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第一章デジタル家電とネットワーク.PDF

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第一章 情報家電の現状と今後の展望 森川 毅

デジタル家電が電気店の店頭に並び、消費者の心を掴み、「新三種の神器」として、TV

や雑誌の紙面を賑わすようになり、昨年の日本の経済成長を牽引し、多くの家庭の中での使

われる会話のなかにもデジタル家電を指す単語が生活に溶け込んできている。

しかし、現在のデジタル家電「新三種の神器」は情報家電の製品というよりも、既存のアナ

ログ製品の機能の置き換えに留まり、ブロードバンドや携帯電話等の通信インフラとの融合

を生かした消費者のライフスタイルのイノベーションをもたらす情報家電への成熟は残念なが

ら道半ばといえる。

それらを踏まえ、デジタル技術の持つ可能性、消費者の生活で起こっている変化などの事

実から今後の情報家電への成熟の道筋を考察していきたい。そして、産業立国の観点から

政府としてなにをしていかなければならないのか検討していきたい。

1. デジタル家電「新三種の神器」

記録データの永続性と汎用性を高めたデジタルカメラ

現在のマスメディアで一般的に使われる「新三種の神器」とはデジタルカメラ、薄型 TV、

DVD-HD レコーダの三種類のデジタル 家電を指す。これらに共通するものはすべてが既

存の電化製品(アナログ製品)が持つ利用シーンを完全に踏襲した製品であることであ

る。その観点から、これらのデジタル家電が共通に持っている機能のデジタル化の意味

を考えると分かり易くなる。

例を挙げると、デジタルカメラに対する既存のアナログ製品は「光学式カメラ」である。

この2種類の機器を比較すると、両方が持ち得ている機能は撮影対象物を写像し、一枚

の写真を作り出す装置としての機能である。しかしながら、その機器が持つ写真を生み

出す仕掛けの部分に大きな違いがある。

その違いとは既存の「光学式カメラ」が写像の「

光の光量」をレンズと通して写真機内

に取り込み、フィルムの化学反応特性を利用して、ネガを作り、そのネガから、同じく印画

紙の持つ化学反応性を利用して、写真を作り出していたものであったが、デジタルカメラ

となってはレンズを通して写像の光の光量を抽出する部分までは同じであるが、フィルム

に当たる部分が存在せず、新たにCCD センサが光量を感知した上で、光の波長とデジタ

ル信号の置き換えを行い、写像の「光の光量」をデジタル信号化したデジタルデータをメ

モリーに書き込む。メモリーに書き込まれたデジタルデータは データとして汎用性を持ち、

デジタルカメラが持つ小型液晶モニタ部に映し出されたり、TV 画面に出力されたり、パソ

コンに取り込まれたり、プリンタによって紙に印刷されたり、現像所へ持ち込めば、「光学

式カメラ」のプリントと同様に印画紙に印刷されることも可能となっている。そして、記録に

用いたデジタルデータはネガのように自然劣化することなく保存することが可能となって

いる。さらに現在のブロードバンド回線を利用すれば瞬時に世界中に写真のデジタルデ

(2)

ータを送付することも可能となっている。この多くの機器間でデジタルデータを融通する

仕組みはデジタル家電ならではの記録方法といえるだろう。

逆にこの記録方法の汎用性の部分が「光学式カメラ」が持ち得なかった機能である。

実際には既存のアナログカメラにおいても写真撮影に関わる諸設定の手作業を自動化

する手段として、デジタルセンサ技術の応用は行われていた。オートフォーカス機能、シ

ャッタースピード優先、自動撮影距離計算機能等はデジタルセンサ技術であった。だが、

最後の記録方法においては19世紀からの フィルムの化学反応を利用した ものであり、こ

れがデジタル化され克服されたのがデジタルカメラである。

ビデオデッキのデジタル化を進めた DVD-HD レコーダ

このような機能実現のためのデジタル 技術の応用の観点から、DVD-HD レコーダを捉

えても同様のことがいえる。デジタルカメラが「光学式カメラ」の技術進歩であるとすれば、

DVD-HD レコーダも既存のアナログビデオレコーダの技術進歩である。利用シーンもTV

録画とレンタルビデオ店から借りる映画ソフト等の再生である点は変わらない。しかしな

がら、DVD-HD レコーダもデジタルカメラと同様に記録方式がデジタル化されているため、

記録した映像データには汎用性がある。また、現行のアナログ映像を記録するビデオテ

ープが経年の自然劣化に弱い点についても、より自然劣化に堅牢である光ディスクにデ

ジタル記録されているため、自然劣化することなく保存することが可能となっている点も

デジタル化により持ち得た能力である。これは MPEG-2 方式と呼ばれるデジタル放送に

用いる映像のデジタル化技術を用いて、現行のアナログTV放送の受信時にTV番組を

アナログ信号からデジタル信号に変換を行う技術を実装していることで実現されている。

さらにこのアナログ信号からデジタル信号に変換を行う際にデータ圧縮技術を用いて、

デジタルデータのデータ量を削減し、記録すべきデータの量を減らす工夫を行うことで長

時間の映像の蓄積を実現している。これらの技術はもともとコンピュータで映像を取り扱

うための技術であったが、いまではデジタル映像の標準化を踏まえて、コンピュータだけ

でなく、TV電話、DVD、デジタル放送でも一般的に用いられている。映像をデジタル化し

て、様々な機器での汎用性を持つという点を実現している点で、DVD-HD レコーダも、単

なるビデオデッキの置き換えのデジタル家電には留まらない可能性を秘めていると考え

られる。

さらなるデジタル化による利便性の向上は記録メディアのデジタル化によるランダムア

クセス処理

1

の実現にある。先にデジタル化していたCDプレイヤーやMDではデジタル化

の強みを生かし、「好きな曲へ瞬時に移動し、再生ができる。」という点を実現し、アナロ

グ製品であったレコードプレイヤーやカセットテープレコーダを置き換えていったが、

DVD-HD レコーダについても同様の機能を実現している。これはアナログビデオデッキに

1 データベースにおいて使われる用語。ここでは「取り出したいものを、即座に取り出す仕組み」として用いる

(3)

見られたビデオテープの記録方式の読み取りが時間軸によるシーケンシャル処理

2

であ

ったため、テープの巻き上げの早送り、巻き戻しという行為がテープの物理的な長さに比

例して時間が掛かってしまうという制約があった。しかし、デジタル化によって、記録する

媒体がCDと同じ光ディスクや、パソコンのデータを記録するのに使うハードディスクであ

るため、記録された映像に対してのランダムアクセス処理が可能となっている。ちょうどD

VDの映画ソフトの冒頭メニューにある映画の名場面から、好きな名場面を選んですぐに

視聴できることが可能になったことは、このデジタル化によるランダムアクセス処理機能

の実現の恩恵を被った機能である。

また、ブロードバンドの普及により、DVD-HD レコーダにもインターネットへ接続できる

通信インターフェーイスを備えた機器も発売されている。この機能を用いて、TV録画の

設定の簡略化のために用いられるGコード

3

のような簡単な番組予約の仕組みである

EPG

4

をインターネットより提供するサービスを用意し、TV番組ガイドをTV画面に出して、

ボタンひとつで録画設定を可能する機能を有した商品作りも行われている。これは製品

としてのハードの魅力のほかに、購入後の製品に対してのサービスをバンドルして販売

しているやり方でデジタル 化併せて通信機能を生かした製品を開発し実現できた商品作

りの一つであると言える。

容積率と伝送路の効率化を進めた薄型 TV

つぎに薄型TV に同様の機能実現のためのデジタル化の観点を当てはめると、既存の

アナログT V に比べて、画面表示のデジタル化がT V 本体に占める画面表示部の容積率

を下げ、結 果、薄く、小さな機器のサイズで大画面を楽しめることになった。従来のブラウ

ン管方式であれば、ブラウン管の中心軸から、画面に対して電子ビームの投射を行うた

め、この電子ビームの伸びる距離が結果的に大画面を実現することとなる。必然的に大

画面化にはブラウン管の大型化が必要であった。しかし、液晶方式は画面のガラス面に

細密化した トランジスタを埋め込み、液晶特性を利用して、色信号を直接ガラス面から発

色させる技術を使うことにより、TV 画面の薄型化を実現している。ちょうどデスクトップパ

ソコンの CRT とノート型パソコンの液晶画面のサイズの比較を見ていただければお分か

りになるだろう。また、プラズマ T V においても、TV 画面の裏面に対して細密な画素数分

に区分けしたセル単位で電磁放電を行い、その放電の際に発色する色において画面表

示を行うことにより、映像の発色を行っている。これらの発色のコントロールをデジタル技

2 機械の自動化や MIDI音楽の作成に用いられる用語。ここでは「取り出すためには一定の手順によって行う段取りが必要」とい う意味に使う 3 新聞の TV 欄に予約番号を記載し、ビデオデッキに入力することによって録画時間を設定する仕組み アナログビデオデッキ にはほぼ標準で搭載されている。

4 EPG とは、「E lectric Program G uide」の略で、電子番組表とも呼ばれる。インターネット接続することによって、最新のテレビ番

組情報を入手することが可能で、番組タイトル検索も可能。予約操作は番組表をクリックするだけでDVD レコーダ等と連動でき る。

(4)

術で行い、ブラウン管が電子ビーム投射に必要であった距離を無くしたことで画面の薄

型化が進んでいる。

併せて、地上波 TV 放送の伝送方式もデジタル化が進んでいる。現行のアナログ放送

の1chあたりの周波数帯において、伝送できる映像信号量が地上波アナログ放送時に

比べ、デジタル化によって伝送できる映像データ量をほぼ3倍にすることが可能となり、1

chの周波数帯の中でアナログ放送品質の3番組を同時に伝送することや、ハイディフィ

エショナル映像放送

5

(高品位映像放送、日本ではハイビジョン放送と言われる)を伝送

することも可能となり、TV 画面の大型化に対して、魅力あるコンテンツを供給することが

可能となっている。このため、TV放送局のデジタル放送対応とは、今後、TVの映像コン

テンツもまたすべてフルデジタルで制作されていくことを意味しており、それを実現するた

めの放送局の局舎設備のデジタル化も平行して進んでいる。

デジタル家電「新三種の神器」

はデバイスのイノベーションに留まる

これらの「新三種の神器」に共通に言えることは、アナログの機器の弱点であった記録

の永続性と伝送性にデジタル化技術がイノベーションをもたらし、製品の魅力を増してい

ることに気づくであろう。また、従来のアナログ製品の持つ煩雑さや、化学反応、自然劣

化等の不安定要素についても技術的な克服がされており、これらの利便性は消費者の

生活でも役に立つことがわかる。

さらにデジタル化という意味で言えることは、デジタル化技術はすでにデジタル家電に

留まらない技術であるため、デジタル家電もまた、製品の成熟の方向性によっては、既

存のアナログの家電の利用シーンを超えた製品になり得るとも言える。そのためには既

存のアナログの家電製品の技術的な発展と延長上にデジタル家電を位置づけるのでは

なくて、まったく新しい利用スタイルを考え、消費者に対して魅力ある製品として市場創造

していかねばならないと考える。

2. デジタル家電「新三種の神器」以外の情報家電

すでに普及しているデジタルビデオカメラ

「新三種の神器」であるデジタルカメラと並び、デジタル家電にはデジタルビデオカメラ

の存在もあ る。ビデオカメラについては 80 年代、90 年代と世界市場を日本製品が支配し

た製品領域であり、緻密な光学レンズの連動と精密機器による安定したテープ駆動制御

は日本メーカーしか製品を作り得ないものであった。しかしながら、ビデオカメラのデジタ

ル化については、1995 年のDVビデオカメラ(日本ビクター製 GR-DV1)の登場により、現

在の「デジタル家電 新三種の神器」より早い段階からアナログからデジタル への移行は

進んでいた。実際のところ、デジタルビデオカメラをデジタル家電とは意識せずに購入さ

5 HD(ハイディフェニション )放送は 1080i/p と規定されている。

(5)

れているのではないだろうか?

デジタルビデオカメラがデジタル家電の「新三種の神器」に入らずに認識されている理

由はデジタルビデオカメラの登場した 95 年頃は、まだDVD-HD レコーダや薄型 TV が登

場していなかったため、必然的にデジタルビデオカメラで撮影した映像を既存のアナログ

TV やアナログビデオに出力するためにアナログ変換機能を搭載していた。そのためアナ

ログ TV に対して、デジタルビデオカメラからデジタルデータをアナログ信号に直して出力

していた。よって、デジタル化されたビデオデータを利用するメリットを画質の向上以外に

感じることは難しく、編集などのデジタル化された映像信号についての取り扱いの利便性

に触れられる機器は事実上パソコンのみであった。

98 年にSONYがパソコンVAI

Oシリーズを投入した際には世界ではじめての「デジタル

でのビデオ編集を実現する廉価なパソコン」として登場し、パソコンのハードウエア設計

をデジタルビデオ編集用途に集中させた点が功を奏し、パソコン市場を席巻したことは記

憶に新しい。デジタル化による異種機器間連携の実現とパソコンの新たな実用シーンの

創造として SONY が世界に先駆けたものであった。

だが、この日本メーカーが得意であったデジタルビデオカメラの分野も、デジタル化を

境に次第に市場の変化が現れつつある。日本企業から半導体やCCDカメラなどのキー

デバイスの部品供給を受けた韓国メーカー(サムスン電子等)が製品開発を行い、韓国

国内では製品が市場投入され ている。また、北米や日本のオンラインショップでも取り扱

われており、日本メーカーの製品に比べて安価に販売されている。また、「デジタルビデ

オカメラとパソコンの融合」を目的としたSONYの VAIO シリーズによく似たコンセプトの

パソコンが事実上のコンシューマー向けパソコンのデファクトとなったため、パソコンのO

Sを提供しているマイクロソフトが 「Windows XP」の新バージョン「

Windows XP

Media Center

Edition

」において、多くの AV 機能を実装し始めたため、次第にパソコンメーカーの商品企画

戦略であり、海外 PC との競争優位点であった「デジタルビデオカメラとパソコンの融合」に

ついても、その優位点が次第にOSの領域で吸収され、メーカーの商品開発能力が均一

化されつつある。(現時点では米国デルコンピュータでも、Windows XP

Media Center

Edition を実装し、

ソニーのVAI

O相当のビデオ編集機能を持ったパソコンを安価で販売し

ている。)

情報家電として全方位的な進化を続けるデジタル携帯電話

デジタル携帯電話とは 90 年代中期からの 携帯電話の急速な普及と通信量の増加に

伴い、通信インフラをアナログからデジタルに置き換えるために 95 年から新規に導入さ

れたデジタル無線通信方式を採用した通信キャリアが販売する携帯電話である。「新三

種の神器」にあげられている薄型 TV で述べた地上波放送のデジタル化に近く、携帯電

話会社に割り当てられた無線通信帯域の効率的な活用の手法として、デジタル無線通

信技術を導入した結果、生まれたのがデジタル携帯電話端末である。

(6)

消費者の視点からは 旧来のアナログ携帯電話と代わり映えしなかったが、通信キャリ

アにおける通信方式のデジタル化により、アナログ携帯電話に比べ、電波帯域における

通信チャンネル数は飛躍的に広がり、より多くの携帯電話機を同時通話させることが可

能となった。その後、このデジタル通信方式を利用したパケット通信によるメール機能の

登場や、携帯電話機の番号表示画面を利用して、インターネット情報サービスを行うブラ

ウザフォン機能が実装され、インターネットへ通信キャリアを通じて乗り入れが実現する

ことによって、インターネット端末としての機能も持ち得るようになった。

さらにインターネットで用いられていた分散ソフトウェア技術の一つである java 言語

6

動作する java VM

7

機能を実装した携帯電話が登場

8

し、ソフトウェア開発のオープン性を

広げることによって、携帯電話機毎に違うLSI であっても、制約のないソフトウェアの作成

と実行を可能とした。

また、ハード的に、MP3 デジタル音楽の再生やデジタルカメラを実装して写真撮影を実

現する機能を搭載するなど、単なる携帯電話の枠組みに収まらない機能を持ち始めて

おり、より消費者の身近にいる情報家電としてのイノベーションの可能性を秘めている。

今後はパケット通信の定額化によって、携帯電話から派生して「いかに情報サービス

を携帯電話の付加価値として作りだしていくか?」という通信電話会社間でのサービス開

発競争

9

が始まると考えられる。既に通信としての機能を持っているが故に通信をベース

とした消費者の利用シーンを機能として開拓していく先端を走っており、今後の情報家電

の商品開発のための参考となる先進事例があると思われる機器である。

競争が激しい MP3 プレイヤー

MP3 プレイヤーはデジタル化された音楽を再生する携帯型プレイヤーである。CD に焼

き付けられた音楽はすでにデジタル音源であるが、MP3 プレイヤーは前述した「新三種

の神器」のなかに含まれている DVD-HD レコーダで の デジタルフォーマットである

MPEG-2 フォーマットに含まれる音声のデジタル圧縮方式を利用して、個人所有する CD

のデジタル音源を圧縮し、音楽再生のみを行うものである。形状的にはアナログ音楽再

生で世の中に普及した Sony のウォークマンがデジタル化

10

されたようなものとお考えい

ただきたい。

MP3 の音声圧縮方式は当初はパソコン上でソフトウェアによる音楽のデジタル圧縮化

と圧縮された音楽データを再生するプレイヤーのソフトウェアにて実現されていた。しかし、

急速なインターネットの普及によって、MP3 による音楽のデジタル圧縮と再生を実現する

6 サンマイクロシステムズ社が開発したマルチプラットホーム言語 OSを問わないアプリケーションの作成が可能 7 java 言語で記述されたアプリケーションを仮想的に個々機器のOS で動作させるためのソフトウエアプラットホーム 8 java 対応携帯電話は 2001 年にNTT ドコモが販売 9 着うたサービス、GIS と連動する携帯電話、非接触IC カードのチップを実装したカード決済可能な携帯電話が登場している。 10世界最初にMP3プレイヤーを発売したのが韓国のハセン社であり、名前もMPMAN という製品であった

(7)

ソフトウェアがフリーソフトウェアとして普及し、デジタル圧縮化された音楽データをインタ

ーネットに蓄積し、交換を行うナップスターというビジネスモデルが音楽の著作権を侵害

しているということで問題になったことが記憶に新しいと思う。

MP3 プレイヤーはこの圧縮された MP3 デジタルデータを私的複製権の範囲で、MP3

プレイヤーに蓄積し、パソコンなしで再生を実現したものである。機器のメカニズムとして

も、CD プレイヤーやコンパクトカセットプレイヤーに比べて、音楽を記録したメディアを回

転させるモータによる駆動部が存在せず、メモリーとシステム LSI のみで実現できるため、

既存の AV メーカーだけでなくアジアの新興メーカーや、半導体メーカーが相次いで参入

し、多種多様な製品が市販されている。日本国内で入手できる製品を調べると23メーカ

ーの137種類の製品が存在

11

している。この多種多様さの製品供給がなぜ起こるの

か?を検討してみると、すでにオープン・アーキテクチャーで培われた音声復号LSI や音

楽データを蓄積するメモリー部品などがモジュール部品市場に多数存在し、MP3 プレイ

ヤーメーカーはそれらの部品の組み合わせによって製品を提供しているからと考えられ

る。

このように消費者へ送り出す商品の機能がある程度固定化されていくと、オープン・ア

ーキテクチャー市場でモジュール化された部品を瞬時に組み合わせることにより、商品

投入が可能となっている環境がすでに存在している。このことは開発された市場に対し

ての参入障壁がオープン・アーキテクチャーで用いられる半導体に依存しているかぎり

限りなく低く、よって、情報家電を収益力のある商品とするには機器単体の製品開発もさ

ることながら「他社から飛び抜ける差別化戦略」が必要であると考える。

商品カテゴリーから飛び抜ける製品差別化戦略

例としてあげるならこの MP3 プレイヤー市場に最後発で参入し、現在もっとも売れてい

るApple 社の iPod の事例が挙げられる。iPod が他社の MP3 プレイヤーから飛び抜けて

いる点とは一言でいえば顧客の利便性の向上

12

のための機能開発の掘り下げの深さで

あるといえる。それは iTunes アプリケーションソフトがもたらす音楽の私的録音行為のデ

ジタル化がある。たとえば CD からMD へ録音を行う場合、その録音にかかる時間は曲と

再生するスピードと等速か、倍速になるに対して、PC を用いたデジタル録音行為では8

倍から12倍で録音が可能である。さらに録音に用いるPC をインターネットに接続してお

けば、PC に記録された音楽データファイルのラベリングも外部にある index サーバを参

照することで自動的に行うことができる。また、同じデジタル音楽プレイヤーであるM D や

他社の MP3プレイヤーと比べ iPod は小型の HD をメモリーとして用いるため、他社の

MP3 プレイヤーがフラッシュメモリによって音楽データを記憶する容量よりも格段に多くの

11 Kakaku.com にて2004/03 に調査 12 米市場ではネットワークより音楽を安価にダウンロードできるiTunes Store の存在についても魅力となっているが、 現時点では日本国内での音楽販売の閉鎖的な取引慣行に違いによって日本国内ではiTunes Store を利用できない。

(8)

音楽データを HD 一つに集約することを実現

13

している。

さらに特筆すべきは iTunes を用いたインターネットラジオのチューナー機能であり、明

らかにiPod とiTunes の組み合わせは、ステレオ・ミニコンポを中心とした消費者のAV 生

活にライフスタイルのイノベーションをもたらしている。本 イノベーションの中核となるもの

は、実は販売されている iPod ではなく、apple のサイトより無料配布されているiTunes ソ

フトウェアと PC との組み合わせによって実現されており、この無料のソフトウェアで既に

音楽 C D を多数デジタル化して保存し、PC で音楽を聴いている消費者が存在している。

彼らも潜在的な iPod の購入者たりえ、商品展開によっては、購入まで牽引することも可

能であると考える。

また、無料ソフトの iTunes のダウンロード時にメールニュースの購読を募り、自社が主

催する音楽アーティストのイベント情報や新製品の紹介を行うといった消費者への生活

への浸透力を梃子としたマーケティングは今後の情報家電と消費者の生活との関係を

示唆するものではないだろうか

情報家電としての進化の道筋が見えるカーナビ

自動車に搭載されているカーナビゲーションシステムも情報家電の範疇に入る製品で

あろう。カーナビについては製品登場の時から、機器の機能を実現するために通信機能

を実装し、デジタル化された地図データを有し、人工衛星の電波を受けながら自動車の

位置を地図上に展開することを目的としたものであった。

しかし、半導体技術の高度化とデータを格納するストレージの技術とデータ量が格段

と進歩したおかげで、単なるカーナビゲーション機能に留まらない進化を遂げている。当

初の機能実現から大幅に機能拡大していく様はデジタル携帯電話に似ている。

現在のカーナビにおいては、地図の 3 次元生成による立体映像の生成や音声ガイダ

ンスと音声認識技術を元にした音声対話による画面操作も実現され、さらにはカーステ

レオの機能をも実装し、前述した MP3 プレイヤーで使われている音楽デジタルデータの

蓄積によるステレオジュークボックス機能も備え、製品によってはTVチューナーを備え、

TV の視聴の実現や、DVD-HD レコーダで録画されたTV 番組の視聴や DVD 映画コンテ

ンツの視聴を可能とする製品まで存在している。

また、特筆すべきイノベーションは、日々変化を遂げる交通渋滞のデータを接続した デ

ジタル携帯電話から取得し、カーナビの地図に反映させ、リアルタイムに渋滞迂回路を

伝える仕組みはネット家電として通信の機能を生かした製品として成熟しつつある。さら

に道路の建設等で新たに実装している地図に変化が生じた場合においても、家庭用の

ブロードバンド回線を通じて地図のデジタルデータを更新することが可能となり、この通

13 MP3 プレイヤーでは携行性の高さからフラッシュメモリ(SD カードやメモリステック)を用いられることが多いが、 大容量のメディアとなる1GB のフラッシュメモリは実売3万円前後である。フラッシュメモリに比べ20倍の容量にな る20Gの HD を内蔵している iPodは3万円程度である

(9)

信を生かした製品の魅力作りは 情報家電ならではといえるであろう。このカーナビに見ら

れるように、実際の機器の機能利用シーンを生み出すベースとなるデジタル地図情報が

製品の中に固定さえるのではなく、絶えず最新のデータが機器の外側で日々生成されて

ゆき、通信を介して最新のデータを利用するという機能実現の考え方はいままでのアナ

ログ家電には存在しえない考え方であると言える。

カーナビの製品作りのアプローチを見れば、情報家電が単なる個々のアナログ家電の

置き換えではなく、機器の機能を実現するために製品に対してメーカーが通信を通じて

消費者の生活に関わっていくサービスを開発することが製品作りの ポイントであることが

わかる。またこれらの付加価値をは実際に店頭において消費者へ訴求できる商品差別

化のポイントとなっており、今後は商品単体の魅力だけでなく、消費者のライフスタイル

に対して、どれだけのメリットを通信を通じて提供し続けていけるかが商品競争力となり

えるだろう。

自律し始めたPC 周辺機器 プリンタ

情報家電が進歩し、デジタルデータの記録と再生が可能になるにつれ、そのデータを

紙に出力したいと思う消費者は多い。特にデジタルカメラにおいてはデジタルデータの直

接の受け渡しよりも、プリントされた写真のように出力したいと考える人は多い。それを実

現するためにプリンタもまた情報家電として進化し始めている。

今までのプリンタはコピー機と違い、あくまでもパソコンの外部デバイスであり、パソコ

ンで処理されたデータを出力する製品であった。プリンタの印刷の制御機能はパソコン

のOS上 にソフトウェアとして実装されることが一般的であり、パソコンに接続されていな

いとプリンタは動作しない製品であった。

しかし、現在においてはプリンタに制御機能を実装し、プリンタ単体で印刷が可能なプ

リンタが登場し、デジタルカメラの写真の印刷についてパソコンが不要となりつつある。こ

れらを実現しているのは、先にも述べた情報家電に用いられる小型で汎用性のある安価

なLSI

によってである。

プリンタが印刷をおこなう利用シーンの応用として、電話回線のインターフェーイスを装

備させることにより、さらにFAX機能を搭載した機器も登場し、プリンタ、FAX、スキャナー

の 3 機能を一台で実現することが可能となっている機器

14

も登場している。

これはカーナビにも見られた情報家電に現れるイノベーションの特徴のひとつであり、

機器の実用シーンの高度化による進化のなかで、デジタル信号を処理するLSIの処理

能力が、アナログ機器時代には個別の製品であったものが、中核となるデジタル処理

(プリンタであれば紙への印刷)を中心に類似の機能を取り込み、デジタル処理をキーに

機能を融合した製品に進化することである。この情報家電に見られる進化は「新 3 種の

(10)

神器」が現時点ではアナログ機器の置き換えに留まっている状態から、つぎにいかなる

製品に成熟していくのかを示唆していると考えられる。

情報家電への進化の可能性を秘めるプロジェクタ

映像を映写機のように投影しながら大画面を実現するプロジェクタには大きく分けて二

つの利用シーンがあった。ひとつは企業で多く用いられているパソコンでのプレゼンテー

ションソフトの拡大投影の機器として、もうひとつは小規模のミニシアターでの映画上映

の機器として用いられていた。このプロジェクタの映像を大きく拡大・投影する技術にも情

報家電の技術が生かされている。

プロジェクタの持つ大きく映像を映写する原理は、映画館で用いられている映写機の

原理をベースにしたものである。映写機は連続して送り出される一コマのフィルムに対し

て、強力な光源ライトの光を当て、その光がフィルムを透過する際に生み出される色彩

が拡大レンズを通して増幅し、スクリーンに投影されることで映像を再生している。プロジ

ェクタはこの原理に則り、小型で細密な液晶画面に映像を再生させ、薄型TVの原理と同

じように、背後から強力な光源によって、液晶に浮かび上がった色彩を投影するもので

ある。その投影された映像を映写機と同じように拡大レンズを通してスクリーンに映像を

投射することで大画面を実現する。

このプロジェクタもまた前述したプリンタのようにパソコンの外部デバイスとして、もしく

はビデオのアナログ映像の外部出力装置としてしか活用されていない。しかしながら、企

業内でプレゼンテーションに活用されているという一定のニーズを持ち、さらに消費者が

薄型大型TVに求めたような「大画面で臨調感のある映像を見たい。」という要望に対し

て、プロジェクタの持つ利用シーンの実現の中核となるデジタル技術はカーナビやプリン

タで見られた進化をもたらし、消 費者のニーズに合わせた進化を遂げるのではないだろ

うか?

事実、韓国、北米市場ではリアプロジェクション TV

15

という製品が存在し、プロジェクタ

を既存のTVのブラウン管のようなスタイルで配置し、TV画面の裏面に対して映像を投

影させることにより、安価な大型TVを実現している製品市場が存在している。アメリカの

テキサス・インスツルメンツ社が開発したDMD(Digital Micromirror Device)を利用した画

像表示方式(DLP)のプロジェクタが主なものである。日本市場ではあまり見かけないが、

米国市場や韓国市場ではサムスン電子やLG電子が大型TVのプラズマTVや液晶TVよ

りも安い価格帯で販売されている。

また、画面の薄型化を進めるために、プロジェクタの位置を水平ではなく、鏡とレンズ

を利用して、光源を屈折させ、画面に投影され る映像に対して様々なデジタル処理を加

15 筐体はプラズマTV を若干大きくしたサイズであるが大画面ながらブラウン管 TV くらべ奥行きを薄くできる。

(11)

えて均一な画面表示を実現している。これらはアナログ機器時代では光の波長に対して、

レンズを介した調整しか行えなかったのに対して、デジタル化された小型液晶画面や発

光する光源に対してデジタル化されたが故に微細なコントロールが可能となり、画面に対

して最終的に投影され る映像を主に据えた微調整が可能となったからである。

情報家電のイノベーションのスタイルが垣間見える家庭用TVゲーム機

家庭用TVゲーム機を、デジタル処理をメインとした機器として捉えるなら、一般家庭に

普及した最古参のデジタル家電である。もともとTVゲーム機はゲームセンタに置いてあ

る業務用TVゲーム機の市場がメインの市場であった。その後パソコンの普及により、パ

ソコンでTVゲームのソフトを楽しむことも可能となったが、それでもTVゲームをプレイす

るためにパソコンを購入するのには当時のパソコンは高額であった。そのため、パソコン

が持つTVゲームを楽しむためだけには過剰な性能をそぎ落として価格を安価にし、さら

に利用者が子供でも利用でるようにキーボードを廃した利用インターフェーイス

16

にて実

現されたものが家庭用TVゲーム機であった。

だが、家庭用ゲーム機を利用する場合において家庭用ゲーム機は業務用TVゲーム

機やパソコンとは違う進化を取り入れていた。業務用TVゲーム機とは違い、ゲームを実

行するためのプログラムソフトをゲーム機から分離していたことと、家庭用ゲーム機とゲ

ームソフトの間に一定のインターフェーイスを設けて、ゲームソフトウエアを分離し、消費

者にとってゲームソフトを切り替えるための分かり易い方法を提示したことである。

このため、家庭用ゲーム機は安価で市場に発売され、家庭用ゲーム機とゲームソフト

が分離されたため、ゲームソフトメーカーは家庭用ゲーム機メーカーが提示するガイドラ

インに沿って、ソフトウェアを開発することで多くのゲームソフトが市場に登場することとな

り、ゲームソフトメーカーが魅力あるゲーム制作の競争を行い、ソフトの高度化と家庭用

ゲーム機の普及がシナジー効果を発揮し、家庭用ゲーム機はゲームソフトを動作させる

プラットホームとして機能する

17

ことになった。

その後、半導体技術の高度化と低 価格化により、家庭用ゲーム機はさらに独自の進

化を遂げる。ゲーム機の新機種投入はメーカーとしては自らが築いたゲーム機のプラッ

トホーム性とゲームソフトの市場を打ち消すこととなるが、魅力あるゲームソフトを供給す

るプラットホームとしての機能を追求するために、半導体製品の最新技術を取り込んだ

製品を生み出すこととなった。この背景には以前は高額であったパソコンの低価格化と

高機能化によるグラフィック性能を生かしたパソコンのゲームソフトの登場と競争にあっ

た。

家庭用ゲーム機は半導体技術の進化と消費者が求めるゲームソフトのニーズに合わ

せ、自らのプラットホームを進化させることによって発展を遂げてきた。また、単一のゲー

16 ゲームパッドとも呼ばれるコントロール部分 十字キーとスタート・セレクトボタンだけのシンプルなものが多い 17日本市場では 1983 年に発売された任天堂ファミリーコンピュータが本格的な家庭用ゲーム機の普及の始まりと考えられる。

(12)

ム機の市場も大きく、半導体の量産効果についても自らの市場で吸収できるため

18

、ゲ

ームの普及台数が多い人気ゲーム機となると、ゲームソフトの実行においてパソコンの

性能を凌駕する性能を発揮することも可能となる半導体の専用設計も可能であり、パソ

コンの半導体としての性能を超えた情報家電を作り出している。さらにパソコンが半導体

の性能としてゲーム機に追いついたとしても、ゲーム機が当初から備えている消費者に

やさしいインターフェーイスとゲームソフトウエアの多さの魅力にはパソコンが打ち勝つこ

とができない。現在では、最大のネックであった画像表示部であるTVモニタのデジタル

化が進み、TVゲーム機のデジタル性能を最大限に発揮できる環境が整いつつある。

このように家庭用ゲーム機は情報家電が今後直面するであろう半導体の開発競争、

パソコンとの性能競争、消費者が求めるゲームソフト等のデジタルコンテンツの開発競

争などを先進的に体験しており、その事例のなかから様々なものを学ぶことが可能であ

る。結論を言えば、ハードとコンテンツが分離され、コンテンツ側に流通の競争力のある

デジタル家電はすぐにTVゲーム機的なエンターティメント端末化するであろう

19

。つまり、

本体のコストよりソフト、コンテンツへの負担のほうが消費者の負担するコストを占める率

が高くなる。そしていずれコンテンツやサービスそのものが収益の源泉となる時代が近い

将来にくることになるだろう。

また家庭用ゲーム機が当初から持っていたハードとソフトの分離と個別の進化につい

てはひとつの可能性が含まれていると考えられる。さらに家庭用ゲーム機について言え

ることは、ゲームソフトというコンテンツがなければそのゲーム機自身の魅力になり得な

いという点である。このため、ゲーム機自体の性能の向上もさることながら、コンテンツの

充実のためにゲームを開発する企業の参入障壁を低くすることが重要なことであり、こ

れらがコンテンツを囲い込むためのメーカーの戦略であった。そのため、ゲーム機メーカ

ーはソフトウェア開発会社に開発環境として、ゲーム機の参照モデル、3 次元映像生成ラ

イブラリなどを提供していくことが重要であった。

しかしながら、ブロードバンド回線の普及とインターネットへのゲーム機の接続は新た

なコンテンツ戦略を必要とするかもしれない。それは韓国や北米でブームとなっているオ

ンラインゲームの出現である。韓国のオンラインゲームはパソコンで実行するものであり、

北米はマイクロソフトが発売しているX-BOX というゲーム機によるものである。それぞれ

は特別なコンテンツの購入を必要とするものではなく、ソフトはすべてインターネットより

ダウンロードするものである。ゲームのコンテンツのすべてはインターネットを介したサー

バとの通信によって実現するものであり、パソコンやゲーム機はサーバで行われた処理

の結果を受け取ってプレイしているユーザの見ている画面に映像を再生しているにすぎ

18一般的に半導体製造のラインを起こす場合には、組み込んだ完成品を100 万台売る気概がいると言われている。 19 コンテンツの方が競争力を持つデジタル家電では音楽を再生するデジタルオーディオプレイヤーと映画ソフトの再 生やTVの録画を行うDVD-HDレコーダがある。薄型TV、デジタルビデオ、デジタルカメラはハード自体の性能が

(13)

ない。すべてのユーザのキャラクター等のゲーム実行のデータは サーバ 側で管理されて

いる。このため、ゲームサーバを構築し、その後、一定の期間の無償プレイ期間でゲー

ムの参加者を増やし、その後、月額利用料という形で有料化に移行するモデルと、無償

であることは変わらないがゲーム上での様々な付加サービスを有料で販売する「プレミア

ム・サービス」というモデルがすでに存在している。

これらは家庭用TVゲーム機というプラットホームをすべてインターネット上に持ち、か

つ、インターネットというオープンなネットワーク上に存在しているため、インターネットに

接続しているならば「だれでも、いつでも、どこでも」利用可能なものとなっている。さらに

家庭でのパソコンはモニタへゲームのプレイ映像を再生するビデオ信号を生成するのみ

に使われており、これを支えているのがパソコンの映像出力機能としてモジュール化され

ていたビデオカードの存在とその高度化である。

情報家電のキーになり得るモジュール化された部品 ビデオカード

ビデオカードとは元々パソコンのマザーボードに実装されていたビデオ回路をマザー

ボードから分離し、モジュール化し、ビデオカード製品同士の性能競争により高度化して

きたデバイスである。パソコンがまたテキストの文字の画像だけが出力されていた頃(ワ

ープロ機のような時代)では、画像を生成するためのデジタル処理はさほどの処理能力

を必要とせず、画像を作る計算処理もパソコンのCPUが処理を行っていた。しかし、次

第にパソコンのCPUの高速化と利用者がもとめるパソコンの利用時の機能として、写真

の取り扱いや映像の取り扱いを始めるソフトウェアが普及するに当たり、取り扱える色彩

の量と画素数が肥大化したため、ビデオカードがパソコンの基盤から分離し、独自の進

化を遂げるようになった。それを支えたのがパソコンのオープン化を支える拡張バスの存

在である。

拡張バスは家庭用TVゲーム機の初期のファミコンが持ち得たゲームソフトとゲーム機

を分離する仕掛け、カセットを抜き差しするスロット部分に近いものである。パソコンにお

いては個人がこの拡張バスにパソコンの機能を増やすためのモジュールを抜き差しする

ことに用いられていた。この拡張バスがビデオカードとパソコン基盤の接続を物理的な接

続とその接点で行われる通信にオープン性を実現したため、それぞれが外部の通信規

約を守りながら、おのおのが同時に製品内部の進化を遂げることが実現

20

した。さらにこ

れらの高度化は必然的に利用できるソフトウェアの高度利用の可能性も広げたために、

パソコン全体の処理パフォーマンスが向上するという結果をもたらした。そしてそのパソ

コンのパフォーマンスの向上によってもたらされたアプリケーションソフトの魅力が消費者

に分かり易いパソコンの利用シーンを提供した。具体的にあげるならば、DVD コンテンツ

が競争力を持つものであると考えられる。 20 モジュール化とも呼ばれる。

(14)

の再生、デジタルビデオの編集、三次元での映像生成を主軸に据えたゲームソフトの実

行などである。現在のパソコンの普及にはCPUの性能向上もさることながら、ビデオカー

ドの高機能化とその低価格化がもたらした部分が大きいといえる。また、多くのビデオカ

ードに実装されているビデオチップは完全にモジュール化されたものであり、ビデオ半導

体メーカー

21

が提供する参照デザインカードを参考にしてビデオカードを製造しているメー

カーも多数存在

22

し、これらの ビデオカードの性能向上競争が情報家電への脅威を与え

る可能性があると考えられる。

さらにTVゲームで多用される三次元での映像生成についてもあらたな設計アーキテ

クチャーの導入と棲み分けが進んでいる。それは三次元映像の生成やパソコン本体が

持つ音響機能等のマルチメディアデバイスの API

23

(アプリケーション プログラミング イ

ンターフェーイス)を一元的に提供し、ゲームソフトやDVDプレイヤー、などのソフトでの

実行を行うソフトウェア開発に対して、参照モデルを提供するという手法である。

この参照モデルでほぼデファクトとなっているのがマイクロソフトの DirectX である。こ

の DirectX によってソフトウエアコンテンツの開発者はガイドラインに述べられた参照モデ

ルに沿って開発を行えば、パソコンのようなオープンプラットホームにおいても共通で使

えるアプリケーションソフトの開発が可能となる。その際、三次元映像の生成などの処理

に負荷がかかるものについてはビデオカードの側でLSI

としてチップ化し(通常はGPUま

たはグラフィックエンジンと呼ばれる。)、実行の際はOSでのデジタル処理とビデオカード

でのデジタル処理を通信機能で分散処理させることにより、CPUでの処理を軽減するこ

とを図っている。

先に述べたネットワークゲームはこの処理を、インターネットを通じて、データセンター

のサーバとパソコン側のビデオカードの疎結合

24

により実現するあらたな形のデジタルエ

ンターティメントのスタイルであることがわかる。

既に生活に入り込む情報家電 パソコン

デジタル家電「新三種の神器」が消費者の心を掴み、消費者の日常の利用シーンに

溶け込んでいっていること述べるのであればパソコンもまたいち早く

消費者の生活に溶

け込んでいった様を述べなくてはならい。パソコンの進化も情報家電の進化でもあり、さ

らにパソコンの汎用性がある意味、情報家電の最大の競合であるからだ。もし、前述した

情報家電の今後の進化が「機能のデジタル化とその周辺機器との融合」と捉えるならば、

21事実上ATI社とNVIDIA 社がビデオチップ市場を二分している。 22 台湾メーカーの中にはビデオカードを専門に作成するメーカーが存在している。ビデオカードのアーキテクチャーはGPU と呼 ばれるグラフィック処理エンジンとビデオメモリの組み合わせであり、GPU に与えるクロック数と処理の際に発生する熱処理がこ のビデオカードメーカーのノウハウとなっている。 23 API アプリケーション プログラミング インターフェーイス 24 疎結合・・・CPU を複数連動させてデータ処理を行う場合の考え方のひとつ。一つの筐体や基盤に複数のCPU を実装する密 結合に対して、「通信を利用して仮想的にCPU を束ねて、データ処理を実現する。」という考え方を疎結合と呼ぶ。本文の場合、 ゲームの実行について、サーバーCPU のデータ処理とクライアント側のグラフィック用のCPU の画像処理を、通信を利用して連 動させるという意味で使用している。

(15)

パソコンは多くの機器を融合した機器であるといえるであろう。これらを踏まえ、パソコン

の情報家電としての強みを分析し、情報家電がパソコンの進化になにを学び、そしてパ

ソコンに打ち勝つためには何をしなければならないのかを考察してみたい。

パソコンはインターネットへの出口を押さえている

第一に、パソコンの最大の強みはインターネットへの接続ユーザをほとんど押さえてい

るという点である。インターネットに通信できる人口でいけばデジタル携帯電話のブラウ

ザ搭載電話機の流通数のほうが多い。しかし、実際にインターネットを通して情報サービ

スを提供するサイトのほとんどはパソコン向けであり、そのパソコンが搭載しているブラ

ウザである「マイクロソフトインターネットエクスプローラ」に最適化されているという事実

がある。例として日本の金融機関が提供しているインターネットバンキングのサービスに

ついてはデジタル携帯電話向けを除けば「マイクロソフトインターネットエクスプローラ」で

ないと利用できない金融機関が多い。この点は今後情報家電が今後、普及し通信を介し

てインターネットに接続していくとしても、著しくパソコンとの競争に不利な点ではないだろ

うか?

モジュール化とオープン・プラットホームの強み

第二に挙げるパソコンの強みは、ハードのモジュール化による性能向上競争とそれが

もたらしたデジタル処理能力の向上によるソフトウェア処理能力である。

ハードのモジュール化による性能向上競争とはパソコンの基盤に物理的な拡張バスを

実装することと、ソフトウェアのパソコンのハードが分離することによりCPUをはじめとし

た部品についても性能向上の競争を販売のために各社が行ったことである。その恩恵を

一番被っているのはパソコンの機能を開発するソフトウェアのメーカーであり、パソコンそ

のものが持つデジタル処理能力を生かしたソフトウェアの開発が行われたことである。そ

こで登場したのがエミュレーションソフトウエアである。

具体的な実用例を挙げるとDVD プレイヤーのエミュレーションである。DVD プレイヤー

が発売された 1996 年当時、DVD に記録された映像の再生はパソコンではデジタル処理

の性能的に困難であった。そのため、当時の DVD プレイヤーに実装されていた DVD の

再生デジタル処理に特化した LSI であるデコーダチップを別途拡張モジュールとして、拡

張バスに差さねばならなかった。その後1999 年にはインテル社の CPU PentiumⅢが登

場し、パソコンに実装されるCPU の性能が向上したため、DVD プレイヤーの機能すべて

をソフトウェアのみでエミュレーションすることが可能となった。現在、電気店の店頭で販

売されているパソコンのほとんどで DVD の映画を視聴できるのもこのためである。さらに

現在のパソコンではTV用チューナーをモジュールとして実装し、DVD の書き込み型ドラ

イブを実装している機器に至っては T V の番組録画を実現し、DVD-HD レコーダと変わら

ない性能を持つものの発売されている。

(16)

ほかにも家庭用ゲーム機のエミュレーションソフト

25

も存在している。これは家庭用TV

ゲーム機が発売された当時はパソコンを超えた性能を有していたが、ビデオカードの性

能の向上により、家庭用 TV ゲーム機が持ち得ていた三次元画像処理能力の優位性に

追い着き、エミュレーションソフトウ ェアによって、家庭用 TV ゲーム機にパソコンがなりす

ますことによって、ゲームコンテンツを実行することが可能となっている。

さらに地上波デジタル放送の受信も可能なパソコンも既に存在している。これは拡張

バスに対して、地上波デジタルの放送チャンネルを受信できるチューナーを実装している

もので、このチューナーも実際の地上波デジタルTVに用いられているモジュールをパソ

コンに差せる形で拡張カードに作り替えたものである。このように本来は情報家電向けに

開発されたデジタルデバイスであるものが、すでにLSI化され、一定の定められた通信

のインターフェーイスによってモジュール化されているならば、容易にパソコン向けのデ

バイスとして活用されていく事態がすでに興りつつある

26

3. 通信ネットワークのデジタル化の現状

ブロードバンド回線の普及とISP 接続の定額化や携帯電話のデジタル化によるデータ

通信の一般化によってインターネット接続の障壁であった通信料金の問題についても解

決が図られ、現在では日本は世界でもかなり安価な料金でインターネットを利用すること

が可能となっている。この通信のデジタル化によるインターネットと情報家電の関係につ

いて考察してみたい。

潜在的な情報家電の消費者はすでに存在する

情報家電の利用者を「通信を利用して、情報を引き出せる消費者」と定義するならば、自

らがアクティブに情報を検索するために、なんらかのテキストの入力ツールを持ち、イン

ターネットから情報を引 き出す能力を持たねばならない。かつ、日常生活の中で、通信イ

ンフラに接続出来ていること、が必須の条件となる。それらの条件を満たす消費者を通

信インフラの契約者数から割り出すと次のようなグラフとなる。

25 ゲーム機メーカーと裁判になった商用ソフトウェアもあるが、多くは 無償で配布されるフリーソフトウェアであることが多い 26 アルプス電気や NECエレクトロニクスがデジタル放送用チューナーモジュールのメーカーであり、PC 向けの放送受信デバイ スとしてピクセラ等が商品を発売している。

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02/12

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03/12

# of subscribers [million]

携帯電話

電話(DialUp)

CATVインターネット

DSL

FTTH

現実には日本のインターネット利用者のうち、

ほとんどが携帯電話(

iモードなど)

経由である。

 これだけPC以外でネットを使いこなせる潜在

的な情報家電の消費者がいると考えられる。

ISPサービスの利用者数から引き出した、潜在的なノンPCコンシューマソリューションの消費者 PC ノン PC 出所 電気通信事業者協会 統計資料より経済産業省が作成

上記のグラフで見られる通り、PC をベースとしたダイアルアップ接続、ADSL、CATV、

FTTH と比べ、携帯電話経由のインターネット接続が2倍以上の利用者がいることが解る。

たとえ、ダイアルアップ接続、ADSL、CATV、FTTH が携帯電話を所有しており、グラフの

積み上げが重なっていると考えても、圧倒的な携帯電話によるインターネットの利用者が

存在していることが解る。

このグラフから「携帯電話を利用して、インターネットからの情報収集を行うことを出来

る消費者はたくさん存在しているが、家庭の中で PC ほどのライフスタイルのイノベーショ

ンを行う魅力のある情報家電がまだ登場していないため、携帯電話の画面での情報利

活用に留まっている。」という現実が見えているのではないだろうか?

家庭に潜む情報家電普及の阻害要因

現在のデジタル家電「新三種の神器」である薄型 TV、DVD-HD レコーダでは通信イン

ターフェーイスを持つ製品も多く、それらはインターネットを介して、双方向T V を実現する

ものや、EPG 機能と呼ばれるTV 番組案内を情報サービスとして受け取り、TV 録画の設

定を簡易に行うことが可能となるものも存在している。さらに機器のインターネット接続機

能に搭載された Web ブラウザによってパソコンと同じように Web サーフィンを実現できる

ものある。

(18)

しかし、これらのブロードバンド接続とそのサービスを実現するにあたってはかなりの

障害が消費者にあるといっても過言ではない。まず、ブロードバンドに接続するためには

情報家電に対して、LAN 用ケーブルの接続を行わねばならず、そのためには家庭でイン

ターネットへの入り口になっているブロードバンドルータに対して、LAN 用ケーブルを引き

回ししなければならない。

通常、インターネットへの入り口となる部分は電話回線の引かれた電話の設置場所に

なるのであるが、この場所に薄型 TV、DVD-HD レコーダを置くケースは少ない。また、家

庭用電話機の高度化により、多くの電話機は無線技術を使った親機、子機の構成でつく

られコードレス電話として普及しているが、薄型 TV、DVD-HD レコーダなどにおいて、通

信は本来の用途ではない付加機能であるため、コードレス電話機のような家庭での利用

シーンを考えてコードレス化されているわけでもない。

さらにケーブルを家庭内で引き回し、インターネットへの出口にあたるブロードバンドル

ータに接続することが可能であったとしても、インターネットへの接続は容易ではない。な

ぜなら、これらのインターネットに接続するための機器類はパソコン用に設計されており、

パソコンの知識なしでは設定することが不可能である。また、ブロードバンドルータの設

定手順は事実上各社、製品毎にばらばらで あり、製品投入サイクルも短く、情報家電の

マニュアルにすべての機器の設定方法を記載することは事実上不可能となっており、こ

れらの要因が情報家電のブロードバンド接続の障害になっている。

また、ブロードバンド回線に接続するための消費者のインセンティブとなるようなコンテ

ンツや情報家電の用途が少なく、よって消費者が物理的な接続をすることへの躊躇もあ

るのではないだろうか?

解決策 電力搬送線技術の利用とその規制の緩和について

家庭のケーブルの引き回しの煩雑さの解消について、一つの解決方法として無線技

術の利用が挙げられる。これは前述したコードレス電話機の実現と一般化に先進事例が

ある。コードレス電話機の実現で用いられている電波技術は特定小電力無線技術であ

る。しかしならこの電波帯域での伝送はインターネットデータ量を伝送する技術とはなっ

ていない。また、パソコンで用いられる無線LAN技術では、無線電波による情報の漏洩

などのセキュリティを高めるためにはパソコンでのLAN運用の知識が機能設定時に必要

である。さらに無線技術の弱点として、マンション等の建物が持つ構造上の制約として防

火壁の強度によって壁を透過して 無線通信を伝送する事が難しく、情報家電を設置する

家庭内の位置に制約が生じることである。そのため、韓国などマンションが多い国では

次第に家庭内での電力供給に用いられている電力線を用いたI

P通信(PLC)

が実現し

はじめ、すでに商品の登場も始まっている。(IBM とLG 電子によるPLC 接続可能なノート

パソコンが発売予定)

よって現在での 情報家電のネットワーク化には電源プラグをさして、家庭内電力線を

(19)

経由し、外部のI

P網に接続する電力搬送線技術の導入が消費者にとって安全でかつ解

りやすいネットワーク化の手法ではないだろうか、しかし、電力を供給する電力線に通信

を行うためのデータ通信の周波数帯を利用するためには電波法の規制緩和が必要であ

るが、現時点での導入は難しい。

解決策 UWB(ウルトラ・ワイド・バンド)技術(USB2.0 on UWB)

パソコンの外部デバイスの通信インターフェーイスとして、現在 USB2.0 on UWB が策

定され注目されている。この技術はパソコンに接続する周辺機器である外付けハードデ

ィスクやスキャナーの接続、あるいはデジタルカメラやデジタルビデオカメラで撮影した映

像のデータをパソコンへ転送するための通信インターフェーイスである US B 技術を、アメ

リカでの政府の無線帯域の規制緩和により生まれたUWB(ウルトラ・ワイド・バンド)無

線帯域を利用して、高速で、大容量のデータをワイヤレスで伝送する仕組みである。そ

のため、既存の有線のUSB技術で創られた周辺機器にも無線インターフェーイスを提供

することが出来、パソコンに周辺機器を接続している際に煩雑にケーブルを繋げていた

不自由さを克服することが可能となっている。さらにデジタルカメラに実装が進めば、現

在のフラッシュメモリカードによるデータの受け渡しが不用になる。さらにパソコンだけで

なく、薄型TVや DVD-HD レコーダに実装されて行けば、これらの機器に物理ネットワー

クとして接続されているケーブル類が不用になる。さらに無線帯域の電波特性として、5

m以内の伝送に限られるため、現行の無線 LAN が持つ「電波が飛びすぎるが故のセキ

ュリティの弱さ」についても物理的な解決が図られている。このため、北米ではデジタル

放送やケーブルTVのデジタル化により、放送されるデジタルコンテンツが厳格なコピー

プロテクトを施されている点(コピーアットワンス)を、この USB2.0 on UWB の技術を用い

て「個人の私的複製権の保護」を行う

という考え方がある。これは電波特性を利用して、

機器の範囲5mにある機器には私的複製を認めていいのではないか?という考え方で

ある。(インテルが提唱中)

これは現在の情報家電が持つ厳格なコピー禁止機能を打ち

消し、技術の応用による消費者の視点に立った製品開発が可能となるものである。

しかし、日本国内においては電波法の規制緩和を待たねば製品作りを行うことが出来

ない。早急に、世界で始まっている規制緩和と技術革新を利用した情報家電を作り出さ

ねば、情報家電の国際競争に遅れを取るのではないだろうか?

4. 情報家電の普及を進めるための産業政策の在り方

情報家電の機能の捉え方を変える。

情報家電としての商品開発はアメリカが先行している点を述べてきたが、この遅れに対

して日本はいかなる手を打っていけばよいだろうか?

TiVo と呼ばれるHDレコーダが米国で発売されている。HDに TV 番組を録画するという

参照

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