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磁気イメージングハンドブック刊行にあたって
日本磁気学会では設立30周年を迎え ,磁気関連分野の研究をますます発展 させるため ,学術講演会の国際化や学会誌,論文誌の拡充等さまざ まな活動 を行ってきました.この30年間には ,学会誌に掲載された解説記事や連載記 事,また学会主催の教育活動として実施されてきました初等磁気工学講座や サマースクールなど 膨大な著作が蓄積されております.過去において ,これ ら著作物の書籍出版について検討されたことがあったようですが ,今日まで 具現化には至りませんでした .今回,共立出版株式会社との共同により,日 本磁気学会編纂による書籍出版の道が開かれることになりました . 今日の科学技術の発展はますます加速しており,磁気の分野においても新 しい研究分野が次々と開拓されています.日本磁気学会の学術講演会を見て も,そのセッション構成は年々変わっており ,巨大磁気抵抗効果やスピンエ レクトロニクス,ナノ磁性など 従来にはないキーワード が用いられるように なりました .また新分野だけでなく,これらを支える基礎分野においても研 究の進展は急速であり,現代磁気工学を支える新たな情報発信が学会にも求 められています.日本磁気学会では ,基礎から応用まで磁気に関する問題を 追及するとのスローガンを掲げており,磁気イメージングハンドブックの刊 行においても磁気関連の研究の発展に少しでも寄与できればとの思いから進 めてまいりました .本書の構成においては基礎材料から応用デバイスまでさ まざ まな分野で利用可能なイメージング手法について解説しており ,観察結 果を紹介するだけでなく測定原理の説明や装置構成・試料作製の方法などに も言及し ,ユーザとして磁気イメージングを利用してみたいと考えている読 者にとって使いやすいものであるよう工夫しました . ハンドブックの発刊にあたり,日頃の日本磁気学会の活動を支えてくださっ た関係各位に感謝するとともに ,学会編纂企画の目的を理解いただき快く協 力してくださった著者各位に感謝申し上げます.編纂企画ではハンドブック の提供だけでなく,磁気工学の基礎を学ぶため教科書シリーズや専門分野にmain : 2010/9/1(12:34) ii 磁気イメージングハンドブック刊行にあたって 関する参考書シリーズなど 幅広い分野で展開されます.本書を含めこれらの シリーズが多くの読者に興味をもっていただけるよう希望しております.最 後に ,本書の編集においてさまざ まなかたちでご支援頂いた共立出版編集部 の石井徹也,松本和花子の両氏に感謝し ,ハンドブック刊行の挨拶といたし ます. ( 社)日本磁気学会・出版ワーキンググループ一同
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序 文
視覚情報は雄弁であり,可視化された画像は物ごとの理解を深めるうえで 非常に有効である.直接目で見ることのできない磁気にかかわる現象は ,そ れが イメージできるか否かで理解の度合いが大きく異なり,現象を可視化す ることは非常に重要な役割をもっている.本書は ,こうした磁気現象を可視 化する方法,磁気イメージングの手法をまとめたハンドブックである. 磁気イメージングのもっとも初歩的な方法は ,磁石が鉄を引きつける性質 を利用し ,磁石の周りに鉄粉を分散させて磁力線を描かせるものである.小 学校の理科実験でもおなじみの簡単な実験であるが ,単に磁石を眺めるだけ では見えなかった磁石周りの磁力線が明確に観察でき,磁石の性質の理解を 深めるためにたいへん有効である.同様の原理は最初の磁区観察で用いられ たビッター法にも応用されており,その後の磁性研究発展の契機となってい る.磁気力のほかにも電磁誘導,磁気光学効果,ローレンツ力,トンネル分 光など さまざ まな原理が目的や用途に応じて磁気イメージングに用いられて おり,得られた像は磁性現象の解明から磁気材料や製品の開発まで ,磁気物 理学,磁気工学の幅広い領域で役に立っている. 磁気イメージングの技術は日々進展し ,高分解能化,高感度化がはかられ ている.その結果,従来は見ることができなかったサイズの微細な磁区が明 確になり,検出できなかった微弱な磁場を検出できるようになっている.し かし ,どのような対象でも高分解能,高感度で観察する必要があるわけでは ない.また ,測定原理などによる制約もあり,対象物によっては目的とする 観察ができないこともある.そのような場合には ,古くから研究されてきた “枯れた手法”を選んだり,観察がうまくいかない原因を調べたりする必要が あるだろう.本書は ,こうした観察方法の検討をする際の羅針盤になること を目的として書かれたものである.すなわち,はじめて磁気イメージング利 用し研究を進めようとしている人が ,目的とする観察対象に対してどのよう な方法・装置があり,どのような試料調整をすればよいのか ,またどの程度main : 2010/9/1(12:34) iv 序文 の分解能や感度で見えるのか ,見えた像をど う考えればよいのかということ を容易に知ることができるようにまとめられた本である.また ,磁気イメー ジングは“観察対象”に即して開発されたものも多く,最新の観察法では汎 用的な利用例が少ない場合もある.本書はそれぞれの技術を俯瞰するように 構成されており,磁気イメージングの利用者だけでなく一般的なイメージン グ技術の研究者にとっても,新たな利用法や応用技術のヒントを得る助けと なるだろう. 本書は使い勝手のよいハンドブックを目指し ,構成にも工夫を加えている. 全体は三部で構成されており,第I部は序論「磁気イメージングの基礎」,第 II部は磁気イメージング各論,第III部は用語集である.第I部には磁気イ メージングの歴史と本書の構成が紹介されている.最初に第I部の「ハンド ブックの利用について」を見ていただきたい.利用目的別分類表,測定原理 別分類表が掲載されており,これらの表から必要とするイメージング手法を 探し ,該当項目を読むことができる.そして第II部が ,本書の根幹をなすイ メージング方法の各論である.ここには ,最新のイメージング技術のなかか ら固体構造物の磁気に関係するイメージングの代表的な13の方法を取り上げ ている.生体磁気に関するイメージングは本書の対象外としている.最後に , 第III部は用語集である.イメージングに特徴的な用語を中心として ,代表 的な言葉に簡単な解説が与えられている.また ,用語項目「放射光施設」に おいては ,近年イメージング技術において重要な位置を占めている放射光施 設に関して ,国内外の施設とそのアクセス先がまとめてある.こうした施設 は一般にも解放されており,一定の手続きをふむことで利用可能であるので , 利用の参考にしていただきたい.本書を通じて ,観察に際して重要なポイン トを理解し ,最適な方法が利用できるようになる知恵を身につけていただけ れば幸いである. 本書は ,日本磁気学会出版事業の一環として企画され ,各測定技術の第一線 で活躍されている研究者の方々に執筆していただいた .多忙ななかご 執筆い ただき,体裁統一などの調整にも快く応じていただいたことに感謝する.ま た ,本書の企画から刊行まで ,共立出版編集部の方々,特に松本和花子氏と 石井徹也氏にお世話になった ,深く感謝する. 2010 年 7 月 日本磁気学会出版ワーキンググループ 磁気イメージングハンドブック編集委員会一同