Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
町
家
の
箱 階段 研 究
AStudy on the Design of
[
[
Hakokaidan”
−The
Staircase
Chest大
川
市指 定 有
形 文 化 財
高
橋
家
住 宅 修
理
・
修 景 設
計
Restoration Design on the Historicai
Townhouse
工藤 卓 近 畿 大 学 KUDO Takashi Kinki Urliversity
1− 1.
受 賞件 名1992
年日本デ ザ イン学会 研 究 論 文奨 励賞
1− 2 .
対 象研究の概 要 対 象 研 究は3
報の研究論文 か ら構成 され、
そ れ ぞ れ 次のような概 要である。
(D
町家
空間に お け る箱 階 段の特 質 伝 統 的町家の象
徴 的な装 置で あ る箱 階段の 実 体 を 考 察し て い る。
箱 階段 は、
町家
の2
階座 敷の成立 と強 い か かわ りが あることを指 摘し、
そσ)座敷へ
の アプロー
チ装置とし て製 作されたことを 明 らか に した。 また、
箱 階 段 は、
押し 入 れなど が 並 ぶ装 置ゾー
ンに設 置され、
平 面の 大きさは 畳一
畳の 寸 法を越え ないもの が標 準であ ること、
さらに、
はしご系 階段で はなく、
基 壇系の 階段で あ ることも指 摘
し た。 デ ザイン 学 研 究88 、1992、
177−184
(2
)箱 階 段の形 態と構 成 二つ の機 能 をひとっ の 形 態に定 型 化した箱 階段の構 成 を類 別 的に考 察し て いる。
箱 階段 は町家
建築
の 柱と 梁の 軸組寸 法に規 制 され、
間口幅の1
問型 と1.
5 間型 の 別、
直 階 段 と回り階 段の別、
単 体型 とユ ニ ット型の 別、
舞
良戸 と板 戸の 意 匠 別 な どを類 型 化し て いる。 結 果、
箱 階段 は そ れ ぞ れの 町家
が個別 に製 作した作り付け 装 置であ ることを指摘 した。
デ ザイン学 研 究88、1992、
185− 192
(3
)箱 階 段の構 造 箱 階段の構 造にっ い て、
実測 調査事 例と文献資料を 検 証し、框
組 構造 型と厚 板 組 構 造型 に類別し てい る。 その 特徴として、
框組構 造 型は、
部 材 接 合の納まりが 10 種に 類 別で きること と、
見 えが か り用材に ケ ヤ キ材 を 用い 透き漆が塗 装 されて い る ことを指 摘し た。
また、
厚 板 組 構造 型 の 用 材 は、
スギ材や ナ ラ材な どの割り板 を 用い て いることも指 摘した。
デ ザイン学 研究90、
1992、
4
]−481
− 3 .
受 賞か ら今日まで の展 開 箱階
段の研 究は、
町家の空 間構 造と意 匠の 調査研究 か ら始まっ たことである。
そこからは、
町 家を含む伝統 的な木 造 住宅の 評価
と修理・
修 復の 方 法を学ぶことが できた。
口本の 伝 統 的 な 都 市 住宅の 空間秩序や 町 並 み景 観 との 整 合 性、
室 内意 匠と生 活 文化との 関 連な ど、
これ か らも引 き続 き継 承し てい きたい 住まい の文化を 見 てき た。
特に、
ひとつ とし て同じもの がない 箱 階段の 意 匠 は、
人々 の暮らし 向きの個 別 性 を強 調 する創 造 物で あっ た。受賞
後 も 引 き続 き町家と箱 階段 に関心を寄せ てい る が、
鹿 児 島か ら北 海 道 まで 日本 全 域にわたっ て 造 られた箱 階段の 興味 はっ き ない 。 町家
の 空 間様 式が 口本に幅広 く伝 播していっ た とき、箱階
段の様 式も付 随 して 広まっ たの であ ろう。
改めて、
箱 階段 は 町家
を象 徴 す る 口本 固有の 意匠であることを認識し てい るところで あ る。 現在、伝 統的な 町家
の 喪 失に よっ て、
箱 階段は希少 な 状 況 に あ るが、
その活 用は新たな 展 開 も見せて いる。
とくに1.
優れ た 町家
が 文 化財 指 定 を受 けて、
箱 階 段を含
め た 室内 意匠 まで修理・
修 復の 対 象とする傾 向に あ ること。2.
町家型 建築が 改 造 また は新 築 され る場 合に、
箱 階段 が修
復ま たは新設 され ることが あ ること。 3 解 体 された町家
から箱 階 段だけ切り離 されて、
骨 董・
伝 統コ.
芸 品 として、
新感覚で 再利 用 する生 活文化が育まれて い ることな どであ る。
1− 4.
受 賞に よっ て励 み に なったこと 都市住 宅 とし ての 町家研究は 1980 年 代に大 きな発展 が あ り、
木造民家
の保存再生の中心 に 町家の調 査 研 究 があっ た。
し か し、
歴 史的 建築とし ての 考察 や 生 活 空 間16 SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol
.
13 No.
2 2005 デザイ ン学研究特 集号Japanese Society for the Science of Design
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としての 再利用 が多くの 関心であ り
、
伝 統 的な意 匠の考 察はあ まりな されて いなかっ たtt こ のような時 期にまとめ た箱 階段の.
.
連 の研 究が、
デ ザ イン学 会の 奨励賞
に 選考された こ とは、
伝 統 的 な町家や 民家の 意匠が 生活 文化のデ ザ イン研 究の課 題とし て展 開し て いく励み に なり、
次 匪代に伝えて いきたい教 育の場で生かされ て い る、
2−
1.
受賞件 名1996
年度 口本デ ザ イン学 会年 間 作品賞2− 2.
対 象研究の概要 大川 市 指 定 有 形 文 化 財 高 橋家
住 宅の 修 理・
修 景プロ ジェ クトを 取 り上げ、
町家
建築
の景観保全と伝 統的に 洗 練 されてきた 生活 空 間の 保 全 を 目的 とした デ ザイン の 実 践 を報 告して いる。
江戸中期に造 られた毛 屋 棟 は、
本 瓦 葺 屋 根 と漆 喰の 外壁 を修 復した。
江戸 末 期か ら明 治 初 期に造られた と 思 わ れ る離れ座敷棟は、
桟 瓦 屋 根 と漆 喰外 壁、
表 座 敷 の修 復、
奥 座 敷 と2 階 座 敷の 改 修 を行っ ている。
座 敷 を 飾る伝 統的な意匠 や 床の 間、
欄 間、
竿 縁 天 井、
障子 な ど は、
そ れ ぞ れの 職方の 元で元通 りに修 復している。新 しく空調や衛牛設 備 も整 えた、
江戸 末期に造られ た 十蔵 棟は、
柱、
梁、
壁、
屋根の 全 ての }:構 造の 傷み がひどく、
修理・
修 復が難しい 状 態 に あっ たtt−.
・
方では上 蔵 を住 居に転 用したい 要 望があ っ た。
歴 史 的町 並みを構 成 する重要な要素と し て 文化 財に指 定した建物の 用途を変更することに は慎車:な検 討が必 要 となり、結果 として、
痛んだ 土 蔵 を解
体した ヒ で、
その外 観 と内 部 構 造 を 新築して修 景 す ることに した.
素 材 と匸法 は卩∫能 な 限り伝 統 的 な ものを選び、
文 化 財 保 護 法の伝 統 的建造 物の 保 存工 事と 同様の 修 景措 置 を とっ た.
、
.
1.
事は、
大 [:、
左官、
指 物など に か か わ る 地 域 在 来の 木造建築 11法と職人技 能 者の 技 術を積 極 的 に投人 した。
屋 根 付 板 塀 は、
占材 を 再使用 す る ための 解 体・
修復 1事を行っ た。
中庭の 見越の 松は、
町屋の 景 観 を特 徴 づけ るもの で あ り、屋 根 付 板 塀 ととも に その 空 間 構成を 継 承 する修 復 を 行っ た 。 デ ザイン学 研 究 作 品集 01199532 −37
2− 3.
受 賞から今日まで の展 開 高 橋 家は、
宝永8
年 (1711 )に酢 屋 を始め て から現 在 まで続く「庄 分 酢」の製 造・
販売を家 業としてい る。
所在 する.
帯は、
藩 政 時 代の 久留 米 藩の 榎 津と柳川藩の 小保 地区が接 する地域で あ り、
江 戸時 代後 期の建築
遺 産が点在す る町 並 みの 景観であ る。 修理・
修景工 事が行 わ れ る 以 前の 平 成4年 時 点の 高橋家
で は、家業
の 拡 張を想
定した事務
室の改装
や家
族の ための 新しい 住 まい へ の 希 望 な どが 入 り交 じり、
歴 史 的 建築の保 存内1生 や 文化財指定に少 なからずの 危 惧 を 抱い てい たと思 われ る。
当 時の 日本で は歴 史 的町 並み 保 存 事 業が よ うや く軌 道に乗りか け、
保 存 再生の デ ザインが・
般 的に は未だ 広く認 知 されて いない時 期 でもあり、
施⊥の杞 憂は 当 然の ことであっ た。
その 後、
歴史 的な 環境の 保存と、
伝 統的な 町家
の 修 理・
修 景の 意義
へ の 賛同を得
て、
Tl 事 規模
が大き く⊥事費
も膨ら ん だ が、2
年 間の 工 事期 間を経て平 成6
年6
月に竣.
r.
した。
江 戸 期から明 治 期に造 られ た 大 型町家の 再 生は、
広 く市 民 や顧客の 関 心 を 引 くことになっ ていった=商
品の 展 示 販売や伝 統 的 な空間 を 活か した見学 会な ど、
家 業 の 発 展の一
・
助 に も なっ てい る ようである、
ま た、
日常の 生 活 意 識の 見直し に も繋が り、
地域
の 祭りや晴
れの 日 の 室礼、
座敷を 使っ た接 客、
庭園の1
儿1
季 折々 の 装いな ど、
大切に し てい きたい 伝 統 的 な生活 文化の 復 活 も始 まっ ている。
高 橋 家 住 宅の修 理 修 復 (平 成6年6月 )2− 4.
受賞
に よって励み になっ たこと 大 川は指 物と家具木 T.
の ま ちである。
伝 統 的 な 環 境 整備に関心 を持つ 「li
民は多い。
その 中で、
町 家の修 理・
修 景の モ デル を 具体 的に提 示した デザインが受 賞 を得たことは、
その 後の 町 並 み環 境 整 備と伝 統 的 な生 店 丈化の 再 生 事業の規範と励 みになって い る。
平 成16
年 12月 に景観 法が施 行された ば か りであ る。
今 後 とも、
歴 史 性 や 地域性 に 深 く関わ る景 観ま ちづ くりの 環 境デ ザ イン に関心 を持っ てい きたい。
デ ザ イ ン 学 研 究 特 集 号 SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol