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論 文

3次元スペクトルを用いたYC分離フィルタの評価

増田修二 大木真 橋口住久

       (平成3年8月31日受理)

Evaluation of YC Separation Filters by Using 3-D Spectra

ShuujiMASUDA MakotoOHKI SumihisaHASHIGUCHI

      Abstract   This paper describes the evaluation of multi・dimensional YC separation filters. The 3−D spectra of several static images were calculated and used for evaluation. The result shows that the higher−dimensional and/or higher−order YC separation filters produce better output images. Consequently, the quality of the images can be improved by using high・order multi−dimensional YC separation filters. However, it is needed to determine carefully the cuttoff frequencies of YC separation filters when the high−order filters are used.   This result is applicable to designing multi−dimensional YC separation filters. 1. はじめに  NTSCカラーテレビ信号は,本来,水平一垂直一時間で 表される3次元信号である.このテレビ信号は画面を走 査することにより1次元信号として伝送される.また, テレビ信号は輝度信号(Y)と色信号(C)を多重化したも のである.  従来のテレビ信号処理は,主に,テレビ信号を1次元 信号として処理するものであった.近年,メモリなどの ハードウェアの性能が向上してきたことにより,テレビ 信号の3次元処理が可能となった1).例えば,テレビ受 像機においてテレビ信号を輝度信号と色信号に分離する 処理(YC分離)は,従来は1次元フィルタにより行わ れていたが,最近では,2次元あるいは3次元のYC分 離フィルタが用いられるようになった.しかしながら, 現在テレビ受像機で使用されている多次元YC分離フィ ルタでは,次数の低いフィルタを用いている.また,YC 分離フィルタの設計に関して明確な基準が存在しない. このため,まだ十分なYC分離が行われていない可能性 がある.  本研究では,現在のテレビ受像機に使われているYC 分離フィルタの特性を調べるために静止画テレビ信号を 合成し,その3次元スペクトルを実際に計算した。この 結果を用いていくつかのYC分離フィルタについて評価 を行った.その結果,フィルタの次元数が高いほど,ま た,フィルタ次数についても高い方が良い画像が得られ ることが分かった.ただし,高次フィルタを用いる場合 *電子情報工学科,Department of Electrical Engineering and Com− puter Science には,YC分離フィルタのカットオフ周波数を注意深く 設定する必要がある.  これらの評価結果は,多次元YC分離フィルタの設計 に役立てることができる.

2. NTSCテレビ信号

2.1 NTSCテレビ信号

 テレビ信号は,1秒間に30枚送られる画面(フレー ム)を1本おきに525本の走査線で走査(インタレース 走査)する.走査線のうち,262本と半分の長さの走査 線で構成される画面をフィールドと呼ぶ.1つのフレー ムは2つのフィールドにより構成される.  撮像機で走査された信号は,赤(R),緑(G),青(B) の3つの信号である.テレビ信号は,このRGB信号を マトリクスにより輝度信号(Y)と2つの色信号(1,Q)に 変換し,色信号を副搬送波fso=3.579545MHzで2重 平衡変調して輝度信号に加え,4.2MHzに帯域制限する ことにより得られる.この操作を周波数インターリーブ と呼ぶ.1信号,Q信号はそれぞれ1.5MHz, o.5MHzに 帯域制限されており,2重平衡変調された色信号を色信 号(C)と呼ぶ.  図1は,テレビ信号を3次元空間に表したものである. 横軸は画面の水平方向x,縦軸は画面の垂直方向yであ り,奥行き方向は時間軸tである.図1の5枚の平面は, フィールドを表している.また,縦方向は,525本の走 査線を表している.テレビ信号はインタレース走査され ているので,縦方向に525に分けたうち,楕円形のマー 一1一

(2)

平成3年12月 山梨大学工学部研究報告 第42号 525 525     図1 3次元空間におけるテレビ信号     Fig.1  The television signals          in 3−D space クをつけた部分にだけに信号が存在する2).

2.2 テレビ信号の復元

X

 図2は,テレビ信号から画像信号を復元する方法を図 示したものである.テレビ信号は,次の操作を経て画面 に出力される. (1)テレビ信号から色信号(C)を抽出する、 (2)テレビ信号からC信号を引いて輝度信号(Y)を得る. (3)c信号をLQの2つの信号に分ける. (4)YIQ信号をRGB信号に変換して画面に出力する・  図2において,点線で囲まれた部分が,輝度信号一色 信号分離フィルタ(YC分離フィルタ)である. レ 30 f 工 2 、 f5c o ・ 4.2MHz μ (a)3次元周波数空間表示 工 4 レ 皿 2    58 ■ ■ MHz ■ 図 μ 4.2MHz    (b)水平一垂直面表示   (c)垂直一時間面表示     図3 テレビ信号の3次元スペクトル     Fig,3  The 3−D supectrum of          a television signal 周囲が通過域となる3).

3. テレビ信号のスペクトル計算

2.3 NTSCテレビ信号の3次元スペクトル

 図3は,テレビ信号の3次元スペクトルの模式図であ る.図3(a)は,テレビ信号の3次元スペクトルの3次元 周波数空間表示である.ここで,μは水平空間周波数,y は垂直空間周波数,fは時間周波数である.図3(b)は図 3(a)をf方向から見たものであり,図3(c)は,μ方向か ら見たものである.輝度信号(Y)のスペクトルは,原点 を中心に原点対称に広がっている.副搬送波のスペクト ルは,(μ,u,f)一(土f・c,乎,−15),(土∫・c,一乎15)の4 点に現われ,色信号(C)のスペクトルは,図3(b),(c) 中の副搬送波のスペクトルの周囲の斜線部に現れる.し たがって,YC分離フィルタの周波数特性は,斜線部の     YC分離フィルタ     1−一一一一一一一一、

  入

  力

I      l

@一

i I

マトリク RGB

抽出

 l

b信号ICIQ

@:

分離 L_,_______1   図2 画像信号の復元 Fig.2  The decoding      of image signals

3.1 テレビ信号の合成

 静止画テレビ信号の3次元スペクトルの計算には,写 真1と2をイメージスキャナで取り込んで合成したテレ ビ信号を用いた.表1は,テレビ信号の合成パラメータ である. 表1 テレビ信号合成パラメータ サンプリング周波数 4fso 原画像精度 原画像サイズ 階調 600DPI 756×482pixel

RGB各8bit

 色信号σ,Q)とテレビ信号の帯域制限には,「テレビ ジョン放送に関する送信の標準方式(郵政省令第9号) 」4)に適合する線形位相FIRフィルタを用いた.

逆菱謬『臓㍊脇甦鳶C変換マトリクスと

  変換マトリクス       逆変換マトリクス

曙二i翼議)ぽ:竃璽)

(3)

r=oHz

写真ユ  /’\

レ  525/2

1

dB

−60・ −50・ −40⊥ −30.

B

\  \.・.

\慾・・

.t±Xi・

A

如} ’ Φ  品 !,  HL /t/ ζ.’ .・

ソ

 ’q av『 .き』i

’Wt

1−・’   ・t ジsミ  / μ 図・1 テレビ信号の3次元スペクトル(r=OHz._Y]’(1) FiE, 1|  The     sロpec|rum o「 lhe      LeleVision Signn1〔PiCLUre t} f±15Hz    レ \ 525!2

D/

i

B

 .

ジsζ ‘F・ F /μ

dB

│60

│50

│40

│30’ 」\吊、   「 ・層 /      ! @  ,A ・≠

A

図5 テレビ付号の3次元スペクトル(1=151・lz,写真1) FiU,5 The 3−D supcctrum。l thc      Lelcv「5ion signal (PiCture l)

f=DHz

dB

−60 −50 −40 −30 B 写箕2  /’\ 】ノ  525!2

  ./

SC  > μ 図6 テレビ信号の3次元スペクトル(f=OHz,写真2) Fig.6  Thc 3 D supeclrum of Ihe      lelevision s「9nal〔piCLurc 2) f=15Hz    り /層\

 525/2

D/

/l

1

B

1

’口.1

口 ひ D」\ ジ

dB

│60

│50

│40

│30’ 一諸.  ’.    . プ・: ム

∂コ .∼、

A sc  \  / μ 図7 テレビ信号の3次元スペクトルU=151・lz,写‡t2) Fig.7  The 3−D supecLrum or the      LcleViSlon Signnl (piCturc 2)

(4)

平成3年12月 山梨大学工学部研究報告 第42号

3.2 サンプル画像の3次元スペクトル

 図4∼7は,写真1と2を用いて合成したテレビ信号 の3次元スペクトルである.図のf=OHzとf=15Hz は,時間周波数であり,図3(a)を,それぞれ,f=OHz とf=15Hzで切り出した断面である.横軸は水平空間 周波数μ,縦軸は垂直空間周波数uである.原点のスペク トルレベルをOdBとして一10dBごとの等レベル線で表 示されている.  時間周波数fニOHz(図4,図6)は,スペクトルレ ベルが原点において高く,周囲に行くにしたがって,レ ベルが低下している.この部分のみに静止画テレビ信号 の輝度信号スペクトルが存在する.  時間周波数f=15Hz(図5,図7)は,(Pt, y)= (土fso,一¥25)の部分が最もスペクトルレベルが高くなっ ている.この部分のみに色信号のスペクトルが存在する.

4. YC分離フィルタの特性評価

 図8∼10は,YC分離フィルタに要求される通過域 特性である.ハッチした領域が通過域である.図8は1  (水平一垂直面)        (垂直一時間面) 図8 1次元YC分離フィルタの通過域 Fig 8  The passband of the 1−D     YC separation filters 工 4 レ 工 2 工 4 レ 工 2 fsc 15 f μ 30  (水平一垂直面)        (垂直一時間面) 図9 2次元YC分離フィルタの通過域 Fig、9  The passband of the 2−D     YC separation filters 工 4 レ 工 2 工 4 レ 工 2 fsc 15 μ f 30  (水平一垂直面)       (垂直一時間面)

図10 3次元YC分離フィルタの通過域

Fig. 10  The passband of the  3−D      YC separation filters 次元,図9は2次元,図10は3次元のフィルタの場合 である.YC分離フィルタは,テレビ信号からC信号を 抽出するため,C信号のスペクトルが分布している範囲 を通過域とする特性が必要となる.この場合,通過域が 広すぎると,Y信号の一部が色信号に混入することにな り,色ずれなどの画質劣化が生じる.一方,通過域が狭 いと,色信号が十分に抽出されなくなるため彩度が低下 し,画質が劣化する.

4.1 YC分離フィルタの特性評価方法

4.1.1 輝度信号漏れ電力と色信号抽出電力による評価  サンプル画像の3次元スペクトルを用いて,YC分離 フィルタにより抽出されるC信号の電力(色信号抽出 電力)およびC信号中に漏れ出して来るY信号の電力 (輝度信号漏れ電力)を計算する.色信号抽出電力の値 が大きいほど,また,輝度信号漏れ電力が小さいほど, YC分離フィルタの特性が良いと判断する.  色信号抽出電力及び輝度信号漏れ電力の値は,YC分 離フィルタで抽出されるf=OHzと15Hzの電力のf == 15HzにあるC信号の電力に対する百分率で表す. 4.1.2 S/N比による評価  原画像と再合成画像の二乗平均誤差Dを用いてS/N 比を       S/N(dB)−1・1・g(㌢) (1) と定義する,S/N比が大きいほどYC分離フィルタの特 性が良いと判断する. 4.1.3 主観評価  原画像と再合成画像を実際に見比べることにより,評 価を行う. 4.2 評価例  図11∼14は,使用したYC分離フィルタの振幅特性 である.

 図11は,水平方向にかける60次の線形位相FIR

フィルタであり,低域側カットオフ周波数1よfsoより 1.5MHz(1信号帯域幅相当)だけ低いμ=2.079545MHz (図中A点),高域側カットオフ周波数は,4.2MHz(輝 度信号帯域幅相当)である.図12と図13は,垂直方向 にかける線形位相FIRフィルタである.フィルタ次数 は,図12が2次,図13が26次であり,カットオフ周 波数は,ともにu=83.5(図中B点)である.図14は, 時間方向にかける2次の線形位相FIRフィルタである.

(5)

図4∼7の3次元スペクトルの点A,点Bは,このカッ トオフ周波数を表している. 4.2.1 輝度信号漏れ電力と色信号抽出電力による評価

 表2と表3は,写真1と写真2に対して各YC分離

フィルタをかけた場合の輝度信号漏れ電力と色信号抽出 電力である. 表2 輝度信号漏れ電力と色信号抽出電力(写真1,%) 水平

垂直A

垂直B

時間 漏れ電力 鰹o電力 200.3 P14.1 13.25 X6.77 25.95 X2.31 0,000 P00.0

2次元A 2次元B 3次元A 3次元B

漏れ電力 鰹o電力 1,043 P10.6 1,084 P06.0 0,000 P10.6 0,000 P06.0 表3 輝度信号漏れ電力と色信号抽出電力(写真2,%) 水平

垂直A

垂直B

時間 漏れ電力 鰹o電力 113.3 P14.5 27.34 X7.51 21.82 X0.54 0,000 P00.0

2次元A 2次元B 3次元A 3次元B

漏れ電力 鰹o電力 6,331 P12.2 4,204 P04.1 0,000 P12.2 0,000 P04.1  表中の「水平」は,水平フィルタのみ,「垂直A」は, 低次の垂直フィルタ,「垂直B」は高次のフィルタを使 用した場合である.また,「時間」は時間フィルタのみ, 「2次元」は水平+垂直,「3次元」は水平+垂直+時間の フィルタを使用した場合である.  表2と表3から,フィルタの次元数を上げるほど,輝 度信号漏れ電力が減少している.また,1次元フィルタ については,水平,垂直,時間の順に輝度信号漏れ電力 が減少している.次に,垂直フィルタの次数を上げた場 合は,輝度信号漏れ電力は,表2では低次の垂直フィル タA,表3では高次の垂直フィルタBの方が,それぞれ 小さくなっている.写真1は図4のスペクトルに見られ るように,輝度信号成分が〃=0付近に集中している, 垂直フィルタAの振幅応答は〃=0において0である ので,〃=0に存在する輝度信号成分が漏れないが,垂 直フィルタBは〃=0にわずかながら利得があるので, カットオフ特性はBの方が良いにも関わらず,漏れ電力 はAの方が小さくなっていると考えられる.一方,写真 2については,図6のように,図4より広い周波数範囲 に輝度信号成分スペクトルが広がっている.そのため, 原点付近の輝度信号漏れよりも,カットオフ周波数付近 での漏れの方が支配的であり,カットオフ特性が良い垂 振幅  1,0

 図11

Fig,11 O  A fsc 4.2 μ[MHz] 水平フィルタの振幅応答 Magnitude response of the horizonal filter

図12

Fig.12    O  B 525   レ         4 垂直フィルタAの振幅応答 Magnitude response of the vertial  filter A 振幅  1,0

図13

Fig.13    O   B 525   レ         丁 垂直フィルタBの振幅応答 Magnitude response of the vertial filter B 0 15 f[Hz]  図14 時間フィルタの振幅応答 Fig.14  Magnitude response of      the temporal filter 一5一

(6)

平成3年12月 山梨大学工学部研究報告 第42号 直フィルタBの方が漏れ電力が少なくなると考えられる.  色信号抽出電力に関しては,水平方向の1次元フィル タをかけた場合が最も大きく,ついで,2次元フィルタ と3次元フィルタ,時間方向の1次元フィルタ,垂直方 向の1次元フィルタの順になっている.また,垂直フィ ルタの次数については,低次のフィルタの方が,色信号 抽出電力が大きくなっている.  1次元の水平フィルタと2次元,3次元フィルタをか けた場合は,色信号抽出電力が100%を超えるという結 果となった.これは,水平フィルタと垂直フィルタBに チェビシェフ形フィルタを用いたので,通過域特性にリ プルがあり,フィルタの利得が1よりも大きくなってい るためである. 4.2.2 S/N比による評価  表4は,写真1と写真2に対して各YC分離フィルタ をかけた場合のS/N比である. 表4 再合成画像の原画像に対するS/N比(dB) 水平

垂直A

垂直B

時間 写真1

ハ真2

15.01 Q0.79 21.01 Q4.43 15.02 Q3.64 21.40 Q8.12

2次元A 2次元B 3次元A 3次元B

写真1

ハ真2

19.14 Q4.05 18.78 Q4.50 19.69 Q4.56 18.79 Q5.59  表4から,写真1では,低次の垂直フィルタのみの場 合と時間フィルタのみのときに,よく再合成されている. また,2次元と3次元では,3次元の方がよく,垂直フィ ルタに低次のものを用いた方が良い結果が出ている.  写真2では,時間フィルタをかけた場合が最もよく なっている.また,写真2ではフィルタをかける次元数 垂直フィルタの次数が上がるほど良い結果が出る傾向が ある.  この結果は,2次元フィルタと3次元フィルタについ ては,表2と表3とほぼ同じである.  時間フィルタをかけた場合が最もよくなっているのは, 静止画テレビ信号に対しては時間フィルタをかければ完 全にYC分離ができるからである.しかし,動画像に対 しては輝度信号成分と色信号成分が時間周波数軸上で広 がりを持つために完全にYC分離できないためS/N比 が低下する.  輝度信号漏れ電力と色信号抽出電力による評価は, S/N比による評価とほぼ同様の結果が得られている.し かし,「垂直A」のみの場合にS/N比がよくなっている のは,色信号抽出電力が「2次元」と「3次元」にお いて100%を超えているためによる悪影響と考えられる. 写真1と写真2では,「2次元」と「3次元」の評価が異 なっており,また,S/N比が約5dBの差があることか ら,画像の違いが評価に影響を与えていると考えられる. 4.2.3 主観評価  水平フィルタのみをかけた場合,写真1,写真2とも に画像の輝度が低下している.また,画像がぼやけ,原 画像とは全く異なった色が再生されている部分がある. これは,輝度信号漏れ電力が大きいためである.  垂直フィルタをかけた場合,低次のフィルタをかけた 場合より,高次のフィルタをかけた方が画像の細部まで はっきり表現されている.また,フィルタの次元を上げ たときの方が画像の細部まで表現されていることが分か る.しかし,写真1において,煉瓦の周囲のような,色の 変化の激しい所では,高次のフィルタを用いた方が輪郭 にぼけがみられる.これは,色信号の高周波成分のうち, フィルタの阻止域に当たる成分が減衰したためである.  フィルタをかける次元数を上げるほど,画像の輝度が 低くなっている.これは,ここで用いたYC分離フィル タの利得が1よりも多少大きくなっている場合があり, 色信号が過剰に抽出され,その分だけ輝度信号が減少す るためであると考えられる,また,表4のように再合成 画像が暗くなっているものは,S/N比が低くなっている. したがって,表4において,次元数の高いフィルタを用 いた場合に,かえってS/N比が低くなる場合があるが, この原因は画像細部における色再現誤差ではなく,画像 全体の輝度低下によるものである.  S/N比による評価と比較すると,S/N比による評価と 主観評価はほぼ一致する.しかし,画像の細部まで再合 成されているかを評価する場合には,高次フィルタと低 次フィルタでは評価が異なる場合がある。したがって, 実際に再合成画像を評価するには,S/N比のみではなく 主観評価が必要になる. 5. おわりに  静止画テレビ信号の3次元スペクトルを用いて多次元 YC分離フィルタの輝度信号漏れ電力と色信号抽出電力 を計算し,YC分離フィルタの評価を行った.この結果 をS/N比による評価,および主観評価と比較した.  輝度信号漏れ電力と色信号抽出電力による評価と,再 合成画像の原画像に対するS/N比による評価は,ほぽ 同じ結果が得られ,全体としてフィルタの次元数が高い ほどよい結果が得られた.  また,主観評価では,垂直フィルタの次数が高い方が より細かい部分まで画像再現されており,よいYC分離 特性が得られているといえる.しかし,色信号の変化の 激しい画像に対しては,YC分離フィルタの垂直フィル タの次数が低い方がカットオフ周波数付近の色成分をよ

(7)

りよく抽出するため,よい色再現が行われる場合もある. したがって,高次フィルタを用いる場合には,カットオ フ周波数の設定に気をつける必要がある.  今後の課題として,水平フィルタと垂直フィルタBに 用いたチェビシェフ形フィルタのリプル特性による影響 を調べるため,高次のバタワースフィルタを用いた場合 について評価を行う必要がある,また,画像により色信 号の帯域が異なるため,各画像に合わせてフィルタの帯 域を変化させて評価を行う必要がある.

参考文献

1)吹抜敬彦:TV画像の多次元信号処理, pp.1−4,日刊工業  出版社(Nov.1988). 2)阿知葉征彦:TV画像のための多次元ディジタル信号処  理,コンピュートロ・一一ル,30,pp.61−75,コロナ社(April  1990). 3)E.Dubois,M.S.Sabri,J−Y・Quellet: Three−dimensional  spectrum and processing of digital NTSC color signals,  SMPTE,J.,914, pp.372−378(April1982). 4)日本放送協会:カラーテレビジョン,pp.754−761,日本放  送協会(1961). 一7一

参照

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