天空率取り扱い基準の問題点の指摘
天空率を解析する手法として知られる仕様は発表順に東京都:横浜:仙台:大阪:名古屋市:豊中市:枚 方市が存在します。これらの仕様は天空率の運用にあたり一定の基準となりおおきな貢献をした事はまぎれ もない事実ですが、中途半端な記述は混乱の元にもなっております。これらの異なる解釈がおこる要因を当 方で検討した結果、下記の事項があいまいであり、これらを共通認識として確立する事により天空率の運用 がスムーズになると考えます。 今回は現状の問題点を指摘し天空率検討会における検討テーマの参考になればと考えます。
道路の場合
1)56 条 1 項にある「前面道路」の定義が明確でない為に政令の記述における「前面道路に面する」などの 解釈があいまいである事。 *この事が明快になれば「入り隅」あるいは隣地越えなどおのずと解決し統一されます。ただしこの事項 はそれなりの学識経験者に判断をゆだねる必要があると考えます。(具体的には、適用距離内を前面道路 とする横浜市の手法か道路境界点間を前面道路とする東京の方式かの判断になります。) 2)2 以上の道路における 132 条解釈および不徹底。 ① 132 条区分の解釈が行政サイドで従来の斜線規制における簡便なチェック法と混同しているケースが多 く、面で区分される天空率の領域の大小が結果に大きく左右する事の認識不足が多くみらます。 ②道路幅の微小な異なりに対する1の道路 2 以上の道路の判断。 *微小な異なりは行政の判断で1か複数かは確定する必要あると考えます。たとえば最近多いのが実測で 6.05 と 6.03,6.02 など微小な凸凹がありそれらの道幅で道路を複数と判断した場合、132 条で区分せざ るをえなく適合領域が細かく区分されてしまい天空率計算が有効に機能しなくなります。 この様な事例の場合一定の道路幅の差の範囲ではせまい道路に順ずるなどのルールを設定するなどの指導 が必要だと実感しております。6 月 20 日の基準法改正以来、道路幅、あるいは高低差においても微小な 幅も考慮し検討する風潮があり設計、審査両面で煩雑になっております。(現実高低差など算定位置毎に その位置で測量できるわけがなくナンセンスです。) *以上の事は設計者さらに審査側も 132 条を正しく理解していない場合が多く 132 条の解釈を啓蒙する必 要が運用上不可欠だと考えます。 3)3m以上の複数地盤における算定領域および算定線 *この事はアンケートの前に JCBO では手法が確立された聞いております。すみやかに公開する様お伝え下 さい。公開されない内容は確定してないと考えざるをえません。隣地の場合
1)隣地境界点の区分、屈曲した隣地をまとめる事の可否 *隣地境界は東京都のみ1m以内の屈曲度を可とします。統一した仕様を確定するのであれば JCBO におい てはその事を吟味し採用の可否検討する必要があり不可の場合理由を明確にする必要があります。はじめに
2 以上の道路における天空率法解釈手順
2 以上道路におけるる天空率処理は、東京方式、横浜を中心とした JCBO 方式において異なる。しかも両仕様共に 132 条の解釈においては不完全と思える。今回は 2 以上の道路における法解釈の手順を確認し、その手順から東京方 式、横浜方式を再考した場合における問題点を指摘したい。天空率による建築物の高さ制限 法 56 条
7 次の各号のいずれかに掲げる規定によりその高さが制限された場合にそれぞれ当該各号に定める位置において確 保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして政令で定める基準に適 合する建築物については、それぞれ当該各号に掲げる規定は、適用しない。 一 第一項第一号、第二項から第四項まで及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。) 前面道路の反対側の境界線上の政令で定める位置 二、三は隣地、北側につき省略政令で定める基準
天空率)
第 135 条の5
この章において「天空率」とは、次の式によつて計算した数値をいう。Rs = (As - Ab) / (As) この式において、Rs、As 及び Ab は、それぞれ次の数値を表すものとする。
Rs 天空率 As 地上のある位置を中心としてその水平面上に想定する半球(以下この章において「想定半球」という。) の水平投影面積 Ab 建築物及びその敷地の地盤を As の想定半球と同一の想定半球に投影した投影面の水平投影面積
前面道路との関係についての建築物の各部分の高さの制限を適用しない建築物の基準等)
第百三十五条の六
法第五十六条第七項 の政令で定める基準で同項第一号 に掲げる規定を適用しない建築物に係るものは、次のとおりとす る。 一 当該建築物(法第五十六条第七項第一号 に掲げる規定による高さの制限(以下この章において「道路高さ制限」という。) が適用される範囲内の部分に限る。)の第百三十五条の九に定める位置を想定半球の中心として算定する天空率が、当該建 築物と同一の敷地内において道路高さ制限に適合するものとして想定する建築物(道路高さ制限が適用される範囲内の部 分に限り、階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分の水平投影面積の合計が建 築物の建築面積の八分の一以内であつて、かつ、その部分の高さが十二メートル以内であるもの(以下この章において「階 段室等」という。)及び棟飾、防火壁の屋上突出部その他これらに類する屋上突出物(以下この章において「棟飾等」という。) を除く。以下この章において「道路高さ制限適合建築物」という。)の当該位置を想定半球の中心として算定する天空率以 上であること。 二 当該建築物の前面道路の境界線からの後退距離(法第五十六条第二項 に規定する後退距離をいう。以下この号におい て同じ。)が、前号の道路高さ制限適合建築物と同一の道路高さ制限適合建築物の前面道路の境界線からの後退距離以上で あること。 2 当該建築物の敷地が、道路高さ制限による高さの限度として水平距離に乗ずべき数値が異なる地域、地区又は区域(以 下この章において「道路制限勾配が異なる地域等」という。)にわたる場合における前項第一号の規定の適用については、 同号中「限る。)」とあるのは「限る。)の道路制限勾配が異なる地域等ごとの部分」と、「という。)の」とあるのは「という。)132 条の確認
A
B
(2以上の前面道路がある場合) 第 132 条 建築物の前面道路が2以上ある場合においては、幅員の最大な前面道路の境界線からの水平距離がその前 面道路の幅員の2倍以内で、かつ、35 メートル以内の区域及びその他の前面道路の中心線からの水平距離が 10 メー トルをこえる区域については、すべての前面道路が幅員の最大な前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。 2 前項の区域外の区域のうち、2以上の前面道路の境界線からの水平距離がそれぞれその前面道路の幅員の2倍(幅 員が4メートル未満の前面道路にあつては、10 メートルからその幅員の2分の1を減じた数値)以内で、かつ、35 メー トル以内の区域については、これらの前面道路のみを前面道路とし、これらの前面道路のうち、幅員の小さい前面道 路は、幅員の大きい前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。 3 前2項の区域外の区域については、その接する前面道路のみを前面道路とする。1)1 項最大幅員の領域
1 項の領域は下図黄色で示し、最大幅員がその他の B,C においても最大幅員から2A を越え、さらに道路中心10m を越えた領域には最大幅員の領域がそれぞれ存在し三領域に区分される。132 条の確認
2)2項道路中心10mの区分
1 項で区分される最大幅員以外の道路中心10mの区分は2以上の前面道路の境界線からの水平距離がそれぞれその 前面道路の幅員の2倍以内で、かつ、35 メートル以内の区域については、これらの前面道路のみを前面道路とし、 これらの前面道路のうち、幅員の小さい前面道路は、幅員の大きい前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。 3 項は 2 項以外の残りの道路中心10m区分をしめす。 10m区分の黄色部分が 2 項をしめし、他が 3 項 の区分を示す。 黄色部分は B,C に面する 部分からそれぞれの幅員 の 2 倍までを区分しさら に幅員の比較を行い幅員 の大きい道路を前面道路 とする為に、さらに下図 で示す様に区分される。B1
* B 側の 3 項の領域はどの行政も区分していないがそれぞれの 2 倍を超えた領域は 3 項に区分される。
この事も確認しなければならない大きな事項と思われる。
B
側領域
C 側領域
JCBO 方式における解釈 1
横浜市
大阪市
上図は横浜市、大阪市が配布する 2 以上の道路の場合の区分法を解説するものだが、丸印部分
の区分をする事が特徴となる。2 以上の道路の区分は
第百三十五条の六
3 当該建築物の前面道路が二以上ある場合における第一項第一号の規定の適用については、同号中
「限る。)」とあるのは「限る。)の第百三十二条又は第百三十四条第二項に規定する区域ごとの部分」と、
「という。)の」とあるのは「という。)の第百三十二条又は第百三十四条第二項に規定する区域ごと
の部分の」とする。
政令で定められられた区分をさらに有効距離で区分している事がわかる。
適用距離内で区分する領域が横浜市の凡例では最大幅員からの有効距離のみになり大阪市では
道路中心10m内でも有効距離内で区分する。( 上図右下)
その可否はさておき横浜市は基本的な考えが一貫しない様に思える。いずれにしても 132 条以
外で区分した場合の不合理を次項で 解説します。
JCBO 方式における不合理な解釈事例
横浜市、大阪市においては最大幅員側から上図の用に最大幅員からの区分と道路中心10m部分の有
効距離領域で区分される。
この場合上右図の区分の不合理性は下記理由による。
1 132 条 1 項における
建築物の前面道路が2以上ある場合においては、幅員の最大な前面道路の境界線からの水平距離がその前面道路の幅 員の2倍以内で、かつ、35 メートル以内の区域及びその他の前面道路の中心線からの水平距離が 10 メートルをこえ る区域については、すべての前面道路が幅員の最大な前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。その他の前面道路中心10m以内の区域には最大幅員からの区分は存在しないにもかかわらず区分さ
れます。最大幅員幅が広い場合その有効距離は2A を越えない事多い為、表面化しないがせまい道路
の場合確実に発生する不合理な状況です。
132 条 1 項(最大幅員)による区分 最大幅員から有効距離による道路中心10m区分東京方式における不合理な解釈事例
東京方式の場合、前面境界越しの可視範囲を適合領域とする。その為に上右図の様に道路中心10m区分がさらに区 分される。 最大でない道路の角度が 120 度超で屈曲度1m以上(同一の道路区間として設定不可とされる。) の事例(下図)ではさらに顕著となり 132 条の 2 項が JCBO の領域と大きく異なる。 *この事は前面道路の定義を学識経験者より明確に判断発令していただきそれに順ずる事で相違を解消する必要がも はや必要ではないでしょうか。つき込み道路など2A の範囲の回り込みに関する記述の不合理
上図は横浜市の取り扱いの記述であるが、つき込み道路の場合においても 132 条jの区分で
「
・・・
幅員の最大な前面道路の境界線からの水平距離がその前面道路の幅員の2倍以内で・・」で区分されなければならない。その場合上図左側同様に円弧状に区分されなければならないが
そうでない記述が多い。これは「水平距離」を平行と誤解している事が考えられる。水平とは
高低差の無い事を記述しているに過ぎない。従来の高さ制限(斜線規制)では問題にならない
が天空率においては区分区域の対象が適合領域の天空率を左右する為に汎用的にあらゆる敷地
に対応する為には円弧状に処理されなければならない。
下図 A,B において最大幅員からの区分法は共に円弧状に処理されなければならないと思われる。
下図Aは適用距離:Bは2Aの領域を示します。同じ領域の判断がBでは簡略化された直線と
なる。これは道路中心 10 mの領域も同様になり領域を示す図がこの様に簡略化された場合、
次項に示す様な変形敷地には対応できない。同様な敷地を川崎市の資料では右下図にある様に
法文に忠実に作図例が示されている。この形式の場合すべての敷地形状に対応する事が可能に
なる。
Aつき込み道路事例
「1 のつき込み道路」の場合、道路斜線の適用領域を円弧状に処理する事は共通の認識として理解され
1のつき込み道路 2 の道路 2 道路 道路中心 10 m領域1 入り隅道路の処理における問題点
東京方式
東京方式の場合入り隅を構成する境界線の一方が短い場合そのせまい境界の可視範囲では入り隅部全てが適合領域に 参入されない。その為天空率比較の対象外となる。横浜方式(JCBO)
入り隅角が鋭角の場合に算定線が敷地内に食い込む為に天空率が0の適合建築物が生じる事になる。 (指導においてはその際は外壁後退距離で調整するとの事だが明確でない。)入り隅道路の問題点
2)道路境界の定義(隣地越えの道路境界幅の定義)
東京方式 横浜方式
この隣地越えの道路高さ制限の適用領域は「前面道路」の定義が明快になれば解決します。あ
えて現状を確認します。
東京方式の場合
基本的に当該の道路境界点間を道路境界と定義する。その為上図の様に隣地越えの越え道路斜線は適合領域が発生せ ずチェック対象から除外される。これは従来行ってきたいわゆる道路斜線と異なる。隣地の奥行幅がせまい場合、隣 地越えの領域は隣地斜線の影響を考慮するのみとなり、街区全体を考えると現実的と思われない。横浜方式の場合
基本的に道路斜線の有効距離にある敷地の幅を道路境界幅とする。その為外壁後退距離によりその幅は変動する。 道路境界をこの様に設定した場合、隣地の奥行き幅にかかわらず道路高さ制限の適用領域内にあればチェックされる 合理的な判断と当社では考えます。 JCBO 方式を採用する大阪市においては道路境界の定義が敷地の幅全域に設定され、枚方市においては斜の隣地の場天空率の算定位置を敷地幅全体で考えた場合
現在この様な設定法を採用するのは大阪市です。その内容を検証してみます。 天空率を算定する位置は(幅) 「第 135 条の9 法第 56 条第7項第1号の政令で定める 位置は、前面道路の路面の中心の高さにある次に掲げる 位置とする。 1.当該建築物の敷地(道路高さ制限が適用される範囲 内の部分に限る。)の前面道路に面する部分の両端から 最も近い当該前面道路の反対側の境界線上の位置」 と記されております。大阪市における取り扱いでは K の 事例で解説しており、敷地幅(別表3の距離によらない) で設定されています。 当社サポートセンターによせられる質問で最も多いのがこの様な事例で下図の様に大阪市における敷地幅では天空率 は NG となります。一方、適合距離の範囲で設定される、横浜市、名古屋市、豊中市などの取り扱いに基づくと OK となります。大阪市の取り扱いでは適合領域の幅と算定幅が大きく異なる場合があり、左端の算定位置では適合建築物と計画建築 物をほぼ横方向から天空率を算出する事になり緑の空地が天空率に反映されません。大阪市では敷地幅で算定線を伸 ばすのは本来道路に面する敷地を分筆し隣地にする事でクリアーする不正への対応策としています。ところが右下の 図で確認されます様に、同等規模の建物が隣地に建った場合、その敷地においては問題なくクリアーします。隣地の 前面道路の通風採光を確保する為にその前面の建物より規模の小さい建物を裏側に建てる事になります。 この事例から考えても適合領域の範囲内にのみチェックを行う意味から考えると横浜方式が最も合理的だと当社では 判断します。 不正を回避する為に付加した規制の場合結局、別の方法で不正を行う事ができてしまう事例を次項で検証します。
次に同敷地に道路が接道した場合その結果が大きく異なります。 「b・敷地と道路の間に他人地がある場合、2以上の道路が交差する角地」の M の参考例に基づき処理した場合 クリアする事がわかります。分筆等で作為的に隣地にする場合と同様に隣地に位置指定道路が設定された場合も同じ 結果となります。これは東京都における窓設定と同様すべての敷地に合理的に機能しません。