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欧州連合(EU)における消費者のための代替的紛争解決―消費者代替的紛争解決(ADR)指令および消費者オンライン紛争解決(ODR)規制について― 利用統計を見る

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全文

(1)

欧州連合(EU)における消費者のための代替的紛争

解決―消費者代替的紛争解決(ADR)指令および消

費者オンライン紛争解決(ODR)規制について―

著者

深川 裕佳

著者別名

Fukagawa Yuka

雑誌名

東洋法学

56

2

ページ

131-167

発行年

2013-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00004087/

(2)

目次 Ⅰ   はじめに Ⅱ   消費者ADR指令   1   消費者ADR指令の背景   2   消費者ADR指令における四つの要素    A   ADR手続きがすべての消費者紛争について存在することを保証すること    B   ADRに関する情報および協働    C   ADR主体の資格    D   モニタリング Ⅲ   消費者ODR規則   1   消費者ODR規則の目的   2   消費者ODR規則における四つの要素    A   欧州オンライン紛争解決の確立    B   欧州域内におけるODRシステムの情報 《 研究ノート 》

欧州連合(EU)における消費者のための代替的紛争解決

――

消費者代替的紛争解決(ADR)指令および消費者オンライン紛争解決

(ODR)規則について

 

  

 

(3)

   C   モニタリング    D   情報保護規定 Ⅳ   おわりに 参考資料 Ⅰ   はじめに   本 稿 は 、「 消 費 者 紛 争 の た め の 代 替 的 紛 争 解 決 に 関 す る 欧 州 議 会 お よ び 理 事 会 指 令 案 」 ( 以 下 、「 消 費 者 A D R 指 令 」 という) [ Directive on consumer ADR ]、および、 「消費者紛争のためのオンライン紛争解決に関する欧州議会およ び 理 事 会 規 制 案」 (以 下、 「消 費 者 O D R 規 則」 と い う) [ Regulation on consumer ODR ] に つ い て 紹 介 を す る も の で あ る (な お、 U N C I T R A L で も、 O D R に 関 す る プ ロ ジ ェ ク ト が 進 行 中 で あ り、 こ れ に つ い て は、 [早 川 二 〇 一 二] に おいて紹介されている) 。   消 費 者 A D R 指 令 お よ び 消 費 者 O D R 規 則 は 、 二 〇 一 二 年 度 末 ま で に 採 択 さ れ る 見 込 み で あ る と さ れ て い る [ Ques -tions and Answers ]。これは、消費者被害救済制度の一環として立法化されるものであり、わが国においても、拡 散的消費者被害が国境を越えたものとなっていることや、消費者被害救済手段に関する議論が盛んとなりつつある ことを考慮すると、参考になるものと考えられる。   特に、消費者ADR指令および消費者ODR規則にみられる、手続きの公平性、透明性、効率性、公正性という ADRが成功するためのキーワードは、立法によって基本となる制度が形作られることによって初めて実現される ものであり、これらの確保のため、どのような立法が必要とされているかを確認するのに、欧州での立法化の動き を 参 照 す る こ と は、 有 用 で あ る と 思 わ れ る。 わ が 国 に は、 事 業 者・ 消 費 者 間 の 民 事 紛 争 (消 費 者 紛 争) を 裁 判 外 で

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解決するために、国民生活センターや消費生活センターの苦情窓口のように行政が提供するものや、裁判外紛争解 決 手 続 き の 利 用 の 促 進 に 関 す る 法 律 (A D R 法) に よ り 認 証 を 受 け た 民 間 A D R[か い け つ サ ポ ー ト] に よ る も の、さらには、越境型紛争も扱うODRとして、経済産業省の委託により始められたECネットワーク、消費者庁 の 委 託 に よ る C C T (消 費 者 庁 越 境 消 費 セ ン タ ー) が あ る。 こ の よ う に 消 費 者 紛 争 の た め に A D R 手 段 が 様 々 に 用 意 されていることは、消費者にとって解決方法の選択肢の多様性から利益があるものの、その反面として、どこにア クセスすれば、どのような手続きでADRが進められるかが不透明な状況となっているように思われる。そのよう な 状 況 に あ っ て、 国 内 に お け る 消 費 者 保 護 の 水 準 を 高 く 維 持 す る た め に は、 地 域 的 な 偏 り の な い 消 費 者 A D R ス キームおよび、消費者にとってアクセスが容易で分かりやすい手続きを用意することが大切であると思われる。   ま た、 A D R の 一 つ の 存 在 理 由 は「 〔取 引 費 用 が つ き も の で あ る〕 現 実 と〔取 引 費 用 を ゼ ロ な い し 無 視 し う る も のとする〕コースの定理の理想状態との乖離の中に、紛争解決をパレート最適に近づける」ことにあると指摘され て い る[太 田 二 〇 一 二、 四 頁] 。 こ の よ う な 取 引 費 用 の 削 減 と い う 観 点 か ら 見 て、 統 一 的 な 消 費 者 A D R ス キ ー ム および統一的な消費者ODRスキームを用意することは、当事者の合意による望ましい紛争の解決の実現に資する ものといえるだろう。EUでなされた見積もりによると、手続きの公平性、透明性、効率性、公正性を確保したA DRを導入することによって、EU域内では、年間で、事業者は三〇億ユーロ、消費者は二二五億ユーロもの費用 節約が可能であるとされている[

Questions and Answers

]。

 

本稿は、まず、

(Ⅱ)消費者ADR指令について紹介した後、

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Ⅱ   消費者ADR指令 1   消費者ADR指令の背景   消費者のためのADRに関する一般的な指令は、現在のところ、存在しない。欧州委員会は、消費者ADRに対 す る 二 つ の 勧 告[ Recommendation 98/257/EC ][ Recommendation 2001/310/EC ] を 採 択 し、 現 在、 E U で は、 A D R を 扱 う 二 つ の ネ ッ ト ワ ー ク ( ECC-net お よ び FIN-NET ) が 設 置 さ れ て い る[ Recommendation 98/257/EC ] [ Recommendation 2001/310/EC ]。 ECC-net は、欧州委員会と加盟国政府の共同出資によって作られており、欧州 連合加盟国、および、アイスランド、ノルウェイにおいて、消費者に対して、商品売買契約および旅行役務適用契 約に関する越境的紛争の解決に向けた支援を無償で行うものである ([早川 二〇一二、 一五]も参照) 。 FIN-NET は、 欧 州 経 済 領 域 (欧 州 連 合 加 盟 国、 お よ び、 ア イ ス ラ ン ド、 リ ヒ テ ン シ ュ タ イ ン、 ノ ル ウ ェ イ) に お い て、 消 費 者 と 金 融 役 務 提 供 者 (銀 行 や 保 険 会 社、 投 資 会 社 な ど) の 間 で 生 じ た 金 融 的 紛 争 解 決 に 関 す る 国 内 的 な 裁 判 外 申 立 手 段 の ネ ッ トワークを提供している。また、部分的には、いくつかのADRに関する規定を有するEUにおける立法も存在す る。   しかし、適用範囲の間隙や、ADR手続きの不均衡に加え、消費者および事業者の認識の欠如がADRの実効性 を妨げているとの指摘がなされている[ Study on the use of Alternative Dispute Resolution in the European Un -ion, pp. 56-63, 112-115, 120-121 ]。たとえば、欧州連合内においても、デンマークや、エストニア、フィンランド、 フランス、アイルランド、リトアニア、ルクセンブルク、ラトビア、オランダ、ポーランド、スロバキア、スロベ ニア、チェコ、マルタ、イギリス、スウェーデンでは、すべてのADRスキームが国家レベルで用意されているの

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に対して、ドイツやイタリア、ポルトガル、スペインにおいては、地方レベルで分断的に提供されており、さらに は、 全 く A D R を 採 用 し て い な い 加 盟 国 も あ る こ と が 明 ら か と さ れ て い る[ Study on the use of Alternative Dis -pute Resolution in the European Union, p. 56 ]。また、これらの国内において提供されているADRは、その扱う 領域が限定されていることや、欧州連合における広域的なADRについては、 ECC-net や FIN-NET が存在するも の の、 そ れ ら は、 限 定 さ れ た 消 費 者 問 題 を 対 象 と し て お り、 さ ら に、 加 盟 国 に よ っ て も、 取 り 扱 わ れ る 領 域 が 異 なっていることが指摘されている[ Study on the use of Alternative Dispute Resolution in the European Union, p. 57-63 ]。   そこで、消費者ADR指令、および、それと同時に採択される見込みとなっている消費者ODR規則によって、 欧州連合域内における小売市場の機能を促進し、特に、消費者救済を実現することを目的として、すべての商品販 売および役務提供から生じた越境的消費者紛争について取り扱うADR手続きが創設されることが提案されている [

Directive on consumer ADR, p.2

]。 消費者ADR指令   第一条   趣旨   本指令は、消費者と事業者の間の紛争が、公平で、透明性のある、効率的で、公正な代替的紛争手続きに服す ることを保証することによって、域内市場を機能させること、および、消費者保護を高い水準で達成すること に貢献することを目的とする。 2   消費者ADR指令における四つの要素   消費者ADR指令の提案の要素は、四つにまとめられている[ Directive on consumer ADR, pp.4-5 ]。条文の順

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番 と は 異 な る が 、 以 下 で は 、 提 案 に よ っ て 示 さ れ た こ の 四 点 に 沿 っ て 、 条 文 案 を 紹 介 し つ つ 述 べ て い く こ と に す る 。 A   ADR手続きがすべての消費者紛争について存在することを保証すること   第一に、消費者ADR指令では、異なる欧州連合加盟国に存在する消費者と事業者の間で締結された商品販売お よび役務提供に関するすべての契約的な紛争について、ADR手続きを用意することを加盟国に課すものとしてい る [ Directive on consumer ADR, p.4, para. 3.1.1. ]。 こ れ は 、 調 停 手 続 き ( mediation ) や 、 仲 裁 ( arbitration ) お よ び 和解 ( conciliation ) 、消費者苦情窓口 ( consumer complaint board ) のような準司法手続きに適用されることが想定さ れている。 消費者ADR指令   第二条   適用範囲   一.本指令は、欧州連合内に設立された事業者と欧州連合内に居住する消費者がかかわる商品販売、または、 役務提供に関して、契約的性質を有する紛争について、解決を提言もしくは強制する、または、平和的解決 の到達を容易にするために当事者の架け橋となる紛争解決主体を介入させる紛争の裁判外解決の手続きに適 用されるものとする。   二.本指令は、次の各号に定める場合には、適用されないものとする。    ⒜紛争の解決の責任を負う自然人が事業者によってもっぱら雇われている場合に、紛争解決主体の前で展開 される手続き。    ⒝専門家によって管理された苦情処理システムの範囲において展開される手続き。    ⒞代理によるか否かによらず、消費者と事業者の間の直接的な交渉。

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   ⒟司法手続きの途中に、ある紛争の解決に当たった裁判官によって、その紛争を解決するためになされる試 み。 第三条   欧州連合の他の立法との関係   一.本指令は、 Directive 2008/52/EC および Regulation ( EC ) No44/2001, Regulation ( EC ) No 864/2007, Reg -ulation ( EC ) No 593/2008 にもかかわらず適用される。   二.本指令第五条一項は、付則に言及された規定に優先するものとする。   三.本指令は、欧州連合の特定領域に関する強行法規が少なくとも同程度の消費者保護を保証するものでない 場合には、これらに優先するものとする。 第四条   定義   本指令の目的に照らして、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。    ⒜「消費者」とは、その商業的、または、工業的、手工業的、専門職業的活動の範囲外の目的において行為 するすべての自然人をいう。    ⒝「事業者」とは、その名前またはその計算において行動する仲介人を通じる場合も含めて、その商業的、 または、工業的、手工業的、専門職業的活動の範囲内の目的において行為するすべての自然人、または、 すべての公法人、もしくは、私法人をいう。    ⒞事業者は、次の場所に設立される。      ―   事業者が自然人である場合には、その営業場所。      ―   事業者が会社もしくはその他の法人である場合、または、自然人もしくは法人の団体である場合に

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       は 、 支 店 、 ま た は 、 代 理 店 、 そ の 他 の 事 務 所 を 含 む 、 法 定 所 在 地 、 ま た は 、 管 理 セ ン タ ー 、 事 業 所 。    ⒟「越境的紛争」とは、消費者が商品または役務を注文した時に、事業者の所在する加盟国以外の加盟国に 消費者が居住している場合に、その商品販売または役務提供から生じた契約的性質を有する紛争をいう。    ⒠「ADR主体」とは、いかなる名称であれ、恒常的に設置され、ADR手続きに沿って紛争の解決を提供 するものをいう。    ⒡ADR主体は、次の場所に設立される。      ―   その主体が自然人によって運用される場合には、それが代替的紛争解決活動を行う場所。      ―   その主体が法人、または、自然人もしくは法人の組織によって運用される場合には、法人または自 然人もしくは法人の組織が代替的紛争解決活動を行う場所、または、その法定所在地。      ―   その主体が官庁またはその他の公共主体によって運用されている場合には、その官庁または公共主 体の所在地。 B   ADRに関する情報および協働   紛争が起きたときには、消費者は、どのADR主体にその紛争を扱う能力があるかを早期に特定できなければな ら な い[ Directive on consumer ADR, p.5, para. 3.1.2. ]。 そ こ で、 消 費 者 A D R 指 令 に お い て は、 紛 争 を 扱 う こ と のできるADR主体に関する情報を消費者が見つけることができるように、情報の提供に関する規定が備えられて い る。 ま た、 加 盟 国 は、 越 境 的 紛 争 の A D R に つ い て、 た と え ば ECC-net に お け る 各 加 盟 国 の セ ン タ ー に 任 せ る などして、消費者が支援を得られることを確保しなければならないものとされている。

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消費者ADR指令   第一〇条   事業者による消費者情報   一.加盟国は、その領域において設立された事業者が、消費者に対して、その事業者が利用し、また、その事 業 者 と 消 費 者 の 間 の 潜 在 的 紛 争 を 扱 う こ と の で き る A D R 主 体 に つ い て 知 ら せ る こ と を 確 保 す る も の と す る。そのような情報には、当該ADR主体のウェッブサイトのアドレスを含むものとし、消費者との紛争を 解決するために、これらの主体を利用するか否かを明示するものとする。   二.第一項に規定した情報は、事業者がウェッブサイトを有する場合には、そこに、消費者と事業者の間の商 品売買契約、または、役務提供契約の一般取引条件として、並びに、そのような契約に関するインヴォイス および領収書において、容易に、かつ、直接的に、目に付きやすい、恒常的にアクセス可能な方法で、言及 されなければならない。それは、関係するADR主体に関するより詳しい情報を得る方法、および、それに よる場合の条件について明確に述べるものでなければならない。   三. 本 条 は、 隔 地 者 契 約 お よ び 事 業 所 外 契 約 の 場 合 に お け る 消 費 者 情 報 に 関 す る 指 令 ( 2011/83/EU ) 第 六 条、 および、第七条、第八条にもかかわらず適用される。     〔な お、 消 費 者 A D R 指 令 一 八 条 に お い て、 一 〇 条 に 違 反 す る 場 合 に は、 各 加 盟 国 は、 罰 則 を 設 け る こ と ができることが規定されている。 〕 第一一条   消費者への支援   一.加盟国は、消費者が越境的商品売買又は役務提供から生じた紛争に関する支援を得ることができることを 確保するものとする。このような支援は、特に、消費者に対して、その越境的紛争を扱うことのできる他の

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   加盟国で操業するADR主体にアクセスすることを助けることを目的とするものとする。   二. 加 盟 国 は、 欧 州 消 費 者 セ ン タ ー ネ ッ ト ワ ー ク〔 ECC-net 〕 の そ の セ ン タ ー、 ま た は、 消 費 者 団 体、 そ の 他 の主体に、第一項に言及された任務を委任することができる。 第一二条   一般情報   加 盟 国 は 、 A D R 主 体 、 お よ び 、 消 費 者 団 体 、 事 業 者 団 体 、 欧 州 消 費 者 セ ン タ ー ネ ッ ト ワ ー ク の そ の セ ン タ ー 、 そ の 他 適 切 な 場 合 に は、 第 一 一 条 二 項 に 沿 っ て つ く ら れ た 主 体 に、 そ の 事 業 所 ま た は ウ ェ ッ ブ に お い て、 第 一七条三項において言及されたADR主体のリストを公に使用させるようにすることを確保するものとする。 C   ADR主体の資格   消 費 者 A D R 指 令 の 目 的 は「公 平 で、 透 明 性 の あ る、 効 率 的 で、 公 正 な 代 替 的 紛 争 手 続 き」 の 保 証 (前 掲、 消 費 者 A D R 指 令 第 一 条) に あ る。 そ こ で、 同 指 令 で は、 A D R 主 体 に 対 し て、 公 平 性、 透 明 性、 効 率 性、 公 正 性 を 求 め る こ と が 提 案 さ れ て い る[ Directive on consumer ADR, p.5, para. 3.1.3. ]。 こ れ は、 A D R 主 体 に 対 す る、 消 費 者と事業者双方の信頼を高めることからも必要とされるものといえるだろう。 消費者ADR指令   第五条   代替的紛争解決へのアクセス   一.加盟国は、本指令によって扱われる紛争を、本指令に規定された要件を満たすADR主体に提出できるよ うにすることを確保するものとする。   二.加盟国は、ADR主体について、以下の各号に定めることを確保するものとする。

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   ⒜ADR主体が、当事者に主張書面をオンラインで提出できるウェッブサイトを有すること。    ⒝ADR主体が、当事者に電子的手段によって情報を交換できるようにすること。    ⒞ADR主体が、 〔消費者ODR規則〕によって扱われる国内的および越境的紛争をともに受け入れること。    ⒟ A D R 主 体 は、 本 指 令 に か か わ る 紛 争 を 扱 う と き に、 個 人 情 報 に つ い て、 Directive 95/46/EC の 履 行 と して国内立法において規定された個人情報保護規定を遵守することを保証するために必要な措置を講ずる ものとする。   三.加盟国は、いかなるADR主体も扱うことができないような問題を解決するために、第一項に言及された 紛争を扱うことのできる補充的ADR主体の存在を確保することによって、第一項に規定された義務を果た すことができる。 第六条   専門性および公平性   一.加盟国は、代替的紛争解決の義務を負う自然人が必要な専門的知識を有すること、および、公平であるこ とを確保するものとする。これは、次の各号に定めることを確保することによって保証されるものとする。    ⒜その自然人が代替的紛争解決の分野において、必要な知識、および、技能、経験を有していること。    ⒝その自然人が正当な理由なくしてその義務から解放されることがないこと。    ⒞その自然人が当該紛争のいかなる当事者の利益にも抵触しないこと。   二.ADR主体において紛争解決の責任を負う自然人が同種組織を構成する場合に、加盟国は、その組織にお いて、消費者の利益についての代表と事業者の利益についての代表が同数となるように予定することを確保 するものとする。

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第七条   透明性   一.加盟国は、ADR主体が、そのウェッブサイトおよび印刷された媒体において、次の各号に定める前提情 報を公表することを確保するものとする。    ⒜紛争の裁判外解決の責任を負う自然人、および、任命の方法、委任期間。    ⒝公的および私的融資の割合を含む財政基盤。    ⒞適切であれば、越境的紛争解決を容易にするADR主体のネットワークにおける会員としての地位。    ⒟その主体が扱うことのできる紛争の種類。    ⒠紛争解決に適用される手続き規則。    ⒡ADR主体に提出できる主張書面における言語およびADR手続きが行われる言語。    ⒢ADR主体が紛争解決の基礎として用いる規則の種類 (たとえば、 法規、 エクイティー上のコンシダレーショ ン、行動規範( code of conduct )) 。    ⒣ADR手続きが行われうる前に、当事者が満たすことのできるすべての先行条件。    ⒤いかなるものであれ、当事者に課せられうる費用。    ⒥ADR手続きのおおよその期間。    ⒦ADR手続きの結果の法的効果。   二.加盟国は、ADR主体が、そのウェッブサイトおよびその所在地において印刷された媒体において、年間 活動報告について公表することを確保するものとする。これらの報告は、国内的および越境的紛争の双方に 関する以下の情報を含むものとする。

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   ⒜ADR主体が受けた紛争の数、および、ADR主体がかかわった主張書面の種類。    ⒝消費者および事業者の間の紛争のもととなった反復的問題。    ⒞結果に到達する前に中断された紛争解決手続きの割合。    ⒟紛争解決に要した平均期間。    ⒟明らかとなっている場合には、ADR手続きの結果が遵守された割合。    ⒠適切であれば、越境的紛争解決を容易にするADR主体のネットワークにおける協働。 第八条   実効性   加盟国は、ADR手続きが実効的であって、以下の要件を満たすものであることを確保するものとする。    ⒜当事者がどこに所在しているにせよ、ADR手続きが、当事者双方にとって、容易にアクセスすることが できること。    ⒝ 当 事 者 が 訴 訟 代 理 人 を 使 う こ と を 義 務 づ け ら れ る こ と な く 手 続 き に ア ク セ ス す る こ と。 た だ し、 当 事 者 は、手続きのあらゆる段階において第三者によって代表され、または、支援されることができる。    ⒞ADR手続きは、無償で、または、消費者にとって適切な費用とすること。    ⒟紛争は、ADR主体が主張書面を受領した日から九〇日以内で解決されること。複雑な紛争の場合には、 ADR主体は、この期間を延長することができる。 第九条   公正性   一.加盟国は、ADR手続きにおいて、以下のことを確保するものとする。    ⒜当事者が、その見解を表明し、相手方によって提示された議論および事実および専門家の所見を聞く可能

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    性を有すること。    ⒝当事者双方が、ADR手続きの結果を、その結果の基づく理由を表明した文書によって、または、耐久性 ある媒体によって知らされること。   二.加盟国は、解決の提示による紛争の解決を目指すADR手続きにおいて、次の各号に定めることを確保す るものとする。    ⒜提案された解決に同意する前に、消費者が次のことを知らされること。     ⅰ消費者が提案された解決に同意すること、または、しないことを選択できること。     ⅱ提案された解決は、裁判所によって法規の適用により決定された結果よりも有利でないかもしれないと いうこと。     ⅲ提案された解決に同意し、または、拒絶するにあたって、消費者は、独立した助言を求める権利を有す ること。    ⒝提案された解決に同意する前に、当事者は、そのような同意の法的効果について知らされること。    ⒞提案された解決、または、和解合意に同意する意思を表明する前に、当事者は、熟考するための相当な期 間を与えられること。 D   モニタリング   ADR主体が正常に操業しているかどうかについては、それぞれの加盟国にモニタリングの義務が課せられてい る。 ま た、 三 年 ご と に、 欧 州 委 員 会 は、 欧 州 議 会 お よ び 理 事 会 に 対 し て、 報 告 義 務 が 課 せ ら れ て い る[ Directive

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on consumer ADR, p.5, para. 3.1.4. ]。 消費者ADR指令   第一五条   権限のある当局の指名   一.各加盟国は、その領域において設立されたADR主体の機能及び発展をモニタリングする責任を負う権限 のある当局を指名するものとする。各加盟国は、欧州委員会に対して、その指名を知らせるものとする。   二.欧州委員会は、第一項の規定に従って権限のある当局のリストを作成し、かつそれを欧州連合オフィシャ ル・ジャーナル〔OCJ〕において公表するものとする。 第一六条   ADR主体によって権限ある当局に知らされるべき情報   一.加盟国は、その領域において設立されたADR主体が以下の情報について権限ある当局に伝えることを確 保するものとする。    ⒜その名称、および、連絡先、ウェッブサイトのアドレス。    ⒝代替的紛争解決の責任を負う自然人およびその財政基盤、その雇用者の情報を含めた、ADR主体の構成 および財政基盤に関する情報。    ⒞その手続き規定。    ⒟必要である場合には、その費用。    ⒠ADR手続きのおおよその期間。    ⒡申立書面を提出できる言語およびADR手続きが行われる言語。    ⒢その能力を確立するのに必要な事項についての言明。

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   ⒣本 指 令 の 範 囲 に 属 し 、 か つ 、 第 二 章 〔 代 替 的 紛 争 解 決 手 段 に 対 す る ア ク セ ス お よ び 一 般 原 則   第 五 ~ 九 条 〕 において規定された要件に従ったADR主体としての資格を有しているかどうかに関する、ADR主体に よる自己評価に基づく陳述書。 ⒜号、⒢号に言及された情報について変更がなされる場合には、ADR主体は、これらの変更を、直ちに権 限ある当局に伝えるものとする。   二.加盟国は、ADR主体が、権限ある当局に対して、少なくとも一年に一回は、次の情報を伝えることを確 保するものとする。    ⒜そのADR主体が受けた紛争の数、および、そのADR主体がかかわった主張書面の種類。    ⒝結果に到達する前に中断された紛争解決手続きの割合。    ⒞紛争解決に要した平均期間。    ⒟明らかになっている場合には、ADR手続きの結果が遵守された割合。    ⒠消費者との紛争解決のために事業者が代替的紛争手段を用いた方法を明らかにする適切な統計。    ⒡消費者および事業者の間の紛争のもととなった反復的問題。    ⒢適切であれば、越境的紛争解決を容易にするADR主体のネットワークにおける協働。    ⒣ADR手続きについて、その結果改善のために可能な方法でなされた、その主体による自己評価。   〔な お、 消 費 者 A D R 指 令 一 八 条 に お い て、 一 六 条 に 違 反 す る 場 合 に は、 各 加 盟 国 は、 罰 則 を 設 け る こ と が で きることが規定されている。 〕 第一七条   権限ある当局および欧州委員会の役割

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  一.それぞれの権限ある当局は、第一六条一項に従って受け取った情報に基づいて、通知されたADR主体が 本指令の範囲に属するADR主体の資格を有しており、第二章に規定された要件を満たしているかどうかを 評価するものとする。   二.それぞれの権限ある当局は、第一項に言及された評価に従って、第一項に規定された要件を満たしたAD R主体のリストを作成するものとする。    リストには、下記の事項が含まれるものとする。    ⒜ADR主体の名称、および、連絡先、ウェッブサイトのアドレス。    ⒝必要である場合には、その費用。    ⒞申立書面を提出できる言語およびADR手続きが行われる言語。    ⒟その能力を確立するのに必要な事項についての言明。    ⒠該当する場合には、当事者自身またはその代理の出席の必要性。    ⒡手続きの結果の拘束的または非拘束的性質。 それぞれの権限ある当局は、欧州委員会に対して、このリストを知らせるものとする。第一六条一項後段に 従って変更の通知がなされた場合にはいつでも、リストは直ちに更新されるものとし、関係する情報は欧州 委員会に知らされるものとする。   三.欧州委員会は、第二項に従って知らされたADR主体のリストをつくり、第二項第後段に従って欧州委員 会に変更が通知されたときはいつでもこのリストを更新するものとする。欧州委員会は、このリストおよび 更新を公表し、権限ある当局及び加盟国にそれを伝えるものとする。

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  四.それぞれの権限ある当局は、第三項に言及された具体化されたADR主体のリストをそのウェッブサイト 上、および、適切な他の方法で公表するものとする。   五.二年ごとに、それぞれの権限ある当局は、ADR主体の発展および機能に関するレポートを公表するもの とする。そのレポートには、特に、次のことを含むものとする。    ⒜本指令に関する紛争についてADR手続きがなお適用されないような可能性のある領域を確認すること。    ⒝ADR主体の良い実績を確認すること。    ⒞適切である場合には、国内的および越境的紛争の両方に関するADR主体の機能を妨げる欠点を統計に基 づいて指摘すること。    ⒟適切である場合には、ADR主体の機能を発展させる方法に関する勧告を行うこと。 Ⅲ   消費者ODR規則 1   消費者ODR規則の目的   ここまでにおいて紹介した消費者ADR指令は、オンラインでのADRスキームと同時に採用されることになっ ている。以下では、このオンラインADRスキームを規定する規則についてみていくことにする。オンライン紛争 解 決 (O D R) に 関 す る 規 則 の 目 的 は、 「欧 州 レ ベ ル で の オ ン ラ イ ン 紛 争 解 決 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム (O D R プ ラ ッ ト フォーム) をつくること」である[ Regulation on consumer ODR, p.8, para.14 ]。ODRプラットフォームは、越境 的電子商取引から生じた裁判外紛争解決を求める消費者と事業者にとって、エントリーの単一ポイントを提供する 相互的ウェッブサイトの形式をとり、それを経由して、消費者および事業者は、すべてのEU公式言語による電子

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的 主 張 書 面 に 記 入 す る こ と に よ っ て 主 張 書 面 を 提 出 し、 当 該 紛 争 を 取 り 扱 う こ と の で き る 代 替 的 紛 争 解 決 主 体 (A DR主体) にその主張書面を送達することが可能となる。 消費者ODR規則   第一条   趣旨   本規則の目的は、公平で、透明性のある、効率的で、公正な消費者と事業者の間のオンライン紛争の裁判外解 決を容易にするプラットフォームを提供することによって、特に、その電子的側面において、域内市場の機能 に貢献し、 消費者保護の高い水準を達成することである。 2   消費者ODR規則における四つの要素 A   欧州オンライン紛争解決の確立   ODRプラットフォームには、消費者ADR指令に従って欧州委員会に知らされた、加盟国で設立されたADR スキームが電子的に登録される [

Regulation on consumer ODR, p.4, para.3.1.1

]。 消費者と事業者は、 ODRプラッ トフォームを通じてADRスキームにその主張書面を提出し、三〇日以内に、当該ADRスキームの規則に従って 紛争の解決策が模索されることになる。ADRスキームは、ODRプラットフォームに対して、紛争の進展に関す る 情 報 を 知 ら せ る (後 掲、 消 費 者 O D R 規 則 第 九 条) 。 各 加 盟 国 に は、 オ ン ラ イ ン 紛 争 解 決 の た め の 一 つ の コ ン タ ク ト・ポイントとして、オンライン紛争解決ファシリテータ (ODRファシリテータ) のネットワークが作られる。 消費者ODR規則   第二条   本規則は、 〔消費者ADR指令〕に従う代替的紛争解決主体の介入を通じて、消費者と事業者との間の商品販

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  売または役務提供に関する越境的電子商取引から生じる契約的性質を有する紛争の裁判外解決に適用される。 第四条   定義   本規定の目的に照らして、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。    ⒜「消費者」とは、その商業的、または、工業的、手工業的、専門職業的活動の範囲外の目的において行為 するすべての自然人をいう。    ⒝「事業者」とは、その商業的、または、工業的、手工業的、専門職業的活動の範囲内の目的において行為 する、その名前またはその計算において行動する仲介人を通じる場合も含めた、すべての自然人、または、 すべての公法人、もしくは、私法人をいう。    ⒞「越境的電子商品販売、または、役務提供」とは、事業者、または、事業者の仲介者が、商品または役務 を ウ ェ ッ ブ サ イ ト、 ま た は、 そ の 他 の 電 子 的 手 段 で 提 供 し、 消 費 者 が そ の よ う な 商 品 ま た は 役 務 を そ の ウェッブサイトまたはその他の電子的手段によって注文する場合の、商品販売、または、役務提供のための 取引をいう。    ⒟「電子的手段」とは、有線通信、無線通信、光学的方法、または、その他の電磁的手段によって、完全に 送信され ( transmitted ) 、伝達され ( conveyed ) 、受け取られた ( received ) 情報の (電子的圧縮を含む) 処理、 および、ストレージのための電子的装置をいう。    次のものは、電子的手段によって提供された役務とはみなされない。    ―   オフライン・サービス。    ―   キャッシュ・チケット自動取扱機 (紙幣、鉄道切符) のような電子的装置を通じて提供されるにもかか

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     わらず、物質的な中身を有するサービス。    ―   音声電話通信サービス、テレファックスもしくはテレックスサービス、音声電話通信またはファックス を通じて提供されるサービスのように、電子的処理/保存制度を通じて提供されるのでないサービス。 医 師 の 電 話 ま た は テ レ フ ァ ッ ク ス 相 談、 弁 護 士 の 電 話 ま た は テ レ フ ァ ッ ク ス 相 談、 電 話 ま た は テ レ ファックスによるダイレクト・マーケティング。    ⒠「商品販売または役務提供に関する越境的電子商取引」とは、商品やサービスを消費者が注文する時に、 事業者の所在する加盟国以外の加盟国に消費者が居住する場合の、そのような商品やサービスのオンライン 販売をいう。    ⒡事業者は、次の場所において「設立」される。    ―   事業者が自然人である場合には、それが営業を行う場所。    ―   事 業 者 が 会 社 も し く は 他 の 法 人、 ま た は、 自 然 人 も し く は 法 人 の 組 織 で あ る 場 合 に は、 そ の 法 定 所 在 地、または、管理センター、主要な事業所。または、事業者の提供、または、商品もしくはサービスの 注 文 が 支 店、 ま た は、 代 理 店、 そ の 他 の 事 業 所 に お い て な さ れ る 場 合 に は、 そ の 支 店、 ま た は、 代 理 店、その他の事業所が存在する場所。    ⒢「代 替 的 紛 争 解 決 手 続 き」 (以 下、 「A D R 手 続 き」 と い う) と は、 解 決 を 提 言 も し く は 強 制 す る、 ま た は、 平和的解決の到達を容易にするために当事者の架け橋となる紛争解決主体を介入させる裁判外解決のための 手続きをいう。    ⒣「代 替 的 紛 争 解 決 主 体」 (以 下、 「A D R 主 体」 と い う) と は、 〔消 費 者 A D R 指 令〕 第 四 条 ⒠ 号 に 規 定 さ

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   れ、同指令一七条二項に従って欧州委員会に知らされたものをいう。    ⒤「申立人」とは、欧州オンライン紛争解決プラットフォームを経由して、主張書面を提出した消費者また は事業者をいう。    ⒥「被申立人」とは、欧州オンライン紛争解決プラットフォームを経由して、主張書面が提出された消費者 または事業者をいう。    ⒦「個 人 情 報」 と は、 特 定 さ れ た、 ま た は、 特 定 可 能 な 自 然 人 (情 報 主 体) に 関 す る す べ て の 情 報 を い う。 特 定 可 能 な 自 然 人 と は、 特 に、 I D 番 号 を 参 照 す る こ と に よ っ て、 ま た は、 そ の 身 体 的、 生 理 学 的、 精 神 的、 経 済 的、 文 化 的、 社 会 的 同 一 性 の う ち の 特 定 の 一 つ ま た は 複 数 の 要 因 を 参 照 す る こ と に よ っ て、 直 接 に、または、間接に特定することができるものをいう。 第五条   ヨーロッパにおけるオンライン紛争解決プラットフォームの設立   一. 欧 州 委 員 会 は、 オ ン ラ イ ン 紛 争 解 決 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム (以 下、 「O D R プ ラ ッ ト フ ォ ー ム」 と い う) を 開 設 す るものとする。   二.ODRプラットフォームは、EUのすべての公式言語によって提供される、電子的にかつ無料でアクセス できる相互的ウェッブサイトとする。ODRプラットフォームは、本規則の扱う紛争の裁判外解決を求める 消費者及び事業者に対して単一エントリー・ポイントとする。   三.ODRプラットフォームは、以下の機能を有するものとする。    ⒜申立人が書き込むことのできる電子的な主張書面を提供すること。    ⒝電子的な主張書面に含まれる情報に基づいて、当事者に対して、紛争を解決することのできる一つまたは

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   複数のADR主体を推薦し、かつ、その手数料や、可能であれば、手続きが行われる言語、手続きの適切な 期間に関する情報を提供すること、または、提出された情報に基づく申立人に対して、紛争を処理すること のできるADR主体はいずれも特定できないことを知らせること。    ⒞当事者が利用することに同意したADR主体に主張書面を付託すること。    ⒟当事者およびADR主体がオンライン上で紛争解決手続きを行うことができるようにすること。    ⒠ADR主体が第九条⒞において定める情報を知らせるべき手段として電子的書式を提供すること。    ⒡当事者がその紛争を扱ったODRプラットフォームおよびADR主体の機能に関する意見を述べることの できるフィードバックシステムを提供すること。    ⒢〔消費者ADR指令〕第一七条二項に従って、欧州委員会に対して通知されたADR主体の情報を公表す ること。    ⒣裁判外紛争解決手段としての代替的紛争解決に関する一般的情報を提供すること。    ⒤申立人によってODRプラットフォームを通じて伝えられたADR主体が扱った紛争の結果に関するアク セス可能な統計を作ること。   四. 〔消 費 者 A D R 指 令〕 に 従 っ て 通 知 さ れ た も の で あ り、 か つ、 〔消 費 者 A D R 指 令〕 第 一 六 条 一 項 ⒢ 号 に 従って通知されているような、その能力を決定するのに必要な要件を満たして、本条第三項⒜号において規 定された電子的主張書面に含まれる情報に照らして本規則の及ぶ紛争を扱うことのできるADR主体は、O DRプラットフォームによって電子的に登録されるものとする。   五.欧州委員会は、ODRプラットフォームについて、その発展、および、その操作、その維持ならびにデー

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   タ・セキュリティに関して責任を負うものとする。   六.欧州委員会は、実施法を通じて、第三項に規定された機能を行うための要式性に関する基準を採用するも のとする。これらの実施法は、一五条三項で定められた調査手続きに従って採用されるべきものとする。 第六条   オンライン紛争解決ファシリテータのネットワーク   一.各加盟国は、一つのODRコンタクト・ポイントを指定し、その名前と問い合わせ先を欧州委員会に伝え る も の と す る。 加 盟 国 は、 欧 州 消 費 者 セ ン タ ー ネ ッ ト ワ ー ク〔 ECC-net 〕 に あ る そ の セ ン タ ー、 ま た は、 消 費 者 団 体、 ま た は、 い か な る 主 体 に 対 し て も、 O D R コ ン タ ク ト・ ポ イ ン ト の 地 位 を 委 任 す る こ と が で き る。各ODRコンタクト・ポイントは、少なくとも二つのオンライン紛争解決ファシリテータ (以下、 「OD Rファシリテータ」という) を主催するものでなければならない。   二.ODRファシリテータは、以下の機能を満たして、プラットフォームを通じて、提出された主張書面に関 する紛争の解決のサポートを提供するものとする。    ⒜ 必 要 で あ れ ば 、 当 事 者 及 び 紛 争 を 扱 う こ と の で き る A D R 主 体 の 間 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 容 易 に す る こ と 。    ⒝ある紛争がプラットフォームを通じて解決できない場合、たとえば、事業者がADRを用いることに賛成 しなかったとき、消費者に対して、他の救済手段を知らせること。    ⒞その機能を果たすことによって獲得された実務的経験に基づいて、欧州委員会と加盟国に対して、年間活 動報告を提出すること。    ⒝当事者に、ADR主体によって適用される手続きの有利な点と不利な点を知らせること。   三.欧州委員会は、ODRファシリテータ間の協同を可能にし、第二項において規定された機能を遂行するの

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   に 役 立 つ で あ ろ う オ ン ラ イ ン 紛 争 解 決 フ ァ シ リ テ ー タ の ネ ッ ト ワ ー ク (以 下、 「O D R フ ァ シ リ テ ー タ の ネ ッ トワーク」という) を設立するものとする。   四.欧州委員会は、最良の技術を交換すること、および、ODRプラットフォームの操作において再発する問 題を議論することができるように、少なくとも、毎年一回は、ODRファシリテータのメンバー会議を招集 するものとする。   五.欧州委員会は、実施法を通じて、ODRファシリテータの間の協同の様式に関する規定を採用するものと する。これらの実施法は、第一五条三項において言及される調査手続きに従って採用されるものとする。 第七条   主張書面の提出   一.ODRプラットフォームに主張書面を提出するために、申立人は、プラットフォームのウェッブサイトで 公開されている電子的主張書面に記入するものとする。申立人は、その主張書面を支持するために、電子的 様式において、いかなる文書も、主張書面に添付することができる。   二. 申 立 人 に よ っ て 提 出 さ れ た 情 報 は、 紛 争 を 扱 う こ と の で き る A D R 主 体 を 決 定 す る の に 十 分 な も の と す る。この情報は、付則に規定されている。   三.ODRプラットフォームは、ADR主体またはODRプラットフォームによって紛争を扱うことができる ものとして特定されている主体に関する情報を当事者に提供するものとする。すなわち、もしも複数の選択 肢が存在するのであれば、関係する加盟国のODRファシリテータは、当事者に、情報が与えられた上での 選択を可能とするために、それぞれの主体の詳細を提供し、これらのそれぞれの主体によって適用される手 続きの有利な点および不利な点を助言するものとする。

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  四. 〔消 費 者 A D R 指 令〕 第 一 七 条 二 項 に 従 っ て 欧 州 委 員 会 に よ っ て 知 ら さ れ、 か つ、 本 規 則 の 及 ぶ 紛 争 を 扱 うADR主体のそれぞれ適用範囲を定めることになる基準に従って、欧州委員会は、付則にリストされた情 報を適合させるために、第一六条に従って委任された行為を採用する権利を与えられるものとする。   五.欧州委員会は、実施法を用いて、電子的主張書面の要式性を定めるものとする。これらの実施法は、一五 条二項に規定された助言的手続きに従って採用されるものとする。   六.その集められた目的に照らして、正確で、関係のある、超過しないデータのみが、電子的主張書面および その添付物を通じて処理されるものとする。 第八条   主張書面の処理と送達   一.プラットフォームに提出された主張書面は、その書面が完全に記入されている場合に、処理されるものと する。   二.完全に記入された主張書面に基づいて、ODRプラットフォームは、以下の点について、申立人の言語に おいて申立人に通信し、被申立人に契約言語による電子メールを送るものとする。    ⒜主張書面が紛争を扱う能力のある一つのADR主体に送られるためには、当事者がその主体に合意しなけ ればならないという情報。    ⒝当事者が紛争を扱う能力のある一つのADR主体に同意できなかった、または、紛争を扱う能力のあるA DR主体がいずれも特定されなかった場合、主張書面は、さらなる手続きに進まないという情報。    ⒞いずれかが特定されれば、そのすべてのADR主体のリスト。    ⒟第六条二項⒜号、⒝号、⒟号において言及された機能の簡単な描写と共に、消費者の住所における、およ

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   び、事業者の設立場所におけるODRコンタクト・ポイントの名称および問い合わせ先。    ⒠消費者には、提供されたリストから一つまたは複数のADR主体を選ぶことについていかなる義務も存在 しないということを明示しつつ、提供されたリストから一つまたは複数のADR主体を選ぶことについての 消費者に対する提案。    ⒡事業者が〔消費者ADR指令〕第一〇条一項に従って利用することを委託したいかなる主体に一致するも のも存在しない場合に、その事業者に対して、提供されたリストから一つまたは複数のADR主体を選ぶこ との提案。    ⒢事業者が〔消費者ADR指令〕第一〇条一項に従って利用することを委託したADR主体を消費者が選ん だ場合に、プラットフォームは自動的にそのADR主体に主張書面を提出するという情報。   三.第二項に言及されたコミュニケーションは、各主体について、以下の記述を含むものとする。    ⒜可能であれば、その手数料。    ⒝手続きが行われる一つまたは複数の言語。    ⒞手続きの適切な期間。    ⒟該当する場合には、当事者自身またはその代理の出席の必要性。    ⒠手続きの結果の拘束的、または、非拘束的性質。   四.当事者がプラットフォームに返答することができない場合、または、紛争を解決することのできる一つの ADR主体に合意できない場合、主張書面は、さらなる手続きに進まないものとする。消費者は、他の救済 手段についての情報を得るために、ODRファシリテータにコンタクトすることができることを知らされる

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   ものとする。   五.消費者の選択が、消費者ADR指令一〇条一号に従って事業者により使用を委託されたADR主体に一致 する場合、または、当事者が同一のADR主体をその返答において選んだ場合、プラットフォームは自動的 にADR主体に主張書面を送るものとする。   六.当事者が複数のADR主体に合意した場合、消費者は、合意されたADR主体の一つを選ぶことを要求さ れるものとする。プラットフォームは、自動的に、そのADR主体に主張書面を送るものとする。 第九条   紛争の解決   第八条に従って主張書面を送られたADR主体は、以下のことを行うものとする。    ⒜遅滞なく、紛争当事者に通知し、その手続規定および当該紛争の解決に適用される料金を知らせるものと する。    ⒝当事者に対する紛争の通知に続いて、当事者が主体の前で手続きの開始に同意する場合には、手続きが開 始されたときから三〇日以内に紛争解決手続きの解決に至るものとする。複雑な紛争の場合には、ADR主 体は、この期間を延長することができる。    ⒞遅滞なく、ODRプラットフォームに次の情報を送るものとする。     ⅰ受領日と紛争の争点。     ⅱ当事者に対する紛争の通知日。     ⅲ解決の日と手続きの結果。

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B   欧州域内におけるODRシステムの情報   欧州連合域内において、越境的電子商取引を営むことを目的として設立され得た事業者には、消費者に対して、 ODRプラットフォームについて知らせることが求められている。 消費者ODR規則   第一三条   消費者情報   一.商品販売または役務提供に関する越境的電子商取引を行うEU域内に設立された事業者は、消費者に対し て O D R プ ラ ッ ト フ ォ ー ム お よ び そ の 電 子 メ ー ル ア ド レ ス を 知 ら せ な け れ ば な ら な い。 こ の 情 報 は、 簡 単 に、直接的に、目立つように、そして、恒久的にアクセスできる事業者のウェッブサイトにおいて提供され るものとする。また、申込みが電子メール、または、電子的手段によって送られるそのほかのテキストメッ セージでなされた場合には、そのメッセージの中で提供されるものとする。それは、ODRプラットフォー ムのホームページへの電子的リンクを含むものとする。消費者が主張書面を事業者、または、事業者によっ て運用される消費者苦情システム、会社のオンブズマンに対して提出する場合に、事業者は、同様に、消費 者に対して、ODRプラットフォームについて知らせるものとする。   二.第一項の規定は、事業者が代替的紛争解決手続きを消費者との紛争解決に利用することを委ねるかどうか について規定するADR手続きについての事業者による消費者情報に関する〔消費者ADR指令〕第一〇条 の規定にかかわらず適用される。   三. 第 一 項 は、 隔 地 者 契 約 お よ び 店 舗 外 契 約 の た め の 消 費 者 情 報 に 関 す る 指 令 Directive 2011/83/EC 第 六 条 および第八条の規定にかかわらず適用される。

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C   モニタリング   年間活動報告は、ODRプラットフォームにおいて作成される。ADRスキームのコンプライアンスは、各加盟 国に設置された権限ある当局によって監視される。三年ごとに、欧州委員会は、欧州議会および理事会に対して、 本規則の適用に関して報告を行う。 消費者ODR規則   第一四条   モニタリング   A D R 主 体 に よ る 本 規 定 に お け る 一 連 の 義 務 に 関 す る コ ン プ ラ イ ア ン ス は、 〔消 費 者 A D R 指 令〕 第 一 五 条 一 項に従って加盟国により設置された権限ある当局によって監視されるものとする。 D   情報保護規定   当事者がODRプラットフォームに入力したデータは、個人情報の管理に適切な配慮がなされて管理され、蓄積 される。 消費者ODR規則   第一〇条   データベース   欧州委員会は、第五条三項、第九条⒞号、第一一条に従って進められた情報を蓄積すべき電子的データベース を設置し、維持するために必要な手段を採るものとする。 第一一条   個人情報の処理   一. あ る 紛 争 に 係 わ っ て 第 一 〇 条 に 言 及 さ れ た デ ー タ ベ ー ス に 蓄 積 さ れ た 個 人 情 報 を 含 む 情 報 へ の ア ク セ ス は、第九条に言及された目的において、第八条に従ってその紛争が送られたADR主体に対してのみ与えられ

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  るものとする。同様の情報へのアクセスは、第六条三項に言及された処理のため、ODRファシリテータに対 しても同様に与えられるものとする。   二.欧州委員会は、ODRプラットフォームの利用をモニタリングし、および、機能させ、ならびに、第一七 条に言及された報告書を作成するため、第九条に従って処理された情報にアクセスしなければならないものと する。それは、ADR主体およびODRファシリテータによるプラットフォームの使用モニタリングの目的も 含め、プラットフォームの機能と維持に必要な限りにおいて、ユーザーの個人情報を処理するものとする。   三.ある紛争に係わる個人情報は、その情報が集められた目的を達成し、また、データの主体がその権利を行 使するのに必要な個人情報にアクセスが可能となることを確保するのに必要な時間においてのみ、第一項に言 及 さ れ た デ ー タ ベ ー ス に お い て 保 持 さ れ る も の と す る。 ま た、 そ の デ ー タ は、 少 な く と も、 O D R プ ラ ッ ト フォームに対して第九条⒞項ⅲに従って知らされた紛争の解決の日から六ヶ月を経過したときに自動的に消去 されるべきものとする。前述の保存期間は、ADR主体によって適用される手続き規定または他の国内法の特 別の規定がより長い保持期間を定めている場合を除いては、当該紛争を扱ったADR主体またはODRファシ リテータによって、国内ファイルに保存されている個人情報にもまた適用されるものとする。   四.それぞれのODRファシリテータおよびADR主体は、本規則におけるそれ自身のデータ取扱い行為につ いて、 Directive 95/46/EC 第二条⒟項に従って管理者とみなされるものとする。また、それぞれのODRファ シ リ テ ー タ お よ び A D R 主 体 は、 こ れ ら の 行 為 が Directive 95/46/EC に 従 っ て 採 用 さ れ た 国 内 立 法 に 規 定 さ れたデータ保護規定に従うことを確保する責任を負うものとする。本規則のもとでのその責任およびその中に 含まれた個人データの処理に関して、欧州委員会は、 Regulation ( EC ) No 45/2001 に従って管理者とみなされ

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  るものとする。 第一二条   データの機密処理及びセキュリティ   一.ODRファシリテータおよびADR主体は、専門的セキュリティ規定または国内立法に規定された他の同 等の信認義務に従うものとする。   二.欧州委員会は、適切なデータアクセスコントロール、セキュリティプラン、セキュリティインシデントマ ネジメントを含む、本規則の下において処理された情報のセキュリティを確保する適切な技術的、組織的手段 を取るものとする。 第一七条   報告   三年ごとに、および、本規則が施行されてから五年以内に、欧州委員会は、欧州議会および理事会に対して、 本規定の適用に関する報告をするものとする。この報告は、必要であれば、本指令の改訂に関する提言によっ てなされるものとする。   ここまでにおいて述べたODRスキームの全体像は、次の【図 1 】のように表すことができるだろう。   〔ADRが開始するまでの流れ〕   ①   A D R の 申 立 人 (消 費 者 ま た は 事 業 者) は、 O D R プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 上 に 提 供 さ れ た 電 子 的 申 立 書 に 記 入 す る (消費者ODR規則第七条一項) 。   ②   消費者ODR規則第八条一項に規定された情報が申立人および被申立人に知らされる。そこには、当該紛争

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を解決することのできるADR 主体のリストが含まれている。 複数の主体がリストに挙げられ ている場合には、消費者は、そ こから一つの主体を選択する、 または、いずれも選択しないと いうことを決定するために、O DRファシリテータの支援を受 け る こ と が で き る (消 費 者 O D R規則第七条三項) 。   ③   ADR主体について、当事者 が 一 致 し た 場 合 (消 費 者 O D R 規 則 第 八 条 五 項) 、 A D R 主 体 に 書 面 が 送 ら れ る (消 費 者 O D R 規則八条六項) 。これに対して、 もしも当事者の一致するADR 主 体 が な い 場 合 に は、 消 費 者 は、ほかの紛争解決手段を検討 図 1  ODRのイメージ

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するために、ODRファシリテータの支援を受けることができる (消費者ODR規則第八条四項) 。   ④   当 事 者 が 手 続 き の 開 始 に 同 意 す れ ば、 A D R 主 体 に よ っ て、 紛 争 解 決 の た め の 手 続 き が 開 始 し、 基 本 的 に は、三〇日以内に解決が図られることになる。 Ⅳ   おわりに   本研究ノートでは、欧州連合域内において、消費者ADR制度およびODR制度が統一的に整えられつつあるこ とを紹介した。消費者ADRおよびODRの必要性は、二〇〇七年に出された「消費者紛争解決および救済に関す る O E C D 勧 告」 に お い て も 言 及 さ れ て い る[ OECD Recommendation, p.7 ]。 そ し て 我 が 国 で は、 経 済 産 業 省 や 内閣府国民生活局・消費者庁を中心として調査・検討がなされてきた。これまでのところ、消費者紛争を対象とし て、仲裁法附則三条に特別の規定があり、また、国民生活センター法に紛争解決委員会の設置が規定され、金融商 品取引法により金融ADRが創設されるなどしてきた。また、ADR法は、消費者紛争に限られず、民間ADRの 活動を支えている。しかし、消費者紛争の特殊性を考慮して、制度的側面から消費者ADRを整備し、消費者救済 を進展させるような統一的な立法はない。   国民生活センターおよび各地の消費生活センターにおいては、消費者相談の件数が増加の一途をたどっている。 このことは、一方で、消費者からすれば、どこからでも容易にアクセスすることのできる一元的窓口を用意するこ とと、他方で、苦情を処理する機関からすれば、統一的手続きによって苦情を受け付けて、その苦情を扱うことの できる機関に適切に紛争を割り振ることを可能にするシステムを構築することの必要性が生じてきていることを示 している。また、電子商取引の急増は、消費者被害の拡散に拍車を掛けており、同種の被害が各地に点在する事態

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参考資料 本文中には、 [   ]内の表示により引用した。 ―   [

Directive on consumer ADR

]    “Proposal for a DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on alternative dispute resolu -tion for consumer disputes and amending Regulation ( EC ) No 2006/2004 and Directive 2009/22/EC ( Directive on consumer ADR

)”, available from URL: http://ec.europa.eu/consumers/redress_con

s/docs/directive_adr_en.pdf [ accessed 2012-9-30 ] .    な お、 本 文 中 で の 仮 訳 に つ い て は、 同 指 令 の フ ラ ン ス 語 版 も 参 考 と し た。 フ ラ ン ス 語 版 は、 URL: http://ec.europa.eu/consum -ers/redress_cons/docs/directive_adr_fr.pdf に掲載されている。 ―   [ ECC-net ] が生じている。消費者紛争のための一元的窓口と一元的情報管理を実現することによって、同種反復する被害を把 握し、消費者に注意を喚起したり、適格消費者団体による差止めの契機としたり、紛争の統一的な解決を図ったり す る こ と が 可 能 と な る。 こ の た め に は、 本 研 究 ノ ー ト に お い て 紹 介 し た 消 費 者 A D R 指 令、 消 費 者 O D R 規 則 に よって示された、公平性、透明性、効率性、公正性を確保するためのスキームが参考になるものと思われる。   本稿において、消費者ADR指令および消費者ODR規則について紹介したことを通じて、消費者ADRにおい ては、まず、ADR手続きに対する消費者のアクセスの容易性を確保すること、つぎに、ADR主体、事業者、消 費 者 を ラ イ ン で つ な ぎ、 デ ー タ の 蓄 積・ 共 有 を 可 能 に す る こ と、 そ し て、 A D R 主 体 の 水 準 (専 門 知 識、 財 政 的 基 盤など) を確保することが大切となることが明らかになったと思われる。

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ECC-net, available from URL: http://ec.europa.eu/consumers/redr

ess_cons/webcenters_en.htm [ accessed 2012-9-30 ] . ―   [ FIN-NET ]   

FIN-NET, available from URL: http://ec.europa.eu/internal_marke

t/fin-net/index_en.htm [ accessed 2012-9-30 ] . ―   [ OECD Recommendation ]    OECD “OECD Recommendation on Consummer Dispute Resolution and Redress ” available from URL: http://www.oecd.org/ sti/interneteconomy/38960101.pdf [ accessed 2012-11-30 ] . ―   [

Questions and Answers

  

“Alternative Dispute Resolution and Online Dispute Resolution fo

r EU consumers: Questions and Answers

”, available from URL:

http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/11 /840&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLangu age=en [ accessed 2012-9-30 ] . ―   [ Recommendation 98/257/EC ]    “Commission Recommendation 98/257/EC on the principles applicable to the bodies responsible for the out-of-court settlement of consumer disputes ”, OJ L 115, 17.4.1998, available from URL: http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:1 998:115:0031:0034:EN:PDF [ accessed 2012-9-30 ] . ―   [ Recommendation 2001/310/EC ]   

“Commission Recommendation 2001/310/EC on the principles for out

-of-court bodies involved in the consensualresolution of

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(38)

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UNCITRAL Online Dispute Resolution

プロジェクト」仲裁とADR七号(二〇一二)一四―二四頁。

―ふかがわ

 

参照

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