ITルネサンスのために:ヒューマンインタフェースの復権を:真のニーズと思い込みニーズ
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(2) 指入力を使いこなし,図 -2 に見るように,携帯電話か. 調査結果にも現れている.この調査では,情報スキルや. らのインターネット接続が,固定網からのインターネッ. ニュースなどの情報へのアクセスに応じて,ユーザを情. ト接続の 3 倍も多いという世界に類を見ない状況を生み. 報リテラシーの高い順から高(6.4%),中高(18.4%) ,中. 出した.しかも携帯電話でメールをやりとりしている. (51.4%),低(23.8%)の 4 層に分類している.低情報リ. ユーザの多くは自分たちがインターネットを使っている. テラシー層は携帯電話のみからのインターネット利用が. と,認識すらしていない.. 最も多く,年代は 10 代と 60 代に集中している.電子メ. 携帯電話からのインターネット接続に関しては,親指. ールはどの層でも多く使われているが,高情報リテラシ. 入力を見て, 「あんな使いにくいものはだめだよ,もっ. ー層の使い方では,情報入手やチケット予約購入,バン. と使いやすい入力手段が出てくるまで,当面,PC から. キング,ショッピングがある.これに対し,低情報リテ. 使い続けるよ」と,著者を含め,多くのヒューマンイン. ラシー層は着メロや待ち受け画面,音楽・映像,ゲーム. タフェース技術者が思った. しかし, その予想を覆し, 「お. に使っている.我々技術者は,高情報リテラシー層であ. はよ,起きた?」といった気軽なメールをやりとりする. り,若年ユーザの多くは低情報リテラシー層に属してお. スタイルが定着した.なぜ,我々はこのような入力スタ. り,その使い方は,メール以外はまったく異なっている. イルの変化を予測できなかったのであろうか.. のである(図 -3).. ヒューマンインタフェース技術者はじめ,ほとんどの 技術者にとって,両手でキーボードからメールを打つこ とが当たり前であった.両手打ちに比べると,親指入力 は入力速度も遅いので,メールは携帯電話ではなく,両 手打ちができる PC から行うという思い込みがあった. そこにはさらに,携帯電話のメールは,すでに PC でメ ールを使っているユーザが,PC が使えない出先や街角 で使うという思い込みもあった.しかし,実際には,親 指入力の主力は,それまで PC を使ったことがないユー ザ で あ っ た.携 帯 電 話 か ら の 入力が初めてのユーザにとって 親指入力しか選択の余地はなか ケベルユーザにとっては馴染み. を行ってしまいがちである. この技術者が自らをユーザ. る情報リテラシー別のネットサ ービスの利用状況や望む機能の. 2001/3. 2001/9 出典)通信ジャーナル Vol.20, No.1.. 図 -2 インターネット接続サービスの加入数. 高情報リテラシー 中高情報リテラシー. 利用率. 中情報リテラシー 低情報リテラシー. 30. 10. 2001 年度‒ 2」にまとめられてい. 2000/9. 40. ズ」と, 「真のニーズ」との違い. 社会の勘所−電通総研レポート. 2000/3. 50. 20. −ブロードバンド&ユビキタス. 携帯電話端末. 60. と し た と き の「 思 い 込 み ニ ー は, 「i-Life 情報化社会に生きる. 1,000 0. 70. このように,技術者自身が,. ズ」から,技術開発や商品開発. 固定系端末. 2,000. 80. やすいものでもあった.. み違いを犯し, 「思い込みニー. 3,000. 90. った.さらに,親指入力は,ポ. と,対象とするユーザ層の見込. 4,000. (%) 100. は,メールを打つための入力は. 自らの視点でニーズを考える. (万加入) 5,000. 0. 入 ム ル ン 像 DL グ 手 面 グ 売買 購 ー ー ョ ト ン 入 画 ン ・映 約 ゲ メ シ フ 報 け 楽 予 子 ー ソ ンキ ッピ -株式 情 受 音 ト 電 ケ e ち ッ ニ e-バ -ショ 待 ケ ュ e ロ・ チ ミ メ コ 着 出典)電通総研レポート 2001 版. 図 -3 携帯電話ネットサービス利用状況. IPSJ Magazine Vol.43 No.11 Nov. 2002. 1227.
(3) (%) 50. 高情報リテラシー 中高情報リテラシー 中情報リテラシー. 40. 利用率. 低情報リテラシー 30. 20. 10. 0. 力 オ メラ ヤー 定表 レス ジオ ンク 表示 質化 入力 入力 デ 表示 ド入 ラ タリ 画質 高音 ペン 音声 ビ ルカ レイ 動予 シュ 型 ー ・ 大 ー 行 高 ッ プ ビ ジタ デ ャ ーボ レ キ キ テ ディ 出典)電通総研 2002 年版. 図 -4 携帯電話に希望する機能. では,ヒット商品を出すには,低情報リテラシー層. 化されたニーズが,問題なく融和できるときには問題な. ユーザが欲している機能を搭載すればよいのだろうか.. い.しかし,携帯電話とテレビのように,双方が顕在化. 図 -4 に 2001 年の状況で,希望する機能がまとめられて. していても,融合するときに,表示サイズや解像度など. いる.低情報リテラシー層は,まずテレビ・ビデオ,つ. 現状と同等の質で融合ができないときには,注意が必要. いでプレイヤー,ラジオ,ディジタルカメラを希望して. である.. いる.これに対し,高情報リテラシー層は行動予定表,. 携帯電話がない時点で同様の質問をした場合,ユーザ. キャッシュレス,データリンク,ディジタルカメラを希. は自分が使ったことがないモノに対して,明確な要求を. 望している.双方に共通するディジタルカメラを出した. 出すことは難しい.そのため,まだないモノについての. から,現在のカメラ付き携帯電話の隆盛があるかどうか. 使い方などの要求は,技術者が自らの想像力で,埋めて. は不明である.. いかねばならない.技術者は高情報リテラシー層ユーザ. ここで注意すべきは,高情報リテラシー層ユーザの. であり,低情報リテラシー層ユーザの使用イメージと大. 希望と低情報リテラシー層ユーザの希望が異なっている. きく乖離していることを忘れてはならない.. 場合の扱いである.低情報リテラシー層ユーザの希望す. 電話がないときに,電話が必要かと聞かれても,使っ. るテレビ・ビデオ機能を搭載することは,技術的には,. たことがないモノを想像して,要望を述べることは難し. MPEG4 を使えば可能である.しかし,そこで実現され. い.しかし, 技術者はまだ誰も使ったことがない技術を,. る解像度やコンテンツ内容が,彼らが望む使い方である. 使われるときの状況を想像し,その技術を創造すること. かどうかは不明である.現在使っている携帯電話に,リ. ができる.その技術者の「思い込みニーズ」が技術者の. ビングルームで見ているテレビやビデオの代わりができ. 原動力である.「思い込みニーズ」が,世の中で「真のニ. ると思って,この機能を希望すると答えている.テレビ. ーズ」になるのが,76 年後かもしれないが,ニーズとし. やビデオの画像を,MPEG4 で小さな携帯電話の画面に. て把握できることが,技術者の本領である.. 映したときに,どの程度の解像度になるのかどうかの具. ヒューマンインタフェース技術者は,「思い込みニー. 体的なイメージがあるわけではない.ユーザの抱くイメ. ズ」であることを認識しつつ,その「思い込みニーズ」が. ージは現在のテレビやビデオのイメージであり,それが. 「真のニーズ」に変身する日を夢見て,今日も,研究開. 携帯電話になったときに,どの程度になるかは,実際に その映像を見ない限り判断できないのである.つまり, 携帯電話とディジタルカメラというように,双方顕在. 1228. 43 巻 11 号 情報処理 2002 年 11 月. 発を続けるのである. (平成 14 年 8 月 26 日受付).
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