老年 性
白 内
障
開 眼
手術 後
の
視
覚
異 常
1
一 一一
そ
の基
礎
の知 覚 過 程
小
笠
原
慈
瑛
Anornalies
in
spaceperception
after cataract operationin
an agedsubject
I
Jiei
OGASAWARA
Tllis paper reports a s{ngle case in which the author quanti血es
his
ownexperience of ab1コormal spatial perceptlon following cataract surgery
.
Following surgery the author notedthat while wearing
high
diopter Iellses objects appeared much closer than expected.
This
produced
a discrepancy between
Visual
and tact量le input,
such that the actual object location wherl touched see 皿 ed farther away than wouldbe
expec 亡ed based on vision.
Qn
the otherhand・
・izes ・ ・d th・ ・p・ti・1・xt ・nt ・f ・bl・ ・t・ p・・p・ ・dic・lar t・ theli
… f・ight
l・Qk 。d l。rg ,,than both the visual memory of the object and the tactile
−
kinesthetic percepしion of it,
Anexampl ・ ・f ・ particular[y unusual ・xperi ・n・e w … sf ・1エ・ws
.
Wh ・n tw ・ id・ntical pエate $were placed on a table
,
one in front of the other,
the mQredistant
plate appeared distinctly larger than the nearer one.
This seems tobe
an illusion based ⊂》n exaggeratio 鳳 of s三ze constancy.
In
our experiment,
the level of constancy was n/ieasured.
Results showed thatthe level of constancy was greater than one
.
(Z>1
.
O, where Z
is
’
rheuless’
ratioQf con
−
stallcy
.
)Key wQrds : anomalies in space perception
,
cataract eyes,
over size constancy,
Thouless陶
Z先 天 盲の開 眼 手 術後の視 覚につ い て は
,Senden
(19.
?2) の著 名な報 告をは じめ,
本 邦で は 梅津・
鳥居 (1963,
1964
)その他のす く”
れ た研 究が行 なわれて いる,
それら は視知覚の機 構や その発 生 過 程へ の ア ブ P一
チ に,
他で ぽ得られ ぬ貴重な デー
タを提 供するもの と し て 重 視 さ れ,Hebb
(1949
)の 視知 覚の細胞 集 成 体理論に お い て はSei
den
の報 告が その 学 説の有力 な 根 拠の一
つ になっ て い る.
そ れに対し老年性 白内障手 術の例は さほ ど重 視 さ れ ていない よ う に 思 わ れ る.
しか し 老年 性の疾 患 も先 天 性 疾 患と は ま た別の意 味で注 目すべ き ものが ある.
それ は 正常と異 なる条件 下に お かれた,
いわ ば天 然の 視 覚実 験とし て,正常の視覚過程の分析に,
少くともそこに何ら かの問 題 を 提 起 するもの と し て意義がある と思わ れ る,
以 下に報 告 するのは老年性 白内障の開 眼 手 術後の 視知覚 に関 する例で, その sublect は筆者 自身である,
開眼後の視 知 覚特性 白 内障手 術で は視覚障 害を 生じ てい る白濁 質だけ除去 するの で なく,
水晶体が そっ くり除 去され るので眼本 来 の光 線 屈 折 系は損壊さ れる,
その うえ術 後一
週 間は散 瞳 剤が常時点眼 さ れ て瞳 孔がい っ ばい に開い た ま ま なの で,
眼に映 ずる外界 像は極 端に ボ ケ て,
ほ とん ど ま と ま ら ない.
但 し手術 は片 目ずつ 行な われるの で残 りの 目で 身の回 りの用を たす.一
週 後に簡 単な検 眼で暫 定 的に臨 時の眼鏡を用い るが,
視 力不十 分で不便な 日常の 用 を 足 す.一
ケ月後よ うや く精 密な検 眼を受け新眼鏡を着用, 初め て鮮 明な視 界が よみ がえっ た.
以 下の記 述は新眼 鏡 使 用に よ る十 分な視力回復 後の視 覚に関 するもの で,
そ れ 以 前の,
手術 直後の無眼鏡 時 期の視 覚,
つ ま り多く報 告 さ れて いる先 天 盲の手 術 直後の視 覚 研 究に見 合 う時 期 の事 情に つ い ては,
ひ とまず留 保し てもっ ば ら眼 鏡 着 用 後の視 覚に 限定する.
再開し た新視 界は新 眼 鏡の効 果で,
以 前の健 常 視の時 よ りい っ そ う微 細な点ま で は っ きり見えるが,
重要なこ と は 空 間知 覚に次の如 きか な りの異 常がみ ら れ る ことで ある.
奚 行 距離の知 覚 自己 か ら諸物体までの距 離, 物 体 間の奥 行 距 離, 物 体 自体の 奥行きの長さ, 遠 近の ひろ が りはすべ て短縮してみ え る
.
長 期 間 見なれてきた 自宅の 室内のあ りさ ま や 器物に つ い て の記 憶とは っ きり違いが 感 じ られる、
ま た身近かの物を取ろ う とし て, さっ と手 を伸ぽ し て み る と,
伸ばし方不 足でN
的物に達し ない と い う経 験 を す る,
階段 を 上か ら見る と段 落が浅 く見える の で,
注 意して踏み し め る よ うに降りない とふ みはず す.
つ まり触・
運動的 距離の知覚との 比較で明 らかに奥 行 が 過小 視されて い る のが わ かる.
これ らの 諸 例は Gogel (1968)の いわ ゆる計 量 (scalar)知覚であっ て, 視 距 離 の短 縮は明白で ある.
大 き さの知 覚 対象の 大きさ, 対 象 問の横の間 隔,
つ ま り視 繍 こ垂直な ひ ろが りは総べ て一
ま わ り (凡 そ 10%)大きく, ひ ろく見える.
これも熟 知の物の記 憶と の比較,
例えば 碁 盤と か心 理 学 事 典の大 きさの感じ から わか る.
他 方, 新し く購入し た家 具な ど は,
その幅を 両 手の ひ ら ぎで見積もっ てみ る と, 視 覚に過 大 視のある こ と が わ か る (Gogel
の計 量 知 覚 ).
しか し それ らに も増 し て著しい の は大ぎ さの恒 常 (?)m
象である.
テー
ブル 上に 二 枚の同 種の皿 がある と, 手前の皿 よ り数十セ ン チ 先にあ る 皿の方が大 き く見 え,
は っ !と奇 異の感に打た れる,
あ き らかに恒常を通 り越し た超 恒 常と呼びた い現 象である.
形の知 覚 前 額平行面の形には別状は み られない が,
し か しそ れに対し傾 斜し た対象の形に歪み がみ え る こ とは,
上記し た前後の長さの 短 縮と横 幅の伸 長の現 象 か ら当 然 考え られる わ けであるが,
机上に お かれ た本や 原稿用 紙は横 が 広め,
縦 が 短か 目で 寸づ まりに見 える.
それだけで はない.
手 前の幅よ り向 う側の幅が広 く逆台 形の異 様にみ え る.
対 角 線を前 後に向 けて お くとい びつ な菱 形と な り, これまた奇 異で ある.
位 置・
方向の知 覚 頭 部 を 左右に傾け る,
また体 軸 を中心 として首を ま わす運動をする とき, 特に速い運 動 でな くても外 界は さっ と反対 方向に走 り去 る よ うに 見 え,
い わゆる位 置の 恒 常,
方向の恒常が 低 下し てい る。
その ぜ い か軽い 目まいを感じ るこ と がある.
そ の他の現 象 自己 と外界との接 続 部 分に 約 20 セ ン チ程度の空間の欠落がある ら しく感 ずる,
但しその空 間のす き間が見えて い るわ け で は ない.
自体 と外 界は直 接に接 続し て見 えて い る の であるが,
うっ か りし てい る と, そこ に無い はずの ドア の把 手や壁の角に腕や肩が ぶ つ か っ て驚 くこ とになる,
それで見えてい ない 欠 け た空 間 部 分の あるこ とには じ めて気がつ く.
その他,
視 野の 周 辺 部には球 面収差があ り, 長い直 線は視野 中 心に対し 軽く凸形に彎曲し てい る.
以上の諸 現 象の大 部分は過 去 の正 常 視の時に双眼 鏡で外界を観察し た際に時折り見か けた光 景に類 似し てい る,
但し その異 様さの程 度は今の 方が著し くはあるが.
大き さ恒 常 現象の測 定 以 上の諂現象の う ち 特に大 き さ 恒常現象につ い て測 定 実 験を行 なっ た.
実 験 1.
条 件 :標 準 対 象は直 径12
crn の白 色 厚 紙 円板,
比 較 対 象は直 径 10・
5c皿 か ら 5.
mm ずつ の差 で大 きくな り,17cm
に至る14枚の白色円板,
これ ら を 80cmX123cm,
高さ 68 cm の テー
プル面に 平 らに置 く,
テー
プル に ク卩一
スがか け られ,
それに規 則 的 な模 様がある.
テー
ブル の周囲に 日常の家 庭 用 品が点 在し,
空間知覚の cue の非常に豊 富な環境 (full
−
cue situa−
tion) を 形づくっ てい る
,
観 察 者は テー
ブルに近 接して 掛 け,
あご安 定 器に依っ て観 察 位 置を固 定 する.
眼高は テー
プル面上41cm
, 標準対象は観察 位 置か ら見てや や 左 方, 眼か ら対 象 中心 迄の直 線 距 離95cm,
比 較対 象は や や右 方に,
中 心 迄の距 離 70cm,
両 対 象の左 右 分 離 角 25° , 観察は 上方か ら対 象面を斜め に見お ろす.
その伏 角 (水平面へ の)は標準対 象に対し25
°25’
,
比較対 象に対 し 36°
IO’
,
両眼お よび片眼で の観 察.
実 験 目的は12cm
の標 準 対 象に対し現 象 的に等しく見 える比 較 対 象の大 き さを 測 定 すること.
測 定 法は恒 常 法 (全 系 列 法,
系 列 反 復 10回).
初め実 験 者を他に依 頼 する予 定であっ たが,
測 定 操 作 と デー
タ記 録 法を次の よ うにす れ ぽ,
観 察 者が実 験 者を 兼 ね 得ること が判っ たので, 自身で 両者を兼ね ることに し た.
その方 法は次の如 くで ある.
第一
に恒 常 法を使用 するこ と, そ して比 較対 象の裏 面にその 大 きさ を示 す数 値 を 記 入せず,
代 りに a,
b
等の記 号を,
文 字 順 と対 象 の大 きさ順と が対 応しない よ うに乱数 表に よっ て乱 順 化 して記 入し て お く.
そし て系 列 反 復の毎 回の始め に記 号 の選 出 順 をさらに あ らたな 乱 順に よっ て決め,
そ れに従 っ て比 較 対 象を と り出して重 ね,
必要な ら ば 切 りを 加 え て (ト ラン プの方 法 )衷 向 きに返し て お く.
い よ い よ測 定開 始で標 準 対 象 を 所 定の 位 置に,
比 較 対 象の重ねの上 か ら一
枚を とっ てその所 定 位 置に お く.
次い で観 察 位 置 に つ いて両対象を比較観 察し て 三件法で判 断し て か ら, その判断結果を比 較 対 象の 記 号 と併 記 する.
こ の よ うに して次々に進 む.
実 験 全部が終っ て か ら記録さ れ た比較 対 象の記 号を実際の大きさ数値に置換し て真の記録表を 作 製し,
そ れに よっ て測定値を算出 する.
以上の 如き方 法で実 験 することに よっ て, 比較判断する際に比較対象の客 観 的 大 きさは勿 論
,
その記 号すら予 測 することを完 全に防 ぎ えた.
なお測定値に対する Thouless (1931) の恒 常 度 指 数 Z を算 出する.
結 果 表 1 に示す.
それに よ ると 12cm の標 準 (遠 )対 象 と等しく見え る比較 (近 )対 象の大 きさ がなん と16cm
前後と なっ てい る.
そのZ
値は1.
O
を は る か に超え て2.
0
に近い.
普 通には ち ょっ と考え られない く“
らい の超 恒 常 となっ て い る.
片眼(右)観察で は僅か に値 が小さ い が その差は有意で ない.
衷 3 距 離 大 ぎさ 標 準 257 cm12cm 比 較139cm15
.
25c皿 (両 眼)15.
05cm (片眼) Z 表 11.
391
.
37隊 剰
比 較 対 象1
・ 距副
95・m 犬 きさ12cm
〃 70cm1
16.
1cm
両 眼 測定値 15.
8cm 片 眼 測 定 値 1.
961.
90実
験
IL
外的 条 件は実 験 1と全 く同じである.
た だ観 察の際の比較の態 度 を 少し変 更し た.
実験工では 両 対 象を何 度も見く らべ て じっ くり大小の 判 断 をし た が, 実験1
[で は や や簡単に か つ 速め に比較判 断 するよ う に し た.
た だ しこ の回は両眼観察のみ とし た.
結
果
表
2
に示 す.
表1
の両 眼の数 値と比 較して 僅か の低下 がみ られる,
勿 論差は有 意でない,
実はも う 少し差が出るか と 予想し たの であるが, それに反し て僅 差である.
実 験工で見た, 両限・
片 眼の条 件 差,
お よび 今 述べ た観 察態 度条 件の差 が,
測 定値お よ びZ
値にあま り影 響を及ぼ さ な か っ たの は,
実 験の 場 が full−
cae situation で あるの で, 上記の追 加 条 件は い ずれ も,
冗 長 (redundancy )条件と なっ て い るもの と思わ れ る.
表 2 比 較対 象測定値lz
値 (両 眼)15,
85
11
・
91 条件も実 験1
に等しい.
結
果
表
3
に示 す.
こ の実 験では対 象へ の距離が 実験1 ,1
【 に比し,
遠 近 対 象 そ れぞ れ 2倍 又は そ れ以上 に なっ てい る が,
そ れに対 応し て,
結果の Z 値が 低 下し てい る.
その減少が有意かど うか知 りたいが,
Z 値につ い て直接テ ス トする方 法 が ない.
ま たZ値の もと になっ て い る測定 値をみ る と, 実験1
と 皿 の数 値は接 近し て い て問 題にな ら ない,
た だ しこ の接 近は両 実 験の対 象 距 離の違い か ら来た偶 然の所産で,
実質 的には差 が ある筈 と考え られる、
窮 余の策と して 実 験m
のZ
値を実 験1
の条 件に引 き移し たら どの程 度の測 定値に該当する か 推 算し て み た.
結 果は表 4の如 くに な り,
実験1の結果と 比較可能である.
あとはそ れぞれの標 準 偏 差を算 出 すれ ば有意 性テス N こ もち 込 め る (小 笠 原,
1949).
しか し これは如何に も乱 暴なやり方で感心 し ない が, 何の よ り 処 も な くた だ想豫をたくま し くする よりま し と考え, 推 定の足 が か りを求め てみた の である.
結果は間接ながら 1.
8cm 以 上の 差は有 意と推 定された.
実は近 距離では 僅か の距離増加で超 恒 常 が 低下 するこ とに重要な意 味あ り と察せ られ たので, 有意 性に こだ わっ たのである.
表 4 両 眼 片 眼 実 験 皿 Z 推i 算 1.
39−
→13.
5cm
1.
37 →13.
4cm
実 験1
測定 値 16.
1cm15、
8cm
実
験 IIL
対 象の距離を増 加 する
.
テー
ブル の大 きさ151cmX88cm .
高さ 35cIn,
クロー
ス の模 様は実 験1
のそ れ と異 なる が やは り規則 的 な模 様 観察 者は少 し離れて掛 け,
あご安定器に て観 察 位 置 固 定,
眼高は テー
ブル面よ り 72cm 高い.
やや左方の標準対 象の 中 心 まで の直 線 距離 257cm,
右 方の比 較 対 象ま で139cm,
左右分離 角 23°
,
標 準 対 象へ の伏 角16
’20’,
比 較 対 象へ は32
°10’
.
標 準 対 象の大 きさ, 同 じ く 12c皿.
両 対 象 を テー
ブル面に平らに お くの も同じ.
測定法 も 恒 常 法 (全系列法, 系 列 反 復10回 ).
両 眼・
片 眼使用,
そ の他の実験 皿 の結 果 は 以 上の如 くZ 値が低 く出た のである が
,
低い と云っ て もな お相当の値で,
相 変らず 超 恒 常を 示 すこ とは注 目に値いする.
こ の よ うにはっ き り超 恒常現象がある とする と,
視 界 全体とし て い っ た いどの よ うに なっ て見 えるのか と疑 問 がわ くで あろうが,
以 上の 如き現 象は,
室 内の身 近か な 数 皿 以 内の 近 空 間に お いて 目立つ のであっ て, 広い空 間,
例 えば屋 外の道 路上に立っ てあた りの光 景 を 眺め て み る と,
道 路 自体 も道路 わ きの塀も,
近 くか ら遠 くに 向 っ て まと もに遠 近 法的に収斂し て見え破 綻はない.
こ のこ とは
一
見 矛 盾してい る わ けであるが現 実は両立 し てい る.
こ の ことは上記の実 験 工と皿 の比較で, 対 象の距 離が増 すと超恒常の 度 合いが急に低 くなっ ていたこ とに 関 係 が ある と 考 え ら れる.
それは又Boring
が野 外の 光景につ い て“
線路のパ ラ ドッ ク ズ’
と名付 けた現 象, つ ま り鉄 道 線 路があ ぎらか に平行}こ見え,
また遠 くに 向 っ て せばまっ て い る よ うに見るのを 指摘し て い るが , そ の矛盾を は らみな が らさ ほ ど 不自然と見 え ない現 象に類 するのであろ う,
考 察以 上
,
特 殊な眼 鏡を通し て み る視知 覚 異 常の 概 要と, 特に大 きさ恒 常の現 象の実験 的測定を記 述した が, 牧野 (1963),
Shigeoka (1961
) その他は逆 転 視 野条 件下の観 察に お い て,
大 き さ恒常が低 下して い る ように見え る が,
し か しその恒常の低 下 を 測定 する の に 二刺 激 比 較法を使 用 する ときは, その低下 現象は検 出で きない こ と を指 摘 して い る.
ま た形の恒常 現 象につ い て も全 く同 様で, そ の低 下が感じ ら れ る が,
二 刺 激比 較の方 法で は やは り検 出不可能との こ と(森,
1988)が 確か め ら れ てい る.
これに関 連し て Rock (
1966
)は特 殊な光 学 装 置を用 い て生 ずる,
順 応に よる視 知 覚の変 容を検 出 するの に,
同一
視 野内の二対 象のマ ヅチ ン グの方法 は使 用で きない と 論 じ,
か りにそ うい う方法で何か を測 定して も,
出て 来るのは本 当の変 容の実態で は なく,一
種の虚 構である とし て,
そ れにEl
Greco
の誤 謬 とい う名を 与えてい る.
ま た Gogel (1968)も次の如く指摘して い る.
全 視 野 を総 体的 に一
定の 率で拡 大し た揚合, 通常の大きさ恒 常 実験で やる ように,
同一
視 野 内の遠 近二対 象の大 きさを マ ッ チ さ せ る や り方,
彼の い う非 計量 (non scalar )測 定で は,
対 象の大き さ知覚の 変化は検 出で きない と し て い るが, これ も 同じく二刺激 比 較 法の無 効 を述べ てい る ことに な る.
ところ が ど うい う わけか我々の実験で は,
同一
視 野 内 の 二 刺 激の比 較で明 確に大きさ悔 常の異 変,
すな わ ち超 恒 常の検 出がで きた,
こ こに於い て 二 つ の問 題に直 面 す ること に な っ た、
第一
は新眼 鏡 視 野に お い て,
種々 の空 間知覚の 異 常,
と りわけ顕 著な大 ぎさ超 恒常の現 象がみ ら れ るの は どうしてかとい う疑 問, 第二 は そこ にみられ る恒常の 異変を二 刺 激 比 較 法に よ っ て測 定 検出し え たの は ど う し て かの疑 問である.
ところで上 記のRock
の主張は順 応の現 象に関 する も の で,
必ずし も我々 の開題に直結して は いない.
それに 対し Gogel の方は, はっ き り と 大 ぎさ恒 常の測 定 法に つ い て論 じて いる わけで,
避 けて通れ ない,
し か しその 主張はど う も実 験の裏 付 けな し で,
論理的推断に頼つ て い る ふ しが ない で もない.
そ れに対し牧 野その他は実 験 に訴え て二刺激比較法の無 効 を発 見して い るわ けでこれ は甚だ強い.
我々は い やで も我々 の結果との食い違い の 解決を迫られる.
以下にその解決 を試み る.
さ て大きさの超 恒 常を含む異常な諸現 象を生じ る に至 つ た基本 的 事 情は ま ち がい 無く次の点にある
,
すな わ ち 生 得の眼の水 晶体除去に よっ て生 じた光 学 系の破 綻を,
新 眼 鏡に よっ て補償し た ことで ある.
新眼鏡 レ ンズ (左 ユ1.
5D , 右13D
)は水 品 体 及び前房水の 代役をする が,
そっ く りの代 用 品でない,
水 品 体の如く硝子体に密 着せ ず, 眼球り外約 13m 皿 前 方に離れ て 位 置 して い る関 係 で, 生 来の眼の場 合 とは異な る光学系を形づ くる (人工 の レ ソズ埋込み手 術,
ま た はコ ン タク トレン ズ の場 合は 別).
結 果’
とし て 外界の 網 膜上映像 は生 来の眼の場 合に 比し拡 大 されて結 ばれ るこ とになる.
その拡 大 率は不詳 であるが >1
である ことは間 違いない.
そ れは既 知物体 の現象 的 大 ぎさの 拡 大の 事 実か らうか がい知る ことがで きる.
逆に い えぽ 眼鏡視 野に み られる視 覚の諸 異 常はこ の外界の網 膜 像の 拡 大に関係して い るとい え るの で あ る.
その ことは さ らに正常 視の人がオペ ラ グ ラス や双眼 鏡 をかけて物を見る際, ときどき経 験 する若 干の異常現 象 (家の屋 根の遠い方が拡がっ て い る),
また 望 遠 レ ン ズで撮像し たテ レビの 画 面で た まにみ ら れ る異様な光 景 (ピ ア ノ の鍵盤が遠い方で 大 き く広 がっ て み え る)と同 質で あ ること,
先年報 告し た とこ ろ の過 度に引き仲 し た 写 真 像の観 察に おい て み られる類 似 の 現 象 (小 笠 原,
1973
)とも共 通して いること,
そし てこれら が すべ て像 の 拡大と結びつ い て い ることに よっ て裏づ け ら れる.
そこ で次に視 野の一
様な拡大に よっ て,
ど うして異 常 現 象が生 ずるか を問わ ねばな らないが,
外 界 繰の拡 大は一
見 きわ め て単純且つ簡 単 なことで,
そこ に何 も問 題は ない ようである が, 実は外界 縁の中に含まれて いる儔報 の 内容を若干変 質して しまう効果をもつの であ る.
し か しそ れをい う前に まず 空 間 情 報 知 覚の碁 本に 言及して お く必要がある.
自然の視 野の知 覚情報 環境 内の諸 対 象か ら観 察 者 の眼に入射さ れ る知覚情報は,
以 前 Ittelson (196G
)が 相互交 渉説 (Transaction The 。ry )の主張をする に当 っ て示 し た独特の 図解の ような,
きわめ て 不確定で, 無 限の解釈の可 能 性 を もつ 簡 単 なユ ニ ッ トか ら成ると考え るのは無 理である.
彼の示し た図は完全 な 還 元 条 件 下の 特殊 なケー
スを 抽 象 的に考え た机上の産 物で, 現 実 とか け離れ た虚構である.
現実の対 象の大きさある い は形の情報は
,
単に その対象を周 囲か ら限る広が りの外郭とし て与えられる ような もの でな く,
そこに多 様 な 惰 報 がか らん でお り, 最 少 限に見つ もっ て もその対 象の空 間 内の 定位を決 定 する距離の cues を含む惰 報と一
緒にセ ヅ ト された,
情 報のネッ ト ワー
ク として与 えられる,
そし て その中に 種々 の不 変項 (invariances)(柿 崎,
1989
)が,
将来,
大 ぎ さ・
距離 の 不 変則 (size−
distance invari−
ance )に発展 する芽を もつ よ うな 不変 項が内在して い る と考えるぺ きで
,
むしろGibson
(1950
) 風の考え方が (柿崎,
1989)実状に近い と考え ら れ る.
そ し てヒ トを含め光刺激に敏速に反 応 する生 物は,
か かる情報網中で 生活するこ とで,
その中に含まれて い る 不変 項に出会っ て触 発さ れ,
種々 の反 応を試み る ことで 環境へ の適応を進めて い く,
その適 応の進 行 中,
不 変 項 を媒 介に し て外 界の対 象の特 性に関 する悟 報を解 読 する こ と を体 得し て い く.
そ れ が知 覚ま た認 知の 成立 で あ り, その解 読に必 要 な文 法は,
その生 物の系 統 発 生 なら びに個体 発生の過程 中で,
環境事物との出会い と交 渉を 通 じ て 獲得さ れ る.
つ ま リプ ロ グ ラミン グさ れて い くと 考えられる.
従っ て対 象の大 ぎさの知 覚 とい う一
見 ぎわ め て 単純な事が ら も,
単に眼の網膜上の対象の映 像の広 が りだけで達 成されるの でな く,
最 少 限 大 きさ・
距 離の 不 変 則 とい う文 法の裏づけな くし て は成 立し ない といえ るであ ろ う.
もっ と もこ の 不変則の当て は ま ら ぬケー
ス も報 告さ れてい るが, そ れ は む し ろ変則 的 条 件 下に おけ ること であっ て,
原 則 的,一
般 的には妥 当 する といえる のである (牧 野,
1963,
1969).
こ の よ うに し て成 熟し た生 物は,
現 実の外 界か ら 入射 して くる情報を解読 する た め の文 法をプロ グ ラ ミン グ さ れているので,
その情 報 を適 確に解 読 する が,
もし,
そ の情報が 入射の中 途で何か の影 響を受けて変 質し,
擬 似 の情 報に転 化 する な ら ば,
そ れ が通 常の文 法に よっ て解 読さ れるこ と に よ り誤読が生じ,
外 界 対 象の ま ち が っ た 特 性,
あ るい は姿と し て 知覚, 認知さ れ るこ とにな る 筈 である.
そ れが異 常 現 象 として経 験されるとい うことに なる の であろ う.
拡 大 視 野の情 報 そこで次に外 界から眼に入 射し て くる外的刺激の映傑を,
単に拡大するだ けで映像 中に含 まれる情 報の一
部に変 調が生じ,
擬 似 情 報に転 化 する こ とを 示し て み る.
話 を 簡 単にする た め次の 二種の事 態 を 設定する.
事 態1 ,
観察 者か ら2m
の 処に 大き さ10cm
の近対 象A
が,3m
の処に同じく10cm
の遠 対象B
が ある.
観察者は 正常の視 力の持主,
その場 所は空 間 知覚 の cues の豊 富な full−
cue situation とする.
そこ で まず 初め両 対 象 を観 察 し
,
次に拡 犬 倍 率2の光 学 装 置 をつ けて再 度 両対 象を観 察 する.
外 界 像は当 然 2倍に拡 大し て い る.
次は事 態1
で, 装 置をはずし て裸眼に戻り, あ ら た め て対 象を観 察 する.
次に1m
だ け前進し対象へ の 距 離 を 1m 短 縮 し た 位 置で両対象 を 再 び観察 す る.
以 上 で あ る.
こ の事 態1
は事態1
(外界 謙の人工的拡大)に 最 も近 似し た情 報を生 む 現実の環 境の モデル であっ て,
これ以上近 似す るモ デル はあ り え ない.
そこ で こ の最も 近 似 する両 事態を対 置し て, 観察の 際に得ら れ る情 報の くいち がい の生 ずる有様を8項 目選ん で リス ト に し た の が表 5である,
表 中の数 字は対 象の大 き さま た は空 間の 広 がりを観 察 者から見た視角 (視 線に垂直な 広が り一
一
観 察 距 離)の両 事態に おける前 後の観 察に よる変 化,
ま た はその比 を示 す,
そ れで,
各項の説明 を 加 え る と,
第 2項はA
対象の す ぐ近 く (直 下 )の地 肌 (地 面ま たは床上)の模 様を想 定し,
そ れの 構 成パ ター
ン の横 幅の視 角,
第 3項は 同じ く その パ ター
ン の 縦 (奥 行)の 長 さ の 視角 (Gibson,
1950
), 第 5,
6項はこれに準ず る.
第7項は パ ター
ンの 縦の視角の集合 密 度の AB 問の勾 配 (密 度 比)(Gibson,
1950),
第 8項は AB 間の距 離 の 視 角 (小 笠 原,
1965,
Ogasawara ,1966
)を示 す.
(表の数字の 算 法につ い て は 次 回に報 告の予定 ),
表 を見 渡 す と 次の 3点に気 付 く.
1) 第1項,
第 2項 を 除 ぎ,
両 事 態で視 角 比の数 値 が 全 部 くい ちがっ てい る こと, 2)総 体的傾向と して 数 値が増 大して い るこ と (比 が1
以 上 ),
3
) 数 値 増 大 (比 )は事 態皿がよけい に著 しい こと.
まず 両 事 態に おける数 値の くい違い の 出る理 由は,
事 態皿 の数値変 化に は,
距離に反比例 するもの と,
その 平 方に反比 例する もの とある.
つ ま り距 離の 1次ま た は 2次の関 数である.
そ れに対し事 態1の変 化は距 離に関 係な く定 数 (倍率 ) 変 化で ある.
これで は くい違 うの は 当然で ある.
実は単に くい 違うだけでな く, 事 態 E の数 値 変 化はすべ て複 雑だが,
自然の環 境の示 す 実 態 で あ る.
それに対し事 態工 の変化中に は現 実に はあり得な い 虚 偽が含まれて い る.
い くつ か あ る が1
例 だ け 示 そ う,
第 3項を見る と K /2002→ 2K /200± とある,
これ は距 離 2m は変り な く床上の パ タン の長さ が 2倍に なっ てい る,
つ ま り同一
距 離内に2
倍大の パ タソ (タ イル と考え るとよい)を前と同数しきつ め た とい うこと で, 全 く不 可 能 事で ある.
つ ま り虚偽情報に変 質し たの である.
事 態1R
こはか か ることは全 くな く, すべ て現実のモ デル で シ ミニ レー
ト可能である.
だ がこ の よ うな考察ぬ きで考え る と,
外 界 豫の一
様な 払 大は何の変哲 もな く単純で, た だ網膜 像が大き くな る表 5
1.
A
対 象の大 き さ 2.
A位置の パ タン の 幅 (K >3.
パ タン縦 (奥行)の長さ (K
)4.
対 象B の大き さ5.
B位 置のパ タン の幅 6,
パ タン縦の長さ1
事 態 工 (視角変化 ) 10 20 獅 → 20广
(1
:2
) K2K
π →2
。0
= (1
:2
) K2K
嘛 → 200、 = (1
:2
>10
20
緬 → 300 = (1:2) K 2K π → 齋=
(1:2)K
2K 300・→ 300广 (1:2)7.
AB 間のパ タ ン密 度 勾 配 (A ,B
に お け るパ タン 視角比)8.
AB
間奥行距離(
2002K
3002K
)
一(
券
i
器
)
= (2.
25:1
)→ (2.
251
) = (1:1) 100200 (200十
100
)2
×100
= (1
:2) 200(200一
ト100
) 事態1
[(視角変化 ) 10 10 壱6
す→
頂广
(1
:2
) K K π → π=
(1:2
) K K = (1
:4
)−
り 20021002
10
1D
緬 → 至厰广
(1
:1・
5)K
K
翫 → 葛面=
(1
:1・
5)K
K
300・→ 200广 (1:2・
25)(
2002K
’
3002K
)
一(
、t2 、誌
)
= (2.
25 :1
)→ (4
:1
) = (1:1.
78) 100 →200
(200
十100)100
獅
+100) ≡ (1:3) だ け
,
そ してその網 膜 豫に は個 有の大 ぎさ な ど な い か ら,その大きさ が変っ ても,全 体 が一
律に変る な ら, その 変 化 すら気 付かないだ ろ うし,
いわんやその視 野 内の 他 の篋との比較でその大 きさ変 化を測 定しよ う とし て も,
そ れ は出来ない と考えるのが むし ろ常 識的である.
だ が 事 実は甚だ奇であっ て,
単 なる網 膜 像の拡 大が擬 似情報 を生むの である.
しか し擬 似 とい っ て も,
情 報 が すべて破 壊されるの で な く自然の情 報とのずれ はあるが,
全 体 的にみれ ば 両 事 態に共通 点も多々あ る.
前に触れ た よ うに一
般 的 傾 向 と し て両 事 態 と もそ れ ぞれの項で数 値増大 (比が1
以 上) がある こと がみ ら れ る.
こ の数値の増大は自然の事 態で は距 離の縮 少に対 応 するもの である が,
逆にみ る と対 象 の距 離 短 縮 をつ げる cue とし ての 効 果を もつ と考えら れ る.
そし て こ の数 値の増 大 (比 )が事 態且 に お い て 工 よ り著しい こ と は, 事 態皿にお け る距離 短縮の知覚の cue の効果が よ り大な ること を告 げる もの と推定さ れ る.
以 上 は自然の様相 をモ デル 化 し た1
の事 態と人 工 的映 像拡 大の1
の 事 態 との一
般 的 比 較で,
その 差の指 摘であっ た が,
こ の差異をふ ま えて懸 案の大きさの恒常の問 題に進 む,
大 き さの恒常 大きさ恒常とは今さらな が ら,
客 観 的に等 大の 二対 象が観 察 者か ら異な る距 離に あ る と き, 両 対 象か ら観 察 者に到 達 する視 覚 刺 激(視 角)の大 き さは 距 離に反 比 例する の で当然大小の差を生 ずる.
しか る に こ の差 異のある刺激 を受 容し な が ら,
その知 覚に お い て はその差が消えて両対 象が ほ ぼ等しい大 ぎさに見え る現 象を さし て い うわけである.
そし て こ の刺激の落 差を 埋 め合わ せ,
平 衡 化 する知 覚の機 能が,
その場の空 間の距 離知 覚の cues の効 果と緊 密に結びつ い て い る ことは,
その研 究の歴 史に於い て証明ずみ である.
そ うい う 目を 以て表5
の リス ト に 立 ち帰 り, 事k4
ll
のA
,B
の対 象 (1
項,4
項)を比較し て み る.
する と1m
の距離短 縮 で,
両対 象と も視 角 増 大 するが,
A の増 大の 方 が著 し く,A
対B の比が1.
5:1
から2
:1 に,
つ ま り1,
33倍 に ふ くれ 上がっ て い る.
ところ が これに見 合っ て距離知 覚の cues (2項 以 下 8項 ) もすべ て 距 離の 1次,
2次の 関数 と して増 大し,
対 象 視 角の 1次 関 数 的 変 化 と合 則 的 な 共 変 関 係を以て連 動して (不変項〉,
1.
33倍に まで ふ く れ上 っ た A ,B 対 象の視 角 落 差を知 覚の機 能に お い て殆 ど完 全に埋めつ くし平衡化し て し ま うこ ともま た証明ずみで ある
.
なぜな ら,
full−
cue situation で し か も比 較 的 近 距 離 内で は,
常に殆ど完 全に近い 恒 常現象が成立すこ こで事 態 工に 目 を転 ずる と
,
ここ で も距 離 知 覚 の cues の数値は事態 丑 ほどでは ないが, 殆どすべ て増 大 して いる.
その ことは拡大 視 野 内で諸 対 象がは っ き り前 進し,
観 察 者に近 接し て見え る現 象に よっ て裏 付 けされ る.
か か る距離の cue の効 果の増大は と り も直さず二 対 象の視 角の落 差を埋め平 衡 化 するポテン シ ャ ル の増強 につ な がっ て い るわ けである.
とこ ろが こ こが重 大 なの であるが,
事 態1の A,
B を比 較 する と (1
項・
4項) 両 対 象ともに視 角は大 き くなっ て い るが,
その落 差は全 然 増加 してい ない.
1.
5:1
の ま ま である.
こ の よ うに 視 角の落 差の増大のない ところに,
落 差 を 埋め,
平 衡 化 す るポ テ ン シ ャ ル のみ増 大し た ら結 果は も う見.
えて い る,
落 差を 埋め,
平 衡 化 するは たら きがゆ き過 ぎて, 逆 落差に ま で押し 上げる であろ うこと は ま ち がい ない.
事 態1
に お け る距離 cue の 増強に よ る平衡化ポ テン シ ャ ル の増大が ど れ程か は不明であるが,
仮 りに事態且 の ポテン シ ャ ル の増大量1.
33 の半分 (幾 何 学 的 半 分つ ま り平 方 根)と お さ え て み る と1.15
となる.
そこ で事 態 1で は 1.
15 倍の ポ テン シ ャ ル増大が生じ て い る と見 込 むと,
前か ら存 在し たポテン シ ャ ル との合 成で 1.
5×1.15=1.
73 と なる (これで も事 態1
の合 成2.
00よ りず っ と低い).
そし て これが 対 象の 視 角 落 差(増 加し て いな い) 1,
5:1 に働 けば, 結 局 1.
5 :1×1:1,
73=
0.
87:1 (もしくは1
:1,
15)と な る.
そ れは A :B
の 視 角 比 1.
5:1
を抑えて逆の1
:1.15
まで押し 上 げて解 読する こと に該当する.
つ まり近 対象A
よ り遠対 象B
を大き く 見る勘定にな る.
今こ の過 剰 な壇め合せの誤 読の結 果を外界に投 射し た モ デルを考え,
遠対 象 B を11,
5cm
に し た とする.
そ れに A 対象をマ ッ チ させ て (正常視力の裸眼観察で) 仮 りに11.
3 crn の測定値が出た とする と , そ れ を, 投射 結 果でな く客 観 的の B の大 きさ10cm
を もとに計算す れば Z=
1.
30 と出る.
歴 然た る超 恒常の値で ある.
し か し解 読の結 果得た ところの投射値たる11.
5c
皿 で計 算す れ ぽ Z=
O.
96
と な り,
ごく平 凡な恒 常 現 象に過 ぎ な くな る.
こ の ように考えて くる と,
我々 の実 験で得た ところは,
以 上に想 定された とこ ろ と類 似の事 態か ら発 し た結 果 と考 えるこ とが出 来よう.
もし,
こ の推 論にあ や ま りなけ れぽ,
そこ に出た超 恒 常の現 象は,
拡 大 視 野 の条 件に よっ て引 き 出された変 質 情 報の誤 解 読から来た み かけの超 恒 常で,
むし ろ擬 似 超 恒 常 現 象 と呼ぶのが 適 切の よ う に思わ れ る.
::刺 激 比 較 法の適用性 以上の事 情は又こ の擬 似 超 恒 常の現 象に対し て,
二 刺 激 比 較 法を使 用し てその異 常 さを 検 出で きるこ との理 を 明 らかにして くれる,
そ れは こ の異常 現象の起 因が知 覚過程の 内部でな く,
刺 激 受 容 以 前の段 階にお け る, 入射像の拡大に よっ てその像 中に 含まれる外 界 情 報のネ ッ トワー
ク に変調を生じ, 近 対 象 の大 きさ情報を 不 当に抑制する ことに なっ て,
そ れの過 小 視の結 果 を 招い たことに ある,
か か る状況下で, 遠近 両 対 象 を 等マ ッチ させれば,
現 象 的に小さすぎる近 対象 の客観的 大 き さ を増すこ とに よっ て補 う必 要が生 じ,
そ れ が近対 象の客観的 大 ぎさの 増 大 量とい う測 定 値 となっ てあら わ れ る.
つ ま り超 恒 常の検 出とい う結 果に達 する こ とになる.
し か しこれは対 象の大 きさの情報と距離情報との つ な がり関係の異 変に よ るものであるか ら, そのつ なが りに 関 係のない事 態で は話は別である,
例 え ぽ 等 距 離 こある 二対 象の比較事態では,
視野拡大に よる像の変 化は両 対 象に対し同様に あ らわれ,
その比較か らは変化につ い て 何 も検 出 されないわ けであ り,
RQck (1966
)の い う通り で あ る,
し か しGogel(1968)は明らか に遠 近の差の あ る 二対象の比 較に よる,
大 きさの現 象 的 変 化検出の無効な こ とを論 じてい るの であるが,
これは到底理解し が たい.
そし て これこそ彼の論議の 机上性を疑わし め る所 以であ る,
事 実,
こ こ に引用の彼の報告に関 する限 り,
両 眼の 左 右 距 離を拡 げるの と同じ効 果を 生ずる装 置の実験は あ る が,
彼が言 明し た視 野 拡大の実 験は全 く見当ら ない の である.
いず れに し てもは っ き り し た実験 的 裏 付 け が 得 られるま で は,Gogel
の説に従 うわけにいか ない (倶し Gogel の説に対 する疑義はた だ この一
点に か か る だ け で,
その論 文 自体は 傾聴すべ ぎ見解に満ち た卓説である こと を,
その論 文の名 誉のため に付 言し て お く〉,
そ れに対し逆転 視野の場 合は, 問題 が 全 く違 うの であ る.
逆転視野 の条 件 下で は,
入 り来る情 報とし て の外 界 像が全 体と して逆 転し て はい る が, その中の対 象の大 き さの情 報と距 離 情 報との結びつ き 関 係に何の異変も生じ てい ない筈である.
つ ま り外 来の入射 刺激情 報に は,
大 き さの恒 常 を低 下させ る起 因 となるものが存 在して いな い と考え ら れる.
従っ て,
大き さま た は形の恒常低 下の 真 因は恐 ら く,
全野逆 転とい う異常 事態に よ る内的 シ ョ ヅ クともい うべ ぎ,
認 知 過 程 内の ス トレ ス 様の変 動に よ る と推察され る.
その ことは装 置 着 用 後わずか数 日 で恒 常低下の現象が後退し,
恒 常回復のあらわれる事 実か ら も察し ら れ る よ うに,
内 的ス トレス の弱ま り, 解消に よ っ て,
回 復が生じ た と す れぽよく理解さ れ る.
そ して又 これ ら恒 常の 低 下 現象が, 直接に外的 刺激との つ ながり に関 係し ていない こと が,
二刺激比較法に よ る検出の で ぎない ことを 物 語っ て い るとい えよ う.
そ れに対し視 野 拡 大 条 件に よ る歪 みは,
起 因が外 的 刺激の異 変にあ るの で
,
そ れ が除 去 され ない限 り真の 異 常 回復はな く,
た だ ある とすれ ば自然の事 態では経 験 する こ とのない, 全 く新 らしい異 常な情報ネッ トワー
ク に対 する新適 応の 学 習が生 じ うる かもし れ ぬ とい うこ とであ る.
し か し そ れは恐らく相 当困難で,
その適 応 (学 習〉 進行は徐々で あろう と考え ら れ る,
その ことは筆 者の開 眼 手 術後の眼 鏡 着 用 既にニ ケ年にな ろ う とし て い るが,
擬 似 超恒常を 初め,
すべ て の異 常現 象が依 然 消 失し て い ない こと と関 係 ある ように考え られる (実験は眼 鏡 着 用1
年半の時 点 )。
もっ と も逆転視野の実 験 中は
,
逆 転用 装 置を絶え間なく着 けっ 放し にする 必要があ り (牧 野 ),
瞬 時でもはずし て逆 転 条 件 を 中 断し正 常 視 覚を 入 れこ む と,
逆 転 視 野へ の順 応はあと戻 り し て進 行がにぶるとの こ とであ る が, 筆 者の 日常 生 活は以 上の逆 転の研究 者の あり方と は か け はなれて お り,
随 時 眼 鏡を はずし た りか け 直し た りするの で,
眼 鏡 視 野へ の順 応 が わる く,
その た め いつ まで も異常現 象が続 くの で はない か との疑いが も た れ る かもしれ ない,
し か し筆者が眼鏡を はず すの と 逆 転 視 野実験で観察者が装 置をはず すの とに は根 本 的な 違いがある.
それは,
逆 転 視 野の観 察者は装置を はずせ ば, 瞬 間に 正常視界が帰っ て くる.
し か し筆 者の場合は 眼鏡を はずして も正 常 視 野は戻ら ない.
極 度に ボ ケ た鱇 の世 界で あっ て,
よ ほ ど大 き く且つ ぐんと近 くの物で な い と同 定でぎない.
例へ ば 実験に使 用し た 12evn の円 板な ど は輪郭も何 もなく,
ぼやっ と し た白色の 拡 散の か た ま り がある だけで,
形 も大 き さ も 圃定できない.
そ う し た世界が見えるだけで,
と うてい 眼鏡 世 界の あ や ま り を 正 す 規範とな る よう な世 界が帰っ て く る わ けでない の で,
逆 転 視 野 観 察 中の 装 置はずしの条件とは極 度に異 な るこ と を付言 し て お き たい.
な お,
さ きに二刺 激 比 較法の適用,
不適用につ い て,
現 象 差を引き 出 す 原 因 が外か内か と い うことで簡 単に片 付けた が,
本当の問 題の所 在は もっ と別のところに ある ようである.
とい うのは普 通の大 ぎ さ恒 常の 測 定で も,
cue の 多 少 とか,
両 対 象の分 離 角の大 小とかの外 的 条 件は もとよ り 観 察 態 度の ような内な る条 件の効 果も十分測定値に反映 する.
つ ま り検 出で ぎる,
むしろ難 問なのは二 刺 激 比 較 で検 出不可 能な場 合の方で,
その構 造を明らか にするこ とは緊 急の課 題であるが,
今 そ れに立ち入る余裕 がない の で,
た だ拡大視野条件の下で二刺激 比較法の適用 可 能 の理 由を考 察 するに と どめ てお くこ とにす る,
こ の報告を 終る に 当っ て,
開 眼 手 術で執 刀な ら び1こ治 療の 労を とっ て下 さっ たK 大 学 病 院 真 島,
林 両 先 生iこ,
そ の経 過を 終姶 あた た か く見 護っ て下 さっ た 内 科の 尾 仲 先 生に,
そし て本報告に 関し重 要 な 数 篇の 文 献を 教示 し,
且っ コ ピー
を調 製し て 多 穴の便宜を与え ら れた牧 野 教授に深い感謝の意 を 表 す る.
引 用 文 献Gibson.
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