ま え が き
〔ナノ加工学を学ぶ〕 加工学を学ぶのは亜加工のノウハウを覚えることだと考えている人が多いか もしれない唖しかし亜必ずしもそうではない唖加工学を学ぶのは亜ノウハウが ない新しい加工をしなければならない事態に際してどのように対処すればよい のかを考える方法を学ぶことなのである唖 確かにノウハウは対処方法を教えてくれるのでノウハウを覚えれば簡単に対 処できる唖受験勉強で問題を解くノウハウだけを覚えて好成績を挙げた人がお そらく多いだろう唖しかし亜未だノウハウがない新しい問題が出されると手の 施しようがないので成績が悪くなってしまう唖加工も同じで亜人間生活に必要 とされる商品で旧来と同一商品の場合の加工ではノウハウを覚えていれば簡単 に対処できるが亜まったく新しい商品で未だ加工するノウハウがない場合には 対処不能となってしまう唖そんな場合は新しいノウハウを考え出すことが必要 となる唖加工学を学ぶと亜そのような事態に際してどのように対処すればよい のかを考える方法がわかってくる唖 それでは亜なぜ新しい商品づくりが必要となるのだろうか唖人間生活に必要 とされる商品なら旧来と同一商品でよいのではないか亜なぜわざわざ新しい商 品づくりをするのだろうか唖 それは亜商品を作るモノづくりでは亜「自然がもつ法則」と「文化がもつ法 則」に従わざるを得ないからである唖「自然がもつ法則」とは硬い固体と柔ら かな固体を互いに擦ると柔らかな固体が傷つくといったルールで亜「文化がも つ法則」とは商品価値は時間とともに劣化するといったルールである唖新しい 商品づくりは「文化がもつ法則」に従った経済活動で亜新しい商品づくりをわ ざわざする結果亜文化が栄えていくのである唖 「文化がもつ法則」は一般的には変えられないが亜大勢の人が変化すれば変 えられる法則であるのに対して亜「自然がもつ法則」は人間にはけっして変え られない唖この「自然がもつ法則」にモノづくりは従わざるを得ない唖それは逆にいえば亜「自然がもつ法則」を学べば亜ノウハウがない新しい商品を加工 する方法が考えられるということでもある唖 人間生活に必要な商品を作ると同時に経済活動であるモノづくりでは亜近 年亜微細加工および高精度加工が求められ亜現在では原子・分子を制御するレ ベルにきている唖本書「ナノ加工学の基礎」では精密加工の除去加工技術に焦 点を絞り亜原子・分子の加工制御の仕組みを「量子力学亜非平衡力学亜弾塑 性・破壊力学亜損傷力学」の初歩的知識と加工原理とを組み合わせてわかりや すく解説し亜除去加工の本質である非平衡状態の構成式の入り口まで一気に読 者を導く唖 本書の対象は大学や高専の機械工学に相当する学科に所属する学生亜加工を 復習したい院生や技術者としているため亜個々の細かく厳密な力学知識の習得 を求めるテキストではなく亜ナノ除去加工の全体像を体系的に理解できるテキ ストとなるように心掛けている唖理系の人はゲームにたとえると詰将棋や詰碁 のような緻密な思考が得意であるが亜本書では理解を急がず亜そういう理論や 概念が使われるんだな程度に留めながら学んで頂きたい唖やがて亜より深い勉 強に入たっときに本書の各所に新しい勉強内容がジグソーパズルのピースのよ うに当てはまるので亜ジグソーパズルを組み立てるときの快感を得られると思 われる唖 さて亜最後に記号と塑性ポテンシャルについて注意して頂きたい唖 本書で使われる記号は亜たとえば亜G は剛性率でもギブスエネルギーでも 使っている唖統一することも考えたが亜より深い勉強に入るときによく使われ る記号と違うのは不便だということで統一しなかった唖同じ記号が違った意味 で使われることがあるという点に注意して頂きたい唖 また亜散逸ポテンシャルとして Hill の塑性ポテンシャルを用いることにな っているので亜本書でもそれに倣った唖もっと統一的なわかりやすい関数形の 散逸ポテンシャルが考えられそうであるが亜慣例に従った唖この点も入門書と してはわかりにくいところである唖注意して頂きたい唖 本テキストは膨大な数の研究者によって得られた知見に基づいております唖 筆者の不勉強ゆえ亜文献の引用が不十分かとも存じますが亜本テキストに引用 ま え が き iv
されていない文献の筆者の方々を含め直接的・間接的に影響を与えたすべての 研究者の方々に深い敬意を表します唖 また亜本テキストを作成するチャンスを与えて頂いた亜中央大学ならびにノ ースキャロライナ農工大(NCAT)亜共立出版(株)の多くの関係者の方々にも 深く感謝致します唖 2012 年夏 NCAT にて 井原 透 ま え が き v