• 検索結果がありません。

(1) 表色系とは 色を表す方法の 1 つです 色を表す とは 他の人と共通して理解できる形で色の名称や性質を示すということです 色を表す方法は 以下の 3 つに大別されます 1) 表色系何らかの秩序に基づいて色を配列し それらを記号や数値で表す 2) 言葉身近な事象や事物の名前を用いて表す 3)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "(1) 表色系とは 色を表す方法の 1 つです 色を表す とは 他の人と共通して理解できる形で色の名称や性質を示すということです 色を表す方法は 以下の 3 つに大別されます 1) 表色系何らかの秩序に基づいて色を配列し それらを記号や数値で表す 2) 言葉身近な事象や事物の名前を用いて表す 3)"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

■1: はじめに

この章で、改めて「色の表示」を学びます。 色の表示は、色彩検定の 3 級、2 級と、継続的に取り上げられてきたテーマの 1 つです。 ではこれまでに学んできたことを含めて、「色」の捉え方をを確認しておきましょう。 色の分類 有彩色 色相・明度・彩度の三属性を持つ →純色・明清色・暗清色・中間色に分類される 無彩色 明度のみを持つ 色の属性 三属性 色相 色み →色相環(色相を連続的な円環で示す) 明度 明るさ 彩度 鮮やかさ 色立体 三属性を立体(三次元)で表す 表色系 三属性を「規則的」に空間に配置するためのルールを定める 顕色系 知覚的に等しく感じられる間隔で表示 →「色票」で表示が可能 混色系 物理的な混色量で表示 →主に「数値」で表示 → 色の分類・整理・記号化などの基準を示すガイドラインを「色彩体系」という 色の表示 表色系に基づく 記号や数値で示す 3 級 ・PCCS 2 級 ・マンセル表色系 1 級 ・

XYZ

表色系 ・均等色空間 ・オストワルト表色系 ・NCS 言葉(色名)で示す 3 級 ・基本色名 ・系統色名 ・固有色名 ・慣用色名 2 級 ・JIS 物体色の色名 1 級 ・基本色彩語 ・ISCC-NBS ・JIS の光源色 現物で示す 色見本 1 級では、まず「XYZ 表色系」を学びます。 それに先立って、「表色系」について簡単に振り返っておきましょう。

(2)

(1)表色系とは、色を表す方法の 1 つです。 「色を表す」とは、他の人と共通して理解できる形で色の名称や性質を示すということです。 色を表す方法は、以下の 3 つに大別されます。 1)表色系 何らかの秩序に基づいて色を配列し、それらを記号や数値で表す 2)言葉 身近な事象や事物の名前を用いて表す 3)現物 色票や色見本などで表す (2)「表色系」は 2 つに大別されます。 1)顕色系 見えている色を、知覚的に等しく感じられる間隔で表す 色を見る側からの分類 2)混色系 作ろうとしている色を、原色の種類とその混合量で表す 色を構成する側からの分類 (3)これから学ぶ XYZ 表色系は、この「混色系」の代表格です。 XYZ 表色系は、色を精緻に、正確に表すことができる表色系です。 物体色でも光源色でも、すべての色を細かな差まで区別して数値で表すことができます。 そのため、いわゆる色彩の実務(生産現場や管理部門)での色の測定や、計算、記述などに広く用いられ、 今日の色彩科学や技術の基盤となっています。

(3)

■2: CIE XYZ 表色系

[⇒テキスト p42-46] では、XYZ 表色系を3つのステップを通して理解していきましょう。 □Step 1 : XYZ 表色系のしくみ □Step 2 :XYZ 表色系の色表示 □Step 3 :XYZ 表色系での色の求め方

□1: XYZ 表色系のしくみ

3 章の「光と色」で学んだ「グラスマンの法則」の第 1 法則「色の三色性」の考え方と共通します。 「色の三色性」は頭に入っているでしょうか? 「色の三色性」は、等色実験によって導き出されました。 下図のような装置を用いて、色光の三原色[R][G][B]を加法混色し、任意の光(試料光)[C]と等しく見える 色を作り出します。等色の状態を作り出せる 3 つの色光[R][G][B]の混合量の組み合わせは1つだけで、 この混合量によって、試料光[C]の成り立ちを表すことができます。 色光は、等色させることができれば何でもよいのですが、グラスマンは加法混色の原理を「法則」として示そう としましたので、何らかの「基準」を決めることが必要でした。そこで、その基準となる光を「すべての色を作り出せ、 かつ、他の 2 色から作ることができない」色光の三原色[R][G][B]と定めました。 XYZ 表色系は、この加法混色の原理に基づいて色を表します。グラスマンの法則と同様に、3 つの色ですべ ての色を表示することから、XYZ 表色系は、「三色表色系」の 1 つと言われています。 ●色の三色性 加法混色の三原色([R][G][B])の量を適切に調節して混色すれば、 すべての色を作り出すことができる。 *1 級テキスト P38 を参考に作図

(4)

では、この「三色表色系」で色を表すしくみについて見ていきます。 加法混色の三原色となる「色刺激」(色の感覚を引き起こす光)は[R][G][B]です。 これは「原刺激」と呼ばれます。 そして、ある「色刺激」(試料色[C])に等色させるために必要な原刺激[R][G][B]を混合する量、つまり 「混色量」はそれぞれR、G、B で表され、これは「三刺激値」と呼ばれます。 [R][G][B]それぞれの混色量R、G、B の色刺激全体を「1(100%)」で捉えたときの比率で表す際に用い られるのが「色度座標」で、それぞれr、g、bで表されます。比率ですので「r+g+b=1」となります。 この加法混色のしくみが、ほぼそのまま XYZ 表色系に適用されます。ただし、用いる記号は異なります。 グラスマンの法則

XYZ

表色系 原刺激 (色光・色刺激) [R]、[G]、[B] [X]、[Y]、[Z] 三刺激値 (混合量)

色度座標 (混合量の比率)

x

y

z

XYZ 表色系における X は赤み(R)、Y は緑み(G)、Z は青み(B)にそれぞれ対応しているのですが、R、G、B ではなく X、Y、Z という記号が用いられていることには理由があります。 加法混色の三原色である[R][G][B]の量を適切に調整すれば、すべての色を作り出せることをこれまで学ん できましたが、実際には『足し合わせる』だけでは作れない色が存在します。 その代表例が鮮やかな青緑です。 鮮やかさや明るさにもよりますが、「青緑」という色は、ほぼ均等な量の[G]と[B]の混色によって作られます。 光を重ねるということは、色を「明るく」します。つまり[G]と[B]を混色すると、[G]と[B]の単色光よりも明るく なる、つまり鮮やかさが低下します。よって、[G][B]を混色しただけでは、単色光と同等の鮮やかさを持つ青緑 という色を作ることができません。 ですが実際には、「鮮やかな青緑」と色は存在しますので、[R]、[G]、[B]を原刺激とした色を重ね合わせる のでは物理的に作れない色があることが分かります。 *1 級テキスト P39 を参考に作図

(5)

これは、色空間の中において、[R]、[G]、[B]を頂点とした領域の外にはみ出してしまう色が実際に存在する、 ということを意味します。はみ出しているということは、この青緑の場合[R]の混合量が 0 以下、つまりマイナスにな っていることを示します。 さらに、色度座標の視点から見てみると次のようなことが分かります。 [R]、[G]、[B]の混合量R、G、B の座標r、g、b は、r+g+b=1 という関係にあります。 この[R]、[G]、[B]で表せる最も鮮やかな青緑は、座標で示すと(r、g、b)=(0、0.5、0.5)です。 ですが、これは実際には最も鮮やかな青緑ではありません。 この[R]、[G]、[B]で作り出せる範囲をはみ出している色というのは、b やgの値(混合量)がもっと大きい はずで、そうなると、r の値がマイナスにならない限り、r+g+b=1 にはなりません。 このように、[R]、[G]、[B]を原刺激としている以上は、「マイナスの値」を持たなければ作り出せない色が 存在してしまいます。ですが実際には、色を混合して作り出す際に「0」以下の量を用いるということはありません。 よって、マイナスの値を用いないで、すべての色を作りだす原刺激が必要になりました。 そこで、[X]、[Y]、[Z]を便宜的に原刺激として定めるに至ったのです。 ただし、あくまでも[X]、[Y]、[Z]は、[R]、[G]、[B]の原刺激では作り出せない領域の色を、マイナスの値 (混合量)を用いずに表示するために作られた仮想の色刺激です。この[X]、[Y]、[Z]のそれぞれは、単色光と しては物理的に存在しません。あくまでも、実在する 3 原色は[R]、[G]、[B]です。 このように[X]、[Y]、[Z]は物理的には存在しない虚構の色のため、「虚色」と呼ばれます。 *1 級テキスト P42、43 を参考に作図

(6)

□2: XYZ 表色系の色の表し方

では、XYZ 表色系の色の表し方を具体的に見ていきましょう。 ◆1.色度座標と xy 色度図 XYZ 表色系は、原刺激[R]、[G]、[B]の色光を用いた等色実験によって得られた、それぞれの混合量 R、G、 Bに数値的な変換を施して構築された表色系です。XYZ 表色系の原刺激[X]、[Y]、[Z]に対応する三刺激値 X、Y、Z は、[R]、[G]、[B]の三刺激値 R、G、Bに対応して、R →X、G →Y、B →Z に変換されるというしくみ になっています。 (もう少し正確にいうと、X は「赤み」、Y は「緑み」と「明るさ」、Z は「青み」を表します。「明るさ」については、 後ほど説明します) R、G、Bにも共通して言えることですが、三刺激値の X、Y、Z は、混合する「量」であるため、その値を見た だけでは、それがどのような色なのか、直感的に判断することが難しいです。 そこで、全体を「1」としたときの X、Y、Z の比率(混合量の比:混合比)で色を表すことにしています。 この比率を示す数値は、「色度座標」と呼ばれます。 色度座標は、色を構成する原刺激の混合量全体を「1」としたときの、それぞれの原刺激の混合量の割合 (混色比)を示します。 混色比は xyz で表されます。小文字が使用されているのは三刺激値を示す大文字の X、Y、Z と区別を するためです。 xyz には以下の関係が成り立ちます。 そして、人間の眼で捉えることができる可視範囲の色について多くの等色実験を行い、得られた色度座標を 平面上にプロットしたのが、「xy 色度図」です。xy 色度図は、x の値を横軸に、y の値を縦軸にとった平面上に、 数多くの色の「色度座標」を集めた図と言えます。

・x+y+z =1

・x=x+y+z y=x+y+z z=x+y+z x y z

(7)

図の[C1]は、[X]を x、[Y]を y1、[Z]を z1の比率で混合した結果できた色光です。 左の図では立体の空間に色度図を置いていますが、色度図自体は平面で表されます。 xyz の3つの座標で表そうとすると、三次元の空間で色を表さざるを得ません。 ですが「x+y+z=1」の関係が成り立っていますので、x と y の値が分かれば、z の値も分かります。 また、x と y の値から、その色の傾向を大まかに捉えることができます。 ●

の値が大きいほど、赤みの成分が多く、小さいときは赤以外(緑、青)の成分が多い。 ●

の値が大きいほど、緑みの成分が多く、小さいときは緑以外(赤、青)の成分が多い。 ●

y

のどちらの値も小さいほど、青みの成分が多い。

(8)

◆2.XYZ 表色系における色相 XYZ 表色系における色相の様子は、xy 色度図を見るとよく分かります。 (以下の図は、色度図内の色を塗っていませんので、テキスト 45 ページの図 8 も参照してください) 色度図は、アイロンの底のような形をしています。色相に関連する特徴は次のとおりです。 ●曲線部分に、スペクトルの色である単色光の色度(混合比の割合)が、波長の順に並んでいる 曲線部分は「スペクトル軌跡」と呼ばれます。 (スペクトルについては、先のグラスマンの法則で復習をしましたね) この軌跡の右端が、可視波長の中での長波長側の端、軌跡の左端が短波長側の端となります。 ●右端と左端を結んだ直線部分には、長波長(赤)と短波長(青)の混合光の色度が並んでいる 直線部分は「純紫軌跡」と呼ばれます。 スペクトルには存在しませんが、人間が知覚することのできる「紫」の系統の色を示すものです。 長波長から短波長の両端を繋いで色相環を作ることと考え方は共通しています。 各色相の最も鮮やかな色の座標をプロットしたのが「スペクトル軌跡」と「純紫軌跡」です。 この線の外にはみ出す色はありません。 線外にあるとすれば、それは原刺激[X]、[Y]、[Z]のような虚色、つまり存在しない色です。 *1 級テキスト P45 を参考に作図

(9)

◆3.XYZ 表色系における彩度と明度 ◇1.彩度 この色度図から見て取れるように、色度座標の xyz の値のいずれかか、またはこの中の 2 つの比率が 「0」に近いほど線上に近づき、彩度の高い色となります。 このことは、色度図のほぼ中央にある「白」を示す部分の座標を見ると分かりやすいと思います。 加法混色の原理に照らしてみると、原刺激を同量ずつ混色すれば白になります。 混合量の比率である xyz がほぼ同じ値となるのは「1÷3=0.3333」です。 色度図の中心付近である x=約 0.33、y=約 0.33 の領域は「白色点」とよばれます。 白は無彩色ですから、この白色点に近づくほど彩度が低くくなる、ということは想像できますね。 これらが理解できれば、もし色度図がフルカラーで表示されていなくても、座標値から色のイメージを想像し やすくなると思います。 ●彩度の考え方 「スペクトル軌跡」と「純紫軌跡」の線上に近づくほど彩度が高く、 「スペクトル軌跡」と「純紫軌跡」の線から離れ、中心に近づくほど彩度が低くなります。 ・780nm 付近の鮮やかな赤 x=約 0.72、 y=約 0.28、 z=0.0 ・570nm 付近の鮮やかな黄 x=約 0.44、 y=約 0.56、 z=0.0 ・380nm 付近の鮮やかな青紫 x=約 0.17、 y=0.0 z=約 0.83 *1 級テキスト P45 を参考に作図

(10)

◇2.明度 色度座標と xy 色度図では、色相と彩度は分かるにしても、明度までは分かりません。 「白色点」といっても、「白」を示すのでなく、「無彩色」であることを示しているにすぎないのです。 よって、たとえばマンセル値 N=4.0 も、N=7.0 も、色度図の上では同じ位置で示されることになります。 そこで、明度を表す概念が必要になってきます。これが[Y]の持つもう一つの役割です。 たとえば、以下のC1、C2という色の X、Y、Z (原刺激の混合量)と xyz (混合比)を見てみましょう。 X (混合量) Y (混合量) Z (混合量) 明るい灰色 (C1) 90 90 90 暗い灰色 (C2) 20 20 20 x (混合比) y (混合比) z (混合比) 0.33… 0.33… 0.33… 混合比はいずれも xyz とも 0.33…で、色度図上ではほぼ中心の白色点付近にプロットされます。 色度図の上で示されるのはあくまでも混合の比率です。よってC1もC2も同じ値となります。 ですが、実際に混色されている光の量は、C1とC2では大きく異なります。 このときのC1の Y の値は 90 で、C2の Y の値は 20 です。 光の量が多いほど、色は明るくなります。 混合比が同じであれば、Y の値が高いC1の方がC2よりも明るい色であることが分かります。 有彩色でも見てみましょう。 X (混合量) Y (混合量) Z (混合量) 明るい青緑 (C3) 10 40 50 暗い青緑 (C4) 1 4 5 x (混合比) y (混合比) z (混合比) 0.1 0.4 0.5 混合比は同じなので、色相・彩度も等しくなりますが、Y の混合量はC3の方が大きいです。 よって、C3の方がC4よりも明るいということが分かります。 このように、XYZ 表色系では、Y の混合量の値によって明るさを示すことができます。 そのため、XYZ 表色系では 「Yxy」で色を表示することが多いです。 Yxy : (Y は「視感反射率」(明るさ)を表し、 x と y は混合比(色度座標)を表します)

(11)

つまり Y は、緑みの原刺激[G]の量とともに、同じ混合比を持つ色における明るさも表す値なのです。 視感反射率とは、物体に当たった光の全体量に対して、どれくらいの量が反射して視覚で感じることができ るか、という割合を意味します。透過性のある物体はさておき、光は物体に対して反射または吸収のいずれ かとりますので、「反射する率が高い=Y の値が大きい」ほど明るい、ということになります。 (反射する率が高い白は明るく、ほぼ吸収する黒は暗い、ということをイメージすると分かりやすいですね) 以上が XYZ 表色系の色の表し方です。 なお、マンセル表色系やこの後に学ぶ「NCS」という表色系の各色票は、XYZ 表色系における Y、x、y の値が 細かく求められており、色の表示に互換性があります。

(12)

□3: XYZ 表色系での色の求め方(測り方)

では最後に、色の性質を決める三刺激値 X、Y、Z をどのように求めるのか(測るのか)、という点を学びます。 ここでも 3 級の「光と色」の学習からずっと登場している「色を見るための 3 つの要素」が関係します。 たとえばこのリンゴの色の三刺激値を求めるとします。 三刺激値 X、Y、Z は、この 3 つの要素の性質や値が分かれば求められます。 一般的に三刺激値を求める対象となるのは「物体」ですので、他の 2 つの要素の基準を定めておくことが必要 です。 ◆1.「光源」の基準 色の観察・測定には「標準イルミナント D65」を使用するのが一般的です。 標準イルミナント D65は、平均的な自然昼光(紫外域も含む各波長の光を平均的に含んだ光源です。 (3 章「光と色」の「測色の照明」で学びましたね) 測色については 5 章「色彩の実務」で詳細を取り上げますので、この段階では「標準イルミナント D65」が、光 源の基準であることを把握しておけば充分です。 ○「光源」は観察対象であるリンゴを照明する光です。 分光分布によって色の性質が分かります。 ○「物体」は観察対象であるリンゴそのものです。 分光反射率(または分光透過率)によって色の性質が分かります。 分光反射率(透過率)は、その物体がどの波長をどれだけ反射(透過)するか または反射(透過)しないかを示すものです。 5 章「色彩の実務」の「測色」の項目で学ぶ「測色計」という機器で測ることができます。 ○「視覚」は観察対象であるリンゴを見る人間の眼の感度です。 測色計で色を測定する際は、その機器の感度を指します。

(13)

◆2.「視覚」の基準 「視覚」は以下 2 点の影響を大きく受けます。 (1)誰が見るか 3 章の「色覚特性」で見たとおり、眼の感度は人によって異なります。 (2)どのように見るか 以下のような状況の変化によって見え方は異なります。 ・「遠くから見る/近くから見る」、「大面積で見る/小面積で見る」といった対象物と視覚との関係 ・背景の色などの対象物以外のものと視覚との関係 この点も光源と同様に 5 章「色彩の実務」の「測色」の項目で学びますが、XYZ 表色系を作り出した CIE では 「視覚」について以下の基準を設けています。 ◇1.CIE 標準観測者 (誰が見るか/眼の感度) 「CIE 標準観測者」という資格を持つ人物がいる、というものではありません。 CIE 標準観測者とは、一般的な人の色の見え方の標準的な感度を示す「関数」で、「等色関数」とも呼ばれ ます。いわば人間の色覚に関する特性を標準化した関数で、x(λ)、y(λ)、z(λ)のように表されます。 ◇2.視角 (どのように見るか/観察の仕方) 「視角」とは、瞳孔の上端と下端のそれぞれから物体までを結ぶ 2 本の線が成す角度のことです。 視角の大きさによって以下2つの基準があります。 正確に言うと、視角の小さい 2 度視野で「XYZ 表色系」の三刺激値 X、Y、Z を求めるときに用いられるのが 「CIE 標準観測者」です。 これに対して、視角の大きい 10 度視野では「CIE 補助標準観測者」が用いられ、このとき求められた三刺激値 X、Y、Z から得られる表色系は「X10Y10Z10表色系」と呼ばれます。 x(λ):長波長の光に対する感度 y(λ):中波長の光に対する感度 z(λ):短波長の光に対する感度 ●2 度視野(視角が小さいとき) 50cm 離れた処から 直径約 1.7cm の物体を見る視野角です。 ●10 度視野(視角が大きいとき) 50cm 離れた処から 直径約 8.8cm の物体を見る視野角です。

(14)

このような視覚の条件を揃えて初めて、三刺激値を求めることができるのです。 ちなみに XYZ 表色系は、物体・光源のいずれの色も表示できます。 テキスト 46 ページを見てみましょう。 ここでは代表的な色再現方法である「テレビモニタ」「網点印刷」の色域が xy 色度図上に示されています。 テレビモニタは色光の重ね合わせで色再現をしますので、三原色は R、G、B です。 その R、G、B の色度座標を頂点とした三角形の内側が再現可能な色の領域となります。 これに対して網点印刷は、色料・塗料という物体の重ね合わせで色再現をしますので三原色は C、M、Yです。 C、M、Y の色度座標と、それぞれ 2 色を混ぜ合わせたときの色度座標の計 6 色を頂点とした六角形の内側が 再現可能な色の領域となります。 この2つを比較すると、網点印刷よりもテレビモニタの方が、色の再現域が広いことが分かります。

(15)

■3: 均等色空間と L

*

a

*

b

*

色空間

[⇒テキスト p47-49]

□1: はじめに

[⇒テキスト p47] XYZ 表色系は、物体色と光源色のいずれにおいても、原色つまり原刺激の混合量や混合比で正確に色を 表すことができる万能の表色系にように見えますが、少なくとも2つの弱点があります。 すでに感じているかもしれませんが、Y、x、y の値を見ただけでは、どのような色であるかをイメージすることが 難しいです。たとえばテキスト 46 ページの図 11 に示されたマンセル表色系の表示値と比較すると、その差は歴 然としています。 このとき、XYZ 表色系の表示値から少なくとも以下を読み解かなければ、「鮮やかな赤」であることが 分かりません。 よほど XYZ 表色系の扱いに慣れた人でなければ、直感的に色を特定するのはかなり難しいでしょう。 色度図では、緑系の色の領域がとても広くなっています。 この緑系の色の領域内にある A1と A2と、他の領域にある B1と B2は、色度図上での距離は同じです。 つまり表色値としての差は同じです。 ですが、A1と A2の 2 点は同じ緑系の色域に収まっているのに対し、B1と B2の 2 点は色相まで異なります。 (B1の紫と B2の青は同じ色相であるとは知覚できません) ●弱点1 表示値を見ただけでは、どのような色であるか直感的に分かりにくい ○「鮮やかな赤」を表すと・・・・ ・マンセル表色系 5R 4/4 ・

XYZ

表色系 Yc(%)=11.70、 x=0.5734、 y=0.3057 ●弱点2 2つの任意の色の差が、人の知覚する差で表されていない (1) Yの最大値は 100(%)であることを考えると、この色はあまり明度が高くない。 (2) z =0.13 程度であることから、混合比としてはx が最も大きいので赤みの強い色である。 (3) 無彩色を示す「白色点」では、x、y、z の値がいずれも 0.33 程度である。 x がおよそ 0.57、z がおよそ 0.13 であるので、この色は白色点からは離れた位置にある。 よって鮮やかさが強い色である。

(16)

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。 それは、この色度図の土台となっている XYZ 表色系が「顕色系」でなく「混色系」に属するからです。 XYZ 表色系の xy 色度図は、色の混合比の値である色度座標を数多く集めて「面」にして表しています。 あくまでも「混合比」という数値の集合体を示しているだけですので、図上の色どうしの距離の差と、私たちの 知覚する色の差は、必ずしも一致しません。そのため、先ほどの A1と A2や B1と B2のようなことが起きるのです。 また、色度図を平面上で見ている限り、色相と彩度は分かっていても、明度を一見することはできません。 その点からも、人間の「知覚」のために作られた表色系ではないことが明らかです。 そのために、「2 つの弱点」が露わになってしまいます。 そこで考えられたのが、XYZ 表色系のしくみを用いながら、知覚的な色の差も表せる「均等色空間」です。 ●「顕色系」の場合 私たちが見ている(知覚している)色の特性に基づいて、色を分類したり配列したりするので、 「表示値や色立体上に表示される位置の差」が、知覚している色の差に一致します。 ●「混色系」の場合 色の成分たる原色(色刺激、原刺激)の種類と、その混合量で色を表すため、 そもそも見た目のうえでの色の差と数値の差を一致させるという観点で作られていません。 *1 級テキスト P47 を参考に作図

(17)

□2: 均等色空間とは

[⇒テキスト p47-48] 均等色空間では、色の差が知覚的に同じと感じられれば、どの色でもほぼ一定の距離で示されるように、また、 明るさの差も知覚的な差に対応するように、XYZ 表色系の色表示を変換して表せます。 では、その具体的なしくみを見ていきましょう。 ◆1.マックアダム楕円 均等色空間の考え方の土台を築いたのはマックアダムです。 マックアダムは、まず初めに以下の事実を明らかにしました。 マックアダムは、等色実験によって、xy 色度図上で「色の違い=色の差」が区別できない色の領域を特定しま した。 xy 色度図は、XYZ 表色系における原刺激[X]、[Y]、[Z]の混合比である色度座標の集合体です。 その成り立ちを遡ってみると以下のように捉えられます。 XYZ 表色系の生みの親である等色実験によって、XYZ 表色系の弱みを明らかにするということは、ある意味 で理にかなっていると思われます。 マックアダムの実験結果を xy 色度図の上に落とし込んだのが「マックアダム楕円」です。 (「マックアダム偏差長円」とも呼ばれます) マックアダム楕円の中心つまり十字の交点と、それを軸とする楕円の内側にある色は、ほぼ等しく見えます。 色度図上の各所に示された楕円たちを見比べてみると、大きさがまったく均一ではありません。

十字の直線の両端が、xy 色度座標の値の差(x、y の値の差)を示すのですが、y の値が大きい領域では楕円 が非常に大きく、y の値が小さい領域で小さくなっています。

xy

色度図の上での距離と、人間が知覚する色の距離感は一致しない

xy

色度図は、可視範囲にある多数の色の色度座標の集合体である → 色度座標は、

XYZ

表色系の三刺激値の混色比である →

XYZ

表色系はグラスマンの第 1 法則である「色の三色性」に基づいて作られている → グラスマンの法則は、数多くの等色実験によって導き出された [R]、[G]、[B]の色光の加法混色の法則である

(18)

先ほどの色 A1と A2、と B1と B2の例を当てはめてみると、y の値が大きい領域にある A 付近の楕円は大きく、 この楕円の中に納まっている A1と A2はほぼ同じような色(緑)と知覚されます。 これに対して B 付近の楕円は小さく、B1と B2が異なる色と感じられるのは明らかです。 つまり、xy 色度図上の領域によっては、同じ色の差に見える 2 点の間の距離が大きく異なって示されている、 ということになります。y の値が大きい領域では同じように知覚される色の範囲が広く、y の値が小さい領域では、 同じように知覚される色の範囲が非常に狭いのです。 こうして、xy 色度図は色の差の表示が均等ではなく、人が知覚したとおりにはその差を把握できないという ことが明らかになりました。また、明るさの要素である Y についても、知覚的に均等ではないと分かっています。 XYZ 表色系における色刺激の混合比を平面図で示す xy 色度図が、このような構造を持っていますから、そも そも XYZ 表色系を用いて任意の色の座標値を比較して、知覚の上での色の違いを特定することには無理があ ります。 そこで、知覚的に色の(色相、明度、彩度)の差が同じであれば、どの領域の色でもほぼ同じ距離で示せる ようにするために、XYZ 表色系を変換して別の方法で表す必要に迫られました。

それが「均等色空間(UCS:Uniform Color Space)」です。

(均等色空間には、L*a*b*(エルスターエースタービースター)色空間や、L*u*v*(エルスターユースターブイスター)色空間など

があります。1 級では産業界で多く用いられているL*a*b*色空間について学びます)

(19)

□3: L

*

a

*

b

*

色空間とは

[⇒テキスト p48-49]

L*a*b*色空間は、特に産業界で幅広く用いられている均等色空間です。

L*a*b*色空間で表記される表色系を、「L*a*b*表色系」と言います。XYZ 表色系から、L*a*b*表色系への色表 示の変換式は、JIS に規定されています。JIS は、マンセル表色系の H V/C の値と XYZ 表色系のYxy の値 との対応表も示していますので、結果としてマンセル表色系とL*a*b*表色系も互換性があるといえます。 では先ほど触れた「XYZ 表色系の弱点」を、L*a*b*色空間がどのように解決するか見ていきましょう。 L*a*b*色空間は、次の図のように、球体の三次元空間で表されます。 (テキスト 48 ページの図 14 も併せて参照しましょう) この空間の中で、見た目のうえで(知覚的に)均等になるように色が配置されています。 縦軸が明るさ、横軸が色相と彩度を示します。 ●球体の三次元空間で表されます。 ●見た目のうえで(知覚的に)均等になるように色が配置されているため、 知覚的に捉えられる物体の色の差、色の違いを捉えるのに適した表示方法です。 ●物体色の色表示のみで用いることができます。 ●XYZ 表色系の弱点1 表示値を見ただけでは、どのような色であるか直感的に分かりにくい *1 級テキスト P49 を参考に作図

(20)

◆1.明るさを示す縦軸:

L

* ・L* は、「明度指数」と呼ばれ、XYZ 表色系の三刺激値の Y にあたります。 ・空間上では縦軸となり、明度を表します。(この形は、これまで見た色立体などと共通しますね) ・L* は最も暗い黒を 0、最も明るい白を 100 として、0 から 100 の数値で表されます。 ◆2.色相と彩度を示す横軸:

a

*

b

* ・a*と b*は「クロマチック指数」と呼ばれます。 ・空間上では直角に交差する横軸となり、色相と彩度を表します。 ・a*と b*の記号が色相を示し、a*と b*の数値が彩度を示します。 テキスト 48 ページの図 16 を見てみましょう。 a*と b* で色相と彩度を表すしくみは、色空間を水平に切った断面図で見ると分かりやすいです。 水平ということは、L* の値が等しいことを示します。つまり図 16 で示された色空間の断面図は、同じ明るさの 色と感じられる色が並ぶ「等明度面」と同じ概念です。 色相と彩度の捉え方を、もう少し具体的に見てみましょう。 ● a* の値が「+60」のとき このとき、b* の軸は「0」以外の値をとれません。 よって、黄みも青みもない、最も鮮やかな赤と知覚される色は、a*=「+60」で表せます。 これと同様に a*=「-60」は鮮やかな緑、b*=「+60」は鮮やかな黄、b*=「-60」は鮮やかな青となります。 ● a* の値が「+30」のとき ・b* の軸が「0」 → 黄みも青みもない彩度が中程度の赤となります。 ・b* の軸が「30」 → 赤みと黄みが同じくらい感じられる、彩度が中程度の橙となります。 ・b* の軸が「-50」 → 赤みより青みが強く感じられる、彩度の高い青紫となります。 マンセル表色系で明度を示す Value の値が、最も明るい白で「10」ですから、 マンセル表色系の明度を 10 倍した数値が、L*a*b*色空間の明度指数とほぼ同一になると考えられます。 ここからもマンセル表色系との互換性や対応の良さが伺えます。

a

*

b

* による色相と彩度の捉え方

a

* は赤-緑方向に色相を示します。+

a

* は赤、-

a

* は赤の補色にあたる緑です。

b

* は黄-青方向に色相を示します。+

b

* は黄、-

b

* は黄の補色にあたる青です。

a

*

b

* の両方の値が「0」となる円の中心は、無彩色を表します。 この中心から円の外周に向かうにつれて、彩度が高くなります。 ○

a

*

b

* も、円の中心である「0」を中心に、「+60」から「-60」の値をとります。

(21)

ここにL* の値を特定できれば、三属性で色を捉えることは容易です。 たとえば a* の軸が「+30」、b* の軸が「-50」、L* の軸が「50」であれば、中明度の青紫であると分かります。 このように、L*a*b*色空間の色の表示では、どのような色であるか大まかに予測できるしくみになっています。 色相

a

* (赤-緑)の値が+か-か /

b

* (黄-青)の値が+か-か 彩度

a

*

b

*のそれぞれの値が 0 に近いか /60 に近いか 明度

L

* の値が 0 に近いか /60 に近いか まとめると、「L*a*b*色空間」とは以下のような表色系です。

L

*(明度)

a

*(赤-緑方向の色相と彩度)

b

*(黄-青方向の色相と彩度) を知覚的に表す

色空間

これで XYZ 表色系の弱点を、1つ解決することができました。 ではもう1つの弱点についても、解決策を見ていきましょう。 L*a*b*色空間を先ほどよりさらに単純化した次の図を見てみましょう。 この空間上にある任意の色F1とF2を例に、色の差の捉え方を確認していきます。 ●XYZ 表色系の弱点2 2つの任意の色の差が、人の知覚する差で表されていない *1 級テキスト P49 を参考に作図 ○F1: L*=60、a*=30、b*=-45 ○F2: L*=80、a*=50、b*=-15

(22)

この図から、以下のようなことが読み取れます。 ⇒F1のL* は 60、 F2のL* は 80 なので、F1よりF2は明度が高く、その差は明度指数で 20。 ⇒F1はa*が+(赤)の方向で、b*が-(青)の方向で、a*よりb*の値が高い。 a*b* の値の差はクロマチック指数で 15。よって、F1は「やや青みの強い赤紫」である。 ⇒F2はa* が+(赤)の方向で、b* が-(青)の方向でb* よりa* の値が高い。 a*b* の値の差はクロマチック指数で 35。 よって、F2は「F1よりも青みがクロマチック指数で言うと 20 強い紫」である。 この2つの色のそれぞれの属性における差は、以下のように求められます。 ちなみに⊿(デルタ)は色差を表示する記号です。 L* :[60]-[80]=[20] →⊿L* =20(L*の差) (⊿L* :デルタエルスター) a* :[30]-[50]=[20] →⊿a* =20(a*の差) (⊿a* :デルタエースター) b* :[45]-[15]=[30] →⊿b* =35(b*の差) (⊿b* :デルタビースター) そして、このF1とF2の「色全体」の色の差、つまり色空間における 2 色の間の距離は、⊿E*ab(デルタイースタ ーエービー)で表されます。 色の差については、5 章「色彩の実務」の「測色」で学びますが、工業製品の色彩管理(塗料、家電、テキスタ イルなど)などの場面で特に重要視されています。製品の仕様として定められている色が、実際にできた物で適 切に再現されているかを確認する際に、色の差を正確に捉えることが必要です。 どの程度の差まで許容できるかという範囲は、対象物の性質や色を管理する人たちの意向や仕様、規則など により異なりますが、最も厳密な工業用塗料の調色において 0.4 から 0.8 とされています。 色の差⊿E* abの算出式もあまり難解な構造にはなっていませんが、何よりも色空間上の 2 点の距離を見れば、 その色の差が大きいか小さいかを直感的に判断できますので、L*a*b*色空間が知覚的な色の差を把握するの に優れたものであることが分かります。 こうして XYZ 表色系の 2 つめの弱点も克服することができました。 ○縦軸:

L

*について

L

*が「100 に近づく=空間の上に位置する」ほど明るい。 ○横軸:

a

*

b

*について

a

*は、+の方向で値が高いほど赤みが強く、-の方向で値が高いほど緑みが強い。

b

*は、+の方向で値が高いほど黄みが強く、-の方向で値が高いほど青みが強い。 ⊿E* ab= ( ⊿L* 2 + ⊿a* 2 + ⊿b* 2 ) 1/2 (L1*- L2*) (a1*- a 2*) (b1*- b 2*)

参照

関連したドキュメント

に関して言 えば, は つのリー群の組 によって等質空間として表すこと はできないが, つのリー群の組 を用いればクリフォード・クラ イン形

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

Nintendo Switchでは引き続きハードウェア・ソフトウェアの魅力をお伝えし、これまでの販売の勢いを高い水準

つの表が報告されているが︑その表題を示すと次のとおりである︒ 森秀雄 ︵北海道大学 ・当時︶によって発表されている ︒そこでは ︑五

“〇~□までの数字を表示する”というプログラムを組み、micro:bit

彩度(P.100) 色の鮮やかさを 0 から 14 程度までの数値で表したもの。色味の

基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として決定するも