！50 （58） 氏名（生年月日） 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
シバ タ トシ ミツ柴田利満（昭和2
医学博士 乙第872号昭穐63年1月22日
学位規則第5条理2項該当（博士の学位論文提出者）
Dynamic sti∬ness of barium・contractured cardiac muscles with di貸erent
speeds of contraction （異なった収縮速度を持つバリウム拘縮心筋の動的スティッフネス） （主査）教授 高尾 篤良 （副査）教授 橋本 葉子，教授 田川 宏
論 文 内 容 の 要 旨
目的 心筋の収縮速度は動物種，心房筋と心室筋，年齢， 甲状腺機能などの差異により異なる．生化学的にはす でに心筋より3種のミオシン・アイソザイム（Vl， V2， V3）が同定され，収縮速度はこれらの組成割合により 規定されることが推定されているが，生理学的条件下 でミオシン・アイソザイムとの関連において収縮蛋白 の収縮速度を測定した報告はない，そこでバリウム拘 縮心筋標本に対して周波数応答法を用いて4種心筋の 収縮速度を比較検討した． 方法 正常成熟家兎の心室筋（右室乳頭筋，以下Adult）と 心房筋（邪悪肉柱，以下Atrium），サイロキシン処置 成熟家兎（0．15－0．20mg／day，2週間）の心室筋（以 下Thyrotoxic），正常新生児家兎の心室筋（以下New・ bom）を摘出し灌流槽（24℃）に固定した後，関知門 中のカルシウムをバリウムに置換し定常的収縮である 拘縮状態を作り出す．この・ミリウム拘縮心筋を用いる ことにより興奮収縮連関の影響を除外でき，真の筋線 維の収縮速度を測定できる．バリウム拘縮心筋に対し て0．05～50Hzの正弦波状微小議長変化（30～50μm， △L）を与えて筋の張力変化（△F）を記録し，動的ス ティッフネス（△F／△L）を求めてボード線図（周波 数一動的スティッフネス関係）を作成した．ボード線 図上の動的スティッフネスは，部分的にdip状の低下 を示し，ある周波数（fmin）で最低値となる．このfmin は心筋のミオシンとアクチンの周期的な結合畑田の速 度，すなわち筋の収縮速度を表していると考えられ， 高い周波数領域にfminを持つ心筋ほど速い収縮速度 を持つ．上記各種心筋のfminを求めることにより収 縮速度を比較した． 結果および考察 Adultのfminは1．2±0。2Hz（n＝15）であったが，Thyrotoxic， Newborn， AtriumのfminはAdultよ
り高周波方向へ移動し，それぞれ2．6±02Hz（n＝6）， 2，3±0．3Hz（n＝4），4，4±0．2Hz（n＝4）であった． 心筋の収縮速度はミオシンATPase活性で規定され， 速い心筋（V1）は高いミオシンATPase活性を持つと され，遅い心筋（V3）は低い活性を示す．文献上， Thyrotoxic（速筋）のミオシンATPase活性はAdult （遅筋）より1．9～3．0倍高く，Atrium（速筋）のミオシ ンATPase活性はAdultより2．1～3。5倍高い値を示 す．これら筋のfmin値を比較すると， Thyrotoxicと Atriumのfminは， Adultのfminよりそれぞれ2，2 倍，3．7倍高かった．このfmin値の比はミオシン ATPase活性の比と非常に近い値をとり，fminが心筋 線維自体の収縮速度を反映していることが強く支持さ れた．NewbornはV1優位の速筋とされているが，本 研究においてもAdultより1．9倍高いfmin値を呈し た． 結語 心筋の収縮速度を反映すると考えられるfmin（動的 一814一
151 スティッフネスが最低となる周波数）を4種のバリウ ム拘縮心筋で求め比較した．fmin値の比は，収縮速度 を表す心筋ミオシンATPase活性の比とよく相関し， また，速い収縮速度を持つ心筋ほど高い周波数のfmin 値をとった．
論 文 審 査 の 要 旨
本論文は心筋の収縮速度を反映すると考えられる動的スティッフネスの最低周波数fminを4種の
バリウム拘縮心筋で求め比較し，fmin値の比は心筋ミオシンATPase活性の比とよく相関し，速い収
縮速度を持つ心筋ほど高い周波数のfmin値を示すことを明らかにした学問的価値の高いものであ
る． 主論文公表誌Dynamic stiffness of barium－contractured cardiac muscles with difFerent speeds of contraction
（異なった収縮速度を持つバリウム拘縮心筋の動
的スティッフネス）
Circulation Research Vol．60 No．5
770～779p（1987 May発行） 副論文公表誌
1）小児の心室性頻拍症一9症例の臨床像より一 日本小児学会雑誌．84（7）640～647（1980）
2）Excitation－contraction coupling in mam－
malian cardiac muscle during Ba2＋・induced
contracture（哺乳類心筋のバリウム拘縮中に おける興奮収縮連関）
Am J Physiol 240 H216～H221（1981）
3）ファロー四徴症術後の刺激電導系検査 日本小児学会雑誌 86（3）333～341（1982）
4）Isotonic length transient of cat heart muscle
in Ba2＋一induced contracture（バリウム拘縮
中のネコ心筋標本における等張力性筋長過渡 応答）
Am J Physiol 247 H548～H555（1984）
5）Dynamic stifFness measured in central seg・ ment of excised rabbit papillary muscles during barium contracture（・ミリウム拘縮中
の摘出家兎乳頭筋の中心部で測定した動的ス ティヅフネス）
Circ Res 60（5）756～．769（1987）
