男性の犯行と断定。被疑者死亡のまま書 類送検したが、警察発表は匿名だった。理由について警察は「死亡した男性、男性の 遺族にもプライバシーがある」とした。しかし、死亡する前に発見、逮捕していれば 当然、実名で発表される事案であり、その際、男性の遺族には実名で報道する理由を 説明、「警察から説明を受けたが必ずしも納得していない」との遺族のコメントを記事 に加えた。 *05年8月6日午前11時40分ごろ、宮城県名取市の閖上海水浴場で海水浴中の男 性2人が行方不明になる水難事故があった。所轄の岩沼署は不明者について「名取市 会社員 21歳」と「岩沼市 会社員 20歳」としか広報しなかったが、塩釜海上 保安部は不明者の氏名、生年月日、住所、職業を具体的に広報し、双方の対応に大き な違いのあることが明らかになった。岩沼署は個人情報を伏せたことについて「死亡 したわけではなく、まだ行方不明状態だから」という理由にならない説明をした。こ のケースと対比されるのが火災発生の広報。警察は火災の広報では発生時間、住所、 氏名などを具体的に広報し、行方不明者の有無も発表しており、水難事故の不明者を 伏せるのと明らかに矛盾している。警察が恣意的に情報を隠す可能性があることを示 唆し、今後、「個人情報保護」を盾に、この傾向が強まる恐れが多分にある。 (関東) *筑波山で行方不明になった人が遺体で発見されていたにもかかわらず、茨城県警は当 初、遺族の意向を尊重して発表しなかった。あとで、遺族が「遺品を見つけてほしい」 と、報道への協力を求め、発表することに。個人情報を盾にする遺族に警察も報道も 振り回された。 *前橋地検は、起訴状の写しを記者クラブに提供してきたが、05年4月1日から被告 人の住所が市町村までしか掲載されなくなった。以前は番地まで出ていた(現住所の 字名以下を公表しなくなった)。地検側は当初、生年月日も削除してきたが、記者クラ ブが交渉して生年月日は残すことになった。 *神奈川県警は05年5月31日朝に横須賀市のラブホテルで起きた女性変死事件で、
事件発覚後まもなく異変に気付いた何社かの地元記者が問い合わせをしたにもかかわ らず、2時間近くたったのちにようやく第1報を出した。同日夜、死亡女性の身元判 明の第2報が出たが、女性は匿名。広報を担当した横須賀署副署長は、「未成年者であ ることと、ラブホテルという場所を考えて言わない」の一点張りで、各社の抗議・説 得にも応じなかった。署で臨時記者クラブ総会を開き、幹事社を通じ「1人の人間が 死んだのに名前を出さないのはおかしい。確認作業もできない」「基本的に匿名はあり えない。判断をするのは報道機関だ」などと副署長に説明したが「1課からの要請も ある」と拒否。1課長も署での囲みで「言えない」と1度は拒んだ。その後、 県警広 報県民課を通じた再抗議で、1課長の許可を得て副署長が住所や氏名を口頭で発表し た。 (中部) *富山県警高岡署が05年4月、高岡市で起きた交通事故の発表文で、事故にあった被 害者の名前を出さなかった。名前を出すよう求めたが「家族から要望があった。個人 情報を守らなければならない。上司から発表しないようきつく言われている」の一点 張りで、記事では「女性」として掲載した。 *新潟県警では、例えば05年12月、湯沢町で7階建ての保養所の屋根から雪が落下 し、下敷きになった宿泊客が足首骨折の重傷を負った事故では、所轄署は「個人情報 保護法もある」として負傷者を「Aさん(36歳)」とだけ発表。住所や性別も非公表 だった。本人は匿名を希望していなかった。振り込め詐欺事件では、被害者はほとん どが「○○市の20歳代の会社員男性」という形での発表。自損交通死亡事故でも少 年だと匿名発表。 (近畿) *05年12月31日、京都府三和町で民家が全焼した。福知山警察署は、民家の住人 が匿名を希望していると、年齢と性別のみを発表した。「本人が匿名を希望している。 名前が地域に知られたら、田舎だから住みにくくなってしまう。本人も被害者」と主 張。現場で消防から聞いていたので名前は記事に入れた。 *06年1月6日、京都府福知山市で民家が全焼し、隣の民家も一部焼いた火事があっ た。この際も警察は、全焼の民家の住人が匿名を希望していると年齢のみを公表した。 消防に聞いて名前は記事にいれた。匿名の発表が2件続いたので、警察に抗議。警察 は判断の誤りを認め、「今後は火事では匿名にしない」と返答した。 *京都府警宮津署管内の旅館で発生した強盗傷害事件で、同署が旅館名、傷害被害に遭 った従業員名を明らかにしない。「旅館は公共的な施設。一歩間違えば、宿泊客にも被 害が及ぶケース」「戸締まりなど客の安全確保にも問題があったとも考えられるので は」などと説得したが、言外に保護法施行を盾に、逆にこちらに理解を求めて来た。 この事件では、他ルートで被害旅館を突き止め、実名を警察に告げたところ、警察も しぶしぶ取材に応じた。 *滋賀県警甲賀署は06年2月、交通事故の第二当事者が重傷を負ったにもかかわらず 氏名や詳しい住所を公表しなかった。追加取材にも「過失の度合いが小さい」ことを 理由に応じなかった。 *滋賀県警長浜署の警察発表で、交通事故で死亡した人の住所の番地が伏せられるケー
スがある。また、逮捕者で「住所不定・無職」のケースの場合、本籍地や出身地も出 さずどのような人物かさっぱりわからない。 *滋賀県警彦根署の警察広報で、火災現場や死亡者の番地を出さない。死者が出ていな い事故で当事者の名前を伏せてくることもある。 *05年12月28日夕刻、大津市で発生した通り魔事件で重傷の女性について当初、 匿名発表だった。 *06年2月23日夜、2人の女性のうち1人が登山にでかけたまま行方不明となった ことをめぐる滋賀県堅田署の発表は、名前が匿名だった。その後、口頭での説明はあ ったが実名で発表すべき案件。 *06年2月26日に発表された婦女暴行事件の容疑者逮捕で、被害者は「滋賀県内 A 子」として年齢さえ分からなかった。 *06年2月28日に起きた滋賀県米原市の交通重傷事故で、米原署は重傷の第二当事 者について匿名にした。第一当事者は逮捕したため、実名だった。自社取材で重傷者 の名前を調べて掲載した。 *和歌山県警海南署の留置場で起きた容疑者の首つり自殺で、署が容疑者名や逮捕事実、 逮捕日、職業などを公表せず(05年8月22日に報道発表)。 (中国・四国) *06年1月、捜査車両で52キロオーバーの巡査長を書類送検。広島県警監察室は巡 査長の所属部署を「個人が特定される」との理由で明らかにせず「本部所属」とし、 公務で向かう先も「県東部の所属先」として具体的な警察署名を明らかにしなかった。 *05年12月、虚偽の公文書で入手の情報漏えいで国税調査官を書類送検。広島国税 局は調査官の勤務地、生年月日を明らかにせず、各社の要求で国税局が譲歩した結果、 「岡山市内の税務署」とした。同市内には、岡山東、岡山西、西大寺の3署がある。 *徳島県警は05年3月25日付で異性関係で信用失墜行為をしたとして男性警察官 一人を戒告処分としたが、国(警察庁)の指針の「被害者や関係者のプライバシー保 護のためやむを得ない場合」を適用し、詳しい事実関係や職員の所属を明らかにしな かった。 ④消防 <一般的傾向> *自治体消防では、けが人の容体などの情報を提供しない例が出ているほか、「出火場 所の住所を発表しない」(茨城県つくば市)というケースもあった。 *消防署が火災や事故の被害者情報、現場の状況を教えないケースは格段に増えた。た だ署や担当者によって対応はかなりばらつきがある。 *大津市消防局は救急搬送された人の住所や名前をますます教えてくれなくなった。 <具体的事例> *06年1月中旬、京都府の京田辺市消防本部で05年1年間の火災救急出動統計の取 材をした際、放火の疑いの事案の日時・場所を聞いても、「個人情報なので言えない」 という対応だった。発生時には発表していることをあげ、「個人情報保護法を曲解して
いる」と説明した結果、情報は出された。法の趣旨が現場レベルでは十分理解されて いないことを示すケース。 *大阪府の柏原、羽曳野、藤井寺の3市でつくる消防組合では、法施行に伴ってマニュ アルを作成し、火災、救助、救急などについては、マスコミも含めて氏名は原則とし て公表せず、住所も町名までとしている。 *大阪府大東市の消防本部は、火災の焼損面積や通報者を「個人情報」だとして公表し なくなった。「個人の財産に関する情報は回答不可」としている。(NHK) *05年11月18日、京都府福知山市内のコンビニ駐車場で乗用車が炎上、全焼した。 消防署は所有者の名前を発表しなかった。住所も福知山市内在住のみ。氏名、住所、 職業、年齢を発表するように迫ったが、当直は「署の方針で決まった。私の判断では 教えようがない」と拒否。翌日、消防署長に説明を求めたが、署長も「署として個人 情報は今後、できるだけ出さないようにすると決めた」と発言。報道機関として名前、 住所、職業、年齢がなぜ必要なのかを説明した結果、「今後は発表していくようにする」 との約束を得た。 *和歌山県内の消防は、事故や火事によるけが人の名前や年齢を「個人情報保護」とい う理由で公表しなくなった。 *広島県呉市消防局がマニュアルを作成。出火場所は「丁目」まで、民家火災の場合は 個人名を提供しない―など。
(2)病院・学校・その他地域の公共施設・機関
①病院・福祉施設 <一般的傾向> (患者の情報の非公開) *事件、事故の被害者の容体について警察にさえ回答しない例が、岩手、愛知、富山、 石川、などで相次いだ。 *警察庁の調査では、昨年4月から6月にかけてだけで、警察の正式な捜査照会を病院 や自治体などが拒否した例が約500件に上った。4割が医療機関で、事件事故でけ がをした当事者の容体や変死者の既往歴、中には容疑者の入院の有無についての拒否 もあった。警察庁の働きかけを受け、厚労省では、過剰反応を招いている医療機関向 けの個人情報保護のガイドラインに、「捜査機関への協力は従来通り可能」と追加し た。 *病院関係では事件事故で搬送された人の情報を警察当局にも提供しない例や、「院内 感染の患者数」、「遊具で負傷した児童の容体」など、個人名ではない情報も提供され ない例が目立った。 *病院は本人や家族以外にはけが人や病人の容体を答えなくなった。家族の代わりに駆 け付けた親族が容体を確認できない例も出ている。取材にはもちろん、警察に対して も情報提供を拒むことがある。本人の同意を得ない情報提供での損害賠償請求の可能 性を示唆した厚労省のガイドラインや全日本病院協会の事例集などの影響が大きいと 思われる。患者呼び出しの際に名前や診療科を言わない病院が増えている。 *交通事故などで意識不明のまま病院に搬送され、数時間後に死亡するケースがしばしばあるが、帯広市内のある病院は「個人情報」「患者のプライバシー」「病院の方針」 を理由に、警察にすら負傷程度や容体を伝えない。負傷程度は警察にも報道側にとっ ても必要不可欠な情報だが、それを把握できず警察が報道発表を遅らせることもある。 これでは後になって「死にました」と病院から知らされ、傷害事件と思っていたもの が、いきなり殺人事件だったと分かるといった異常事態も起きかねない。 *茨城県内のある警察署の話だが、署員が救急搬送先の病院に電話を入れ、被害者のけ がに事件性があるかどうか尋ねても、病院側は「個人情報なので…」と応じてくれな かったケースがあったという。 *病院が交通事故などのけが人の負傷の程度、症状を明らかにしないことが増えた。こ のため新潟県では、警察発表で重傷、重体、軽傷の判断ができない状況となっている。 警察は「病院が個人情報保護法を理由に症状を明らかにしないため、われわれも分か らない」。 *「保護法施行後、容疑者や被害者の病歴、病状の紹介に電話で応じる病院がなくなっ た」「署長名入りの書面や令状を携えて病院に足を運ばなければならなくなった。県 外の病院だと大変だ」と徳島県警の捜査員は話すなど犯罪捜査の現場にも影響を与え ている。 (院内での氏名を表示しない) *病院では、病室の名札を外したり、外から患者を訪れる人の面会を許可するかどうか を事前に患者に確認したりする例が増えている。また、患者の名前でなく番号で呼ぶ 病院もある。 *静岡県内の自治体病院は、病室の名札を外したり、患者の呼び出しを番号にしたり、 診察室内の待合室を廃止する動きがある。外部からの患者呼び出しも、患者の了承を 事前に取るようになった。 *静岡県の総合病院では、患者の要望があった場合に病院の入り口の名札を取り外した り、診療の際に名前を呼ばず番号で知らせるようになったりした。 *診察室の声が待合室に漏れるのを防ぐため、入り口をカーテンからステンレス製ドア に変更。 (その他) *がん対策の根幹をなす「地域がん登録制度」について、個人情報保護を理由に協力を 渋る医療機関が増えている。厚労省は、「がん登録は保護法の適用外」と通知し、医 療機関に協力を呼びかけているにもかかわらず、過剰反応からデータ提供を拒否する ところが相次いでいる。国のがん対策にも支障をきたしかねないと懸念されている。 <具体的事例(地方別)> (北海道) *05年6月、札幌医大はC型肝炎の院内感染の疑いの事案で、「患者が特定される」と して患者の年代についても公表しなかった。 (東北) *05年11月13日、青森市の主要地方路で起きた観光バスのスリップ単独事故で、 負傷者が多数出た。青森県警に当事者の負傷状況を取材したところ、警察側が「個人
情報保護の関係で、病院側が詳しく教えてくれない」とこぼしていたことがあった。 ただ、病院に取材した際、ある医師が外で待機していた報道陣に、搬送される人数、 負傷程度を教えてくれた。その医師は「個人情報保護で病院はすぐ隠すが、何でも隠 せばいいというものではない」と指摘。 *岩手県の盛岡市立病院で05年12月5日に入院患者が入浴中に死亡するという事故 があった際、病院は患者の氏名はもちろん年齢や病名さえ明らかにしなかった。 *岩手県立中央病院(盛岡市)では全診療科で番号呼び出しを導入したが、「高齢者がと まどう」との声が強い。 *宮城県多賀城市で高校生3人の死亡交通事故が発生、高校生側に過失はなく、報道機 関の代表者が学校側に顔写真提供を求めたが「保護法前なら協力できたが今は無理」 と拒否される(05年5月)。 *搬送された患者の容態はおろか、搬送、入退院の事実確認にも応じないケースが多数。 たとえば06年1月の仙台市の新生児誘拐事件で、発見後に運び込まれた仙台市立病 院は当初、男児の退院時期を報道に知らせると言っていたが、後に「いつ退院するか は個人情報だから公表できない」と回答。 *山形県米沢市で05年5月、山菜採りに出掛けた男性が斜面から滑落してけがをし、 救急車で米沢市立病院に運ばれた。同市消防本部から連絡を受けた米沢警察署は、山 菜採り中の滑落事故として、署員2人を同病院に派遣し、けがの程度を確認しようと したが、病院はプライバシーの保護を理由に情報提供を拒んだ。同署はその後、男性 の家族と連絡を取り、足を骨折したことを確認した。取材した記者に対しても病院は 同様な対応だった。 (中部) *山梨県富士吉田市では、病院に駆け込んできたナイジェリア人の胃の中から覚せい剤 が発見された事件で、会見した病院側が覚せい剤の量を「個人情報」として言及しな かった。 *インフルエンザの集団感染による学級閉鎖で、長野市保健所は校名、園名について公 表せず。 *各地の病院の医療事故会見で、死亡患者の情報をなるべく出さない傾向になった。た とえば05年6月、信大付属病院が「がんで入院中の男性患者がB 型肝炎に院内感染 した疑いで死亡した」と発表したケースでは、「県内」「60代」「今月死亡」とだけ公 表した。報道側が死亡日時を公表するよう迫ったが、結局答えず。 *福井県内の警察署が交通事故被害者のけがの程度(重傷か軽傷か)を入院した病院に 問い合わせたところ、「個人情報にかかわる」として拒否された。新聞社の取材に対し て、警察署の担当者が明らかにした。 *JR東日本の特急「いなほ」脱線事故でけが人の氏名を公表する病院としない病院が あった。新潟県立病院は公表したが、私立病院は個人情報保護を理由に明らかにしな かった。 (近畿) *05年11月、日赤和歌山医療センターで脳死移植の臓器提供があった際、「個人情報 に関わる」として臓器提供の事実自体明らかにしなかった。
*05年11月から12月初めにかけ、京都府南部の山城地域の保育所、高齢者施設で 続発したノロウイルスによる集団胃腸炎で、山城北保健所は施設名、所在地の自治体 名とも伏せた発表をしてきた。保健所まで赴いて取材すると口頭で自治体名は明らか にしたが、施設名は電話で個別に当たって割り出す作業をした。時間の余裕があると きは割り出せたが、発表時刻が夜間の場合は割り出せず、施設名は匿名の記事にせざ るをえなかった。このため、施設の中には「なぜウチの場合は実名なのか」と不満を 示すところも出た。 *京都府宮津市内の 医療機関の診療システムが変わり、患者サイドの意見、反応を知り たかったが、病院側は患者の紹介はしないとの一点張り。病院側にとってPRになる 話題、積極的に広報しているこのケースでもハードルは高い。 *05年4月の尼崎のJR線脱線事故で、県立病院はまず、運び込まれた死傷者の個人 情報について、個人情報保護法に抵触せずにどの程度開示できるかを県庁に確認。そ の上で家族、県警、消防、報道に対し情報を開示した。死傷者の住所、氏名、年齢な どの基本情報がすぐに開示された過去の事故等と比較すると、情報開示は遅れ、混乱 も見られた。民間病院の中には、報道機関からの電話による問い合わせに一切応じな いところもあり、トラブルになったと聞く。院内で死傷者氏名を 張り出した病院もあ れば、全く出さない病院もあった。各病院は個人情報保護法を気にしながら、運用基 準はまちまちで混乱もしていた。同事故では、兵庫県警が死亡者の氏名を家族の了解 があるとする者に限って発表、4人が匿名となった。JR西日本が当初、被害者名簿 の兵庫県への提出を拒み、内閣府の見解を受けて、一転提出する経緯もあった。 *尼崎のJR脱線事故の発生直後、患者の搬送先となった一部の病院が、「個人情報の目 的外使用」を理由に、問い合わせた家族に患者の氏名を明かすことを拒むなど保護法 をめぐる病院側の過剰反応が問題視された。 (中国・四国) *徳島県内の県立3病院は入院患者の申し出があれば、病室などへの名前の掲示を廃止。 院外から入院患者にかかってくる電話の取り次ぎもやめ、見舞客に病室を教えること もしない。電話で患者の家族から検査結果の問い合わせがあっても本人以外には伝え ない。 *05年11月、徳島県内の障害者施設は「個人情報に関する誓約書」を職員全員に配 布し、障害者の病状や提供サービスの内容などの個人情報を第三者に開示、提供しな いよう求めた。在職中だけでなく退職後も、知り得た情報の開示を禁止している。 *高松市では05年6月、中3の男子生徒が野球部の練習中に突然倒れて死亡したが、 搬送先の県立病院は学校にも市教委にも死因を教えず、事故なのか病気なのか分から ないままとなった。同法は、法令に基づく活動や、国の機関、自治体の活動に協力す る場合は本人の同意がなくても個人情報を提供できるとしており、こうした対応は明 らかに過剰反応と言える。 *高知県立中央病院も保護法施行後、入院患者の希望があれば病院への氏名を非掲示に するなどの対策をとっているが、「有事の際は特別」との立場をとる。 (九州) *05年4月3日、福岡県志摩町の海で、サーフィンをしていた男女5人が落雷のため
負傷(その後1人は死亡)する事故があったが、被害者名がなかなか判明しなかった。 理由は地元の福岡県警前原署の照会に対し、負傷者搬送先の病院が個人情報保護法を 理由に回答を拒否したためだった。報道各社の要請を受けて同署が再度照会した結果、 意識不明の重傷者のみ実名が判明した。 *佐賀大医学部付属病院の各診療科では患者の希望に応じて名前か番号で呼び出す方 式に変わった。全外来患者の対応をする会計、処方窓口では番号で呼び出す。病棟で は患者が希望すればベッドの名札もはずす。 *05年10月、女児が腸管出血性大腸菌に感染し、熊本市保健所が年齢を公表した。 その後、女児の姉と兄も感染していることが判明したが、保健所は姉兄の年齢を公表 することを拒んだ。理由は感染者が特定される恐れがあり、プライバシーを守るため。 「感染者に関する情報量に差があるのはおかしい」と抗議したが、保健所は「市の内 規」で押し通した。 *法施行前だが宮崎市内の病院で透析患者のC型肝炎集団感染が発生した。市保健所は 会見を開き、「患者の人権配慮」と個人情報保護を理由に病院名の公表を拒否した。 *沖縄の高齢者福祉施設でノロウイルスの集団感染がおきて一人が死亡した際に、施設 の名前や所在自治体名さえ公表を拒んだ。しかもこの施設は県立の特養施設だった。 ②教育 <一般的傾向> (連絡網、名簿の廃止) *学校現場では、クラスの緊急連絡網が作成されなくなったり、作成されても前後の家 庭分しか配られなくなっているケースが、全国で広がっている。児童生徒の作品の展 示の際に名前を伏せる、といった反応も多く出ている。 *学校でも個人の特定につながる情報の扱いには敏感になっている。当該の児童や生徒 の在籍さえも確認できないことがある。掲示板への個人名張り出しをやめたり、OB 就職先名簿の閲覧を禁止した大学もある。 *県教職員名簿では、大多数の教職員の自宅住所が削除され、学校所在の住所に代わっ た。ただし一部の私立学校では従来通り、教職員の住所が記載されている。 *学校・研究機関などで、職員録から自宅住所や電話番号がはずされ、電話による問い 合わせでも同様の傾向が顕著になっている。ただし、それはここ数年来の傾向であっ て、法施行により、その傾向が徹底されるようになったと考えられる。 *山形県では学校によっては児童・生徒の住所、氏名、電話番号などを記したクラスの 「連絡網」の作成を辞め、保護者数人が手分けして連絡する態勢をとるなどのケース も出てきた。クラス名簿からも保護者名、連絡先が消えている。 *茨城県では中学生の球技大会で以前は名簿をすぐもらえたが、保護者または大会役員 の了解を得てからと言われた。選手を紹介する際も進学先などを書くときは、当人の 了解を得てからと言われた。 *茨城県では昔は大学教授の一覧などをもらえたが、今は広報を通してアクセスするし かない。 *「個人情報への配慮」として学校のホームページに表彰結果の掲載を取りやめるよう
になったり、学校の連絡網の作成の可否について、学校から富山県教委に問い合わせ があった。県教委は災害時に有効との判断から、事前に保護者の了解を得た上で連絡 網を作成、了解が得られない場合は担任が直接連絡するようアドバイスしている。 *富山県内の小中学校が生徒の名前を載せた資料を出さなくなった。 *新潟県内の学校でクラス名簿や保護者名簿がなくなったケースが目立つ。 *大分県では児童・生徒の表彰者名簿など本来、全く問題ないと思われるケースでも、 学校側が報道機関に公表してよいか判断に迷っている。 (顔写真の拒否) *ホームページなどを開設している学校では、子供の顔が特定されないようアップで写 らないようにしているケースもある。また、作品などをホームページで取り上げるケ ースでは、本人と保護者の了承を取るのが一般的になっている。 *学校の卒業アルバムで、写真掲載について保護者からの了解を取るところもある。 *研究者一覧から顔写真のほかに学位論文・特許実用新案などの欄も削除した国立大学 があった。 (その他) *選挙の候補者の学歴確認で、大学や高校が確認拒否。 *学校で子どもの在籍について問い合わせても答えない傾向が強い。連れ去り未遂や切 りつけなどは学校に問い合わせて対応や詳しい状況を取材する必要があるだろうが、 当該の子どもがいるかどうかさえ取材に応じない学校も。第2、第3の被害を防止す るために取材に応じることより、個人情報の流出に敏感になっているように思う。 *秋田県では学校から校内行事などの写真を提供してもらう場合、「被写体の保護者に 聞いてから」といわれるケースが出てきた。 *茨城県で高校の自転車部の先生に、選手を新聞社に紹介することは個人情報保護法違 反になるのかと相談を受けた。 <具体的事例(地方別)> (東北) *青森県教委は、これまで不祥事の再発防止のため実名で発表していた教員などの懲戒 免職者を、05年7月から匿名とし、勤務先さえ非公開にした。法施行に伴って改正 された県の個人情報保護条例に「本人または第三者の権利利益を不当に侵害するおそ れ」がある場合は個人情報を提供できないとされたためという。県教委は03年4月 から飲酒運転に関する教職員の処分を厳罰化、原則的に懲戒免職にした上で実名を公 表していたが、これも匿名となった。 *青森県市町村教育委員会連絡協議会が発行する「教育関係職員録」で、八戸市教委だ けが独自の判断で、教員の年齢、出身学校、卒業年次、勤務年数、所持免許などの記 載を取りやめた。他の市町村教委は公表している。 *弘前大学が05年12月の記者会見で男性教官を戒告処分にしたと発表したが、理由 について「前任地で懲戒解職処分を受けているのを隠し、本学の採用試験を受け採用 された」と述べるにとどまり、解職の中身についてほとんど触れなかった。 (関東)
*横浜市の私立中は保護者の了解がないと連絡網を作れず、05年12月のスキー教室 では大雪で現地到着が大幅に遅れたが、保護者宅に先生が一人ずつ電話したため、「連 絡が遅すぎる」と苦情があった。 (中部) *富山県では、受け持ちクラスの女子児童の体を触ったとして逮捕された小学校の男性 教諭に関し、学校側が「プライバシー」を理由にクラスの男女の人数を明かさなかっ た。 *富山県入善町の入善中学校で06年1月16日、部活中の生徒が倒れ、心不全で死亡 したが、町教委と学校が「父母の意向」として生徒名を公表しなかった。 *05年10月、新潟市教育委員会が酒気帯び運転の市立高校講師を処分した際、従来 明らかにされていた年代や性別の公表を拒んだ。 *05年8月、新潟県教育委員会定例会で教員を処分。知り合いの高校生に飲酒・喫煙 を勧めた後で体を触ったとして男性高校教諭が懲戒免職となったが、県教委は被害生 徒の性別やこの教師との関係を「具体的内容は控えたい」と明らかにしなかった。従 来は公表していた。 *例年3月に、退官する大学教授を紹介するコーナーの取材で、06年、上越教育大の 担当者は個人情報保護法を理由に退官者の名前、業績などを明らかにせず。 *私立幼稚園長から法施行を機に、卒園アルバムの個人写真の氏名掲載をやめるべきか 相談を受けた。こちらは「行き過ぎ」と回答。園長はどうしていいか分からなかった といい、ほっとしていた。 *地区版題字下に顔写真付きで小学生の作文を掲載しているが、このところ学校側から 「どういう理由で顔写真を載せるのか」といった声が出ている。従来にはなかったこ とだ。学校が児童の親から説明を求められているようだ。個人情報云々というよりは、 児童への犯罪が増えていることが背景か。 *(財)愛知県教育振興会発行の「愛知県教育関係職員録」が05年度分から入手でき なくなった。以前は県広聴広報課が希望冊数を聞き、有料で配布していたが、広報課 にも置けなくなった。 *愛知県内全般で学校の緊急連絡網の表が配られなくなった。 (近畿) *京都府の小学校のインフルエンザによる学級閉鎖で、どのクラスか聞くと「休んだ子 が特定されるので答えられない」。 *京都府教育委員会の審議は、原則公開されていたが、法施行後、議題に個人情報が含 まれるおそれのある場合には、開会前に委員の同意を得たうえで公開するという規則 ができた(この規則のため非公開になったことは、これまではない)。 *京都府教育委員会は、不祥事で処分を受けた教職員の勤務する学校について、「京都府 南部の学校」から「京都府内の学校」と、より漠然とした発表に変えた。「処分を受け たとはいえ、勤務する学校は個人情報だ」としている。氏名、年齢は以前から公表し ていない。 *京都市教育委員会は、各学校のPTA幹部の名簿の記者クラブへの配布を廃止した。 *教員の不祥事について個人名を出さない傾向が強まった。06年1月30日、京都大