容量制約を考慮した職住分布の均衡・最適配置問題
–
国内10
都市の実データに基づく分析例–
Equilibrium and Optimum Location Problem of Housings and Jobs with Constrained Capacity
– The Analysis of 10 Cities in Japan –宗政 由桐∗・本間 裕大∗∗・今井 公太郎∗∗
Yuki Munemasa
∗, Yudai Honma
∗∗and Kotaro Imai
∗∗ In this paper, we propose a new calculation method of equilibrium and optimum distribution of housings and jobs theoretically in the urban model with constrained capacity. When we formulate the problem, we adopt not only commuting travel cost, but working travel cost and discomfort cost caused by the density of each nodes. Moreover, we show that the problem will be quadratic programming problem using reformulation-linearization technique and we apply the urban model to 10 cities in Japan and estimate cost parameters with user equilibrium assignment model. Furthermore, we derive the optimum distribution and describe the characters of parameters and urban morphology’s change for forecasting urban future. Keywords: distribution of housings and jobs, constrained capacity, user equilibrium assignment, system optimum assignment, quadratic programming problem, reformulation-linearization technique 職住分布,容量制約,利用者均衡配分,システム最適配分,2 次計画問題,線形緩和法1
はじめに 本稿は,建物ノードに容量制約が付された都市モデルに おいて,通勤移動コスト,業務移動コスト,不快度コスト を考慮した職住分布の均衡配置および最適配置を理論的に 求める数理モデルを構築し,実空間に展開して各都市の職 住形態について分析することを目的とする. 都市の動態あるいはそれと関連する施設配置問題は,Von
Th¨
unen
の『孤立国』1)を主に起源とし,Weberの『工 業立地論』2),L¨osch
の『レッシュ経済立地論』3)など, 経済地理学・空間地理学の分野で発展を遂げてきた.こ れらの古典立地論を基として,Alonsoは『立地と土地利 用』4)をもって人口移動と人口分布を結びつけた数理モ デルを提案した.Alonsoは,これまで供給される財が都 市に集中するという概念から,Von Th¨unen
の理論を展開 させ人口流動によって都市の立地が形成されるAlonso
モ デルを作成した.その後空間相互作用モデルが体系づけら れ,当該モデルによって人口分布を導出する一連の手法がHarris-Wilson
5)のバランス・メカニズムをはじめとして 数多く提案されている.例えば円山ら6)は,職住の密度等 から就業地分布と居住地分布の同時形成をモデル化しては いるが,その手法は繰り返し計算を伴うものであり,一度 の処理によって均衡解が求まるモデルではない. 本稿は上述した空間相互作用モデルによる職住分布導出 の系譜に属する研究ではあるが,数理計画問題に帰着させ て一度の計算によって均衡解を導出する独自の手法を提案 している.また,都市における移動コストを考える際には, 通勤移動コストのみならず業務移動コストを明示的に考慮 しなければならないと考えられる.そのため業務移動コス トを取り込んだ都市モデルを提案し,2次計画問題として 定式化することを試みる.また,既往の研究においても職∗学生会員 東京大学大学院工学系研究科(The University of Tokyo)
∗∗正 会 員 東京大学生産技術研究所(The University of Tokyo)
住形態の導出において混雑度を不快度として考慮すること は必須であると考えられている7)が,本稿では建物ノー ドに容量制約というもっとも現実的な制約を付することで 不快度コストを考慮し,業務移動コストと不快度コストに よって都市がもつ特徴を描き出せると考えられる.ここで 言う不快度とは,1人当たりの専有面積が減少することに よる不効用や建設コストの高騰などを意味する.容量制約 は建物ノードに包含される人々の上限を設定することであ り,都市構造の改変には多大なエネルギが必要となるため, 既存の建物群を所与のものとした上で,均衡配置・最適配 置を求められることに意義があると考えられる. 均衡配置および最適配置の導出にあたっては,Wardrop が提唱した利用者均衡配分とシステム最適配分の
2
原則8) を用いて定式化を行い,それを実都市に当てはめて実証分 析を行う.なお本稿で用いる均衡配置とは利用者均衡配分 モデルによって求められ,都市モデルにおける人々がそれ ぞれ負担するコストをみな等しくなるよう配分した際の配 置とし,最適配置とは都市モデル全体での総コストを最小 化するときに求められる職住分布の配置のことを言う. 本稿の構成は以下の通りである.第2
章において都市モ デルを与え,通勤移動,業務移動および不快度の総コスト の均衡配分問題が数理計画問題と等価であることを明らか にする.また均衡配分問題および都市全体での総コストを 最小化するシステム最適配分問題が非凸2
次計画問題とな ることを示した上で,線形緩和法を用いて線型計画問題に 帰着させる.第3
章では実空間データから,就業地と居住 地の容量制約を算出し,都市内領域を再統合した上で領域 間・領域内それぞれの距離を導出する手法を記述する.第4
章では実証分析例として10
都市を対象とし,各都市にお けるパラメータの比較や,配分モデルの違いによる都市の変化について記述する.最後に職住分布の配置問題から得 られた知見および今後の課題について述べる(第
5
章).2
数理モデルの構築2.1
都市モデルI
個の建物ノード(1
⩽ i ⩽ I)
からなる就業地(W )
とJ
個の建物ノード(1
⩽ j ⩽ J)
からなる居住地(H)
を考え る.総人口はT (=
定数)であり他の都市間には流出入し ないものとみなす.ここで,利用者均衡配分モデル,シス テム最適配分モデルの定式化の準備として,T =
I∑
i=1 J∑
j=1t
hij(1
⩽ i ⩽ I, 1 ⩽ j ⩽ J)
(1)
w
i=
J∑
j=1t
hij(1
⩽ i ⩽ I), h
j=
I∑
i=1t
hij(1
⩽ j ⩽ J) (2)
を準備する.ただし,th ij はi
− j
間における通勤移動人 数,wiはノードi
における就業者数,hjはノードj
にお ける居住者数を表す.さらに容量制約のアイディアをモデ ルに導入すべく,以下の不等式群を仮定する:0
≤w
i≤ W
i(1
⩽ i ⩽ I)
(3)
0
≤h
j≤ H
j(1
⩽ j ⩽ J)
(4)
W
i, H
jはそれぞれ各ノードにおける容量を表す.2.2
利用者均衡配分モデル(UE
モデル) あるノードi
で就業する人があるノードj
に居住する場 合の各コストをそれぞれ求めた上でコストの均衡配分を行 う手法がUE(User Equilibrium)
モデルである.通勤移 動はi
− j
間においては往復し,i− j
間の距離をd
h ij と する.業務移動におけるi
− i
′間の移動頻度をα,業務移
動距離をd
w ii′ とし,dwii′= d
wi′i の対称性を仮定する.最 後に各ノードにおける密度からなる不快度コスト関数をz
iw(w
i), z
jh(h
j)
とし,容量制約に達した場合のペナルティ コストをそれぞれg
w i, g
hj とすると, 【通勤移動コスト】UE= 2d
hij(5)
【業務移動コスト】UE=
I∑
i′=1α
w
i′T
d
w ii′(6)
【不快度コスト】UE= z
iw(w
i) + g
wi+ z
h j(h
j) + g
jh(7)
となる.式(6)
において,1日に発生する各ゾーンから の業務移動は,移動頻度×
移動距離で求められる.こ こで,移動先の就業人数の比率で重み付けをした平均業 務移動距離は,i− i
′ 間の就業地間移動距離をd
w ii′ とす ると∑
Ii′=1d
w ii′(w
i′/T )
であるため,式(6)
のごとく定 義すべきことであることが判明する.また,zw i(w
i) =
β
wi Wi, z
h j(h
j) = β
hj Hj であり,βは不快度パラメータであ る.これらより,ノードi
で就業しノードj
に居住する人 が負うコストの総和C
ijは,C
ij= 2d
hij+
I∑
i′=1α
w
i′T
d
w ii′+ z
iw(w
i) + g
iw+ z
h j(h
j) + g
jh(8)
と表される.このとき,人々の均衡状態が満たされる場合 には以下の条件式が成立しなければならない9) 10):C
ij− C ≥ 0, t
hij≥ 0, t
h ij(C
ij− C) = 0
(9)
T =
I∑
i=1 J∑
j=1t
hij,
w
i=
J∑
j=1t
hij,
h
j=
I∑
i=1t
hij(10)
T
≥ 0, w
i≥ 0, h
j≥ 0
(11)
{
g
wi= 0
(w
i≤ W
i)
g
w i≥ 0 (w
i= W
i)
,
{
g
jh= 0
(h
j≤ H
j)
g
h j≥ 0 (h
j= H
j)
(12)
ただし,C
は都市モデルの最小移動・不快度コストである. 式(9)
のt
h ij(C
ij− C) = 0
はt
hij> 0
であれば人々が負 担するコストの均衡状態が保証され,Cij− C = 0
である ことを示している.逆にC
ij> C
の場合は,thij= 0
で なければならない.また式(12)
は容量制約に達した場合 のみペナルティコストg
w i, g
hj が正値をとることを意味し ている.ここで,式(8)
および条件式(9)∼(12)
を満足す る変数値を求めることは,次の数理計画問題(P)
と等価で ある:min.
F
UE=
I∑
i=1 J∑
j=12d
hijt
hij+
α
T
I∑
i=1 I∑
i′=11
2
d
w ii′w
iw
i′+
I∑
i=1∫
wi 0z
iw(x)dx +
J∑
j=1∫
hj 0z
jh(x)dx (13)
s.t.
w
i=
J∑
j=1t
hij(1
⩽ i ⩽ I)
(14)
h
j=
I∑
i=1t
hij(1
⩽ j ⩽ J)
(15)
T =
I∑
i=1 J∑
j=1t
hij(16)
0
≤ w
i≤ W
i(1
⩽ i ⩽ I)
(17)
0
≤ h
j≤ H
j(1
⩽ j ⩽ J)
(18)
0
≤ t
hij(1
⩽ i ⩽ I, 1 ⩽ j ⩽ J)
(19)
これは以下のことから証明される.数理計画問題(P)
に対 するラグランジュ関数を,ϕ(t, γ, λ
i, µ
j)
=
I∑
i=1 J∑
j=12d
hijt
hij+
α
T
I∑
i=1 I∑
i′=11
2
d
w ii′w
iw
i′+
I∑
i=1∫
wi 0z
iw(x)dx +
J∑
j=1∫
hj 0z
jh(x)dx
+ γ
∑
I i=1 J∑
j=1t
hij− T
+
∑
I i=1λ
i
∑
J j=1t
hij− W
i
+
J∑
j=1µ
j(
I∑
i=1t
hij− H
j)
(20)
とする.ただし,γ, λi
, µ
jはそれぞれ制約式(16)∼(18)
に関するラグランジュ乗数とする.t
∗が数理計画問題(P)
の最適解であるための必要条件は,Karush-Kuhn-Tucker 条件11)にまとめられており,条件を満たす解に対して,h
∗j= h
j, w
∗i= w
i, t
ijh∗= t
hij, γ = C, λ
i= g
iw, µ
j= g
jh とすると,これらは式(9)∼(12)
と等しくなる.以上のこ とから容量制約が付された都市モデルにおける移動・不快 度コストの均衡条件(9)∼(12)
は数理計画問題(P)
と等価 である.また,容量制約を超えた場合に付加されるペナル ティコストg
w i, g
hj は,条件式(17), (18)
に対するラグラ ンジュ乗数値に等しい.2.3
システム最適配分モデル(SO
モデル)SO(System Optimum)
モデルにおける各コストは,都 市モデルにおける総和を求めれば良い.通勤移動コストは, 【通勤移動コスト】SO= 2
×
I∑
i=1 J∑
j=1t
hijd
hij(21)
となる.業務移動コストを定式化するにあたって,就業地 間を移動する人数をt
wii′,業務移動頻度をα
としたとき,t
wii′:= α
·
w
i· w
i′T
(22)
と定義すると,業務移動コストは, 【業務移動コスト】SO=
I∑
i=1 I∑
i′=1t
wii′d
wii′(23)
=
I∑
i=1 I∑
i′=1w
iw
i′α
T
d
w ii′(24)
となる.また,都市モデル全体における不快度コストは, 【不快度コスト】SO=
I∑
i=1β
w
iW
iw
i+
J∑
j=1β
h
jH
jh
j(25)
であり,SOモデルにおける最小化するコストの総和は次 式の通りとなる:F
SO= 2
×
I∑
i=1 J∑
j=1t
hijd
hij+
I∑
i=1 I∑
i′=1w
iw
i′α
T
d
w ii′+
I∑
i=1β
w
iW
iw
i+
J∑
j=1β
h
jH
jh
j(26)
2.4
2
次計画問題としての定式化(I + J + I
× J)
次元変数ベクトルx
,(I + J + I× J)
次元定数ベクトルc
,(I + J + I× J)
次の正方行列Q
を 導入する.ただしそれぞれの要素を,x
k=
w
k(1
⩽ k ⩽ I )
h
k−I(I + 1
⩽ k ⩽ I + J )
t
h ij(otherwise)
(27)
c
k=
0
(1
⩽ k ⩽ I )
0
(I + 1
⩽ k ⩽ I + J )
d
h ij(otherwise)
(28)
Q
UEkl=
α 2Td
w kl+
δklβ 2Wk(1
⩽ k ⩽ I, 1 ⩽ l ⩽ I)
β 2Hk(I + 1
⩽ k ⩽ I + J)
0
(otherwise)
(29)
Q
SOkl=
α Td
w kl+
δklβ Wk(1
⩽ k ⩽ I, 1 ⩽ l ⩽ I)
β Hk(I + 1
⩽ k ⩽ I + J)
0
(otherwise)
(30)
とすると,UEモデル,SOモデルの目的関数F (x)
は式(13), (26)
から,F (x) = x
⊤Qx + 2c
⊤x
(31)
となる.ただし,δkl はKronecker
のデルタである.式(31)
は明らかに線型制約下における2
次計画問題である. いま,正方行列Q
が対称かつ半正定値性をみたせば,凸2
次計画問題となることで多くの解法が存在するが,式(29),
(30)
で導入した行列Q
は距離行列を含むため,一般には 半正定値性をみたさない.したがって本稿で提案する都市 モデルは,非凸2
次計画問題となる.2.5
線形緩和法 本節では2.4
で導出された非凸2
次計画問題を線形緩和 法を用いて緩和し,それぞれの解を求める手法を記述する. まず,以下の2
次計画問題(QP)
min.
f (x) = x
⊤Qx + 2c
⊤x
s.t.
Ax
≤ b, P x = q
(32)
を考える.問題(32)
におけるQ
は対称行列ではあるもの の,半正定値性をみたす必要はなく,そのため非凸2
次計 画問題も含まれている.このとき,x
∈ R
n, b
∈ R
m1, q
∈
R
m2, A
はm
1× n
行列,P
はm
2× n
行列とする.また, 問題(32)
における実行可能領域は空ではなく有界とする. ここで,新たな変数Y
ij= x
ix
j(1
⩽ i ⩽ j ⩽ n)
を導 入し,実行可能領域をD
,その凸包をco
D
とする.また,⟨Q, Y ⟩
を行列Q, Y
の内積と定義することで,問題(32)
に関連した次の問題が導入できる:min.
g(Y , x) =
⟨Q, Y ⟩ + 2c
⊤x
s.t.
(Y , x)
∈ coD
(33)
いま,問題(33)
の解が存在するものとし,その最適解を(Y
∗, x
∗)
とすると,問題(33)
の目的関数は線型であるこ とから,(Y∗, x
∗)
はco
D
の端点となり,Y
∗= x
∗x
∗⊤ となる最適解が存在する.したがって目的関数の値は問 題(32)
と等しくなる.また,coD
を近似する不等式群は,Sherali
ら12)によって生成できることが示されており,ま た以下の定理が成立する13).(Y , x)
∈ [D]
2 Lならばx
∈ D
である.特にx
がD
の 端点となっていればY = xx
⊤を満たす. つまり,(Y∗, x
∗)
を最適解とすれば,g(Y∗, x
∗)
はもとの2
次計画問題(32)
の下界値となり,また同時にx
∗∈ D
よ りf (x
∗)
は上界値を与え,またx
∗がD
の端点であれば, その値が問題(32)
の最適解となる.本稿で追求する目的 関数F (x)
は,明らかに問題(32)
で示した2
次計画問題(QP)
に含まれている.よって本稿では本節の線形緩和法 を用いてその最適解を追求する. 本稿ではUE
モデルの数理計画問題(P)
を解くに当た り,線型計画問題に緩和することでその解の導出を行う. ただし,線型計画問題には式(17), (18)
の条件式が明示的 に含まれておらず,したがって式(20)
のラグランジュ乗 数λ
i, µ
jを求めるためには,線型計画問題に式(17), (18)
を付与した双対問題を考えることによってラグランジュ乗 数値を導出することが必要であり,また双対問題を解くこ とによってラグランジュ乗数値が求められる14).3
実空間データ操作 本章以降では,三大都市圏を除く政令指定都市を中心に, 表-1に示す計10
都市に着目し実証分析を行う. 分析に供するデータとして,総務省統計局集計の平成22
年国勢調査から各都市の町丁目別の面積,座標,人口デー タを,平成24
年経済センサスから各都市の町丁目別の従 業者数データを,ZmapTownII 2008/09年度から各都市 の町丁目別の建物データ(延床面積,中心座標,建物種別) を使用した.後述する容量制約の導出に際して,各都市に おいて人口を一定にするために,総従業者数データが国勢 調査の総人口と等しくなるよう補正係数を掛け,従業者数 と居住人数が等しくなるよう補正を行っている.3.1
容量制約の導出 建物データの重心座標をそれぞれ求め,町丁目ごとに内 外判定を行って各建物がどの町丁目内に存在するかを割り 出し,延床面積を導出する.ZmapTownIIデータには階 数が2
以下の建物に関してはデータが与えられていない ため,算出にあたっては階数を1.5
階と近似して延床面 積を算出した.また,建築計画の一般的な形式基準を参照 し,一人当たりの必要面積を居住地は25m
2/人,就業地は
15m
2/人
15)と設定し,町丁目ごとに容量制約の人数を算 出する(就業地の容量制約については同じく補正済み):[容量制約]
w i=
町丁目毎の事業所総延床面積15m
2 (人)(34)
[容量制約]
h j=
町丁目毎の住居総延床面積25m
2 (人)(35)
3.2
都市内の領域統合 各都市の町丁目別の領域数は数百∼数千の規模であり, そのままでは変数および制約式が数千万規模となって解の 導出が極めて困難である.そのために問題サイズを小さく するために町丁目別に分類されているデータを統合して分 析を行う必要がある.領域データの統合の具体的な手順は 次の通りである.まず(i)
町目コードを用いた町丁目別か ら町目別への統合を行い,町目ごとに領域面積を算出し直 す.次に(ii)
町目領域の中で領域面積が最小のものを選出 し,当該領域と接している他領域の中で最小のものと統合 して複合町目領域を作成する.(iii)(ii)で行った操作を領 域数が20
になるまで統合を繰り返し,各都市における領 域数を20
に設定する.領域の統合において領域の各属性 は保持されたままであり,最終的な20
領域の属性は各操 作の統合データとなる.また,建物データに関しても内外 判定を行って領域に紐づけられたデータであるため,領域 統合によるデータの属性は保証される.3.3
領域間距離と領域内距離 本稿の都市モデルではノード間の距離が重要な要素とな るため,20に統合した領域間距離と領域内距離を導出する 必要がある.栗田16)によると,不定形領域間における領 域間距離の導出方法が示されているが,不定形を円と見な した場合でも近似式の精度は保証されている.また20
領 域に統合した場合の形状も大きな歪みは見られないことを 全10
都市で確認した.いま,2
つの重なり合わない円盤領 域があり,それぞれの中心をc
1, c
2とし,それぞれの半径 をr
1, r
2としたとき,領域間平均距離の近似式⟨L
1⟩
∗ccは,⟨L
1⟩
∗cc= h +
r
2 1+ r
228h
(36)
と表される.ただし,hはc
1, c
2間の距離であり,本稿で は異なる領域間距離の算出にあたり,領域を等面積の円と 見なした上で式(36)
を適用する.領域内距離を導出にお いては,半径r
1の円内に一様に分布する建物の2
点間の 直線距離をL
2とすると,次式のように定義される17):⟨L
2⟩ =
128r
145π
≃ 0.9054r
1(37)
本稿では同一領域内の距離の算出にあたっては,領域を等 面積の円と見なした上で式(37)
を適用する.4
10
都市における実証分析 以上の準備のもと,上述の10
都市において第2
章の都 市モデルによる実証分析を行った.計算機環境は,CPU:Intel(R) Core(TM)i7-3700K(3.50GHz),
RAM: 32.0GB
のPC
で,IBM ILOG CPLEX 12.618)を用いた.当該 ソフトウェアは数理計画問題に特化したソルバーであり, 本稿のモデルを適用するにあたり最適であると判断した.4.1
各都市のパラメータの散布図10
都市において現状の職住分布を推定するために,UE モデルを用いてパラメータα,β
の推定を行い,まとめた ものが図-1である.パラメータの推定において,α
は10.0
∼40.0の間で5
刻みで,β は150∼500
の間で50
刻みで 計算を行い,その残差平方和が最小となる値の周囲で,さ らにα
においては1
刻み,βにおいては10
刻みで計算を 行うことで推定値を算出した.図-1における都市名と併記 した数字は,10都市の総人口の順位である.図-1からは 都市の規模が大きくなればなるほどα,β
とも大きくなり 右上に分布し,規模が小さくなればなるほどα,β
とも小 さくなり左下に分布する傾向が示されている. 都市の規模が大きくなれば業務移動頻度が大きくなると いうのは示唆的である.今後,人口減少や就業形態の変化 がもたらす都市の時間変化を考えるにあたって,情報化社 会がますます加速することが予測されるが,「情報と交通が 補完関係にある場合には,人や物のモビリティは増加する」 ことが示されており,人や物がα
に包含されると考えるな らば,都市におけるα
は増加すると予想される.都市の規表- 1
10
都市のコストデータ km換算した各コスト 分析対象都市 (1人当たり) 札幌 仙台 新潟 静岡 神戸 岡山 広島 高松 徳島 熊本 【通勤移動コスト】UE 2.2 8.2 3.3 4.4 4.9 4.6 3.8 1.3 4.8 2.7 【業務移動コスト】UE 141.3 191.1 225.7 195.5 145.6 148.9 133.8 257.6 320.5 128.1 【不快度コスト】UE 5.2 13.0 16.3 12.5 13.7 9.3 11.1 21.1 30.8 11.5 【総コスト】UE 148.7 212.3 245.3 212.4 164.2 161.8 148.7 280.0 356.1 142.3 【総コスト】SO 135.8 208.6 240.8 203.6 163.4 160.5 148.7 276.1 343.6 142.3 総人口(人) 1,913,545 1,045,986 811,901 716,197 1,544,200 709,584 1,173,843 419,429 264,548 734,474 模に依らず,各都市においてα
が増加すると,βも高くな ることが予想され,不快度コストを考慮した都市形成,つ まり就業環境や居住環境をより考慮した都市形成が重要に なると考えられる.4.2
三角座標による都市の大局的特徴 各都市における通勤移動コスト,業務移動コスト,不快 度コストの割合を三角座標によってまとめたものが図-2で ある.図-2において各都市における1
人当たりの【総コス ト】UEの値を円状にて示している.図-2が示しているこ とは,都市内の人々がそれぞれ負担するコストが等コスト 原則に従った場合において,業務移動コストと不快度コス トの割合が,通勤移動コストに対して非常に高いことであ り,業務移動コスト≫
不快度コスト>
通勤移動コスト となる.特に日本の都市においては一般に,業務移動コス トの比率が高く,通勤移動コストは職住形態の形成におい て大きな要因とはならない.αは業務移動頻度を表してい るが,“頻度”として考えると推定されたα
の値として通 勤移動と業務移動がこれほど大きな差が生じるとは考えに くい.したがってα
は移動の重要度を表していると考えら れ,都市はその移動の重要度によって形成されていると考 えるのが妥当であろう.加えてα
と各都市の本社数(経済 センサス)と,βと平均地価(国税庁路線価図)を比較す ると,相関係数がそれぞれ0.764,
0.619
と強い相関がある ことが確認された.したがってα,β
は各都市における経 済規模や地価の差異を端的に描き出していることが示唆さ れる.これまで考慮されていなかった業務移動コストが, 職住分布の形成において非常に大きな比率を占めているこ とが明らかになり,また不快度コストにおいても通勤移動 コストよりも重要な要素であることが示されている点にお いて,本稿で提案している2
次項を考慮した都市内のコス トを定式化する手法は有益なツールとなることが分かる.4.3
最適職住形態とパラメータ変動による都市の変化UE
モデルを用いて現状の職住分布を推測されたパラ メータ値を用いて,SOモデルによる職住分布の最適配置 を導出する.UEモデルでは都市内の人々が各々の利益を 追求した状態を作り出しているが,SOモデルでは都市全 体のコストの総和を最小化するため,高齢化社会や持続可 能な都市へと改変させる際のコンパクトシティ型等への政 策提言の一指標となることと思われる.一例として,図-3 に徳島市の現状の職住形態((a), (d))
と均衡職住形態((b),
(e)),最適職住形態
((c), (f))
を示す.また表-1にSO
モ デルにおける1
人あたりの総コストを示す.なお,これか ら求められる10
都市の平均減少率は2.11%
である. 職住分布の最適配置では,就業地,居住地ともに市内に 分散して配置されていたものが集中することが分かり,都 市はコンパクトシティ型へと移行することが分かる.特に 就業地に関しては容量制約が大きな領域に集中して配置さ れ,その周囲を囲うように形成されている.居住地分布は 就業地ほど一極集中することはないが,すべての領域に分 散することはなく,不快度コストによる居住環境が居住地 形成の要因になっていることが分かる. 最適配置で用いたパラメータを変動させることにより, 都市の変化を記述することも可能である.具体的にはα,
β
および居住・就業人数を様々に変動させることにより, 今後の都市の変化が導出できる可能性がある.今後ますま す情報化社会が進展するとα
は増大すると予想され,また 既に高齢化社会に突入し三大都市圏を除く地方都市の人口 減少は今後35
年で61%
減少すると言われている.また空 き家率は年々増加し,2013年の統計では13.5%
にのぼる という結果が出ており,βは減少すると考えられる.都市 内の人口を減少させた場合における職住の最適配置を導出 することで,今後重点的に施設整備を進めるべき領域など を導きだす上でも有効な手法であると考えられる.5
まとめ 本稿では,建物ノードに容量制約を付した都市モデルに おいて,通勤移動コスト,業務移動コスト,不快度コスト を考慮した最適な職住形態を求める数理モデルを提案し, 実空間都市に拡張して10
都市における実証分析を行った. 数理モデルの提案に際してはコストの均衡配分問題および 総コストの最小化問題が非凸2
次計画問題であることを明 らかにし,線形緩和法を用いて線型計画問題へと緩和して 職住形態の均衡解を導出する新たな手法を整理した.また 実証分析では,各都市における現状の職住形態を導くコス トパラメータを推察し,そのコストから都市の最適な職住 形態を導出するためには,2次項として業務移動コストと 不快度コストを考慮することは不可欠であるという知見を 得た.その際,業務移動コストが総コストに占める比率が 大きいのは,実証分析で扱った10
都市が業務機能が一極に集積している地方の主要都市を対象にしていることも大 きな要因であると考えられる.今後の展開として地方の主 要都市に限らず,多様な都市規模を対象にすることも考慮 したい. 均衡解および最適解を算出するにあたり,本稿では線形 緩和法を用いたが,領域
[
D]
2Lが明らかに領域[
D]
よりも 大きいために,最適解の厳密性までは保証されなかった. 線形緩和法で導かれる下限値からの誤差は10
都市平均で9.35%
であったが,これは線形緩和法における理論的な下 限値が提案問題の最適解よりも低く見積もられる傾向が強 いためである.この問題に関しては凸計画問題の一種であ る半正定値計画問題(SDP: Semidefinite Programming)
を扱い,SDPを用いた非凸2
次計画問題の緩和 19)の手 法を導入することも今後の課題の一つである.また,現状 の職住形態を推察する際に用いた不快度パラメータを,就 業地・居住地ともに同値として扱っているが,就業形態と 居住形態を考えるにあたってはそれぞれの特性を考慮した パラメータの設定が必要であると考えられる.非凸2
次計 画問題の緩和法やコストパラメータの設定,また業務移動 コスト,不快度コスト以外に存在する都市内のコストをモ デルに組み込むことなどによって,都市内の職住形態をよ り精緻に分析することを今後の課題としたい. 謝辞 本稿で使用したデータは,東京大学空間情報科学研究センターの提供によ るものである.ここに謝意を表したい. 参考文献1) Von Th¨unen, J.H. (1826): The Isolated State.
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