• 検索結果がありません。

フライアッシュの物理性とその応用に関する研究 II フライアッシュの施用と土壌水分-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "フライアッシュの物理性とその応用に関する研究 II フライアッシュの施用と土壌水分-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

6‘7 第20巻第1号(1968)

フライアッシュの物理性とその応用に関する研究

Ⅱ フライアッシ.ユ.の施用と土壌水分

松 田 松 二・山 田 宣 良 Ⅰ は し が き 火力発電を主体とする諸工菓の膨張に伴い,フライアッシュの潜在的生産盛は増大の一過をたどっている・このう ちの良質の部分は人エポゾランとして利用されるようになり,その真価はますます広く認められつつあるが,多くは 未利用のまま棄却されているい資源の乏しい我国において,この莫大な鼠にのぼる未利用資源の効果的利用は極めて 重要であって,用途の開発に対する意欲も高まりつつある. ところで人工ポゾランの規格外にある部分の一・用途として農箕面への利用が考えられる、石炭は元来,古代におい て繁茂した植物が炭化したものであるから,その燃焼灰であるフライアッシ・ユには当然植物体を構成する各櫛無機成 分が含有されているはずであって,徴盈要素の補給を目的とした肥料としてこれが利用されている・しかし高温を体 験したフライアッシュ.は化学的に安定な形態をなしているので,その各成分は簡単に植物に吸収されてしまうことば なく,従ってそのままでは肥料的効果に多くを期待し得ない(1・2〉との観点から,これにある種の化学処理をはどこ して肥料化が計られたりしている.その他,酸性土壌の矯正劇的役割をフライアッシ・ユ・に期待するむきもある・これ らはいずれも化学的見地からの農業面利用である.ところが先報(3)で報告したように,フライアッシュ・ほ物理的見 地からも農業面利用に対する幾多の可能性を含んでいる、しかし,これらに関する報告は現在のところあまりみあた らない.そこで筆者等はフライアッシ.ユ.の施用が毛管上昇や保水力および透水性等を通じて耕地の土壌水分に対し如 何なる変化を与えるかを明らかにし,作物の水分環境の適正化をはかることを目的として実験的研究を行った,その 結果,ニ三の新しい知見を得たので,ここに報告するu Ⅱ 実 験 方 法 耕地にフライアッシュを種々の割合で施用した場合に,土一水関係がどのように変るかを知る為には,まず節⊥段 階として−,ある典型的な士族(粘土とか砂)にフライアノシ・ユを種々の割合で混合した場合に水分特性がどのように 変るかを明らかにすればよい.ひいてはこれが施用鼠の目安を与えることにもなる. 1)実 験 試 料 実験に使用した試料は,四国竃力火力発電所のフライアッシュ・(シルト賀ロ−ム,貴比重2・14),北海道魔力火力 発電所のフライアッシ.ユ(シルト質ロ−ム,其比重2・18),東京電力火力発電所のシンダーサンド(砂質ロ・−・ム,其 比雷2.02),香川大学付属農場大官果樹園のシルト質粘土ロ・−ム倶比重2小79),香川県綾歌郡綾南町産の粘土(其 比重2.50)および,よく水洗した海岸漂砂(粒径025∼0・40mm)等である.なお,前5者の粒径加院曲線はFig・1 に示す通りである爪 100 90 80 」70 60 0 0 0 0 0 5 4 3 2 1 箪掛金紐瑠饉 0.0010.002 0“005001002 005 01 0.2 0.51.0 2.0 5010小0 20い0 500 (mm) Fig.1.実験試料の粒径加積曲線

(2)

香川大学鹿学部学術報告 68 次に上述のシル=賢粘土ロ・−ム,粘土,細砂およびシンダーサンドにフライアッシユを0,10,…,90,100%の各 割合で混合調製したものを用意した.以後C,C′,S,NおよびFは,それぞれシルト質粘土ロ・−ム,粘土,細砂, シソダ・−サンドおよびフライアッシュ.を意味し,各記号に添附した数字はその配合パーセントを示すものとする.. 2)実 験 方 法 フライアッシ.ユの添加と毛管上昇 1mmの目盛付きガラスパイプ(長さ100cm,内径2.Ocm)の一滴にワイヤガーゼをとりつけ,他端より粒径0・40 ∼OL.85mmの海岸漂砂(水洗)を2一月cm厚さにつめ,これをもってフィルター・とした,その上に上述の各配合の試 料を83cm厚さに充填したい毛管上昇速度は,試料のつめ方の粗密や最初の水分によっても変るので各試料とも充填 条件,含水盛は統一↓た∪ なお充填の際,試料の分扱がおこ.らないよう十分注意した小 これをど・−カ・−申に直立させ, その下端より必要水温が十分補給されるようにしたなあ ど−か−内の水位ほ常に一足値を保つよう留意したい こ のようにして試料中を水が上昇していく過程を1500分間(25時間)にわたって観察した毛管上昇による水分先端が 最上端に達した時,上部3いOcmの土層を取りだし,その平均含水比を測定した.これは毛管上昇による給水能力の 目安を得る為であるい なおこれはC−F,S−Fの組合せで各種配合パ・−セントの試料につき観測した小 フライアッシュの添加と保水力 C′−F,N−Fの組合せで,各種配合率の試料につき含水比−pF関係を調べた.使用した遠心機は土壌水分測定用と して最近開発されたもので,pF4小2(約14,000r.p.m.)まで測定可能である.その他 含水比TpF曲線は従来の手 順に従ウて二求めた. フライアッシュの添加と透水性 実験方法としては変水位法を採用した.モ−ルド4遵で,各10回の反復測定を行った.また各モールド内の試料は

等しい間隙率を有するよう慎重に詰め,水はすべて煮沸による脱気水を利用した。試料中の気泡を追い出す為,水槽

につけた時間はフライアッシふ対シルト質ロ−ムの重量比によってそれぞれ次のように統一・した‖10:010時間, 7:3 22時間,5‥5 32時間,3:一7 72時間,0:10120時F乱 Ⅱ 実験結果および考察 1)毛 管 上 昇 フライアッシュ.の集合体には規則正しい毛細管が発達し,毛管上昇が極めてすみやかに行われることについては, すでに節工報(8)で述べた通りである小 ところで土壌水分の移動は農業上極めて重要である‖ 例えば,柑橘園におけ る土壌水分の消費機構のうち,根群域内の下層から上層への顕著な水分補給作用に着目したかんがい方式の提案(4) がなされたり,E−T恩は土嚢水分の移動盈そのものであり(5),土壌毛管水の移動性は果樹園の土壌水分の有効度合 を決定する−・因子である(6)ことなどが明らかにされている.すなわち,植物根の吸収などによる局所的な土壌水分 の欠扱が,すみやかに周囲から補われるか否かは耕地の生産性を決定し,さらには耕地としての存否すら規定する重 要な因子である… その他,地下かんがいや集約度の高い施設栽培の為の給水方式などにおいても土壌水分のすみやか な移動は一つの中心的課題をなすものである.そこで毛管上昇の著しいフライアッシ.ユの施用によって水分移動がど のように変るか,またほどれ程の鼠を施用した場合に目的とする毛管上昇盈が得られるか等を明らかにする為,前節 に示す方法で実験を行った1結果はFig.2,fig.3に示す通りである. これらの図において,1500分後においてもなお,大部分の試料の上昇曲線の勾配はまだかなり大きかった… 従って 以後の大幅な上昇が期待されるい しかし,理想的な土娘の理論上の毛管上昇高は計算されているが,これは平衡に達 するまでに十分な時間をおいた場合の値であって,これを実験的に確かめることは不可能である,それに,農業上は 毛管上昇高と同時に上昇速度も大きな意味を持つのでここでは一応,約1日間の観測にとどめたい C−F試料については,フライアッシュの混入急が増加するにつれて,毛管上昇遠皮はほぼ直線的に増大する傾向が 認められた∴すなわち少鼠のフライアッシ,ユで顕著な上昇効果を期待することはむづかしいい このことは,水分の毛 管移動盈を増加させることを目的として重粘土排地へフライアッシュを施用することの一つの限界を示すものである. 一方,S−F試料については,少藍のフライアッシュ.の混入によって顕著な上昇効果が認められたい これらのことは フライアノシュの混入藍と実測開始18時間後における毛管上昇高の関係を示すFig。4から明らかである.

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(3)

69 第20巻第1号(1968)

経過暗闘(mh)

(4)

香川大学農学部学術報告 70 ︵∈∈︶ 物種暁↓凱滞時恵範∪坤感匹密雲 次に毛管上昇高のみならず,毛管作用による水分移動鼠は農業上特に重要であるから,フライアッシュおよびその 混入土壌が−・体どれだけの水星を上昇させ得るかを考えてみる.前述の実験方法によって得られた結果はTablelに 示す通りである. この表からわかるように,フライアッシ.ユは13小Omm/dayの水星を80cmの高さまで上昇させることができる. 仝生育期間における水稲の最大蒸散盈は旬平均で7一3mm/day(計器未発盈の約1.2倍)である(7〉ことを考え合わせ る時,フライアッシ、ユ.の水分移動能力は極めて大きいことがわかる,また栽培施設内などにおける地下給水など,フ ライアッシ.ユ.の混入による効果を期待することができるように思われる. Tablel上昇水分鼠(mm/day) 上昇高は80cm 2)フライアッシュの添加と保水力 フライアッシュが多豊の有効水分を含有する能力をもつことはすでに第Ⅰ報で述べた.とすれば,有効水分盈を増 加させる目的で耕地にフライアッシュを施用した場合,−・体どれだけの効果があらわれるものであろうかい これらの ことを明らかにする為にFig.1に示す粒度特性を有する粘土にフライアッシ.ユ(北海道電力)を各種割合で混入し, そのpF一合水比曲線を求めたり 結果はFig.5に示すとおりである.

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(5)

第20巻第1号(1968) 71 71 FlOO−C; −・・− F70−C左。 ,・巾・H−小一F50−C≦。  ̄小川−F30−C;。 ■■…−・・・FムーC;。。 ■ 40 2() 30 Fig.5.C′・F試料のpF一含水比曲線 なお,未撹乱の土壌を想定して,pF一合水比測定を開始する前に,あらかじめ試料にpF3…0の遠心力を作用させた. Fig.5からわかるように,フライアッシ.ユを粘土に混入することによって,有効水分範囲を大幅に拡げることがで きるこのことはTable2をみれば一層明らかである Table2 すなわち,フライアッシ.ユの混入庶50%で有効水分盈が粘土の場合のほぼ2倍に達した.この傾向は畑地かんがい における有効水分範匪=pFl.8∼3.0)において特に著しい、.しかしながら作物生育上の有効水分範囲(pfl‖8∼4‖2) の内,pf;3.0∼4.2の範囲の水分鼠はフライアッシュの混入急によってははとんど変らなかったまたpF2−6に対 応する含水比は粘土とフライアッシ.ユの混合割合によってはほとんど左右されず約29%であった、これらpF一合水 比曲線の形態は土壌間隙の分布と密接な関係を有するLこの分布を支配するものはFig巾lに示す各種試料の粒皮分布 特性であって単に水分当量だけが粘土分や微細粒子の含有量に支配される(8)のでほなくて各種水分恒数はみなフラ イアッシュ.の混入によって大きく変化を与えられている.これらのことはすべてFigl5より明らかではあるが,さら にFigい6を参照すれば一層明らかとなろう

(6)

72 香川大学農学部学術報告 ︵辞︶彗罵倒 2() 4() 60 80 100 フライ‘アンシ.ユ.の混入盈(%) Fig.6.フライアッシュ.の混入盈と水分恒数 一方,フライアッシュ・を粗粒尭試料中に混入した場合,保水力はどのように変るかを明らかにする為,Fig.1に示 すような粒度特性を有するシンダーサンド(砂質ローム)にフライアッシ.ユ(北海道電力)を各種割合で混入してそ のpF一合水比関係を求めた1結果はFig..7に示す通りである Fig.7.S・F試料のpF・含水比曲線 なおこの場合,未撹乱の状態は想定せず,材料相互の配合であると考え,実測に先だっての遠心力(pF3.0)は作 用させなかった.Fig.7からわかるように,この場合もフライアッシ.コ.の混入によって有効水分範囲は著しく拡大さ れた 以上のことからプライアッシ.ユ.の施用によって植物の水分環境が改良されることの可儲性が明らかになった. 3)フライアッシュの添加と透水性 透水性は当該土壌の物理的特性を示す最も重要な因子である.特に湛水状態で栽培を行う水稲栽培が農業の中心を なす我国においては耕地土壌の透水性は農業における水資源の有効利用を左右する因子でさえある.

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(7)

第20巻第1号(1968) 73 第Ⅰ報で推論を行ったように本来球形でない土壌粒子を球形とみなして多くの理論構成が行われている土壌物理学 において,球形をなすフライアッシ.ユ.は好個の実験材料であり,透水係数の静定諸公式中にみられる形状因子の検討 などもその例外ではないが,本報においてはその問題には直接ふれヂ,各種混合試料の透水性に閲し実験的接近を試 みた.実験結果はFig.8に示す通りである. 10

7 5 3

I, 0

3 5 7

10 C−Fの配合比 fig.8.C−F試料の透水係数 F︰C 本図からわかるように,フライアッシュ・の200Cにおける透水係数はK20=1.2×10 ̄4cm/secであり,シルト質粘 土ロ−ムのそれはK20=1・6×10 ̄¢cm/secであって,フライアッシ、ユ.の混入量に比例して混合試料の透水係数は前 2者の間をはぼ直線的に増加した.患線的であるという観点からすれば,毛管上昇速度曲線の場合と同様で少量のフ ライアッシュによって−C試料の透水係数を大幅にかえることはできないことになる.すなわち微細粒子からなる試料 に粗粒子を混入しても原試料の水に対する特性を大きくかえることはなかなかむつかしい.しかし,混入皮50%で一・ 応指数のオーダーでその効果があらわれていることには注目する必要があろう‖ Ⅳ む す び 以上フライアッシュの施用によって耕地土壌の水に対する特性がとのように変るかということについて初歩的では あるが実験的な接近を試みたその結果フライアッシ.ユの施用によっておよそ次の事項を期待できることが明らかに なった小 (1)重粘土壌の毛管移動速度を増大させることい (2)粗粒土壌の毛管上昇高を増大させること. (3)重粘土壌の有効水分含有盈を増大させること′ (4)根粒土壌の有効水分含有盈を増大させること. (5)透水係数をある範囲内で制御すること… 今後,実験材料としてフライアッシュを採用し,土壌物理学における諸法則の,主として形状因子などにつき検討 を加えていく予定である. なお,本研究の遂行にあたって本学教授上原勝樹博士に激励と貴重な助言を・賜わった.ここに記して謝意を表する. 参 考 文 献 (1)荒井泰治,中嶋康郎:サンドアッシ.ユの農業面利用 (2)荒井泰治,中嶋康郎:サンドアッシ.コ.の農業面利用 に関する研究(Ⅰ),農電研究所所報,2,87∼105 に関する研究(Ⅱ),農電研究所所報,3,131∼146 (1961). (1962)

(8)

74 香川大学農学部学術報告 (8)松田松ニ,山田宣良:フライアッシ.ユ.の物理性とそ の応用に関する研究(工),香川大鹿学報,20(1)87 ∼105(1968) (4)富士岡義一・,海田能宏:柑橘園における土嚢水分の 消費機瀾,農業土木学会講演要旨 40年皮,243∼ 244(1965). (5)富士岡義一・,海朗臣宏:果樹園かんがいの研究,農 菓土木学会講演要旨 41年度,303∼304(1966). (6)椎名乾治,豊田久承:果樹園土壌の水分減少機構 (Ⅱ),農業土木研究,30(弘149∼154(1962). (7)富士岡義一・,松田松ニ,他3名:水稲の生育に伴う 徴気象要濡とE−Tについて(工),農土研別冊10, 36′−42(1965). (8)西出勤:有効土壌水分の保水機構について,土壌物 理研究(研究資料),2,23∼27(1965).

SomephysicalpropertiesofFlyashanditspracticaluse

IIThecontrolofsoilmoisturewithFlyash

Matslt)lMATSUDAandNoriyoshiYAMADA

Summary

Sinceirrigationagriculturedependsonthecontrolofmoistureinsoil,amethodofcontrollingthemoisturewith

Flyashhasbeeninvestigated・Theresultsoftheinvestigationindicatethattherateofcapillary−riseinc王ayis increasedbyaddingFlyashandtheheightofcapillary−riseinthecoarse−teXturedsoilisalsoliftedbytheuseofFly ash.Contentsofavailablemoistureofboththeclayandthecoarse−teXturedsoilsareincreasedbyaddingFlyash. Furth?rmOre,thecontrolofthepermeabilityofsoilistobeexpectedbyapp】yingFlyashtothesoil・ (1968年6月5日受理)

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

参照

関連したドキュメント

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

 当図書室は、専門図書館として数学、応用数学、計算機科学、理論物理学の分野の文

200 インチのハイビジョンシステムを備えたハ イビジョン映像シアターやイベントホール,会 議室など用途に合わせて様々に活用できる施設

関西学院大学手話言語研究センターの研究員をしております松岡と申します。よろ

関谷 直也 東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター准教授 小宮山 庄一 危機管理室⻑. 岩田 直子

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

[r]

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7