香川大学農学部学術報告 算29巻第61号167∼175,1977 167
土砂災害に関する地質学的,土質工学的研究(Ⅰ)
−7617号台風による土砂災害の特色叫一
斎藤 実,横瀬 広司,青柳 省吾,山口 宣良
GEOLOGICAL AND GEOTECHNICAL STUDIES ON
THE SAND DISASTER(Ⅰ)
−Peculiarities of Sand Disasters Occurred at the Typhoon No.7617−
Minoru SAITO,HirojiYoKOSE,Shogo AoYANAGI
and NoriyosbiYA九蜃ADA
Severe sand disasters occurred at downpour of the typhoon No.7617in Eagawa Prefecture,
especia11yin Shodos!limaislandandin eastern partofit. As res111ts of the researchfor39
strickendistricts,theauthorswereconcludedas follows:(1)The most of sources ofte
largeslopefailure and mud flow were obser・vedatgraniticreg10nSneartheborderofabase
rockand a cap rock.(2)Gentle sloped regions where rnany humanlives werelost con・
sisted of the accumulated old slope failure and mud flow.(3)Many mud flows occurred
in granitic hi11y r’egions whereless−Weathered・big rocks existed.(4)There were many
peculiar sIope failures which are named‘‘Erosive flow−type Surface slope failuIe,,by Mr・
Saito,OneOf the presentauthors.(5)The mostofreasonsfor occurrence ofsanddisaster
may be regarded as dis−COntinuityofgeologica王and geotechnicalproperties of soil.(6)
There are four types of relations between slope failure and degree of rock weathering.
In these sand disasters,authors divided the mud flowinto four types byits mechanism
and pointed out some dangerous hilly reg10nSin Kagawa Prefecture,ranking the degree of
dangerofsand disasterinto four・
7617号台風に.よってもたらされた集中豪雨によって二番川県全域,特紅小豆島および東蛮地区に.ほ大きな土砂災害が起 った.祭者らほ39ケ所に.およぶ被災地の調査の結果,以下の事項を見出した.(1)規模の大きい崩壊,土石流の発生 源はほとんどが基盤岩と帽岩との境界付近の花崗岩地静である・(2)人的被害のあった緩傾斜面地域は過去の崩壊・ 土石流堆積物からなる地域である.(3)花崗岩のみの丘陵地域での土石流把.は巨大岩塊が存在している場所で発生し たものが多い.(4)筆者の1人,斎藤が「侵食的流動式表層崩壊」と名づけた斜面崩壊が多くみ.られる.(5)地賀, 土質工学的土の不連続性が発生の原因となっていることが多い・(6)花崗岩の風化皮と崩壊との関係は4つに分類で きる.これらのうち特に.土石流紅ついて−は械梼別紅4種類に分類し,主として地質学的見地に.もとづいて香川県下の丘 陵地帯における土砂災害危険度を4ランク把.分け,危険場所を具体的把持輸した. Ⅰ,ま え が き 7617号台風によってもたらされた集中豪雨に.より,香川県全域,特紅小豆島および東讃地区には大規模な土砂災寄が
斎藤 実,横瀬広司,青柳省吾,山田富良 香川大学戯学部学術報告 168 起った.・その被災地の多くは花崗岩地帯紅あり,そこほ全体として−老年期の丘陵で,山形は丸味をおびて岩石の風化が 極端に.進行し,沖積平野紅対して20度前後の傾斜角で接している場合が多い.風化土はマサと呼ばれ,土質工学的に・は 砂質で締め固めやすく,セソ断抵抗が大,透水性も大といった長所と,粘着力が小で塑性領域が狭いため,流水や降雨 によって容易紅侵食・破壊されるという短所をもっている(1). このような土を含んだ花崗岩丘陵は,地質学的に2つの形式に.大別できる.1つは花崗岩のみからなる場合,もう1 つは,いわゆる瀬戸内火山の影響を受け,基盤の花崗岩の上に凝灰岩または集塊岩などの火成砕屑岩が,さらにその上 紅各種安山岩類の熔岩が帽岩状に発達して−いる場合とである.火成砕屑岩や安山岩類の風化土はマサとは正反対の性 質,すなわち粘性土で締め固めに.くく,セン断抵抗が小,透水性も小であるが,粘着力が大で塑性儀域が広いという性 質をもった土であるとされている(1). 7617号台風に.よる土砂災害に.おいても,単なる斜面崩壊(節理崩壊を含む)および小さな山ヒダの一・次谷に沿った 「侵食的流動式表層崩壊」といった小規模なものほサ そのほとんどが前者にあたる花樹岩のみの地域に.発生し,その数 は小豆島関係だけでも約180ケ所に.も及んでいる.大規模な崩壊ならびに.これ紅伴う土石流の発生した地区は,両者い ずれの形式の斜面に.おいても認められたが,今回特に被害が大きかった池田町谷尻地区をはじめ,小豆島関係だけでも 30ケ所に及ぶ地区の大多数が後者,すなわら上部に.帽岩を有するものに.区分できる. このような帽岩の存在ほ,老年期丘陵化した花崗岩地帯の地形を急峻にしているだけではなく,下部の花崗岩地帯の 地表水や地下水の挙動,凝灰岩,集塊岩,安山岩類の風化土の特性,存在の形態などに.も関係し,それらの存在する斜面 に.おける崩壊や,それに伴う土石流の発生状況に.も影饗するものと考えられる.この論拠は一部既に報告している(2). 本論文においては,今回の小豆島を中心として香川県全域に発生した土砂災害の調査の結果から,上記のような地 質,土質の影響を中心として,.土砂災害の一山般的傾向について若干の考察を行なった結果を報告する. ⅠⅠ.7617号台風による被災地の概要 7617号台風によって香川県下に発生した土砂災害地のうち,小豆島18ケ所,四国本島側21ケ所,合計39ケ所紅ついて 調査,研究を行なった.その地区および災害の概要は図−1,2 義一1に示すとおりである. 図−・1/j\豆串間被災調査蝿
第29巻第61号(1977) 土砂災害に関する研究(Ⅰ)7617号台風の特色 169 図・−2 四国本島側被災調査地 表−1 災 害 の 概 要
区 分 ∃
】 被 災 地 被 災 地壊壊流壊壊壊壊壌境域壊流域壊流壊壊填り壊
. −\・.
斜斜土斜法法法斜法法斜土斜法土斜斜斜地斜
斜面 崩 壊 土 石 流 斜面 崩 壊 斜面 崩:壌 土 石 流 土 石 流 土 石 流 土 石 流 土 石 流 土 石 流 土 石 流 崩壊∼土石流 土 石 流 斜面 崩 壊 土 石 流 斜面 崩 壊 地 す べ り 地 す べ′ り 土 石 流 20 志度宅造現場 21志度カントリ− 22 津田北山地区 23大日本カントリ・− 24 白河原大池 25 原 間 新 地 26 中 山 大 池 27 南 川 地 区 28 儀左衛門地 29 坂 藤 池 30 汐 木 山 31比地大地区 32 山田池付近 33 千 歳 池 34.上家ノ浦地区 35 東久保谷地区 36 大 道 地 区 37 伊吹島北浦 38 琴平カントリ− 39 綾南宅造現場 1 殿川ダム付近 2 池田大川沿い 3 池田大池付近 4 室生・ニ両地区 5 神 ノ 捕地区 6 谷 尻 地 区 7 室生・赤坂地区 8 石 場 地 区 9 小鬼山地付近 10 神懸本通西谷 11苗■羽中筋川上流 12 楠峠∼橘地区 13 岩ケ谷地区 14 灘 山 地 区 15 小 郡 地 区 16 小 海 地 区 17 肥土山地区 18 四 海 地 区 19 門の池付近 これらの被災地区の実態調査の結果から,特に地質・土負等自然的要因を中心に.して考えると,概略以下のことが認 められる. (1)比較的規模が大きい崩壊,土石流は帽岩をもった山地,丘陵地域紅多く,土石流を誘発したと考えられる崩壊 の発生源は,はとんどが基盤(花崗岩)と帽岩(安山岩など)との境界付近の花崗岩地帯で生じており,多くは渓流の 谷頭部に相当する地点である.(図−3参.闇)そしてその勾配は−・般に.20∼35度の範囲に・あり,飢∼28度の場合が最も斎藤 実,横瀬広司,背蜘省吾,山田宣長 香川大学農学部学術報曽 170 500
l′000 I′500 2′000 2′500
距離(m)図−3 土石流の発生地点
多い.(2)今回の大崩壊,土石流で人的被害のあった緩斜面地域は,そのほとんどが過去の崩嘘・土石流堆硫物からなる
地域であり,過去における崩壊,土石流の反復および下流側への前進がみられる・(3)花酪岩の魂からなる丘陵地域での土石流においては,方形節理から発達した未風化の巨大岩塊が点在する地域
で多く発生しており,この岩塊が果した役割についても検討する必要があるものと考えられる・ (4)いまだ流路としての機能が発達していない山腹部に.おいても,大恩の降雨に抗しきれずに山地に蘭差別的にひ っかき傷が生じたのが今回の土砂災害の特異性の−づであった.これについで筆者の一人斎藤は,一般の土壌侵食の形 態とは区別されるものとして,「侵食的流動式表層崩壊」と命名した.〃レやガリなど把.おいては点あるいは線的な侵食 であるが,ここ.で命名した現象ほ面的な土壌表面の状況変化を表わしている.これは風化層が厚い場合に多く発生し, 土砂自体の移動よりも地表永を地下紅導入することに.よって上磯造を破壊し,セン断抵抗を減少させ,密度の低下に伴 っで以後の降雨の浸透を容易に.す・る作用が重要である.そしてその結果谷筋を形成したり,土砂運搬の起点紅成長して ゆくものと考えられる. (5)堆砥物の厚さが薄い地域では基岩が露出し,表土がすべで押し流されたという事例が多く,特紅丘陵地域をゴ ルフ場,果樹園など紅開発した場所が元の谷地形に復元された例が非常に多いこと,前述した巨レキの存在などから, 老年期丘陵の地形的安定の問題,水平および鉛直方向紅おける不連続性の問題紅ついてさらに検討を要するものと考え る. (6)花崗岩の風化度および風化の形式と崩壊との関係紅ついては以下のとおりである・ イ 単なる斜面崩壊は風化の進行した軟マナ(風化度D2)地帯に多い. ロ 小さな山ヒダの−・次谷に沿った泥流式崩壊は大きな液状侵食となり,その流下跡には基岩:弱風化岩(B),中風 化岩(C)が長く露出している. ハ 谷頭部に.おける崩壊ほ,中風化岩(C)における節理型崩壊も駁著である・ ニ 軟マサ(D2)層の下位に.,割れ目の多い弱風化署(B),.中風化岩(C)があるといったよう紅不連続化がみら れる場所にも泥流式崩壊が多い.第29巻算61号(1977) 土砂災害に.関する研究(Ⅰ)7617号台風の特色 171 ⅠⅠⅠ.土砂災害形態の一般的傾向 小貫島を中心とした災害の実態の分析から,香川県下払おける土砂災害を土石流,斜面崩壊,地すべりといった3つ の形態に分け,その一・般的傾向を考え.てみた. 1.土 石 流 わが国匹.おける土石流の研究は,1950年代後半から1960年代にかけて,矢野,大同に・よって:仝5報に・もわたる精力的 な検討がなされており(3),これらによってそ・の基本的概念,機構などが明らかにされた・現在では土石流と略「主と して瑛流堆硫物が,先頭に眉屑群からなる盛り上がりをもって−,土,石,水が均質紅混じり合った集合運搬態をとり,
段波状紅流下する現象」と定義づけられている(4).近年は特に土石流と降雨盈,降雨強度との関係(さ)や,流域環境の
人為的変更との関連性(6)などについての知見が多くみられ,また土石流の発生限界を実験的に確かめる試ネがなされ る紅至っている(7). 一・般的にわが国に.みられる土石流は,その発生原因紅よって以■下の3つのタイプに分けることができる・ イ 崩横土砂がそのまま直進し,土石流に.発展する場合・ ロ 急激な出水で,漢床の堆較ニヒ砂または崩税土砂が移動し,土石流に発展する場合・ ハ 天然ダムの欠汲による場合. 今回の香川県下の土石流の場合,大部分は上記のイ型式のものであり,まれ紅口型式も認められた・また被災者の口 述からノ\型式と推定されるものもあったようである.イ型式のものは崩壊の最上端と堆積物がはぎ取られる洗掘部とが 明白に区別でき,それが平担部で堆積するパターーンである.こ.こでは土石流の各部位を,地表・地下水供給部(A),谷 頭崩壊部(B),洗掘部(C)および停止堆積部(D)に・分けて一枚討を加える・ A 地表・地下水供給部 いまだ洗掘作用が生じていない部分で斜面の上部に位屈し,植生が裸地に近いはど供給力が大きいものと考えられる が,傾斜紅ついては他の部分はど影響ほ受けないと考えられる・帽岩の有無によって,安山岩類の帽岩のある地層(A −1)と,花崗岩類の地層(A−2)とに分けられる・ B 谷頑崩壊部 この部分も帽岩の有無によって細区分されるむ現地調査の結果性質の急変する不連続面から崩壊が開始する傾向が認 められたので,ここ/でほ安山岩類と花崗岩類とが接触する型のもの(B−1)花岡岩類と崩積荷とが接触する型のもの (B−2)同じ花崗岩類でも人工的に練固められたものや巨レキの存在などで密度,垂水性などに差が生じているもの (B−3)に.分類した.傾斜はB−1において300または・それ以上,B…−2およびB−3では急傾斜であるはど特徴的 である.植生との関連性は比較的小さいが,裸地に近いはど不安定であるものと思われる・ C 洗 据 部 崩横土地帯(C−1)と残顧土地帯(C−2)とに分けられ,植生にほあまり関連性がなくなり,層の厚さや堆積土 の性質が関係する.傾斜は一・般に下流側はど小さくなる・ D 停止堆積部 堆積土地帯(D−1)と崩秩土地帯(D−2)とに・分けられ,傾斜は小さく一腰に4∼80,住居等が存在する場合 特に問題となる. それぞれの具体例は義一2紅示した. 義一・2 土石流のパタ・− ン D−1(D−2) D−2(D・−1) D−1(D−2) D−2(D−1) D−2 D−2(D−1) B−1(B−2) B−2 B−1(B−2) B−2 B−2 B−1(B−3) 6 谷 尻(池田) 8 石 場(池田) 11箇 羽(内海) 13 岩 ケ 谷(内海) 14 灘 山(土庄) 22 北 山(津田)斎藤 実,横瀬広司,青柳省吾,山田宣長 香川大学農学部学術報告 172 2.斜 面 崩 壊 斜面崩壊についての研究ほ,マクロな見地からは地形学的乾すすめられており,崩壊地形の特性(8)ならびにそれを 生見出す要因(9)が適確に把捉されるに至っている.また土石流の場合と同様紅,雨泣や降雨強度との関連(10)や植生 との関連(11)に.ついての検討紅加え,近年では特紅斜面崩壊の予知紅ついて庚験的に.,あるいは数遼的紅数多くの研究 がなされ,予測式が提案されるに至っている(12{′14).斜面崩壊そのものほ,一・般に土石流把此ぺて規模が小さいもので あるが,こ.れを土石流廃盤のパタ−ンに.あてはめてみるとB+Dの形態をとっており,7617号台風時に.は県下に.おいて 無数の発生がみられた.その1例を中筋川流域紅ついて示すと図−・4のとおりである. 図−4 斜面崩壊の数(中広川) 斜面崩壊は土石流の一・部を形成したり,土石流の誘因となる可能性も有しており,図−・4に.おいても療高が大きいも のの多くが土石流へと発展していることから,これの予測は凄要な意味をもつものと考えられる. 3.地 す べ り 地すべり紅ついての形態的,成因的分類ほ現在ほぼ確立したものとなっており,その見地紅もとづいで考えると,県 下の地すべりの多くは崩壊的な幼年型またほ青年塾(1ぶ)に.属する第三紀層複合型(帽岩の影響を受けているもの)およ び火成岩地すべり(16)とすることができよう.その意味でほかなり斜面崩壊的性格が強いものであることから,斜面崩 壊の予測式を準用することも可能なものと考えられる.地すべりほ地表・地下水供給部(前記のA)と地すべり部とに 分けることができ,傾斜,植生等との関連性は比較的小さいが,いずれ匡.しても地質的,土質的な不達椀而の存在が問 題となるように思える.
欝29巻算61号(1977) 土砂災書に.関する研究(Ⅰ)7617号台風の特色 173 ⅠⅤ.要因の分析 1.地表・地下水供給部(A) 安山岩類の帽岩(A−・1)の場合:植生のある風化残枯土の浸入能は比較的大きく,特紅風化度B∼CII(弱風化岩∼ 中風化著)の板状レキを含む場合には著しい偲を示すことがある.ところがこの土がこね返されると投入能が著しく低 下し,はとんど不遜水性ともいえる状態となる.この最大の原因は団粒の取壊をはじめとする土構造の変化に.よるもの と考え.られ,現地でほ(A・−1)の崩積土においてこのような候向がみられた.(表−3参照)また(A一1)でほ−一 般に谷密度が小さく(17),そのため地表・地下水が集中する傾向があり,特紅メサ地形を有する場合には(A)として 最も危険な状態と考える. 義一3 浸入能測定値(谷尻,北山) 測 定 地 層 土l浸入能(cmノday) 安山岩貿崩横土 凝灰岩贋残硫土 花陶岩貿崩培土 花崗岩質締闇土 花崗岩質残積土(Dl) 花崗岩質残秩土(D2) 花崗岩類地層(A−2)の場合:浸入能は−・般に大きいが,風化度,締まり方の程度によって水の供給能力は異な る・すなわち,石切琴のように風化が進んでいない(風化皮A∼CII,新鮮岩∼中風化岩)場所や,道路のように締周 めがなされてこいる場所が(A−2)として重要な意味をもっている.(義一3参照)これは後述の(B−3)との関連で 考えられる.このように・(A)ほ,それ自体の浸入能が小さいはど,あるいはその面積が広いはど大きな供給能力をも ち,土砂災害の誘因となりやすいことが示唆されたと考える. 2.谷頭崩壊部(B) 安山岩類と花崗岩類とが接触する型(B−1)の場合:接触部で勾配が急変して谷頭となっていることが多く,殻灰 岩層をはさむ場合などには直接湊水が確認できるこ・ともある.一・般に・は(A−1)+(B一−1)の組合せとなるので, 最も大規模な土石流が発生する要因となっている.また帽岩のため比較的棟高が高く,大きな位置エネルギを有してい ることもみのがせない. 花崗岩類風化帯と崩積帯とが接触する型(B−2)の場合:花崗岩類風化残額土は−・般紅結持カが小さいが,崩横土 のそれはさらに著しく小さい.このために両者の境界面から剥離するような形態で崩壊が起る.(B−1)はどに.は大規 模でない場合が多いが,小規模なものや斜面崩壊的なものも含めると事例の数としては最も多い・(A−2)+(B− 2)となっている例が多いが,(A−1)が間接的紅影響しているものと判定できる例もみられる・ 締固め花崗岩類系土と非練固め土とが接触する塑(B−3)の場合:(B−・2)と類似したバク−ンを示す・人為的 な「開発」が災害の原因と考えられる例は(B−3)に多くみられる・主として締固め等による浸入能の低下と,造成 による勾配の不連続化などに.その原因を見出すととができる・
3.洗 掘 部
崩槙土地帯(C−1)の場合:通常,幅が1∼2mの小渓流に厚さ数m程度の崩積層が存在するときに最も顕著な 土石流がみられた.土石流の通過後は風化度B∼C王Ⅰ(碍風化岩∼中風化岩)程度の比較的新鮮な基暑が露出している 例が多くみられ,場合によっては谷頭崩壊部(B)の存在が明確でなく,洗掘部(C)のみによって土砂災書をひき起 している例(ⅠⅠⅠの1のロ型式)もみられる・ 残横土地帯(C−2)の場合:比較斜面崩壊の形態に近く,小規模なものが多い・これは(C−・2)においては土層 が薄く,かつ多くの場合植生を有していることによるものであろうと考え.られる・なお(C−2)ほ単独ではなく,(C −1)に伴って発生している場合が多いようである,斎藤 実,横瀬広司,腎柳省吾,山田宣良 香川大学戯学部学術報告 174 4.停止堆積部(D) 堆税土地帯(D−1)の場合:堆積部に集落が発達していることが多く,しばしば大災賓となる.崩壊部(B)から は速く離れている場合が多く,従って危険に対する対応や認識が不充分な社会的要因もある.土石流そのものほ急速に 停止し,厚い堆椒層を残す 崩概土地帯(D−2)の場合:農耕地として利用されている例が多い・Bからは比較的近く,洗掘部(C)の部分が 明確でないものもある.また,より大きな土石流が発生した場合,この地帯がCとなる危険性を含む. 5.斜 面 崩 壊 土石流の場合紅準じて考えて量ると,(B)+(D−・2)によっで構成されている場合が多い・斜面崩壊そのものの規 模は小さくて:も,崩壊の場所によっては影智が大きく,またこれが崩積土層をつくり,将来大規模な土石流を起す題因 をつくっている可能性もある. 6.地 す べ り すで紅ⅠⅠⅠの3で論述したように.,地すべりの多くは広義に・牲第三紀層内に・すべり面を有ナる第三紀地すべりである が,これに.詳細な検討を加えると帽岩の直接・間接的作用が認められる・また集塊岩質の崩粘土がすべりを起す浅屑屋 雄性地すべりや,安山岩類や破砕花崗岩類が地すべり的渦動を示すいわゆる火成岩地すべり等が地すべり部を構成して いる場合もみられる. これに対する地表・地下水供給部は,小豆島の土庄層群に対する安山岩類(A−1),西讃における三豊層群に対する 花崗岩類や和泉砂岩屑が地質を異にするものとして注目されるが,特紅前者紅ついては水の供給もさることながら,そ れ自体が荷盈となる影響紅大せな意味があるものと考え.られる・ なお,要因の詳細な分析,特紅.これに・関連した実験的検討の結果ほ第二報以降に.おいて論述する予定である. Ⅴ、土砂災害危険度分頬 ⅠⅤで行なった要田分析の結果を総合的に・みると,土石流を中心とした土砂災審に.よる被害を受けやすい条件に.つい て分類据針がうち出されたと思われる.すなわち,母岩が異なる岩石およびその風化物の存在が多いはど,残積,崩蘭 といった存在形態が種々推多なほど,地形も複雑なほど,人工的工作も加わっているほど,植生も裸地を含めて多彩な はど等々のように,水平,鉛直方向における状態が不連続になってし、るほど被災の条件が備わっているもめと考えられ る. この基本的考え方の下に危険度を分類すると義一・4のように.なる. 衷−・4 土石流等土砂災寄危険度の分類
区 分l分 類 F
義一4の分薄紅従って香川県下の丘陵地常を区分して載ると,ランクⅠではなはだ危険と考えられるのは,小豆島の はとんど全域,雨滝山,津田二北山八乗山,女木島,、男木島,屋島,峰山,国分台,城山,弥谷山,紫雲出山,高見 島,志保山などであり,麓部に花崗岩類の崩秩土層をもつ安山岩類のメサ,ビュート周辺部は眉急に防災対策を必要と するものと考えられる ⅤⅠ.あ と が き 本報では7617弓台風に.よる土砂災害の特色について抱托的紅検討を行なった.罪二凝以降においては,土砂災害発生滞29巻第61弓(1977) 土砂災害に関する研究(Ⅰ)7617号台風の特色 175 の機構に・、ついて実験的研究を続けるとともに・,1け過去の土石流堆積の状況,2.土石流の機構の形腰別解明,3,土砂 防災地図の完成,4.風化土壌の樽性の徹底的究明,5・斜面保護工の検討などをすすめてゆきたいものと考えでいる. 参 考 (1)斎藤 実,横瀬広司,青柳省吾,山田宣長:香川 県の土の物理・工学性に.関する研究(り風化残 積土に.ついて,番犬農学報,27,203−・209(1966)・ (2)斎藤 実,横瀬広司,須鎗和己:小豆島における 山地崩壊の土質学的,地質学的考察,昭和49年7月 集中豪雨災害の調査研究総合報告書,107(1975)・ (3)矢野勝正,大同浮之:土石流に関する基礎的研究 (第一磯∼算五報)防災研年報3−8(1959一−1965)・ (4)奥田節夫‥土石流,土と基礎23(4),76(1969)・ (5)瀬尾克美,船崎昌継:土砂審(主に土石流被害) と降雨盈について,新砂防26(2),6(1972)t・ (6)辰野良秋,掘内照夫,北沢秋司:流域環境の変化 と土石流災害について,新砂防27(2)(1974)・ (7)矢野勝正,大同昏之,角野 稔:土石流の発生限 界に関する実験,防災研年報12B,323(1969)・ (8)羽田野誠一・‥最近の地形学8,崩壊性地形(その 1)土七基礎22−9,77(1974)・ (9)羽田野誠一・:最近の地形学8,崩壊性地形(その 2)土と基礎22−11,85(1974). 文 献 (10)大村 寛,高橋敏男:地形解析紅よる山崩れの研 究(ⅠⅠ)∼雨患と山崩れの関係一新砂防29 (1),23(1976). (11)石川裕子,大森博雄,大欠雅彦:崩壊と植生との 関係紅ついて,一木常山地の与川流域の場合−一水 利科学109,75(1976).・・ (12)斎藤通草:斜面崩壊発生時期の予知,土と基礎 1ワ(2)(1969). (13)西田一彦,山本嘉一郎:断面の形状解析による自 然斜面の崩壊タイプの予知,地すべり11(3),11 (1974). (14)膏松弘行:山腹崩壊の予測式紅ついて,新砂防 2g(3),1(1977). (15)渡 正亮:地すべりの塑と対顔,地すべりざ(1) (1971). (16)安藤 武:地すべりの分類と地質特性紅ついて, 地すべり11(1),32(1976). (17)香川県:小豆島観光開発地域土地分類基本調査 (1975).. (1977年5月31日 受理)