【レポート】多様・多層的な知へ挑戦する新しい学びの場の創造−「ナレッジキャピタル大学校」体験報告/CEL【大阪ガス株式会社 エネルギー・文化研究所】
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(2) の教室から一斉にマイクを. 懐かしいチャイム音が鳴ると同時 に、. コマの講義の空気感が伝わること. 替わっていく。同時に行われている. 意識が「講義を聴く」方向へと切り. たのは数分のことで、やがて自身の. そんなふうに周囲の音につられてい. 闘競技が始まったようだ。ところが、. いほどで、まるで講義という名の格. ある。その音量は喧騒と言ってもい. けんそう. 音がダイレクトに響くということで. ないということは、各教室から出る. 持った講師の声が流れだした。壁が. 10. が刺激となり、受け身で「講義を聴 く」姿勢から能動的に学ぼうとする 意識に切り替わるのだ。これは受講 者側のことだけでなく、講師側も同 じではないだろうか。次第に池永所 長の話し方にも熱がこもっていった ように感じられ、静かとは言えない 識的に集中することで学びの空間が のではないだろうか。. ントロダクションの役割も果たした. たな学びを自ら見つけ出すためのイ 「 大 大 阪 」 と 言 わ れ た 時 代 を 経 て、. は、 天 下 の 台 所 と い わ れ た 大 坂、. る。①に分類される池永所長の講義 まとめた。. 加えなはれ」と語りかけている、と. なるワンパターンに、小さな革新を. 状況のなか、講師・受講者双方が意 つくりあげられていくような一体感. 代 』 と 現 代 を 問 う 」、 加 藤 政 洋 立 命. る「『 大 坂 城 と 船 場 が 輝 い て い た 時. 谷直樹大阪くらしの今昔館館長によ. う立地も幸いしたのかもしれない。. わ れ た 100 コ マ 超 の 講 義 は、 新. い」意欲に自然とつながる。今回行. こ ろ だ が、 そ れ が「 も っ と 学 び た. もう少し深く聴きたい……というと. 師としては話し足りない、聴く側も. 城指図などを読み解きながら、当時. 工 頭 中井家に伝わるふたつの大坂. 考えているかを起点に、江戸期の大. 谷氏は、大阪の人が大坂城をどう. られる。. 化』から現代の食を問う」等があげ. 技術」というカテゴリーに分けられ. の昔から今日、明日」と「②歴史と. 義の内容は、大きく「①大阪・近畿. われた「ルネッセ」講師陣による講. 「寺子屋みたいな教室」を中心に行. 阪万博の記憶を土台に、当時の大阪. また橋爪氏は、自身の目で見た大. た。. だが、今も文化の力がある、と話し. 現在空洞化しているといわれる大阪. ナ ミ 」 の 文 化 的 背 景 に つ い て 説 明、. 徴 的 に 掲 げ な が ら、 「 キ タ 」 と「 ミ. わ り、 自 ら を 見 つ け な は れ 」 「大い. に「 自 ら を 学 び な は れ 」 「多くと交. も残っているとし、先人は今の我々. ぶ」という知的欲求が高い風土は今. 本的な「文化」や「学びたいから学. た。さまざまな例をあげながら、日. は大阪人であるという提起に始まっ. われるが、それを言っているのは実. 現代の大阪は地盤沈下しているとい. 驚かされた。香り高く、一口目から. 風味が三都でこれほど違うとは、と. べ る と い う 趣 向 だ が、 出 汁 の 香 り、. ぞれの料理法でとった出汁を飲み比. 京都・江戸の地の水を使って、それ. いての歴史的な講義に続き、大坂・. だ。前半の大坂の食や出汁文化につ. 講 義 中 に 行 わ れ た「 三 都 出 汁 比 較 」. ランフロント大阪が会場であるとい. れた。ビジネスの中心地でもあるグ. ラリーマンと思われる層も多く見ら. ており、平日午後の開催ながら、サ. バー世代まで老若男女幅広く参加し. よってさまざまだが、学生からシル. が 多 く 見 ら れ た。 受 講 者 は 教 室 に. に身を包んだサラリーマン風の男性. 池永所長の講義の受講者はスーツ. 分はあっと. 館 大 学 教 授 に よ る「《 キ タ 》 と《 ミ の大坂が商業都市であったことによ. の空気感、現在の評価などについて. さらっと美味しさを感じさせる京都、. そこからは講義時間. ナ ミ 》 を 文 化 の 地 理 学 か ら 問 う 」、 り育まれた教育機能や町内における. 語りながら大阪万博の特殊性などを. 飲み続けるうちにだんだんうまみが. たになお. コマ. き. はしづめせつ. や. 分という時間配分は講. まさ ひろ. 同 じ く ① に あ た る 講 義 と し て は、. た。. ポーツを終えたような爽快感があっ. いう間だった。聞き終わった後、ス. 橋爪節也大阪大学総合学術博物館教 コミュニティの成熟について解説し、. 解説した。. 沁みて奥行きを感じさせる大坂、鰹. く. がしら. ︱︱過去から未来へ. 授の「大大阪と大阪万博があったこ フィールドワークを通した都市研究. 資料や写真だけでなく、五感を通. き. とうきち. だい. ろ の 大 阪 の 空 気 」、 そ し て 日 本 料 理 を専門とする加藤氏は、花街研究者. かこい や ま か ず. し. そ しやく. る 」 こ と。 そ の 経 験 か ら「 可 視 化 」. 融合して、役立つコンテンツをつく. スの理念は「サイエンスとアートを. 保田氏が代表をつとめる㈱ズーム. らバーチャルリアリティまで」 である。. 視化』の歴史と可能性――グラフか. あたるのは、保田充彦氏による「 『可. やす だ あつひこ. カテゴリーの「②歴史と技術」に. ︱︱歴史と技術の融合. 「ルネッセ」塾が伝えるもの②. のではないだろうか。. 後に、受講者の関心はより高まった. かという導きが示されており、講義. どう捉え、咀嚼し、考えていくべき. とら. にとどまらず、それを現代の我々が. をもとにした歴史的知見を披露する. いずれの講義も長年の研究、経験. ながるところが面白い。. 出汁の味がそのまま三都の印象につ. かつお. かこみ店 主 栫 山一希氏「『天下の 台. の濃さが前面に感じられる江戸……. 50. 「ルネッセ」塾が伝えるもの①. が、そこにはあった。. 上/制作年代の異なる大坂城指図を見せながら講義する谷直樹氏。 下/加藤政洋氏の講義では、写真のほか大阪の町を描いた小説や随想などもとりあげなが ら、キタとミナミの当時の姿を解説した。. して受講者に訴えたのが、栫山氏の. だ. 下左、右中/栫山一希氏による「三都出汁比較」は、水もそれぞれの土地から汲んだもの を用いるという本格的な「比較」となった。 右下/「大阪が一番美味しい」 「香りは京都の方が……」 、それぞれの違いを楽しむ受講者。. 加藤藤吉撮影による大阪の写真を象. 50. 所大坂をつくった大坂料理と 出汁 文. 上/大阪万博をどう見るかは、その当時の万博とどう関わってきたかで全く異なると語った 橋爪節也氏。. 1. 48 CEL July 2018 CEL July 2018. 49. 10.
(3) たけ. し. ㈱ミッドウェーソフトウェアデザイ だる. ま. ンズ代表の北浦武士氏。さらに王寺 町にある達磨寺の日野周圭住職も加. 大阪の「学び」の源流. 上で見られるようにしたもの。実際. し た 3 D CG を、 ス マ ー ト フ ォ ン. 河内寺廃寺の講堂や金堂などを復元. 園として整備されている東大阪市の. を紹介した。これは、今は跡地が公. ティ)動画による河内寺廃寺跡復元. 360 度 VR ( バ ー チ ャ ル リ ア リ. 実際の作例として、自身が手掛けた. く 伝 え る 」 意 義 や 手 法 等 を 説 明 し、. について、その歴史や「わかりやす. 雪丸と歩む」だ。この講義は周りを. 史から未来へ――聖徳太子の愛犬・. 様 の 例 と し て あ げ ら れ る の が、 「歴. つなぐ」ということになろうか。同. 術 を も っ て 歴 史 を 現 代 に 融 合 さ せ、. す れ ば、 保 田 氏 の 講 義 は、 「現代技. から掘り起こしてつなぐ」方法だと. 先述のカテゴリー①にあたる「過去. 未来へつなぐ」その実践のひとつが、. り 起 こ し、 本 質 を 読 み 込 み、 現 代、. 「ルネッセ」が提唱する「過去を掘. 伝えること」にあると保田氏は語る。. 親しまれた「雪丸」のもつ由緒正し. す」という言葉通り、地元王寺町で. 合 い も あ り、 イ ン パ ク ト が あ り ま. 聖徳太子の愛犬という歴史的な意味. た 目 が 可 愛 ら し い。 し か も そ れ が、. と 北 浦 氏 は 語 る。 「 ま ず、 単 純 に 見. 「雪丸」の姿によるところが大きい. 果が上がっているそうだが、それは. 子どもの図書貸出率が上がるなど成. 丸ロボットを図書館窓口に導入以降、. 葉を返してくれる。王寺町では、雪. たきてくれてありがとう」などと言. 話しかけに対してかわいい声で「ま. ンロボットとして開発された雪丸は、. AI を 搭 載 し た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ. を 読 ん だ と い う エ ピ ソ ー ド か ら、. ステムである。雪丸が人語を解し経. どもたちだけで運用できる図書館シ. 賞)と、雪丸ロボットを使った、子. 「ナレッジイノベーションアワード」受. 丸ロボット (ナレッジキャピタル主催. 町長の依頼を受け誕生したのが、雪. 存在を知ってもらいたいという平井. 丸」がおり、もっと多くの人にその. フ と し た イ メ ー ジ マ ス コ ッ ト「 雪. 記録が残る聖徳太子の愛犬をモチー. 王寺町には、古刹達磨寺の略記に. と申します」……。江戸期の文人木. 喋っている。その声は「木村蒹葭堂. 覗 く と、 何 や ら 人 の 映 像 が 動 き、. 穴がいくつか空けられている。穴を. 想の源流」と書かれており、正面に. 脇に大きく「ナレッジキャピタル発. は足を止める大きな「箱」があった。. もうひとつ、会場前に誰もが一度. 身の内に落とし込めた、と感じた。. 合――言葉のみの知識を実感として. が、難しい。バーチャルと現実の融. ローンを会場内に飛ばすのは楽しい. ルを通した視界に沿って仮想のド. コントローラーで操作する。ゴーグ. ロ ー ン は、VR ゴ ー グ ル を 装 着 し. 練習にも有効というバーチャルド. 操作が難しいドローンのバーチャル. ただきながら体験してみた。実際の. ブースがあり、ご本人に指導してい. イ ノ ベ ー シ ョ ン ア ワ ー ド 受 賞 )体 験 の. したバーチャルドローン (ナレッジ. トなどのほか、先述の保田氏が開発. 世代型飛び出す絵本、見回りロボッ. 際 に 体 験 で き る「 学 び × 遊 び エ デュインメントミュージアム」 。次. められているプロジェクトなどを実. ひとつは、ナレッジキャピタルで進. ざ ま な 仕 掛 け が め ぐ ら さ れ て い た。. にも「新しい学びの場」としてさま. イベント会場内外には、講義以外. の跡地に立ってスマートフォンをか 本で囲んだ「図書のある教室」で行 さと、先端技術がかみ合った好例で. 多様かつ多層的な挑戦が感じられた. さつ. ざすと、画面上に復元した建物が現 われた。講師は、平井康之奈良県王 ある。. ナレッジキャピタル大学校。トライ. こ. れ、往時の姿を目で見ることはもち 寺町町長と、ソフトウェア・WEB. 木村蒹葭堂もナレッジキャピタルの. アルゆえに課題も生まれたことと思. わった。. ろん、建物内に入って中を見るとい アプリケーションの開発を手掛ける. 目指すものと同じであるということ. われるが、それも含め、この「新し. かいとくどう. きよう. うバーチャル体験もできる。こうし. 開催するにあたり、まずはナレッジ から、それぞれ「源流」としてとり. あと. た VR の 本 質 は「 経 験 を 保 存 し、. キャピタルがどんなことをしている. あげたという。江戸期から現代まで、. じ. 村蒹葭堂が自己紹介をし、その隣の かを知ってもらうためのコンテンツ. か わ ち でら はい. 穴からは同時代の学問所 懐徳堂の解 として、のぞきからくりを企画しま. い学びの場」が今後どう進化し続い. ゆきまる. 説が流れる。古くからあるしかけ絵. 大阪の学びの文化は地続きであると. て い く か ――。 学 び、 刺 激 を 受 け、. のぞ. 本 と デ ジ タ ル 技 術 を 組 み 合 わ せ、 し た 」 と 話 す の は、 大 学 校 全 体 の. いうことをも、この「のぞきからく. 互いに触発されることで、時代を動. ゆいしよ. 3D 体 験 が で き る「 の ぞ き か ら く ア ー ト デ ィ レ ク シ ョ ン を つ と め た、 り」は語っている。. どう. り 」 を 使 っ た、「 ル ネ ッ セ 」 で も お ㈱スーパーフェスティバルの山本粧. まれるか、楽しみである。. このような学びの場から次に何が生. 自 由 に 交 流 し、 知 的 創 造 を 行 え る、. か す 新 し い 知 が 生 み 出 さ れ て き た。. か. なじみともいえる、木村蒹葭堂や懐 子氏だ。ナレッジキャピタル始動の. けん. 徳 堂 の 紹 介 で あ る。 な ぜ、 そ れ が 際 に、「 懐 徳 堂 か ら 発 想 を 得 た 」 と 趣旨を説明していたことから懐徳堂. ト ラ イ ア ル イ ベ ン ト と い う 通 り、. おわりに. 「ナレッジキャピタル発想の源流」 となるのだろうか。 を、さらに池永所長を通して知った. 下/「のぞきからくり」の企画者山本粧子氏。 「人間は想像できるから面白い」という発想からメ インテーマ「真の学びは “イマジネ! ”」を提案。 「勉強、教育はもっとハッピーでないと!」と、テー マカラーを華やかなピンク色にしたのも山本氏である。. 「このナレッジキャピタル大学校を. 上・中/保田充彦氏によるVRを活用した試みの体験ブース。絵本とVRを組み合わせた次世代 型飛び出す絵本とバーチャルドローン体験。. 50 CEL July 2018 CEL July 2018. 51. 上/可視化について、多彩な実例をあげて解説する保田充彦氏。 下/雪丸ロボットを手に、その誕生のエピソード等を説明する北浦武士 氏。.
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