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Vol.33 , No.2(1985)034下田 正弘「四念処に於ける不浄観の問題」

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Academic year: 2021

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四 念 処 に 於 け る 不 浄 観 の 問 題 ( 下 田 ) 一 三 〇

原 始 仏 教 に 於 け る 四 念 処 (cataro satipatthana) の 研 究 は、 こ れ ま で ﹃ 念 処 経 ﹄ を そ の 拠 り 所 と し、 と り わ け 身 念 処 中 に 説 か れ た 不 浄 観 を 重 視 す る 中 に 進 め ら れ て き た。 と こ ろ が ﹃ 念 処 経 ﹄ は、 四 念 処 を 説 く 他 の 初 期 仏 教 経 典 や、 論 書 中 に 位 置 づ け た 時、 少 な か ら ず 問 題 を 含 ん で い る こ と が 分 か る。 本 稿 で は そ う し た 点 を 指 摘 し な が ら、 不 浄 観 は 本 来、 四 念 処 と 関 わ っ て い な か っ た 可 能 性 が 強 い こ と を 明 ら か に し た い。 ﹃ 念 処 経 ﹄ を 見 れ ば、 そ れ が 比 較 的 新 し い 内 容 を 有 し、 か つ 四 念 処 の 註 釈 経 的 性 格 を 帯 び て い る こ と が 理 解 さ れ る。 そ れ は ﹃ 念 処 経 ﹄ が 中 部 に 組 み 込 ま れ て い る こ と、 及 び 四 念 処 を 説 く 諸 経 典 の 中 で、 長 部 ・ 中 部 の ﹃ 念 処 経 ﹄ の み が 格 段 に 詳 細 で、 他 は 簡 潔 な 形 を 保 っ て い る こ と か ら も 容 易 に 推 察 さ れ る こ と で あ る。 で は 一 体、 そ の 註 釈 的 性 格 は い か に し て 付 与 さ れ て い る か を ま ず 確 認 し て み よ う。 四 念 処 を 説 く 諸 経 典 全 体 に 共 通 す る 記 述 は 次 の も の で あ る。 こ れ 以 外 に ﹃ 念 処 経 ﹄ に は 次 の 内 容 が 説 か れ て い る。 ( 一 ) 身 念 処 ⋮⋮(王)出 入 息 念、 ◎行 住 坐 臥 等 の 如 実 観 察、 ◎身 体 が 不 浄 に 充 て る こ と の 観 察、 ◎地 水 火 風 界 の 観 察、 (奉)死 屍 の 観 察、 ( 二) 受 念 処 ⋮⋮苦 受 ・ 楽 受 ・ 不 苦 不 楽 受 等 の 観 察、 ( 三)心 念 処 ⋮⋮◎ 有 ・ 無 貧 心、 有 ・ 無 瞑 心、 有 ・ 無 擬 心 等 の 観 察、 (四) 法 念 処 ⋮⋮五 蓋 ・ 五 取 慈 ・ 六 内 外 処 ・ 七 覚 支 ・ 四 聖 諦 の 観 察 ※の k

aya, vaedana, citta, dhamma

が そ れ ぞれ(一)、 ( 二)、 ( 三 )、(四)に 開 か れ て 詳 説 さ れ て い る の で あ る。 と こ ろ が 注 意 せ ね ば な ら ぬ の は、 こ れ ら の 記 述 は 決 し て ﹃ 念 処 経 ﹄ に 固 有 の も の と い う わ け で は な く、 中 に は 四 念 処 と は 全 く 無 関 係 な 脈 絡 で、 広 く 初 期 仏 典 に 説 か れ る 記 述 が 散 見 さ れ る こ と で あ る。 今、 ニ カ ー ヤ に 於 け る 編 輯 意 図 と い う 点 を 考 慮 に 入 れ て、 ﹃ 念 処 経 ﹄ が 入 っ て い る 長 部 ・ 中 部 に 限 っ て 見 て も、 (イ)の 出 入 息 念 は maharahulo ( m iii-3 ), Anapanasati-s (m iii-88)、 の 行 住 坐 臥 等 の 如 実 観 察 は s a

mannaphalaa-s (U i-70), kass-sutta

O

h

abbisodhana-s (miii-3) mah (mi-269)

に、 の 身 体 不 浄 の 観 察 は、sampasadanya-s (Uiii-104) に、 (囚) の 心 の 観 察 は、 s amanhala-s (Ui-79), lo 232), A

ankheyya-s (mi-24), mahetc.

に 全 同 の パ ッ セ ー ジ が 見 出 さ れ る。 そ し て 勿 論、 そ れ ぞ れ の 記 述 は 各 個 の 経 典 に 於 て 独 自 の コ ン デ ク ス ト に 組 み 込 ま れ て い る の で あ る。 殊 に ◎心 の 観 察 は、 全 て の 経 典 で 覚 者 が 他 人 の 心 を 観 察 す る ( 他 心 通 ) も の と し て 記 述 さ れ て お り、 自 己 の 心 の 観 察 と し て 用 い る の は ﹃ 念 処 経 ﹄ の 一 経 に 限 ら れ て い る。 こ う し た こ と か ら 考 え れ ば、 四 念 処 の 註 釈 経 と は 言 っ て も ﹃ 念 処

(2)

-545-経 ﹄ に 盛 り 込 ま れ た 記 述 は、 四 念 処 と い う 観 法 に よ っ て 生 み 出 さ れ た も の で は な く、 逆 に、 必 ず し も 四 念 処 と 関 り の な い、 初 期 仏 典 に 共 通 す る フ レ ー ズ が 持 ち 込 ま れ た も の で あ る こ と が 分 か る。 と り わ け ◎の 記 述 が ﹃ 念 処 経 ﹄ に よ っ て 換 骨 奪 胎 さ れ て 用 い ら れ て い る こ と は 明 ら か で あ る。 と す れ ば、 ﹃ 念 処 経 ﹄ の 記 述 を、 単 純 に 原 始 仏 教 本 来 の 四 念 処 と 見 る の は 危 険 で あ る こ と に ま ず 注 意 を 払 わ ね ば な ら な い。 次 に、 四 念 処 を 説 い た 経 典 全 体 を 見 渡 し た 時 気 づ か れ る の は、 各 経 典 の 内 容 に 増 減 が 見 ら れ る こ と で あ る。 多 く の 経 典 は ※の 記 述 の み で 出 て く る。 し か し 中 に は、 出 入 息 念 を 含 ん だ も の

(anapana-sati-s, miii-83, kmbila, sv-324; bnanda, sv-330ff. etc.)

や (ロ ) 行 住 坐 臥 等 の 如 実 観 察 を 含 ん だ も の ( m a h aparinibbana-s, Uii-94; gelanna, sv-211ff. etc.) が 見 出 さ れ る。 と い う こ と は、 本 来 ※の 如 く 簡 潔 に 記 さ れ て い た 四 念 処 に、(4)等 の 記 述 が 加 わ っ て、 や が て ﹃ 念 処 経 ﹄ の 形 に 至 っ た と の 推 定 も 成 り 立 つ。 く の よ う に し て 現 ﹃ 念 処 経 ﹄ に 至 る 経 緯 を 考 察 し た 時、 問 題 と な る の は ◎、 等 の 不 浄 観 の 記 述 で あ る。 こ の 身 念 処 中 の 不 浄 観 は、 従 来 重 視 さ れ て き た に も 拘 ら ず、 ﹃ 念 処 経 ﹄ 以 外 に は 全 く 説 か れ て い な い。 と す れ ば、 本 来 不 浄 観 は 四 念 処 と は 結 び つ い て い な か っ た 可 能 性 が 強 い と 思 わ れ る。 そ し て こ の こ と は、 長 部 ・ 中 部 と 編 輯 方 針 を 異 に よ る 相 応 部 の 構 成 を 見 れ ば よ り 明 ら か と な る。 相 応 部 は 関 係 す る 主 題 ご と に 短 経 を ﹁ 相 応 ﹂ と し て ま と め て い る が、 そ の 中、 四 念 処 は ﹁ 念 処 相 応 ﹂、 ﹁ ア ヌ ル ッ ダ 相 応 ﹂、 ﹁ 出 入 息 相 応 ﹂ に 多 数 説 か れ て い る。 そ し て そ こ で は (左)、 ◎等 の 記 述 と 関 説 さ れ て い る 場 合 が あ り、 殊 に 出 入 息 念 と 四 念 処 が 関 係 づ け ら れ て い る も の は 多 い。 と こ ろ が そ こ に は 不 浄 観 は 全 く 説 か れ て お ら ず、 ◎、 (爾)の 不 浄 に 関 係 す る 記 述 は、 四 念 処 と 関 係 の な い ﹁ 相 応 ﹂ に 入 れ ら れ て い る。 即 ち、 相 応 部 の 編 輯 意 図 に あ っ て は、 四 念 処 は 出 入 息 念 等 と 関 わ る こ と は あ っ て も、 不 浄 観 と は 関 係 し 得 な か っ た の で あ る。 こ う し た 流 れ は ア ビ ダ ル マ 文 献 に 於 て も 確 認 す る こ と が で き る。 今 そ の 代 表 例 を 挙 げ る と、 ﹃ 婆 娑 論 ﹄ 巻 二 六 に 於 て、 持 息 念 ( 出 入 息 念 ) を 説 く 中、 次 の よ う な 注 目 す べ き 問 答 を し て い る。 ﹁ 問。 何 故 契 経 説 三 持 息 念 通 二 四 念 住。 答。 此 能 引 訓 起 四 念 住 一故、 作 二 如 レ 是 説 噛 問。 不 浄 観 亦 能 引 目 起 四 念 住 噛 何 故 不 レ 説 一 四 念 住 一耶。 答。 亦 有 二 経 説 噛 此 不 浄 観 通 二四 念 住。 如 レ 説 下 若 観 二 青 滲 膿 欄 贔 食 等 事 一名 中 身 念 住 加 ⋮⋮問。 錐 四 此 一 経 説 二不 浄 観 通 二 四 念 住 一而 無 量 経 説 三 持 息 念 通 二 四 念 住。 非 二 不 浄 観 納 有 二何 意 一耶。 ﹂ ( 大 27一 三 四 b) こ の 後、 論 は 四 つ の 理 由 を 挙 げ て 不 浄 観 が 四 念 処 と し て 説 か れ な い こ と を 答 え て い る。 こ の 記 述 は、 ま さ に 上 来 の 筋 を そ の ま ま 裏 付 け る も の で あ り、 出 入 息 念 と は 対 照 的 に、 不 浄 観 が 四 念 処 と 関 わ り 難 か っ た こ と を 物 語 っ て い る。 こ の よ う に 見 て く れ ば、 ﹃ 念 処 経 ﹄ 中 の 不 浄 観 は 極 め て 問 題 を 持 っ た 記 述 で あ る こ と が 分 か る。 確 か に 後 代 に な れ ば 不 浄 観 と 四 念 処 は 深 い 関 わ り を 持 っ て く る が、 少 な く と も 原 始 仏 教 本 来 の 四 念 処 を 解 明 す る 際 に は、 不 浄 観 を 重 視 す る こ と は 寧 ろ マ イ ナ ス で あ る と 言 え よ う。 で は、 四 念 処 は い か な る 観 法 と し て 捉 え ら れ る べ き で あ ろ う か。 そ れ に つ い て は 別 稿 を 期 し た い。 ( 東 京 大 学 大 学 院 ) 四 念 処 に 於 け る 不 浄 観 の 問 題 ( 下 田 ) 一 三 一

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