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土木ISOジャーナルVol.25 (2014.3)

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(1)

土木 ISO ジャーナル

JSCE ISO Journal vol.25

特別企画・港湾技術基準のベトナム国家基準への反映に向けた取り組み

・建築 ・ 土木分野 : ISO/TAG8の解散

ISSN 1345-918X

2014.3

ISO 対応特別委員会誌

公益社団法人 土木学会 技術推進機構

Organization for Promotion of Civil Engineering Technology , JSCE

土木

   

I

S

O

土木学会

技術推進機構

(公)

Vol.25 2014.3

(2)

ISO対 応 特 別 委 員 会 誌

土木ISOジャーナル

JSCE ISO Journal

第25号[ 平成26年3月号 ]-

公益社団法人

土木学会 技術推進機構

(3)

※用語説明

ANSI American National Standards Institute アメリカ規格協会

BSI British Standards Institution イギリス規格協会

CD Committee Draft(s) 委員会原案

CEN European Committee for Standardization 欧州標準化委員会

DIN Deutsches Institut fur Nurmung ドイツ規格協会

DIS Draft International Standards 国際規格案

EN European Standards 欧州(統一)規格

FDIS Final DIS 最終国際規格案

IS International Standard 国際規格

ISO International Organization for Standardization 国際標準化機構

JIS Japanese Industrial Standards 日本工業規格

JISC Japanese Industrial Standards Committee 日本工業標準調査会

JSA Japanese Standards Association 日本規格協会

N-member Non-member Nメンバー、不参加会員

NP New Work Item Proposal 新業務項目提案

NSB National Standards Bodies 各国国家標準化機関、会員団体

NWI New Work Item 新業務項目

O-member Observing-member Oメンバー、オブザーバー会員

P-member Participating-member Pメンバー、積極参加会員

pr-EN Proposal of EN EN規格原案

PWI Preliminary Work Item 予備業務項目

S Secretariat 幹事国、幹事

SC Subcommittee 分科委員会

TAG Technical Advisory Group 専門諮問グループ

TC Technical Committee 専門委員会

TMB Technical Management Board 技術管理評議会

TR Technical Report テクニカル・レポート、技術報告書

TS Technical Specification 技術仕様書

WD Working Drafts 作業原案

WG Working Group 作業グループ

(4)

土木ISOジャーナル

第 25 号 -

(2014年3月号)

目 次

1.

巻頭言

1

「何のために標準化するのか?」

経済産業省 産業技術環境局 国際標準課 課長補佐 宗像 保男

2.

ISO対応特別委員会の活動状況

3

3.

「国際規格等による技術基準への影響検討」平成25年度小委員会報告

5

-ASTM規格及びユ-ロコ-ドの国際展開戦略-

(独)土木研究所 松井 謙二

4.

特別企画

15

4-1

港湾技術基準のベトナム国家基準への反映に向けた取り組み

国土政策総合研究所 港湾研究室長 宮田 正史 国土政策総合研究所 港湾技術政策分析官 中野 敏彦 国土政策総合研究所 沿岸海洋新技術研究官 宮島 正悟 国土交通省港湾局 技術監理室 技術基準審査官 原田 卓三 国土交通省港湾局 技術監理室 課長補佐 平野 誠治 15

4-2

建築・土木分野:ISO/TAG8の解散

一般財団法人建材試験センター 川上 修 21

5.

ISO/CEN規格情報

29 5-1

粉体材料評価分野:ISO/TC 24

(一社)日本粉体工業技術協会 遠藤 茂寿 29 5-2

コンクリート分野:

ISO/TC 71

(公社)日本コンクリート工学会 渡部 隆 31 5-3

セメント材料分野:

ISO/TC 74

(一社)セメント協会 小林 幸一 36 5-4

構造物一般分野:ISO/TC 98

建築・住宅国際機構 角田 哲志 37

5-5

流量観測分野:

ISO/TC 113

(公社)土木学会・水工学委員会 堀田 哲夫 40 5-6

建設機械分野:

ISO/TC 127, TC 195, TC 214

(一社)日本建設機械施工協会 西脇 徹郎 43 5-7

鋼構造分野:

ISO/TC 167

(一社)日本鋼構造協会 杉谷 博 55 5-8

地盤分野:

ISO/TC 182, TC 190, TC 221

(社)地盤工学会 長尾 美咲 56 5-9

地理情報分野:

ISO/TC 211

(公財)日本測量調査技術協会 津沢 正晴 太田 有紀 66

編集後記

ISO対応特別委員会 情報収集小委員会委員長 長井 宏平 74

(5)

土木学会 技術推進機構

ISO対応特別委員会 情報収集小委員会委員構成

氏 名 所属および職名 委員長 長井 宏平 東京大学 生 産 技 術 研 究 所 都 市 安 全 工 学 国 際 研 究 セ ン タ - 准教授 委 員 木幡 行宏 室蘭工業大学 大学院工学研究科くらし環境系領域(社会基盤ユニット) 教授 事務局 日比谷 啓介 田中 博 公益社団法人 土木学会 公益社団法人 土木学会 技術推進機構 機構長 技術推進機構 技術推進部長

土 木

ISOジ ャ ー ナ ル

J S C E I S O J o u r n a l

本誌は,下記の委員構成のISO対応特別委員会情報収集小委員会が編集を担当し,関連官 庁である国土交通省,農林水産省の協力を受けて,土木学会から年1回発行される定期刊行 物である.土木分野における国際規格制定の動向とそれへの我が国の対応に関する情報誌 であり,ISO対応特別委員会誌として,1999年3月に「ISO対応速報」の誌名で創刊され, 同特別委員会の技術推進機構への移行に伴って,2000年9月号より「土木ISOジャーナル」 と改称されたものである.

(6)

1

1. 巻頭言

何のために標準化するのか?

標準化とは何かということについて、今さらこの場で詳細に紙面を割くことは考えていない。標準 化に対する私見と最近の標準化の動向ついて紹介し、今後の標準化活動にお役に立てればと思います。 標準化とは何かについて少しだけ触れさせていただくと、乾電池の大きさ・寸法、蛍光灯の口金・ 品質、牛乳パックの切り欠きなどのように統一することによって、鉱工業製品の互換性や品質を確保 し、効率的、合理的な生産・流通の促進、また消費者を含めた関係者間の相互理解の促進を図ること である。これは、今でも変わることのない標準化の基本的なコンセプトである。 昭和20年代は、安かろう悪かろうの粗悪品追放のための標準化、昭和30年代では大量生産・高度成 長を支える基盤として、昭和40年代では安全・安心対策としての規格、昭和50年代では国際化への対 応として、JISマークが海外にも開放された。平成7年には、WTO/TBT協定が発効され、強制規格や 適合性評価手続きの作成の際、原則として国際規格(ISO/IEC等)を基礎とすることを義務づけされ た。また、平成8年にはWTO政府調達協定が発効され、調達基準には国際規格を基礎とすることを各 国に義務づけた。このことは、自国に優れた技術・基準があっても国際規格を基本として使用するこ とを意味している。 こうした変遷を見てわかるように、標準化は標準化を取り巻く環境の変化によって、その時々の社 会ニーズや社会の課題解決に寄与してきた。この標準化の役割に加えて、近年の経済や社会のグロー バル化、ネットワーク化等にあっては、標準化は自国や自社の利益を生み出す手法の一つとして捉え るようになってきている。言い換えれば、ビジネス戦略のツールの一つとして捉えられている。 本年2月に「IECにおける国際標準化の取組と今後の展望」と題して特別講演会が開催され た。特別講演に招待されたVreeswijk事務総長(CEO)は、講演の中で「標準化はビジネス戦略 のツールである」ことを明言していたことが頭に残っている。このことはIECのことだけではなく、 ISOでも同じことと捉えて間違いない。 それでは、標準化をビジネス戦略にどう活用していくか。答えの一つとして、事業戦略を立てるに 当たって、研究開発戦略、知財戦略、標準化戦略と一体となって取り組むことが重要なポイントであ ると言える。特許については、競合相手の保有する特許や国内外の特許動向を入念に調べ上げ、自社 技術のどこを権利化できるかある程度見通しは立てられ、権利化できると出願から20年間は独占でき ることなどが明確になっているため、戦略的なビジネスプランが比較的描きやすい。一方、標準化に ついては、自社製品の品質・性能や評価方法を国際規格にすることによって市場拡大が見込める、標 準化部分の価格が低下する、製品を共通化できる、技術移転が容易になる、などのメリットがある反 面、誰でも容易に市場参入できる、規格化までにはコンセンサスを得るために各国との調整に時間を 要するなどのデメリットがあり、やっとの思いで国際規格にできたとしても特許のように権利化でき る期間が保証されているわけでもない。 特許を保有していると技術優位にビジネス展開できるかと言えばそうでもなさそうである。例えば、 DVDプレ-ヤ、液晶テレビ等では、日本企業が90%以上の特許を保持し、先行商品開発を先導し、世 界市場シェアの90%を占めていたにも関わらず、市場拡大局面で急速に技術的優位性と世界市場シェ

(7)

2 アを消失している。これは、為替変動や新興国のコスト低下など他の要因もあるが、特許と標準化の 機能、メリット・デメリットを認識した上で、上手く活用(所謂、オープン&クローズ戦略)できな かったことにも一因があると思われる。 標準化を進めて行くに当たって、国際規格との整合の視点も必要である。標準化の大きな節目とし て1995年のWTO/TBT協定発効と1996年のWTO/政府調達協定発効がある。この政府調達に関連す る一つの事例として、今では誰もが持っているSuicaカードについて紹介したい。これはソニーが開発 したFeliCa方式を実装したICカードをJR東日本が調達基準にしたところ、モトローラが自社の国際標 準による方式を採用すべき旨主張し、WTO政府調達違反として異議申立てを行ってきたというもので ある。最終的には、モトローラ推進の規格はまだ国際規格にはなっていなかったためモトローラの異 議は退けられ、その後日本は、FeliCa方式も国際規格にすることで現在に至っている。このように、 グローバル社会においては、国際規格に合わせることも必要であるが、むしろ、国際規格に日本優位 の規格内容を盛り込んだ規格作りを積極的に推進していくことの方が、整合の意味でもビジネス戦略 面でも効果的である。 我が国としても戦略性をもって標準化に取り組んでいくことの必要性の認識のもと、様々な施策を 講じている。①2010年5月、「知的財産推進計画2010」(知的財産戦略本部決定)では、今後世界的 な成長が期待され、我が国が優れた技術を有する7分野を、まず注力すべき「国際標準化特定戦略分野」 として選定している。②ISO又はIECに対して迅速な国際標準化提案を図る制度として、2012 年6月にトップスタンダード制度を創設した。この制度を利用して、日本の新技術を国際標 準にするため新TCを設立したものや日本からの新規提案が正式に承認されるなどの成果が 生まれている。③標準化を戦略的に推進するためには、官民の適切な役割分担と省庁や産業分野を 超えた連携の下で体制整備などに取り組んで行く必要があるとの認識の下、経済産業大臣主催により、 産業界の代表者が参画する標準化官民戦略会議を本年3月に開催し、5月15日に「標準化官民戦略」を 策定した。今後は、この戦略の着実な実施とフォローアップを行っていくことになる。④既存の国内 審議団体や原案作成団体では対応ができない、複数の関係団体に跨がる融合技術や中小企業を含む特 定企業が保有する先端技術に係る標準化に国内標準・国際標準ともに対応するため、先のトップスタ ンダード制度を取り込んで、新市場創造型標準化制度を2014年7月に創設した。⑤IECにおける若手 人材育成を目的としたプログラムに呼応して、日本としての若手人材育成プログラム「ヤングプロフ ェショナル・ジャパン講座」を2012年から実施している。本講座は、企業などの20才代から30才後半 までの若手を対象に、国際標準化の概要、規格開発手順などの技術的事項だけでなく、英語力、国際 交渉力を含めて10回以上の講座を実施するもので、修了生には、国内外で開催されるTCやSCへの参 加が提供される。なお、本講座を国内のISO分野にも拡充するように、先の標準化官民戦略の中でも 求めている。 分野によって産業構造、技術進歩などが違うため、標準化への対応も様々であるが、国内外の産業 構造、市場構造、競合協調相手、ステークホルダー、サプライチェーン、技術動向、特許動向、社会 の課題等々を十分把握した上で、標準化によって何を目指すのかを明確にし、目的達成のために戦略 的に対応していくことが、現在の標準化を取り巻く環境を踏まえた対応ではないだろうか。 (経済産業省 産業技術環境局 国際標準課 課長補佐 宗像 保男)

(8)

3

2.ISO 対応特別委員会の活動状況

1.委員会活動報告

ISO 対応特別委員会では、土木分野での対 ISO 戦略、国内等審議団体となっている学協会から の報告、土木学会常置委員会の取り組み、情報交換などが活発に行われている。また、小委員会 活動も活発に行われている。

(1)委員会活動実績

会合名 開 催 日 ・幹事会 平成26年 1月30日 ・第49回委員会 平成26年 2月25日 ・土木 ISO セミナ- 平成26年 3月18日

(2)特別委員会発行物

「土木ISO ジャーナル」第25号(発行 平成26年3月)

(3)調査活動

1) 港湾の国際規格動向調査小委員会

松井謙二招聘研究員((独)土木研究所)を委員長に「港湾の国際規格動向調査小委員会」 を設置し、活動した。 会合名 開 催 日 ・小委員会 平成25年 7月23日 ・国総研打合せ 平成25年 7月26日 ・国総研報告会 平成26年 2月24日

2) 講演会形式による国内ヒアリング

国土交通省国土技術政策総合研究所港湾研究室の委託研究「国際規格等による技術基準へ の影響検討業務」の内、「国際規格等に関する資料収集整理」として国内関係者による講演 会形式により情報収集を 3 回実施した。 会合名 開 催 日 内 容 第1回ヒアリング 平成25年11月21日 土木分野のサスティナビリティの最近の動向に ついて: 香川大学 教授 堺 孝司 (ISO/TC59/SC17/WG5 国際委員) 第2回ヒアリング 平成25年12月11日 沿岸・港湾における鋼製構造物の電気防食に関す る国際規格(ISO/TC156)について: 梶山文夫(東京ガス㈱), 浅見 徹(㈱ナカボ-テック) 荒井 実(日本防蝕工業㈱) 第3回ヒアリング 平成25年12月25日 ISO2394 の審議状況、及び改訂状況について: 東京大学大学院 教授 高田 毅士 (ISO/TC98/SC2/WG1 国際委員)

(9)

4

2.助成制度の実施状況

ISO 対応特別委員会では、ISO における国際規格制定への対応活動の一環として、我が国の土 木分野における基準類を国際的に提示・提案する際に必要となる翻訳費用ならびに ISO および CEN が主催する国際会議への派遣、海外からの専門家招聘のための費用などを助成している。

(1)翻訳等助成状況

助成先 助成内容 公益社団法人 日本コンクリート工学会 ISO 関連資料の和文英訳 (ISO6274、ISO6782、ISO6783) 建築・住宅国際機構 ISO/TC98 国際会議報告書作成 (文献調査、資料翻訳、報告書作成) 公益社団法人 地盤工学会 「平成25年度地盤工学における国際標準化に関する最新動向の把 握」報告書作成

(2)派遣助成状況

助成先 助成内容 公益社団法人 日本コンクリート工学会 ISO/TC71 対応国内開催委員会(WG1、WG3、WG5)への出席(2013 年 7 月 26 日、7 月 30 日、8 月 2 日、9 月 5 日の 4 回分) (土木学会 技術推進機構)

(10)

5   

3.「国際規格等による技術基準への影響検討」平成 25 年度小委員会報告

-ASTM 規格及びユーロコードの国際展開戦略-

1.

はじめに

土木学会・ISO 対応特別委員会傘下の「国際規格等による技術基準への影響検討」小委員会では、港湾 施設の設計法に関連する国際標準化等の最新動向を継続的に情報収集・整理し、我が国の港湾の技術基 準に与える影響等を把握することを目的として活動を行っている。 その一方で、我が国の港湾基準を海外に周知するためにはどうすればいいか、その国際展開もまた重 要なテーマである。我が国の優れた基準・規格を海外に周知させるためには、それなりの広報戦略が不 可欠であり、そのためには、世界で広く用いられている基準・規格の国際展開戦略から学ぶのが有効で ある。 このような背景から、H25 年度は海外で広く普及している規格を発行している国際的に有力な機関・規 格として米国 ASTM International(米国試験材料協会)及びユーロコード(欧州構造物設計規格)を対 象として、その国際展開のしくみ、方法などの実態を調査することにした。本稿はその成果をまとめた ものである。   

2. ASTM とは?

ASTM International(1898 年創設、以下単に ASTM という)は世界最大規模の米国の国際規格策定機 関であり、ここでは、世界中の 140 か国以上から、34,000+人の ASTM 会員が技術的な専門知識を提供し、 12,350+に及ぶ ASTM の国際標準(以下、ASTM 規格という)が策定されている。ASTM を通してこんなにも 幅広く多数の分野で多種多様な規格が策定されてきた理由の一つには、ASTM 規格のオープンな策定プロ セスが指摘されている。また、ASTM の覚書(Memorandum of Understanding, MOU)プログラムは、ASTM と世界中の国家規格団体とのコミュニケーションを促進している。MOU は、世界中の技術専門家の ASTM の規格作成プロセスへの参加を奨励、増加、及び促進できるように設計されていると言われている。こ れらは強く米国規格化戦略と結びついている。 さて、ASTMとは具体的にどういうものか、まずその概要、特徴や活動状況等を下記に箇条書き(順不 同)にして示す1)  1898 年に創設された ASTMは、主に試験法と材料に関する規格作成を行う世界最大規模の米国国際規格 策定機関である。

 現在の正式名称はASTM International であるが、以前はASTMだったので通称ASTM と呼ばれている。 Internationalを追加したのは米国における規格開発機構(Standards Developing Organizations、SDO) の一つとしてISOに対抗しうるとのアピールをしたものと受け取られている。  世界中の 140 か国以上から、34,000+人の ASTM 会員が、技術的な専門知識を提供し、12,350+におよ ぶ ASTM の国際規格が策定されている。  ASTMでは生産者やユーザー、消費者など世界各地から人が集まり、自主的な合意規格(voluntary consensus standard)を策定している。  ASTM規格は、建設のみならず金属、塗装、プラスチック、繊維、石油、エネルギー、環境、消費者製品、

(11)

6    医療サービス・機器、エレクトロニクスなどの分野におよび、世界中で承認・利用されている。  ASTM 規格の中核になるのは質、レベルともに優れた技術であるため、これらの規格の約 50 パーセン トが米国外でも利用されている。  ASTMの活動は規格制定とその普及がベースであり、その活動財源の70%は規格の出版物収入に依ってい る。  ASTMを通してこんなにも幅広く多数の分野で多種多様な規格が策定されてきた理由の一つには、ASTM 規格のオープンな策定プロセスが挙げられる。  すなわち、年額$ 75の会費を払うと、国籍を問わず誰でも個人会員になることができ、会員は希望する ASTM内の規格作成委員会に参加できる。  ASTM規格策定プロセスはオープン方式で透明性があるため、個人や政府が自主合意規格の決定に直接か つ対等に参加することができる。  出身国ではなく技術的な専門知識を評価する ASTMのシステムにより、世界中の専門家の協力参加を実 現している。

 ASTMの覚書 (Memorandum of Understanding, MOU) プログラムは、ASTMと世界中の国家規格団体とのコ ミュニケーションを促進している。  MOUは、世界中の技術専門家の ASTMの規格作成プロセスへの参加を奨励、増加、および促進できるよう に設計されている。MOUプログラムのメリットとして、MOUに署名した国の技術専門家は無料で ASTMの 正式な投票メンバーとして参加できる。  世界中から幅広く意見が寄せられるよう、ASTMではオンライン技術を使用して、参加ならびに業界ニー ズへの対応がオープンにできるよう促進しているオンライン技術には、世界中から 24 時間アクセスで きるオンライン規格策定フォーラム、オンライン 投票、電子議事録やテンプレート、ネット会議、最 新式の流通方法などがある。  こうした規格策定を推進する環境に加え、 ASTMでは規格に関する知識の向上や規格の 導入を促進するサービスを提供している。シ ンポジウム、検定試験プログラム、さまざま な形式での出版物、技術トレーニングコース、 および製品や担当者の認定プログラムなど がある。  ASTMは、毎月の電子ニュースレターおよび隔 月発行誌「Standardization News」を発行し、 世界中での規格作成に関するトピックを取 り上げている。  

3. ASTM と米国の規格化戦略

(1)ASTM の国内的位置づけ

図-1 に、ASTM の位置づけをその上位の機関、

(12)

7   

すなわち NIST 及び ANSI との関連で図示した。 1) NIST

米国の国立規格化機関としては、NIST(National Institute of Standardization、米国標準技術研究 所)があり、規格化の国家戦略、規格の管理・運営・販売、各種の試験の受託と規格化に関る国家予算 の配分を担当している。ただし、規格の策定自体は行っていない。

2) ANSI

 ANSI(American National Standard Institute、米国規格協会)は ISO/IEC の米国代表である。すなわ ち、米国内の規格化活動の民間の統括機関との位置付けで、米国政府との契約の下に米国の ISO/IEC の メンバー機関になっているといえる。

 しかし自らは規格の開発はせず、米国規格化協会でもない。ただ、米国に約 200 あるとされる規格開発 機構(Standard Development Organizations, SDO)の規格を米国規格(American National Standard: ANSI の規格)として審査・認定・発行している。すなわち、米国には ANSI によって認定された SDO に よって作成された 100,000+の規格があり、そのうち 10,000 が米国規格である。ASTM もこの SDO の一つ に位置付けられる。

 ANSI は国際規格の審議のために、多くの TAG(Technical Advisory Group:審議委員会)を編成し、 米国内の SDO にその運営を委ねている。この方式は、日本を JISC(日本工業規格調査会)が代表し、 ISO/IEC 国内審議委員会を国内の工業会・学会等に委託している形によく似ている。ASTM は数多くの TAG を引き受けている。  

(2)米国の規格化戦略

ASTM の規格化活動のベースとなっているものは米国の規格化戦略である。米国規格化戦略を読めば ASTM の規格作りの動きがよく理解される。ここでは、United States Standards Strategy(USSS、2010)

3)より引用して米国戦略を概観する。この USSS 2010 は NTTAA 法(国家技術移転促進法)を後継する USSS

2000 より改正を繰り返してきたものである。 1) 基本 規格は社会及び市場のニーズを満足するものであり、国際貿易の障壁とはなってならない。WTO/TBT 協 定において、WTO メンバーは国際協調を促進するための枠組みとして国際原則を受け入れることを認識し ている。 米国の規格化システムは規格の開発において下記に述べる原則に基づいている。(【訳者注】この原則 は WTO/TBT 協定の原則、及び ASTM の内部原則とも一致している。) 2) 戦略上の原則  Transparency(規格化活動に関する透明性)、  Openness(委員会への自由参加による開放性)、  Impartiality(参加者間の公平性)、

 Effectiveness and Relevance(市場のニーズに対する適合性)、  Consensus(決定はコンセンサスによる)、

 Performance Based(規格は可能な限り性能ベースによる)、  Coherence(規格間の重複や矛盾がない一貫性)、

(13)

8     Due Process(規格化における適法手続き)、  Technical Assistance(発展途上国への技術支援)。 3) 戦略ビジョン  可能な限り政府調達基準・規則において、民間コンセンサス規格を利用する、  米国は国際規格化活動に貢献する、  単一の国家機関(ANSI のこと)が国際組織(ISO のこと)において米国代表するとき、その機関 は組織上も技術上も USSS を促進する、など。 4) 具体的目標  任意合意規格の開発・使用に向けた政府・民間のパートナーシップを強化、  環境、健康、安全の分野での規格化の充実、  消費者の規格作成への関与の促進、  国際規格化活動への積極的参画、  規制における任意規格の活用の促進  諸外国の規格制度による貿易障壁の防止・除去、  ANSI を中心とした、諸外国へのアウトリーチ活動の強化(規格制度を開発中で、かつ市場ポテ ンシャルの高い国を主なターゲットとする)、  規格制定の迅速化・効率化改善の継続、  米国の規格システムにおける規格の一貫性の確保(SDO 間の連携強化)、  規格化教育の充実、など。  

4. ASTM 規格が国際的に広く普及している理由

4) ここでは、ASTM 規格が ISO 規格に比肩するほどの高品質の規格作りと国際展開を可能にしているいく つかの要因について考察する。

(1)国際機関との綿密な連携

ASTM の強さは前項の米国規格化戦略を踏まえたものであると同時に、国際規格と関連が深い WTO(世 界貿易機関)や ISO(国際標準化機構)といった機関と強く結びついている点にあるといえよう。

例えば、ASTM は ISO への 198 に及ぶ米国 TAG(Technical Advisory Groups)に参画している。TAG と は、先に述べたように JISC における国内審議団体のような組織で、米国内審議団体ともいえるものであ る。ASTM 本委員会傘下の技術委員会として TAG が存在し、ANSI に代わって ISO 会合に出席し、その結果 は ASTM 会合にて報告することになっている。また、ASTM スタッフは米国 TAG 代表として ANSI に代わっ て ISO 投票を行っている。その他、ASTM は 33 の ISO 事務局も管理している。

(2)委員会の運営方法に起因する要因 Bottom up 方式

次頁図‐2 は ISO 規格に対して ASTM 規格がより市場のニーズにマッチしていることを示したものであ る。ここで、左側の Top Down 方式とは ISO システムを表し ISO のような権威ある規格化機関がトップダ ウン式に規格化を進めるのに対して、右側の Bottom Up 方式は市場の要請に沿った規格作りで、米国規 格化システムすなわち ASTM システムであることを示している。このように ASTM 規格は市場のニーズに 応えることから国際的に広く用いられていることを ASTM は強調している。

(14)

9    1) 委員会の構成バランス 図‐3 は規格化にあたって、委員会委員の構成がバランスが取れていることを表したものである。この 図では、生産者(Producers)の数=利用者(Users) +一般関心者(General Interest)の数に等しく することで、規格化を必要としている生産者の意 見だけが不当に大きくなることを避けていること を ASTM は説明している。 2) ASTM 投票プロセス 図‐4 は規格化作業とその投票システムを表し たものである。すなわち、(1)TG(Task Group)が 規格を開発→(2)分科委員会 SC における投票→(3) 技術委員会 TC における投票/第三者レビューを経 て最終的に(4)規格化委員会 COS における承認、と いう流れを示している。 ここで、すべてのメンバーは等しく投票権と発 言権を有しているオープンプロセスが採用されて おり、そのプロセスが ASTM 規格の広範囲な支持に つながっていると考えられている。  

(3)覚書(MOU)に起因する要因

次頁図‐5 に示すように、現在 ASTM は 47 の途上 国の国家規格団体と MOU 協定を結んでいる。加え て、ASTM 専門技術者が地元技術者を訓練するため に 22 の途上国に送られており、ASTM は地元機関と 技術訓練コースを含むパートナーシップ協定を提 供している。ASTM はその技術支援プログラムを単 独で実施しており、これは WTO やその他の国からの 一切の財政的支援なしに行われているところに特 長がある。 ASTM が発展途上国の規格団体と締結している覚 書(Memorandum of Understanding, MOU)の目的は 次のように要約される: • 各国の規格団体との交流の促進 • 規格化における重複作業の回避 • それぞれのパートナーの規格開発活動に関す る情報の共有、技術支援 • 各国の国家規格システムの利益のための ASTM 規格の利用 • 国際的インプットを ASTM 規格に盛り込むための参画の促進 図‐4 ASTM の投票システム  図‐2 規格作りにおける Top Down 及び Bottom Up 方式図-1 米 図 1 国の標準化活動における ASTM の位置づけ2) 図‐3 委員会委員の構成 

(15)

10   

• ASTM 規格の世界的な受入れと利用の強化 

MOU の意図するところは、ASTM などの国際的規格化機関が国際規格開発において容易にその役割を果 たせないような国々援助を提供すべきであるということである。2001 年、ASTM はその MOU プログラムを 開始している。ASTM と MOU を締結する国家規格団体はその国から ASTM 規格開発プロセスにおいて投票権 あるメンバーとして無償で参加する資格を得ることができる。また、毎年 ASTM 規格の全てが国家規格団 体に提供されることになっている。その MOU 最大の目的が ASTM 規格の国際展開・普及にあることは言う までもない。                                      

5. ユーロコードとは?

ユーロコードは 1975 年にその開発が開始され、 2010 年欧州域内での公共工事に完全に実施される ことになった。ユーロコードを欧州レベルの法規と の係わりでいえば、①建築・土木構造物またはその 一部が建設製品規則(CPR)に規定された「基本的要 求事項(BASIC REQUIREMENTS FOR CONSTRUCTION WORKS、 BRCWs)」の BRCW 1 :「耐力と安定性」(BRCW 4 :「使 用時の安全性」の一部を含む)と BRCW 2:「火災時 の安全」に適合していることを証明する手段、②「基 本的要求事項」が意味するところを専門用語で表現 図‐5 ASTM と MOU 協定を結んでいる各国・地域団体  図-6 欧州の標準化活動における CEN の位置づけ2)

(16)

11   

する手段、③構造要素やキットの性能(CE マーキングに関連する情報)を決定する手段、および④公共 調達指令(PPD)に基づく公共調達における技術仕様を決定する手段として、メンバー国のための参照文 書(Reference Documents)として用いられることを意図したものである。

周知のように、ユーロコードは CEN(欧州標準化委員会)/TC 250「Structural Eurocodes」によって 策定されたものである。その CEN の欧州の標準化活動における位置づけを示したものが前頁図-6 である。 ユーロコードはマンデートと呼ばれる欧州委員会(European Commission, EC)から CEN への規格制定の 指示を受けて作成される欧州規格(EN)の一つである。

 

6.ユーロコード成功の要因

ユーロコードは AASHTO(米国高速道路橋規準)とともに、いまや世界的な de facto standard(事実 上の世界標準)の地位を獲得している欧州構造物設計規格である。なぜ、ユーロコードは欧州域内のみ ならず域外でも広く用いられようとしているのか?に対して、EC 及び CEN は次のように自己分析してい る。  EC による政治的及び財政的リーダーシップの成功  CEN による技術的リーダーシップの成功 これは、CEN のマネジメントによってユーロコードを開発する CEN/TC 250 に国際的なエキスパートが 集まり、規格化に向け活発な議論を展開したことを指す。  ユーロコードが有する規格としての柔軟性 これは、欧州域内には北から南まで様々な気候風土があり、さらには国力の差もあり、それらのいず れにも対応できる柔軟性を持った規格であることを指す。すなわち、ユーロコードにはおよそ 1,500 も の NDP(Nationally Determined Parameters、 メンバー国で自由に設定してよいパラメータ)があり、 従前の国家規格に擦り付けようと思えばできないことはない。EC は、このユーロコードの柔軟性を域外 の第三国への普及活動に活用している。ただし、域内向けには NDP の数を削減するように EC は各国へ勧 告しており域内と域外では二重基準となっている。 いま、ユーロコードは第一世代の開発を終え域外への普及活動に力を入れるとともに、第二世代のユ ーロコードの開発を始めている。次項では、この現状を紹介する。  

7.第二世代ユーロコードの開発

(1)マンデートと CEN 回答

現在、EC と CEN では第二世代ユーロコード策定に関する議論が進んでいる。2010 年 5 月、EC は CEN に 対して第二世代はどうあるべきかを打診(計画マンデート M/466)し、CEN は 2011 年 6 月に CEN/TC 250 の提案に基づき EC に具体策を回答している。その M/466 回答に基づき、2012 年 12 月には EC は CEN に対 して第二世代ユーロコード策定の具体的進め方を打診(規格化マンデート M/515)し、2013 年 6 月に CEN から M/515 回答がなされている。さらには、同年秋に EC-CEN 間で合意がなされ 2017 年 10 月の TS(技術 仕様書)としてのユーロコードの発行が予定されている。

(17)

12   

(2)CEN による M/466 回答

M/466 回答は、下記に示すように「新規ユーロコード・パーツ」と「現行ユーロコードの更なる発展」 の二つの開発テーマに分けられる。なお、本回答は参考文献 5) に掲載されているので、詳細はそちらを 参照されたい。  ●「新規ユーロコード・パーツ」に関する提案 a) 既存構造物の評価のための現行技術ルールの拡張 b) 構造ガラス部材を含む構造物の設計法 c) FRP 部材を含む構造物の設計法 d) メンブレン構造物の設計法 e) ロバストネスに関する現行ルールの拡張 ●「現行ユーロコード(EN 1990~EN 1999)の更なる発展」に関する提案 a) NDP(前述)の低減の可能性に関する現行ユーロコードの評価 b) 設計、施工におけるパフォーマンス、及びサステナビリティ概念を含む革新に係わる研究から得 られた国際的研究成果の組み込み c) 構造設計のサステナビリティへの貢献に関連する研究から得られた国際的研究成果の組み込み d) ユーロコード・ファミリー規格類への現行 ISO 規格の導入 e) 技術ルールの簡略化の検討  

(3) CEN による M/515 回答

6) M/515 回答によれば、M/466 で提案さ れたロバストネスに関連する規格の充 実、NDP の減少、ユーロコード規定の簡 略化などの作業が提案され、それに関 わる任務組織(Task Force)も分科委 員会(SC)毎に検討されている。また、 ここでは 2013 年から 2019 年までの第 二世代ユーロコードの開発プランが 4 段階(Phase)に分けて詳細に記述され ている。 図-7 に、新しい TC 250「ユーロコー ド」の作業構造を示す。左側の「Sub Committees」は 7.2 で述べた「現行ユ ーロコードの更なる発展」を担当するグループで、既存の分科委員会(SC)が担当する。右側の「Working Groups」は「新規ユーロコード・パーツ」を担当する新しい作業グループである。なお、Horizontal Groups は現行 Sub Committees を橋梁設計、防火設計の観点から横断的に結び付けるものである。

図中に Ti(i=1~)とあるのは、各 SC 内に組織される Task Force で第二世代ユーロコード作成の機動 部隊に相当するもので、それぞれの SC で 2~13 の TF がある。各 TF にはそれぞれの役割と完成段階(Phase) が定められている。各段階は開発年が重複しているものの、概ね下記のような完成段階が考えられてい

図‐7 CEN/TC 250「ユーロコード」の作業構造6)

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13   

る。

Phase 1(2013~2016 年)→Phase 2(2015~2017 年)→Phase 3(2016~2018 年)→Phase 4(2017 ~2019 年) 前述のように、EC-CEN 間でなされた合意によれば、まず 2017 年 10 月に TS(技術仕様書)としてのユ ーロコードの発行が予定されており、その後 TC 250 内で現行のように欧州規格としての EN ユーロコー ドに進むかどうかの投票にかけられることになっている。  

8.おわりに

我が国の優れた基準・規格類を海外に周知するためにはそれなりの広報戦略が不可欠であり、そのた めには世界で広く用いられている基準・規格の国際展開戦略から学ぶのが有効である。そのため、H25 年 度小委員会としては、海外で広く普及している有力な機関・規格として米国 ASTM International 及び CEN 策定のユーロコードを対象として、その国際展開のしくみ、方法などの実態を調査することにした。 その結果、二つの ASTM 規格及びユーロコードは次のような共通点、すなわち、(1)基準・規格類が先 端技術や国際市場のニーズを備えていることなどの要件を具備していること(必要条件)とともに、国 家としてもそれらを支援するために確固たる国際戦略を有している(十分条件)ことがわかった。 ASTM 規格は、国際市場からのニーズに基づき技術委員会を立ち上げ、世界からその分野の専門家が集 まり規格に先端技術を盛り込んでいる。また、ASTM の発展途上国の規格団体との MOU プログラムは、米 国規格化戦略(USSS)の一つ「発展途上国への技術支援」に沿ったものである。また、ユーロコードに 関しては EC(欧州委員会)及び CEN(欧州標準化委員会)の政治的、財政的、技術的支援のもと、欧州 域内の大学、研究機関、コンサルタンツなどの学識経験者を総動員して策定された世界最先端の構造物 設計規格ということができよう。第一世代のユーロコードが完成した後は、EC の指導のもとユーロコー ドの第三国への普及活動も活発になってきている。この二つの規格はいずれも、「基準・規格の国際展開 は、自国企業の国際競争力向上のために先兵の役割を果たす」と認識していることが印象深い。 小委員会として、現地ヒアリングの一環として ASTM 本社(米国フィラデルフィア)を訪問した際、ス タッフに「ASTM 規格がなぜ、国際的に広く用いられるか」と聞いたとき、彼らは一様に「我々の規格は 品質の面で ISO 規格を上回っているから」と応えた言葉が強く印象に残っている。確かに、彼らから入 手した資料や Web site からの情報を勉強してみると、ASTM 規格の開発と普及といった点で綿密な戦略に 基づいていると実感させられる。これは単に ASTM の戦略というよりも米国の規格化戦略に基づくもので ある。そういう意味で、港湾基準の国際展開という意味では担当部局による高品質な基準化の努力もさ ることながら、併せて国としての規格化と普及に関する統一した、かつ具体的な海外展開戦略も不可欠 であることを再確認させられた。 参考文献 1) http://www.astm.org/GLOBAL/images/What_is_ASTM_Japanese.pdf  を修正加筆  2) 主要国における国際標準戦略(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai6/6sankou2.pdf)  3) http://publicaa.ansi.org/sites/apdl/Documents/Standards%20Activities/NSSC/USSS_Third_edition/USSS%202 010‐sm.pdf 

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14    4) 現地ヒアリングにて入手した ASTM 内部資料より一部引用  5) 土木学会・技術推進機構:土木 ISO ジャーナル 23 号, pp.5‐15, 2012.3.  (http://www.pdfio.com/k‐5075553.html)  (文責 松井 謙二(小委員会委員長、土木研究所招へい研究員))

(20)

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4.特別企画

4-1. 港湾技術基準のベトナム国家基準への反映に向けた取り組み

1.はじめに

現在,国土交通省港湾局と国土技術政策総合研究所は,港湾空港技術研究所や関係機関 の協力を得ながら,我が国の港湾構造物の設計技術の粋を取りまとめた「港湾の施設の技 術上の基準・同解説」(以下,「基準・同解説」という。)をベトナム国家基準へ反映するた めの取り組みを行っている。その取り組みの特徴は,単に英訳版の基準をそのままの内容 で当該国に採用してもらうというものではなく,我が国の「基準・同解説」をベースとし つつも,相手国の実情や諸条件等に合致した形でカスタムメイドしたものを共同で検討・ 策定し,採用してもらうというものである。 この取り組みは緒についたばかりではあるが,本稿では,カスタムメイド化による国際 展開の可能性とその狙うところ,ベトナム側技術者との議論から得られたカスタムメイド 化の方向性,今後の課題,ベトナムとの協力体制の構築状況等について紹介するものであ る。なお,本稿は,文献1)に示す国土技術政策総合研究所資料の一部内容を要約したものに, 当該資料刊行後の進展状況を追記して構成されていることを付記する。

2.国内基準のカスタムメイド化による国際展開

(1)国際展開における課題

日本の港湾分野における技術基準類の国際展開の取組みについては,ODAのアジアへ の展開にあわせて,1980年以降,国内の設計基準である「港湾の施設の技術上の基準・ 同解説」2)の英訳版3)を刊行し,その基準がODA工事等で利用されるなど,一定の成果を 上げてきたといえる。 しかしながら,以下のような状況から,「基準・同解説」の英訳版の提供という従来の 方法では,海外プロジェクトにおける「基準・同解説」の利用頻度が低下し,今後,日 本基準のプレゼンスが低下する可能性がある。 ① ODA予算のシェア低下に伴って,今後,日本の技術基準類が適用できる港湾工事 プロジェクトが減少する可能性がある。 ② EUは,独自の体系を持つ地域規格として開発されたユーロコードのアジア地域 への普及を重点的かつ戦略的に進めており,シンガポールではユーロコードを適 用した国家規格が発刊されているなど一定の成果を上げつつある。 ③ その一方で,「基準・同解説」は,国内の法体系,技術基準体系,自然条件,技 術水準,経済水準等を背景として整備されてきたため,必ずしも開発途上国等の 実情に適合するものではない。むしろ,近年は,我が国における耐震設計の高度 化などにより,その乖離が大きくなる傾向にある。 ④ 開発途上国の中でも,独自の港湾基準を策定する意向がある場合に,「基準・同 解説」の英訳版又は翻訳版の提供のみでは,十分に当該国の意向に沿うことがで きない。

(2)国内基準のカスタムメイド化による国際展開の可能性とその狙い

上記の③および④に対する対応方策の一つとして,我が国の「基準・同解説」をベー スとしつつも当該国の各種の制約条件(法体系,技術基準体系,自然条件,技術水準等) の分析を踏まえ,対象国の置かれた状況に応じて「基準・同解説」をきめ細かくカスタ ムメイドして,当該国に利用してもらうというアプローチがあると考えられる(図-1)。

(21)

16 この検討にあたっては,パートナーとなる国におけるコードライターとの共同作業が 必要となる。共同作業の過程に おいて,「基準・同解説」に不 足 し て い る 事 項 や 当 該 国 へ の 適 用 に 際 し て 課 題 と な る 事 項 な ど の 明 確 化 を 図 る こ と が で きる。これにより,当該国にお け る 設 計 上 の 様 々 な リ ス ク 要 因 や 対 応 方 策 に つ い て の 情 報 も同時に得られることになる。 こ の よ う な 情 報 を 相 互 の 国 で 共有することにより,設計上の 不 要 な ト ラ ブ ル 等 を 回 避 で き るため,当該国における港湾整 備 プ ロ ジ ェ ク ト に 関 係 す る 両 国関係者にとって,有益な結果 をもたらすものと考えられる。 また,これらの情報を国内に おける「基準・同解説」の作り 込みの際に適切に反映することにより,「基準・同解説」がより多い地域でそのまま問題 なく利用できるように改善していくことも可能であり,この取り組みは,国内基準の国 際化・国際展開の推進効果も有するものと考えられる。

3.ベトナム国家港湾基準への反映に向けた取り組み状況

(1)概要

2011年以降,国土交通省港湾局と国土技術政策総合研究所では,国内設計基準のベトナム 国家基準への反映に向けた取り組みを継続的に行ってきた。本章では,これまでの活動経 緯として,ベトナムにおける港湾基準の現状とニーズについて現地ヒアリング調査を実施 した結果を紹介するとともに,ベトナムの港湾基準策定に関係する政府関係者や専門家を 日本に招聘して行った意見交換の結果を紹介する。

(2)ベトナムにおける港湾基準の現状及びニーズ

<ベトナムにおける港湾基準に関する基礎調査(2012年3月,ハノイ)> (調査概要) ベトナムにおいて各分野の国家基準を再構築しているという情報が得られたため,2012 年3月にベトナムにおける港湾基準に関する調査が国土交通省港湾局により行われた。調査 先は,ベトナム国交通運輸省:MOT(科学技術局:DOST,海運総局:VINAMARINE),交 通科学技術研究所:ITST(MOT傘下),交通通信大学:UTC,ベトナム建設大学:UCEであ り,調査は全て口頭によって行われた。調査は,草柳俊二教授(高知工科大学),清宮 理 教授(早稲田大学)および宮田正史氏(当時,港湾局技術企画課技術監理室 国際標準化推 進官)により行われた。 (調査結果) 以下に,ベトナム国交通運輸省科学技術局長へのヒアリング結果を示す。 ➀ベトナムでは,現行の基準体系(港湾に限らず)を,ベトナム国家基準(TCVN)と各 省庁統合基準(TCCS)に移行する作業を実施中(2006年政府決定)である。 ②ベトナムの港湾設計基準としては,旧ソ連の基準をベースとしたものが存在しているが, A国事情に合わせたカスタム メイド(部分的な採用も含む) D国事情・・・・・ C国事情・・・・・ C国事情・・・・・ 国内基準 (旧基準等も含む) B国事情・・・・・ 図-1 国内基準の対象国事情に合わせた カスタムメイド化のイメージ

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17 非常に古くて実態に即していない。 ③このため,MOT科学技術局としては港湾基準を再構築したいと考えている。その際は, 調査・設計・施工・維持管理の一貫性を持った基準としたい。 ④港湾分野の基準策定の取り組みは道路分野に比べて遅れている。ただし,防波堤につい ては先行してBS6349をベースとして,設計・施工の基準策定に向けた検討を開始して いる(ベトナム語への翻訳版が既にある)。しかし,予算や著作権等の問題があり,国 家基準化には至っていない。 ⑤現段階では,日本の「基準・同解説」(平成11年版のベトナム語訳版)の運用について は大きな問題はないので,日本の「基準・同解説」をベースに別途検討することも意 義があるので,日本国政府・国交省の協力・支援を頂けるのであればとても有難い。 ⑥ただし,いずれにしても,ベトナムの自然条件や実状に合致した基準とする必要がある ので,日本の基準をベースとするとしても,その検証や修正が必要である。また,ベ トナムの技術者が良く理解できるように設計(公式も含めて)や技術の背景や根拠の 説明,技術移転,そのための人材育成を同時に図るようなシステムが必要である。

(3)ベトナム国家港湾設計基準の共同策定の方向性

(概要)

ベトナムにおける港湾技術基準の再整備において日本の協力への期待が大きいことから, ベトナムにおける港湾国家基準策定において,どのような協力ができるかを検討するため に,ベトナムの港湾基準策定に関係する政府関係者や専門家を2013年7月に日本に招聘した。 滞在期間中は,国土交通省港湾局への訪問や,国土技術政策総合研究所,港湾空港技術研 究所の専門家との意見交換を行った。専門家との意見交換は,海洋水理,地盤,構造,材 料等の技術分野毎に行い,ベトナムの技術基準の状況や日本の基準の特徴等について議論 した。

(方向性)

図-2に,「基準・同解説」の英語版をベースにベトナム国家基準を策定するという仮定 を設けた場合に,どのような基本方針で基準案を構築するかについて,日越双方で議論し た 結 果 を 示 す 。 図 中 の 番 号 ① ~ ⑨ は , 以 下 に 示 す 各 項 目 ① ~ ⑨ に 対 応 し て い る 。 図-2 「基準・同解説」をベースとしたベトナム国家基準策定の方針(試案)

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18 なお,以下に紹介する結果は,今回の招聘技術者との議論の結果であり,ベトナム国内に おいて国家基準を「基準・同解説」をベースとして策定することついて正式な決定がなさ れている訳ではないため,日越双方の担当者レベルの技術者が考えた一つの試案であり, その点はご留意いただきたい。 ① 参照とする「基準・同解説」 ベトナム国内では,「基準・同解説(1999年発行)4)」の英訳版(2002年発行)が浸透し ているため,目次構成などの大枠の構成は,この英訳版(2002年発行)をベースとする。 ただし,現在,日本で利用されている最新の「基準・同解説(2007年発行)2)」の英訳版(2009 年発行)3)では,記載内容が更新されて新しい情報も追加されているので,英訳版(2002年 発行)と英訳版(2009年発行)の両者の内容を比較・検討し,ベトナムに相応しい内容に 修正することを基本とする。 ② 日本側が有する技術情報等の提供 上記①以外であっても,ベトナム側の基準策定に必要とされる日本国内における各種情 報については,可能な限り日本から提供する。特に,地盤調査方法と設計公式はセットで あるため,地盤調査方法については日本側の詳細情報を分かりやすい形でベトナムへ提供 し,ベトナム国内で間違いのない設計がなされるように配慮が必要である。また,「基準・ 同解説」には詳細は掲載されていない内容ではあるが,国土交通省所管の一般財団法人等 から発行されている各種マニュアルやガイドラインからも,基準策定に必要とされる情報 については,可能な限り日本側から提供する。 ③ ベトナムにおける旧港湾設計基準 既存のベトナム港湾基準(旧基準)は,新しい港湾基準が策定された後に切り替える形で 廃止する必要がある。この切り替えに際し,ベトナム国内で大きな混乱を招かないように 配慮が必要となる。また,当然ではあるが,旧基準であっても既にベトナム国内で広く利 用されている部分については,新基準においても適切に反映していく必要がある。 ④ ベトナムの自然条件や材料条件等への適合 「基準・同解説」の英訳版のベトナム国内での利用に際して,ベトナムの自然条件や材料 条件に応じて修正すべき箇所については,その内容に応じて適切に修正する必要がある。 特に,地震危険度については,日本とベトナムでは大きく異なると考えられるため,その 点への配慮が必要である。また,材料条件については,日本国内ではJIS規格の材料が前提 とされているが,ベトナム国内の港湾工事で利用される可能性のある材料規格に対応でき るような配慮が必要となる。 ⑤ ベトナムで採用される構造形式等への対応 「基準・同解説」の英訳版には,係留施設や防波堤等の施設について,日本国内で採用さ れた実績のある様々な構造形式の事例や設計法が記載されている。しかしながら,ベトナ ムで頻繁に採用される構造形式について十分な記載がなされていないものもある。例えば, 防波堤であれば,ベトナム国内では傾斜堤(石材を中心に構築される防波堤)の採用が多 いが,日本国内ではケーソン式防波堤が主流を占めているため,「基準・同解説」には傾斜 堤に関する記載が少ない。また,桟橋構造であれば,ベトナム国内ではコンクリート杭の 採用やプレキャスト部材による上部工の構築が多いようであるが,日本国内では鋼管杭の 採用が圧倒的に多く,また「基準・同解説」においてはプレキャスト部材に関する記載が 少ない。以上に示したとおり,ベトナムで採用される典型的な構造形式の設計に関する記 載の充実・拡充が必要となる。 ⑥ ベトナム国内におけるその他遵守基準への対応 ④にも関連するが,ベトナム国内で遵守すべき他の基準類が存在する場合には,それらの 既存基準類との整合性を図る必要がある。 ⑦ ベトナム国内における各種教訓等の反映 招聘技術者によると,ベトナム国内では国内に適合していないにもかかわらず海外基準や その基準値をそのまま採用したことによって,設計・施工業務において様々な不具合が生 じることがある,とのことである。このような事例を繰り返さないためにも,今までにベ

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19 トナム国内で得られた各種の教訓を新しい基準に適切に反映させていく必要がある。 ⑧ 今後のベトナム港湾基準の改訂への配慮 現行の「基準・同解説」は,性能設計の枠組みを採用し,設計法としては信頼性設計法を 本格的に導入し,また耐震設計法については入力地震動を時刻歴波形の利用を前提とした ものとなっており,世界的に見ても非常に最先端の技術要素を含有したコードとなってい る。ベトナム側の招聘技術者も,これらの最新技術には興味を持っているものの,現在の 国内事情を勘案すると,今すぐに導入することは困難であるとの感触であった。ただし, 新しい情報については,新しいベトナム港湾基準の付録等に添付し,次の基準改訂の際に 活用していく方向が良いのではないかという結論に至った。 ⑨ ベトナム港湾基準の全体構成 以上の議論の結果として,ベトナム港湾基準の全体構成としては以下のような構成を基 本とする。 ⅰ)本文:本編資料 ⅱ)付録:今後の技術基準改訂に向けた新しい情報や高度な設計を行う際の情報を収録 ⅲ)参照基準:参照すべき関連基準 ⅳ)参考文献:参考となる文献

4.今後の課題と協力体制の構築状況

(1)今後の課題

①設計・施工・維持管理基準の一体的整備への対応 ベトナムとしては,港湾分野の国家技術基準について,設計・施工・維持管理の一貫性を 持った基準を再構築したいという強い意向を持っていることが分かった。しかしながら, 日本国内においても,一貫性のあるパッケージ化された基準図書体系に必ずしもなってい ない。 このため,ベトナム側の要望に応えていくためには,まず国内基準において設計・施工・ 維持管理という繋がりを再整理し,海外プロジェクトにおける利用にも耐えうるような基 準類の体系化・再整理が必要となる。これは,ベトナムだけでなく,基準類が未整備の国 では同様の要請があると考えられるため,今後,国内基準類の国際化・国際展開を図る上 では,常に意識して対応していく必要がある項目であると考えられる。

②ベトナム国内における基準策定体制の構築と日本側の支援体制・内容の具体化

我が国の港湾整備に関係する設計・施工・維持管理の技術基準類をベトナムの実情に合わ せてカスタムメイド化するためには,日越双方の正式な協力関係の構築が必要である。 さらに,能力のあるベトナム国内のコードライターによる自律的な取り組みとその組織化, が必要とされる。また,当然のことながら,日本側も,港湾整備に係る設計・施工・維持 管理の広範囲の技術分野における技術支援体制の構築が必要となる。 以上に示した内容を勘案しつつ,ODAスキームなどによる予算措置等も含めて,日本側か らの技術支援として何が提供可能であるかを明確化・具体化した上で,両国における全体 枠組みを両国の省庁間および研究所間において構築し,実効性のある全体枠組みを構築し ていくことが重要となる。

(2)協力体制の構築状況(日越省庁間における協力「覚書」の締結)

これまでの日越双方の関係者の多大な尽力の結果として,2014年3月7日にベトナム・ハノ イにおいて,国土交通省とベトナム交通運輸省との間で「港湾施設の国家技術基準の策定 に関する協力に係る覚書(MOU)」が署名された5)(写真-1)。この覚書は,日本の港湾の技 術基準を基に,ベトナムの港湾の設計・施工・維持管理に関する新しい国家基準を両国で 協力して策定することを目的とするものである。この覚書により,本取り組みは両国間の

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20 正式なプロジェクトとして位置付けられたことになる。 なお,本取り組みの実施体制は,日本側は国交省港湾局および国土技術政策総合研究所で あり,越側は交通運輸省科学技術局および交通科学技術研究所(ITST)である。署名された覚 書に基づく日越の関係者による本取り組みの加速が期待されている。 写真-1 「港湾施設の国家技術基準の策定に関する協力に係る覚書」の署名 (左:国交省 中原大臣政務官,右:交通運輸省 ドン副大臣, 2014 年 3 月 7 日(ハノイ)) 参考文献 1)宮田正史・中野敏彦・原田卓三・山本康太・浅井茂樹:「港湾分野における技術基準 類の国際展開方策に関する検討~港湾設計基準のベトナム国家基準への反映に向け た取り組みを事例として~」,国土技術政策総合研究所資料,No.769,2013. 2)国土交通省港湾局編:港湾の施設の技術上の基準・同解説, (社)日本港湾協会,2007. 3)国土交通省港湾局・国土技術政策総合研究所・港湾空港技術研究所編:Technical Standards and Commentaries for Port and Harbour Facilities in Japan,(一財)国際臨海開発 研究センター(OCDI),2009. 4)国土交通省港湾局編:港湾の施設の技術上の基準・同解説, (社)日本港湾協会,1999. 5)国交省HP(記者発表資料):http://www.mlit.go.jp/report/press/sogo17_hh_000039.html (ISO対応特別委員会幹事,国土政策総合研究所 港湾研究室長 宮田 正史) (国土政策総合研究所 港湾技術政策分析官 中野 敏彦) (国土政策総合研究所 沿岸海洋新技術研究官 宮島 正悟) (ISO対応特別委員会幹事,国土交通省後湾局 技術監理室 技術基準審査官 原田 卓三) (国土交通省港湾局 技術監理室 課長補佐 平野 誠治)

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21

4.特別企画

4-2 建築・土木分野:ISO/TAG8の解散

1.はじめに

2013年2月に開催された第56回TMB国際会議においてISO/TAG8の存続に関する審議が行われ, 次の決議が採択され解散が決定した。日本以外のTMBメンバーはすべて解散に賛成であったと いう。

8.2 Proposals for streamlining

98. The TMB noted the report on the three categories of bodies reporting to the TMB and discussed the need for a coordination group in the building sector. It was agreed that such as an important structure was not necessarily needed and that the coordination should be handled by the Technical Programme Manager. The question could be revisited in 1 or 2 years' time if the need arose. The TMB adopted the following TMB Resolution:

Changes to TAG 8 Building

The Technical Management Board, Thanks TAG 8 Building for its work, and Recalling the TMB's efforts to streamline the groups reporting to the TMB, decides to disband it. TECHNICAL MANAGEMENT BOARD RESOLUTION 30/2013

筆者は,2009年から国内委員会の事務局を担当し,2010年にはISO/TAG8国際会議にオブザ ーバーとして参加した。 解散までの数年間,国際会議を含めたTAG8内での活動(議論)の中心は,次の2点であった。 ○ 構造物の設計に関する国際標準化の必要性(ユーロコードをベースとする構造物の設計 の標準化) ○ エネルギー効率に対する建設分野の貢献(建築物のエネルギー性能の標準化に関して, TC163とTC205との衝突を解消するための新たな組織の構築) 上記2点に関するTAG8の提案に対して,TMBは前向きな姿勢を示さなかった。にもかかわら ず,改善されない提案が繰り返されたことで,TMBメンバーがTAG8に対して強い不信感を抱い たことは想像に難くない。 ここでは,TAG8の概要と,解散に至るまでの直近の状況について報告する。

2.ISO/TAG8の概要

1990年代,欧米を中心とする諸外国では経済活動に対して国際標準化を戦略的に利用する 動きが強まっていった。この動きは,国内の標準化はもちろんのこと,建設分野へも影響を 及ぼし始めた。この時期,ISO(国際標準化機構)内では,技術管理評議会(Technical Management Board 通称TMB) のsubcommitteeのと して,建 設分野 の技 術 的諮問グ ループ (Technical Advisory Groups 通称TAG8)が既に設置されていた。

このような中,日本においても建築関連の国際標準化に関して総合的な取り組みが必要と の気運が高まり,1991年8月,ISO/TAG8国際会議への対応と,国内の建築・土木分野の規格 基準類の国際化対応に関する官民協力体制を構築することを目的として,ISO/TAG8(建築) 等国内検討委員会が(財)建材試験センター(当時)に設置された。

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22 TAGは,TMB配下に複数あるsubcommitteeのひとつであり,TAGの後に付く数字は専門分野を表 している。これまでに表1に示すように番号が14までのTAGが設立された。No.8は英文では, 「BUILDING」となっており,日本でいう「建築」だけでなく「土木(一部)」も含む。 建築・土木の分野でのISO規格作成作業には,各国あるいは各地域における気候風土や伝統, 文化及び経済基盤の違いなどから国際規格としてはなじまない面が多く,また,掌握領域も広 範にわたっており,規格化の進展に困難が伴っているということもあって,次に示すTMBからの 委任事項のもとTAG8は活動を継続してきた。

【委任事項】

○ 建築分野及びその関連技術の国際規格化作業に関する計画及び優先性についてTMBへ助言す ること。 ○ 国際規格の必要性と技術的な活動の新たな分野を認識させることを目指して,建設技術や 建設産業の開発を監視すること。 ○ 計画と調整を保証するために建築分野のTC(専門委員会)の積極的な作業をレビュー下に おくこと。 ○ 建築分野におけるISO方針の継続的な履行を監視すること。 ○ TMBへ報告すること。 表1 今まで設立されたTAG(2013年3月) ISO/TAG1(旧) 化学及び物理化学の試験方法及び分析方法(1992年3月解散) ISO/TAG1(新) ヘルスケア技術(2010年2月解散) ISO/TAG2 金属(1992年3月解散) ISO/TAG3 エネルギー資源と保護(1992年3月解散) ISO/TAG4 度量衡(2012年2月解散) ISO/TAG5 火災試験(1992年3月解散) ISO/TAG6 医療設備(1990年3月解散,以後ISO/IECのジョイントTAG(JTAG)1として設 立) ISO/TAG7 情報応用技術(1994年9月解散) ISO/TAG8 建築(2013年2月解散) ISO/TAG9 商品流通(1995年5月解散) ISO/TAG10 映像技術(1990年解散,以後ISO/IECのJTAG2として設立) ISO/TAG11 安全(1992年3月解散) ISO/TAG12 ISO9000/ISO14000整合化(1998年1月解散) ISO/TAG13 JTCGマネジメントシステム標準合同技術調整委員会 ISO/TAG14 イメージテクノロジー ※斜体は現在活動中 TAG8のメンバーは表2に示す通り,建築(一部土木)に関する多様かつ広範囲な標準化テーマ に取り組むため,世界の主要な地域から選出されている。日本のISO対応は,JISC(日本工業標 準調査会)が全体的な事務局となっており,TAG8の日本代表委員は,1990年から1992年までを 坂田種男国内委員,1995年までを岸谷孝一国内委員,2013年までを菅原進一国内委員会委員長 (いずれも当時)が務めた。 表 2 ISO/TAG8 メンバー(2012 年 3 月)

委 員 長 Mr. Dirk Breedveld (オランダ NEN)

事 務 局 Ms. Anna Caterina Rossi (ISO 中央事務局)

委 員 Mrs. Larisa Barinova (ロシア GOST R)

Mr. Xiaokun Huang (中国 SAC)

Mr. Rodney McPhee (カナダ SCC)

参照

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