浚渫埋立工事の沿岸水質環境への影響-香川大学学術情報リポジトリ

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131 第25巻第1号(1973)

波深埋立工事の沿岸水質環境への影響

田中 啓陽,井上 裕雄

ま え が き 最近,瀬戸内海沿岸各地で汝諜・埋立工事が行をわれている。この汝藻・埋立工事が水産環境に与える影響として, 1)漁場表失,藻場・瀬などの消失,2)水質底質環境の変化,夜どが考えられ,いたるところで問題を起こしている. 香川県多度津沖では,1970年10月から3カ年計画で,汝深土盈15×10¢m8によって1…86×106m2の土地造成が行 なわれているので,この汝諜・埋立工事に焦点を合わせ,それに伴なう諸問題の解明への一つのアブロ・−チとして周 辺水域の水質環境におよぼす影響について調査した.. 法 洲流枚(1.Omに懸垂)を浮遊させ,その流動軌跡を追い,また定点(Fig.1)で流向・流速の経時変化を測定(東 邦電探k.k.製CM−2塾流速計)して,海水流動の模 様を把握した。 減衰係数(α)の測定には内水研C型濁度計(1)を使 用し,必要に応じで曳航し連続記録(2)させた。 海水のCODは過マンガン酸カリ・アルカリ法によ った.海水そのままのCODをCODs,065FL millipore 負Iterで濾過した海水のCODをCOD/(Cf)で示す NH4−N,PO4−PはStrickland−Parson法によった SSは0。65Femillipore&1teIで濾別して千焼彼杵鼓し て決定した.SSの灼熱残留率はmilliporealterで得 られた懸濁物を丘1terとともに白金柑壷にてガスバー ナで約4時間強熟し,冷却後秤盈して求めた。使用し たmilliporeGlterの灰分は無視できる。 海水流動調査は1971年7月23,30,31日,減衰係 数測定は7月12日,水質調査のための採水は7月12, 15日であった. Fig.1.MapoftheTadotsu−Takumawaterarea,Show−

1ngObservationstationsandcoursesofsurvey−boat

formeasuringturbidity(●:12July,○:15July) 結果と考察 (1)海水流動 水質環境を調らべるとき,対象水域の海水流動の概況を理解することは基礎的に重要であるり 瀧潮期における海水流動状況をFig.2に示す巾30日ほほ低潮時志々島の北端に投入した測流板は西進し,粟島東 岸に沿って南下し,長髪鼻,不天ノ州を迂面して粟島港に向う.流速は0・20∼0・84m/secの範囲である○ 志々島一 亀笠島中央に10:27に投入のものは西進し約3.5時間で須田一粟島港中央に達する,0−25∼1・10m/secとかなり速 い。多度津港より約2km沖の測流板は西南に進み亀笠島北を過過して約3‖5時間で高谷鼻東端に達するu Oい27∼ 0‖91m/secであった.また10:20に多度津港西に投入した測流板は陸岸に沿って南西に進み約4時間で2・・2km流動す

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132 香川大学鹿学部学術報告

る小 瓶潮末期における詫間浦内の海水流動は0.10∼0.17m/secと緩慢で反時計囲わりである。

Fig.2.Features oftidalcurrent at800dtidein the Taknma・Tadotsu water area(HW:16:34, LW:10:04,30.July,HW:17:53,LW:10:57,31July1971)

Fig.3.Features oftidalcurrent at ebb tideinthe Takuma−Tadotsu water area(HW:11:42, LW:18:07,23July1971) Fig.4.ChartsofcuTrentVeCtOr. 落潮期の模様は次のようである(Fig‖3).粟島南端牛ノ洲鼻一伊砂子鼻の間に高潮前0.5時に投入した測流板は 0.09∼0.55m/secで志々島西端に向かい,低潮前15時に反転し,以後粟島東岸に沿って約0り2m/sec.で南西に向 かう。立髪鼻一高谷鼻の問および高谷鼻付近水域の洲流板は0,.20∼0…54m/secで志々島一亀笠島の間を通過し北東に 流動する.また牛の州束水域に投じたものは反時計囲わりに緩慢に環流する。 このように,多度津一詫間の沿岸水域では,沿岸にほほ平行に流動し,かなり速い−粟島港付近水域は,志々島一 乗島聞からの部分的な流出入を認めるが,流れが緩慢で停滞性が強いように思われる.、また詫間浦内も地形的に袋状 を呈し流動は綬慢である 粟島東端の立髪鼻と高谷鼻を結ぶ中央部に定点を設け,23日(月令07),31日(月令8.7)の両日流向・流速の経 時変化を見た 7月23日(Fig.4)の2m屑では高潮後約4..5時間にわたり流向は東北東一北々東で流速0一15∼0.32m/secである。 低潮前2時にはすでに反転が見られる.落潮前期には北西∼西北西に流動し,流速は007∼0小38m/secである.髄潮 期の流向は2m層で西北西であるが,7mは南西流を示し,幾分異なるのが特徴である 7月31日の小潮期の結果(Fig.4)を見ると,2m層では蘭潮前期には西北西∼西に流動しているが,後期にをると 西南西∼南に流れ,高潮前2時に反転を始める.落潮前期には,東北東∼北である.敲潮期の流速はP.13∼0.31m/sec

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133 第25巻第1号(1973) であった.他方,7m屑では蔵潮期は西・一西南西に流れ,流速は0・05∼0・27m/secとやや緩慢であった。 (2)多度津−−詫間周辺水域の水質 多度津一詑間周辺水域の水質の性状を見るために7月12日の濁度曳航調査にFig・1に与える24測点および7月15 日にFig‖1に示めす20測点の表層で採水し,分析した. a)灼熱残留率 一腰に,沿岸水城の水質環境は陸岸からの都市排水の影響を受けている.多度津一詑間水域においても,多度津, 詫間町からの都市排水および絶間浦内の貯木場などの影響を受けているであろうが,さらに多度津で行なわれている 汝凍,埋立工事現場からの土粒子付加が重畳している. 汝深,埋立工事に伴う土粒子付加を検討するには懸濁物の灼熱残留率(IR)を指標とするのがもっとも近道である・ 陸岸から沖合に向かってIRの変化の模様を調らべたのがFig小5である.多度津w高谷鼻沖合水域のIRを見ると,

2.3kmまでの沿岸部は60%以上を示めし,とくに1‖8×21Okmでは90%に達してい’る.23∼4、Okmの間で40%前優に

低減し,4km以遠すをわち高見島南水域で再び増加する.しかし,この高見島南水域では場所的バラツキが大きい・ Jone−Wills(8〉はPlymouthSoundおよびHamoazeでIRが26∼36%であったと報告して:いる.また著者ら(4)は1967 年備讃瀬戸水域で38%を得ている,IRがこのような倍以上の場合吼通常のSS(plankton,detritusなど)に土粒 子が付加されていると考えでよい′√ したがって,2.3kmまでの沿岸部は工事現場からの影響がかなり強いといえ.よう. 他方,23∼4Okmの間の水域でIRが低減しているの軋溢潮末期であって沖合水が割り込んで侵入流動したためと 思われる.4。Okm以遠はIRの高いところもあれば低いところもある.また,絶間一一粟島間のIRは全般的に低い が,場所によってヤや高い偉を与え.ていることからも,調査水域のかなり広い範囲に土粒子付加がみられるといえる・ l 1 0 ⊥ ●0◎ 1 0 9 1 1 ○ ● ● 0 ● す ○ ● ◎ 0 1 \ =u ‖l■ J J 2 5 1 1 ● ○ ◎ g O ︵=0 7 6 5 4 3 2 こ瑚∈“ぷS< ∴l. _ A ●C一−・1 ●

added silt40%

Lノd レ/// 一一′ O C・−2 015・・−」叶〉 H ●C−3 0C−4 015−Juh

●し● ●. 、

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1 2 3

7)istance from tIle COaSt m

4K

1 2 3 4 5 6 7 8 9101112 S S,nlgハ Fig一51ChangcsofIRwithdistancef王omthccoast

A:Tadotsu−KoyahanawateIarea

B:Takuma−Awashimawatcr area. Fig・6lRelationshipbetweenSSandashへ

b)懸濁物盈(SS)と灼熱残留(灰分)盈の関係 懸濁物盈と灼熱残留(灰分)盈の関係をみたのがFig一6である.前節での説明を考慮に入れると,当水域で竣潔, 埋立工瑚が行をわれていなかった場合,灼熱残留率は40%前後を示す線の上にほほ集ほる筈である.これ以上は, 一応,土粒子付加盈とみなして差支えないであろう C)栄養塩類,COD./と土牧子付加盈との関係 底泥中の無椀栄養塩類および溶解有検物の濃度は商い.したがって,竣深,埋立による底泥撹乱は周辺水域の栄養 塩類および溶解有機物の濃度に影響を与えるであろう.栄養塩類としてNH4−N,PO4・−Pをとり,また溶解有塀物量 をあらわす指棟としてCOD′をとり上げ,これが土粒子付加盈とどのように関連するかをしらべたのがFig小7であ るL、土粒子付加盈の増加につれてNH4−N,PO4−P,COD′のいずれも増加する傾向にある. 土粒子付加は波乱 埋立工事が主たる源であるけれども,NH4−N,PO4−P,COD/については都市排水からの付与

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134 香川大学農学部学術報告 も考慮しなければをらをい.このため,明確な相関は望めないが,傾向としては十分理解されよう巾つまり,土粒子 付加の多い所ではNH4−N,PO4−P,COD/も多い傾向にあり,汝深,埋立工事によって底泥を撹乱し,浮泥が流出す ると栄養塩類,溶解有機物も同時に流出しているのである. (3)濁りの分布 汝藻,埋立工事による濁りの点について,さらに詳しくしらべるために,Fig.1に示すコ・−スに沿って濁度計(1.O m層)を曳航した.観潮は高潮前3時から約3時間の間で,結果はFigい8である. 1 2 S?賢.ZT廿エZ 2 0 ハ八︶ 6 4 0 1 1 ∩︶ 0 0 写芝草︹l㌧Od ∈.ヘヒ︶ ︸u聖じこ芯OU 2 8 6 4 0 1 1 1 く如∈ 121 uO︻︸再コuヱ︼く l l J 06 0 1 2 3 4 5

Conte11tOf ad(led silt,mg/1 0 1knl

Figl8り Distribution ofattenuation coe餌ci− enton12July1971(Coursesshownin

Fig“1)

Figl71r Relationship between content ofadded silt and

Chemical properties of sea water。(●:12July

O:l町uly) C−1:陸岸から1日4kmまでの濁り(減衰係数)は2い1′−2.8m ̄1,1.4kmから沖に向かって濁りが増し,1い7kmで最 大3・8m ̄1に達する二1.7∼3..Okmでは低減し,3km付近では1.4∼1一.6m ̄1の範囲におさまる.1‖7km付近でαの きわめて高いのはエ事現場からの流出土粒子の直接的影響によるものであり,また1.7km迄の沿岸部のかをり高い α軋 都市排水の影響もあるが土粒子の付加が大きく作用しているといえる.Fig.5と比較すれば理解が−・層容易 であるひ C−2:陸岸から2・2kmまでは115∼2・OkmTl,以後やゃ減少の傾向があり,2.7km付近で1.2m.1にをる。Fig.5 を考慮すれば,0∼2.2kmでαの幾分高いのはエ事による影響といえる.しかし,この時にはC−1のようを顕著を濁 りの峰がみられをかった C−3:0・花mまでの沿岸水域は1一・4∼2L・2m ̄1であるが,その後1,3∼1.6m ̄1になる.土粒子付加の直接影響吼 あまり明瞭でないがみられる C−4,C−5:全般的に低く,1−.4∼1.9m ̄1の範囲にあり大きを変化はない.

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このように,多度津の汝沫埋立工事による濁りが,張潮時,沿岸に沿って西に流動し高谷鼻付近までその直接的影

響を認める (4)流動方向への拡散・希釈の度合 影響が流動方向に対して,どのように低減するかを調らべた. 髄潮時,この水域の海水流動は陸岸に平行に西 に流がれること,および多度津の工事現場の位置 を考えに入れると主たる海水流動方向は Fig」・1 に示す流線で表わされよう..そこでそれぞれの位 置での横断で得られた観測値のうちでもっとも大 きい借をエ事現場からの距離に対してプロットし, 主たる流動方向への低減の模様を把握したのが Fig”9である. 拡散希釈されるある物質の濃度をWとし,周 辺海域のベ1−スとしてのその汲皮をWゎ汚染源 近傍の平均濃度をWo,汚染源から主たる流動方 向に沿う距離£(km)の地点でもっとも高い濃度 をW¶lとしよう.そして次のような関係式を想定 する. (『飢−『ふ)/(『○−『ゎ)…eXp(−−スガ) Fig…9ではⅣとして,α,SS,PO4・−P,NH4−N, COD.′をそれぞれ考えている.ス=0.16km ̄ユ を 得た. ほほ指数関数的に低減していること,および土 ●ひ8 .. ◇098 0 \、 ご・、 \\、\.! ●

α 0 9 ● ︵ざlざ︶ゝざ帽き︶ 00 I ♂○ ● ●ロ 01ZIul\ oC(川「クⅠ5Jul、 Ot〉 oSS o:( 2 3 4 5 6 7 8 9 10 丁)istance fl・Om\\01ki噂field,km

Fig・9”Changes of properties ofsea water with distance

alongmainstreamfiomworkingfield・ 粒子流出に伴をって同時に栄養塩類,溶解有挽物 が溶出拡散している状況を認めることができる.エ事現場のごく近傍で土粒子の大きいものは沈降してこしまい,それ 以外のいわゆる浮泥は流れによって運ばれ拡散希釈されるようで,溶解物質と同じ傾向を示して低減している・もち ろん,ここで取り扱っているのは表層水についてである. あ と が き 多度津一緒間周辺水域の海水流動は,報潮時沿岸に沿って南西一画流,落潮呼北東一束流が優越し,その流速も盛 期には1.Om/secにも達する.転流は高・低潮時より1.5∼2.0時間早れ.瀧潮時の減衰係数分布を見ると,多度津汝 深現場付近では3.6m−1と着じるしく高く,濁りは距離とともに低減し亀笠島一高谷鼻におよぶ小 これは海水の流 動範囲とよく一致する.その直接影響域は−潮流劫域,すをわち多度津沖から西に約9kmである. 汝沫工事による底泥撹乱が周辺水域の水質環境に与える影響として,土粒子の付加はもちろんのこと,水中の溶存 有機軌栄養塩類等の濃度が明らかに高くなっているのが認められた.水中の栄養塩類,溶存有機物等の増加は当然 ・一段塵産に響くであろう.また,この種のエ.事が長期間行なわれることは周辺水域のみの影響にとどまらず備輩瀬戸 水域のべ・−スを高める役割りを持つであろう。 水質環境への影響を見る場合,土粒子滞染の直接的影響よりはむしろ水質環境に及ぼす間接的な影響の方が大きを 問題(例へば富栄養化との関連)を含んでいるようである.

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136 香川大学農学部学術報告 文 献 (1)古川 厚,その他:内水研報,14,ト151 (1961) (2)田中啓陽,井上裕雄:本誌,23(1),112−117 (1971) (3)JoNE,D…&M.S。WILLS:JMdr.,BiolAss ぴ&,35,431−444(1956) (4)井上裕雄,田中啓陽:未発表.

INFLUENCE OF DREDGING AND RECLAIMING WORKS ON COASTAL ENVIRONMENTS

YoshiakiTANAKAand HirooINOUE

SⅦmmary

Ofr’Tadotsulocatedon thewestern partofBisan Seto,thefbr・eShore has beenreclaimed,

uslngabout15×106m30fbottomsedimehtsdredged・Asanaturalcourseofevent,theadjacent WaterareahasreceivedthedischargeOfturbidwaterハ Thisresearchwasundertakentoclar坤theinfluenceofturbitwater・Onthecoastalenviron−

mentり Tidalcurrentandpropertiesofseawater)SuChastubidity,nutr・ientsandCOD,Were

investlgatedinthea句acentareaofthedischargesite

ThemaintidalcurrentssettowardthewestatOl3−l・1m/secalongthecoastinfl00dtideand

towardtheeastatO・2−Ol6m/secinebbtide

Concentrationsofsuspendedmatter,nutrientsand CODhad atendency todecrease with

distance along the mainstream.The relation between concentration and distance was exr

PreSSedasfo1lovs

(仇一昭)/(垢一喝)=eXp(一加)

Where Wb=ambientlevel,仇=1evelin theimmediate vicinlty Ofthe discharge site,桝㌦=

maximumlevelatXandx=distanCeftomthedischargesitealongthemainstream(km)。We

getthevalueof=0.16km ̄1.

ItcouldbeconcludedfkomtheseobserVationsthat(1)theoverflowdisposalofdredgedsedi−

mentsresultedinincreasedtubidityover・arangeOf7−10kmtowardthewestalong thecoast

in且00dtide,and(2)phosphateandnitrogenwereincreasedbyafactorof20r60Ver・ambient

levelsintheimmediatevIClnltyOfthedischargeSite

(1973年5月31日 受理)

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