Title
p53 status and prognosis in stage I-IIIa non-small Cell lung
Cancer.( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
大野, 厚子
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第397号
Issue Date
1999-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14729
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 蕃 査 委 員 大 野 厚 子(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 397 号 平成11年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当
P53status and prognosisin stageI-‖a non-Smal(ce‖lung cancer.
(主査)教授 藤 原 久 義 (副査)教授 森 秀
樹
教授 森 脇 久 隆 論 文 内 容 の 要 旨 日本の死亡原因の第1位は病死であり,肺癌の死亡者数はt1994年で男性31724人,女性11129人の合計42853人 で.男性では癌死亡数の1イ乱 女性では3位を占めている。その数は年々増加しており,2015年には現在の2∼3倍 になるといわれている。肺癌の約80%を占めるのは非小細胞肺癌であり,その治療の第1選択は,外科的切除で ある。このため患者の予後に影響を与える最も重要な因子は.癌の解剖学的拡がりを示す病期分類(TNM分類) である。しかし術後病理学的病期分類上,肺癌を完全に切除し得たと判断されたにもかかわらず,患者の半数以 上が,5年以内に再発,死亡している。これゆえに肺癌の拡がりを示す病期分類とは異なった,肺癌の生物学的 悪性度を表す,新しい指標を探索する必要がある。p53癌抑制遺伝子は,細胞の増殖を抑制的にコントロールし ている代表的な遺伝子であり,非小細胞肺癌をはじめ,多くの癌種で異常が報告されているため,今回p53癌抑 制遺伝子の変化と,患者の予後の関係を検討した。 【対象および方法】 Ⅰ期からⅢa期の非小細胞肺癌患者74例を対象に,その切除された腫瘍組織と.正常肺からDNAを抽出し, PCR-SSCP(polymerase chainreaction-Singlestrandconformationpolymorphism)紘及UDNAsequence 法にて,p53のexon5からexon9の塩基配列の異常を検出した。また同一患者,67例の腫瘍組織と正常肺のparaffin 切片を,p53モノクローナル抗体(DO-7)を用いて免疫組織染色法によりp53蛋白の過剰発現を検出した。患者 の生存曲線は,Kaplan-Meier法を用い,log-rank testにて比較検討した。臨床学的特徴の2群を比較する場合,Chi-Square teStあるいはFisher's exact probability testを用いた。患者の予後の多変量解析は,Cox's
proportionalhazards modelを用いた。
【結果】
1)PCR-SSCP法では,28%(21/74例)にDNAの変異を認め,腺癌(17%)に比し扁平上皮癌(47%)におい
て高率に認められた(p=0.015)。それ以外の臨床学的特徴(性.術後病理学的病期分類,performance status,
CEAレベル,Cigaretteindex)と遺伝子変異の間にはt 相関関係は無かった。
2)DNA sequence法では,deletionを3検胤 substitutionを20検体(うち.transitionを12検体,tranSVerSion
を8検休)に認め,2検体はDNAの2ケ所に変異を伴っていた。またsubstitutionのうち,missense mutationは
15検体,nOnSenSe mutationは1検体,Silent mutationは4検体に認められた。これらは,喫煙の有無や性差に
よって,特別な違いはなかった。 3)免疫組織染色法では,40%(27/67例)にp53蛋白の過剰発現を認めた。臨床学的特徴(性,病理組織,術 後病理学的病期分類,performancestatus,CEAレベル,Cigaretteindex)と蛋白の過剰発現の間には,相関 関係は無かった。DNAの変異と蛋白の過剰発現の関係は,DNAの変異がある21例中,免疫組織染色陽性が15例, 陰性が6例,DNAの変異のない46例中.免疫組織染色陽性が12例,陰性が34例認められた。したがって,一致率 は73%(49/67例)であった。 4)予後因子としての意義を検討したところ,単変量解析では.PCR-SSCP法,及びDNA sequence法で検出さ れるDNAの塩基配列の異常と予後は,相関しなかった(p=0.6968)。しかし免疫組織学的に蛋白の過剰発現し ていた群は予後良好の傾向を認あた(p=0.0997)。また.術後病理学的病期分類(p=0.0042),performance
-13-status(p=0.0021),病理組織(p=0.0214)では有意であったが,性差(p=0・0721),年齢(p=0・2169)では 有意差はなかった。そこで,P53蛋白の過剰発現の有無,性差,術後病理学的病期分類,performance status. 病理組織の5つの因子で多変量解析を行った結果,免疫組織学的に過剰発現していた群は=0・0099で,病期分類 (p=0.0013)に次ぐ,予後良好因子であることが確定された。他の因子は,性差(p=0・1304)・performance status(p=0.0653),病理組織(p=0.1984)であった。 【考察】 今回の研究で明らかになったことは,3点である。第1にp53のDNA変異と蛋白の過剰発現は,必ずしも一致し
ない。第2に同一検体で検試したところ,p53のDNA変異,あるいは蛋白の過剰発現と臨床的特徴との関係には
解離がある。第3にDO-7という抗休を用いたp53の免疫組織学的陽性所見は,予後良好因子であるということ。 p53の変化が予後に影響を与えるという報告はいくつかあるが,多くは,p53の異常は予後不良となる,という ものである。免疫組織学的に蛋白の過剰発現している群が予後良好となる,という論文は.この研究を含め3つ 報告されているが,同一検体のDNA変異を解析したものはこの研究だけである。 p53が免疫組織学的に染色されるのは,正常の蛋白の半減期が6∼20分なのに対し,異常蛋白は4∼12時間と長く なるため,異常な蛋白を検出していると考えられてきた。しかし最近の報告では,染色の行程でmicrowave techniqueにより,正常のp53蛋白の増加や蓄積も検出しうるとされている。今回の検討で,DNAの変異がなく 免疫組織染色陽性の12例は,正常のp53蛋白の過剰発現の可能性がある。またDNAの変異があり免疫組織染色陽 性の15例も,p53蛋白の機能はそれはど失われていないとも考えられる。したがって今後の課題は次の2つが考 えられる。第1はp53蛋白の機能解析と臨床との関係を明らかにすること。第2にhistolicalな研究ではなく,patient selectionやバイアスの無いprospectiveな臨床試験の中で,P53の免疫組織学的染色性の有無が予後因子になる のか否かを明らかにすることである。 【結論】 術後病理学的病期分類上 トⅢa期の非小細胞肺癌において,免疫組織学的にp53癌抑制遺伝子の蛋白の過剰 発現は,予後良好因子であると考えられた。 論文審査の結果の要旨 申請者 大野厚子は非小細胞肺癌患者の生物学的悪性度を表す指標の一つとして,p53癌抑制遺伝子が関与し ている可能性を示した。この新知見は肺癌の診断および治療の進歩に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌]p53stattlSand prognosisin stageI-Ⅲa non-Smal1celllung cancer・ 1997年Internationaljournalof oncologylO:521∼528