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マクロレベルのEBP社会プログラムの開発と評価:CBTを組み合わせた効果的な社会プログラム・制度モデルの構築に向けて

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 66

-マクロレベルのEBP社会プログラムの開発と評価:CBTを組み合わせた効果的な

社会プログラム・制度モデルの構築に向けて

○大島 巌 日本社会事業大学 この講演で取り上げるのは,マクロレベルの社会プ ログラムであり,国際的な認証を得ているEBPプログ ラムを例にあげれば,包括型ケアマネジメントACTや, IPS援助付き雇用,家族心理教育などを念頭において いる(大島,2016)。精神障がい等をもち,働きたく ても働くことができない,地域で安定した生活をした くとも再発・再入院を繰り返してしまう,長期間のひ きこもりがあり家族から独り立ちし少しでも社会参加 をしたくともうまくいかない,などといった社会的諸 課題を抱える人たち,WHOの国際生活機能分類(ICF) で言えば「参加の制約」をもつ人たちが対象となる。 私たちは,これらの人たちが,少しでも「参加」レベ ル(ICF)の課題解決をはかることができる,有効な 社会プログラムを設計・開発し,それをより効果的な もの(「効果モデル」)へと形成・発展させて,ゆくゆ くはEBPプログラムとして社会的に認証され,さらに 可能なら制度化して,実施・普及を進めることをめざ している。「参加」レベル(ICF)の課題解決をはかる 社会プログラムの設計・開発と形成・発展は,社会福 祉・ソーシャルワークや,社会的インパクト評価・マ ネジメント等を行う民間非営利団体(NPO等)が得意 としたり,使命とする領域であろう。これに対して、 言うまでもなくICFの枠組みに基づけば「参加」レベ ルの改善には,ICFの「活動」や「心身機能・構造」「健 康状態」の改善が深く関わっている。社会プログラム の「効果モデル」には,社会プログラムのゴール達成 に深く関わる効果的援助要素(critical components) を設定することが求められる(Bondら,2001)。「活動 (社会的技能や社会適応の制限)」や「心身機能・構造 (認知機能等の障害)」の解決に対して,十分なエビデ ンスのある認知行動療法は、これら社会プログラムに とって極めて有力な「効果的援助要素」であると考え られる。このような取り組みの実践例を示すことにし たい。McGurkら(2007)は,世界的なEBPであり,重 要な社会課題解決のプログラムであるIPS援助付き雇 用(SE)に,認知機能リハビリテーション(CT)を統 合した取り組みの有効性をRCTを用いたプログラム評 価で検証した。その結果,統合した取り組み(SE+CT) は,IPS(SE)単独で実施するのに比べて,一般就労へ の就労率,雇用継続率,得られた賃金など指標が有意 に上回ることを明らかにした。池淵(2018)は,自身 らの研究成果も踏まえながら,「精神障害リハビリ テーションのなかでこそ認知機能の改善は生かせる」 と述べている。また障害者総合支援法の「生活訓練事 業」にSSTを適切に組み入れることによって,( 1 )本 事業本来の目標である自立と希望の実現可能性が高ま る,( 2 )支援システムの活性化がもたらされる,と いう可能性を示唆する質的研究による「効果モデル」 開発研究が行われている(佐藤,2016)。さらに,精 神科の退院支援にSSTを取り入れた取り組みも行われ ている(井上ら,2011)。社会プログラムの「効果モ デル」の設計・開発や,形成・改善のアプローチは, 実践家参画型エンパワメント評価で行うのが有効であ ることを,私たちが開発したCD-TEP評価アプローチ法 (An Evaluation Approach of Circular Dialogue

between Program Theory, Evidence and Practices) に 基 づ く 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト が 明 ら か に し た( 大 島 ら,2012)。この特別講演では,CD-TEP法に基づく実践 家参画型エンパワメント評価という「プログラム開発 と評価」の方法論を紹介して,認知行動療法に関わる 会員の皆さまが,それぞれの実践現場において,認知 行動療法を活用した社会プログラムを設計・開発し, あるいは形成・改善の取り組みに関与して,「参加の 制約」をもつ人たちの課題解決とリカバリーゴール達 成を,より効果的に実現できる「効果モデル」形成の ために,「プログラム開発と評価」を活用するアプロー チ法を提案できればと考えている。認知行動療法を, 当事者の「参加」レベルの課題解決,社会的課題解決 に活かすことに関心のある皆さまに,少しでも有用な 情報提供ができれば幸いである。■文献:Bond GR, e t a l (2 0 0 0). M e a s u r e m e n t o f f i d e l i t y i n psychiatric rehabilitation. Mental Health Services Research 2: 75-87.池淵恵美(2018). 統合 失調症の認知機能リハビリテーション. 精神経誌120: 313-319. 井上晋平ほか(2011). 精神科退院支援ハン ドブック. 医学書院. McGurk SR, et al. (2007). Cognitive training for Supported Employment. Am J Psychiatry 164:437-441大島巌(2016). マクロ実 践ソーシャルワークの新パラダイム:エビデンスに基 づく支援環境開発アプローチ:精神保健福祉への適用 例から. 有斐閣.大島巌,他(2012). CD-TEP | 円環 的対話型評価アプローチ法実施ガイド. 平成22年度文 部科学省・科学研究費補助金基盤研究( A )「プログ ラム評価理論・方法論を用いた効果的な福祉実践モデ 特別講演

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 67 -ル構築へのアプローチ法開発」報告書. (主任研究者: 大島巌),http://cd-tep.com/(2018.8.27取得)佐藤 香奈子(2016). 生活訓練事業におけるSST導入による 効果的支援モデルの構築:希望の実現を目指した,支 援者との協働による目標設定と課題解決へのアプロー チ. 日本社会事業大学修士論文. 特別講演

参照

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