• 検索結果がありません。

税務支援の拡充と税理士の業務独占のあり方 : 開かれた税務支援のあり方を日米比較で検証する

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "税務支援の拡充と税理士の業務独占のあり方 : 開かれた税務支援のあり方を日米比較で検証する"

Copied!
84
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

税務支援の拡充と税理士の業務独占のあり方

∼開かれた税務支援のあり方を日米比較で検証する

石村耕治

税務支援の拡充と税理士の業務独占のあり方(石村) はじめに ︻税務支援制度についての比較メソッドの検討 1支援業務の提供期間・支援業務の範囲からみた制度分析 2税務支援業務の範囲からみた制度分析 3各国での主要な税務支援制度の特徴 4主要各国の税務専門職制度 二わが国の税務援助・税務支援制度

54321

税務専門職団体独自の税務支援制度 課税庁等から委託を受けて実施する制度 課税庁・税務専門職団体協働の制度 課税庁独自の制度 ﹁年末調整﹂は強制的な無償の税務支援 三

187654321

2

むすび アメリカの税務援助・税務支援制度 アメリカの税務専門職制度 新たな専門職﹁登録申告書作成士﹂制度創設の動き アメリカの税務援助・税務支援制度の特質 アメリカの各種税務支援プログラムの概要 ボランティア所得税援助︵VITA︶プログラムの実際 IRSの納税申告書作成ボランティアの研修制度 全米退職者連盟︵AARP︶のタックスエイド・プログラムの実際 低所得納税者相談所︵LITC︶プログラムの実際 日米比較でみえてきた日本の支援制度の課題 アメリカの税務支援制度の底流 “業界益”を超えたわが国での支援制度構築の必要性

(2)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)50

はじめに

自主申告納税︵ω①﹃器器誘B①導︶を基礎とする課税制度が円滑に運営されるためには、納税者に対するきめ細かい 税務援助・税務支援サービスの提供が必要不可欠である。先進各国においては、納税者サービスの一環として、とりわ け給与所得者や年金所得者、さらには小規模事業者に対する無償の税務援助・税務支援︵以下たんに﹁税務支援﹂とも いう。︶制度の整備に力を入れてきている。各国の制度に目を通してみると、この種のサービスは、課税庁独自で行う もの、課税庁︵租税行政庁︶と税務専門職団体が協働で行うもの、課税庁と民間ボランティア団体などが協働で行うも の、民間ボランティア団体が独自で行うものなど、さまざまな仕組みが存在する。こうした横並びではない多様な制度 が存在する背景には、各国における民間の税務業務に対する政府規制や専門職制度のあり方も大きく影響している。 わが国における無償の税務援助・税務支援サービスは、これまで、小規模事業者向けに大きな比重が置かれてきた。 言い換えると、必ずしも一般の国民・納税者に身近な存在にはなっていない。この背景には、いくつかの理由がある。 その一つは、大半の給与所得者が年末調整手続を通じて、雇用主から事実上の無償の税務援助・税務支援サービスを 受けられる態勢にあることにもよる。無償の税務援助・税務支援サービスに対する国民・納税者の受け止め方も、年末 調整の仕組みのあるわが国と、こうした仕組みがなく全員確定申告を前提とする諸国とでは、異なって当然といえる。 もう一つの理由は、わが国においては、税務書類の作成や税務相談業務などについては、有償・無償を問わず、政府 規制により税理士の絶対独占とされている点にある。こうした政府規制により職業独占を認める制度は、すべての国民・ 納税者のものである申告納税制度の発展、その下での自発的納税協力を推進するねらいで提供される民間の無償の税務

(3)

援助・税務支援サービス拡充にとりネックとなっているきらいがある。各国で広がりをみせている民間ボランティアに よる無償の税務援助・税務支援サービス提供も、わが国では、税理士による税務業務の絶対独占により、その途を閉ざ されている。開かれた税務援助・税務支援制度の構築には、政府規制緩和の視点に立ち、税理士の独占業務の見直しが 急がれる。 近年、わが国では、人口の高齢化が著しく、年金受給者の数が急激に増えてきている。これに伴い、所得税の確定申 告を必要とする年金所得者に対する無償の税務援助・税務支援のあり方が問われている。また、一方では、給与所得者 を含む全員確定申告を前提とする制度を求める動きも積極化してきている。従来型の税務の専門職団体などによる小規 模事業者に比重を置いた税務援助・支援の仕組みだけではもはや十分とはいえない実情にある。時代は、申告納税制度 から取り残される人を出さないためにも、無償の支援サービスを民間に開放し、もっと手軽に利用できる国民手作りの 支援の仕組みを求めている。 こうした二ーズを織り込んで考えると、より積極的な国民・納税者の自発的納税協力︵<○ビロ鼠曼賦図8Bb冨po①︶ を仰ぐためには、申告納税制度を支える環境の整備、とりわけ税務援助・税務支援サービスがもっときめ細かで身近な 存在になるように改革が必要とされる。現行の﹁申告期﹂支援の拡充はもちろんのこと、﹁申告前﹂支援、さらには ﹁申告後﹂支援にまで及ぶ多角的かつ包括的な制度構築が求められてくる。当然、﹁申告期﹂支援に重点を置いたわが国 の現行制度のあり方も問われてくる。 本稿では、先進主要国、とりわけアメリカ合衆国︵以下﹁アメリカ﹂という。︶の無償の税務援助・税務支援サービ スの制度と現状を分析しながら、わが国における制度のあり方について、比較法的に点検してみる。また、各国で広が

(4)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)52 りを見せている民間ボランティアによる無償の税務援助・税務支援サービス提供をわが国でも可能にすべく、 緩和の視点から、現行の税理士制度のあり方についても、比較・検証してみる。

税務支援制度についての比較メソッドの検討

無償の税務援助・税務支援の制度は、国により異なる。 較メソッドを検討・明確にする作業が求められる。 政府規制 制度の国際比較にあたっては、まず、ある程度、統一的な比 1支援業務の提供期間、支援業務の範囲からみた制度分析 無償の税務援助・税務支援の制度は、その提供期間や支援業務の範囲という面から比較分析することができる。一般 に、どの国においても支援業務は、確定﹁申告期﹂支援に大きな比重が置かれている。しかし、国によっては、﹁申告 前﹂支援、さらには﹁申告後﹂支援にも広がりをみせている。こうした実情を織り込んで考えると、支援業務は、次の ような構図において分析できる。 ③期間限定の場A日

(5)

・﹁申告前 ・﹁申告期 ・﹁申告後 ︵RΦ旨Bσq︶﹂支援、 ︵自日σq︶﹂支援、 ︵bO撃自日σQ︶﹂支援 2税務支援業務の範囲からみた制度分析 わが国での税務支援業務は、小規模事業者や給与所得者、年金所得者などを対象に実施されているものがよく知られ ている。具体的には、確定﹁申告期﹂に、申告書の書き方指導や記載の際の助言などのかたちで実施されている。これ らの支援業務は、税理士法上の業務区分に従うと、﹁申告書の作成﹂や﹁税務相談﹂の分野にあてはまるものである。 ただ、国際的にみると、﹁申告前﹂支援及び﹁申告後﹂支援にまで及んでいる国もある。この場合には、税務支援業務 は﹁税務代理﹂の分野にまで及ぶ。 支援業務の提供時期と支援業務分野との関係を図示すると次のとおりである。 ︹図表一︺支援業務の提供時期と支援業務分野との関係

業務分野

時期 税務書類の作成 税務相談 税務代理

﹁申告前︵實曾自日σq︶﹂支援 ○ △

﹁申告期︵白BoQ︶﹂支援 ○ ○ ﹁申告優︵8撃白日σq︶﹂支援 ○ ○ ○

(6)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)54 3各国での主要な税務援助・税務支援制度の特徴 主要各国における税務援助・税務支援制度は、実に多様である。こうした多様性を生む背景には、専門職制度のあり 方に対する考え方の違いもある。 わが国では、税務業務︵税務書類の作成・税務相談・税務代理など︶に対し厳しい政府規制を掛け、税務専門職︵税 理士︶の絶対独占とする政策を維持している。このため、一般市民・納税者が、他の納税者の簡単な申告書の作成を無 償であったとしても、それをボランティアとして繰り返し支援することは、原則として許されない。これに対して、多 くの諸国では、申告納税制度はすべての国民・納税者のものであるとの視点に立ち、市民・納税者が他の納税者の申告 をボランティアとして支援することは当たり前のこととされている。すなわち、申告納税制度の下での自発的納税協力 を推進するねらいで提供される民間の無償の税務援助・税務支援サービスを、市民団体・民間ボランティアの手に幅広 く委ねる政策を維持してきている。 このため、多くの国々においては、無償の税務援助・税務支援サービス提供は、﹁市民・納税者が主役﹂の形で広が りをみせている。これとは逆に、わが国では、税理士による税務業務の絶対独占により、・税務援助・税務支援業務にボ ランティアを活用する途は閉ざされている。職業独占を護ることを主なねらいとし、﹁税理士が主役﹂の形で、専門職 による税務援助・税務支援プログラムが細々と実施されてきているに過ぎない。ある意味では、こうした点にも、わが 国における﹁政府規制大国﹂の面影をみることができる。 各国における税務援助・税務支援制度の主な特徴を図示すると、次のとおりである。

(7)

︹図表一一︺各国での主要な税務援助・税務支援制度の特徴︵一︶

国別

期間

課税庁の関与 専門職団体の関与

支援の内容

日本 アメリカ オーストラリア カナダ イギリス ドイツ 申告羅 蜜剛騨凶劇卸灘凶塞口灘,

塞剛難⋮⋮⋮

申告灘 塞回欝凶塞削灘凶塞口欝, 塞口難凶塞麟/塞剛灘, ○

O

O

O

× ?。 ○ △ × × ○ × 税務書類の書き方指導、税務相談 税務書類の作成、税務相談、税務代理 税務書類の書き方指導、税務相談 税務書類の作成、税務相談 税務書類の作成、税務相談 税務書類の作成、税務相談、税務代理

(8)

56 ︹図表一一一︺各国での主要な税務援助・税務支援制度の特徴︵一一︶ 白鴫法学第13巻2号(通巻第28号)(2006) 支援ボランティア

支援対象

利用者の収入制限

注 圓幽税理士/その 他︵臨税︶ 申焦灘支援∼事業、雑︵年金︶、 還付申告 申告灘㎜支援∼還付申告︵VI TA、TCE︶ 恒久的支援∼税務相談・税務代 理・税務書類の作成︵LITCy 里麟斐援∼↓畏≧g 申告灘支援∼CVIT 恒久的支援∼税務相談・税務代 理・税務書類の作成︵↓貰 >§ 恒久的支援∼給与・年金の税務 相談・税務代理・税務書類の作 成 原則三〇〇万円 年収三八、○○○ドル未満︵約四五六万円︶ 一人∼二万三、九二五ドル︵二八七万一、○○○円︶ 二人∼三万二、〇七五ドル︵三八四万九、○○○円︶ 三人∼四万二二五ドル︵四八二万七、○OO円︶ 四人∼四万八、三七五ドル︵五八○万五、○OO円︶ 五人∼五万六、五二五ドル︵六七八万三、OOO円︶ 五人を超える場合には、一人につき八、一五〇ドル ︵九七万八、OOO円︶追加 年収三万三、八○○ドル︵三〇四万二、○○○円︶ 単身者∼年収二万五、○○○ドル︵二五〇万円︶ 四人家族∼年収三万五、OOOドル︵三五〇万円︶ 世帯あたり週三〇〇ポンド︵六万円∼年収三〇〇万 円程度︶ 給与税援助協会の会員サービス︵有償︶ 一ドルH二一〇円で 換算 一ドルー1九〇円で換 算 一ドルH一〇〇円で 換算 一ポンドH二〇〇円 で換算 非専門職 専門職/ 専門職候補者/その 他 オーストラリア 非専門職

團非専門職

、國団凶専門職 旧閉図非専門職

(9)

4主要各国の税務専門職制度

主要諸国における税務専門職制度は一様ではない。例えば、すでに触れたように、わが国では、無償の税務支援業務 の提供に対しても厳しい政府規制を加え、非専門職︵非税理士︶の参入を制限する政策を維持している。一方で、イギ リスのように、税務専門職を民間資格としている国もある。一般に、わが国のような専門職制度は﹁閉ざされた専門職 ︵巳○ωaR98皿○⇒︶﹂という。一方、イギリスのように、税務代理業務などを除き、税務書類の作成などを民間資格 で税務専門職の名称独占とする制度は﹁開かれた専門職︵8窪RO8脇δ⇒︶﹂という。 いずれにしろ、税務支援制度を比較分析する場合には、各国の税務に関連する専門職制度を知っておくことは重要で ある。主要各国の税務関連専門職制度は、一覧にすると次のとおりである。 ︹図表四︺主要各国の税務関連専門職制度

日本獺灘羅/公認会計士/弁護士

アメリカ,欝懸騒,命凱醤町轟饗︶凶公夷蔀土浸q則闘︶凶翻謬キ紹:⋮:ー オーストラリ乳、懸灘鞭,︵引財,詞籔蜜沼蜘禽計雫、創引制毅a鐵臥副“例謝dへ,d巨湘加§パ劇務剣護ガ:−,:、 カナダ:灘罪羽謝剣護f,⋮⋮−⋮⋮⋮:ー

イギリス、良蓉蟹ぞ麟灘灘撚騰ε刃み凱譲藪麟藁鐘コ鐙灘奄鐡臥感睡聾雇公会計士/事務弁護士

ドィツ、.灘灘響税謝化唖f沼公認翻f沼弁護f沼公認楓無監査土⋮⋮ *網掛けH税務中心の専門職、網掛けなし旺税務関連専門職 **この他に、連邦議会では、納税申告書作成業者を対象とした、新たな﹁登録申告書作成士 職資格︵連邦資格︶の創設に向けた議論が展開され、法案が準備されている。 ︵①導OH一aR8巽R︶﹂の公的専門

(10)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)58

二わが国の税務援助・税務支援制度

わが国における無償の税務援助・税務支援サービスは、課税庁独自で行うもの、課税庁・税務専門職団体協働で行う もの、民間︵職業専門家団体やボランティア団体など︶が独自で行うものなど、さまざまなものが存在する。 周知のように、わが国の場合には、税金の職巣専門職として、政府規制によってつくられた﹁税理士﹂の公的資格制 度がある。税理士法によると、税理士業務は、①税務代理︹申告、申請、不服申立等︺︵法二条一項一号︶、②税務書類 の作成︹申告書その他税務官公署に提出する書類の作成︺︵法二条一項二号︶および③税務相談、ならびに④記帳代行 等の付随業務︵法二条二項︶から成り立っている。①、②および③の業務は、﹁無償独占﹂と解されており、税理士以 外の者︵非税理士︶は無償であってもこれらの業務は行ってはならないものとされている。また、税理士となる資格を 有する者は、①税理士試験合格者、②税理士試験免除者、③弁護士および公認会計士である︵法三条︶。これらの者は、 日本税理士会連合会に入会し税理士名簿に登載られることにより税理士になることができる︵法一八条以下︶。 こうした法的環境の下、例えば、申告書の作成ないしはその指導一つ取り上げて見ても、こうした業務は例え無償で あったとしても税理士以外の者︵非税理士︶には許されないことから、原則として税理士が対応しなければならないも のと解されている。

(11)

︹図表五︺わが国の税務援助・支援制度の概要

課税庁独自の制度

一一課税庁・税務専門職団体協働の制度 所得税確定申告期における税務相談 三課税庁等から民間委託を受けて実施する制度

①臨税

②公的年金等受給者に対する説明会 四税務専門職団体独自の制度税務支援制度 五民間の制度 ,⋮割衝民問田伽悶実惚ず樹税樹援助臼例烈慮帽,欝、慮耐酬,莞馴組創翻どにょる申告指導など ・講難懸一恒久的制度、・網掛けなし目期間限定の制度

1課税庁独自の制度

わが国における税務援助・税務支援︵無料相談︶制度の中、課税庁独自の仕組みとしては、 スアンサー、③納税者支援調整官の制度がある。これらは、恒久的な制度である。 ①税務相談室、②タック

(12)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)60 ︵1︶税務相談室 税務相談室は、各国税局や税務署、全国に約一五〇箇所に設けられている。 談や電話による相談や指導を行っている︵財務省組織規則四六六条︶。 税務相談室には、税務相談官がいて、面 ︵2︶タックスアンサー タックスアンサーは国税庁が設けているもので、電話を掛けると、コンピュータが応答するシステムである。約 四五〇の税金に関する解説が収録されている。利用者が電話で聞きたい相談項目のコード番号をプッシュするかあるい はダイヤルすると、解答が聞ける仕組みになっている。現在は、国税庁のホームページ︵HP︶にアクセスして、Q& A形式で解説を閲覧することができる。 ︵3︶納税者支援調整官 ﹁納税者支援調整官﹂は、二〇〇一︵平成二二︶年六月に、国税庁が導入した制度である。七〇人以内の範囲で、調 整官を、各国税局のほか、全国三一の税務署に配置している。納税者支援調整官は、課税庁の仕事や職員の対応に対す る苦情や困りごとなどについて、納税者の立場にたって迅速かつ的確に相談に応じるのが主な任務である︵財務省組織 規則四六六条の二︶。税額などの争いを解決する不服申立手続とは異なり、税務調査や税金徴収などの際の課税庁職員 の納税者に対する対応などについての苦情を処理するのがねらいである。 納税者から苦情の申立があってから三日以内に処理するのが原則である。手続的には、①苦情を申し立てた納税者か

(13)

ら懇切丁寧に事情を聴くこと、②聴取した情報をもとに指摘された職員本人やその上司から、事情を聴取し、解決に努 めること、③調査結果を申立をした人に、迅速かつ正確に説明することなど、一応のルールが示されている。 ただ、納税者支援調整官は、課税庁内部に配置され、独立した権限もほとんどない。どの程度力量を発揮できるのか、 そして税金のムダ遣いにならないのか、疑問が残る。例えば、苦情を申し立てた人に対する報復的な嫌がらせ調査など があった場合、これに介入し納税者を保護できるのかなど、課題が山積している。また、現行の税務調査手続などの抜 本的な整備をしないまま、小手先だけの苦情処理システムを導入しても、逆に、より大きな対立を生み、問題を深刻化 させる可能性もある。先進各国の課税庁の苦情処理制度などをもっと検討し、納税者本位の仕組みに作り直す必要があ る。

2課税庁・税務専門職団体協働の制度

課税庁・税務専門職団体協働の制度としては、①所得税確定申告期における税務相談︵税務援助︶をあげることがで きる。この税務援助制度が課税庁と税理士会との協働に制度であることは、確定申告書送付封筒の裏面に﹁税理士会の 行う無料相談は税務署と共催しています。﹂と表記していることからも容易にわかる。 ︵1︶税務援助制度の沿革 わが国における所得税確定申告期における税務相談、つまり税務援助制度は、直接には税理士業務が広く﹁無償独占﹂ とされていることに起因する。言い換えると、税理士業務は無償であっても税理士以外の者︵非税理士︶は、これを行

(14)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)62 うことが禁止されていることによる。 歴史的にみると、税理士会による無料の税務相談は、商工会議所などから委託を受けて、小規模な納税者を対象に行 われたのが、ことの始まりである。したがって、はじめは税理士会が自発的に実施したものではなかった。 その後、税理士会の独自の事業になったが、一九八○︵昭和五五︶年四月の税理士法改正により、この無料相談は各 税理士会が必ず実施するように義務付けられた。つまり、改正税理士法は、各税理士会の会則に、﹁委嘱者の経済的理 由により無償又は著しく低い報酬で行う税理士業務に関する規定﹂︵法四九条の二第二項九号︶を必ず置くように求め たわけである。 この規定新設の趣旨は、申告書の作成などを行う業務は幅広く﹁無償独占﹂とされていることから︵税理士法二条︶、 通常の税理士報酬を支払う資力の乏しい零細な事業者は特定の税理士に依頼したくとも金銭的に難しい場合を考慮した ことにある。 日本税理士会連合会︵日税連︶は、税理士法が改正された同じ八O年九月に、その会則で、﹁税理士会は本会の定め るところにしたがい、小規模零細納税者︵無償または著しく低い報酬でなければ委嘱することが困難な経済的理由を有 する者をいう。︶に対する税理士の業務に関する施策︵税務援助︶を実施しなければならない﹂︵旧六二条・現六六条一 項︶と定めた。また、﹁税理士会の会員は、その所属する税理士会が実施する税務援助に従事するように務めなければ ならない﹂︵旧六二条・現六六条三項︶とも定めた。さらに、日税連税務援助実施細則なども定められ、国税の確定申 告期における税務相談が援助業務の一環と位置付けられ、今日にいたっている。

(15)

︵2︶税務援助の範囲や実績 税理士会が行う援助業務の範囲は、税務相談、記帳指導および税務書類の作成の指導などである︵日税連会則旧六三 条、現六七条一項︶。 東京税理士会︵東京会︶を例にすると、同会は無償の税務相談を法制化される以前の一九七四︵昭和四四︶年三月か ら実施してきている。税務援助実施規則にしたがい、税理士が関与していない白色の事業所得者︵ただし、譲渡所得の ある納税者を除く。︶で、前年分専従者控除前の所得金額が三〇〇万円以下の納税者を中心に、確定申告の無料相談を 実施している。なお、税理士が行う税務援助で義務化されているのは、二月中旬から三月中旬の﹁所得税確定申告期に おける税務相談﹂に限られている。 ちなみに、平成一六年度の税理士会税務支援事績によると、日税連全体で指導した数は八○万件強である。 3課税庁等から委託を受けて実施する制度 課税庁の業務は、大きく、各種課税処分や滞納処分などのように﹁公権力の行使の伴う業務﹂と、申告書の書き方や 相談など﹁公権力の伴わない業務﹂に分けられる。課税庁が実施する税務援助はまさしく﹁公権力の伴わない業務﹂に 一つにあたり、﹁小さな政府﹂実現の理念の下、民問委託︵8日鍔909”09ω○霞03σq︶が可能である。課税庁等から 民間委託を受けて実施されている税務援助のカテゴリーで捉えられるものとしては、いわゆる①﹁臨税﹂制度と②﹁公 的年金等受給者に対する説明会﹂がある。

(16)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)64 ︵1︶﹁臨税﹂制度 税理士法五〇条は、﹁臨時の税務書類の作成等﹂という表題で、国税については国税局長、地方税については地方公 共団体の長の許可に基づいて、確定申告の期間につき二ヵ月の範囲以内で、税理士以外の者が無報酬で申告書等の作成 やこのための税金計算に関し相談に応じるための申請ができると定めている。もっとも、許可が得られるものは、自治 体の職員、民法法人︵社団法人、財団法人︶、農協、漁協、事業協同組合ないしは商工会などの役員や職員に限られて いる︵税理士法施行令一四条︶。 ちなみに、各税理士会は、税理士会による税務援助の着実な実施と引き換えに﹁臨税﹂に廃止の働きかけを行ってき ている。このため、表向き、﹁臨税﹂の数、とくに農協職員がなる数は、以前に比べかなり減少する傾向にある。 ︵2︶公的年金等受給者に対する説明会 公的年金等の受給者は、年末調整のある給与所得者などとは異なり、確定申告を必要とする場合が多い。高齢社会が 年々進むにしたがい、高齢者の確定申告支援制度の充実は課税庁の納税者サービスにとり重い課題となってきている。 こうした状況を踏まえて、二〇〇五年秋から、各国税局︵沖縄国税事務所を含む。以下同じ︶は、入札よる年金受給者 向けの申告指導プログラムである﹁公的年金等受給者に対する確定申告説明会﹂の民間委託を開始した。名古屋国税局 では、人材派遣の民間会社︵株式会社︶が落札した他は、財団法人日本租税協会が落札した。これら落札者は、税理士 の業務独占制度と国税局の落札条件を勘案し、︵一般に、謝金一万八、○○○円程度+定額の交通費︶で講師となる税理 士を募集し、五日間、全国各会場で説明会︵実質的には税務相談︶を実施した。

(17)

4税務専門職団体独自の税務支援制度

日税連は、二〇〇五︵平成一七︶年四月の臨時総会で、税務援助関連事業の抜本的な改革、支援制度の整備を発案し た。そして、会則の一部を改正し、従来の税務援助の名称を﹁税務支援﹂と改め、これまでの課税庁との協働の﹁税務 援助﹂に加え、新たに会独自の﹁税務指導﹂の事業の開始を決めた。日税連の会則の改正にしたがい、各単位会も同様 の変更を加えるための会則改正を行った。 東京税理士会は、二〇〇六︵平成一八︶一月一六日から、同会独自の活動として、これまでの確定申告期︵期間限定 の支援制度︶とは異なる、一般納税者を対象とした恒久的税務支援プログラムを開始した。このプログラムにおいては、 東京税理士会会館で、午前一〇時から午後四時まで、ボランティア募集に応じた会員税理士が一般納税者からの電話相 談ないしは面談に無償で応じることになっている。 ちなみに、税理士会がこうした支援制度の整備に努めた背景には、二〇〇三︵平成一五︶年度の税制改正で、消費税 の免税事業者の範囲が課税売上高一、○○○万円以下となり、かなりの小規模事業者も申告対象になり、二〇〇六︵平 成一八︶年二月に始まる確定申告期から新たに一五〇万件の申告が増えると見込まれた事情がある。 5﹁年末調整﹂は強制的な無償の税務支援 給与所得者は、毎月の給与、それに賞与をもらう際には、源泉所得税が天引徴収される。ただ、月々源泉徴収された 所得税の一年間の合計額と、年税額とはふつう一致せず、過不足が生じる。その原因は、源泉徴収は、﹁源泉徴収税額 表﹂のアバウトな平均的な数値を使って行われているからである。また、年の途中で、こどもが生まれたとか扶養親族

(18)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)66 の数に異動があるケースもある。この場合でも、その異動が生じる前︵年初︶の事実に基いて税額が引き続き月々源泉 徴収されることも一因である。さらに、配偶者特別控除や各種保険料控除などは、月単位ではなく、年末に一括して控 除することになっていることも一因である。 いずれにしろ、こうした不一致ないし過不足を精算する手続を﹁年末調整﹂という︵所得税法一九〇条以下︶。年末 調整は、勤め先︵雇用主・給与等の支払者︶が行うことになっていることから、給与所得者だけに適用あるものである。 年末調整は、その異動が生じる前︵年初︶の事実に基づいて月々源泉徴収されていた税額を、異動後︵年末時︶の事実 に引き直して再度計算する手続である。年末調整の結果、過不足額については、一二月の給与として還付または一二月 の給与から追加徴収されることになる。 年末調整によって、多くの給与所得者は、還付申告や追加税額の申告・納付手続を省くことができる。こうした制度 は、全員確定申告を前提とする諸国にはないものである。年末調整は、雇用主サイドからみれば、無償の税務支援業務 の強制とみることができる。このような雇用主が行う確定申告に代わるような行為は、税理士法の絶対独占との関係で は、どう解すべきなのであろうか。仮に、法律︵所得税法一九〇条以下︶で税理士法の適用除外として認められている 措置と解するべきだとする。この場合、この無償の税務支援サービスにより、国は二〇〇五︵平成一七︶年度に一二兆 円を超える税収を確保しているわけである。明らかに﹁除外﹂の規模が大き過ぎる。こうした実情にあるのにもかかわ らず、たとえ無償であったとしても、確定申告書の作成業務は、政府規制により税理士の絶対独占業務として認められ たものであり、非税理士は一切手を触れることはまかりならぬと言い張るのを放置しておいていいのかどうかが問われ てくる。まさに、﹁民間にできることは民間に﹂﹁税理士以外でもできることは国民・納税者に﹂任せるための規制緩和

(19)

が求められているのではないだろうか。

三アメリカの税務援助・税務支援制度

アメリカ合衆国︵以下﹁アメリカ﹂という。︶においては、わが国の給与所得者に対する年末調整に相当する制度が なく、原則として全員確定申告をする形となっている。ごうした全員確定申告を建前とする納税制度のもとでは、大量 に行われる確定申告が期限内に終えられるようにすることは、法令遵守を中核とした公共政策上も重要な課題である。 大量の無申告者を出さないためにも、きめ細かな民間の納税申告支援制度が求められる。 アメリカにおいては、民間の納税申告支援業務については、税務専門職に加え、民間の納税申告書作成業者︵国Φ豊旨 呼8費Rω︶が有償で第三者のための納税申告書の作成を行っている。さらに、民問の有償の納税申告書作成業者に依 頼する資力のない納税者のために、非専門職の市民ボランティアを活用した民間の税務援助制度がよく整備されている。 アメリカの場合、わが国とは対照的に、﹁税務書類の作成﹂や﹁税務相談﹂業務に対し、強い政府規制をかけていな い。一定の警察規制はあるものの、こうした業務は税務専門職の絶対独占にはなっていない。したがって、こうした業 務は、原則として有償・無償を問わず、能力があれば誰でもできる。 アメリカにおける代表的な民間の納税申告書作成業者としては、H&Rブロック社︵コ帥園匹○魯︶があげられる。 同社は、巨大な申告書作成業者である。全米に九、○○○余りの営業所を有し、二〇〇一年度をみても一、六四四万件余一

(20)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)68 りの所得税申告書の作成を行っている。・納税者から提出された申告書の七件に一件は、同社が関与レ作成した結果になっ ている。 こうした、コマーシャル・べースの有償の納税申告書作成業者に加え、他方では、大量のボランティアを動員した無 償べースでの各種税務支援プログラムが実施されている。連邦所得税の申告納税に関する無償の税務支援プログラムは 多岐にわたり、きめ細かな制度となっている。アメリカにおける無償の税務支援プログラムは、従来、﹁申告期﹂にお ける﹁税務書類の作成﹂およびその作成に係る一部﹁税務相談﹂に限定されてきた。しかし、今日.無償の税務支援の 範囲は、﹁申告後﹂支援、すなわち、税務調査、税務争訟、徴収手続などに関する﹁税務代理﹂の領域にまで広がりを みせてきている。 このように、アメリカにおける税務支援制度の一つの特徴は、﹁申告前︵RΦ−旨日σQ︶﹂支援や﹁申告期︵旨一鑛︶﹂支 援はもちろんのこと、﹁申告後︵8ωけ−白Bσq︶﹂支援にまで及んでいることである。わが国のようにもっぱら﹁申告期﹂ 支援に特化した制度とは大きな違いをみせている。 今日、こうした無償の各種税務支援プログラムは、アメリカにおける申告納税制度を維持・発展させる上で必要不可 欠なものとなっている。 連邦税上の税務支援プログラムには、おおまかにいうと、次のようなものがある。

(21)

︹図表六︺アメリカの税務支援プログラムの種類 ⑦⑥⑤④③②① ボラシティア所得税援助︵VITA目<○ξ筥8H冒oOBΦ↓輿︾器一ω鑓口8︶プログラム 高齢者向け税務相談︵TCE”↓貰○○仁pω9pσq癌R匹qR辱︶プログラム 学生税務相談所︵STC目ω9号艮↓貰Ω一昆o︶プログラム 銀行・郵便局・図書館︵BPOL目ゆ婁︸勺○ωけ○巷oρきΩ口ぼ⇔蔓︶プログラム 低所得納税者相談所︵LITCHい○≦−日8目①↓畏b鎚RΩ巨8︶プログラム ーRS納税者権利擁護サービス︵↓畏b鎚R︾牙08溶留宅一〇Φ︶ IRS納税者権利擁護官サービス︵日貰冨<R︾牙08房留箋一〇Φ︶︵n︶

ーアメリカの税務専門職制度

すでに触れたように、わが国の場合、政府規制により①税務代理、②税務書類の作成および③税務相談は、原則とし て非税理士は業務として行えないものとされている。それは、これらの業務は税理士の﹁無償独占﹂とされていること に起因すると解されている。 アメリカの場合、税務の専門職としては、①公認会計士︵CPA”OR段一a勺仁菖o>82P鼠耳︶、②弁護士 ︵>詳○巨亀凶叶白m≦︶および③登録税務士︵EAH国目〇一一8︾σqΦ筥︶などをあげることができる。これらのうち、①と ②は各州べースの資格である。これに対して③は連邦︵国︶べースの資格である。 連邦課税庁︵内国歳入庁、IRS判H旨①毎巴幻①<窪器ωΦ暑一8︶は、納税者の依頼を受けてIRS所管の業務に関 して、依頼人の権利、特権または債務について、IRSの職員に対する表示行為を代理できる者を、上記①、②、及び ③などに限定している。つまり、﹁内国歳入庁の所管事項について他人を代理して︵税務代理︶業務ができる専門職﹂

(22)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)70 を制限し、その専門職の独占業務とする施策を実施しているわけである。 具体的にどのような専門職が﹁内国歳入庁の所管事項に係る業務︵℃声&8σROお9①H旨Rロ巴勾Φ<Φロ器留署一8︶﹂ を代理できるのかについては、法律︵>99ZOダ。 。﹂。島お幹鉾宙。。図ω①9︵Q︶︶および連邦財務省規則︵↓お器葭く U8けΩ容巳鶏器。、以下﹁サーキュラー二三〇﹂という。︶に定められている。 これら連邦の法令によると、①弁護士および②公認会計士︵CPA︶は、申請すれば、IRSの下で税務代理できる 資格を自動的に認められる。これらの者の他に、③登録税務士︵EA︶の資格を有する者もIRSの下で税務代理でき る資格が認められる。EAの資格は、非CPAで試験に合格した者あるいは前IRS職員で、サーキュラー≡二〇に定 める職歴など資格要件を充足する者が取得できる︵サーキュラー壬二〇第一〇・三︵c︶、第一〇・四および第一〇・ 六︶。また、④登録保険計理士︵国霞9a>oε費<︶、つまり保険加入者のために保険料率や配当などを計算し、スキー ムをたてる専門職である保険計理士︵8ε象<︶で、保険計理士登録合同委員会︵δ一筥㊥8a噛R夢①国目9B①艮9 >oε舘δω︶に登録した者、⑤その他特例として税務代理が認められる者も、限定された範囲でIRS所管の業務を行 うことができる︵サーキュラー二三〇第一〇・三︵d︶および︵e︶︶。 ちなみに、税務代理の対象となる﹁内国歳入庁の所管事項に係る業務﹂とは、﹁内国歳入庁が執行する法律若しくは 規則の下で、依頼人の権利、特権又は債務に関して、内国歳入庁又はその上級職員若しくは職員に対する表示行為に係 るあらゆる事項を指す。当該表示行為とは、必要書類の作成及び提出、内国歳入庁との応対及びやり取り、並びに協議、 審査及び折衝における依頼人の代理等を指す。﹂︵サーキュラー二三〇第一〇・二︵a︶︶。 こヶした定めからも明らかなように、税務代理以外の、例えば納税申告書の作成やそれに係る税務相談などの業務は、

(23)

﹁内国歳入庁の所管事項に係る業務﹂ を有しない者も行うことができる。 に該当しない。したがって、①弁護士、②公認会計士、③登録税理士などの資格 ︵1︶﹁納税申告書作成者﹂に対する規制 アメリカにおいては、①弁護士、②CPAや③EA、さらには④登録保険計理士や⑤その他特例適用者のほか、⑥有 償で他人のために納税申告書の作成することを主な業務とする業者︵申告書作成業者、勾①εヨ即8碧R︶がいる。 アメリカにおいては、一九七六年以前は、有償・無償を問わず、他人のための納税申告書の作成は誰でもでき、申告 書の作成などについて政府規制はほとんどなかった。しかし、申告書作成業者による虚偽記載などが問題となったため に、一九七六年に、“↓霞知のε旨零8費R︵TRP︶〃という職種分類が設けられ、納税申告書の作成業務に対して 初めて本格的な政府規制︵TPR規制︶が加えられることになった。ちなみに、わが国では、﹁TRP﹂の文言は﹁納 税申告書作成者﹂あるいは﹁納税申告書準備者﹂と訳されている。 内国歳入法典︵IRC目H昌R⇒巴勾Φく窪器OOq①○犠一。。 。9以下﹁法典﹂ともいう。︶では、TPR規制の対象を ﹁所得税申告書作成者︵β8筥①叶貰お9旨霞8巽R︶﹂としており、また、所得税申告書作成者とは“有料で所得税 申告書もしくは所得税還付申告書を作成する者または有給でそれらの作成にあたる者を一人以上雇用する者”を指すと 定めている︵法典七七〇一条︵a︶︵三六︶︵A︶︶。したがって、納税申告書作成業者はもちろんのこと、①弁護士、② CPA、③EAなどのカテゴリーにある専門職も、法定要件に該当すると、TRP規制の対象となる。 このように、現在、アメリカでは、有料で所得税の納税申告書の作成を行うなど一定の法定要件︵TRP要件︶に該

(24)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006〉72 当すると、所得税申告書作成者の職種に分類され、法律上の規制を受け、一定の受忍義務を負わなければならない仕組 みになっている。 わが国との比較で見てみると、わが国の場合には﹁税務書類の作成﹂が税理士の﹁無償独占﹂業務とされている。し たがって、非税理士が無償であっても、他人のために納税申告書の作成業務を行うと税理士法に触れることになるとさ れる。これに対して、アメリカの場合には、納税申告書の作成など一定の﹁税務書類の作成﹂については、①、②ない し③などの専門職業人のみならず、有償、無償を問わず、原則として非専門職の者も、広くこれを行うことができる仕 組みになっている。ただ、有償で申告書の作成などを行う者︵TRP要件該当者︶については、一定の受忍義務を負う ように求められる構図になっている。 また、①弁護士で、有償で依頼人のために税務書類に作成を行った場合には、TRP規制に加え、アメリカ法曹協会 ︵ABA︶の弁護士責任規程︵酷>○○留R国08誘δp巴勾①800匹σ旨蔓︶を遵守するように求められる。一方、② 公認会計士で、依頼人のために税務書類の作成を行った場合にも、TRP規制に加え、さらにアメリカ公認会計士協会 ︵AICPA︶の会計士倫理規程︵>HO勺>○○号9零98ω一〇p巴蝉ぼ8︶や税務に関する責任宣言︵SRTPH ωけ讐①B魯房9因窃8話ま︸往8β↓霞勺醤&8︶を遵守するように求められる。③EAも、毎年、申告書の作成業 務に係る事項を含む一六時間の専門職研修を受けることが義務付けられている

(25)

︹図表七︺アメリカ税務専門職と業務独占との関係 ・﹁税務書類の作成﹂業務→納税申告書作成者︵TRP︶規制 ・﹁税務相談﹂業務 ≒税務代理﹂業務﹁課税庁所管事項について他人を代理して業務ができる専門職﹂ ・課税庁への不服申立て①、②、③、④、⑤ ・租税裁判所での訴訟代理①、CPAなどで租税裁判所の特例試験合格者 ・裁判所での訴訟代理① ︵2︶TRP規制の目的とその対象 すでに触れたように、TRP︵納税申告書作成者︶規制は一九七六年に実施された。それ以前は、対価を得て他人の ために所得税申告書を作成したとしても、その者は申告書に署名などをする必要はなかった。このため、虚偽の申告書 が作成されても、その作成元を追跡するのに困難を極めることも多々あった。 そこで、一九七六年の規制立法で、有償で他人の所得税申告書を作成し、一定の要件に該当する者を﹁TRP︵納税 申告書作成者︶﹂というカテゴリーに囲い込み、政府︵行政︶規制を加えることにしたわけである。主な規制措置を掲 げると、次のとおりである。

(26)

白鴫法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)74 ︹図表八︺TRP規制の概要 ①記録の作成・保存義務︵田OOωΦ冨8日σq知巳①ω︶ITRP規制の対象となる者には、作成した申告書への署名、その申告書の コピー︵写し︶の保存、顧客リストの作成・保存などを義務付けた︵法典六一〇七条︶。 ②依頼人情報の不正開示に対する制裁ーTRPが依頼人情報を本人の同意なしに開示することを禁止するとともに、違反行為に は制裁をかすことにした︵法典七一二六条︶。 ③虚偽申告書作成に対する制裁1故意に虚偽の申告書を作成した場合などには処罰することにした︵法典六六九四条および 六六九五条︶。 ④IRSに対する差止請求権の付与−前記①の受忍義務違反、②ないしは③に該当する不正行為や違法行為があった場合には、 IRSは連邦地方裁判所に対し差止請求ができることとした。また、例えばTRPにあてはまる者が非弁護士ないしは非CPA である場合には税務代理ができない。それにもかかわらず、当該TRPが税務代理を行っているときには、IRSが裁判所に差 止命令を求められる︵法典七四〇七条︶。 ︵3︶TRP該当者とは 内国歳入法典によると、﹁納税申告書作成者﹂とは、﹁報酬を得て、法典サブタイトルAの下で課される租税の納税申 告書若しくは還付申告書を作成する者又は当該申告書を作成するために報酬を支払って一人以上の者を雇用する者を指 す﹂とされる。また、﹁当該納税申告書若しくは還付申告書の主要な部分を作成した場合には、ここでいう納税申告書 若しくは還付申告書の作成とみなされる﹂︵法典七七〇一条︵a︶︵三六︶︵A︶︶。ただし、単に﹁活字に打ったり、複 写したり若しくはその他技術的な補助をする者﹂、﹁継続的かつ正規に雇用されている者で、その雇用主︵又はその雇用 主の役員若しくは被用者︶の納税申告書若しくは還付申告書を作成する者﹂などは、納税申告書作成者にあたらない ︵法典七七〇一条︵a︶︵三六︶︵B︶︶、とされる。 いずれにせよ、TRP規制の対象になるかどうかは、まず﹁報酬を得て﹂、つまり﹁有償で﹂あるいは﹁有料で﹂他

(27)

人の申告書の作成しているかどうかがキー・ポイントとなる。また、申告書であっても、規制の対象となるものは、 ﹁所得税︵厳密にいえば、個人所得税および法人所得税︶﹂に限られる。このことから、これ以外の税目、たとえば贈与 税や遺産税、個別消費税など、に関する申告書については、それを他人の求めに応じて有償で作成したとしても、TR P規制の対象とはならない。 2新たな専門職﹁登録申告書作成士﹂制度創設の動き 二〇〇四年に、全米で約一億三千一〇〇万件の確定申告書が提出され、その内、約七千万件が民間の納税申告書作成 業者︵おε旨賞8窪R︶の手で作成されている。つまり、五割を少し超える数の確定申告書が、有償の納税申告書作 成業者、残りが、納税者本人や無償の申告支援ボランティア︵VITA、TCAなどへの︶参加者の手で作成されたこ とになる。 一九七六年にTRP︵納税申告書作成者︶規制がはじまってから、他人から依頼を受けて虚偽の申告書を作成した業 者は処罰されるようになった。それでも、民間の納税申告書作成業者の手による虚偽の還付申告が増えていった。罰則 が強化されたが、不正の件数は一向に減らない現状にある。 税金の職業専門家とされるCPA︵公認会計士︶、EA︵登録税務士︶、弁護士などは、有償で他人の納税申告書を作 成すると、TRP規制の対象となる。ただ、これら専門職が虚偽申告書を作成して摘発されるケースは非常にまれであ る。問題となるのは、こうした専門職以外で、有償で納税申告書作成を生業とする人たちである。この人たちの法令遵 守︵コンプライアンス︶・職業倫理などQC︵品質管理︶の悪さがやり玉にあげられている。そこで、この人たちが行

(28)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)76 う納税申告書作成業務を規制しようという動きがでてきたのである。規制のやり方として、この人たちを対象に新たに ﹁登録申告書作成士︵EP目Φ畦99實8貰R︶﹂という資格を設け、連邦財務省の監督権限が及ぶようにしようとい うのである。 新たな﹁登録申告書作成士︵EP︶﹂という公的専門職資格︵連邦資格︶を設けるために、法案﹁二〇〇五年納税者 保護及び支援法案︹上院法案八二三号︺︵¢。 。。 。ド↓冨↓貰冨<R零9①&○ロきα>ω匹ω鼠pO①>9988︶が、連 邦議会︹第一〇九議会第一会期︺に提出された。同法案は、二〇〇六年六月末に上院財政委員会を通過して、現在にい たっている。 確かに、アメリカでは、どの分野でも以前に増して法令遵守・職業倫理が厳しく問われるようになってきている。こ うした流れに素早く乗り、課税庁︵IRS︶は、VITAやTCEのような無償の申告支援プログラムに参加を希望す る市民ボランティアの研修にも力を入れてきている。年次べースの研修ガイド﹃税金の学習と連帯︵口嘗節U8ヨ ↓貰Φω︶﹄を発行し、能力検定試験の実施を含め﹁納税申告書作成ボランティア向けプログラム︵VTPP”く○ピ昌①R 日霞即8象呂○⇒国○σq建B︶﹂を実施してきている。 このような法令遵守強化の流れを織り込んだ上で考えること、有償で納税申告書作成を生業とする人たちが、法令遵 守・職業倫理などが不透明まま業務をやり続けている現状がやり玉にあげられたのも、偶然ではないようにみえる。 検討されている﹁登録申告書作成士︵EP︶﹂資格制度では、有償で他人の納税申告書の作成を業としている人が規 制の対象となる。もっとも、CPA︵公認会計士︶、EA︵登録税務士︶、弁護士などの専門職、さらにはVITAやT CEのような無償の申告支援プログラムヘの参加者は、EPの資格がなくとも、従来どおり申告書の作成を行うことが

(29)

できる。 この法案では、有償の納税申告書作成などの業務に対しても、サーキュラー二三〇に定められた職業倫理基準の適用 を提案している。つまり、新たに創設が検討されているEP︵登録申告書作成士︶には、CPA︵公認会計士︶、EA ︵登録税務士︶、弁護士など現在税務代理に従事している人たちに適用されているのと同等の職業倫理基準を適用するこ とにしているわけである。 また、法案では、試験制度が設けられ﹁EPになるには、連邦税の申告書の作成に関する知識、専門職倫理に関する 知識を問う試験に合格しなければならないとしている。さらに、開業しているEPは、IRSの専門職責任局︵OPRH O睡89国98詮OO巴勾88拐一σe受︶の監督を受け、年次の研修が義務化されることになっている。 この法案は、EA︵登録税務士︶の会員団体であるアメリカ登録税務士会︵NAEA目Z豊OP巴>ωωOo醇一〇〇9 両霞9a>σq窪房∼会員約四万人︶の後押しで、連邦議会に提出されたものである。いわゆる﹁税務書類の作成﹂業務 の“有償独占”につながる提案である。市場競争を避け、業界益を新たな政府規制で護ろうとしているのか、納税者の 利益を護ろうとしているのか、さまざまな見方があるところである。 3アメリカの税務援助・税務支援制度の特質 これまで見てきたところからも分かるように、アメリカにおいて、﹁税務書類の作成﹂を行った場合には、TRP ︵納税申告書作成者︶として政府規制の対象となる。しかし、この場合に規制を受けるのは、﹁有償﹂で﹁所得税﹂に係 る納税申告書を作成したときに限られる。したがって、無償の税務援助ないし税務支援において、他人のために所得税

(30)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)78 の還付申告書の作成にかかわったとしても、TRP規制は受けないことになる。 この点について、連邦所得税規則︵日8B①↓貰勾品三普○田︶では、TRP規制の﹁適用除外﹂例を定めている。 具体的には、課税庁︵IRS︶の職員が公務として遂行する業務、さらには無償で行われる所得税申告書の作成などが 掲げられている。]連の税務援助ないし税務支援プログラムにおいて無償で行われる申告書の作成も、TRP規制の適 用対象外と定められている︵規則第三〇一・七七〇一−一五︵a︶︵七︶︶。 すでに触れたように、わが国の場合、﹁税務書類の作成﹂は、政府規制により税理士の﹁無償独占﹂業務とされてい る。このため、税務援助は、無償であったとしても、原則として非税理士はこれを行ってはならないとされる。こうし たことから、民間の税務援助ないし税務支援業務については税理士会が税理士有資格者を動員し、人海戦術で臨むとい う体勢にある。これは、ある意味では、わが国のような年末調整があり全員確定申告が原則でない体制化において許容 されるやり方ともいえる。 これに対して、アメリカの場合、無償の税務書類の作成については政府規制の対象となっていないことから、無償の 税務援助ないし税務支援については、課税庁︵IRS︶が主導し、民間ボランティアを使って実施する体勢にある。わ が国とは異なり、登録税務士連合会︵NAEA︶ないし公認会計士協会︵AICPA︶など税務の専門職団体が有資格 者を動員して実施する体勢にはない。これは、全員確定申告が原則の体制化においては、無償の納税申告書の作成にま で強い政府規制をかける公共政策を選択することには合理性を見出しえない、との判断によるものと思われる。

(31)

︵1︶税務争訟代理 アメリカにおいては、﹁内国歳入庁︵IRS︶の所管事項に係る業務﹂について税務代理ができる者は、原則として、 ①弁護士、②公認会計士︵CPA︶、ないし③登録税務士︵EA︶に限られている。したがって、IRSに対する不服 申立の代理は、これらの専門職のみができる原則になっている。 アメリカの連邦租税裁判所︵↓霞OO自叶︶は、司法機関の一つとして制度化されている。つまり、合衆国︹連邦︺ 憲法一条にしたがい、内国歳入法典サブチャプターC︹七四四一条以下︺の下で創設されている司法裁判所である。 ちなみに、連邦税の課税処分を裁判所で争う納税者は、租税事件だけを取り扱う特別裁判所である連邦租税裁判所か、 普通裁判所である連邦地方裁判所︵CφU一ω巳900員け︶ないしは連邦請求裁判所︵CφΩ巴Bω02邑のいずれか を選択した上で提訴することができる。租税裁判所の場合には、陪審がないこと、本人訴訟ができること︵連邦租税裁 判所業務・手続規則第二四︵四︶︶、普通裁判所︵連邦地方裁判所︶に比べ訴訟手続が簡略であること︵同規則第七〇 ︵a︶︵一︶︶、さらに執行停止が原則であること︵つまり、増差税額を納付しないまま提訴できること︶などが特徴であ る。 租税裁判所はワシントンD・Cをべースとしているが、判事が国中を巡回し審理を行っている。なお、租税裁判所は、 弁護費用の負担能力がない納税者に弁護士をつけてやる権限を有していない。これが、広く本人訴訟を認めている主な 理由といえる。もちろん、資力のある納税者は、弁護費用を捻出し、訴訟代理人に訴訟手続を委任することができる。 ここで問題になるのは、司法機関である租税裁判所で、どのような資格の税務の専門職が訴訟代理を行うことができ るのかである。

(32)

白鴫法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)80 ︵a︶租税裁判所での訴訟代理 ところで、わが国の場合、国税不服審判所は国の行政機関の一つとして制度化されている。税理士は、国税不服審判 所での税務代理が認められている︵税理士法二条一項一号︶。 これに対して、アメリカの租税裁判所は司法機関の一つとして制度化されている。したがって、CPAないしはEA のような職業専門家やそれ以外のボランティアなどの﹁非弁護士︵8p舞8旨①窃唐−冨≦︶﹂が、弁護士と同等に租税 裁判所で訴訟代理ができるのかどうかが問題となる。とりわけ、アメリカの場合には、後に触れるように、税務援助な いし税務支援が訟務にも及ぶ仕組みにもなっていることから、この点は重要なポイントとなる。 租税裁判所での訴訟代理の資格については、租税裁判所執務・手続規則︵勾巳窃9評8江8きα国08q員①︶に定 められている。端的にいえば、弁護士は、その専門職としての資格から、当然に租税裁判所での訴訟代理など﹁租税裁 判所の所管事項に係る業務︵bβ&8σROお日①oO∈◎﹂ができる。一方、CPAやその他の者、つまり﹁非弁護士﹂ は、筆記試験に合格した者のみが﹁租税裁判所の所管事項に係る業務﹂を行うことができることになっている︵規則第 二〇〇︶。 ︵b︶非弁護士に対する資格試験︵特例試験︶制度 CPAなど﹁非弁護士﹂は、訴訟代理など﹁租税裁判所の所管事項に係る業務﹂を行う場合には、租税裁判所が実施 する試験に合格し、その資格を得るように求められる。この点について、租税裁判所業務・手続規則タイトル第二〇〇 では、次のように定める。

(33)

規則第二〇〇︹業務を行う資格付与および定期的な登録費用︺ ︵a︶要件スー︶原則“租税裁判所の所管事項に係る業務を行う資格申請者は、租税裁判所に対して、その者が善良 な倫理感および名声を有し、かつ案件に係る表示行為および訴訟において他人を代理するに必要な要件を備えているこ とを証明しなければならない。また、申請者は、本規則第二〇〇の次の要件を充足しなければならない。 ︵2︶弁護士一弁護士は、すべてを記載済みの申請書に、租税裁判所が規定した手数料︵別表皿参照︶、および資格 を付与した所轄裁判所の書記官が発行した有効な証明書を添えて租税裁判所の資格担当書記官に申請し、業務を行う資 格を得ることができる。当該有効な証明書には、その申請者が、合衆国最高裁判所または合衆国のいずれかの州、ワシ ントンD・C、いずれかの準州、領域、領土にある最高位若しくは所轄の裁判所の所管事項に係る業務資格を有してお り、かつ名声ある弁護士会員であることを証するものとする。 ︵3︶その他の申請者一申請者は、弁護士でない場合には、すべてを記載済みの申請書に、租税裁判所が規定した手 数料︵別表皿参照︶、を添えて申請しなければならない。また、当該申請者は、業務資格が認められる条件として、租 税裁判所が行う筆記試験により自らが要件を充足する旨を証明しなければならない。さらに、租税裁判所は、当該申請 者に対し、口頭試問により同様の証明を求めることができる。 ︵b︶申請書一租税裁判所の所管事項に係る業務を得る資格申請書は本裁判所所定の書式によるものとする。 およびその他必要な情報は、次のあて先に請求し、入手し得る。 申請書式

(34)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)82 資格担当書記官︵︾q目器δ諺ΩΦ詩︶ 合衆国租税裁判所︵d巳叶巴幹讐①↓霞○○霞叶︶ “OOωΦOOPqω“Z●≦● ≦ゆω﹃日σQδPU●○図O曽↓ ︵c︶推薦人”試験により資格の付与を受ける申請者は、租税裁判所の所管事項に係る業務が認められるためには、少 なくとも二人の推薦を受けなければならない。各々の推薦人は、租税裁判所の資格担当書記官あてに直接推薦状を送付 するものとする。この場合、当該推薦状は部外秘情報として取り扱われる。推薦人は、申請者が︵d︶に定める筆記試 験に合格した通知が行われた後速やかに推薦状を送付するものとする。推薦人は、申請者について自らが知りえている こと、申請人の倫理観および名声に関する意見、並びに租税裁判所の所管事項に係る業務についての申請者の適格性に 関する意見を、十分かつ率直に述べるものとする。租税裁判所は、推薦人が二人以下の場合においても申請書を受理す る裁量権を有するものとする。 ︵d︶筆記試験一筆記試験は、弁護士以外の申請者に対し、二年を超えない毎の回数で実施する。試験の日程は、少な くとも実施の六ヵ月前までに公示するものとし、租税裁判所が当該試験の日時を発表するものとする。租税裁判所は、 申請書の形式が整っている場合には、各申請者に対し出席すべき場所と日時を通知する。また、申請者は、当該試験を 受ける証拠として、試験官に対しその通知書を呈示しなければならない。

(35)

︵e︶小切手および郵便為替一申請手数料は、 ﹁合衆国租税裁判所書記官﹂あてとする。 小切手または郵便為替で支払われるものとする。この場合に、支払先は ︵f︶資格付与一申請者は、資格申請を承認されかつその他の申請要件を充足した場合には、租税裁判所が定める宣誓 若しくは宣誓に代わる確約をした上で、租税裁判所の所管事項に係る業務を行う資格が付与される。当該申請者は、資 格証書を受け取る権利があるものとする。 ︵9︶住所の変更一租税裁判所の所管事項に係る業務を行う資格を付与された者は、送達上の事務所の住所に変更が生 じた場合には、速やかに資格担当書記官に対し通知するものとする。弁護に出廷する者の記録番号を得るための個別通 知申請については本規則第二一︵b︶︵四︶を参照のこと。 ︵h︶法人および事務所の不適格性一法人および事務所には、 格が付与されない。 租税裁判所の所管事項に係る業務が認められずまたは資 ︵i︶定期的な登録手数料一︵一︶租税裁判所の所管事項に係る業務を行う資格が付与され業務を行える者 ︵頁碧蜂δoR︶は、定期的な登録手数料を支払うものとする。登録手数料の額および支払回数は租税裁判所が決定する ものとする。ただし、その額は、暦年ごとに三〇ドルを超えないものとする。書記官は、本規則の定めを遵守しないす

(36)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)84 べての業務を行える者の氏名に入った不適格者一覧を備え付けるものとする。業務を行える者で、不適格者一覧に記載 されている者は、租税裁判所において訴訟を開始したりまたは係争中の事件を弁護するために出廷はできないものとす る。業務を行える者で、不適格者一覧に記載された者の氏名は、現在まで未払いとなっている登録手数料が支払われ、 かつすべての手続が継続状態になるまで当該一覧から削除されないものとする。定期的な登録手数料は、業務に従事し ているかどうかにかかわらず、租税裁判所の所管事項に係る業務を行う資格が付与されている者はすべて支払わなけれ ばならない。支払いの書式については、本規則第一一を参照のこと。 ︵2︶本規則第二〇〇︵i︶︵一︶に規定する手数料は、本裁判所が懲戒問題を追及するために独立した弁護士を雇 う場合に適用されるものとする。 ︵c︶筆記試験科目 すでに触れたように、租税裁判所執務・手続規則第二〇〇︵d︶によると、非弁護士に対する﹁租税裁判所の所管事 項に係る業務﹂を行うための資格試験は、二年を超えない毎の回数で実施し、少なくとも実施の六ヵ月前までに実施日 時を公示することとされている。かつて、租税裁判所執務・手続規則第二〇〇︵a︶︵三︶は、受験回数を一生涯に三 回までに制限していた。しかし、受験者から訴訟が提起され、一九九六年七月三日に租税裁判所は受験回数制限を廃止 パルロ した。 また、試験科目およびそれぞれの割合は次のとおりである。

(37)

および改正を含む︵二五%︶ OOoΩ仁9]を含む︵一〇%︶ ー租税裁判所執務・手続規則胃霞OO貫叶勾巳89勺鍔&8㊤09即08α員の]、 a ( ー連邦証拠規則﹃巴R巴肉三89団く箆①⇒8]︵二五%︶

b

( ー連邦税﹃9R巴↓霞象δ邑︵四〇%︶ C ( ー法倫理F畠巴団9一8]、アメリカ法曹協会の模範弁護士行動規程[>団>

d

( 当該規則に対する暫定の新規則 ζ○Ω①一即仁一Φω○跳始汗○哺①ωω一〇口餌一 これらの筆記試験の内容は、誤解を恐れずに和風に解すれば、㈲裁判所法、㈲民事訴訟法、◎税法、㈹弁護士倫 理、といった科目にあたるといえる。したがって税務専門の“トライアル・ロイヤー︵訴訟弁護士︶”としての資質の 有無を問う試験とみることができる。なお、資格申請をするためこの試験を受ける者は、過去問題集を入手することが できる。この場合、裁判所の書記官に一頁あたり五〇セントを支払うように求められる。 ︵d︶筆記試験の合否判定および答案の処置 受験者は、この試験に合格するためには、各科目とも七〇%以上の正解率を得るように求められる。この試験に合格 しない資格申請者には、租税裁判所の所管事項に係る業務を行う資格が付与されない。裁判所は、申請者がこの試験に 合格した後に、推薦状やその他の事実を審査して、資格の付与を行う。 筆記試験に不合格になった者は、一頁あたり五〇セントを支払って、自分の回答と点数のコピー︵写し︶を入手する

(38)

白鴎法学第13巻2号(通巻第28号)(2006)86 ことができる。当該コピーの請求は、裁判所が試験の不合格通知を発してから六〇日以内に受領されなければならない。 また、裁判所は、申請者が不合格の通知を受けてから九〇日以内に採点に誤りがあることを申し立てない限り、試験結 果について見直しを行うことはない。不合格となった申請者については、試験後にいかなる意見陳述や面談の機会も与 えられることはない。 すべての試験の答案は、不合格となった申請者からの申立があり、その事案が未解決であるものを除いて、各人に対 し合格、不合格通知が行われてから一二〇日後に廃棄される。見直しを求めた申請者からの答案は、裁判所がその申請 に対し最終決定を行ってから六〇日後に廃棄される。 ︵e︶非弁護士に対する資格試験の課題 すでに触れたように、合格には、各科目とも七〇%以上の正解率に達しなければならない。一九四三年の租税裁判所 創設以降、﹁租税裁判所の所管事項に係る業務﹂を行うことが認められた︵有資格者︶の総数は、二〇〇〇年現在で、 弁護士は二二万人を越える。これに対し、非弁護士は二四〇人弱である。例えば、前回二〇〇二年の試験では四七人が 受験し七人が合格、前々回二〇〇〇年の試験では一〇二人が受験し一七人が合格といった狭き門である。この合格率か ら推測できるように、非弁護士に対しこの試験は極めて難関なものになっている。また、受験者数と合格率の双方から みても、試験として体裁をなしていないのではないかとの批判が強い。 租税裁判所での訴訟代理業務における弁護士と非弁護士との有資格者割合は余りにもアンバランスである。このため、 弁護士の権益を護るために、わざと試験を難しくしているのではないかと勘ぐられてもいる。

(39)

また、すでに触れているように、租税裁判所執務・手続規則第二〇〇︵a︶︵二︶は、弁護士に対しては、税務が専 門かどうかを問う試験をすることなしに、自動的に﹁租税裁判所の所管事項に係る業務﹂を行う資格を認めている。こ の点に関し、特許の分野では、連邦の特許控訴審判所︵ω8a9勺9①昌>8Φ巴ω︶の所轄業務を行う資格試験では、 弁護士にも、化学専門家や技術専門家と同等の試験を受けるように求めている。言い換えると、ここでは、弁護士だけ を優先する公共政策を選択していない。このような特許控訴審判所での争訟代理の例は、租税裁判所での訴訟代理業務 において弁護士のみを優先する政策を批判する際の強力な典拠の一つとなってところである。 ただ、CPAと弁護士とでは、職業倫理基準が異なる。会計業務や税務書類の作成、コンサルタントなど多様な業務 をこなしているCPAが、同時に訴訟代理を担当することによる利益相反を憂慮する声もある。 ︵f︶無資格者と租税裁判所の所管事項に係る業務 原則として、弁護士でない者︵非弁護士︶は、租税裁判所が実施する試験に合格し資格を取得し、﹁有資格者﹂にな らない限り、﹁租税裁判所の所管事項に係る業務﹂を行うことはできない。しかし、租税裁判所は、例外的に、非弁護 士に対しても、一定の範囲まで、こうした業務に関与することを認めている。 例えば、租税裁判所で業務を行う資格を有しない﹁無資格者﹂の公認会計士︵CPA︶や登録税務士︵EA︶など非 弁護士は、その者の依頼人が課税処分の取消を求めた訴えを租税裁判所に提起するとする。この場合には、その訴状を 作成することが認められている。もっとも、依頼人が租税裁判所ではなく、連邦地方裁判所ないし連邦請求裁判所に訴 えを提起する途を選択したときは、その限りでない。

参照

関連したドキュメント

支援級在籍、または学習への支援が必要な中学 1 年〜 3

危険な状況にいる子どもや家族に対して支援を提供する最も総合的なケンタッキー州最大の施設ユースピリタスのト

⑤ 

重点経営方針は、働く環境づくり 地域福祉 家族支援 財務の安定 を掲げ、社会福

要請 支援 要請 支援 派遣 支援 設置 要請 要請

主任相談支援 専門員 として配置 相談支援専門員

○ また、 障害者総合支援法の改正により、 平成 30 年度から、 障害のある人の 重度化・高齢化に対応できる共同生活援助

- Since the power was lost and the exhaust monitor data and the meteorological equipment data were not available, the radioactive material dispersion in the surrounding area